説明

水洗大便器

【課題】適量の洗浄水の供給を可能にすると共に、水道水圧の低い地域にも設置することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器(1)であって、ボウル部(12)及び排水トラップ管路(14)を備えた水洗大便器本体(2)と、ジェット吐水の洗浄水を加圧する加圧ポンプ(34)と、貯水タンク(32)と、水道の給水圧力によるリム洗浄、及び加圧ポンプによるジェット洗浄を実行することによりボウル部を洗浄する洗浄制御手段(40)と、リム洗浄の給水経路に設けられ、リム洗浄中においてリム吐水口から吐出されている洗浄水の流量を計測する流量計測手段(30)と、この流量計測手段によって計測された流量に基づいて、洗浄制御手段が実行するリム洗浄の吐水時間及びジェット洗浄の吐水量を調整する吐水量調整手段(40a)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗大便器に関し、特に、加圧した洗浄水により洗浄される水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第2874207号(特許文献1)には、便器の洗浄給水装置が記載されている。この洗浄給水装置では、リム吐水口への給水経路に圧力センサ又は流量センサを設けておき、センサの検出値に基づいて洗浄水の吐水時間を設定している。即ち、水道水圧の低い地域では吐水時間を長く、水道水圧の高い地域では吐水時間を短くすることにより、適量の洗浄水を供給することを可能にしている。
【0003】
【特許文献1】特許第2874207号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許第2874207号記載の便器の洗浄給水装置では、水道水圧に応じて単に吐水時間を変化させているだけであるため、水道水圧の非常に低い地域においては十分な便器洗浄を行うことができないという問題がある。即ち、特にジェット吐水口からの吐水は、小流量の吐水を長時間行ったとしても、排水トラップ管路内にサイホン現象を誘発することができず、ボウル部内の汚物を十分に排出できないという問題がある。
【0005】
さらに、水道直圧式水洗便器は、一般に、洗浄水が定流量弁を介して吐水されるように構成されており、水道水圧が高い地域においても洗浄水の流量が過大になることがないようにしている。しかしながら、定流量弁によって設定される流量は、その個体差によるばらつきが大きいため、このばらつきの中で最も流量が少ない定流量弁が使用された場合にも吐出される洗浄水の量が不足しないように、吐水時間が設定されている。このため、ばらつきの中で流量が大きい定流量弁が使用された場合には、洗浄水量が過剰になるという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、適量の洗浄水の供給を可能にすると共に、水道水圧の低い地域にも設置することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
また、本発明は、使用される定流量弁の個体差が大きい場合でも、常に適量の洗浄水の供給することができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、リム吐水口及びジェット吐水口が形成されたボウル部、及び排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、ジェット吐水口から吐水させる洗浄水を加圧する加圧ポンプと、この加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、水道の給水圧力により洗浄水をリム吐水口から吐出させるリム洗浄、及び貯水タンク内の洗浄水を加圧ポンプによりジェット吐水口から吐出させるジェット洗浄を実行することによりボウル部を洗浄する洗浄制御手段と、リム吐水口から吐出させる洗浄水の給水経路に設けられ、リム洗浄中においてリム吐水口から吐出されている洗浄水の流量を計測する流量計測手段と、この流量計測手段によって計測された流量に基づいて、洗浄制御手段が実行するリム洗浄の吐水時間及びジェット洗浄の吐水量を調整する吐水量調整手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、洗浄制御手段は、水道の給水圧力により洗浄水をリム吐水口から吐出させ、リム洗浄を実行する。また、洗浄制御手段は、貯水タンクに貯水された洗浄水を、加圧ポンプによってジェット吐水口から吐出させ、ジェット洗浄を実行する。一方、リム吐水の給水経路に設けられた流量計測手段は、リム洗浄中におけるリム吐水口からの流量を計測する。吐水量調整手段は、流量計測手段によって計測された流量に基づいて、洗浄制御手段が実行するリム洗浄の吐水時間及びジェット洗浄の吐水量を調整する。
【0009】
このように構成された本発明によれば、ジェット吐水口から吐出される洗浄水を加圧ポンプによって加圧しているので、水道の給水圧力が低い地域においても十分な便器洗浄を行うことができる。また、吐水量調整手段によりリム洗浄の吐水時間及びジェット洗浄の吐水量が調整されるので、適量の洗浄水を供給することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、リム洗浄は、ジェット洗浄の開始前に開始される前リム洗浄と、ジェット洗浄の終了後に行われる後リム洗浄からなり、流量計測手段は、前リム洗浄中における洗浄水の流量を計測する。
【0011】
このように構成された本発明によれば、流量計測手段が前リム洗浄における流量を計測するので、計測した流量を計測直後のジェット洗浄及び後リム洗浄に反映させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、吐水量調整手段は、加圧ポンプを作動させる時間を変化させることにより、ジェット洗浄の吐水量を調整する。
