説明

水洗大便器

【課題】構造が簡単で且つ貯水タンクの洗浄水のオーバーフローを防止することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、ボウル部12と、洗浄水の吐水口16,18と、排水トラップ管路14とを備えた便器本体2と、洗浄水を貯水する貯水タンク20と、この貯水タンクに洗浄水を供給する給水路24と、この給水路に設けられ貯水タンク内の水位が所定水位以下となるように給水路を開閉する電磁開閉弁34と、貯水タンクの洗浄水を加圧して吐水口に供給する加圧ポンプ22と、貯水タンクの洗浄水の水面上に浮かぶフロート66bを備えたフロート装置66と、このフロート装置が連結された流路切替弁42であって、このフロート装置のフロートが貯水タンクの所定水位より高い位置に浮上したとき、給水路から貯水タンクへの流路を給水路からボウル部に連通する排水路44へ切り替えて給水路からの洗浄水をボウル部に排水する流路切替弁42と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、リム通水部とゼット孔(ジェット孔)が形成されたボウル部を備え、このリム通水部には洗浄水を水道から直接供給し、一方、ゼット孔には貯水タンク内に貯溜されポンプにより加圧された洗浄水を供給するようにした水洗大便器が知られている。
この特許文献1の水洗大便器には、水道水を貯水タンクへ給水する給水路に、電磁開閉弁が設けられ、この電磁開閉弁の開閉操作により、給水タンクに所定水位だけ洗浄水が貯溜されるようになっている。さらに、この水洗大便器には、電磁開閉弁がゴミ噛みなどを起こして貯水タンクへの給水が停止されない場合に対処するため、貯水タンクにオーバーフロー管を設け、タンク内の洗浄水をリム通水路へ排水するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−264469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された水洗大便器においては、電磁開閉弁がゴミ噛みなどを起こして貯水タンクへの給水が停止されないとき、タンク内の洗浄水がオーバーフロー管から排水されるが、その場合でも、貯水タンクへの給水は継続してなされているため、貯水タンクには給水圧が加わる。そのため、貯水タンクは、耐圧容器としなければならず、タンクが大型化すると言う問題がある。
さらに、オーバーフロー管が詰まった場合には、貯水タンクが破裂する恐れがあり問題である。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば、電磁開閉弁とは別に異常時に貯水タンクへの給水を停止する弁を設けることが考えられるが、その弁として電磁開閉弁と同じような電磁弁を使用とすると構造が複雑となり、また、水洗大便器自体が大型化してしまい、さらに、コストも高くなり、好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、構造が簡単で且つ貯水タンクの洗浄水のオーバーフローを防止することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、ボウル部と、このボウル部に形成された洗浄水の吐水口と、ボウル部の底部から延びるように形成された排水トラップ管路とを備えた便器本体と、洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンクに洗浄水を供給する給水路と、この給水路に設けられ貯水タンク内の水位が所定水位以下となるように給水路を開閉する開閉弁と、貯水タンクの洗浄水を加圧して吐水口に供給する加圧ポンプと、貯水タンクの洗浄水の水面上に浮かぶフロートを備えたフロート手段と、このフロート手段が連結された流路切替弁であって、このフロート手段のフロートが貯水タンクの所定水位より高い位置に浮上したとき、給水路から貯水タンクへの流路を給水路からボウル部に連通する排水路へ切り替えて給水路からの洗浄水をボウル部に排水する流路切替弁と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、通常時は、貯水タンク内の水位が所定水位以下となるように洗浄水が給水路から開閉弁及び流路切替弁を経由して貯水タンクに供給され、この貯水タンク内の洗浄水が加圧タンクにより加圧されて便器本体の吐水口に供給され、ボウル部が洗浄される。一方、開閉弁がゴミ噛みなどを起こした異常時は、フロート手段のフロートが貯水タンク内の所定水位より高い位置に浮上し、それにより、流路切替弁が給水路から貯水タンクへの流路を給水路からボウル部に連通する排水路へ切り替えて給水路からの洗浄水をボウル部に排水するので、貯水タンク内の洗浄水のオーバーフローを防止することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、貯水タンク内には、水位検出手段が設けられており、開閉弁は電磁開閉弁であり、この電磁開閉弁は、水位検出手段の検出値に基づいて貯水タンク内の水位が所定水位以下となるように給水路を開閉する。
