説明

水洗大便器

【課題】逆流防止等のための構造の簡易化及び部品点数の低減を行う水洗大便器を提供する。
【解決手段】水洗大便器は、ボウル部12と、リム吐水口18及びジェット吐水口16と、排水トラップ管路14とを備えた便器本体2と、貯水タンク20と、リム吐水口と貯水タンクに洗浄水を供給する洗浄水供給手段34と、貯水タンクの洗浄水を加圧する加圧ポンプ22と、加圧された洗浄水をジェット吐水口へ供給するジェット側給水路46と、ジェット側給水路の最高位置よりも下流側に下端が接続され上端が貯水タンク内の上方に開口するオーバーフロー流路70と、オーバーフロー流路に設けられたフラッパー弁72と、を有し、ジェット側給水路の最高位置L1が貯水タンク内の最高水位L3と同じか高く設定され、オーバーフロー流路の上端位置L2がL3と同じか高く設定され、L2がオーバーフロー流路の下端位置L6及びボウル部の溜水水位L7よりも高く設定され、L6がL7と同じか高く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に示されているように、貯水タンクを設け、この貯水タンクの洗浄水を加圧ポンプにより加圧して便器本体に供給して、便器洗浄を行うような水洗便器が知られている。
この特許文献1に記載されている水洗大便器は、水道源から、リム通水路及び貯水タンクへ洗浄水を供給すると共に、貯水タンクの洗浄水を加圧ポンプにより加圧してゼット孔に供給して、便器を洗浄するようにした便器である。
【0003】
この水洗大便器には、さらに、洗浄水をゼット孔へ供給するための導水路に、逆止弁及び大気開放弁が設けられ、この逆止弁により、便器本体から貯水タンクへの洗浄水の逆流を防止すると共に、大気開放弁により導水路内に残った空気を外部に排出して、便器本体と貯水タンクの縁切りを行っている。
【0004】
さらに、この水洗大便器には、貯水タンクからオーバーフローした洗浄水をリム通水路へ流すためのオーバーフロー管が設けられ、また、このオーバーフロー管には、負圧破壊弁が設けられている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−264469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように特許文献1の水洗大便器においては、便器本体から貯水タンクへの洗浄水の逆流を防止したり、貯水タンクからのオーバーフローした洗浄水を外部へ排出することができるが、このために、逆支弁、大気開放弁、負圧破壊弁等を設けなければならず、その分、構造が複雑となり、部品点数も増大する等の問題があった。このため、特許文献1等に示された水洗大便器等の更なる改良が要望されていた。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来の問題点を解決するためになされたものであり、便器本体から貯水タンクへの逆流を防止すると共に貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を外部に排出するための構造を簡易化すると共に部品点数を低減することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、ボウル部と、洗浄水を吐出するリム吐水口及びジェット吐水口と、排水トラップ管路とを備えた便器本体と、洗浄水を貯水する貯水タンクと、洗浄水をリム吐水口に給水すると共に貯水タンクに補給する洗浄水供給手段と、貯水タンクの洗浄水を加圧する加圧ポンプと、この加圧ポンプにより加圧された洗浄水をジェット吐水口へ供給する上方に向けて凸型に形成されたジェット側給水路と、ジェット側給水路の最高位置よりも下流側に下端が接続され上端が上記貯水タンク内の上方に開口するオーバーフロー流路と、このオーバーフロー流路に設けられ洗浄水のジェット側給水路から貯水タンクへの逆流を防止する逆流防止手段と、を有し、ジェット側給水路の最高位置L1が貯水タンク内の通常使用時の最高水位L3と同じ位置又は高い位置に設定され、オーバーフロー流路の上端位置L2が貯水タンクの最高水位L3と同じ位置又は高い位置に設定され、オーバーフロー流路の上端位置L2がオーバーフロー流路の下端位置L6及びボウル部の溜水水位L7よりも高い位置に設定され、オーバーフロー流路の下端位置L6がボウル部の溜水水位L7と同じ位置又は高い位置に設定されていることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、先ず、ジェット側給水路の最高位置L1が貯水タンク内の通常使用時の最高水位L3と同じ位置又は高い位置に設定されているので、貯水タンクへタンク給水を行っているとき、貯水タンク内に溜まった洗浄水がジェット側給水路を経てボウル部に供給されることがないので、タンク給水時に貯水タンク内の最高水位L3を確保することができる。