水洗便器
【課題】汚物排出前に旋回流により汚物が移動するのを抑制できて、少ない洗浄水量で汚物搬送距離を伸ばすことが可能となる水洗便器を提供する。
【解決手段】
旋回流を用いてボウルのボウル面を洗浄し、ボウルの底部に設けられた排水口部から洗浄水を排出する水洗便器である。封水面より下の前記ボウル面の底部の、前記排水口部の手前の部分の左右方向の一方側を他方側より高くして高底部が形成される。前記排水口部より手前の部分の左右方向の他方側に、前記高底部に連続し且つ前記高底部より低く後端部が排水口部に連続する窪み部が形成される。
【解決手段】
旋回流を用いてボウルのボウル面を洗浄し、ボウルの底部に設けられた排水口部から洗浄水を排出する水洗便器である。封水面より下の前記ボウル面の底部の、前記排水口部の手前の部分の左右方向の一方側を他方側より高くして高底部が形成される。前記排水口部より手前の部分の左右方向の他方側に、前記高底部に連続し且つ前記高底部より低く後端部が排水口部に連続する窪み部が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、水洗便器に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
水洗便器において一度に使用する洗浄水量は、節水化が進むにつれて年々少なくなってきている。しかし、一度に使用する洗浄水量が少なくなると洗浄性能が悪くなる。
【０００３】
そこで、少ない洗浄水量でボウル面の汚れを綺麗に落とすための方策として、洗浄水をボウル内部で旋回させて洗い落とす方法が、特許文献１等により提案されている（図１２参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００８−１３８４１９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
特許文献１に示される水洗便器における洗浄は、（１）前通水（ボウル面の水没されていない部分の洗浄）、（２）排出（汚物を排出）、（３）後通水（ボウル内に水を溜める）の過程で行われる。
【０００６】
そして、この（１）〜（３）の過程で、ボウル１の後部の左右方向の一方側に設けられた水供給部１０を構成する射水口から洗浄水を供給してボウル面２を旋回しながら洗い流し、その後、ボウル１内に水を溜める。
【０００７】
ところで、汚物が下水管内を洗浄水により搬送される距離（汚物搬送距離）は、汚物の後から流れる洗浄水量が多い程長くなり、汚物の後から流れる洗浄水量が少ない程短くなる。このため、汚物を排出する際汚物の後から流れる洗浄水量が少なくなると、汚物が洗浄水により下水管の中を搬送される汚物搬送距離が短くなり、下水管内部で汚物が詰まる原因となる。
【０００８】
ここで、上記洗浄過程（１）の前通水で洗浄水が旋回すると、汚物３０がボウル１内を旋回流で流され、図１３のように排水口部４内の汚物３０が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置（図１３における右側）に移動させられる恐れがある。このように、排水口部４内の汚物３０が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置に移動させられると、汚物３０の背方に存在する洗浄水（図１３のＸで示す）の水量が少なくなる。このように図１３のＸで示す汚物３０の背方の洗浄水量が少なくなると、洗浄過程（２）において汚物３０を排出する際に汚物３０の後から流れる洗浄水量が少なくなる。
【０００９】
したがって、汚物が洗浄水により下水管の中を搬送される汚物搬送距離が短くなり、下水管内部で汚物が詰まる原因となるという問題があった。
【００１０】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、少ない洗浄水量で汚物搬送距離を伸ばすことが可能であって、汚物の排出性能がよい水洗便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【００１２】
水洗便器は、洗浄水の旋回流によりボウルのボウル面を洗浄し、前記ボウルの底部に設けられた排水口部から洗浄水を排出する水洗便器であって、封水面より下の前記ボウル面の底部の、前記排水口部の手前の部分の左右方向の一方側を他方側より高くして高底部が形成され、前記排水口部より手前の部分の左右方向の前記他方側に、前記高底部に連続し且つ前記高底部より低く後端部が前記排水口部に連続する窪み部が形成されることを特徴とする。
【００１３】
また、前記ボウルの上部に水供給部を備え、当該水供給部は、前記ボウルの周方向に沿って前記洗浄水を噴出するよう構成され、前記高底部は、前記洗浄水の流れ方向において、前記排水口部の前方に形成されていることが好ましい。
【００１４】
また、前記ボウルの左右方向の前記一方側の上部に、前記ボウル面に前記洗浄水を供給する水供給部が位置することが好ましい。
【００１５】
また、前記封水面より下の前記ボウル面に、前記旋回流が衝突して衝突した前記旋回流の流れを前記排水口部に向けるよう構成された、ガイド手段を備えることが好ましい。
【００１６】
また、前記ガイド手段は、前記ボウル面に形成された突出部から構成されることが好ましい。
【００１７】
また、前記突出部の前記排水口部側の側面が、前記排水口部の内側面と平滑な面で連続することが好ましい。
【００１８】
また、前記ボウルの左右方向の前記他方側の前記ボウル面に前記ガイド手段が位置し、前記ボウルの左右方向の前記一方側の上部に前記ボウル面に前記洗浄水を供給する水供給部が位置することが好ましい。
【００１９】
また、前記排水口部に、上下方向に回動可能なトラップが接続されることが好ましい。
【発明の効果】
【００２０】
本発明の水洗便器は、汚物排出前に旋回流により汚物が移動するのを抑制できて、少ない洗浄水量で汚物搬送距離を伸ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】本発明の一実施形態の斜視図である。
【図２】本発明の一実施形態のボウルの平面図である。
【図３】図２のＡ−Ａ線の断面図である。
【図４】図２のＢ−Ｂ線の断面図である。
【図５】図２のＣ−Ｃ線の断面図である。
【図６】図２のＥ−Ｅ線の断面図である。
【図７】図２のＤ−Ｄ線の断面図である。
【図８】図７のＦ−Ｆ線の断面図である。
【図９】図７のＧ−Ｇ線の断面図である。
【図１０】本発明の一実施形態のボウルの一部破断斜視図である。
【図１１】本発明の一実施形態のトラップ筒の回動を示す説明図である。
【図１２】従来例における旋回流の流れを示す平面図である。
