説明

水洗大便器

【課題】貯水タンクの洗浄水の漏洩時等においても便器洗浄を行える水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器は、ボウル部12と、リム吐水口18とジェット吐水口16を備えた便器本体2と、貯水タンク20と、貯水タンクの水位を検出する水位検出手段64a,64bと、洗浄水をリム吐水口及び貯水タンクに供給する洗浄水供給手段34,36と、貯水タンクの洗浄水をジェット吐水口に供給する加圧ポンプ22と、洗浄スイッチ63と、洗浄スイッチがON操作されると、水位検出手段の出力に基づいて洗浄水供給手段及び/又は加圧ポンプを制御して便器洗浄を行う通常時洗浄手段と、水位検出手段の出力値により水位検出手段自体及び/又は貯水タンクの異常を検知する異常検知手段62と、異常検知手段が異常を検知したとき、通常時洗浄手段による便器洗浄を禁止する洗浄禁止手段62と、便器洗浄が禁止されたとき、タイマー制御により便器洗浄を行う異常時洗浄手段62と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、貯水タンク内の洗浄水を加圧して便器を洗浄する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、リム通水部とゼット孔(ジェット吐水口)が形成されたボウル部を備え、このリム通水部には洗浄水を水道から直接供給し、一方、ゼット孔には貯水タンク内に貯溜されポンプにより加圧された洗浄水を供給するようにした水洗大便器が知られている。
この特許文献1の水洗大便器は、貯水タンク内に貯溜された洗浄水をポンプにより加圧してゼット孔から吐出するようにしているので、低水圧の地域や場所でも使用できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−264469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された水洗大便器においては、貯水タンクを使用し、この貯水タンク内の洗浄水の水位を検出するためのフロートスイッチが設けられているので、このフロートスイッチから異常な出力があった際には、この貯水タンクへの洗浄水供給を停止し、便器洗浄を禁止する必要がある。
このフロートスイッチから異常な出力が発生する原因として、貯水タンクからの洗浄水の漏洩や、フロースイッチ自体の故障が考えられるが、何れの場合も、便器洗浄を禁止する必要がある。
【0005】
このような情況下で、本発明者らは、貯水タンクからの洗浄水の漏洩の程度によっては一定の条件下で便器洗浄が出来るほうが好ましいし、また、フロースイッチの故障時は貯水タンクが破損している訳でもないので、便器洗浄ができるほうが好ましいと考え、このような便器洗浄が可能となる水洗大便器の開発を鋭意行った。
【0006】
そこで、本発明は、上述した要請を満たすためになされたものであり、貯水タンクからの洗浄水の漏洩時及び/又はフロートスイッチの故障時であっても便器洗浄を行うことができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、ボウル部と、洗浄水を吐出するリム吐水口及びジェット吐水口と、排水トラップ管路とを備えた便器本体と、洗浄水を貯水する貯水タンクと、この貯水タンクの水位を検出する水位検出手段と、洗浄水をリム吐水口及び貯水タンクに供給する洗浄水供給手段と、貯水タンクの洗浄水を加圧してジェット側給水路を経てジェット吐水口に供給する加圧ポンプと、使用者がON操作して便器洗浄を開始する洗浄スイッチと、この洗浄スイッチがON操作されると、水位検出手段の出力に基づいて、洗浄水供給手段及び/又は加圧ポンプを制御して便器洗浄を行う通常時洗浄手段と、水位検出手段の出力値により水位検出手段自体及び/又は貯水タンクの異常を検知する異常検知手段と、この異常検知手段が異常を検知したとき、使用者が洗浄スイッチをON操作しても通常時洗浄手段による便器洗浄を禁止する洗浄禁止手段と、この洗浄禁止手段により通常時洗浄手段による便器洗浄が禁止されたとき、タイマー制御により洗浄水供給手段及び/又は加圧ポンプを制御して便器洗浄を行う異常時洗浄手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、水位検出手段及び貯水タンクが正常の場合には、通常時洗浄手段により、水位検出手段の出力に基づいて、洗浄水供給手段及び/又は加圧ポンプを制御して、便器洗浄を行う。しかしながら、異常検知手段が水位検出手段自体及び/又は貯水タンクの異常を検知した場合には、先ず、洗浄禁止手段が使用者が洗浄スイッチをON操作しても通常時洗浄手段による便器洗浄を禁止するが、このとき、異常時洗浄手段は、タイマー制御により便器洗浄を行う。この結果、本発明においては、貯水タンクからの洗浄水の漏洩が小さい場合や水位検出手段が異常な場合等においても、便器洗浄を行うことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、異常時洗浄手段は、所定の特殊操作により洗浄禁止手段による便器洗浄の禁止を解除して、タイマー制御により上記洗浄水供給手段及び/又は上記加圧ポンプを制御して便器洗浄を行う。