このように構成された本発明によれば、ジェット洗浄の時間を変化させることによりジェット吐水量を変更して、適切な便器洗浄を設定することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、吐水量調整手段は、加圧ポンプの回転数を変化させることにより、ジェット洗浄の吐水量を調整する。
このように構成された本発明によれば、ジェット吐水の流量を変化させることによりジェット吐水量を変更して、適切な便器洗浄を設定することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、ジェット洗浄は、サイホン作用を起動させるサイホン起動領域、このサイホン起動領域よりも流量が少なく、起動したサイホン作用を持続させるサイホン持続領域、及びサイホン作用終了後、排水トラップ管路内の汚物を押し出すブロー領域からなり、このブロー領域において、洗浄制御手段は、サイホン起動領域と概ね等しい回転数で加圧ポンプを作動させる。
【0015】
このように構成された本発明によれば、サイホン起動領域において起動されたサイホン作用を、サイホン持続領域において洗浄水を節約しながら維持し、ブロー領域において浮遊汚物等を確実に排出させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、吐水量調整手段は、ブロー領域の時間を変化させることにより、ジェット吐水量を調整する。
このように構成された本発明によれば、強いサイホン作用の発生が期待できない洗浄モードにおいても、確実に汚物を排水トラップ管路から押し出すことができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、吐水量調整手段は、前リム洗浄中において計測された洗浄水の流量に基づいて、その直後に開始されるジェット洗浄の吐水量及び後リム洗浄の吐水時間を調整する。
このように構成された本発明によれば、他の機器から吐水が行われている場合等、一時的に給水圧が大きく低下した場合においても、適切な便器洗浄を行うことができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、吐水量調整手段は、流量計測手段によって計測された流量に基づいて、次回のボウル部の洗浄におけるリム洗浄の吐水時間及びジェット洗浄の吐水量を調整する。
【0019】
このように構成された本発明によれば、水洗大便器が設置された地域の給水圧や、使用されている定流量弁の個体差等に応じた適切な量の洗浄水を、安定的に供給することができる。また、次回の洗浄における吐水量が、流量計測手段によって計測された過去の複数回の流量に基づいて調整される場合には、調整の精度を向上させることができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、洗浄制御手段は、前回の便器洗浄時において計測されたリム吐水の流量に基づいて調整された吐水時間に亘ってリム洗浄するように構成されており、最新の便器洗浄において計測されたリム吐水の流量が、前回のリム吐水の流量よりも所定流量以上少ない場合には、貯水タンクを規定の貯水量に復帰させた後、追加吐水を行ってボウル部内の水位を上昇させる。
【0021】
このように構成された本発明によれば、洗浄制御手段が追加吐水を行ってボウル部内の水位を上昇させるので、最新の便器洗浄におけるリム吐水流量が、前回の便器洗浄時におけるリム吐水流量よりも大幅に低下していた場合においても、排水トラップ管路の封水切れを防止することができる。
【0022】
本発明において、好ましくは、追加吐水によりボウル部に供給される洗浄水の量は、最新のリム吐水の流量、及び最新のリム洗浄の吐水時間に基づいて、排水トラップ管路が封水されるように洗浄制御手段によって決定される。
【0023】
このように構成された本発明によれば、追加吐水の量が、最新のリム吐水の流量及びリム洗浄の吐水時間に基づいて決定されるので、排水トラップ管路を確実に封水することができると共に、追加吐水の量が多すぎることによる無駄水の発生を防止することができる。
【0024】
本発明において、好ましくは、流量計測手段は、圧力センサである。
このように構成された本発明によれば、流量が圧力センサにより計測されるので、給水経路内の流量計測手段を配置した部分の圧力損失を低く抑えることができ、効果的なリム吐水を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の水洗大便器によれば、適量の洗浄水の供給を可能にすると共に、水道水圧の低い地域にも設置することができる。
また、本発明の水洗大便器によれば、使用される定流量弁の個体差が大きい場合でも、常に適量の洗浄水を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
図1は、本実施形態による水洗大便器を後方右斜め上から見た斜視図である。図2は、リム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。また、図3は、水洗大便器の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すグラフである。図4は、吐水量の調整手順を示すフローチャートである。
【0027】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、水洗大便器本体2と、後方に配置された機能部10と、を有する。この機能部10はサイドパネル(図1はサイドパネルを取り外した状態を図示)により覆われている。
【0028】
