説明

水洗可能なカテーテル及びそのようなカテーテルを製作する方法

尿道カテーテルなどの短期使用のための水洗可能な医療デバイスが、そしてまたそのようなカテーテルを製作する方法が開示される。本医療デバイスは、少なくとも分解性材料で作られる細長いシャフトを含み、その分解性は、材料が少なくとも6時間室温で乱流水中に維持される場合本質的に完全に溶解することになるが、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間水中でその構造的完全性を保持する程度である。これにより本医療デバイスは目的の短期間使用に対して用いることができ、それから使用後に通常のトイレットで洗い流すことができる。分解性材料は好ましくは、少なくとも1つの単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖を含む。好ましい実施態様では、分解性材料は主として水、少なくとも1つの糖及びデンプン並びにゼラチンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道カテーテルなどの、短期使用のための水洗可能な医療デバイス、並びに医療デバイスを製作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体通路に挿入するための細長いシャフトを有し、そして間欠的カテーテル法、ステント等などの、間欠的又は短期使用を目的とする多くのタイプの医療デバイスが、公知である。そのような医療デバイスでは、シャフト、又は少なくともシャフトのコア基体は、一般的にポリエチレン、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルなどの耐久性熱可塑性プラスチック材料で作られている。しかしながら、該材料が極めて耐久性で、医療用品製造業者の使用目的に適しているとしても、それらの廃棄は問題が多く、そして環境に有害とさえなり得る。例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの熱可塑性プラスチックは非生分解性であり、環境中に長年に亘って存続することができる。更に、そのような材料は、しばしば生物学的物質により汚染され、これらの材料のリサイクルを困難にする。
【0003】
更に、尿道カテーテルなどの医療デバイスは、病院の外で、そして家庭環境の外でも使用者によってしばしば使用される。例えば、カテーテル法は一般的に公衆トイレで行われ得る。しかしながら、そのような状況では、使用後のカテーテルの廃棄のための適切なごみ入れを見つけるのはしばしば困難といってよく、その廃棄は非衛生的処理、漏出等のリスクをも伴う。更に、ごみ入れへのカテーテルの廃棄は、使用者にとって不便かつ不快で厄介なものともなる。
【0004】
分解性材料で類似のタイプの医療デバイスを製作する試みがなされている。例えば、特許文献1は、医療器具、例えばカニューレ、カテーテル及びグローブにおいて用いる、加水分解で分解可能な高分子の使用を開示している。しかしながら、本材料では、分解に非常に長い時間が、即ち湿潤液体との接触後6か月以内の時間がかかり、これが製品を水洗等にとって不適にする。類似品が特許文献2に開示されている。従って、これら公知の製品はその上述の問題を十分に解決していない。
【0005】
製品をW.C.で洗い流すときの問題は、それが下水道システムですばやく且つ容易に分解する必要があり、さもなければそれは汚染及び給排水管問題を引き起こす可能性がある。勿論、使用者は、停止及び目詰まりを引き起こすことなしにデバイスが洗い流されて配管システムを通ると確信しているに違いない。
【0006】
更に、分解性で、及び更に水洗可能な造瘻バッグ、尿バッグなど人体汚物用のバッグを作る試みがなされている。例えば、そのようなバッグは、特許文献3、4及び5に開示されている。しかしながら、それらに開示された材料は、カテーテルなどの細長いシャフトを有する医療デバイスとしての使用には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/071813
【特許文献2】EP0628586
【特許文献3】EP0388924
【特許文献4】GB2083762
【特許文献5】EP1722730
【0008】
従って、安価な出発材料から作られ、そしてそのような機器の効率的な商業化を可能にするために、従来の製作方法によって製作することができる、カテーテルなどの細長いシャフトを有する水洗可能な使い捨て医療デバイスのニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、先行技術の上述の関連問題を軽減する、水洗可能な医療デバイス、及びそのような医療デバイスを製作する方法を提供することである。
