説明

水洗大便器

【課題】リム部を越えて洗浄水が飛散することを防止し便器の清掃性を向上させた水洗大便器を提供する。
【解決手段】水洗大便器1は、汚物受け面12と、リム部14と、棚部16と、を備えたボウル部4と、汚物を排出する排水路と、ボウル部の前後方向を中心とした一方の側の後方側に位置すると共にボウル部の棚部上に洗浄水を吐水して旋回流を形成する第1の吐水部20と、第1の吐水部より下流側に位置し、棚部上に洗浄水を吐水して第1の吐水部による旋回流と同一方向の旋回流を形成する第2の吐水部22と、洗浄水を第1の吐水部に供給する第1の通水路24と、洗浄水を第2の吐水部に供給する第2の通水路26と、を有し、第2の通水路は、第1の吐水口外側のリム部の内部に形成され、第2の吐水部は、ボウル部の前後方向を中心とした他方の側の前方側でリム部の曲率半径が小さい領域の下流側で曲率半径が大きくなる領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係わり、特に、旋回流を形成して洗浄及び汚物の排出を行う水洗便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているような、ボウル形状の汚物受け面と、上縁部でありその内周面が内方に向ってオーバーハングしたリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部とを備えたボウル部と、ボウル部の下方にその入口が接続され汚物をサイホン作用により排出する排水路と、を備えた水洗大便器が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された水洗大便器は、ボウル部の棚部上に洗浄水を吐水し旋回流を形成する第1の吐水部と、ボウル部の棚部上に第1の吐水部による旋回流の旋回方向と同一方向に洗浄水を吐水する第2の吐水部と、洗浄水タンクから洗浄水を第1の吐水部に供給する第1の通水路と、第1の吐水部の上方のリム部の内部に形成され洗浄水タンクから洗浄水を第2の吐水部に供給する第2の通水路と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表特許WO2004/022862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された水洗大便器においては、第1の吐水部から棚部に吐水された洗浄水が、リム部の内周面に沿って旋回するようになっている。ここで、水洗大便器のボウル部の清掃性を向上させるためには、リム部の内周面がオーバーハングしていないか、又は、オーバーハングの度合いが小さいことが望ましい。しかしながら、リム部の内周面がオーバーハングしていない等の場合には、第1の吐水部から吐水された洗浄水が、リム部を越えて外部に飛散するので、このような構造を採用することは困難であった。
【0006】
さらに、上述した特許文献1の水洗大便器においては、第2の吐水部に洗浄水を供給する第2の通水路が第1の吐水部の上方のリム部の内部に形成されているので、第2の通水路内で発生するエネルギーロスと落差により、第2の吐水部から吐水される洗浄水の流速が低下し、これにより、下流側にあるボウル面を十分に洗浄できないという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、従来の水洗大便器が持つ問題点を解決するためになされたものであり、リム部を越えて洗浄水が飛散することを防止し便器の清掃性を向上させた水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、給水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、上縁部を構成するリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部と、を備えたボウル部と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水路と、ボウル部の前後方向を中心とした一方の側の後方側に位置すると共にボウル部の棚部上に洗浄水を吐水して旋回流を形成する第1の吐水部と、ボウル部の第1の吐水部より下流側に位置し、棚部上に洗浄水を吐水して第1の吐水部による旋回流と同一方向の旋回流を形成する第2の吐水部と、給水源から洗浄水を第1の吐水部に供給する第1の通水路と、給水源から洗浄水を第2の吐水部に供給する第2の通水路と、を有し、第2の通水路は、第1の吐水口外側のリム部の内部に形成され、第2の吐水部は、ボウル部の前後方向を中心とした他方の側の前方側で上記リム部の曲率半径が小さい領域の下流側で曲率半径が大きくなる領域に形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、給水源から洗浄水を第2の吐水部