図1及び図2に示すように、水洗大便器本体2は陶器製であり、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。排水トラップ管路14は、ボウル部12の底部から後方、斜め上方に延びた後、下方に向かって延びて排水管Dに接続されている。ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に向けて洗浄水を吐出するように構成されている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の縁に沿って洗浄水を吐出するように構成されている。
【0029】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、機能部10に内蔵された貯水タンクに貯水された洗浄水を加圧ポンプによって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。
【0030】
次に、図1及び図2を参照して、機能部10の構成を説明する。
機能部10には、リム吐水用の給水系統として、定流量弁20と、電磁弁22と、切替弁28と、リム吐水用バキュームブレーカ24と、リム吐水用フラッパー弁26が内蔵されている。また、リム吐水用フラッパー弁26とリム吐水口18の間の洗浄水の給水経路であるリム側給水路18aには、流量計測手段であるセンサ30が配置されている。さらに、機能部10には、ジェット吐水用の給水系統として、貯水タンク32と、加圧ポンプ34と、ジェット吐水用バキュームブレーカ36と、ジェット吐水用フラッパー弁38が内蔵されている。さらに、機能部10には、電磁弁22、切替弁28、及び加圧ポンプ34を制御する洗浄制御手段であるコントローラ40が内蔵されている。
【0031】
定流量弁20は、止水栓42a、分岐金具42b、及びストレーナ42cを介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るように構成されている。本実施形態においては、定流量弁20は、洗浄水の流量を公称値で12リットル/分に制限するものが使用されているが、この流量は、実際には定流量弁20の個体差により、約10〜15リットル/分の間にばらついている。
【0032】
また、定流量弁20を通過した洗浄水は、電磁弁22を介して切替弁28に流入するように接続されている。電磁弁22は、コントローラ40の制御信号により開閉され、洗浄水を切替弁28に流入させ、又は停止させるように構成されている。切替弁28は、電磁弁22を通過した洗浄水を、コントローラ40の制御信号により、貯水タンク32の側及びリム吐水口18の側に振り分けるように配置されている。この切替弁28は、設定により貯水タンク32及びリム吐水口18の両方に任意の割合で洗浄水を振り分けることができるように構成されている。
【0033】
リム吐水用バキュームブレーカ24は、切替弁28を通過した洗浄水をリム吐水口18へ導くリム側給水路18aの途中に配置され、洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。
【0034】
リム吐水用フラッパー弁26は、リム吐水用バキュームブレーカ24の下流側のリム側給水路18aに配置され、洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。本実施形態においては、リム側給水路18aにリム吐水用バキュームブレーカ24とリム吐水用フラッパー弁26を直列に配置することによって、より確実に洗浄水の逆流を防止している。
【0035】
センサ30は、リム吐水用フラッパー弁26とリム吐水口18の間のリム側給水路18aに配置されており、リム洗浄中においてリム吐水口18から吐出されている洗浄水の流量を計測するように構成されている。本実施形態においては、センサ30として、給水経路内のセンサを配置した部分の圧力損失を小さくすることができる半導体圧力センサが使用されている。なお、半導体圧力センサ以外の圧力センサの他、羽根車流量センサ等、リム吐水口18からの洗浄水の流量を把握することができる任意のセンサをセンサ30として使用することができる。また、本実施形態においては、センサ30はリム吐水用フラッパー弁26とリム吐水口18の間に配置されているが、定流量弁20からリム吐水口18に至る任意の位置にセンサ30を配置することができる。好ましくは、リム吐水口18の近傍にセンサ30を配置することにより、リム吐水流量を確実に把握することができる。
【0036】
貯水タンク32は、ジェット吐水口16から吐水すべき洗浄水を貯水するように構成されている。なお、本実施形態において、貯水タンク32は、図1に示すように、水洗大便器本体2の後方右側から、水洗大便器本体2後方中央の排水トラップ管路14の上方まで延びるように配置されており、約3.5リットルの内容積を有する。また、水洗大便器本体2の後方には、取付部である樹脂製の取付フレーム2aが固定されており、この取付フレーム2aは、水洗大便器本体2とは別体に構成され、貯水タンク32の周囲を取り囲むように概ね矩形状に形成されている。貯水タンク32は、その上端のフランジ部が取付フレーム2aと係合することにより、取付フレーム2aから吊り下げられている。
【0037】
さらに、本実施形態においては、切替弁28に接続されたタンク給水路32aの先端は貯水タンク32に対してエアギャップが形成されるように配置されており、貯水タンク32内の洗浄水の逆流を防止している。また、貯水タンク32の内部には、上端フロートスイッチ32b及び下端フロートスイッチ32cが配置されており、貯水タンク32内の水位を検出するように構成されている。
【0038】
上端フロートスイッチ32bは、貯水タンク32の水位が所定の貯水水位に達するとONに切り替わり、コントローラ40はこれを検知して、電磁弁22を閉鎖させるように構成されている。
下端フロートスイッチ32cは、貯水タンク32の底面近傍に配置されており、貯水タンク32内の水位が下端フロートスイッチ32cよりも低下するとONに切り替わり、貯水タンク32が空になったことを検知できるように構成されている。
【0039】