【図１３】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２２】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【００２３】
水洗便器５は図１に示されるように、ボウル１を備えている。ボウル１はボウル面２を有する。ボウル１の底部３の後部には、排水口部４が設けられる。
【００２４】
排水口部４は、図６、図７に示されるように、ボウル１の底部３の後部から下方へ延びる筒状の縦筒部１３と、縦筒部１３の下端から後方へ延びる筒状の横筒部１４とを有する。すなわち排水口部４は、縦筒部１３の下部に横筒部１４が一体に連続した略Ｌ状の筒形状をしており、縦筒部１３の上端開口がボウル１の底部３に上方に向けて開口し、横筒部１４の後端が後方に向けて開口する。
【００２５】
排水口部４の横筒部１４の後端部には、図１１に示されるように、トラップの一端部が接続される。本実施形態では洗浄方式をターントラップ方式としており、トラップは、フレキシブルなトラップ筒１５を有して構成される。
【００２６】
トラップ筒１５は、モータ（図示せず）により図１１の実線で示す姿勢（第１の姿勢）から図１１の二点鎖線で示す姿勢（第２の姿勢）に回動する。また、モータを逆回転させることで、図１１の二点鎖線で示す姿勢から図１１の実線で示す姿勢に回動する。つまり、排水口部４には、上下方向に回動可能なトラップが接続されている。
【００２７】
図１１の実線で示すようにトラップ筒１５の先端開口１５Ａが上方を向く姿勢（第１の姿勢）は、トラップ構造となる姿勢である。図１１の二点鎖線のようにトラップ筒１５の先端開口１５Ａが下方を向く姿勢（第２の姿勢）は、トラップ構造が解除されて洗浄水を排出する姿勢である。
【００２８】
ここで、図１１の実線のように、トラップ筒１５の先端開口１５Ａが上方を向くトラップ構造となる姿勢（第１の姿勢）の場合、ボウル１内に洗浄水が溜められる。この場合、トラップ筒１５の先端開口１５Ａの下端位置によって洗浄水の水位がほぼ決まり、ボウル１内におけるこの水位位置が封水面１１となる。
【００２９】
図２−図５、図１０に示されるように、ボウル１の上部にはボウル面２に旋回流を供給する水供給部１０が設けられる。水供給部１０は、ボウル１の周方向に沿って洗浄水を噴出するよう構成されている。本実施形態では、ボウル１の左右方向のいずれか一方側の上部にボウル面２に旋回流を供給する水供給部１０が設けられる。具体的には、図２、図１０に示されるように、ボウル１の左右方向のいずれか一方（図１０では左側）の上部後端部に水供給部１０が設けられる。この水供給部１０には洗浄水を供給する管路先端のノズル（図示せず）が嵌め込み接続されており、このノズルから洗浄水が供給される。つまり本実施形態では、ボウル１の上端後部における左右方向の一方側（図１０の左側；第１側）に、前方に向かって洗浄水を噴出するよう構成された水供給部１０が設けられる。
【００３０】
ボウル１の上端には、図示を省略しているがリム部が一体に固着され、ボウル１の上端縁部とリム部とで周溝部２０が形成される。リム部は、ボウル１の上端の全周に亘って形成される。リム部は、ボウル１の上端から内方へ突出している。したがって周溝部２０は、側方へ凹んだ溝形状となっている。言い換えれば、ボウル１の上端には、全周に亘って、側方へ凹んだ溝形状の周溝部２０が形成されている。図ではリム部の図示が省略されているので、ボウル１の上端部で構成される周溝部２０の下半分のみが示されている。
【００３１】
また、ボウル１の水供給部１０の前方には、図２、図１０に示されるように、水供給部１０の前方の空間をボウル面２から仕切るように、壁体２１が形成されている。そして、この壁体２１によってボウル面２から仕切られた部分が、誘導水路部２２を構成する。この誘導水路部２２の出口部分が、周溝部２０の始端部となる。
【００３２】
水供給部１０から供給される洗浄水は、誘導水路部２２で前方に向けて誘導されて周溝部２０の始端部から勢い良く流出し、周溝部２０に沿って旋回流となって流れる。
【００３３】
周溝部２０に沿って旋回流となって流れる洗浄水は、周溝部２０の周方向の各部から少しずつボウル面２に旋回流となって流れて、ボウル面２を周方向において万遍なく洗浄する。
【００３４】
本実施形態の水洗便器５では、封水面１１より下のボウル面２の底部３において、排水口部４の手前の部分の左右方向の片側（図１０の左側；第１側）に高底部１６が形成され、また、他の片側（図１０の右側；第２側）に高底部１６よりも低い窪み部１７が形成される。高底部１６は、ボウル面２の底部３の左右方向の一方側（図１０の左側；第１側）を、左右方向の他方側（図１０の右側；第２側）よりも高くして（上方へ面状に突出させて）形成される。
【００３５】
本実施形態では、高底部１６は、図２、図４、図１０に示されるように左右方向において水供給部１０を設けた側に位置する。また、窪み部１７は、図２、図４、図１０に示されるように左右方向において水供給部１０を設けた側と反対側に位置する。窪み部１７は、底部３の左右方向において、排水口部４に対して水供給部１０とは反対側に位置する。
【００３６】
高底部１６は、頂面１６Ａと、壁面２４と、側面２６とを有する。
【００３７】
高底部１６における頂面１６Ａは、底部３における左右方向の一方側（図１０の左側；第１側）から中央側へ向かって、なだらかに下り傾斜している（図３、図４参照）。頂面１６Ａは、底部３の左右方向において中央部付近まで広がっている。このように、頂面１６Ａが窪み部１７へ向かって下り傾斜しているので、頂面１６Ａ上の汚物は、自重によって窪み部１７へと移動する。なお本実施形態では、頂面１６Ａは前後方向には傾斜していない。しかし、後方へ向かって緩やかに下り傾斜していてもよい。
【００３８】
高底部１６における排水口部４の上側開口に隣接する側面（壁面２４）は、図５に示されるように、略起立姿勢をした急な側面となっていて、排水口部４の内面２５を上方にそのまま延長して連続することで、上記壁面２４が形成される。つまり、壁面２４は、ほぼ垂直方向に起立した急な斜面となっている。壁面２４は、高底部１６の側方から後側にかけて形成されている。壁面２４は、排水口部４の内面２５に連続している。
【００３９】
また、高底部１６における窪み部１７に隣接する側面２６は、図４に示されるように、緩やかに傾斜した曲面となっていて窪み部１７に連続している。側面２６は、窪み部１７に向かって頂面１６Ａよりも急角度で下り傾斜している。
【００４０】