【0010】
この目的は添付の特許請求の範囲に記載の医療デバイス及び方法で実現される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、水洗可能で、そして好ましくは生分解性でもある、短期使用のための医療デバイスが提供され、該医療デバイスは身体通路内に挿入するための細長いシャフトを含み、ここで少なくとも細長いシャフトは分解性材料で作られており、その分解性は材料が少なくとも6時間室温で乱流水中に維持された場合本質的に完全に溶解することになるが、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間水中でその構造的完全性を保持する。
【0012】
用語「水洗可能」は、本発明との関連において、分解性が、使い捨て医療デバイスが目詰まりのリスクなしに普通のトイレに洗い流されるのに十分であることを示すのに使用される。
【0013】
用語「乱流水」は、例えば攪拌により、そして例えば1000rpmの速度で定常的に流れている水を意味する。ここでは、乱流水はトイレを水洗するシミュレーション及び大きな送水管における流れのシミュレーションとして使用される。
【0014】
用語「短期使用」は、時間が限られた、そして特に15分未満、そして好ましくは10分未満、そして最も好ましくは5分未満の時間に限られた使用を意味する。
【0015】
用語「生分解性」は、本特願との関連において、微生物により炭酸ガスと水などの単純な安定化合物に分解することができる材料を示すために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
〔発明の効果〕
本発明は、尿道カテーテルなどの身体通路内へ挿入のための医療デバイス用の基材として、高い加水分解で分解可能な材料を用いることが可能である、本発明者等による驚くべき研究結果に基づいている。材料の高い分解性は、医療デバイスを使用後に普通のWCへ洗い流すことを可能にし、使用後にデバイスを処理する方法を、使用者にとって非常に効率的で便利なものとする。高い分解性は、使い捨て医療デバイスを目詰まりのリスクなしにトイレに洗い流すことができることを確実にする。同時に、高い分解性にもかかわらず、医療デバイスが、その目的とする短期使用に対する十分な構造的完全性を、なお保持することができることが見出されている。これにより、以下に挙げる:十分に剛性、強固、可撓性及び透明であること、そして例えば普通の水道水中で湿潤化したときに高い分解性を保証すること、のうちの1つ又は幾つかなど、関心のある特定の適用目的にかなう物理的及び機械的性質を有する材料を選択することが可能となる。
【0017】
更に、本発明の生分解性医療デバイスは、環境にやさしくかつ無害の材料によって生産され得る。更に、生産はいずれの有害溶媒等も使用することなく製作することができる。また、製品は、例えば水を他のタイプの溶媒に代えて用いることができることから、いずれの溶媒残留物等も本質的に含まれないで製作することができる。
【0018】
なお更に、本発明の生分解性医療デバイスは、例えば押出しにより、非常に高速の生産速度に対して高度に適している。
【0019】
この新しいカテーテルは、単にトイレにカテーテルを洗い流すことにより、使用済みカテーテルの非常に便利な処理を提供する。更に、カテーテルを費用効率の高い材料及び費用効率の高い生産で生産することができる。使用される材料も環境にやさしく、そして化石から生成するのに数百年かかる原油から生産される合成高分子と比べて、毎年容易に生産することができる糖、小麦粉などの原材料でショートライフ再生産サイクルを有する。
【0020】
好ましいそのような材料構成は安価で大量に入手可能であり、現行の非分解性デバイスに対抗できるコストで医療デバイスの生産を可能にすることが、本発明者等によって見出されている。好ましい実施態様では、分解性材料は、少なくとも1つの、ブドウ糖及び果糖などの単糖、蔗糖などの二糖、及びデンプン及びセルロースなどのオリゴ糖又は多糖を含む。更に、分解性材料は、少なくとも40質量%の単糖、二糖及び/又は多糖を含むことが好ましい。加えて又はあるいは、分解性材料は、主として水及び少なくとも1つの糖及びデンプンを含んでよく、ここで分解性材料は好ましくは90質量%の該成分を含む。
【0021】
また分解性材料は医療デバイスに適切な能力(capacity)及び特性を与える添加剤を含むことが好ましい。
【0022】