このように構成された本発明においては、異常検知手段がタイマー制御により便器洗浄を行う際に、所定の特殊操作により洗浄禁止手段による便器洗浄の禁止を解除するようにしているので、通常時洗浄から異常時洗浄への移行を使用者等が認識した上で行うことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、異常時洗浄手段は、異常検知手段が異常を検知した後に使用者が洗浄スイッチをON操作したとき、タイマー制御により、洗浄水供給手段により貯水タンクに洗浄水を供給し、洗浄水供給手段によりリム吐水口に洗浄水を供給すると共に加圧ポンプが貯水タンクの洗浄水を加圧してジェット吐水口へ供給し、さらに、便器洗浄終了後に貯水タンクへの給水を規制する。
このように構成された本発明においては、便器洗浄終了後に貯水タンクへの給水を規制するようにしているので、貯水タンクの軽度の損傷時等において、貯水タンクからの漏水を確実に防止することができる。
【0011】
本発明は、好ましくは、更に、異常検知手段が異常を検知した後、使用者が洗浄スイッチをON操作したとき、少なくとも音により異常を使用者に報知する異常報知手段を有する。
このように構成された本発明においては、使用者が水位検出手段及び/又は貯水タンクの異常を認識することができるので、適切な対応を取ることができ、また、便器洗浄を行う場合でも、情況を正確に理解しているので安心である。
【0012】
本発明においては、好ましくは、洗浄スイッチは、便器本体及びリモコン部にそれぞれ設けられ、異常検知手段が異常を検知した後、リモコン部に設けられた洗浄スイッチの作動が禁止されると共に便器本体に設けられた洗浄スイッチの作動が許容される。
このように構成された本発明においては、通常使用するリモコン部に設けられた洗浄スイッチの作動が禁止されているので、使用者は、通常とは異なる使用であることを認識して便器を使用することができ、さらに、例えば洗浄水の漏洩等の不具合が発生していた場合には、その漏洩した洗浄水を拭き取る等の対応が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、貯水タンクからの洗浄水の漏洩時及び/又はフロートスイッチの故障時であっても便器洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による水洗大便器の側面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器の平面図である。
【図3】本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【図4】本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施形態による水洗大便器の異常判定を行う際のフロートスイッチの状態を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態によるフロートスイッチ及び/又は貯水タンクの異常時に実行する第1異常時洗浄モードにおける洗浄動作を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の実施形態によるフロートスイッチ及び/又は貯水タンクの異常時に実行する第2異常時洗浄モードにおける洗浄動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器を説明する。
先ず、図1乃至図3により、本発明の実施形態による水洗大便器の構造を説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態による水洗大便器の側面図であり、図2は図1に示す水洗大便器の平面図であり、図3は本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル11により覆われている。