次に、オーバーフロー流路の上端位置L2が貯水タンクの最高水位L3と同じ位置又は高い位置に設定され、オーバーフロー流路の上端位置L2がオーバーフロー流路の下端位置L6及びボウル部の溜水水位L7よりも高い位置に設定され、オーバーフロー流路の下端位置L6がボウル部の溜水水位L7と同じ位置又は高い位置に設定されているので、貯水タンク内の洗浄水量が多くなりタンク内の水位が最高水位L3を超えた場合には、洗浄水は、オーバーフロー流路からジェット側給水路に排出されるが、このとき、オーバーフロー流路の上端位置L2が下端位置L6より高い位置に設定されているので、洗浄水は、オーバーフロー流路内をスムーズに流れることができ、さらに、このとき、オーバーフロー流路の下端位置L6がボウル部の溜水水位L7と同じ位置又は高い位置に設定されているので、オーバーフロー流路の上端位置L2からジェット側給水路へ空気が供給されて縁切りが図れる。また、加圧ポンプ起動時にジェット側給水路に溜まっていた空気を、オーバーフロー流路を介して貯水タンク内に排出させることができ、ジェット吐水口から排出される空気を少なくして、ジェット吐水口での空気排出に伴う発生音を小さくすることができる。
【0010】
本発明においては、好ましくは、ジェット側給水路の最高位置L1及びオーバーフロー流路の上端位置L2が、便器本体のあふれ縁の位置L5よりも高い位置に設定されている。
このように構成された本発明においては、ジェット側給水路の最高位置L1及びオーバーフロー流路の上端位置L2が便器本体のあふれ縁の位置L5よりも高い位置に設定されているので、万一、排水トラップ管路が詰まった場合であっても、ボウル部内の汚水の貯水タンクへの逆流を防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、加圧ポンプは非自吸式ポンプであり、貯水タンク内の通常使用時の最高水位L3が加圧ポンプのポンプ室の上端位置L4よりも高い位置に設定されている。
このように構成された本発明においては、加圧ポンプが非自吸式ポンプの場合には、貯水タンク内の通常使用時の最高水位L3が加圧ポンプのポンプ室の上端位置L4よりも高い位置に設定されているので、加圧ポンプの起動時に常にポンプ室は洗浄水により満たされているため、ポンプ室内に空気が残っていることにより生じる非自吸式ポンプのエア噛みを防止することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、貯水タンクはその上方側が大気開放されている開放型貯水タンクであり、この開放型貯水タンクのあふれ縁の位置L0が、便器本体のあふれ縁の位置L5よりも高い位置に設定されている。
このように構成された本発明においては、貯水タンクが開放型貯水タンクの場合、この開放型貯水タンクのあふれ縁の位置L0が、便器本体のあふれ縁の位置L5よりも高い位置に設定されているので、故障や排水トラップ管路が詰まる等の理由により、貯水タンク内にオーバーフロー流路の容量を越えた洗浄水が流入して、水位が上昇しても、洗浄水は、便器本体のあふれ縁から漏水し、これにより、使用者は便器の異状に気づき、何らかの対応策を取ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、便器本体から貯水タンクへの逆流を防止すると共に貯水タンクからオーバーフローした洗浄水を外部に排出するための構造を簡易化すると共に部品点数を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
先ず、図1乃至図4により、本発明の実施形態による水洗大便器の構造を説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態による水洗大便器の側面図であり、図2は図1に示す水洗大便器の平面図であり、図3は本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図であり、図4は本発明の実施形態による水洗大便器に用いられるフラッパー弁及びその周辺を示す概略断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル11により覆われている。
【0016】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐出するようになっている。
リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0017】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。