例えば、稠度と弾性を適合させ得る添加剤を使用してよい。そのような添加剤は好ましくはゼラチンなどのコラーゲンベースの材料である。同じ又は類似作用のために使用してよい他の添加剤は、アラビアガム、グリセロール、甘草、サルミアク(salmiak)、ソルビトールなどの糖アルコール、である。これらの添加剤は組み合わせて、又は一つずつ使用してもよい。ソルビトール及びサルミアク(塩化アンモニウム)などの材料は、水及び水分を吸収しそして保持する大きな能力に因り、弾性を増加する。分解性材料は、好ましくはゼラチンなどのこのタイプの添加剤を、0.5〜5質量%、最も好ましくは1〜3質量%の範囲で含む。
【0023】
脱水に対する抵抗を改善する添加剤はまた、分解性材料に好ましく組み込まれる。そのような添加剤は、例えば塩化ナトリウムなどの種々の塩であってよい。塩化アンモニウムなどの他の塩も、塩化ナトリウムに加えて又は代わりに使用してよい。
【0024】
加工性を改善する添加剤が、好ましく使用されてよい。加工性を改善するために、例えば型又は押出成形機への粘着を避けるために、例えば油が添加されてよい。使用されてよいそのような油は、例えばオリーブオイル、鉱油等である。
【0025】
製品の表面仕上げを改善するための添加剤も好ましく使用されてよい。この点で、密蝋、カルナウバ蝋などの種々の添加剤が使用されてよい。
【0026】
酸含有量を調節し、製品の酸性規制(acidic regulation)を得るための添加剤としては、種々の酸が好ましく使われてよい。単独又は組み合わせで用いられてもよい、そのような添加剤の例は、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、フマル酸等である。その酸性度は、そのような酸性度が細菌増殖を抑制するのに有効なことが証明され、そして細菌活性を阻止するので、好ましくはpH7以下に、好ましくは4〜7のpH範囲にコントロールされる。
【0027】
着色添加剤も、最終製品のいかなる所望の色を得るために使用してよい。そのような着色添加剤は、例えば1つ又は幾つかのクルクミン(黄橙色)、カルミン(赤色)、クロロ
フィル(緑色)、カラメル色(黒褐色)、石炭(黒色)、カロチン(黄橙色);ルエチン(luetin)(黄色);赤カブ赤(赤色)、アントシアニン(赤青色)、炭酸カルシウム(白色)、二酸化チタン(白色)等であってよい。
【0028】
保存性及び/又は滅菌性を備えた添加剤も、有利に使用してよい。そのような保存剤は、長期間の製品保存能力を改善すると考えられ、それが汚染及び疾病のリスクを減少させることから、医療デバイスの滅菌性及び抗菌性は使用に当って極めて有利である。そのような添加剤は、例えば1つ又は幾つかの安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、安息香酸、二酸化炭素、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、フマル酸等であってよい。
【0029】
上述の代替として又は加えて、小麦粉、塩化ナトリウム、油、デンプン又は他の多糖及び安息香酸ナトリウムなどの他の考えられる成分が可能である。着色顔料などの染料も、白色又は透明が主要な代替と考えられるとしても、いかなる所望の色を得るために使用してよい。カテーテルの表面上に高湿度を維持し、そしてポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)などの、カテーテル法前の準備時間中の取り扱い時に低摩擦を維持するための添加剤を使用してもよい。
【0030】
分解性材料はまた好ましくは、湿潤化したときに低摩擦表面を呈する。これによって、製品の低摩擦特性は、いずれか追加の表面コーティング等の必要なく自動的に達成され、医療デバイスを製作するのに非常に費用効果を良くする。そのような低摩擦表面は、それがカテーテルの非常に快適なかつ容易な挿入と後戻しを可能にすることから、例えば尿道カテーテルにとって高度に有利である。しかしながら、たとえそのような材料が好ましいとしても、湿潤時に高摩擦を有する分解性材料を使用し、追加の低摩擦コーティングにより、又は使用前に低摩擦ゲル等の塗布により低摩擦特性を供することも可能である。カテーテルのそのような追加表面層は、FEP、PTFEなどの低摩擦材料又はポリビニルピロリドン(PVP)などの親水性材料であってよい。
【0031】
好ましくは、材料の分解性は、少なくとも4時間、好ましくは少なくとも3時間室温で水中に維持した場合材料が本質的に完全に溶解する程度である。
【0032】
好ましくは細長いシャフトは、細長いシャフトの少なくとも主要部分を通して伸びる(extend)内部ルーメンを備えている。これは、例えば尿道カテーテルのために高度に有利な構造形態(structural configuration)である。好ましくは、医療デバイスは、カテーテルであり、そして最も好ましくは間欠的使用のための尿道カテーテルである。
