説明

水洗大便器

【課題】 水洗大便器のタンクやタンク周囲に新たに部材や機器を設けることなく、タンク表面における結露の発生を防止でき、さらに、便器洗浄時、便器洗浄が開始されるまでの待ち時間の発生を回避できる水洗大便器を提供する。
【解決手段】 制御手段は、人体検知手段が人体を検知した際、給水手段を駆動し、洗浄水が便器洗浄に必要な所定水量に至るまでタンク内に洗浄水を供給した後、便器洗浄開始信号を受けると、排水手段を駆動することによりタンク内の洗浄水を便器へ供給し、便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水をタンク内に貯水していない状態で待機状態へ移行する結露防止洗浄動作モードを有し、切替手段により設定された通常洗浄動作モードと結露防止洗浄動作モードとの何れか一つの洗浄動作モードを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、便器洗浄用の洗浄水を貯留するタンクを備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器洗浄時にタンク内の洗浄水を便器へ供給した後、タンク内に次の便器洗浄を実行するために必要な所定量の洗浄水を貯水した状態で、次の便器洗浄まで待機する水洗大便器が知られている。このような水洗大便器に取り付けられたタンクは、温度や湿度が高い環境に長時間放置されると、タンクに貯水されている比較的低温の洗浄水によりその表面の温度が下げられ、タンク表面と周囲温度との温度差が大きくなって、タンク表面に結露が生じてしまう。そして、タンク表面と周囲温度との温度差が大きな状態が続くと、結露が次第に成長し、大きくなった水滴がタンク表面から垂れ落ちることにより床面等を濡らしてしまうという問題がある。
【0003】
こうした問題に対しては、これまで特許文献1及び2にそれぞれ記載されているように、タンクの内面に断熱材を沿設したり、便器と一体または別体でトイレ空間内に設置した空調機を利用して、トイレ空間内を除湿するなどの対策がなされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−158967号公報
【特許文献2】特開2000−45353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前者のように、タンクへ断熱材を沿設する場合、タンクは所定の貯水容量を確保しつつ、断熱材を取り付けるスペースも確保しなければならないため、タンクのサイズを大きくせざるを得ず、タンクを便器内部等の狭い空間へ配置することができなくなってしまうという問題がある。また、後者のような対策は、そもそもトイレ空間内に所定の機器を有していなければ実施することができない。
【0006】
上述したような部材や機器を設けることなく、結露の発生を防止する方法としては、便器洗浄時を除きタンクを空にしておく方法が考えられる。しかし、この方法では、使用者が便器洗浄の開始操作を行った際、タンクに便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水が貯水されるまで便器洗浄が開始されず、便器洗浄開始まで使用者に待ち時間を与えてしまう。これは使用者にとって、大変不便である。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、水洗大便器のタンクやタンク周囲に新たに部材や機器を設けることなく、タンク表面における結露の発生を防止でき、さらに、便器洗浄時、便器洗浄が開始されるまでの待ち時間の発生を回避できる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水洗大便器は、便器洗浄に用いられる洗浄水を貯水するタンクと、タンクに洗浄水を供給する給水手段と、タンク内に貯水された洗浄水を便器に供給する排水手段と、便器洗浄開始信号を出力する便器洗浄開始手段と、便器使用者の存在を検知する人体検知手段と、複数の洗浄動作モードのうち、一つのモードを実行する制御手段と、制御手段が実行する洗浄動作モードを切り替え設定する切替手段と、を備えた水洗大便器であって、制御手段は、便器洗浄開始信号を受けた際、排水手段を駆動することによりタンク内の洗浄水を便器へ供給した後、便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水をタンク内へ貯水した状態で待機状態へ移行する通常洗浄動作モードと、人体検知手段が人体を検知した際、給水手段を駆動し、洗浄水が便器洗浄に必要な所定水量に至るまでタンク内に洗浄水を供給した後、便器洗浄開始信号を受けると、排水手段を駆動することによりタンク内の洗浄水を便器へ供給し、便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水をタンク内に貯水していない状態で待機状態へ移行する結露防止洗浄動作モードと、を有し、切替手段により設定された通常洗浄動作モードと結露防止洗浄動作モードとの何れか一つの洗浄動作モードを実行することを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明においては、結露防止洗浄動作モードを選択して実行すると、温度や湿度が高い環境にタンクが長時間放置されても、待機状態において、タンクは便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水を貯水していない状態であるため、タンク内とタンク外の周囲との温度差を小さくすることができる。よって、従来のように、タンクやタンク周囲に新たに部材や機器を設けることなく、タンク表面に結露が生じることを防止することができる。