【0017】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐出するようになっている。
リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0018】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。
ここで、排水トラップ管路14のトラップ下降管14cの下端には、排水管15が接続されている。
【0019】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22によって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0020】
次に、図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を詳細に説明する。
図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、上流側から、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30、定流量弁32、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34、給水路切替弁36がそれぞれ設けられている。
【0021】
これらの定流量弁32、電磁開閉弁34、及び、給水路切替弁36は、後述するように、バルブユニット37として、一体的に組立られたものとなっている。
また、給水路切替弁36の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路38、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路40が接続されている。
【0022】
ここで、定流量弁32は、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。また、定流量弁32を通過した洗浄水は、電磁開閉弁34に流入し、電磁開閉弁34を通過した洗浄水は、給水路切替弁36により、リム側であるリム側給水路38からリム吐水口18へ、又は、タンク側であるタンク側給水路40から貯水タンク20に供給されるようになっている。ここで、給水路切替弁36は、リム側給水路38とタンク側給水路40の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更できる切替弁である。
【0023】
また、貯水タンク20の下部には、ポンプ側給水路45が接続されており、このポンプ側給水路45の下流端にはポンプ室22aを備えた加圧ポンプ22が接続されている。さらに、加圧ポンプ22とジェット吐水口16はジェット側給水路46により接続されており、加圧ポンプ22が、貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧してジェット吐水口16まで供給するようになっている。
【0024】
ジェット側給水路46は、図3に示すように、上方に向けて凸型に形成されており、この凸型部分の頂部46aが最高位置となっている。
【0025】
次に、上述したリム側給水路38には、リム吐水用バキュームブレーカ48が設けられており、給水路24に負圧が発生した時に洗浄水のリム吐水口18からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ48は、図3に示すように、ボウル部12の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ48の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク20に流入するようになっている。
【0026】
タンク側給水路40にも、逆止弁であるバキュームブレーカ42が設けられており、洗浄水の貯水タンク20からの逆流を防止している。
【0027】
ここで、貯水タンク20は、密閉タイプの貯水タンクであり、タンク側給水路40と貯水タンク20の接続部には、ボール式逆止弁43が設けられている。このボール式逆止弁43により、貯水タンク20が後述するオーバーフロー流路70の上端70aの位置を越えて満水状態になった場合でも、ボール43aが浮上して、タンク側給水路40との接続部を閉鎖するので、洗浄水がタンク側給水路40に逆流することがないようになっている。
【0028】