本実施形態では、高底部１６は、底部３の左右方向におけるどちらか一方にのみ形成されている。本実施形態では、高底部１６は、左右方向における水供給部１０と同じ側（図１０の左側；第１側）にのみ形成されている。
【００４１】
窪み部１７は、排水口部４の上側開口（縦筒部１３の上端開口）に近づくほど下となるように（つまり、後側ほど下となるように）下り傾斜している。窪み部１７は、ボウル１の前後方向において、頂面１６Ａよりも急角度で、排水口部４へ向かって下り傾斜している。このように、窪み部１７が排水口部４へ向かって下り傾斜しているので、窪み部１７内の汚物は、自重によって排水口部４内へと移動する。また窪み部１７は、排水口部４に連続して形成されている。窪み部１７はＵ字溝状に形成されている。
【００４２】
封水面１１より下の前記ボウル面２には、洗浄水の旋回流が衝突して流れを排水口部４に向けるためのガイド手段６が備えられている。言い換えれば、封水面１１より下の前記ボウル面２には、ガイド手段６が備えられている。そしてガイド手段６は、衝突した洗浄水の旋回流の流れを排水口部４に向けるように構成されている。
【００４３】
本実施形態においては、図１−図４、図７−図１０に示されるように、旋回流が衝突して流れを排水口部４に向けるための突出部７がボウル面２に形成されている。本実施形態では、この突出部７がガイド手段６を構成している。
【００４４】
突出部７は、図２、図１０に示すように、ボウル１の左右方向のいずれか一方で且つ水供給部１０を設けた側とは反対側のボウル面２に突出形成される。
【００４５】
つまり突出部７は、図１−図４、図６、図８−図１０に示されるように、ボウル１の左右方向において、高底部１６が形成された方と反対側に形成される。窪み部１７は、高底部１６と突出部７との間に形成される。つまり、ボウル面２の左右方向における上記他方側（水供給部１０とは反対側；第２側）には、突出部７（ガイド手段６）が形成される。
【００４６】
また、この突出部７は、排水口部４の上側開口の上記他方側（図１０の右側）から上側開口の手前にかけて形成される。突出部７は、ボウル面２の他側（図１０における右側）の側面からボウル１の内方に向けて突出形成されている（図３、図４参照）。
【００４７】
突出部７における排水口部４より手前の部分の前面は、旋回流衝突面２３となっている。つまり、突出部７における前側の面は、旋回流衝突面２３となっている。旋回流衝突面２３とボウル面２との間のコーナ部分は、鈍角となっている。詳しくは、この旋回流衝突面２３は、図９に示すように平面視でボウル面２の突出部７と突出していない部位とのなすコーナ部分が鈍角となり、且つ、このコーナ部分から離れるほど排水口部４側に近づくように傾斜する（添付図面では曲面状に傾斜した例を示す）。
【００４８】
突出部７の排水口部４側の側面８は、排水口部４の内側面９と滑らかに連続している。つまり、突出部７の排水口部４側の側面８は、排水口部４の内側面９と平滑な面で連続している。
【００４９】
上記の構成の水洗便器５は、図１１の実線のようにトラップ筒１５の先端開口１５Ａが上方を向く姿勢（第１の姿勢）において、ボウル１内に洗浄水が溜められる。使用者は、この状態で、大便や小便等の用便を行う。
【００５０】
用便を行った後の洗浄は、下記の（１）〜（３）の過程で行われる。
【００５１】
まず、（１）水供給部１０から洗浄水を供給して旋回流として流して前通水（ボウル面２の水没されていない部分の洗浄）を行う。（２）引き続き洗浄水の供給を継続して旋回流として流し、同時に、先端開口１５Ａが下方を向くようにトラップ筒１５を回動して、汚物及びボウル１内に溜まっていた洗浄水を排出する。（３）その後、洗浄水の供給を継続しながら、先端開口１５Ａが上方を向くようにトラップ筒１５を逆回動させ、ボウル１内に洗浄水を溜める。
【００５２】
ここで、上記洗浄過程（１）の前通水で洗浄水が旋回すると汚物がボウル１内を旋回流により流され、排水口部４内の汚物が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置に移動させられる恐れがある。
【００５３】
このように、排水口部４内の汚物が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置に移動させられると、図１３の従来例のように洗浄過程（２）において汚物を排出する際、汚物の後から流れる洗浄水の水量が少なくなる。
【００５４】
そして、汚物が下水管内を洗浄水により搬送される距離（汚物搬送距離）は、汚物の後から流れる洗浄水の水量に影響されるので、汚物の後から流れる洗浄水の水量が少なくなると、汚物が洗浄水により下水管の中を搬送される汚物搬送距離が短くなる。
【００５５】
しかし、本実施形態は、ボウル面２の底部３の排水口部４の手前の部分の左右方向の片側に高底部１６が形成され、他方の片側に窪み部１７が形成されている。この高底部１６は、左右方向において水供給部１０を設けた側と同じ側に位置する（高底部１６は、ボウル面２の底部３の左右方向の一方側を高くして形成され、水供給部１０はボウル面２の左右方向の前記一方側の上部に形成されている）。すなわち、高底部１６は、洗浄水の流れ方向において、排水口部４の前方に形成されている。したがって、水供給部１０から供給された洗浄水は、ボウル面２を周方向に（図１０における反時計回りに）旋回した後、高底部１６における壁面２４（図９参照）に衝突し、その勢いが弱められる。また、この壁面２４に汚物も衝突し、窪み部１７に汚物が留まりやすくなる。したがって本実施形態は、高底部１６と窪み部１７を形成することにより、上記洗浄過程（１）の前通水で洗浄水が旋回しても、汚物がボウル１内を旋回流により流されて移動するのを抑制することができる。
【００５６】
つまり、排水口部４内の汚物が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置に移動させられたりするのが抑制される。
【００５７】
これにより、洗浄過程（２）において、先端開口１５Ａが下方を向くようにトラップ筒１５を回動すると、まず排水口部４内に溜まっていた汚物が排水口部４内の水といっしょにトラップ筒１５側に流されてトラップ筒１５の先端開口１５Ａから下水管に向け排出される。引き続いてボウル１内に溜まっていた水が汚物の後から排水口部４、トラップ筒１５の順に流れてトラップ筒１５の先端開口１５Ａから下水管に向け排出される。
【００５８】
したがって、下水管を汚物が搬送される際、汚物の後側にある洗浄水量が多くなり、汚物搬送距離を長くすることが可能となる。
【００５９】