また、人体検知後、すぐにタンクへ洗浄水を供給するため、使用者が用を足す間にタンクへ洗浄水を給水することができ、使用者が便器洗浄を行うときには、すでにタンクは便器洗浄に必要な所定水量を貯水した状態となっているので、制御手段が便器洗浄開始信号を受けるとすぐに便器洗浄を行うことができる。したがって、制御手段が便器洗浄開始信号を受けてから便器洗浄を開始するまでの待ち時間の発生を回避することができる。
【0010】
このように、結露防止洗浄動作モードを選択して実行するだけで、タンクやタンク周囲に新たに部材や機器を設けることなく、タンク表面に結露が生じることを防止することができると共に、便器洗浄を開始するまでの待ち時間の発生を回避することができる。
【0011】
本発明は、好ましくは、結露防止洗浄動作モードでは、人体検知手段が人体を検知していない状態において、制御手段が便器洗浄開始信号を受けた場合、タンク内に所定水量の洗浄水が貯水されているときは、排水手段を駆動することにより、タンク内の洗浄水を便器へ供給し、便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水をタンク内に貯水していない状態で待機状態へ移行し、タンク内に所定水量の洗浄水が貯水されていないときは、給水手段を駆動することにより、洗浄水が便器洗浄に必要な所定水量に至るまでタンク内に洗浄水を供給した後、排水手段を駆動することにより、タンク内の洗浄水を便器へ供給し、便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水をタンク内に貯水していない状態で待機状態へ移行する。
【0012】
このように構成された本発明においては、結露防止洗浄動作モードの実行時、例えば人体検知手段が故障した場合でも、タンク内に便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水が貯水されているか否かに関わらず、便器使用者が便器洗浄開始手段を操作することにより、通常通りの便器洗浄が行えると共に、その後の待機状態において、タンク内に便器洗浄に必要な所定水量が貯水されていないため、タンク内とタンク周囲との温度差を小さくすることができ、タンク表面への結露発生を防止することができる。
また、便器使用者が便器洗浄開始手段を操作した際、すでに便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水が貯水されている場合は、すぐに便器洗浄を開始することができるため、便器洗浄時に、便器洗浄が開始されるまでの待ち時間が発生しない。
【0013】
本発明は、好ましくは、結露防止洗浄動作モードでは、待機状態において、タンク内に便器洗浄に必要な所定水量よりも少ない水量を貯水している。
【0014】
このように構成された本発明においては、結露防止洗浄動作モードの実行時、待機状態においてタンク内に便器洗浄に必要な所定水量よりも少ない水量の洗浄水を貯水しているため、タンク内の洗浄水の熱容量は、従来のものの待機状態における洗浄水の熱容量よりも小さくなる。したがって、洗浄水の温度が、従来のものの待機状態における洗浄水よりも上がりやすい状態となるので、タンク内の洗浄水とタンク周囲との温度差を小さくすることができる。
さらに、タンクへ比較的温度が低い洗浄水が供給される際、この比較的低温の洗浄水が、タンク内に予め存在しタンク周囲の温度に近い水温である洗浄水と混ざり合うため、給水時にタンク内に貯水される洗浄水は、従来のものよりも、タンク周囲の温度に近い温度となっている。したがって、給水時におけるタンク内の洗浄水とタンク周囲との温度差を小さくすることができる。
このように、従来のものよりも、待機時や給水時におけるタンク内の洗浄水とタンク周囲との温度差を小さくできるため、タンク表面への結露の発生をより確実に防止することができる。
【0015】
本発明は、好ましくは、タンクは、便器洗浄に必要な所定水量が貯水された状態を検出する第一の水位検出手段と、タンク内に便器洗浄に必要な所定水量よりも少ない水量が貯水された状態を検出する第二の水位検出手段とを有し、制御手段は、第一の水位検出手段及び第二の水位検出手段からの水位検出信号に基づいてタンク内に貯水される洗浄水の制御を行う。
【0016】
このように構成された本発明においては、より高い精度で、便器洗浄に必要な所定水量よりも少ない水量の洗浄水が貯水された状態で待機状態へ移行することができるため、安定的に結露の発生防止を図ることが可能となる。
【0017】
本発明は、好ましくは、人体検知手段が、便器使用者が便座に座ったことを検知する着座センサである。
【0018】
このように構成された本発明においては、着座した使用者は、通常、便器洗浄を行うため、便器非洗浄時に無駄にタンクに洗浄水が給水されることがなくなり、より結露発生防止効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水洗大便器によれば、タンクやタンク周囲に新たに部材や機器を設けることなく、タンク表面における結露の発生を防止する共に、便器洗浄時、便器洗浄が開始されるまで使用者に待ち時間を与えることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水洗大便器の部分側面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る水洗大便器を示す全体構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る制御装置周辺の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の水洗大便器の通常洗浄動作モードにおける洗浄動作を