同様に、戻り管路50と貯水タンクの接続部にも、同様に、ボール式逆止弁44が設けられており、貯水タンク20が後述するオーバーフロー流路70の上端70aの位置を越えて満水状態になった場合でも、洗浄水が戻り管路50に逆流することはないようになっている。
【0029】
さらに、ポンプ側給水路45には、逆止弁であるジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58が設けられている。これらのジェット吐水用フラッパー弁56及び水抜栓58は、加圧ポンプ22よりも下方の、貯水タンク20の下端部付近の高さに配置されている。このため、水抜栓58を開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク20内及び加圧ポンプ22内の洗浄水を排出することができるようになっている。また、貯水タンク20と加圧ポンプ22の間にジェット吐水用フラッパー弁56を配置することにより、貯水タンク20内の水位が加圧ポンプ22の高さよりも低くなった場合に、洗浄水が加圧ポンプ22から貯水タンク20に逆流し、加圧ポンプ22内の洗浄水が抜け加圧ポンプ22が空運転してしまうことを防止している。また、加圧ポンプ22の下方には、水受けトレイ60が配置されており、結露した水滴や漏水を受けるようになっている。
【0030】
機能部10には、電磁開閉弁34の開閉操作、給水路切替弁36の切替操作、及び、加圧ポンプ22の回転数や作動時間等を制御するコントローラ62が内蔵されている。
【0031】
また、使用者が便器洗浄を開始する際、ON操作する洗浄スイッチ63(63a,63b)が設けられており、この洗浄スイッチ63は、コントローラ62に接続されている。この洗浄スイッチ63は、便器本体に設けられた洗浄スイッチ63a(カバー等により覆われているため主にメーカの作業員等の限られた人が操作可能となっている)とリモコン部に設けられた洗浄スイッチ63b(便器使用者が使用する)を備えている。
【0032】
さらに、貯水タンク20等に異常が発生した場合に、使用者が洗浄スイッチ63をON操作したときに、その旨を報知するための異常報知装置65が設けられている。この異常報知装置65は、使用者に異常を報知するためその旨のアナウンスを行う音声や異常報知音(ブーブー)等を発生させる音声装置65aと、既設の複数のLEDを自動点滅させるLDE点滅装置65bを備えている。
【0033】
貯水タンク20の内部には、上端フロートスイッチ64a、及び、下端フロートスイッチ64bが配置されている。
上端フロートスイッチ64aは、貯水タンク20内の水位が通常使用時の最高水位L1より少しだけ低い所定位置L2に達するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、電磁開閉弁34を閉鎖させる。
【0034】
下端フロートスイッチ64bは、貯水タンク20内の水位が通常使用時の最低水位L4より少しだけ高い所定の水位L3まで低下するとオンに切り替わり、コントローラ62はこれを検知して、加圧ポンプ22を停止させる。
具体的には、上端フロートスイッチ64aは、洗浄水の水位がL1とL2の間にあるときはON(水あり)となり、水位がL2より低い場合にはOFF(水なし)となる。
また、下端フロートスイッチ64bは、洗浄水の水位がL3より高い場合にはOFF(水あり)となり、水位がL3とL4の間にあるときはON(水なし)となる。
【0035】
さらに、オーバーフロー流路70が設けられ、このオーバーフロー流路70の上端70aは貯水タンク20内に開口し、その下端70bは、ジェット側給水路46に接続されている。
【0036】
このオーバーフロー流路70には逆止弁であるフラッパー弁72が取り付けられている。このオーバーフロー流路70及びフラッパー弁72により、洗浄水のジェット吐水口16からの逆流を防止すると共に、これらの間の縁切りを行うことができるようになっている。
【0037】
コントローラ62は、使用者による洗浄スイッチ63(63b)のON操作により、電磁開閉弁34、給水路切替弁36、加圧ポンプ22を順次作動させ、先ずリム吐水口18から吐水し、リム吐水を継続させながら、次にジェット吐水口16からの吐水を開始させて、ボウル部12を洗浄する。さらに、コントローラ62は、洗浄終了後、電磁開閉弁34を開放し、給水路切替弁36を貯水タンク20側に切り替えて洗浄水を貯水タンク20に補給する。貯水タンク20内の水位が上昇し、上端フロートスイッチ64aが規定の貯水量を検出すると、コントローラ62は、電磁開閉弁34を閉鎖して給水を停止する。
【0038】
次に、図4により、本実施形態による水洗大便器の洗浄動作を説明する。図4は、本発明の実施形態による水洗大便器の通常時洗浄モードにおける洗浄動作を示すタイムチャートである。