このように構成された本発明においては、貯水タンク内に設けられた水位検出手段及び電磁開閉弁により、貯水タンク内の水位を所定水位以下とすることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、便器本体のボウル部に形成された吐水口はリム吐水口とジェット吐水口であり、給水路の開閉弁が設けられた下流側には給水路切替弁が設けられ、この給水路切替弁の下流側にはリム吐水口に洗浄水を供給するリム側給水路及び貯水タンクに洗浄水を供給する貯水タンク側給水路が設けられており、排水路は逆止弁を介してその排出口がリム側給水路に接続されている。
このように構成された本発明においては、異常時に貯水タンク内の洗浄水を排出する排出路をリム側給水路に接続して、リム吐水口へ洗浄水を供給するためのリム側給水路を利用するようにしたので、構造がシンプルとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水洗大便器によれば、構造が簡単で且つ貯水タンクの洗浄水のオーバーフローを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
先ず、図1乃至図4により、本発明の実施形態による水洗大便器の基本構造を説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態による水洗大便器の側面図であり、図2は図1に示す水洗大便器の平面図であり、図3は本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図であり、図4は本発明の実施形態による水洗大便器の流路切替弁の別の状態(異常時の状態)を示す部分構成図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル10aにより覆われている。
【0014】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐出するようになっている。
リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0015】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。
【0016】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22によって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0017】
次に、図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を詳細に説明する。
図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、上流側から、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30、定流量弁32、電磁開閉弁34、給水路切替弁36がそれぞれ設けられている。
【0018】
ここで、定流量弁32は、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30を介して入水口32aから流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。本実施形態においては、この定流量弁32は、洗浄水の流量を16リットル/分以下に制限するようになっている。また、定流量弁32を通過した洗浄水は、電磁開閉弁34に流入し、電磁開閉弁34を通過した洗浄水は、給水路切替弁36により、後述するように、リム吐水口18又は貯水タンク20に供給されるようになっている。
【0019】
また、給水路切替弁36の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路38、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路40が接続されている。
【0020】
次に、タンク側給水路40の途中には、流路切替弁42が設けられており、そのため、タンク側給水路40は、流路切替弁42により、上流タンク側給水路40aと下流タンク側給水路40bとの分離されている。上流タンク側給水路40aには、逆止弁であるバキュームブレーカ43が設けられている。また、流路切替弁42には、排水路44に接続されている。この排水路44には、リム側給水路38の洗浄水が逆流しないように、逆止弁45が設けられている。
ここで、流路切替弁42は、三方切替弁であり、第1ポート42a、第2ポート42b、第3ポート42cを備えている。この流路切替弁42は、図3に示すように、通常時には、第1ポート42aと第3ポート42cとが連通し、洗浄水は、上流タンク側給水路40aと下流タンク側給水路40bを経由して、貯水タンク20に供給されるようになっている。
【0021】
また、流路切替弁42は、詳細は後述するように、図4に示すように、異常時には、第1ポート42aと第2ポート42bとが連通し、洗浄水は、上流タンク側給水路40aから排水路44に流れ、リム側給水路38を経由して、リム吐水口18からボウル部12へ排出されるようになっている。
【0022】
また、貯水タンク20の下部には、ジェット側給水路46が接続されており、このジェット側給水路46の下流側は、ジェット吐水口16に接続されている。また、ジェット側給水路46の途中に上述した加圧ポンプ22が設けられている。この加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口16から吐出させるためのものである。