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態に係る水洗大便器の結露防止洗浄動作モードにおける洗浄動作を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る水洗大便器の結露防止洗浄動作モードにおける洗浄動作を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態に係る水洗大便器の着座センサの取り付け部を示す簡略図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る制御装置周辺の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る水洗大便器の結露防止洗浄動作モードにおける着座検知時の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態に係る水洗大便器の結露防止洗浄動作モードにおける非着座検知時の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【図12】本発明の第3実施形態に係る水洗大便器の結露防止洗浄動作モードにおいて制御装置が実行する制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る水洗大便器の実施の形態について説明する。まず、図1及び図2により、本発明の第1実施形態に係る水洗大便器の構造を説明する。ここで、図1は本発明の水洗大便器の部分側面図であり、図2は図1に示す水洗大便器の平面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置され、裏面に支持脚4aを有する便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されている。
【0023】
便器本体2には、汚物を受けるボウル形状のボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
【0024】
ジェット吐水口16は、ボウル部12の汚物を受ける汚物受け面20の底部20aに形成されており、排水トラップ管路14の入口14aに指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐出するようになっている
【0025】
リム吐水口18は、ボウル部12の上方に形成されており、このリム吐水口18からリム部22の内周面22aに沿って前方に吐出された洗浄水は、汚物受け面20の上縁とリム部22の下縁との間に形成されたボウル部12の棚部24から汚物受け面20に沿って旋回する流れ(旋回流)を形成するようになっている。
【0026】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。ここで、排水トラップ管路14のトラップ下降管14cの下端には、排水管26が接続されている。
【0027】
本実施形態のリム吐水に関しては、リム部22のリム吐水口18よりも後方側に形成されたリム導水路18aが、洗浄水を供給する洗浄水源である水道(図示せず)に直結されており、水道の給水圧力により、リム導水路18aに供給された洗浄水が、リム吐水口18から前方へ吐出されるようになっている。
【0028】
また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク28(図3参照)に貯水された洗浄水が、加圧ポンプ30によって加圧され、ボウル部12の後方側からジェット吐水口16にかけて形成されたジェット導水路16aを経て、大流量でジェット吐水口16から吐出されるようになっている。
【0029】
次に、図3により、本実施形態における水洗大便器1の機能部10を詳細に説明する。ここで、図3は本発明の水洗大便器を示す全体構成図である。図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路32が設けられ、この給水路32には、上流側から、止水栓34、ストレーナ36、分岐金具38、定流量弁40、ダイヤフラム式の電磁開閉弁42、給水路切替弁44がそれぞれ設けられている。そして、この給水路切替弁44の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路48、及び、貯水タンク28に洗浄水を供給するためのタンク側給水路50が接続されている。
【0030】
ここで、定流量弁40は、止水栓34、ストレーナ36、分岐金具38を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。また、定流量弁40を通過した洗浄水は、電磁開閉弁42に流入し、電磁開閉弁42を通過した洗浄水は、給水路切替弁44により、リム側であるリム側給水路48からリム吐水口18へ、又は、タンク側であるタンク側給水路50から貯水タンク28に供給されるようになっている。ここで、給水路切替弁44は、リム側給水路48とタンク側給水路50の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更できる切替弁である。
【0031】
上述したように、機能部10にはジェット吐水に用いられる洗浄水を貯水する貯水タンク28が内臓されている。この貯水タンク28の下部には、ポンプ側給水路52が接続されており、このポンプ側給水路52の下流端にはポンプ室30aを備えた排水手段である加圧ポンプ30が接続されている。加圧ポンプ30とジェット吐水口16は、ジェット側給水路54により接続されており、加圧ポンプ30が、貯水タンク28に貯水された洗浄水を加圧してジェット吐水口16まで供給するようになっている。
【0032】