ここで、排水トラップ管路14のトラップ下降管14cの下端には、排水管15が接続されている。
【0018】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22によって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0019】
次に、図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を詳細に説明する。
図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、上流側から、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30、定流量弁32、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34、給水路切替弁36がそれぞれ設けられている。
【0020】
これらの定流量弁32、電磁開閉弁34、及び、給水路切替弁36は、図3に示すように、バルブユニット37として、一体的に組立られたものとなっている。
また、給水路切替弁36の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路38、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路40が接続されている。
【0021】
ここで、定流量弁32は、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。また、定流量弁32を通過した洗浄水は、電磁開閉弁34に流入し、電磁開閉弁34を通過した洗浄水は、給水路切替弁36により、リム側であるリム側給水路38からリム吐水口18へ、又は、タンク側であるタンク側給水路40から貯水タンク20に供給されるようになっている。ここで、給水路切替弁36は、リム側給水路38とタンク側給水路40の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更できる切替弁である。
【0022】
また、貯水タンク20の下部には、ポンプ側給水路45が接続されており、このポンプ側給水路45の下流端にはポンプ室22aを備えた加圧ポンプ22が接続されている。さらに、加圧ポンプ22とジェット吐水口16はジェット側給水路46により接続されており、加圧ポンプ22が、貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧してジェット吐水口16まで供給するようになっている。
【0023】
ジェット側給水路46は、図3に示すように、上方に向けて凸型に形成されており、この凸型部分の頂部46aが最高位置(ジェット側給水路の最高位置L1)となっている。
【0024】
次に、上述したリム側給水路38には、リム吐水用バキュームブレーカ48が設けられており、給水路24に負圧が発生した時に洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ48は、図3に示すように、ボウル部12の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ48の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク20に流入するようになっている。
タンク側給水路40にも、逆止弁であるバキュームブレーカ42が設けられており、洗浄水の貯水タンク20からの逆流を防止している。
【0025】
ここで、貯水タンク20は、密閉タイプの貯水タンクであり、タンク側給水路40と貯水タンク20の接続部には、ボール式逆止弁43が設けられている。このボール式逆止弁43により、貯水タンク20が後述するオーバーフロー流路70の上端70aの位置を越えて満水状態になった場合でも、ボール43aが浮上して、タンク側給水路40との接続部を閉鎖するので、洗浄水がタンク側給水路40に逆流することがないようになっている。
【0026】
同様に、戻り管路50と貯水タンクの接続部にも、同様に、ボール式逆止弁44が設けられており、貯水タンク20が後述するオーバーフロー流路70の上端70aの位置を越えて満水状態になった場合でも、洗浄水が戻り管路50に逆流することはないようになっている。
【0027】