加圧ポンプ34は、貯水タンク32に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。本実施形態においては、加圧ポンプ34は、貯水タンク32の下方に配置されている。また、貯水タンク32の底面には下方に延びる2本のU字形の金属板32dが取り付けられており、加圧ポンプ34は、これらの金属板32dによって貯水タンク32の下方に吊り下げられている。
【0040】
また、加圧ポンプ34は、洗浄水を加圧するインペラ及びこのインペラを駆動するモーター(以上図示せず)を内蔵している。また、加圧ポンプ34の下方には、水受けトレイ2bが配置されており、結露した水滴や漏水を受けるように構成されている。なお、本実施形態においては、加圧ポンプ34は、貯水タンク32内の洗浄水を加圧して、洗浄水を最大約100リットル/分の流量でジェット吐水口16から吐出させるように構成されている。
【0041】
ジェット吐水用バキュームブレーカ36は、加圧ポンプ34の下流側に接続されており、ボウル部12内の溜水が貯水タンク32側へ逆流するのを防止すると共に、それらの間の縁切りを行うように構成されている。これにより、貯水タンク32内の貯水水位を、ボウル部12内の溜水水位よりも高く設定することが可能になる。また、ジェット吐水用バキュームブレーカ36を通過した洗浄水は、ジェット側給水路16aを通ってジェット吐水口16から吐出されるように構成されている。
ジェット吐水用フラッパー弁38は、貯水タンク32と加圧ポンプ34の間に接続されており、加圧ポンプ34内の洗浄水の貯水タンク32への逆流を防止している。
【0042】
洗浄制御手段であるコントローラ40は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁弁22、切替弁28、加圧ポンプ34を順次作動させ、リム吐水口18及びジェット吐水口16からの吐水を順次開始させて、ボウル部12を洗浄するように構成されている。さらに、コントローラ40は、ジェット吐水終了後、切替弁28を切り替えて貯水タンク32に洗浄水を補給し、フロートスイッチ32bが規定の貯水量を検出すると、電磁弁22を閉鎖して給水を停止するように構成されている。
【0043】
また、コントローラ40は、センサ30によって計測されたリム吐水の流量に基づいて、リム吐水口18からの洗浄水の吐水時間及びジェット吐水口16からの洗浄水の吐水量を調整する吐水量調整手段40aを内蔵している。具体的には、コントローラ40は、CPU、メモリ、及びそれらを作動させるプログラムにより構成されている。
【0044】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態による水洗大便器1の作用を説明する。
まず、待機状態において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が操作されると、1回目のリム吐水が開始される。即ち、図3の時刻t1において、使用者が便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、コントローラ40は、切替弁28に信号を送り、リム吐水側に切り替えられていた切替弁28を、一旦タンク側に切り替える。次いで、コントローラ40は、時刻t2において、電磁弁22に信号を送ってこれを開放させ、洗浄水を切替弁28に流入させる。これにより、切替弁28の上流側の給水経路にある定流量弁20や電磁弁22を経由する洗浄水の流れが安定するまで、タンク給水路32aを介して洗浄水が排出される。また、一部管路19内に溜まっていた空気がタンク給水路32aを介して排出される。このように、電磁弁22が開放された初期の流れが不安定な洗浄水をリム吐水口18から吐水させないため、リム吐水口18からの吐水を安定させることができると共に、管路19内に溜まっていた空気を排出しておくこともでき、管路19内の空気がリム吐水口18を通して排出される際に発生する不快な空気の排出音の発生を防止することができる。
【0045】
次に、コントローラ40は、時刻t3において、切替弁28に信号を送り、タンク側に一旦切り替えた切替弁28をリム吐水側に徐々に(時刻t3からt4の間に)切り替える。これにより、切替弁28から上流側のリム側給水路18a内のリム吐水用バキュームブレーカーによって導入され溜まっていた空気が、水道の給水圧力によりリム吐水口18から排出され、引き続いて洗浄水が吐出されるようになる。これにより、リム側給水路18a内の空気がリム吐水口18を通して排出される際に発生する不快な空気の排出音の発生を防止することができる。なお、水道から供給された洗浄水は止水栓42a、分岐金具42b、ストレーナ42cを経て定流量弁20に流入し、定流量弁20において洗浄水の流量が所定流量に制限されて通過される。定流量弁20を通過した洗浄水は、電磁弁22、切替弁28、リム吐水用バキュームブレーカ24、リム吐水用フラッパー弁26、センサ30を通ってリム吐水口18から吐出される。この際、リム吐水口18から吐出される洗浄水の流量がセンサ30によって計測される。リム吐水口18から吐出された洗浄水は、ボウル部12内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部12の内壁面が洗浄される。
【0046】
所定時間経過後の時刻t5において、ジェット吐水が開始される。即ち、コントローラ40は、時刻t5において、加圧ポンプ34に信号を送りこれを起動させる。なお、ジェット吐水を開始する時刻t5は、後述するように、コントローラ40に内蔵された吐水量調整手段40aによって調整される。また、図3に示すように、本実施形態においては、ジェット吐水中においても電磁弁22は開放され、切替弁28はリム吐水側に切り替えられたままであるため、ジェット吐水と並行して、リム吐水口18からの吐水も継続される。加圧ポンプ34が起動されると、貯水タンク32内に貯水されていた洗浄水が加圧される。加圧ポンプ34によって加圧された洗浄水は、ジェット側給水路16aを通って、ボウル部12底部に開口したジェット吐水口16から吐出される。