貯水タンク28は、密閉タイプのタンクであり、タンク側給水路50と貯水タンク28の接続部には、フロート式逆止弁62が設けられている。このフロート式逆止弁62により、貯水タンク28が後述するオーバーフロー流路64の上端64aの位置を越えて満水状態になった場合でも、フロート62aが浮上して、タンク側給水路50との接続部を閉鎖するので、洗浄水がタンク側給水路50に逆流することがないようになっている。
【0033】
貯水タンク28に設けられたオーバーフロー流路64の上端64aは貯水タンク28内に開口し、その下端64bは、ジェット側給水路54に接続されている。このオーバーフロー流路64には逆止弁であるフラッパー弁80が取り付けられている。このオーバーフロー流路64及びフラッパー弁80により、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止すると共に、これらの間の縁切りを行うことができるようになっている。
【0034】
さらに、貯水タンク28の内部には、上端フロートスイッチ76、及び、下端フロートスイッチ78が配置されている。上端フロートスイッチ76は、便器洗浄の実行前に貯水タンク28に貯水されておくべき水位L1より少しだけ低い所定位置L2に達するとオンに切り替わる。一方、下端フロートスイッチ78は、貯水タンク28内の水位が通常使用時の最低水位L4より少しだけ高い所定の水位L3まで低下するとオンに切り替わる。
【0035】
なお、上述したリム側給水路48には、リム吐水用バキュームブレーカ56が設けられており、給水路32に負圧が発生した時に洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ56は、図3に示すように、ボウル部12の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ56の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路58を通って貯水タンク28に流入するようになっている。タンク側給水路50にも、逆止弁であるバキュームブレーカ60が設けられており、洗浄水の貯水タンク28からの逆流を防止している。
【0036】
同様に、戻り管路58と貯水タンク28の接続部にも、フロート66aを備えたフロート式逆止弁66が設けられており、貯水タンク28が後述するオーバーフロー流路64の上端64aの位置を越えて満水状態になった場合でも、洗浄水が戻り管路58に逆流することがないようになっている。
【0037】
機能部10には、上述したものの他に、少なくとも異なる2つの実行可能な洗浄動作モードのうち、何れか1つのモードを選択し実行する制御手段である制御装置74が内蔵されている。
【0038】
以下、この制御装置74の周辺の電気的構成及び制御内容について、詳しく説明する。図4は、制御装置74周辺の電気的構成を示すブロック図である。図4に示すように、この制御装置74には、トイレ室内に設置されたリモコン部68に設けられ、使用者に操作されることにより便器洗浄開始信号を出力する便器洗浄スイッチ70、後述する結露防止洗浄動作モードをON状態又はOFF状態へ切り替えるモード切替スイッチ71(切替手段)、便器本体2の前面に取り付けられ、便器前方における人の存在を検知する赤外線式の人体検知センサ72(図1参照)、貯水タンク28の内部に配置された上端フロートスイッチ76(第一の水位検出手段)及び下端フロートスイッチ78(第二の水位検出手段)、電磁開閉弁42、給水路切替弁44、加圧ポンプ30が電気的に接続されている。制御装置74には、図示しないマイクロコンピュータが搭載してあり、各スイッチやセンサからの出力信号に基づき、予め記憶しているプログラムに従って、電磁開閉弁42の開閉操作、給水路切替弁44の切替操作、及び、加圧ポンプ30の回転数や作動時間等の制御を行う。
【0039】
上記マイクロコンピュータは、後述する2つの異なる洗浄動作モード(通常洗浄動作モードと結露防止洗浄動作モード)を実行できるプログラムを予め記憶しており、モード切替スイッチ71を操作することにより、結露防止洗浄動作モードをON状態としているときは、通常洗浄動作モードを実行せずに結露防止洗浄動作モードを実行し、結露防止洗浄動作モードをOFF状態としているときは、結露防止洗浄動作モードを実行せずに通常洗浄動作モードを実行するようになっている。したがって、結露が発生しやすい時期のみ、結露防止洗浄動作モードをON状態とするなど、環境に応じて、使用者が自由に洗浄動作モードを設定することができる。なお、リモコン部68には、上記結露防止洗浄動作モードが実行されているか否かを使用者へ知らせるための報知手段69(例えば、LEDランプや液晶画面表示)が設けられており、これにより使用者は、結露防止洗浄動作モードを実行しているか否かの確認を容易に行うことができるようになっている。
【0040】
以下、制御装置74が実行する上記2つの洗浄動作モードについて詳しく説明する。まず図5により、通常洗浄動作モードにおける洗浄動作(通常洗浄動作)ついて説明する。図5は本実施形態における通常洗浄動作モード実行時の洗浄動作を示すタイムチャートである。まず、待機状態(時刻t0〜t1)において、電磁開閉弁42はOFF状態であり、給水路切替弁44は、リム側給水路48を全開とする位置となっている。すなわち、給水路切替弁44の開度はリム側100%タンク側0%の状態となっている。この待機状態(時刻t0〜t1)で、便器洗浄スイッチ70が操作され(時刻t1)、制御装置74が便器洗浄開始信号を検知すると、給水路切替弁44の開度を、タンク側給水路50が全開となる位置(リム側0%タンク側100%の状態)に切り替え、この切り替えが完了したとき、すなわち、時刻t2において、電磁開閉弁42をON状態として、洗浄水を給水路32に流入させる。これにより、給水路切替弁44の上流側にある給水路32内に残溜する圧縮空気を貯水タンク28内に排出することができる。この結果、給水路切替弁44の開度がリム側100%の状態でいきなりリム側給水路48から吐水した場合に生じるリム吐水口18からの空気の異音(排出音)の発生や水はね等を防止することができる。