さらに、タンク側給水路45には、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58が設けられている。これらのジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58は、加圧ポンプ22よりも下方の、貯水タンク20の下端部付近の高さに配置されている。このため、水抜栓58を開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク20内及び加圧ポンプ22内の洗浄水を排出することができるようになっている。また、貯水タンク20と加圧ポンプ22の間にジェット吐水用フラッパー弁56を配置することにより、貯水タンク20内の水位が加圧ポンプ22の高さよりも低くなった場合に、洗浄水が加圧ポンプ22から貯水タンク20に逆流し、加圧ポンプ22内の洗浄水が抜け加圧ポンプ22が空運転してしまうことを防止している。また、加圧ポンプ22の下方には、水受けトレイ60が配置されており、結露した水滴や漏水を受けるようになっている。
【0028】
また、機能部10には、電磁開閉弁34の開閉操作、給水路切替弁36の切替操作、及び、加圧ポンプ22の回転数や作動時間等を制御するコントローラ62が内蔵されている。
【0029】
貯水タンク20の内部には、上端フロートスイッチ64a、及び、下端フロートスイッチ64bが配置されている。
上端フロートスイッチ64aは、貯水タンク20内の水位が通常使用時の最高水位L3より少しだけ低い所定位置L10に達するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、電磁開閉弁34を閉鎖させる。
下端フロートスイッチ64bは、貯水タンク20内の水位が通常使用時の最低水位L11より少しだけ高い所定の水位L12まで低下するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、加圧ポンプ22を停止させる。
【0030】
さらに、オーバーフロー流路70が設けられ、このオーバーフロー流路70の上端70aは貯水タンク20内に開口し、その下端70bは、ジェット側給水路46の最高位置L1よりも下流側(ジェット吐水口16側)に接続されている。
このオーバーフロー流路70には逆止弁であるフラッパー弁72が取り付けられている。このオーバーフロー流路70及びフラッパー弁72により、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止すると共に、これらの間の縁切りを行うことができるようになっている。
【0031】
このフラッパー弁72を具体的に説明すると、図4に示すように、フラッパー弁72は、弁体72aを有し、弁体72aが、上側端に設けられた弁体軸72bを中心にして、回動できるようになっている。また、オーバーフロー流路70は、このフラッパー弁72の上方側70aと下方側70b1側の間で流路が開閉されるようになっている。
【0032】
フラッパー弁72の弁体72aは、加圧ポンプ22も駆動されていない通常は、実線で示す開位置を取り、この開位置において、貯水タンク20内の空気をジェット側給水路46へ供給することができる。また、加圧ポンプ22が起動した直後においても、弁体72aが実線で示す開位置にあるため、ジェット側給水路46内に残留する空気を矢印A(左向き)が示すように、オーバーフロー流路70を経て、貯水タンク20内に排出できるようになっている。また、開位置において、貯水タンク20内の水位がオーバーフロー流路70の上端70aを越えて上昇したときは、貯水タンク20内のオーバーフローした洗浄水が、矢印Bが示すように、オーバーフロー流路70を経て、ジェット側給水路46へ排出される。
【0033】
一方、加圧ポンプ22が起動してジェット側給水路46内に残留する空気が貯水タンク20側へ排出された後は、フラッパー72の弁体72aは、鎖線矢印Cが示すように、貯水タンク20内の洗浄水が加圧ポンプ22により加圧されてジェット吐水口16に供給されるとき、その洗浄水の水圧により、鎖線で示す閉位置を取り、ジェット側給水路46内を流れる洗浄水がオーバーフロー流路70に逆流しないようになっている。
【0034】
コントローラ62は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁開閉弁34、給水路切替弁36、加圧ポンプ22を順次作動させ、先ずリム吐水口18から吐水し、リム吐水を継続させながら、次にジェット吐水口16からの吐水を開始させて、ボウル部12を洗浄する。さらに、コントローラ62は、洗浄終了後、電磁開閉弁34を開放し、給水路切替弁36を貯水タンク20側に切り替えて洗浄水を貯水タンク20に補給する。貯水タンク20内の水位が上昇し、上端フロートスイッチ64aが規定の貯水量を検出すると、コントローラ62は、電磁開閉弁34を閉鎖して給水を停止する。
【0035】
次に、図5により、本実施形態による水洗大便器の洗浄動作を説明する。図5は、本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄動作を示すタイムチャートである。