また、洗浄水が窪み部１７に集まって排出口部４に流れ込むので、少ない洗浄水量であっても洗浄効果が向上する。また、洗浄水が窪み部１７に一気に集まって排出口部４に流れるので、窪み部１７を形成しない場合に比べて横筒部１４における流速が速くなり、この点でも汚物３０の汚物搬送距離を伸ばすことが可能となる。
【００６０】
また、汚物が排出された後から流れる汚物を含まない洗浄水量が多くなるので、汚物が排出された後の排水口部４、トラップ筒１５の洗浄効果が向上する。
【００６１】
また本実施形態では、高底部１６がボウル面２の底部３の左右方向の一方側（図１０の左側）に形成されている。さらに、ボウル面２の底部３の左右方向の他方側（図１０の右側）に窪み部１７が形成されている。これにより、高底部１６が左右方向の両側に形成されている場合や窪み部１７がない場合に比べて、洗浄過程（３）においてボウル１内に溜められる水量を多くすることができる。従って、次回の洗浄過程（２）において排出される水量が多くなり、汚物搬送距離を長くすることができる。
【００６２】
なお、本実施形態においては、上記洗浄過程において、前述のように、水供給部１０から洗浄水が供給されて旋回流となって、ボウル面２を流れて洗浄する。この場合、洗浄過程（２）において、洗浄水がボウル面２を上から下に周方向に旋回しながら流れ、底部３近くになると、図８の矢印Ｐのように、高底部１６上及び高底部１６に連続するボウル面２の側面下部を後から前に向けて旋回しながら流れる。次に、図８、図９の矢印Ｑのように、突出部７の旋回流衝突面２３に衝突し、流れが排水口部４に向くようにガイドされ、窪み部１７を通って排水口部４内に流れ込む。つまり、突出部７（ガイド手段６）によって、ボウル面２の周方向に沿った流れ（矢印Ｐ）が、排水口部４へと向かう流れに変換される（矢印Ｑ）。
【００６３】
また、旋回流衝突面２３の上部に衝突した洗浄水の一部が突出部７の側面に沿って斜め下方に排水口部４側に向けてガイドされるが、この洗浄水は、突出部７の排水口部４側の側面８が、排水口部４の内側面９と滑らかに連続しているのでスムーズに排出口部４に流れ込む。
【００６４】
これらの理由により、本実施形態は、洗浄水が旋回流のまま排水口部４に流れる場合に排水口部４付近で発生する乱流を抑制し、洗浄水を排水口部４にスムーズに流すことが可能となる。
【００６５】
つまり本実施形態は、封水面１１より下のボウル面２に、旋回流が衝突して衝突した旋回流の流れを排水口部４に向けるよう構成されたガイド手段６（突出部７）を備えるので、旋回流を排水口部４にスムーズに流し、排水口部４付近で旋回流による乱流が起きるのを抑制できる。
【００６６】
このため例えば下痢状の便を排出する場合、従来のように旋回流の向きを排水口部４側に向けるようにガイドすることなく排水すると、下痢状の便が旋回流に乗ってボウル１内を漂うおそれがあるが、本実施形態は、下痢状の便であってもスムーズに排出可能となる。したがって、旋回流による少ない洗浄水量で汚物の排出性能を良くすることが可能となる。
【００６７】
なお、添付図面に示す実施形態では、ボウル面２には、洗浄水の旋回流が衝突して流れを排水口部４に向けるためのガイド手段６を設けた例を示したが、ガイド手段６を設けなくてもよい。
【００６８】
また、上記の実施形態においては、ボウル面２に突出部７を形成してガイド手段６を構成した例を示したが、ガイド手段６としては、旋回流が衝突して衝突した旋回流の流れを排水口部４に向けるよう構成されたものであればよく、突出部７には限定されない。例えば、ボウル面２にガイド溝を形成し、このガイド溝に、旋回流が衝突して流れを排水口部４に向けるための衝突面を設けてもよい。もちろん、ガイド手段６としては他の形態であってもよい。また、上記の実施形態においては、突出部７（ガイド手段６）を封水面１１より下のボウル面２に形成することにより、上記洗浄過程（１）で洗浄水が旋回するときに、旋回を妨げないようにしているが、封水面より上に突出するように設けてもよい。
【００６９】
また、上記の実施形態においては、ボウル面２の底部３の左右方向の一方側（図１０の左側）に高底部１６を形成し、高底部１６を形成した側と同じ側に水供給部１０を設けた例を示したが、本発明はこの構成には限られない。例えば、ボウル面２の底部３の左右方向の一方側（図１０の左側）に高底部１６を形成し、ボウル１の左右方向の他方側（図１０の右側）の上部に、側方へ向かって（図１０における左向きに）洗浄水を噴出する水供給部１０を設けてもよい。つまり、ボウル１の上部に、ボウル１の周方向に沿って洗浄水を噴出するよう構成された水供給部１０を設け、高底部１６を、洗浄水の流れ方向において排水口部４の前方に形成すればよい。
【符号の説明】
【００７０】
１ ボウル
２ ボウル面
３ 底部
４ 排水口部
５ 水洗便器
１６ 高底部
１７ 窪み部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、水洗便器に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
水洗便器において一度に使用する洗浄水量は、節水化が進むにつれて年々少なくなってきている。しかし、一度に使用する洗浄水量が少なくなると洗浄性能が悪くなる。
【０００３】
そこで、少ない洗浄水量でボウル面の汚れを綺麗に落とすための方策として、洗浄水をボウル内部で旋回させて洗い落とす方法が、特許文献１等により提案されている（図１２参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００８−１３８４１９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
特許文献１に示される水洗便器における洗浄は、（１）前通水（ボウル面の水没されていない部分の洗浄）、（２）排出（汚物を排出）、（３）後通水（ボウル内に水を溜める）の過程で行われる。
【０００６】
そして、この（１）〜（３）の過程で、ボウル１の後部の左右方向の一方側に設けられた水供給部１０を構成する射水口から洗浄水を供給してボウル面２を旋回しながら洗い流し、その後、ボウル１内に水を溜める。
【０００７】
ところで、汚物が下水管内を洗浄水により搬送される距離（汚物搬送距離）は、汚物の後から流れる洗浄水量が多い程長くなり、汚物の後から流れる洗浄水量が少ない程短くなる。このため、汚物を排出する際汚物の後から流れる洗浄水量が少なくなると、汚物が洗浄水により下水管の中を搬送される汚物搬送距離が短くなり、下水管内部で汚物が詰まる原因となる。
【０００８】