【0041】
次に、時刻t3〜t4の間(例えば1秒間)に、給水路切替弁44の開度をタンク側全開位置(タンク側100%)からリム側全開位置(リム側100%)へ徐々に切り替え、洗浄水をリム吐水口18へ少量ずつ供給し、リム吐水口18からの洗浄水の吐水が開始される。そして、時刻t2から所定時間(例えば、4秒)経過した時刻t5において、ジェット吐水を行うために、加圧ポンプ30をON状態にする。これにより、加圧ポンプ30が貯水タンク28内の洗浄水をジェット吐水口16へ供給し、洗浄水がジェット吐水口16から吐水される。
【0042】
次に、時刻t6において、貯水タンク28内の洗浄水の水位がL3よりも低下して、下端フロートスイッチ64bがON状態となると、加圧ポンプ30をOFF状態にする。そして、加圧ポンプ30の動作が完全に停止する時刻t7において、ジェット吐水が終了する。時刻t7において、ジェット吐水は終了したが、このとき、リム吐水は依然として継続している。そして、時刻t7から所定時間経過した時刻t8において、給水路切替弁36をリム側全開からタンク側全開に切り替える。給水路切替弁を切り替え始める時刻t8より貯水タンク28内に洗浄水が貯水され始める一方、切り替えが完了した時刻t9において、リム吐水が終了する。
【0043】
時刻t10において、貯水タンク28内の水位がL2よりも上昇することにより、上端フロートスイッチ64aがON状態となり、これにより、電磁開閉弁34をOFF状態(閉操作)とし、このダイヤフラム式の電磁開閉弁34が完全に閉止状態になる時刻t11において、洗浄水の貯水タンク28内への流入が停止される。このとき、貯水タンク28内の洗浄水の水位はL1まで達した状態となっている。最後に、時刻t11〜t12において、給水切替弁36をリム側全開位置へ切り替えた後、待機状態(時刻t0と同じ状態)へ移行する。
【0044】
次に、結露防止洗浄動作モードにおける洗浄動作(結露防止洗浄動作)ついて図6により説明する。図6は結露防止洗浄動作モード実行時の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【0045】
まず、通常洗浄動作モードと同様、待機状態(時刻t0〜t1)において、電磁開閉弁42はOFF状態であり、給水路切替弁44は、リム側給水路48を全開とする位置となっている。この待機状態(時刻t0〜t1)で、人体検知センサ72が使用者の存在を検知すると、給水路切替弁36をリム側全開からタンク側全開に切り替え(時刻t1〜t2)、時刻t2において電磁開閉弁34をON状態にする。これにより、貯水タンク28内への洗浄水の供給が開始される。時刻t3において、貯水タンク28内の水位がL2に到達すると、上端フロートスイッチ64aがON状態となり、これにより電磁開閉弁34をOFF状態にし、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34が完全に閉止状態となる時刻t4において、貯水タンク28内への洗浄水の流入が終了する。このとき、貯水タンク28内の洗浄水の水位は、L1に到達している。(後述するように、貯水タンク28へのこの給水動作は、前回の便器洗浄終了時に貯水タンク28へ洗浄水の供給を行わず、人体検知時は、貯水タンク28には洗浄水がL4の高さまでしか貯水されていない状態であることが前提となっている。)この後、給水路切替弁をタンク側全開からリム側全開へと切り替え(時刻t4〜t5)、待機状態へと移行する。(本明細書においては、人体検知後から貯水タンク28内洗浄水の水位がL1に至るまで(時刻t1〜t5)の一連の動作を、前動作と呼ぶ。)
【0046】
次に、時刻t6において便器洗浄スイッチ70が操作され、制御装置74が便器洗浄開始信号を検知すると、まず、電磁開閉弁をON状態にし、リム吐水を開始する。そして、時刻t6から所定時間経過した時刻t7において、加圧ポンプをON状態にし、ジェット吐水を開始する。そして、時刻t8において、貯水タンク28内の洗浄水の水位がL3よりも低下して、下端フロートスイッチ64bがON状態となると、加圧ポンプ30をOFF状態にする。その後、加圧ポンプ30の作動が完全に停止する時刻t9において、ジェット吐水が終了する。このジェット吐水では、タンク内の洗浄水が全て使用されるわけではなく、いくらか洗浄水を貯水タンク28内に残溜させて、ジェット吐水を終了させるようにしている。この場合、ジェット吐水終了後、貯水タンク28内にはL4の高さまで洗浄水が残溜した状態となっている。
【0047】
時刻t11において、ジェット吐水は終了したが、このとき、リム吐水は依然として継続しており、時刻t8から所定時間経過した時刻t10(例えば、4秒)において、電磁開閉弁34をOFF状態にし、電磁開閉弁34が完全に閉止状態となる時刻t11において、リム吐水が終了する。この後、本洗浄動作モードは、通常洗浄動作モードのように、便器洗浄後に貯水タンク28に洗浄水を給水することなく、待機状態へ移行する。
すなわち、結露防止洗浄動作モードにおいては、次の便器洗浄を行うにあたり必要とされる洗浄水量よりも少ない水量(水位L4における水量)を貯水した状態で待機状態へ移行する。(本明細書においては、便器洗浄スイッチ操作後から洗浄終了後の待機状態に至るまで(時刻t6〜t11)の一連の動作を、後動作と呼ぶ。)
本実施形態では、水位L4における水量を貯水した状態で待機状態へ移行したが、本発明はこれに限定されるものではなく、この水量は次の便器洗浄を行うにあたり必要とされる洗浄水量より少なければ良く、タンク内が空の状態でも良い。