図5に示すように、先ず、待機状態(時刻t0〜t1)において、給水切替弁36は、リム側給水路38とタンク側給水路40の両方に連通する中立位置となっている。次に、この待機状態(時刻t0〜t1)で、便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作する(時刻t1)と、前リム吐水(時刻t1〜t11)が開始される。このとき、先ず、給水切替弁36は、時刻t2〜t3の間、タンク側給水路40に全開状態(タンク側全開位置)とする。同時(時刻t2)に、電磁開閉弁34をONとして、洗浄水を給水路24に流入させる。これにより、給水切替弁36の上流側にある給水路24内に残留する空気を貯水タンク20内に排出することができる。この結果、給水切替弁36をいきなりリム側であるリム側給水路38に切り替えた場合に生じるリム吐水口18からの空気の排出音の発生を防止することができる。
【0036】
次に、時刻t3〜t4の間に、給水切替弁36をタンク側全開位置からリム側全開位置に切り替え、洗浄水をリム吐水口18へ供給し、洗浄水をリム吐水口18から吐水する。
【0037】
次に、時刻t2から所定時間(例えば、5秒)経過後、時刻t5〜t11の間において、ジェット吐水を行うために、加圧ポンプ22をONとし、加圧ポンプ22が貯水タンク20内の洗浄水をジェット吐水口16へ供給し、洗浄水をジェット吐水口16から吐水する。
【0038】
このジェット吐水のとき、加圧ポンプ22の回転数をコントローラ40が以下のように制御する。
先ず、加圧ポンプ22は、時刻t6〜t7において、比較的低速(例えば、1000rpm)に保持され、これにより、ジェット側給水路46の頂部46aの近傍(即ち、ボウル部12の溜水面より上方に位置する部分)に在留する空気をゆっくりとジェット吐水口16から排出する。この結果、加圧ポンプ22をいきなり本来の高速回転で始動した場合に生じるジェット吐水口16からの空気の排出音の発生を防止することができる。
【0039】
次に、時刻t8〜t9において、加圧ポンプ22を高速回転(例えば、3500rmp)させる。これにより、加圧ポンプ22による加圧力が大きくなり、ジェット吐水口16から大流量の洗浄水が吐水される。このとき、リム吐水口18から継続してリム吐水がなされているので、リム吐水口18から吐水される洗浄水の流量が加わり、大流量の洗浄水が、排水トラップ管路14の入口部14aに流入し、サイホン現象が急速に引き起こされ、ボウル部12内の溜水及び汚物が素早く排出される。このとき、排水トラップ管路14の入口部14aに流入する流量(第1の流量)は、リム吐水による流量とジェット吐水による流量の合計で、75リットル/分〜120リットル/分であり、従来と比較して大流量となっている。
【0040】
次に、時刻t9〜t11において、排水トラップ管路14の入口部14aに流入する洗浄水の流量(第2の流量)を、上記の流量(第1の流量)よりも少ない流量とするために、加圧ポンプ22の回転数を少し低減させる。この図5の例では、第2の流量を排水トラップ管路14の入口部14aに流入させるために、加圧ポンプ22の回転数を2段階(例えば、3300rmpと3200rpm)に減速させるようになっている。このとき、加圧ポンプ22の回転数は、1段階で変化させなくてもよく、また、3段階以上に減速させるようにしてもよい。
【0041】
このようにして、第1の流量により発生したサイホン現象が終了する直前(時刻t9)に、排水トラップ管路14の入口部14aに第1の流量よりも少ない第2の流量の洗浄水を流入させているので、汚物搬出可能な流速を生じさせかつ排水トラップ管路14の何れかの部位の断面をシールしてサイホン作用を継続させることができる。
【0042】
次に、時刻t11において、貯水タンク20内の洗浄水の水位が低下して、下端フロートスイッチ64bがONとなると、加圧ポンプ22の作動を停止する。このとき、加圧ポンプ22の回転数を、ジェット吐水口16からの吐水が漸減するように、時刻t11から時刻t12までの間、ゆっくりと低減させる。これにより、サイホン作用が急激に途切れることにより生じるサイホン切れ音の発生を防止することができる。
【0043】
時刻t11において、ジェット吐水は終了したが、このとき、リム吐水は依然として継続しており、時刻t11から時刻t13までの所定時間(例えば、4秒)、リム吐水(後リム吐水)だけ継続される。
この後、時刻t13〜t14において、給水切替弁36をリム側全開からタンク側全開に切り替える。これにより、貯水タンク20内に洗浄水が貯水される。
次に、時刻t15において、貯水タンク20内の水位が上昇することにより、上端フロートスイッチ32bがONとなり、これにより、電磁開閉弁34がOFF(閉操作)となり、洗浄水の貯水タンク20内への流入が停止される。