【0039】
図4に示すように、先ず、待機状態(時刻t0〜t1)において、給水路切替弁36は、リム側給水路38とタンク側給水路40の両方に連通する中立位置となっている。即ち、給水路切替弁36はリム側50%貯水タンク側50%の状態となっている。
【0040】
次に、この待機状態(時刻t0〜t1)で、洗浄スイッチ63をON操作する(時刻t1)と、即ち、洗浄開始の信号を受けると、前リム吐水(時刻t1〜t11)が開始される。このとき(時刻t1)、給水路切替弁36は、リム側50%貯水タンク側50%の中立位置から、タンク側給水路40に全開状態(タンク側100%)の位置に切り替えられ、時刻t2〜t3の間、この状態が保持される。
【0041】
次に、給水路切替弁36がタンク側100%になったとき、即ち、時刻t2において、電磁開閉弁34をONとして、洗浄水を給水路24に流入させる。これにより、給水切替弁36の上流側にある給水路24内に残留する圧縮空気を貯水タンク20内に排出することができる。この結果、給水切替弁36をいきなりリム側であるリム側給水路38に切り替えた場合に生じるリム吐水口18からの空気の異音(排出音)の発生や水はね等を防止することができる。
【0042】
次に、時刻t3〜t4の間に、給水切替弁36をタンク側全開位置(貯水タンク側100%)からリム側全開位置(リム側100%)に徐々に切り替え、洗浄水をリム吐水口18へ少量づつ供給し、洗浄水をリム吐水口18から吐水する。これにより、リム吐出口18に大量の洗浄水が一気に供給されることなく、リム吐水口18に徐々に洗浄水が供給されるので、給水路切替弁36の下流側のリム側給水路38内に残留する空気をリム吐水口18からスムーズに排出することができ、それにより、残留空気が一気に排出されるときに生じる異音の発生や水はね等も防止することができる。
【0043】
次に、時刻t2から所定時間(例えば、5秒)経過後、時刻t5〜t11の間において、ジェット吐水を行うために、加圧ポンプ22をONとし、加圧ポンプ22が貯水タンク20内の洗浄水をジェット吐水口16へ供給し、洗浄水をジェット吐水口16から吐水する。
【0044】
このジェット吐水のとき、加圧ポンプ22の回転数をコントローラ62が以下のように制御する。
先ず、加圧ポンプ22は、時刻t6〜t7において、比較的低速(例えば、1000rpm)に保持され、これにより、ジェット側給水路46の頂部46aの近傍(即ち、ボウル部12の溜水面より上方に位置する部分)に在留する空気をゆっくりとジェット吐水口16から排出する。この結果、加圧ポンプ22をいきなり本来の高速回転で始動した場合に生じるジェット吐水口16からの空気の排出音の発生を防止することができる。
【0045】
次に、時刻t8〜t9において、加圧ポンプ22を高速回転(例えば、3500rmp)させる。これにより、加圧ポンプ22による加圧力が大きくなり、ジェット吐水口16から大流量の洗浄水が吐水される。このとき、リム吐水口18から継続してリム吐水がなされているので、リム吐水口18から吐水される洗浄水の流量が加わり、大流量の洗浄水が、排水トラップ管路14の入口部14aに流入し、サイホン現象が急速に引き起こされ、ボウル部12内の溜水及び汚物が素早く排出される。このとき、排水トラップ管路14の入口部14aに流入する流量(第1の流量)は、リム吐水による流量とジェット吐水による流量の合計で、75リットル/分〜120リットル/分であり、従来と比較して大流量となっている。
【0046】
次に、時刻t9〜t11において、排水トラップ管路14の入口部14aに流入する洗浄水の流量(第2の流量)を、上記の流量(第1の流量)よりも少ない流量とするために、加圧ポンプ22の回転数を少し低減させる。この図4の例では、第2の流量を排水トラップ管路14の入口部14aに流入させるために、加圧ポンプ22の回転数を2段階(例えば、3300rmpと3200rpm)に減速させるようになっている。このとき、加圧ポンプ22の回転数は、1段階で変化させなくてもよく、また、3段階以上に減速させるようにしてもよい。
【0047】
このようにして、第1の流量により発生したサイホン現象が終了する直前(時刻t9)に、排水トラップ管路14の入口部14aに第1の流量よりも少ない第2の流量の洗浄水を流入させているので、汚物搬出可能な流速を生じさせかつ排水トラップ管路14の何れかの部位の断面をシールしてサイホン作用を継続させることができる。
【0048】