ここで、上記洗浄過程（１）の前通水で洗浄水が旋回すると、汚物３０がボウル１内を旋回流で流され、図１３のように排水口部４内の汚物３０が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置（図１３における右側）に移動させられる恐れがある。このように、排水口部４内の汚物３０が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置に移動させられると、汚物３０の背方に存在する洗浄水（図１３のＸで示す）の水量が少なくなる。このように図１３のＸで示す汚物３０の背方の洗浄水量が少なくなると、洗浄過程（２）において汚物３０を排出する際に汚物３０の後から流れる洗浄水量が少なくなる。
【０００９】
したがって、汚物が洗浄水により下水管の中を搬送される汚物搬送距離が短くなり、下水管内部で汚物が詰まる原因となるという問題があった。
【００１０】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、少ない洗浄水量で汚物搬送距離を伸ばすことが可能であって、汚物の排出性能がよい水洗便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【００１２】
水洗便器は、洗浄水の旋回流によりボウルのボウル面を洗浄し、前記ボウルの底部に設けられた排水口部から洗浄水を排出する水洗便器であって、封水面より下の前記ボウル面の底部の、前記排水口部の手前の部分の左右方向の一方側を他方側より高くして高底部が形成され、前記排水口部より手前の部分の左右方向の前記他方側に、前記高底部に連続し且つ前記高底部より低く後端部が前記排水口部に連続する窪み部が形成されることを特徴とする。
【００１３】
また、前記ボウルの上部に水供給部を備え、当該水供給部は、前記ボウルの周方向に沿って前記洗浄水を噴出するよう構成され、前記高底部は、前記洗浄水の流れ方向において、前記排水口部の前方に形成されていることが好ましい。
【００１４】
また、前記ボウルの左右方向の前記一方側の上部に、前記ボウル面に前記洗浄水を供給する水供給部が位置することが好ましい。
【００１５】
また、前記封水面より下の前記ボウル面に、前記旋回流が衝突して衝突した前記旋回流の流れを前記排水口部に向けるよう構成された、ガイド手段を備えることが好ましい。
【００１６】
また、前記ガイド手段は、前記ボウル面に形成された突出部から構成されることが好ましい。
【００１７】
また、前記突出部の前記排水口部側の側面が、前記排水口部の内側面と平滑な面で連続することが好ましい。
【００１８】
また、前記ボウルの左右方向の前記他方側の前記ボウル面に前記ガイド手段が位置し、前記ボウルの左右方向の前記一方側の上部に前記ボウル面に前記洗浄水を供給する水供給部が位置することが好ましい。
【００１９】
また、前記排水口部に、上下方向に回動可能なトラップが接続されることが好ましい。
【発明の効果】
【００２０】
本発明の水洗便器は、汚物排出前に旋回流により汚物が移動するのを抑制できて、少ない洗浄水量で汚物搬送距離を伸ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００２１】
【図１】本発明の一実施形態の斜視図である。
【図２】本発明の一実施形態のボウルの平面図である。
【図３】図２のＡ−Ａ線の断面図である。
【図４】図２のＢ−Ｂ線の断面図である。
【図５】図２のＣ−Ｃ線の断面図である。
【図６】図２のＥ−Ｅ線の断面図である。
【図７】図２のＤ−Ｄ線の断面図である。
【図８】図７のＦ−Ｆ線の断面図である。
【図９】図７のＧ−Ｇ線の断面図である。
【図１０】本発明の一実施形態のボウルの一部破断斜視図である。
【図１１】本発明の一実施形態のトラップ筒の回動を示す説明図である。
【図１２】従来例における旋回流の流れを示す平面図である。
【図１３】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００２２】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【００２３】
水洗便器５は図１に示されるように、ボウル１を備えている。ボウル１はボウル面２を有する。ボウル１の底部３の後部には、排水口部４が設けられる。
【００２４】
排水口部４は、図６、図７に示されるように、ボウル１の底部３の後部から下方へ延びる筒状の縦筒部１３と、縦筒部１３の下端から後方へ延びる筒状の横筒部１４とを有する。すなわち排水口部４は、縦筒部１３の下部に横筒部１４が一体に連続した略Ｌ状の筒形状をしており、縦筒部１３の上端開口がボウル１の底部３に上方に向けて開口し、横筒部１４の後端が後方に向けて開口する。
【００２５】
排水口部４の横筒部１４の後端部には、図１１に示されるように、トラップの一端部が接続される。本実施形態では洗浄方式をターントラップ方式としており、トラップは、フレキシブルなトラップ筒１５を有して構成される。
【００２６】
トラップ筒１５は、モータ（図示せず）により図１１の実線で示す姿勢（第１の姿勢）から図１１の二点鎖線で示す姿勢（第２の姿勢）に回動する。また、モータを逆回転させることで、図１１の二点鎖線で示す姿勢から図１１の実線で示す姿勢に回動する。つまり、排水口部４には、上下方向に回動可能なトラップが接続されている。
【００２７】
図１１の実線で示すようにトラップ筒１５の先端開口１５Ａが上方を向く姿勢（第１の姿勢）は、トラップ構造となる姿勢である。図１１の二点鎖線のようにトラップ筒１５の先端開口１５Ａが下方を向く姿勢（第２の姿勢）は、トラップ構造が解除されて洗浄水を排出する姿勢である。
【００２８】
ここで、図１１の実線のように、トラップ筒１５の先端開口１５Ａが上方を向くトラップ構造となる姿勢（第１の姿勢）の場合、ボウル１内に洗浄水が溜められる。この場合、トラップ筒１５の先端開口１５Ａの下端位置によって洗浄水の水位がほぼ決まり、ボウル１内におけるこの水位位置が封水面１１となる。
【００２９】
図２−図５、図１０に示されるように、ボウル１の上部にはボウル面２に旋回流を供給する水供給部１０が設けられる。水供給部１０は、ボウル１の周方向に沿って洗浄水を噴出するよう構成されている。本実施形態では、ボウル１の左右方向のいずれか一方側の上部にボウル面２に旋回流を供給する水供給部１０が設けられる。具体的には、図２、図１０に示されるように、ボウル１の左右方向のいずれか一方（図１０では左側）の上部後端部に水供給部１０が設けられる。この水供給部１０には洗浄水を供給する管路先端のノズル（図示せず）が嵌め込み接続されており、このノズルから洗浄水が供給される。つまり本実施形態では、ボウル１の上端後部における左右方向の一方側（図１０の左側；第１側）に、前方に向かって洗浄水を噴出するよう構成された水供給部１０が設けられる。