【0033】
医療デバイスは、異なる材料で作られたコネクタ等などの追加パーツを含んでよい。しかしながら、好ましくは医療デバイスは、全体が分解性材料から作られている。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、医療デバイスを製作する方法が提供され、ここで:
その分解性が、攪拌下に少なくとも6時間室温で水中に維持した場合、材料が本質的に完全に溶解しているようになる、分解性材料を提供し;そして
分解性材料を該医療デバイスの細長いシャフトに成形する、
工程で特徴付けられる。
【0035】
これによって、本発明の第1の態様に関して、上述と類似の利点が達成される。
【0036】
医療デバイスを成形する工程は、好ましくは少なくとも1つの射出成形、押し出し及び溶融紡糸を含む。
【0037】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施態様を参照して明白にかつ明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の詳細な説明では、本発明の好ましい実施態様が記載される。しかしながら、異なる実施態様の特徴は実施態様間で交換可能であり、他に特に明示されない限り様々なやり方で組み合わせてよい、と理解されるべきである。以下の説明の中で、本発明のより完全な理解をもたらすために多数の具体的な詳細が記載されたとしても、本発明はこれらの具体的な詳細なしに実施してよいことは当業者に明らかである。他の例では、周知の構造又は機能は、本発明を不明瞭にしないように詳細には記載されない。
【0039】
本発明は、以下に尿道カテーテルの実施態様で論じられる。しかしながら、他のタイプのカテーテル、ステント等の、身体通路内に挿入可能な他のタイプの医療デバイスに対して、同じ技術的な指導(teaching)が使用されてよいことも当然である。
【0040】
尿道カテーテルは通常その中にルーメンを備えた細長いシャフトを含む。細長いシャフトの挿入端には排出口が備えられ、そして非挿入端には排出口が備えられて、該ルーメンによって排出口と流体連結している。非挿入端は、加えて、フレア(flared)後部端、別個のコネクタ等を含んでよい。
【0041】
カテーテルは、近位挿入セクションを更なるカテーテルセクション又は採尿バッグに連結するための連結手段を含んでよい。コネクタ部材は細長いシャフト、即ち近位挿入セクションと同じ材料から作られてよく、それにより近位挿入セクションを成形する工程で、近位挿入セクション及びコネクタ部材は本質的に同時に成形されてよい。あるいは、コネクタ部材は近位挿入セクションの材料と異なる材料から作られてよく、それによりコネクタ部材及び近位挿入セクションは異なる工程段階で、例えば多成分射出成形工程において成形される。
【0042】
少なくとも細長いシャフト、及び好ましくは医療デバイス全体は、分解性材料で作られ、その分解性は、材料が攪拌下少なくとも6時間、そして好ましくは尚3時間室温で水中に維持した場合本質的に完全に溶解しているが、その構造的完全性を少なくとも10分間保持する程度である。
【0043】
分解性材料は、好ましくは主として糖及び/又はデンプンで作られ、好ましくは少なくとも1つの単糖、二糖及び多糖を含む。分解性材料は、更に少なくとも40質量%の単糖、二糖及び多糖を含むことが好ましい。固化前に、カテーテル材料の内容物は、主として水及び少なくとも1つの糖及びデンプンを含み、ここで分解性材料は好ましくは、少なくとも90質量%の該成分を含む。また分解性材料は、ゼラチン、及び好ましくは0.5〜5質量%のゼラチン、そして最も好ましくは1〜3質量%のゼラチンを含むことが好ましい。
【0044】
カテーテルは、種々の長さ及び寸法に作ってよい。一般的に、雌カテーテル用の細長いいシャフトは50〜200mmの範囲で、150mmサイズの長さなどであり、そして雄カテーテル用には好ましくは180〜450mmの範囲の長さで、400mmのサイズなどの範囲である。
【0045】
分解性カテーテルは、例えば押出成形、射出成形、又は2つの組み合わせによって生産してよい。射出は射出成形のための通常の機械で行なわれてよい。カテーテルのサイズ及び長さに応じて、射出圧力は500〜1500バールの範囲であってよい。型は、カテーテル本体を通して体液が排出することができるサイズの内部導管を備えた長方形(oblong)の中空、管状部材として、本体部材を画成するように成形してよい。代わりに、本体部材は、核(kernel)からその全長に沿って放射状に広がる1つ又はそれ以上の羽根(vanes)を有する長方形の固体の核の形態で提供することができる。このように羽根は、核と身体排出通路、例えば尿道間で尿を排出するための複数の排出通路を画成する。