【0023】
このジェット側給水路46は、加圧ポンプ22より上流側の上流ジェット側給水路46aと下流ジェット側給水路46bとから構成されている。ここで、下流ジェット側給水路46bは、図3に示すように、上方に向けて凸型に形成されており、この凸型部分の最も高い部分である頂部46cは、貯水タンク20からジェット吐水口16に至るジェット側給水路46の中で最も高い部分になっている。
【0024】
次に、上述したリム側給水路38には、リム吐水用バキュームブレーカ48が設けられており、リム側給水路24に負圧が発生した時に洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ48は、ボウル部12の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ48の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク20に流入するようになっている。
【0025】
また、上述したジェット側給水路46の下流ジェット側給水路46bにも、同様に、逆止弁であるジェット吐水用バキュームブレーカ52が設けられており、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止すると共に、それらの間の縁切りを行うようになっている。また、ジェット吐水用バキュームブレーカ52は、ボウル部12の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、ジェット吐水用バキュームブレーカ52の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路54を通って貯水タンク20に流入するようになっている。
【0026】
さらに、ジェット側給水路46の上流ジェット側給水路46aには、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58が設けられている。これらのジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58は、加圧ポンプ22よりも下方の、貯水タンク20の下端部付近の高さに配置されている。このため、水抜栓58を開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク20内及び加圧ポンプ22内の洗浄水を排出することができる。また、貯水タンク20と加圧ポンプ22の間にジェット吐水用フラッパー弁56を配置することにより、貯水タンク20内の水位が加圧ポンプ22の高さよりも低くなった場合に、洗浄水が加圧ポンプ22から貯水タンク20に逆流し、加圧ポンプ22内の洗浄水が抜け加圧ポンプ22が空運転してしまうことを防止している。また、貯水タンク20及び加圧ポンプ22の下方には、水受けトレイ60が配置されており、結露した水滴や漏水を受けるようになっている。
【0027】
また、機能部10には、電磁開閉弁34の開閉操作、給水路切替弁36の切替操作、及び、加圧ポンプ22の回転数や作動時間等を制御するコントローラ62が内蔵されている。
【0028】
電磁開閉弁34は、コントローラ62の制御信号により開閉され、供給された洗浄水を給水路切替弁36に流入させ、又は停止させるようになっている。
また、給水路切替弁36は、コントローラ62の制御信号により切り替えられ、電磁開閉弁34を介して流入した洗浄水をリム吐水口18から吐出させ、又は、貯水タンク20に流入させるようになっている。
【0029】
貯水タンク20は、ジェット吐水口16から吐水すべき洗浄水を貯水するためのものであり、本実施形態において、貯水タンク20は、約2.5リットルの内容積を有する。
【0030】
貯水タンク20の内部には、水位検出手段である上端フロートスイッチ64a及び下端フロートスイッチ64bが配置されており、貯水タンク20内の水位を検出できるようになっている。上端フロートスイッチ64aは、貯水タンク20内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、電磁開閉弁34を閉鎖させる。一方、下端フロートスイッチ64bは、貯水タンク20内の水位が所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、加圧ポンプ22を停止させる。
【0031】
また、貯水タンク20の上部には、その上端の開口部を覆うように蓋体20aが取り付けられている。この蓋体20aには、円形の穴が設けられこの穴を取り囲むように、筒体20bが上方に向けて延びるように取り付けられている。
【0032】
コントローラ62は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁開閉弁34、給水路切替弁36、加圧ポンプ22を順次作動させ、リム吐水口18及びジェット吐水口16からの吐水を順次開始させて、ボウル部12を洗浄する。さらに、コントローラ62は、洗浄終了後、電磁開閉弁34を開放し、給水路切替弁36を貯水タンク20側に切り替えて洗浄水を貯水タンク20に補給する。貯水タンク20内の水位が上昇し、上端フロートスイッチ64aが規定の貯水量を検出すると、コントローラ62は、電磁開閉弁34を閉鎖して給水を停止する。