【００３０】
ボウル１の上端には、図示を省略しているがリム部が一体に固着され、ボウル１の上端縁部とリム部とで周溝部２０が形成される。リム部は、ボウル１の上端の全周に亘って形成される。リム部は、ボウル１の上端から内方へ突出している。したがって周溝部２０は、側方へ凹んだ溝形状となっている。言い換えれば、ボウル１の上端には、全周に亘って、側方へ凹んだ溝形状の周溝部２０が形成されている。図ではリム部の図示が省略されているので、ボウル１の上端部で構成される周溝部２０の下半分のみが示されている。
【００３１】
また、ボウル１の水供給部１０の前方には、図２、図１０に示されるように、水供給部１０の前方の空間をボウル面２から仕切るように、壁体２１が形成されている。そして、この壁体２１によってボウル面２から仕切られた部分が、誘導水路部２２を構成する。この誘導水路部２２の出口部分が、周溝部２０の始端部となる。
【００３２】
水供給部１０から供給される洗浄水は、誘導水路部２２で前方に向けて誘導されて周溝部２０の始端部から勢い良く流出し、周溝部２０に沿って旋回流となって流れる。
【００３３】
周溝部２０に沿って旋回流となって流れる洗浄水は、周溝部２０の周方向の各部から少しずつボウル面２に旋回流となって流れて、ボウル面２を周方向において万遍なく洗浄する。
【００３４】
本実施形態の水洗便器５では、封水面１１より下のボウル面２の底部３において、排水口部４の手前の部分の左右方向の片側（図１０の左側；第１側）に高底部１６が形成され、また、他の片側（図１０の右側；第２側）に高底部１６よりも低い窪み部１７が形成される。高底部１６は、ボウル面２の底部３の左右方向の一方側（図１０の左側；第１側）を、左右方向の他方側（図１０の右側；第２側）よりも高くして（上方へ面状に突出させて）形成される。
【００３５】
本実施形態では、高底部１６は、図２、図４、図１０に示されるように左右方向において水供給部１０を設けた側に位置する。また、窪み部１７は、図２、図４、図１０に示されるように左右方向において水供給部１０を設けた側と反対側に位置する。窪み部１７は、底部３の左右方向において、排水口部４に対して水供給部１０とは反対側に位置する。
【００３６】
高底部１６は、頂面１６Ａと、壁面２４と、側面２６とを有する。
【００３７】
高底部１６における頂面１６Ａは、底部３における左右方向の一方側（図１０の左側；第１側）から中央側へ向かって、なだらかに下り傾斜している（図３、図４参照）。頂面１６Ａは、底部３の左右方向において中央部付近まで広がっている。このように、頂面１６Ａが窪み部１７へ向かって下り傾斜しているので、頂面１６Ａ上の汚物は、自重によって窪み部１７へと移動する。なお本実施形態では、頂面１６Ａは前後方向には傾斜していない。しかし、後方へ向かって緩やかに下り傾斜していてもよい。
【００３８】
高底部１６における排水口部４の上側開口に隣接する側面（壁面２４）は、図５に示されるように、略起立姿勢をした急な側面となっていて、排水口部４の内面２５を上方にそのまま延長して連続することで、上記壁面２４が形成される。つまり、壁面２４は、ほぼ垂直方向に起立した急な斜面となっている。壁面２４は、高底部１６の側方から後側にかけて形成されている。壁面２４は、排水口部４の内面２５に連続している。
【００３９】
また、高底部１６における窪み部１７に隣接する側面２６は、図４に示されるように、緩やかに傾斜した曲面となっていて窪み部１７に連続している。側面２６は、窪み部１７に向かって頂面１６Ａよりも急角度で下り傾斜している。
【００４０】
本実施形態では、高底部１６は、底部３の左右方向におけるどちらか一方にのみ形成されている。本実施形態では、高底部１６は、左右方向における水供給部１０と同じ側（図１０の左側；第１側）にのみ形成されている。
【００４１】
窪み部１７は、排水口部４の上側開口（縦筒部１３の上端開口）に近づくほど下となるように（つまり、後側ほど下となるように）下り傾斜している。窪み部１７は、ボウル１の前後方向において、頂面１６Ａよりも急角度で、排水口部４へ向かって下り傾斜している。このように、窪み部１７が排水口部４へ向かって下り傾斜しているので、窪み部１７内の汚物は、自重によって排水口部４内へと移動する。また窪み部１７は、排水口部４に連続して形成されている。窪み部１７はＵ字溝状に形成されている。
【００４２】
封水面１１より下の前記ボウル面２には、洗浄水の旋回流が衝突して流れを排水口部４に向けるためのガイド手段６が備えられている。言い換えれば、封水面１１より下の前記ボウル面２には、ガイド手段６が備えられている。そしてガイド手段６は、衝突した洗浄水の旋回流の流れを排水口部４に向けるように構成されている。
【００４３】
本実施形態においては、図１−図４、図７−図１０に示されるように、旋回流が衝突して流れを排水口部４に向けるための突出部７がボウル面２に形成されている。本実施形態では、この突出部７がガイド手段６を構成している。
【００４４】
突出部７は、図２、図１０に示すように、ボウル１の左右方向のいずれか一方で且つ水供給部１０を設けた側とは反対側のボウル面２に突出形成される。
【００４５】
つまり突出部７は、図１−図４、図６、図８−図１０に示されるように、ボウル１の左右方向において、高底部１６が形成された方と反対側に形成される。窪み部１７は、高底部１６と突出部７との間に形成される。つまり、ボウル面２の左右方向における上記他方側（水供給部１０とは反対側；第２側）には、突出部７（ガイド手段６）が形成される。
【００４６】
また、この突出部７は、排水口部４の上側開口の上記他方側（図１０の右側）から上側開口の手前にかけて形成される。突出部７は、ボウル面２の他側（図１０における右側）の側面からボウル１の内方に向けて突出形成されている（図３、図４参照）。
【００４７】
突出部７における排水口部４より手前の部分の前面は、旋回流衝突面２３となっている。つまり、突出部７における前側の面は、旋回流衝突面２３となっている。旋回流衝突面２３とボウル面２との間のコーナ部分は、鈍角となっている。詳しくは、この旋回流衝突面２３は、図９に示すように平面視でボウル面２の突出部７と突出していない部位とのなすコーナ部分が鈍角となり、且つ、このコーナ部分から離れるほど排水口部４側に近づくように傾斜する（添付図面では曲面状に傾斜した例を示す）。
【００４８】
突出部７の排水口部４側の側面８は、排水口部４の内側面９と滑らかに連続している。つまり、突出部７の排水口部４側の側面８は、排水口部４の内側面９と平滑な面で連続している。
【００４９】