【0046】
追加の表面コーティングを行う場合に、型は、分解性材料を型へ射出する前に親水性材料によりコーティングしてよい。代わりに、1つ又はそれ以上のタイプの材料の型ヘの一連の射出が、行なわれる。
【0047】
カテーテルを生産するために、液体材料が先ず型ヘと射出され、続いてそこで固化する。
【実施例】
【0048】
本発明の代表的実施態様に記載の分解性カテーテルは以下のように作製された。
【0049】
水溶液は、233gの水に溶解した200gの糖で作製した。より具体的には、代表的実施態様は、液状グルコースなどの単糖、及び蔗糖などの二糖の、約等量の糖を用いた。本実施例では、等量のシロップ及び家庭用糖の組み合わせを使用した。水溶液を高温、一般的に約110℃で加熱した。加熱後少量の水(5g)に溶解した約11gのゼラチンを水溶液に加え、そしてこの水溶液を更に攪拌しながら短時間、一般的に10〜15秒間昇温加熱した。
【0050】
水溶液は続いて型中に挿入し、冷却するようにし、それにより材料を固化した。次いでカテーテルを32℃で2時間乾燥した。
【0051】
上記のように作製した多数のカテーテルが、以下に述べるようにその後の検査のために製造された。作製カテーテルは5〜30cmの範囲の長さ、及び1.9〜7.4gの範囲の重量を有した。
【0052】
本実施例で作られた最終カテーテルチューブの材料組成は以下のようであった:
【表1】

【0053】
とりわけ、乾燥し過ぎカテーテルは壊れる傾向を有する可能性があることから、どちらかといえば湿潤カテーテルは乾燥し過ぎカテーテルより好ましい。更に、乾燥し過ぎカテーテルは、使用前に湿潤化する必要がある。33〜41質量%の含水量を有するカテーテルは軟らかく、使用前に、さしたる追加の湿潤化の必要はない。
【0054】
実験1−滅菌
上述タイプの分解性カテーテルは、いろいろな方法で滅菌してよい。例えば、分解性カ
テーテルは、以下で論じられるように電子線照射により滅菌してもよい。
【0055】
前述のように作製した分解性カテーテルは、密閉パッケージに配置し、40kGyの照射線量の電子線照射にかけられた。照射線量は適正な滅菌を確保するのに十分である。
【0056】
滅菌カテーテルはいずれも、照射による顕著な分解を受けず、そして照射は、重量及び長さにほんのわずかな差を誘発しただけであった。具体的には、照射カテーテルは、2%未満の平均重量損失を有し、平均照射は、0.3%未満の長さ変動を誘発した。このように、重量及び長さの照射誘発変動はごくわずかであった。
【0057】
従って、分解性カテーテルは、少なくとも電子線照射によって滅菌可能である。
【0058】
実験2−カテーテルの溶解
水中での分解性カテーテルの溶解能を試験するために、3〜4cmの無菌カテーテルサンプルを、通常の水道水と一緒に容器に入れた。水は11℃の水温であった。WCでの通常の水洗は約6Lの水を含み、試験サンプル用の水の量は、カテーテルの全長に比例して範囲を定めた。従って、サンプルは、350〜550mlの水に配置された。乱流をシミュレーションする、好ましくは1000rpmで、攪拌しながら水中に保持して、サンプルを観察した結果、1時間後にすべての試験サンプルでほんの小さな非溶解部分が残り、そして2〜3時間後には試験サンプルは水に完全に溶解したものと結論された。
【0059】
それ故、分解性カテーテルは水に溶解性であること、そして室温で2〜3時 間水中に維持すれば本質的に完全に溶解すると結論してよい。
【0060】
実験3−機械的安定性
滅菌及び初期湿潤化後の分解性カテーテルの完全性及び機械的安定性も試験した。これは尿道モデルにおいてカテーテルを導入及び後戻しさせることによって行った。
【0061】
尿道モデルは、木製背景に配置され上方に面して開口部を備えた、男性尿道に対応する内のり寸法及び長さの、透明なPVCチューブを含む。試験したカテーテルはチューブの第1の開口部に挿入され、そしてチューブを通して押され、そして膀胱におけるカテーテル挿入端の到達をシミュレーションする、チューブの第2の開口部を通して外に押し出された。
【0062】
この試験では、無菌カテーテルは、先ず合成尿中で30秒間湿潤化された。更に、人工尿道の尿道は合成尿でプレ充填された。初期湿潤化後、カテーテルは、「膀胱」まで、尿道モデルの「尿道」に導入され、そして約1分以内に再び後戻しされた。すべてのカテーテルは、カテーテルへ顕著な損傷なしに、尿道モデルに適切に導入され、そして再び後戻しすることが可能であった。
【0063】