【0048】
なお、人体検知センサ72による人体検知後、給水により貯水タンク28内の洗浄水の水位がL1まで到達した状態で、待機状態へ移行したにもかかわらず、使用者が便器洗浄を行わずに、つまり便器洗浄スイッチ70を操作せずに立ち去った場合、人体検知センサ72の人体非検知情報に基づき、自動で後動作を行わせるようにすることも可能であるが、本実施形態では、使用者が立ち去った後は、便器洗浄スイッチ70の操作が行われるまで、貯水タンク28にL1の高さまで洗浄水を貯水した状態で、待機し続けるようになっている。したがって、このように貯水タンク28に洗浄水がL1の高さまで貯水された状態で人体検知センサが使用者を検知しても、前動作が実行されない。
このような動作形態とすることにより、節水効果はもちろんのこと、便器洗浄スイッチ70を操作し忘れた使用者が便器洗浄を行うために戻った場合や、他の使用者がその非便器洗浄状態を知って便器洗浄を行う場合に、貯水タンク28内の洗浄水がL1の高さまで貯水されるのを待つ必要がなく、すぐに便器洗浄を実行することができる。
【0049】
以上のように、結露防止洗浄動作モードを実行すると、便器前方に人体が存在しないとき、つまり、便器非使用時において、貯水タンク28内の洗浄水の水量が、従来のもの(通常動作洗浄モード実行状態)よりも少ない状態となる。したがって、便器非使用時における貯水タンク28内の洗浄水の熱容量が、従来のものの待機状態における洗浄水の熱容量よりも小さくなるため、洗浄水の温度がより上がりやすくなる。よって、より速く貯水タンク28内の洗浄水と貯水タンク28周囲との温度差を小さくすることができる。
【0050】
また、人体検知に基づき貯水タンク28へ洗浄水を供給するとき、貯水タンク28内には従来のものよりも速く貯水タンク28の周囲温度に近づいた洗浄水が存在しており、この洗浄水に比較的温度が低い新たな洗浄水が供給されるため、人体検知に基づくタンク給水時における貯水タンク28内の洗浄水の温度は、従来のものよりも、貯水タンク28周囲の温度に近い温度となる。
【0051】
したがって、結露防止洗浄動作モードにおいて、従来と異なる洗浄動作を実行するだけで、従来と同一の洗浄動作を行う通常洗浄動作モードの実行状態と比べて、タンク給水時及び待機時のどちらにおいても貯水タンク28内の洗浄水と貯水タンク28周囲との温度差を小さくすることができる。よって、貯水タンク28や貯水タンク28周囲に新たに断熱材や空調機器等を設けることなく、この温度差に起因して生じる結露の発生を防止することができる。
【0052】
さらに、加圧ポンプ30による貯水タンク28内の洗浄水の排水時に、貯水タンク28内の洗浄水を全て排水するのではなく、一部を残溜させるようなされているため、貯水タンク28への洗浄水の給水時、比較的温度の低い新たな洗浄水と前回の便器洗浄後から貯水タンク28内に残溜している洗浄水とが混合して、新たに供給された洗浄水よりも幾分貯水タンク28の周囲温度に近づいた洗浄水が便器洗浄後に残溜することになる。したがって、便器洗浄後に待機状態へ移行した際の貯水タンク28内の洗浄水の温度が、貯水タンク28へ給水される比較的温度の低い洗浄水の温度より、貯水タンク28の周囲温度に近い温度となっており、待機状態における貯水タンク28内の洗浄水と貯水タンク28の周囲との温度差が小さくなるため、より一層結露防止効果を向上させることができる。
【0053】
加えて、人体検知後、すぐに貯水タンク28へ洗浄水を供給するため、使用者が用を足した後、便器洗浄を行う際は、すでに貯水タンク28内の洗浄水の水位が便器洗浄に必要なL1まで到達した状態になっているため、通常洗浄動作モード実行時と同様、すぐに便器洗浄を行うことができ、使用者に待ち時間を与えることがない。
【0054】
次に、図7により、本発明の第2実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0055】
本実施形態における水洗大便器が第1実施形態と異なるところは、結露防止洗浄動作モード実行時の洗浄動作(結露防止洗浄動作)において、便器洗浄後の待機状態に移行する前に、貯水タンク28へL2よりも低い水位まで洗浄水を供給する点である。したがって、ここでは、この点における洗浄動作のみを説明する。
【0056】
図7において、ゼット吐水終了後、所定時間経過した時刻t10において、給水路切替弁44をタンク側全開へ切り替える。給水路切替弁44をタンク側全開へ切り替え始める時刻t10より、貯水タンク28へ洗浄水の供給が開始される一方、タンク側全開へ切り替わった時刻t11において、それまで行われていたリム吐水が終了する。そして、時刻t11より所定時間経過した時刻t12において、電磁開閉弁42をOFF状態にする。このダイヤフラム式の電磁開閉弁42が完全に閉止する時刻t13において、貯水タンク28への洗浄水の供給が停止する。ここで、タンク給水を開始する時刻t10から電磁開閉弁42をOFF状態にする時刻t12までの時間は、貯水タンク28内の洗浄水の水位が、L2に到達しない時間に予め設定されている。そして、時刻t13〜t14において、給水路切替弁44をタンク側全開からリム側全開へ切り替えた後、待機状態へ移行する。
【0057】
このように、待機状態へ移行する前に貯水タンク28へ洗浄水を供給するよう制御することにより、製品の販売地域等に応じて、最も大きな結露防止効果が得られる水量を便器洗浄後に貯水させるよう設定することが可能となるため、より結露防止効果を向上させることができる。