【0044】
次に、時刻t16において、給水切替弁36がリム側とタンク側の両方に連通する中立位置に戻り、待機状態(時刻t0と同じ状態)に復帰する。
【0045】
次に、再び、図3に戻り、本実施形態による水洗大便器における主要な部分の高さ方向の関係を説明する。
ここで、ジェット側給水路46の最高位置をL1、オーバーフロー流路70の上端位置(上端70aの位置)をL2、貯水タンク20内の通常使用時の最高水位をL3、加圧ポンプ22のポンプ室22aの上端位置L4、便器本体2のあふれ縁の位置をL5、オーバーフロー流路70の下端位置(下端70bの位置)L6、ボウル部12の溜水水位をL7とすると、本実施形態の水洗大便器では、これらの位置関係が以下のように設定されている。
【0046】
先ず、ジェット側給水路46の最高位置L1が貯水タンク20内の通常使用時の最高水位L3と同じ位置又は高い位置に設定されている。このようにL1とL3が設定されることにより、貯水タンク20へタンク給水を行っているとき、貯水タンク20内に溜まった洗浄水がポンプ側給水路45とジェット側給水路46を経てボウル部12に供給されることがないので、タンク給水時に貯水タンク20内の最高水位L3を確保することができる。
【0047】
次に、オーバーフロー流路70の上端位置L2が貯水タンク20の最高水位L3と同じ位置又は高い位置に設定され、且つ、オーバーフロー流路70の上端位置L2がオーバーフロー流路の下端位置L6及びボウル部の溜水水位L7よりも高い位置に設定されている。このとき、オーバーフロー流路70の下端位置L6はボウル部12の溜水水位L7と同じ位置又は高い位置に設定されている。
【0048】
このようにL2,L3、L6,L7の位置関係を設定したので、貯水タンク20内の洗浄水のオーバーフローを正しく機能させることができると共に、ジェット側給水路46へ空気を供給して貯水タンク内20とジェット吐水口16との縁切りを確実にして貯水タンク20内の最高水位L3を安定させることができ、そのジェット側給水路46に溜まった空気の貯水タンク20側への排出も促進できる。即ち、貯水タンク20内の洗浄水量が多くなりタンク内の水位が最高水位L3を超えた場合には、洗浄水は、オーバーフロー流路70からジェット側給水路46に排出される。このとき、オーバーフロー流路70の上端位置L2が下端位置L6より高い位置に設定されているので、洗浄水は、オーバーフロー流路70内をスムーズに流れることができる。さらに、このとき、オーバーフロー流路70の下端位置L6がボウル部12の溜水水位L7と同じ位置又は高い位置に設定されているので、ジェット側給水路46内の洗浄水はスムーズにボウル部12に排出される。一方、加圧ポンプ22の駆動終了後に貯水タンク20内の水位が低下しているときは、オーバーフロー流路70の上端位置L2から下端L6を通じてジェット側給水路46へ空気が供給され、貯水タンク20とジェット吐水口16とは縁切りが図れる。また、次の加圧ポンプ作動時にジェット側給水路46に溜まっていた空気を、オーバーフロー流路70を介して貯水タンク20内に排出させ、それにより、ジェット吐水口16から排出される空気を少なくして、そのジェット吐水口16における空気排出に伴う発生音を小さくすることができる。
【0049】
さらに、ジェット側給水路46の最高位置L1及びオーバーフロー流路70の上端位置L2が、便器本体2のあふれ縁の位置L5よりも高い位置に設定されているので、万一、排水トラップ管路14が詰まった場合であっても、ボウル部12内の汚水の貯水タンク20への逆流を防止することができる。
なお、ジェット側給水路46の最高位置L1及びオーバーフロー流路70の上端位置L2は、ボウル部12の溜水水位L7よりも高い位置にあるため、通常使用時において、洗浄水のボウル部12から貯水タンク20への逆流を防止している。
【0050】
さらに、加圧ポンプ22が非自吸式ポンプの場合には、貯水タンク20内の通常使用時の最高水位L3が加圧ポンプ22のポンプ室22aの上端位置L4よりも高い位置に設定されているので、加圧ポンプ22の起動時に常にポンプ室22aは洗浄水により満たされているため、ポンプ室22a内に空気が残っていることにより生じる非自吸式ポンプのエア噛みを防止することができる。
【0051】
次に、図6により、本発明の他の実施形態による水洗大便器を説明する。図6は、本発明の他の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
図6に示すように、貯水タンク80は、その上方側80aが開放されている開放型貯水タンクである。この貯水タンク80には、タンク側給水路40から洗浄水が供給され、また、戻り管路50から戻り洗浄水が供給されるようになっている。