に供給する第2の通水路を第1の吐水口外側のリム部の内部に形成するようにしたので、洗浄水の流速を極力低下させることなく第2の吐水部に導くことができ、さらに、第1の吐水部から吐水された洗浄水が最も飛散し易い領域であるボウル部の前後方向を中心とした他方の側の前方側でリム部の曲率半径が小さい領域の下流側で曲率半径が大きくなる領域に第2の吐水部を形成したので、第1の吐水部から吐水された洗浄水が、第2の吐水部から吐水される洗浄水により誘導され、これにより、第1の吐水部から吐水された洗浄水がリム部を越えて飛散することを抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、第1の吐水部は、水平方向に扁平な開口を備えている。
このように構成された本発明においては、第1の吐水部から吐水される洗浄水の上方向の流れ成分を極力なくすることができるので、第1の吐水部から吐水された洗浄水がリム部を越えて飛散することをより効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、第2の通水路は、第1の吐水部と同じレベルに形成されている。
このように構成された本発明においては、第2の通水路が第1の吐水部と同じレベルに形成されているので、洗浄水が第2の通水路の流れるときにエネルギーロスが少なくなり、これにより、第2の吐水部から吐水される洗浄水の流速を所望の値に保持することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、ボウル部のリム部の内周面は、棚部からほぼ垂直方向に延びる平坦面により形成されている。
このように構成された本発明においては、ボウル部のリム部の内周面が棚部からほぼ垂直方向に延びる平坦面により形成されているので、リム部がオーバーハングにより形成されたものよりも、清掃性が向上する。
【0012】
本発明において、好ましくは、排出路と対向する箇所に設けられたゼット穴と、このゼット穴に給水源から洗浄水を供給する第3の通水路と、を有し、第2の通水路が、第3の通水路の一部に形成された開口から下流側に形成されている。
このように構成された本発明によれば、第1の通水路と第2の通水路を独立して形成することができるので、第1の吐水口と第2の吐水口に供給される洗浄水量を正確に分配することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、リム部を越えて洗浄水が飛散することを防止し便器の清掃性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿って見た断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿って見た断面図(貯水タンクは省略)である。
【図4】図1のIV-IV線に沿って見た部分断面図である。
【図5】図1のV-V線に沿って見た断面図である。
【図6】図1のVI-VI線に沿って見た断面図である。
【図7】本発明の実施形態による水洗大便器のボウル部(棚部)の位置を任意の位置♯0〜♯15により示した平面図である。
【図8】本発明の他の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿って見た部分断面図である。
【図10】は図8のX−X線に沿って見た部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態による水洗大便器を添付図面を参照して説明する。先ず、本発明の実施形態による水洗大便器の基本構造を図1乃至図3により説明する。ここで、図1は本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、図2は図1のII−II線に沿って見た断面図であり、図3は図1のIII−III線に沿って見た断面図(貯水タンクは省略)である。
【0016】
図1乃至図3に示すように、本実施形態による水洗大便器1は、表面に釉薬層が形成された陶器製であり、下部にスカート部2が形成され、上半部のうち前方にボウル部4が形成され、後方上部に導水路6、後方下部にサイホン作用により汚物を排出する排水路8がそれぞれ形成されている。さらに、水洗大便器1の後方上部には、導水路6に連通する、貯水タンク10が設けられている。また、この貯水タンク10内には、排水弁11が設けられており、操作レバー(図示せず)により開閉するようになっている。なお、本発明は、貯水タンクを備えた水洗大便器以外に、水道水の圧力を使用した、例えば、フラッシュバルブを備えたタイプの水洗大便器等にも適用可能である。
【0017】
ボウル部4は、ボウル形状の汚物受け面12と、上縁部を構成するリム部14と、この汚物受け面12とリム14との間に形成された棚部16を備えている。ここで、リム部14の内側面14aは、上から見て死角になる箇所がないように、棚部16からほぼ垂直方向に延びる平坦面(スムーズな平面)により形成されている。