従って、分解性カテーテルは、尿道カテーテルとして機能するのに必要な機械的性質を有し、そして分解性カテーテルは、間欠的カテーテル法のためなどの、それらの使用目的のために湿潤化後十分な時間、それらの構造的完全性を維持すると結論してよい。
【0064】
実験4−低摩擦特性
上述の分解性カテーテルは、湿潤化時に低摩擦面も示す。従来、尿道カテーテルは、初期湿潤後のカテーテルに低摩擦特性を与えるために、しばしば親水性コーティングのコーティングが与えられる。しかしながら、上述の糖ベースの材料は、驚くべきことに、非常に低表面摩擦を示し、いずれの追加の低摩擦コーティングをも不要にすることが見出された。
【0065】
上述の分解性カテーテルのサンプルを30秒間湿潤化し、続いて視診及び手検査にかけた。対照用に、市販のAstra Tech製LoFric(登録商標)も30秒間湿潤化した。本検査で、分解性カテーテルの表面は、非常に平滑で滑らかに感じられることが見出された。更に、いずれのコーティングもない分解性カテーテルは、LoFric(登録商標)カテーテルのように、本質的に、表面上が同等に低い摩擦を示した。
【0066】
更に、成型によって製作されたカテーテルを同じ検査にかけて、本質的に同じポジティブな結果であった。
【0067】
カテーテルの作製のための具体的実施例は、下記で詳細に論じられる。また、他の実施例が実行可能であり、そのうちの幾つかは更に詳しく論じられよう。これらのすべての実施例は、実験的試験のために使用される具体的実施例に関連した、以下で論じられるものと同じ性質を有することが見出された。
【0068】
追加実施例1
カテーテルの作製のための1つの代表的な材料バッチは、以下のように作製された:25kgの黄色シロップ(47.7wt−%);12kgの小麦粉(22.9wt−%);12Lの水(22.9wt−%);1dlの塩化ナトリウム(NaCl)(0.4wt−%)、710gのゼラチン(1.4wt−%)及びゼラチンを溶解するための2.5Lの水(4.8wt−%)。
【0069】
本実施態様では、シロップ、小麦粉及び水を、均一混合物が得られるまで加熱せずに攪拌により混合した。混合物を攪拌中に90℃に加熱した。NaClを加えて混合物を1時間加熱した。混合物が70℃に冷却したときに、ゼラチン溶液(710gゼラチン+2500g水)を加え、続いて均一混合物が得られるまで更なる攪拌を行った。混合物を鉱油で潤滑化したバケット中に注ぎ入れた。混合物を一夜放置し、室温まで冷却した。
【0070】
この混合物は押出成形に好適であり、温度帯のない「コールドプレス」スクリュー押出成形機に添加され、そしてチューブが押し出された。
【0071】
40℃で24時間乾燥後のチューブの代表的な寸法は、内径3.46+/−0.42mm、外径5.66+/−0.27mm及び1.26+/−0.21mmの肉厚であった。
【0072】
追加実施例2
カテーテル作製のための、及び押出成形に好適な、代わりの代表的材料バッチは、以下のように作製された:5kgの黄色シロップ(9.4wt−%);18kgの小麦粉(33.8wt−%);10kgの家庭用白糖(18.8wt−%);20Lの水(37.6wt−%);及び216.5g(1dl)の塩化ナトリウム(NaCl)(0.41wt−%)。
【0073】
シロップ、小麦粉及び水を、均一混合物が得られるまで加熱せずに攪拌により混合した。混合物を攪拌中に90℃に加熱した。NaClを加えて混合物を1時間加熱した。混合物を鉱油で潤滑化したバケット中に注ぎ入れた。混合物を一夜放置し、室温まで冷却した。
【0074】
この混合物は押出成形に好適であり、温度帯のない「コールドプレス」スクリュー押出成形機に添加され、そしてチューブが押し出された。
【0075】
40℃で24時間乾燥後のチューブの代表的な寸法は、内径3.64+/−0.22mm、外径5.91+/−0.25mm及び1.30+/−0.17mmの肉厚であった。
【0076】
追加実施例3
押出成形に好適でもあるカテーテル作製用の1つの他の代表的材料バッチは、追加実施例1のように上述の混合物に類似しているが、少し異なる割合である。
【0077】
この実施例は以下のように作製された:25kgの黄色シロップ(53.4wt−%);12kgの小麦粉(25.6wt−%);8Lの水(17.1wt−%);216.5gの塩化ナトリウム(NaCl)(0.5wt−%)、600gのゼラチン(1.3wt−%)及びゼラチン(2.1wt−%)を溶解する1Lの水。
【0078】
シロップ、小麦粉及び水を、均一混合物が得られるまで加熱せずに攪拌により混合した。混合物を攪拌中に90℃に加熱した。NaClを加えて混合物を1時間加熱した。ゼラチン溶液(600gのゼラチン+1000gの水)を、混合物が70℃に冷却したときに加え、続いて均一混合物が得られるまで更なる攪拌を行った。混合物を鉱油で潤滑化したバケット中に注ぎ入れた。混合物を一夜放置し、室温まで冷却した。