上記の構成の水洗便器５は、図１１の実線のようにトラップ筒１５の先端開口１５Ａが上方を向く姿勢（第１の姿勢）において、ボウル１内に洗浄水が溜められる。使用者は、この状態で、大便や小便等の用便を行う。
【００５０】
用便を行った後の洗浄は、下記の（１）〜（３）の過程で行われる。
【００５１】
まず、（１）水供給部１０から洗浄水を供給して旋回流として流して前通水（ボウル面２の水没されていない部分の洗浄）を行う。（２）引き続き洗浄水の供給を継続して旋回流として流し、同時に、先端開口１５Ａが下方を向くようにトラップ筒１５を回動して、汚物及びボウル１内に溜まっていた洗浄水を排出する。（３）その後、洗浄水の供給を継続しながら、先端開口１５Ａが上方を向くようにトラップ筒１５を逆回動させ、ボウル１内に洗浄水を溜める。
【００５２】
ここで、上記洗浄過程（１）の前通水で洗浄水が旋回すると汚物がボウル１内を旋回流により流され、排水口部４内の汚物が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置に移動させられる恐れがある。
【００５３】
このように、排水口部４内の汚物が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置に移動させられると、図１３の従来例のように洗浄過程（２）において汚物を排出する際、汚物の後から流れる洗浄水の水量が少なくなる。
【００５４】
そして、汚物が下水管内を洗浄水により搬送される距離（汚物搬送距離）は、汚物の後から流れる洗浄水の水量に影響されるので、汚物の後から流れる洗浄水の水量が少なくなると、汚物が洗浄水により下水管の中を搬送される汚物搬送距離が短くなる。
【００５５】
しかし、本実施形態は、ボウル面２の底部３の排水口部４の手前の部分の左右方向の片側に高底部１６が形成され、他方の片側に窪み部１７が形成されている。この高底部１６は、左右方向において水供給部１０を設けた側と同じ側に位置する（高底部１６は、ボウル面２の底部３の左右方向の一方側を高くして形成され、水供給部１０はボウル面２の左右方向の前記一方側の上部に形成されている）。すなわち、高底部１６は、洗浄水の流れ方向において、排水口部４の前方に形成されている。したがって、水供給部１０から供給された洗浄水は、ボウル面２を周方向に（図１０における反時計回りに）旋回した後、高底部１６における壁面２４（図９参照）に衝突し、その勢いが弱められる。また、この壁面２４に汚物も衝突し、窪み部１７に汚物が留まりやすくなる。したがって本実施形態は、高底部１６と窪み部１７を形成することにより、上記洗浄過程（１）の前通水で洗浄水が旋回しても、汚物がボウル１内を旋回流により流されて移動するのを抑制することができる。
【００５６】
つまり、排水口部４内の汚物が排水口部４から底部３に押し上げられたり、あるいは、底部３の排水口部４から離れた位置に移動させられたりするのが抑制される。
【００５７】
これにより、洗浄過程（２）において、先端開口１５Ａが下方を向くようにトラップ筒１５を回動すると、まず排水口部４内に溜まっていた汚物が排水口部４内の水といっしょにトラップ筒１５側に流されてトラップ筒１５の先端開口１５Ａから下水管に向け排出される。引き続いてボウル１内に溜まっていた水が汚物の後から排水口部４、トラップ筒１５の順に流れてトラップ筒１５の先端開口１５Ａから下水管に向け排出される。
【００５８】
したがって、下水管を汚物が搬送される際、汚物の後側にある洗浄水量が多くなり、汚物搬送距離を長くすることが可能となる。
【００５９】
また、洗浄水が窪み部１７に集まって排出口部４に流れ込むので、少ない洗浄水量であっても洗浄効果が向上する。また、洗浄水が窪み部１７に一気に集まって排出口部４に流れるので、窪み部１７を形成しない場合に比べて横筒部１４における流速が速くなり、この点でも汚物３０の汚物搬送距離を伸ばすことが可能となる。
【００６０】
また、汚物が排出された後から流れる汚物を含まない洗浄水量が多くなるので、汚物が排出された後の排水口部４、トラップ筒１５の洗浄効果が向上する。
【００６１】
また本実施形態では、高底部１６がボウル面２の底部３の左右方向の一方側（図１０の左側）に形成されている。さらに、ボウル面２の底部３の左右方向の他方側（図１０の右側）に窪み部１７が形成されている。これにより、高底部１６が左右方向の両側に形成されている場合や窪み部１７がない場合に比べて、洗浄過程（３）においてボウル１内に溜められる水量を多くすることができる。従って、次回の洗浄過程（２）において排出される水量が多くなり、汚物搬送距離を長くすることができる。
【００６２】
なお、本実施形態においては、上記洗浄過程において、前述のように、水供給部１０から洗浄水が供給されて旋回流となって、ボウル面２を流れて洗浄する。この場合、洗浄過程（２）において、洗浄水がボウル面２を上から下に周方向に旋回しながら流れ、底部３近くになると、図８の矢印Ｐのように、高底部１６上及び高底部１６に連続するボウル面２の側面下部を後から前に向けて旋回しながら流れる。次に、図８、図９の矢印Ｑのように、突出部７の旋回流衝突面２３に衝突し、流れが排水口部４に向くようにガイドされ、窪み部１７を通って排水口部４内に流れ込む。つまり、突出部７（ガイド手段６）によって、ボウル面２の周方向に沿った流れ（矢印Ｐ）が、排水口部４へと向かう流れに変換される（矢印Ｑ）。
【００６３】
また、旋回流衝突面２３の上部に衝突した洗浄水の一部が突出部７の側面に沿って斜め下方に排水口部４側に向けてガイドされるが、この洗浄水は、突出部７の排水口部４側の側面８が、排水口部４の内側面９と滑らかに連続しているのでスムーズに排出口部４に流れ込む。
【００６４】
これらの理由により、本実施形態は、洗浄水が旋回流のまま排水口部４に流れる場合に排水口部４付近で発生する乱流を抑制し、洗浄水を排水口部４にスムーズに流すことが可能となる。
【００６５】
つまり本実施形態は、封水面１１より下のボウル面２に、旋回流が衝突して衝突した旋回流の流れを排水口部４に向けるよう構成されたガイド手段６（突出部７）を備えるので、旋回流を排水口部４にスムーズに流し、排水口部４付近で旋回流による乱流が起きるのを抑制できる。
【００６６】
このため例えば下痢状の便を排出する場合、従来のように旋回流の向きを排水口部４側に向けるようにガイドすることなく排水すると、下痢状の便が旋回流に乗ってボウル１内を漂うおそれがあるが、本実施形態は、下痢状の便であってもスムーズに排出可能となる。したがって、旋回流による少ない洗浄水量で汚物の排出性能を良くすることが可能となる。
【００６７】