【0018】
ボウル部4の汚物受け面5の中央で溜水の水面下となる箇所には排水路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延び、この上昇路8bには下降路(縦管)8cが連続し、下降路8cの下端は、ジョイント(図示せず)を介して排出管(図示せず)に接続されている。
更に、水洗大便器1には、この排水路8の入口8aと対向する箇所に汚物を効率的に排水路8に押し込むためのゼット穴18が設けられている。
【0019】
導水路6は、便器の前方に向かって、3つの通水路、即ち、詳細は後述する第1の吐水口20に洗浄水を供給する第1の通水路24、後述する第2の吐水口22に洗浄水を供給する第2の通水路26、上述したゼット穴18に洗浄水を供給する第3の通水路28に分岐している。具体的には、導水路6は、その下流側で、第1の通水路(第1の通水路と第2の通水路の共通通水路25でもある)24と、第3の通水路28に分岐し、次に、第1の通水路24(共通通水路25の下流側(具体的には後述するリム部14の隔壁14bの上流端14c)で、第2の通水路26が接続されている。
ここで、導水路6の下流側には、エア抜き穴30が形成され、導水路6内の空気を第1の吐水口20から外部へ排出できるようになっている。
【0020】
次に、図1乃至図3に加えて、図4乃至図7を参照して、本実施形態による水洗大便器1の詳細構造を説明する。ここで、図4は図1のIV-IV線に沿って見た部分断面図であり、図5は図1のV-V線に沿って見た断面図であり、図6は図1のVI-VI線に沿って見た断面図であり、図7は本発明の実施形態による水洗大便器のボウル部(棚部)の位置を任意の位置♯0〜♯15により示した平面図である。
【0021】
先ず、図7を参照し、第1の吐水口20及び第2の吐水口22の位置について説明する。図7において、棚部16の位置は、反時計回りで♯0〜♯15により示されている。各位置の間隔は任意であり、第1の吐水口20の位置を♯0、第2の吐水口22の位置を♯10、ボウル部4の前端部の位置を♯7、ボウル部4の後端部の位置を♯15として示している。
【0022】
ボウル部4(棚部16)は、ほぼ楕円形状をしており、前方視のとき左側と右側が対称となっており、また、概略的には、棚部16の♯12〜♯2の領域及び♯5〜♯9の領域では相対的に曲率半径が小さく、一方、棚部16の♯2〜♯5の領域及び♯9〜♯12の領域では相対的に曲率半径が大きくなっている。また、棚部16の♯3〜♯11の領域がボウル部4の前方側であり、棚部16の♯11〜♯3の領域がボウル部4の後方側である。
【0023】
第1の吐水口20及び第2の吐水口22の配置位置をボウル部4の曲率半径の大きさとの関係で説明すれば、第1の吐水口20は、ボウル部4の前後方向を中心とした一方の側(図7において、前方視で左側)のボウル部4の後方側に位置する小さな曲率半径の領域である棚部16の♯0の位置に配置され、第2の吐水口22は、他方の側(右側)のボウル部4の小さな曲率半径から大きな曲率半径に変化する棚部16の位置(♯9)の近傍領域(♯10)に配置されている。
【0024】
なお、本実施形態においては、これらの位置以外に、第1の吐水口20は、棚部16の♯0から♯2の間の領域、第2の吐水口22は、棚部16の♯9〜♯11の間の領域に配置しても良い。
【0025】
次に、図4を参照して、第1の吐水口22の開口形状について説明する。第1の吐水口22は、水平方向に扁平な形状の開口22aを備えており、この開口22aの底面はほぼ水平状態となっている。
【0026】
次に、図1及び図4乃至図6を参照して、第2の吐水口22へ洗浄水を供給するための第2の通水路26について説明する。図4に示すように、第2の通水路26は、第1の吐水口20と同じレベルにあり、ボウル部4のリム部14内に設けられた隔壁14bを介して第1の吐水口20の外側に形成されている。また、図1、図5、図6に示すように、第2の通水路26は、リム部14の内部に形成され、反時計回りの方向に延び、第2の吐水口22の位置まで延びている。なお、この第2の通水路26のレベルは前端から後端まで同じであり、エネルギーロスが少なくなるように形成されている。
【0027】
ここで、上述したように、リム部14の内周面は、棚部16からほぼ垂直方向に延びる平坦面(スムーズな平面)により形成されているが、本実施形態はこの形状に限定されず、オーバーハングの度合いが小さい平坦面であっても良い。
【0028】
なお、上述した実施形態においては、ゼット穴18を形成して、効果的な洗浄を可能としているが、第1の吐水口20及び第2の吐水口22のみから棚部16上に洗浄水を吐水し、このゼット穴18を設けないようにしてもよい。
【0029】
次に上述した本発明の実施形態による水洗大便器における作用を説明する。