次に、時刻t11において、貯水タンク20内の洗浄水の水位がL3よりも低下して、下端フロートスイッチ64bがONとなると、加圧ポンプ22の作動を停止する。このとき、加圧ポンプ22の回転数を、ジェット吐水口16からの吐水が漸減するように、時刻t11から時刻t12までの間、ゆっくりと低減させる。これにより、サイホン作用が急激に途切れることにより生じるサイホン切れ音の発生を防止することができる。
【0049】
時刻t11において、ジェット吐水は終了したが、このとき、リム吐水は依然として継続しており、時刻t11から時刻t13までの所定時間(例えば、4秒)、リム吐水(後リム吐水)だけ継続される。
この後、時刻t13〜t14において、給水路切替弁36をリム側全開からタンク側全開に切り替える。これにより、貯水タンク20内に洗浄水が貯水される。
【0050】
次に、時刻t15において、貯水タンク20内の水位がL2よりも上昇することにより、上端フロートスイッチ64aがONとなり、これにより、電磁開閉弁34がOFF(閉操作)となり、洗浄水の貯水タンク20内への流入が停止される。
【0051】
次に、時刻t16において、給水切替弁36がリム側とタンク側の両方に連通する中立位置に戻り、待機状態(時刻t0と同じ状態)に復帰する。
【0052】
次に、図5により、フロートスイッチ及び貯水タンクの異常判定について説明する。図5は本実施形態による水洗大便器の異常判定を行う際のフロートスイッチの状態を示す説明図である。
【0053】
図5において、状態1は、上端フロートスイッチ64aがON(水あり)で下端フロートスイッチ64bがOFF(水あり)の状態、即ち、貯水タンク20が満水状態を示している。状態2は、上端フロートスイッチ64aがOFF(水なし)で下端フロートスイッチ64bがOFF(水あり)の状態、即ち、貯水タンク20の適当な水位まで洗浄水が貯溜されている状態を示している。状態3は、上端フロートスイッチ64aがOFF(水なし)で下端フロートスイッチ64bがON(水なし)の状態、即ち、貯水タンク20が空の状態を示している。状態4は、上端フロートスイッチ64aがON(水あり)で下端フロートスイッチ64bがON(水なし)の状態を示している。
【0054】
先ず、状態4は、実現象として起こりえないので、このような状態4が一定時間(例えば90秒)以上継続して発生した場合には、上端フロートスイッチ64a及び/又は下端フロートスイッチ64b自体が故障(異常)であると判定する。このフロースイッチの故障の原因としては、部品故障や基板のシート等が考えられる。
【0055】
次に、電磁開閉弁34を閉操作した後、一度も加圧ポンプ22を駆動していないにも係らず、状態1から状態3に移行する場合が2回累積して(又は2回連続して)発生したような場合には、貯水タンク22の一部が破損していると考えられるので、この場合には貯水タンク22が破損(異常)と判定する。
【0056】
さらに、電磁開閉弁34を閉操作した後、一度も加圧ポンプ22を駆動していないにも係らず、状態2から状態3に移行する場合が2回累積して(2回連続して)発生したような場合にも、貯水タンク22の一部が破損していると考えられるので、この場合にも貯水タンク22が破損(異常)と判定する。
【0057】
なお、貯水タンク22が破損する主な原因として、貯水タンク内の洗浄水が凍結することにより貯水タンクが破損(ひび割れ)することが挙げられる。一方、貯水タンクが破損していないが、貯水タンクの水抜き作業後に水抜栓58を締め忘れた、又は、締め方が不十分であった場合も、貯水タンクから水漏れが発生する異常状態である。しかし、水抜栓の締め忘れの場合は、その状態で貯水タンクに給水して水漏れが発生したことに気づいて水抜栓を正常に締め込めば、貯水タンクは正常に利用できる。そのため、上述したように、状態1から状態3への移行および状態2から状態3への移行を検知して貯水タンクの破損していると判断するのは2回累積して(又は2回連続して)発生した場合とすることにより、使用者の人為的ミスにも係わらず貯水タンクの破損であると判断してしまう可能性を低くしている。
【0058】
このようなフロートスイッチ自体及び貯水タンクの異常が判定された場合には、本実施形態による水洗大便器においては、使用者が洗浄スイッチ63をON操作したとき、異常報知装置65が作動し、使用者に、音や光を用いて、その旨を報知するようになっている。具合的には、音声装置65aにより、ブザー音(ブーブー)を発生させたり、音声による、便器に水漏れが発生した旨のアナウンス等を行い、及び/又は、LED点滅装置65bにより、局部洗浄装置8等に使用されている複数のLEDの全部を点滅させる。
【0059】