また、この他の実施形態の水洗大便器には、上述した実施形態におけるボール式逆止弁43,44は設けられていない。
【0052】
ここで、この開放型貯水タンク80のあふれ縁の位置L0は、便器本体2のあふれ縁の位置L5よりも高い位置に設定されている。この結果、この他の実施形態による水洗大便器においては、万一、故障や排水トラップ管路14が詰まる等の理由により、貯水タンク80内にオーバーフロー流路70の容量を越えた洗浄水が流入して、水位が上昇しても、洗浄水は、便器本体2のあふれ縁から漏水する。この結果、使用者は便器の異状に気づき、何らかの対応策を取ることができる。これは、貯水タンク80はサイドパネル11により覆われているため、貯水タンク80から漏水しても、使用者は気付かないからである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器の側面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器の平面図である。
【図3】本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【図4】本発明の実施形態による水洗大便器に用いられるフラッパー弁及びその周辺を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0054】
1 水洗大便器
2 便器本体
10 機能部
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 ジェット吐水口
18 リム吐水口
20,80 貯水タンク
22 加圧ポンプ
24 給水路
32 定流量弁
34 電磁開閉弁
36 給水路切替弁
38 リム側給水路
40 タンク側給水路
43,44 ボール式逆止弁
45 ポンプ側給水路
46 ジェット側給水路
62 コントローラ
64a 上端フロートスイッチ
64b 下端フロートスイッチ
70 オーバーフロー流路
72 フラッパー弁
L1 ジェット側給水路の最高位置
L2 オーバーフロー流路の上端位置
L3 貯水タンク内の通常使用時の最高水位
L4 加圧ポンプのポンプ室の上端位置
L5 便器本体のあふれ縁の位置
L6 オーバーフロー流路の下端位置
L7 ボウル部の溜水水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
ボウル部と、洗浄水を吐出するリム吐水口及びジェット吐水口と、排水トラップ管路とを備えた便器本体と、
洗浄水を貯水する貯水タンクと、
洗浄水を上記リム吐水口に給水すると共に上記貯水タンクに補給する洗浄水供給手段と、
上記貯水タンクの洗浄水を加圧する加圧ポンプと、
この加圧ポンプにより加圧された洗浄水を上記ジェット吐水口へ供給する上方に向けて凸型に形成されたジェット側給水路と、
上記ジェット側給水路の最高位置よりも下流側に下端が接続され上端が上記貯水タンク内の上方に開口するオーバーフロー流路と、
このオーバーフロー流路に設けられ洗浄水の上記ジェット側給水路から上記貯水タンクへの逆流を防止する逆流防止手段と、
を有し、
上記ジェット側給水路の最高位置L1が上記貯水タンク内の通常使用時の最高水位L3と同じ位置又は高い位置に設定され、
上記オーバーフロー流路の上端位置L2が上記貯水タンクの最高水位L3と同じ位置又は高い位置に設定され、
上記オーバーフロー流路の上端位置L2が上記オーバーフロー流路の下端位置L6及び上記ボウル部の溜水水位L7よりも高い位置に設定され、
上記オーバーフロー流路の下端位置L6が上記ボウル部の溜水水位L7と同じ位置又は高い位置に設定されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記ジェット側給水路の最高位置L1及び上記オーバーフロー流路の上端位置L2が、上記便器本体のあふれ縁の位置L5よりも高い位置に設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記加圧ポンプは非自吸式ポンプであり、上記貯水タンク内の通常使用時の最高水位L3が上記加圧ポンプのポンプ室の上端位置L4よりも高い位置に設定されている請求項1又は請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記貯水タンクはその上方側が大気開放されている開放型貯水タンクであり、この開放型貯水タンクのあふれ縁の位置L0が、上記便器本体のあふれ縁の位置L5よりも高い位置に設定されている請求項1乃至3の何れか1項記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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