先ず、水洗大便器の基本的な作用を説明する。最初に、便器洗浄のための操作レバー(図示せず)を操作すると、貯水タンク10内に設けられた排水弁11が開き、貯水タンク10内の洗浄水が導水路6に流入し、導水路6から、第1の通水路24、第2の通水路26、第3の通水路28に分岐して流入する。なお、図1に示すように、第2の通水路26は、第1の通水路26の上流側領域から分岐している。
【0030】
第1の通水路24に流入した洗浄水は、第1の吐水口20に到達し、第1の吐水口20から棚部16上に吐水される。第2の通水路24に流入した洗浄水は、リム部14の内部の空間を通って第2の吐水口22に到達し、第2の吐水口22から棚部16上に吐水される。第3の通水路28に流入した洗浄水は、ゼット穴18に到達し、ゼット穴18から排水路8の入口8aに向けて噴出するようになっている。
【0031】
本実施形態による水洗大便器1においては、第1の吐水口20から吐水された洗浄水により、ボウル部4の♯0から前端♯7を通って♯10の領域までが洗浄され、さらに、第2の吐水口22から吐水された洗浄水及び第1の吐水口20から吐水された洗浄水の一部により、残りの♯10から♯0の領域が洗浄される。このようにして、本実施形態によれば、第1の吐水口20及び第2の吐水口22から吐水される洗浄水により、ボウル部4の全領域を効果的に洗浄することが出来るようになっている。
【0032】
さらに、ボウル部4において、第1の吐水口20及び第2の吐水口22により吐水された洗浄水は、反時計回りの旋回流となるので、ボウル部4内の汚物は、この旋回流の中心付近に集まり、排水路8のサイホン作用による吸引力と、ゼット穴18から排水路8の入口8aに向かう流れによる押し込み力により、効果的に排水路8の入口8aに送りこまれ、排水路8から外部に排出されるようになっている。
【0033】
(請求項1)
次に、第2の吐水口22を棚部16の♯10(♯9〜♯11の領域)位置に設けた理由を説明する。図7に示すように、第1の吐水口20から吐水された洗浄水は、ボウル部4内を矢印A1,A2,A3のように流れる。矢印A1の流れは、棚部16上を流れ、矢印A2の流れは、少し下方の領域を流れ、矢印A3の流れは、さらに下方の領域を流れる。
また、第2の通水路26を流れる洗浄水(矢印B1)は、第2の吐水口22において、矢印B2で示す流れとなり、曲率形状に沿って流れる。
【0034】
ここで、仮に、第2の吐水口22が存在しない場合には、矢印A1及びA2の流れは、ボウル部4の曲率形状に沿って旋回して流れる。しかしながら、矢印A3の流れは、リム部14に向かってほぼ垂直方向の流れとなるので、破線で示す矢印A4のように、リム部14を越えて、便器外に飛散することになる。
【0035】
しかしながら、本実施形態においては、第1の吐水口20から吐水された洗浄水が最も飛散し易い領域である棚部16の♯10(♯9〜♯11の領域)位置に、第2の吐水口22を設けたので、矢印A3の洗浄水の流れは、第2の吐水口22から吐水される洗浄水の流れである矢印B2の流れにより誘導され、ボウル部4の曲率形状に沿って矢印A5のように流れる。
【0036】
このようにして、本実施形態においては、第2の吐水口22から吐水された洗浄水により、第1の吐水口22から吐水された洗浄水がリム部14を越えて飛散することを効果的に抑制することができる。
【0037】
次に、本実施形態において、第1の吐水口20は、上述したように、水平方向に扁平な開口20aを備えているので、第1の吐水口20から吐水される洗浄水の上方向の流れ成分を極力なくすることができるので、第1の吐水口20から吐水された洗浄水がリム部14を越えて飛散することをより効果的に抑制することができる。
【0038】
次に、本実施形態において、第2の吐水口22に洗浄水を供給する第2の通水路26は、第1の吐水口20と同じレベルに形成されているので、洗浄水が第2の通水路26の流れるときにエネルギーロスが少なくなり、これにより、第2の吐水口22から吐水される洗浄水の流速を所望の値に保持することができる。
【0039】
さらに、本実施形態において、ボウル部4のリム部14の内周面14aは、棚部16からほぼ垂直方向に延びる平坦面により形成されているので、清掃の際には使い捨ての紙等を使用して簡単に内側面14aを拭き取ることができるので、リム部がオーバーハングにより形成された従来のものよりも、清掃性が向上する。
【0040】
次に、図8乃至図10により、本発明の他の実施形態による水洗大便器を説明する。図8は本発明の他の実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、図9は図8のIX−IX線に沿って見た部分断面図であり、図10は図8のX−X線に沿って見た部分断面図である。
この他の実施形態による水洗大便器の基本構造は、上述した図1乃至図7に示された水洗大便器と同じであるため、同一部分には同一符号を付し、説明は省略する。