【0033】
次に、図3乃至図7により、本実施形態の水洗大便器における、電磁開閉弁34がゴミ噛みなどを起こして貯水タンクへの給水が停止できない異常時に、貯水タンク内の洗浄水のオーバーフローを防止するための機構を説明する。
先ず、本実施形態においては、図3に示すように、流路切替弁42には、フロート装置66が連結されている。
【0034】
このフロート装置66、及び、上述した定流量弁32、電磁開閉弁34、給水路切替弁36、流路切替弁42等は、図3及び図5に示すように、バルブユニット68として、一体的に組立られたものとなっている。
なお、図5において、流路切替弁42の第2ポート42bからリム側給水路38へ接続される排水路44は省略されている。また、電磁弁34のおいては、ダイヤフラムを開閉するためのパイロット流路から排出される洗浄水を貯水タンク20へ流すように電磁弁34と流路切替弁42とがパイロット排水路34aにより接続されている。
【0035】
フロート装置66は、図6に示すように、ロッド66aと、このロッド66aの下端側に取り付けられたフロート(浮玉)66bと、ロッド66aの上端側に一対の取付板66cを介して取り付けられたレバー66dを備えている。このレバー66dは、流路切替弁42内に設けられたバルブ42dと一体構造であり、軸42eを中心に回動可能となっている。なお、ロッド66aの外周にはネジが切られており、フロート(浮玉)66b及びレバー66dを所望の位置に調整できるようになっている。
【0036】
このフロート装置66は、通常時には、図3及び図6に示すように、そのフロート66bが上端フロートスイッチ64aの位置よりも下方位置に浮いているので、流路切替弁42の第1ポート42aと第3ポート42cが連通し、洗浄水は、上流タンク側給水路40aと下流タンク側給水路40bを経由して、貯水タンク20に供給されるようになっている。
また、フロート装置66は、電磁開閉弁34がゴミ噛みなどを起こした異常時には、図4及び図7に示すように、流路切替弁42の第3ポート42cは閉鎖され、流路切替弁42の第1ポート42aと第2ポート42bとが連通し、洗浄水は、上流タンク側給水路40aから排水路44に流れ、リム側給水路38を経由して、リム吐水口18からボウル部12へ排出されるようになっている。
【0037】
更に、本実施形態においては、図3及び図4に示すように、貯水タンク20の上端フロートスイッチ64aの位置よりも上方で且つフロート(浮玉)66bの最上位位置(図4参照)よりも下方の位置にその一端が開口し他端が下流ジェット側給水路46bに接続されたオーバーフロー流路70が設けられている。このオーバーフロー流路70には逆止弁であるフラッパー弁72が取り付けられている。
【0038】
次に、図8により、上述した本発明の実施形態による水洗大便器1の基本動作を説明する。
図8に示すように、待機状態(時刻t0〜t1)において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が操作されると、1回目のリム吐水(前リム洗浄)が開始される(時刻t1)。即ち、使用者が便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、コントローラ62は電磁開閉弁34に信号を送って開放させると共に、給水路切替弁36をリム吐水口18の側に切り替え、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水を吐出させる。電磁開閉弁34が開放されると、水道から供給された洗浄水が止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30を経て入水口32aから定流量弁32に流入する。定流量弁32では、水道の給水圧力が高い場合には、通過する洗浄水の流量が所定流量に制限され、給水圧力が低い場合には、洗浄水は流れを制限されることなくそのまま通過される。定流量弁32を通過した洗浄水は、電磁開閉弁34、給水路切替弁36を通過し、リム吐水用バキュームブレーカ48、リム側給水路38を通って、ボウル部12上部の後方左側に開口したリム吐水口18から吐出される。リム吐水口18から吐出された洗浄水は、ボウル部12内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部12の内壁面が洗浄される。
【0039】
その後(時刻t2)、ジェット吐水が開始され、さらに、貯水タンク20への洗浄水の補給も開始される。
先ず、コントローラ62は、加圧ポンプ22に信号を送ってこれを起動させ、ポンプ回転数をN1に保持する。加圧ポンプ22が起動されると、貯水タンク20内に貯水されていた洗浄水は、ジェット吐水用フラッパー弁56を通って加圧ポンプ22に流入し、加圧される。加圧ポンプ22によって加圧された洗浄水は、下流ジェット側給水路46bの頂部46cを通って、ボウル部12底部に開口したジェット吐水口16から吐出される。
このとき、下流ジェット側給水路46bの頂部46c付近に滞留していた空気は、ジェット吐水用バキュームブレーカ52に到達し、その大気開放部から放出される。
【0040】