【0058】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態及び第2実施形態と異なる部分のみ説明する。まず、第3実施形態における水洗大便器は、人体検知手段として、第1実施形態及び第2実施形態が備えていた人体検知センサ72の代わりに、着座センサ73を備えている。この着座センサ73は、図8に示すように、便座4の裏側にある支持脚4aの内部に埋め込まれている。そして、本実施形態における制御装置74周辺の電気的構成は、図9のブロック図に示すように、第1実施形態における人体検知センサ72と着座センサ73が入れ替わったのみである。
【0059】
そして、図10に示す本実施形態における結露防止洗浄動作モード実行時の洗浄動作のタイムチャートから分かるように、本実施形態の結露防止洗浄動作は、第1実施形態のように、人体検知センサ72による使用者の検知に基づいて、前洗浄を実行するのではなく、着座センサ73による使用者の着座検知に基づいて前洗浄を実行する。
【0060】
このように構成された水洗大便器においては、通常、使用者が着座した場合は便器洗浄を行うことから、便器洗浄を行わない場合に、貯水タンク28へ洗浄水が供給されることがなくなり、より結露防止効果を向上させることが可能となる。
【0061】
次に、着座を検知してない状態で、便器洗浄スイッチ70が操作された場合(着座センサが故障した場合や、立小便後に便器洗浄スイッチが操作される場合など)における洗浄動作について説明する。図11は、着座センサ73が使用者の着座を検知していない状態で、便器洗浄スイッチ70が操作された場合に行われる洗浄動作のタイムチャートである。
【0062】
図11に示すように、待機状態(時刻t0〜t1)において、便器洗浄スイッチ70が操作されると、その便器洗浄開始信号に基づき、給水路切替弁44をリム側全開からタンク側全開に切り替え(時刻t1〜t2)、時刻t2において電磁開閉弁42をON状態にする。これにより、貯水タンク28内への洗浄水の供給が開始する。時刻t3において、貯水タンク28内の水位がL2に到達すると、上端フロートスイッチ64aがON状態となり、時刻t3から所定時間経過した時刻t4において、給水路切替弁44をタンク側全開からリム側全開へと切り替える。リム側全開へと切り替え始める時刻t4において、リム吐水が開始される一方、リム側全開への切り替えが完了した時刻t5において、貯水タンク28への給水が終了する。このとき、貯水タンク28内の洗浄水の水位は、L1に到達している。そして、時刻t5から所定時間経過した時刻t6において、加圧ポンプ30をON状態にし、ジェット吐水を開始する。以降の動作は、第1実施形態における、結露防止洗浄モード実行時の、加圧ポンプ30をON状態にした後の洗浄動作と同一であるため、説明を省略する。(本明細書では、本実施形態における、便器洗浄スイッチ操作後から待機状態へ移行するまでの一連の動作を全動作と呼ぶ。)
【0063】
図12は、上述した第3実施形態における、結露防止洗浄動作モード実行時の制御装置47の制御を示すフローチャートである。上述した内容と重複するが、本実施形態の結露防止洗浄動作モードにおいて実行される洗浄動作についての理解を促すため、図12により、結露防止洗浄動作モード実行時の制御フローについて、簡単に説明する。
【0064】
まず、制御装置47は、着座センサ73により使用者の着座が検知されたか否かを判定する(S101)。着座が検知されたとき(ステップS101でYES)には、次のステップ(S102)に進み、前動作を実行する。前動作完了後、便器洗浄スイッチ70が操作されたか否かの判定を行う(S103)。便器洗浄スイッチ70の操作がない場合(S103でNO)は、この判定を繰り返す(この状態が、図10のタイムチャートにおける時刻t5〜t6の待機状態である。)。便器洗浄スイッチ70の操作があった場合(ステップS103でYES)は、次のステップ(S104)に進み、後動作を実行する。そして、後動作完了後、S101のステップに戻り、再び、使用者の着座判定を開始する(この状態が、図10のタイムチャートにおける時刻t0〜t1もしくは時刻t11以降の待機状態である。)。
【0065】
一方、S101のステップにおいて、着座が検知されなかった場合(S101でNO)は、次に便器洗浄スイッチ70が操作されたか否かの判定を行う(S112)。操作がなかった場合(S112でNO)は、S101のステップに戻り、再び、使用者の着座判定を開始する。便器洗浄スイッチ70の操作があった場合(S111でYES)は、全動作を実行する(S113)。この全動作が完了した後は、S101のステップに戻り、再び、使用者の着座判定を開始する。
【0066】
本実施形態のように、着座を検知していない状態で便器洗浄スイッチ70が操作された場合でも、貯水タンク28内の洗浄水を排出する前に、貯水タンク28へ便器洗浄に必要な水量を貯水し、なおかつ、貯水タンク28内の洗浄水を排出した後は、貯水タンク28へ洗浄水を供給することなく、便器洗浄に必要とされる水量よりも少ない水量の洗浄水を貯水タンク28に貯水した状態で待機状態へ移行するため、着座センサ70が故障した場合や、着座を伴わない形態で便器が使用される場合であっても、確実に便器洗浄を行えるとともに、結露の発生も防止することができる。
【0067】
以上、本発明の水洗大便器について、その実施形態に基づいて説明を行った。上述の実施形態では、貯水タンクに設けられる排水手段として加圧ポンプを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、貯水タンクの底面に形成された排水口を開閉することにより便器へ洗浄水を供給するフラッパ―弁や直動型の排水弁を電気的に駆動するようなものであっても良い。
【0068】
また、上述の実施形態では、本発明をポンプを備えた水洗大便器に適用した場合を示したが、ポンプを備えておらず、貯水タンクに貯めた洗浄水を水頭圧により便器へ供給する、いわゆる、密結タンク式の水洗大便器にも適用することが可能である。