なお、添付図面に示す実施形態では、ボウル面２には、洗浄水の旋回流が衝突して流れを排水口部４に向けるためのガイド手段６を設けた例を示したが、ガイド手段６を設けなくてもよい。
【００６８】
また、上記の実施形態においては、ボウル面２に突出部７を形成してガイド手段６を構成した例を示したが、ガイド手段６としては、旋回流が衝突して衝突した旋回流の流れを排水口部４に向けるよう構成されたものであればよく、突出部７には限定されない。例えば、ボウル面２にガイド溝を形成し、このガイド溝に、旋回流が衝突して流れを排水口部４に向けるための衝突面を設けてもよい。もちろん、ガイド手段６としては他の形態であってもよい。また、上記の実施形態においては、突出部７（ガイド手段６）を封水面１１より下のボウル面２に形成することにより、上記洗浄過程（１）で洗浄水が旋回するときに、旋回を妨げないようにしているが、封水面より上に突出するように設けてもよい。
【００６９】
また、上記の実施形態においては、ボウル面２の底部３の左右方向の一方側（図１０の左側）に高底部１６を形成し、高底部１６を形成した側と同じ側に水供給部１０を設けた例を示したが、本発明はこの構成には限られない。例えば、ボウル面２の底部３の左右方向の一方側（図１０の左側）に高底部１６を形成し、ボウル１の左右方向の他方側（図１０の右側）の上部に、側方へ向かって（図１０における左向きに）洗浄水を噴出する水供給部１０を設けてもよい。つまり、ボウル１の上部に、ボウル１の周方向に沿って洗浄水を噴出するよう構成された水供給部１０を設け、高底部１６を、洗浄水の流れ方向において排水口部４の前方に形成すればよい。
【符号の説明】
【００７０】
１ ボウル
２ ボウル面
３ 底部
４ 排水口部
５ 水洗便器
１６ 高底部
１７ 窪み部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
洗浄水の旋回流によりボウルのボウル面を洗浄し、ボウルの底部に設けられた排水口部から洗浄水を排出する水洗便器であって、
封水面より下の前記ボウル面の底部の、前記排水口部の手前の部分の左右方向の一方側を他方側より高くして高底部が形成され、前記排水口部より手前の部分の左右方向の前記他方側に、前記高底部に連続し且つ前記高底部より低く後端部が前記排水口部に連続する窪み部が形成されることを特徴とする水洗便器。
【請求項２】
前記ボウルの左右方向の前記一方側の上部に、前記ボウル面に前記洗浄水を供給する水供給部が位置することを特徴とする請求項１に記載の水洗便器。
【請求項３】
前記ボウルの上部に水供給部を備え、当該水供給部は、前記ボウルの周方向に沿って前記洗浄水を噴出するよう構成され、
前記高底部は、前記洗浄水の流れ方向において、前記排水口部の前方に形成されていることを特徴とする請求項１又は請求項２記載の水洗便器。
【請求項４】
前記封水面より下の前記ボウル面に、前記旋回流が衝突して衝突した前記旋回流の流れを前記排水口部に向けるよう構成された、ガイド手段を備えること特徴とする請求項１乃至請求項３に記載の水洗便器。
【請求項５】
前記ガイド手段は、前記ボウル面に形成された突出部から構成されることを特徴とする請求項４記載の水洗便器。
【請求項６】
前記突出部の前記排水口部側の側面が、前記排水口部の内側面と平滑な面で連続することを特徴とする請求項５記載の水洗便器。
【請求項７】
前記ボウルの左右方向の前記他方側の前記ボウル面に前記ガイド手段が位置し、
前記ボウルの左右方向の前記一方側の上部に前記ボウル面に前記洗浄水を供給する水供給部が位置することを特徴とする請求項４乃至請求項６に記載の水洗便器。
【請求項８】
前記排水口部に、上下方向に回動可能なトラップが接続されることを特徴とする請求項１乃至請求項７記載の水洗便器。
【請求項１】
洗浄水の旋回流によりボウルのボウル面を洗浄し、ボウルの底部に設けられた排水口部から洗浄水を排出する水洗便器であって、
封水面より下の前記ボウル面の底部の、前記排水口部の手前の部分の左右方向の一方側を他方側より高くして高底部が形成され、前記排水口部より手前の部分の左右方向の前記他方側に、前記高底部に連続し且つ前記高底部より低く後端部が前記排水口部に連続する窪み部が形成されることを特徴とする水洗便器。
【請求項２】
前記ボウルの左右方向の前記一方側の上部に、前記ボウル面に前記洗浄水を供給する水供給部が位置することを特徴とする請求項１に記載の水洗便器。
【請求項３】
前記ボウルの上部に水供給部を備え、当該水供給部は、前記ボウルの周方向に沿って前記洗浄水を噴出するよう構成され、
前記高底部は、前記洗浄水の流れ方向において、前記排水口部の前方に形成されていることを特徴とする請求項１又は請求項２記載の水洗便器。
【請求項４】
前記封水面より下の前記ボウル面に、前記旋回流が衝突して衝突した前記旋回流の流れを前記排水口部に向けるよう構成された、ガイド手段を備えること特徴とする請求項１乃至請求項３に記載の水洗便器。
【請求項５】
前記ガイド手段は、前記ボウル面に形成された突出部から構成されることを特徴とする請求項４記載の水洗便器。
【請求項６】
前記突出部の前記排水口部側の側面が、前記排水口部の内側面と平滑な面で連続することを特徴とする請求項５記載の水洗便器。
【請求項７】
前記ボウルの左右方向の前記他方側の前記ボウル面に前記ガイド手段が位置し、
前記ボウルの左右方向の前記一方側の上部に前記ボウル面に前記洗浄水を供給する水供給部が位置することを特徴とする請求項４乃至請求項６に記載の水洗便器。
【請求項８】
前記排水口部に、上下方向に回動可能なトラップが接続されることを特徴とする請求項１乃至請求項７記載の水洗便器。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【公開番号】特開２０１３−７９５６６（Ｐ２０１３−７９５６６Ａ）
【公開日】平成２５年５月２日（２０１３．５．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１２−１７１３５６（Ｐ２０１２−１７１３５６）
【出願日】平成２４年８月１日（２０１２．８．１）
【出願人】（０００００５８２１）パナソニック株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年５月２日（２０１３．５．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２４年８月１日（２０１２．８．１）
【出願人】（０００００５８２１）パナソニック株式会社 (73,050)
【Ｆターム（参考）】
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