ジェット吐水口16から吐出された洗浄水は排水トラップ管路14内に流入し、排水トラップ管路14を満水にしてサイホン現象を引き起こす。このサイホン現象により、ボウル部12内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路14に吸引され、排水管Dから排出される。ここで、本実施形態においては、加圧ポンプ22は、最初にポンプ回転数N1で回転するため(時刻t2〜t3)、加圧力が大きくなり、大流量でジェット吐水口16から吐出させることができ、それにより、排水トラップ管路14内のサイホン現象が急速に引き起こされ、ボウル部12内の溜水及び汚物は素早く排出される。
【0041】
その後(時刻t3)、ポンプの回転数をN2まで低下させることにより、加圧力を少し低下させて、洗浄水を継続してジェット吐水口16から吐出させる。
さらに、ポンプの回転数N2は、ジェット吐水が汚物を排水トラップ管路14の頂部14dまで搬送するために必要な流速である。
【0042】
なお、本実施形態においては、図8において、破線で示すように、ポンプ回転数をN2に低減させずに回転数N1のまま保持するようにしてもよい(時刻t3〜t4)。
【0043】
さらに、本実施形態においては、ポンプの回転数N2によるジェット吐水の終了時(時刻t4〜t5)に、ジェット吐水口からの吐水が漸減するように加圧ポンプの回転数を制御するようにしている。
これにより、サイホン作用が急激に途切れることにより生じる大きなサイホン切れ音の発生を防止することができる。
【0044】
このようにして加圧ポンプ22を所定時間(時刻t2〜t5)作動させることにより、洗浄水がジェット吐水口16から吐出され、貯水タンク20内の貯水量は概ねゼロになる。加圧ポンプ22が停止されることによりジェット吐水口16からの吐水は停止される(時刻t5)。これにより、ジェット吐水用バキュームブレーカ52から、ジェット側給水路46内に大気が導入され、ボウル部12内の溜水と貯水タンク20内の洗浄水が縁切りされる。
【0045】
本実施形態においては、ジェット吐水の間(時刻t2〜t5)、貯水タンク20へ洗浄水が補給されるようになっている。このとき、コントローラ62は、電磁開閉弁34を開放状態に維持しながら、流路切替弁36に信号を送って、これをタンク側に切り替える。電磁開閉弁34が開放されているので、入水口32aから流入した洗浄水は、定流量弁32、電磁開閉弁34、給水路切替弁36、流路切替弁42、タンク側給水路40を通過して、貯水タンク20内に流入する。
【0046】
次に、ジェット吐水が終了したとき(時刻t5)、コントローラ62は、電磁開閉弁34に信号を送って、これを再び開放させ、リム吐水口18からの2回目の吐水(後リム洗浄)を開始させる。リム吐水口18からの2回目の吐水によりボウル部12内の溜水の水位は上昇し、所定のリム吐水時間経過後(時刻t6)、ボウル部12内は所定の溜水水位に到達する。
【0047】
2回目のリム吐水終了後(時刻t6)、再び、貯水タンク20の洗浄水が補給される。このとき、上述したように、コントローラ62は、電磁開閉弁34を開放状態に保持した状態で、給水路切替弁36に信号を送って、これをタンク側に切り替え、貯水タンク20内に流入する。
【0048】
貯水タンク20内に洗浄水が補給され、貯水タンク20内の水位が規定の貯水水位に達すると、上端フロートスイッチ64aがONになる。上端フロートスイッチ64aがONになると、コントローラ62は電磁開閉弁34に信号を送り、これを閉鎖させる。
【0049】
次に、図3乃至図7により、電磁開閉弁34がゴミ噛みなどを起こした異常時における本実施形態による水洗大便器の動作を説明する。
電磁開閉弁34がゴミ噛みなどを起こした異常時には、貯水タンク20内の水位が上端フロートスイッチ64aの所定水位よりも徐々に上昇し、この水位がオーバーフロー流路70の開口位置を越えたときは、このオーバーフロー流路70から、洗浄水が、ジェット側給水路46及びジェット吐水口16を経由して、ボウル部12内に排出される。
【0050】
しかしながら、本実施形態においては、貯水タンク20が便器本体2とほぼ同じ高さ位置に設けられているため、オーバーフロー流路70の高低差が小さく、そのため、このオーバーフロー流路70のオーバーフロー能力をあまり大きくすることができない。そのため、本実施形態においては、異常時、貯水タンク20内の水位が上端フロートスイッチ64aの所定水位よりも徐々に上昇し、オーバーフロー流路70の開口位置を越えるにつれて、フロート装置66のフロート66bも上昇し、これに伴って、流路切替弁42のバルブ42dが回動し、第3ポート42cが徐々に閉じられると共に、第2ポート42bが解放され、最終的には、流路切替弁42の第3ポート42cは閉鎖され、流路切替弁42の第1ポート42aと第2ポート42bとが連通し、洗浄水は、上流タンク側給水路40aから排水路44に流れ、リム側給水路38を経由して、リム吐水口18からボウル部12へ排出される。
【0051】
このように、本実施形態による水洗大便器においては、電磁開閉弁34がゴミ噛みなどを起こした異常時に、オーバーフロー流路70のオーバーフロー能力が給水能力を下回る場合であっても、フロート装置66のフロート66bが貯水タンク20内の所定水位より高い位置に浮上し、それにより、流路切替弁42が給水路24から貯水タンク20へのタンク側給水路40を給水路24から排水路44へ切り替えて、この排水路44からリム側給水路38及びリム吐水口18を経由して、貯水タンク20内の洗浄水をボウル部12に排水するので、貯水タンク20内の洗浄水のオーバーフローを防止することができる。