【0079】
この混合物は押出成形にも好適であり、温度帯のない「コールドプレス」スクリュー押出成形機に添加され、そしてチューブが押し出された。
【0080】
この材料は照射中に、5.4質量%の限定重量損失、及び1.5%の限定長さ損失を示した。チューブは照射前に40cmの平均長さを有し、そして28gの平均重量を有した。
【0081】
追加実施例4
押出成形にも好適なカテーテル作製用の1つの他の代表的材料バッチは、上述の混合物に類似しているが、ここでゼラチンは塩化アンモニウム(サルミアク)と置き換えられている。
【0082】
この実施例は以下のように作製された:60.4wt−%の黄色シロップ;18.2wt−%の小麦粉;17.7wt−%の水;0.5wt−%の塩化ナトリウム(NaCl);及び3.2wt−%の塩化ナトリウム。
【0083】
この材料組成を備えたカテーテルは、既述の実施例との関連で論じられたのと類似の方法で作製され、類似の性質を示した。
【0084】
更なる実施例として、塩化アンモニウムはソルビトールなどの糖アルコールによって交換されてよい。
【0085】
上述の混合物の変更可能性の議論
小麦粉は仕上がって(completed)いてもよく、そして又は例えばトウモロコシの粉と置き換えられてよい。
【0086】
稠度と弾性を適合させるために加えられてよい添加剤は、例えばゼラチンなどのコラーゲンベースの材料である。同じ又は類似の効果で使用されてよい他の添加剤は、アラビアゴム、グリセロール、甘草、サルミアク、ソルビトールなどの糖アルコール等である。これらの添加剤は組み合わせて、又は1つずつ使用してよい。ソルビトール及びサルミアク(塩化アンモニウム)などの材料は水及び水分の大きな吸着及び保持能力の結果として弾性を増加させる。
【0087】
脱水に対する抵抗性を改善する添加剤は、例えば塩化ナトリウムなど種々の塩である。塩化ナトリウムに加えて又は代えて塩化アンモニウムなどの他の塩も使用してよい。
【0088】
加工性を改善し、例えば型又は押出成形機への粘着回避のために油が使用されてよい。使用してよい油は例えばオリーブオイル、鉱油等である。
【0089】
製品の表面仕上げを改善するために、蜜蝋、カルナウバ蝋等などの種々の添加剤を使用してよい。
【0090】
製品の酸分を規制し及び酸性規制を得るために、1つ又は幾つかの乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、フマル酸等などの、種々の酸を単独又は組み合わせて使用してよい。酸性度は、pH7以下に、そして好ましくは4〜7のpH範囲に好ましくコントロールされるが、これはそのような酸性度が細菌増殖を防止しそしてバクテリア活性を阻害するのに有効なことが証明されているからである。
【0091】
着色添加物は、いかなる所望の最終製品の色を得るために使用してよい。そのような着色添加物は、例えば1つ又は幾つかのクルクミン(黄橙色)、カルミン(赤色)、クロロフィル(緑色)、カラメル色(黒褐色)、石炭(黒色)、カロチン(黄橙色);ルエチン(黄色)、赤カブ赤(赤色)、アントシアニン(赤青色)、炭酸カルシウム(白色)、二酸化チタン(白色)等であってよい。
【0092】
保存剤も、製品を長期間保存する能力を改善するために、そして医療デバイスに滅菌及び抗微生物特性を付与するために添加してよい。そのような保存剤は、例えば1つ又は幾つかの安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、安息香酸、二酸化炭素、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、フマル酸等であってよい。
【0093】
ここでは本発明の具体的な実施態様が記載されている。しかしながら、当業者には明らかなように、幾つかの選択肢が可能である。例えば類似の性質を有する他のタイプの分解性材料も使用してよい。そのような及び他の明白な改変は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の範囲内にあると考えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体通路内に挿入するための細長いシャフトを含んでなる、短期使用のための水洗可能な医療デバイスであって、少なくとも細長いシャフトは分解性材料で作られており、その分解性は、材料が少なくとも6時間室温で乱流水中に維持される場合、本質的に完全に溶解することになるが、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、水中でその構造的完全性を保持する分解性であることを特徴とする、上記医療デバイス。