【0041】
この他の実施形態による水洗大便器においては、第2の吐水口22に洗浄水を供給するための第2の通水路26の構造が、上述した実施形態と異なっており、上述した第3の通水路28の途中から分岐した構造となっている。具体的には、第2の通水路26は、ゼット穴18に洗浄水を供給する第3の通水路28の上流側の壁面に形成された開口26aにより、第3の通水路28から分岐し、この開口26aに連通し且つリム部14内で且つ第1の通水路24のレベルより低い位置に形成された連通部26bと、この連通部26bに接続され、リム部14内で且つ第1の通水路24と同じレベルに形成された通水路26cから構成され、連通部26bと通水路26cとは、若干の上がり傾斜部26eを介して接続されている。
【0042】
良好な洗浄効果を発揮するためには、第1の通水路24と第2の通水路26とに、洗浄水量を正確に分配することが好ましい。本実施形態においては、先ず、上流側で、第1の通水路24と第3の通水路28が分岐し、次に、下流側である第3の通水路28の途中の壁面に形成された開口26a、連通部26b、上がり傾斜部26e、通水路26cにより、第2の通水路26を形成するようにしたので、第1の吐水口20へ洗浄水を供給する第1の通水路24と第2の通水路26とがそれぞれ独立して形成されているので、換言すれば、上述した実施形態のように、共通通水路25を持たないので、第1の通水路24と第2の通水路26に供給される洗浄水量を正確に分配することができる。
なお、第2の通水路26には、上がり傾斜部26eが形成されているが、大きなエネルギーロスにはならず、第2の吐水口22から所望の洗浄水の流速を保持することができる。
【0043】
なお、本発明は、上述したサイホン作用により汚物を排出する便器以外に、サイホン作用を利用しない洗い落し式便器等にも、適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 水洗大便器
2 スカート部
4 ボウル部
6 導水路
8 排水路
8a 入口
10 貯水タンク
11 排水弁
12 汚物受け面
14 リム部
16 棚部
18 ゼット穴
20 第1の吐水口
22 第2の吐水口
24 第1の通水路
25 共通通水路
26 第2の通水路
26a 開口
28 第3の通水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と、上縁部を構成するリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部と、を備えたボウル部と、
このボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水路と、
上記ボウル部の前後方向を中心とした一方の側の後方側に位置すると共に上記ボウル部の棚部上に洗浄水を吐水して旋回流を形成する第1の吐水部と、
上記ボウル部の第1の吐水部より下流側に位置し、上記棚部上に洗浄水を吐水して上記第1の吐水部による旋回流と同一方向の旋回流を形成する第2の吐水部と、
上記給水源から洗浄水を第1の吐水部に供給する第1の通水路と、
上記給水源から洗浄水を第2の吐水部に供給する第2の通水路と、を有し、
上記第2の通水路は、上記第1の吐水口外側のリム部の内部に形成され、
上記第2の吐水部は、上記ボウル部の前後方向を中心とした他方の側の前方側で上記リム部の曲率半径が小さい領域の下流側で曲率半径が大きくなる領域に形成されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記第1の吐水部は、水平方向に扁平な開口を備えている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記第2の通水路は、上記第1の吐水部と同じレベルに形成されている請求項1又は請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記ボウル部のリム部の内周面は、上記棚部からほぼ垂直方向に延びる平坦面により形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
更に、上記排出路と対向する箇所に設けられたゼット穴と、このゼット穴に上記給水源から洗浄水を供給する第3の通水路と、を有し、上記第2の通水路が、上記第3の通水路の一部に形成された開口から下流側に形成されている請求項1に記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−207503(P2012−207503A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75897(P2011−75897)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】