【0052】
さらに、本実施形態による水洗大便器においては、異常時に貯水タンク20内の洗浄水を排出する排出路44をリム側給水路38に接続して、リム吐水口18へ洗浄水を供給するためのリム側給水路38を利用するようにしたので、構造がシンプルとなる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、給水路から供給される洗浄水を貯水タンクに貯溜し、このタンク内の洗浄水をリム給水路を経由してリム吐水口から便器本体のボウル部に吐水するようなタイプの水洗大便器にも適用可能である。このタイプの水洗大便器は、ジェット吐水口を備えていないので、上述した給水路切替弁36は不要であり、排水路は、リム給水路に接続されている。
また、他の実施形態として、流路切替弁を加圧ポンプよりも下流側に位置させ、貯水タンク内の洗浄水を加圧ポンプによりリム吐水口及びジェット吐水口の両方から吐水させるように構成してもよい。この実施形態において、流路切替弁により、ジェット吐水口に接続されたジェット側給水路のみを開閉させ、リム吐水口は常時吐水させるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器の側面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器の平面図である。
【図3】本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【図4】本発明の実施形態による水洗大便器の流路切替弁の別の状態(異常時の状態)を示す部分構成図である。
【図5】本発明の実施形態による水洗大便器のバルブユニットを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態による水洗大便器の通常時のフロート装置と流路切替弁を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態による水洗大便器の異常時のフロート装置と流路切替弁を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態による水洗大便器における基本動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 水洗大便器
2 便器本体
10 機能部
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 ジェット吐水口
18 リム吐水口
20 貯水タンク
22 加圧ポンプ
32 定流量弁
34 電磁開閉弁
36 給水路切替弁
38 リム側給水路
40 タンク側給水路
42 流路切替弁
44 排水路
46 ジェット側給水路
62 コントローラ
64a 上端フロートスイッチ
64b 下端フロートスイッチ
66 フロート装置
68 バルブユニット
70 オーバーフロー流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
ボウル部と、このボウル部に形成された洗浄水の吐水口と、上記ボウル部の底部から延びるように形成された排水トラップ管路とを備えた便器本体と、
洗浄水を貯水する貯水タンクと、
この貯水タンクに洗浄水を供給する給水路と、
この給水路に設けられ上記貯水タンク内の水位が所定水位以下となるように上記給水路を開閉する開閉弁と、
上記貯水タンクの洗浄水を加圧して上記吐水口に供給する加圧ポンプと、
上記貯水タンクの洗浄水の水面上に浮かぶフロートを備えたフロート手段と、
このフロート手段が連結された流路切替弁であって、このフロート手段のフロートが上記貯水タンクの上記所定水位より高い位置に浮上したとき、上記給水路から上記貯水タンクへの流路を上記給水路から上記ボウル部に連通する排水路へ切り替えて上記給水路からの洗浄水を上記ボウル部に排水する上記流路切替弁と、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記貯水タンク内には、水位検出手段が設けられており、上記開閉弁は電磁開閉弁であり、この電磁開閉弁は、上記水位検出手段の検出値に基づいて上記貯水タンク内の水位が所定水位以下となるように上記給水路を開閉する請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記便器本体のボウル部に形成された吐水口はリム吐水口とジェット吐水口であり、上記給水路の上記開閉弁が設けられた下流側には給水路切替弁が設けられ、この給水路切替弁の下流側には上記リム吐水口に洗浄水を供給するリム側給水路及び上記貯水タンクに洗浄水を供給する貯水タンク側給水路が設けられており、上記排水路は逆止弁を介してその排出口が上記リム側給水路に接続されている請求項1又は請求項2に記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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