【請求項2】
材料の分解性が、少なくとも4時間、好ましくは少なくとも3時間、室温で水中に維持される場合、材料が基本的に完全溶解する分解性である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
細長いシャフトが、細長いシャフトの少なくとも主要部分を通して延びる内部ルーメンを備えている、請求項1又は2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
医療デバイスが、カテーテル、好ましくは尿道カテーテルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
医療デバイス全体が、分解性材料で作られている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
分解性材料が、少なくとも1つの単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖を含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
分解性材料が、少なくとも40質量%の単糖、二糖、オリゴ糖及び/又は多糖を含んでなる、請求項6に記載の医療デバイス。
【請求項8】
分解性材料が、主として水並びに少なくとも1つの糖及びデンプンを含んでなり、そして分解性材料が、好ましくは少なくとも90質量%の該成分を含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
分解性材料が、稠度と弾性を制御する添加剤を含んでなり、該添加剤は好ましくはゼラチンなどのコラーゲンベースの材料である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項10】
分解性材料が、湿潤時に低摩擦表面を呈する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
医療デバイスが、カテーテル法前の湿潤化及び短期カテーテル法を含む、尿道カテーテルのための通常使用シーケンス中、その物理的完全性を保持する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項12】
医療デバイスが、照射による滅菌などの滅菌に耐えられる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項13】
医療デバイスが、滅菌処理後少なくとも3年の貯蔵期間を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項14】
身体通路内に挿入するための医療デバイスを製作する方法であって、
材料が少なくとも6時間室温で水中に維持した場合本質的に完全に溶解することになる分解性の、分解性材料を備える工程;及び
分解性材料を該医療デバイスの細長いシャフトに成形する工程;
を特徴とする、上記方法。
【請求項15】
前記成形工程が、少なくとも1つの射出成形、押出成形及び溶融紡糸を含んでなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細長いシャフトの端部を円みを帯びた先端部分に成形する更なる工程を含んでなる、請求項14又は15に記載の方法であって、該成形が、好ましくは少なくとも1つの射出成形、注型、オープンダイス成形及び溶融を含む、上記方法。
【請求項17】
シャフト壁に開口部を成形する更なる工程を含んでなる請求項16に記載の方法であって、該成形工程が好ましくは少なくとも1つのポンチング及びブランキングを含む、上記方法。
【請求項18】
細長いシャフトの端部をフレアコネクタ端部に成形する更なる工程を含んでなる、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法であって、該成形が、好ましくは少なくとも1つの射出成形、注型、オープンダイス成形及び溶融を含む、上記方法。

【公表番号】特表2013−505095(P2013−505095A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530246(P2012−530246)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063939
【国際公開番号】WO2011/036162
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(501249869)アストラ・テック・アクチエボラーグ (22)
【Fターム(参考)】