このとき、同時に、コントローラ62は、使用者が洗浄スイッチ63(63b)をON操作したときに実行される図54に示す便器洗浄動作を禁止する。具体的には、上端フロートスイッチ64a及び下端フロートスイッチ64bの機能を停止し、これらのフロートスイッチの出力値に基づく洗浄動作を不能とする。
【0060】
使用者は、この異常報知装置65により、異常状態を認識した後、貯水タンク20の破損が大の場合には、直ちに、便器の使用を止めることになる。しかしながら、貯水タンク20の損傷が軽度の場合や、フロートスイッチ64a,64bの故障の場合には、便器洗浄自体は可能であるため、本実施形態においては、図4に示す正常時の洗浄動作と異なる異常時洗浄モードを実行することにより、異常時でも、便器洗浄できるようにしている。以下、この異常時洗浄モード(第1異常時洗浄モード及び第2異常時洗浄モード)を説明する。
【0061】
次に、図6及び図7により、本実施形態によるフロートスイッチ及び/又は貯水タンクの異常時に実行する異常時洗浄モードについて説明する。図6は本実施形態によるフロートスイッチ及び/又は貯水タンクの異常時に実行する第1異常時洗浄モードにおける洗浄動作を示すタイムチャートであり、図7は本実施形態によるフロートスイッチ及び/又は貯水タンクの異常時に実行する第2異常時洗浄モードにおける洗浄動作を示すタイムチャートである。
【0062】
先ず、図6により、第1異常時洗浄モードを説明する。この第1異常時洗浄モードにおいては、先ず、使用者が異常を認識した後、既設のスイッチを通常の操作とは異なる所定の特殊操作を行い、異常時洗浄モードに切り替える。この特殊操作は、メーカの作業員が行っても良いし、使用者がマニュアル等に基づいて行ってもよい。
【0063】
次に、使用者が洗浄スイッチ63(63b)をON操作すると、図6に示す第1異常時洗浄モードとなり、第1異常時洗浄モードが実行される。ここでは、図5に示した正常時の洗浄動作と異なる部分のみ説明する。
先ず、図6示されているように、ジェット洗浄は、前リム洗浄の一部が終了(時刻t5)したとき開始され、その後、タイマー制御により、4秒間継続して行われるようになっている。正常時は、下端フロートスイッチ64bがON(水なし)となったときジェット洗浄を終了していたが、この第1異常時洗浄モードでは、下端フロートスイッチ64bの機能を停止しているので、このようなタイマー制御により、ジェット洗浄を可能としている。
【0064】
次に、タンク給水は、後リム洗浄終了間際である時刻t13において開始され、その後、タイマー制御により、40秒間継続して行われるようになっている。正常時は、上端フロートスイッチ64aがON(水あり)となったときタンク給水を終了していたが、この第1異常時洗浄モードでは、上端フロートスイッチ64aの機能を停止しているので、このようなタイマー制御により、タンク給水を可能としている。
【0065】
このように本実施形態においては、第1位常時モードを実行することにより、貯水タンクからの洗浄水の漏洩が小さい場合やフロートスイッチが異常な場合においても、便器洗浄を行うことができる。
【0066】
次に、図7により、第2異常時洗浄モードを説明する。この第2異常時洗浄モードにおいては、上述した既設のスイッチの所定の特殊操作を行っても良いし、この特殊操作を行わなくても良い。
【0067】
次に、使用者が洗浄スイッチ63(63b)をON操作すると、図7に示す第2異常時洗浄モードとなり、第2異常時洗浄モードが実行される。ここでも、図5に示した正常時の洗浄動作と異なる部分のみ説明する。
先ず、図7に示すように、使用者が、待機状態(時刻t0〜t1)において、洗浄スイッチ63(63b)をON操作する(時刻t1)と、給水路切替弁36は、中立位置からタンク側給水路40の全開状態(タンク側100%)の位置に切り替えられ、時刻t2から時刻t3まで、タイマー制御により、40秒間、タンク給水が行われる。これは、後述するように、前回の便器使用時の便器洗浄終了時にタンク給水を行わず貯水タンク20を空の状態にしておいたことが前提となっている。正常時は、上端フロートスイッチ64aがON(水あり)となったときタンク給水を終了していたが、この第2異常時洗浄モードでは、上端フロートスイッチ64aの機能を停止しているので、このようなタイマー制御により、タンク給水を可能としている。
【0068】
次に、ジェット洗浄は、第1異常時洗浄モードと同じであり、前リム洗浄の一部が終了(時刻t5)したとき開始され、その後、タイマー制御により、4秒間継続して行われるようになっている。正常時は、下端フロートスイッチ64bがON(水なし)となったときジェット洗浄を終了していたが、この第1異常時洗浄モードでは、下端フロートスイッチ64bの機能を停止しているので、このようなタイマー制御により、ジェット洗浄を可能としている。