【0069】
さらに、上述の実施形態では、人体検知手段として、便器前方における人の存在を検知する人体検知センサや、使用者の便座への着座を検知する着座センサを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トイレ空間への人の入室を検知する入室検知センサや、便座の開閉状態を検知する便座開閉検知センサ、便蓋の開閉状態を検知する便蓋開閉検知センサ等の人体検知手段であってももちろん構わない。

























【符号の説明】
【0070】
1…水洗大便器
2…便器本体
4…便座
6…カバー
10…機能部
12…ボウル部
14…排水トラップ管路
14a…排水トラップ管路の入口
14b…トラップ上昇管
14c…トラップ下降管
14d…排水トラップ管路の頂部
16…ジェット吐水口
16a…ジェット導水路
18…リム吐水口
18a…リム導水路
20…ボウル部の汚物受け面
20a…ボウル部の汚物受け面の底部
22…ボウル部のリム部
22a…ボウル部のリム部の内周面
24…ボウル部の棚部
24a…ボウル部の棚部の傾斜部
26…排水管
28…貯水タンク
30…加圧ポンプ
30a…ポンプ室
32…給水路
34…止水栓
36…ストレーナ
38…分岐金具
40…定流量弁
42…電磁開閉弁
44…給水路切替弁
48…リム側給水路
50…タンク側給水路
52…ポンプ側給水路
54…ジェット側給水路
56…リム吐水用バキュームブレーカ
58…戻り管路
60…バキュームブレーカ
62…フロート式逆止弁
62a…フロート
64…オーバーフロー流路
64a…オーバーフロー流路の上端
66…フロート式逆止弁
66a…フロート
68…リモコン部
69…報知手段
70…便器洗浄スイッチ
71…モード切替スイッチ
72…人体検知センサ
73…着座センサ
74…制御装置
76…上端フロートスイッチ
78…下端フロートスイッチ
80…フラッパー弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器洗浄に用いられる洗浄水を貯水するタンクと、
上記タンクに洗浄水を供給する給水手段と、
上記タンク内に貯水された洗浄水を便器に供給する排水手段と、
便器洗浄開始信号を出力する便器洗浄開始手段と、
便器使用者の存在を検知する人体検知手段と、
複数の洗浄動作モードのうち、一つのモードを実行する制御手段と、
上記制御手段が実行する洗浄動作モードを切り替え設定する切替手段と、
を備えた水洗大便器であって、
上記制御手段は、
上記便器洗浄開始信号を受けた際、上記排水手段を駆動することにより上記タンク内の洗浄水を便器へ供給した後、便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水を上記タンク内へ貯水した状態で待機状態へ移行する通常洗浄動作モードと、
上記人体検知手段が人体を検知した際、上記給水手段を駆動し、洗浄水が上記便器洗浄に必要な所定水量に至るまで上記タンク内に洗浄水を供給した後、上記便器洗浄開始信号を受けると、上記排水手段を駆動することにより上記タンク内の洗浄水を便器へ供給し、上記便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水を上記タンク内に貯水していない状態で待機状態へ移行する結露防止洗浄動作モードと、を有し、
上記切替手段により設定された上記通常洗浄動作モードと上記結露防止洗浄動作モードとの何れか一つの洗浄動作モードを実行することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記結露防止洗浄動作モードでは、
上記人体検知手段が人体を検知していない状態において、上記制御手段が上記便器洗浄開始信号を受けた場合、
タンク内に上記所定水量の洗浄水が貯水されているときは、上記排水手段を駆動することにより、上記タンク内の洗浄水を便器へ供給し、上記便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水を上記タンク内に貯水していない状態で待機状態へ移行し、
タンク内に上記所定水量の洗浄水が貯水されていないときは、上記給水手段を駆動することにより、洗浄水が上記便器洗浄に必要な所定水量に至るまで上記タンク内に洗浄水を供給した後、上記排水手段を駆動することにより、上記タンク内の洗浄水を便器へ供給し、上記便器洗浄に必要な所定水量の洗浄水を上記タンク内に貯水していない状態で待機状態へ移行する
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記結露防止洗浄動作モードでは、
待機状態において、上記タンク内に上記便器洗浄に必要な所定水量よりも少ない水量を貯水している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記タンクは、上記便器洗浄に必要な所定水量が貯水された状態を検出する第一の水位検出手段と、
上記タンク内に上記便器洗浄に必要な所定水量よりも少ない水量が貯水された状態を検出する第二の水位検出手段とを有し、
上記制御手段は、上記第一の水位検出手段及び上記第二の水位検出手段からの水位検出信号に基づいて上記タンク内に貯水される洗浄水の制御を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記人体検知手段は、
便器使用者が便座に座ったことを検知する着座センサである
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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