【0047】
より詳細には、時刻t5において起動された加圧ポンプ34の回転数は、時刻t6までに1000rpmに上昇され、この回転数は時刻t7まで維持される。このように、加圧ポンプ134の起動直後の回転数を比較的低回転に抑えることにより、洗浄水管路34aの頂部44近傍に溜まっていた空気がジェット吐水口16から急速に排出され、不快な空気排出音が発生するのを防止することができる。
【0048】
次に、コントローラ40は、時刻t7において、加圧ポンプ34の回転数を上昇させ、回転数は時刻t8までに3500rpmに上昇される。この回転数は、サイホン起動領域である時刻t8から時刻t9まで維持される。加圧ポンプ34の回転数を上昇させることにより、貯水タンク32内の洗浄水は大流量でジェット吐水口16から吐出される。これにより、排水トラップ管路14内は急速に満水にされ、サイホン作用が急速に起動される。
【0049】
さらに、コントローラ40は、時刻t9において、加圧ポンプ34の回転数を低下させ、回転数は2600rpmまで低下される。この回転数は、サイホン持続領域である時刻t9から所定時間維持される。このように、加圧ポンプ34の回転数を低下させることにより、ジェット吐水口16から吐出される流量も低下する。しかしながら、サイホン持続領域においてジェット吐水口16から吐出される流量は、サイホン起動領域において発生されたサイホン作用を持続させるには十分な流量であるため、サイホン作用は、ほぼサイホン持続領域の終わりまで持続される。このように、サイホン持続領域において流量を低下させながらサイホン作用を持続させることにより、ジェット吐水口16から吐出される洗浄水の量を少なく抑えながら、サイホン作用を長時間持続させることができる。
【0050】
サイホン持続領域の終わりまでにはボウル部12内の溜水がほぼ完全に排出されるため、排水トラップ管路14に流入する洗浄水の流量が減少し、サイホン作用は終了する。コントローラ40は、次いで、加圧ポンプ34の回転数を再び上昇させ、回転数は、時刻t10には3500rpmまで上昇される。この回転数は、ブロー領域である時刻t10から時刻t11まで維持される。
【0051】
ここで、ブロー領域においてジェット吐水口16から吐出される洗浄水の流量は、サイホン起動領域と同じであるが、ブロー領域においては、ボウル部12内に溜水が殆ど残っていないため、排水トラップ管路14に流入する洗浄水の流量は比較的少なく、サイホン作用が再び起動されることはない。このブロー領域においては、ボウル部12や排水トラップ管路14内に残った汚物が、ジェット吐水口16からの洗浄水により排水管Dに押し出される。なお、ブロー領域の終了時刻である時刻t11は、後述するように、コントローラ40に内蔵された吐水量調整手段40aによって調整される。
【0052】
また、貯水タンク32内の水位は、ジェット吐水によって低下するが、通常使用において、下端フロートスイッチ32cがONになる水位までは低下されない。何らかの不具合により貯水タンク32内の水位が異常に低下し、下端フロートスイッチ32cがONになった場合には、加圧ポンプ34の損傷を防止するため、コントローラ40は加圧ポンプ34を緊急停止させる。
【0053】
次に、コントローラ40は、時刻t11において、加圧ポンプ34の回転数を低下させ、加圧ポンプ34は時刻t12までに停止される。ジェット吐水終了後もリム吐水は継続されており、これにより、ボウル部12内の溜水水位が上昇される。コントローラ40は、時刻t13において、切替弁28に信号を送り、リム吐水側に切り替えられていた切替弁28を、タンク給水側に切り替える。切替弁28は、時刻t14までには、タンク給水側に完全に切り替えられ、以後、供給された洗浄水は全て貯水タンク32に流入する。なお、ジェット吐水が終了した時刻t11から切替弁28に信号を送る時刻t13までの時間である後リム洗浄時間は、後述するように、コントローラ40に内蔵された吐水量調整手段40aによって調整される。
【0054】
また、洗浄水が貯水タンク32に流入することにより貯水タンク32内の水位は上昇され、時刻t15において、水位が所定の水位まで上昇して上端フロートスイッチ32bがONになる。コントローラ40は、上端フロートスイッチ32bがONになると、電磁弁22に信号を送り、これを閉鎖させる。
【0055】
一方、コントローラ40に内蔵された吐水量調整手段40aは、後述するように、前リム洗浄時においてセンサ30によって計測されたリム吐水の流量に基づいて、ブロー領域の時間及び後リム洗浄時間を変化させることにより、ジェット吐水口16から吐出させるジェット吐水量及びリム吐水口18から吐出させるリム吐水時間を調整する。さらに、コントローラ40は、電磁弁22が閉鎖された後、切替弁28に信号を送り、タンク給水側に切り替えられていた切替弁28を時刻t16までにリム吐水側に切り替える。これにより、ボウル部12の一回の洗浄が終了し、待機状態に復帰する。
【0056】
次に、図4を参照して、コントローラ40に内蔵された吐水量調整手段40aによる吐水量の調整を説明する。なお、本実施形態における吐水量の調整は、主に、定流量弁20の個体差による流量のばらつきにより、洗浄水が不足したり、洗浄水が無駄に使用されることを防止する目的で実行される。
【0057】
まず、ステップS0の待機状態において、便器洗浄スイッチ(図示せず)が小洗浄側に操作されると、コントローラ40は、小洗浄信号を電磁弁22等に出力する(ステップS1)。なお、吐水量調整手段40aによる吐水量の調整は、吐出される洗浄水の総量が少ない小洗浄の場合に特に有効であり、本実施形態においては、小洗浄の場合のみ吐水量の調整が実行される。コントローラ40から小洗浄信号が発せられることにより、ステップS2において前リム洗浄が開始(図3の時刻t4)されると共に、この前リム洗浄中において、センサ30はリム吐水流量を計測する(ステップS3)。なお、この前リム洗浄の持続時間は、前回までの洗浄に基づいて、吐水量調整手段40aにより決定されたものが使用される。続いて、ステップS4においてジェット洗浄が実行され(図3の時刻t5)、ステップS5において後リム洗浄が開始される(図3の時刻t11)。