【0069】
さらに、第2異常時洗浄モードでは、後リム洗浄が終了した時刻t13以降において、図5に示す正常時の洗浄動作では行っていた、タンク給水を禁止する(規制する)ようにしている。これにより、貯水タンク20が軽度の損傷時等において、漏水することを確実に防止するようにしている。
【0070】
このように本実施形態においては、第2位常時モードを実行することにより、貯水タンクからの洗浄水の漏洩が小さい場合やフロートスイッチが異常な場合においても、便器洗浄を行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
1 水洗大便器
2 便器本体
10 機能部
12 ボウル部
14 排水トラップ管路
16 ジェット吐水口
18 リム吐水口
20,80 貯水タンク
22 加圧ポンプ
24 給水路
32 定流量弁
34 電磁開閉弁
36 給水路切替弁
38 リム側給水路
40 タンク側給水路
43,44 ボール式逆止弁
45 ポンプ側給水路
46 ジェット側給水路
62 コントローラ
63 洗浄スイッチ
64a 上端フロートスイッチ
64b 下端フロートスイッチ
65 異常報知装置
70 オーバーフロー流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって、
ボウル部と、洗浄水を吐出するリム吐水口及びジェット吐水口と、排水トラップ管路とを備えた便器本体と、
洗浄水を貯水する貯水タンクと、
この貯水タンクの水位を検出する水位検出手段と、
洗浄水を上記リム吐水口及び上記貯水タンクに供給する洗浄水供給手段と、
上記貯水タンクの洗浄水を加圧してジェット側給水路を経て上記ジェット吐水口に供給する加圧ポンプと、
使用者がON操作して便器洗浄を開始する洗浄スイッチと、
この洗浄スイッチがON操作されると、上記水位検出手段の出力に基づいて、上記洗浄水供給手段及び/又は上記加圧ポンプを制御して便器洗浄を行う通常時洗浄手段と、
上記水位検出手段の出力値により水位検出手段自体及び/又は上記貯水タンクの異常を検知する異常検知手段と、
この異常検知手段が異常を検知したとき、使用者が洗浄スイッチをON操作しても上記通常時洗浄手段による便器洗浄を禁止する洗浄禁止手段と、
この洗浄禁止手段により通常時洗浄手段による便器洗浄が禁止されたとき、タイマー制御により上記洗浄水供給手段及び/又は上記加圧ポンプを制御して便器洗浄を行う異常時洗浄手段と、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記異常時洗浄手段は、所定の特殊操作により洗浄禁止手段による便器洗浄の禁止を解除して、タイマー制御により上記洗浄水供給手段及び/又は上記加圧ポンプを制御して便器洗浄を行う請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記異常時洗浄手段は、上記異常検知手段が異常を検知した後に使用者が洗浄スイッチをON操作したとき、タイマー制御により、洗浄水供給手段により貯水タンクに洗浄水を供給し、上記洗浄水供給手段によりリム吐水口に洗浄水を供給すると共に加圧ポンプが貯水タンクの洗浄水を加圧してジェット吐水口へ供給し、さらに、便器洗浄終了後に貯水タンクへの給水を規制する請求項1記載の水洗大便器。
【請求項4】
更に、上記異常検知手段が異常を検知した後、使用者が洗浄スイッチをON操作したとき、少なくとも音により異常を使用者に報知する異常報知手段を有する請求項1乃至3の何れか1項記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記洗浄スイッチは、上記便器本体及びリモコン部にそれぞれ設けられ、上記異常検知手段が異常を検知した後、リモコン部に設けられた洗浄スイッチの作動が禁止されると共に便器本体に設けられた洗浄スイッチの作動が許容される請求項1乃至4の何れか1項記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−29018(P2013−29018A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−243238(P2012−243238)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2007−184807(P2007−184807)の分割
【原出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】