【0058】
ここで、各洗浄時における吐水量は、デフォルト値として、通常水圧において、定流量弁20が設計値通りの流量を通過させる場合に最適な値が設定されている。このデフォルト値は、工場における検査等による通水時には変更されることがない。さらに、水洗大便器1が現場に設置され、試運転によって最初に小洗浄が実行されたときはデフォルト値により洗浄が実行され、ステップS3で計測されたリム吐水の流量は、以後の小洗浄時における吐水量の調整のために参照される。
【0059】
次に、ステップS6において、切替弁28が、貯水タンク32側に切り替えられる(図3の時刻t13)。さらに、ステップS7においては、上端フロートスイッチ32bがONになったか否かが判断され、ONになるまでこの処理が繰り返される。
【0060】
貯水タンク32の水位が上昇し、上端フロートスイッチ32bがONになると、ステップS8に進み、ここで電磁弁22が閉鎖される(図3の時刻t15)。次に、ステップS9において、今回及び過去に計測された前リム吐水の流量の移動平均が計算される。本実施形態においては、新しく計測された前リム吐水の流量を含め直近50回の流量が平均される。なお、計測された前リム吐水の流量が50回に満たない場合には、過去の全ての流量が平均される。
【0061】
さらに、ステップS9においては、前リム吐水の流量の移動平均値に基づいて、次回の小洗浄における吐水量が決定される。即ち、本実施形態においては、移動平均値を3段階に分類して、夫々の場合に適する3つの洗浄モードの何れかが選択される。まず、計算された移動平均値がほぼ設計値通りの場合、即ち、定流量弁20がほぼ公称値通りである約11〜13リットル/分の流量である場合には、前リム洗浄時間(図3の時刻t4〜t5の間)が約4.5秒、ジェット吐水のブロー領域(図3の時刻t10〜t11の間)が約0.94秒、後リム洗浄時間(図3の時刻t11〜t13の間)が約3.2秒に設定される。これにより、前リム洗浄時間においては約0.9リットル、ブロー領域においては約1.0リットル、後リム洗浄時間においては約0.65リットルの洗浄水が夫々吐水され、便器洗浄全体では約4.5リットルの洗浄水が使用される。
【0062】
また、移動平均値が設計値よりも小さい場合、即ち、定流量弁20が公称値よりも少ない約11リットル/分未満の流量である場合には、前リム洗浄時間、ブロー領域、後リム洗浄時間は、夫々約4.8秒、約0.99秒、約3.9秒に設定される。これにより、各期間において約0.8リットル、約1.1リットル、約0.65リットルの洗浄水が夫々吐水され、便器洗浄全体では約4.4リットルの洗浄水が使用される。
【0063】
さらに、移動平均値が設計値よりも大きい場合、即ち、定流量弁20が公称値よりも多い約13リットル/分以上の流量である場合には、前リム洗浄時間、ブロー領域、後リム洗浄時間は、夫々約4.2秒、約0.90秒、約2.6秒に設定される。これにより、各期間において約1.05リットル、約1.0リットル、約0.65リットルの洗浄水が夫々吐水され、便器洗浄全体では約4.8リットルの洗浄水が使用される。このように、次回の洗浄モードが選択されると、図4の1回の処理が終了し、ステップS0の待機状態に復帰する。
【0064】
本発明の実施形態の水洗大便器によれば、リム吐水量及びジェット吐水量を変化させているので、便器の洗浄能力を維持しながら、定流量弁の個体差が大きい場合でも常に適量の洗浄水を供給することができる。
【0065】
また、本実施形態の水洗大便器によれば、切替弁を使用することにより、後リム洗浄と並行して貯水タンクへの給水が開始されるので、後リム洗浄終了後のタンク給水時間を短縮することができる。さらに、切替弁による洗浄水の振り分けを適宜設定することにより、排水トラップ管路が封水されるまでの時間と、タンク給水が終了する時間を適宜設定することができる。
【0066】
このように、定流量弁の実際の流量にあわせて前リム洗浄、ジェット吐水、後リム洗浄における吐水量を配分することにより、洗浄能力を低下させることなく、洗浄水の浪費を防止することができる。また、本件発明者により、各期間の吐水には次のような作用、効果があることが見出されている。即ち、前リム洗浄における吐水には、ボウル部の表面に付着している汚物をボウル部の溜水中に落下させる効果があり、特に、本実施形態のように旋回流によってボウル部を洗浄する水洗大便器においては、前リム洗浄の吐水によりトイレットペーパーや浮遊汚物を溜水の中央に集めることができる。これにより、サイホン作用発生時に、浮遊汚物等を効果的に排水トラップ管路に排出することができる。また、前リム洗浄の吐水によりボウル部内の溜水面が上昇し、水頭ヘッド圧が高くなって洗浄水が排水トラップ管路に押し込まれるので、サイホン作用を早期に起動しやすくするという効果もある。
【0067】
一方、後リム洗浄における吐水は、確実に排水トラップ管路を封水することができる吐水量が必要である。このため、定流量弁の流量が少ない場合には、定流量弁が設計値通りに構成されている場合よりも後リム洗浄を長くしないと、封水切れが発生する虞がある。逆に、定流量弁の流量が多い場合には、設計値通りに構成されている場合よりも後リム洗浄を短くしないと、無駄水が発生する。
【0068】
また、ジェット吐水は、主にサイホン作用を起動させ、これによりボウル部内の洗浄水及び汚物を排出するためのものであるが、ブロー領域(図3の時刻t10〜時刻t11)におけるジェット吐水には、排水トラップ管路の途中からボウル部内に戻ろうとしている浮遊汚物等を、排水トラップ管路の最高部を越えて下降管に落とす作用がある。
【0069】
なお、上述した実施形態においては、サイホン起動領域(図3の時刻t8〜時刻t9)における加圧ポンプの回転数は3500rpmであり、サイホン持続領域(図3の時刻t9〜時刻t10)では2600rpm、ブロー領域では3500rpmであったが、この回転数及び各領域の期間を適宜変更することもできる。例えば、サイホン起動領域の加圧ポンプの回転数を3600rpm程度に高めることにより、サイホン作用の起動時刻を更に早めることができる。また、ブロー領域の加圧ポンプの回転数を3600rpm程度に高めることにより、ボウル部内に戻ろうとしている浮遊汚物等を強く押し出すことができるので、ブロー領域の時間を短くしても、同程度の汚物押し出し作用を期待することができる。或いは、ブロー領域の回転数は変化させずに、期間を長くすることにより、浮遊汚物等をより確実に押し出すことが可能になり、発明者による実験では最も好ましい結果が得られている。
【0070】
これらの作用、効果を勘案して、定流量弁の流量が少ない場合には、後リム洗浄の時間を延長して封水に必要な洗浄水を確保すると共に、前リム洗浄の時間も延長して、浮遊汚物等を溜水面の中央に集めると共に、溜水水位を上昇させてサイホン作用を早期に起動しやすくすることにより良い結果を得ることができる。これは、特に、小洗浄においては、強いサイホン作用を発生させることよりも、弱いサイホン作用でも確実に汚物を排出できる状態をつくることが重要であるためである。また、ジェット吐水に関しては、上記の変更に加えて、或いは単独に、ブロー領域の時間を長くすることが効果的である。
【0071】
一方、定流量弁の流量が多い場合には、無駄水の発生を防止するために後リム洗浄の時間を短縮し、これにより節約された洗浄水の一部を、前リム洗浄に振り向け、浮遊汚物の確実な排出を可能にする。また、ジェット吐水に関しては、この変更に加えて、或いは単独に、ブロー領域の時間を長くすることが効果的である。
【0072】
さらに、上述した本発明の実施形態においては、吐水量調整手段は、直近の50回のリム吐水の流量の移動平均により吐水量を調整していたが、変形例として、他のアルゴリズムにより吐水量を調整することもできる。例えば、最新の1回のリム吐水の流量に基づいて、次回の吐水量を決定しても良い。これにより、水道の給水圧の短期的な変動に対応して、吐水量を調整することができる。
【0073】
或いは、最新のリム吐水の流量と、その前のリム吐水の流量に基づいて吐水量を調整しても良い。例えば、リム吐水の流量を5段階程度にランク分けしておき、最新のリム吐水の流量と、その前のリム吐水の流量の隔たりが2段階以内である場合には、最新のリム吐水の流量に基づいた吐水量を次回の洗浄に使用する。また、隔たりが2段階よりも大きい場合には、前回のリム吐水の流量のランクを最新のリム吐水の流量のランクに2段階近づけたランクに基づいた吐水量を次回の洗浄に使用する。これにより、吐水量の即応性と、安定性のバランスをとることができる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、最新のリム吐水の流量に基づいて決定された吐水量又は吐水時間は、次回の便器洗浄において使用されていたが、最新のリム吐水の流量を今回の便器洗浄に反映させることもできる。
【0075】
このような変形例として、最新の便器洗浄において検出されたリム吐水の流量が、前回のリム吐水の流量よりも所定流量以上少ない場合に、貯水タンクが規定の貯水量に復帰された後、追加吐水を行ってボウル部内の水位を上昇させるように、コントローラを構成することもできる。即ち、最新の便器洗浄における前リム吐水の流量が、前回の前リム吐水の流量よりも大幅に少ない場合には、前回よりも大幅に流量が低下している後リム洗浄が、流量が多かった前回の便器洗浄に基づいて決定されたリム吐水時間だけ行われたことになる。このため、最悪の場合には、後リム洗浄による洗浄水の量が不足して、排水トラップ管路を封水できないことになる。そこで、コントローラは、このような洗浄水の不足が発生することのないように、追加吐水を行ってボウル部内の水位を上昇させる。
【0076】
このように構成された本変形例によれば、便器洗浄中に浴室等で水道水を同時利用している場合等、急激に水道水圧が低下した場合にも、封水切れを防止することができる。
【0077】
また、本変形例においては、まず、最新のリム吐水の流量、及び前回まで便器洗浄に基づいて決定された後リム洗浄の時間(最新のリム吐水時間)から、ボウル部に供給された洗浄水の量が計算される。次に、計算された洗浄水の量と、排水トラップ管路を封水するために必要な、予め記憶されている洗浄水の量から洗浄水の不足分を求め、この洗浄水の不足分が追加吐水としてボウル部に供給される。
【0078】
このように構成された本変形例によれば、排水トラップ管路を確実に封水することができると共に、追加吐水の量が多すぎることによる無駄水の発生を防止することができる。
【0079】
或いは、上述した実施形態のように、吐水流量を数段階にランク分けして後リム洗浄時間を各ランク毎に設定している場合には、最新のリム吐水の流量と前回のリム吐水の流量の隔たりのランク数に応じて、追加吐水の量を予め設定しておいても良いし、洗浄水の不足分とは無関係に予め十分な量を設定しておいても良い。
【0080】
さらに、追加吐水は、電磁弁及び切替弁を、適宜開放し又は切り替えることによりリム吐水口を介して行っても良いし、加圧ポンプを低速で作動させることによりジェット吐水口を介して行っても良い。
【0081】
或いは、追加吐水は、貯水タンク内から延びるオーバーフロー流路(図示せず)を介して行うこともできる。オーバーフロー流路は、貯水タンク内の水位が所定水位を越えたとき、貯水タンク内の洗浄水をボウル部に排出し、貯水タンクから洗浄水が溢れるのを防止するように構成される。このオーバーフロー流路は、リム吐水口又はジェット吐水口を介してボウル部に連通するように構成することができる。或いは、オーバーフロー流路を、リム吐水口及びジェット吐水口とは別に設けた開口を介してボウル部に連通するように構成することもできる。
【0082】
なお、オーバーフロー流路を介して追加吐水を行う場合には、コントローラは、フロートスイッチが満水を検出した後も貯水タンクへの給水を継続し、必要な量の洗浄水をボウル部にオーバーフローさせる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器を後方右斜め上から見た斜視図である。
【図2】リム吐水及びジェット吐水の給水系統を示すブロック図である。
【図3】水洗大便器の洗浄時において各部が作動するタイミングを示すグラフである。
【図4】吐水量の調整手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
D 排水管
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 水洗大便器本体
2a 取付フレーム
2b 水受けトレイ
10 機能部
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 ジェット吐水口
16a ジェット側給水路
18 リム吐水口
18a リム側給水路
19 管路
20 定流量弁
22 電磁弁
24 リム吐水用バキュームブレーカ
26 リム吐水用フラッパー弁
28 切替弁
30 センサ
32 貯水タンク
32a タンク給水路
32b 上端フロートスイッチ
32c 下端フロートスイッチ
32d 金属板
34 加圧ポンプ
34a 洗浄水管路
36 ジェット吐水用バキュームブレーカ
38 ジェット吐水用フラッパー弁
40 コントローラ
40a 吐水量調整手段
42a 止水栓
42b 分岐金具
42c ストレーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
リム吐水口及びジェット吐水口が形成されたボウル部、及び排水トラップ管路を備えた水洗大便器本体と、
上記ジェット吐水口から吐水させる洗浄水を加圧する加圧ポンプと、
この加圧ポンプによって加圧すべき洗浄水を貯水する貯水タンクと、
水道の給水圧力により洗浄水を上記リム吐水口から吐出させるリム洗浄、及び上記貯水タンク内の洗浄水を上記加圧ポンプにより上記ジェット吐水口から吐出させるジェット洗浄を実行することにより上記ボウル部を洗浄する洗浄制御手段と、
上記リム吐水口から吐出させる洗浄水の給水経路に設けられ、上記リム洗浄中において上記リム吐水口から吐出されている洗浄水の流量を計測する流量計測手段と、
この流量計測手段によって計測された流量に基づいて、上記洗浄制御手段が実行する上記リム洗浄の吐水時間及び上記ジェット洗浄の吐水量を調整する吐水量調整手段と、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記リム洗浄は、上記ジェット洗浄の開始前に開始される前リム洗浄と、上記ジェット洗浄の終了後に行われる後リム洗浄からなり、上記流量計測手段は、上記前リム洗浄中における洗浄水の流量を計測する請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記吐水量調整手段は、上記加圧ポンプを作動させる時間を変化させることにより、上記ジェット洗浄の吐水量を調整する請求項1又は2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記吐水量調整手段は、上記加圧ポンプの回転数を変化させることにより、上記ジェット洗浄の吐水量を調整する請求項1又は2記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記ジェット洗浄は、サイホン作用を起動させるサイホン起動領域、このサイホン起動領域よりも流量が少なく、起動したサイホン作用を持続させるサイホン持続領域、及びサイホン作用終了後、上記排水トラップ管路内の汚物を押し出すブロー領域からなり、このブロー領域において、上記洗浄制御手段は、上記サイホン起動領域と概ね等しい回転数で上記加圧ポンプを作動させる請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記吐水量調整手段は、上記ブロー領域の時間を変化させることにより、上記ジェット吐水量を調整する請求項5記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記吐水量調整手段は、上記前リム洗浄中において計測された洗浄水の流量に基づいて、その直後に開始される上記ジェット洗浄の吐水量及び上記後リム洗浄の吐水時間を調整する請求項2乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項8】
上記吐水量調整手段は、上記流量計測手段によって計測された流量に基づいて、次回のボウル部の洗浄における上記リム洗浄の吐水時間及び上記ジェット洗浄の吐水量を調整する請求項1乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項9】
上記洗浄制御手段は、前回の便器洗浄時において計測されたリム吐水の流量に基づいて調整された吐水時間に亘ってリム洗浄するように構成されており、最新の便器洗浄において計測されたリム吐水の流量が、前回のリム吐水の流量よりも所定流量以上少ない場合には、上記貯水タンクを規定の貯水量に復帰させた後、追加吐水を行って上記ボウル部内の水位を上昇させる請求項1乃至8の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項10】
上記追加吐水により上記ボウル部に供給される洗浄水の量は、最新のリム吐水の流量、及び最新のリム洗浄の吐水時間に基づいて、上記排水トラップ管路が封水されるように上記洗浄制御手段によって決定される請求項9記載の水洗大便器。
【請求項11】
上記流量計測手段は、圧力センサである請求項1乃至10の何れか1項に記載の水洗大便器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate