説明

水洗大便器

【課題】便器洗浄中に汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路から排出されずにボウル部内に残存することを防ぐことができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、洗浄水源から供給される洗浄水を吐水するリム吐水口18が形成されたリム部22を備えたボウル部12と、このボウル部の下方に接続される入口部14aと、この入口部から上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管から下降するトラップ下降管14cと、このトラップ下降管とトラップ上昇管との間に位置する頂部14dと、を備えた排水トラップ管路14と、を有し、排水トラップ管路のトラップ上昇管は、便器の洗浄中にボウル部からトラップ上昇管内に流入してトラップ上昇管内を上流側へ流れようとする洗浄水をトラップ上昇管の断面のほぼ中央の領域Aに導くガイド部30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器として、特許文献1に示されているように、便器ボウル部のリム部に形成されたリム吐水口から便器ボウル部内に洗浄水を吐水し、便器ボウル部の底部に形成されたジェット吐水口から排水トラップ管路内に洗浄水を吐水することにより、サイホン作用を発生させ、便器ボウル部内の汚物を含む洗浄水(汚水)を排水トラップ管路の上昇管路から下降管路へと排出する、いわゆる、サイホンジェット式の水洗大便器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−7854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年の水洗大便器の分野では、便器洗浄に使用される洗浄水量の節水化の要請が著しく、1回の大洗浄に使用される最大の洗浄水量が、例えば4リットル程度になるように、節水化の実現に向けた様々な取り組みがなされている。
【0005】
しかしながら、このような近年の節水化の要請に応えるために、特に、ジェット吐水口から吐水される洗浄水の水量をむやみに減少させてしまうと、排水トラップ管路の上昇管路から下降管路へと浮遊系汚物を排出することができなくなり、便器ボウル部内に浮遊系汚物が残存してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来の問題を解決するためになされたものであり、便器洗浄中に汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路から排出されずにボウル部内に残存することを防ぐことができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、洗浄水源から供給される洗浄水を吐水するリム吐水口が形成されたリム部を備えたボウル部と、このボウル部の下方に接続される入口部と、この入口部から上昇するトラップ上昇管と、このトラップ上昇管から下降するトラップ下降管と、このトラップ下降管と上記トラップ上昇管との間に位置する頂部と、を備えた排水トラップ管路と、を有し、上記排水トラップ管路のトラップ上昇管は、便器の洗浄中に上記ボウル部から上記トラップ上昇管内に流入して上記トラップ上昇管内を上流側へ流れようとする洗浄水を上記トラップ上昇管の断面のほぼ中央の領域に導くガイド部を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ボウル部のリム部のリム吐水口からボウル部内に洗浄水が吐水されて便器の洗浄が行われ、ボウル部から汚物を含む洗浄水が排水トラップ管路のトラップ上昇管内に流入し、上流側方向へ排水トラップ管路の入口部に向って逆流しようとした際に、このトラップ上昇管内を逆流しようとする汚物を含む洗浄水(汚水)がトラップ上昇管のガイド部によりトラップ上昇管の断面のほぼ中央の領域に導かれ、その後、ボウル部側から排水トラップ管路の入口部を経てトラップ上昇管内に新たに流入した洗浄水の水圧により、トラップ上昇管内の汚水が押し上げられ、排水トラップ管路の頂部を超えてトラップ下降管から排出される。したがって、汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路から排出されずにボウル部内に残存することを防ぐことができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記ボウル部は、更に、上記排水トラップ管路の入口部に指向するように形成されて上記トラップ上昇管内にジェット吐水を行うジェット吐水口を備えている。
このように構成された本発明においては、ボウル部のリム部のリム吐水口からボウル部内に洗浄水が吐水されて便器の洗浄が行われ、ボウル部から汚物を含む洗浄水が排水トラップ管路のトラップ上昇管内に流入し、上流側方向へ排水トラップ管路の入口部に向って逆流しようとした際に、このトラップ上昇管内を逆流しようとする汚物を含む洗浄水(汚水)がトラップ上昇管のガイド部によりトラップ上昇管の断面のほぼ中央の領域に導かれ、その後、ボウル部のジェット吐水口から排水トラップ管路の入口部を経てトラップ上昇管内に新たに流入するジェット吐水の水圧や噴流により、トラップ上昇管内の汚水が押し上げられ、排水トラップ管路の頂部を超えてトラップ下降管から排出される。したがって、汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路から排出されずにボウル部内に残存することを防ぐことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記排水トラップ管路のトラップ上昇管は、更に、上記入口部から上記トラップ上昇管のガイド部まで延びる流路の断面の所定方向の幅が上記入口部から上記ガイド部に向かって徐々に縮小するように形成された流路縮小部を備えている。
このように構成された本発明においては、便器洗浄中にボウル部内の汚物を含む洗浄水が排水トラップ管路の入口部からトラップ上昇管の流路縮小部を経てトラップ上昇管のガイド部に流入する際に、トラップ上昇管の流路縮小部により、排水トラップ管路の入口部からトラップ上昇管のガイド部まで延びる流路の断面の所定方向の幅が入口部からガイド部に向かって徐々に縮小しているため、この流路縮小部内で汚物の詰まりを発生することなくスムーズに汚物を含む汚水を下流側へ排出することができる。したがって、汚物を含む汚水が排水トラップ管路から排出されずにボウル部内に残存することを防ぐことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記排水トラップ管路のトラップ上昇管は、概ね台形形状の流路断面を備え、この流路断面の上側部分は、上方に張り出した湾曲部分を備えている。
このように構成された本発明においては、排水トラップ管路のトラップ上昇管の概ね台形形状の流路断面の上側部分が上方に張り出した湾曲部分を備えていることにより、例えば、このトラップ上昇管の概ね台形形状の流路断面の断面積と、このトラップ上昇管の流路断面を外接する四角形状の流路断面の断面積とを比較した場合に、トラップ上昇管の概ね台形形状の流路断面の断面積の方が四角形状の流路断面の断面積よりも狭くなるため、排水トラップ管路のトラップ上昇管内で上方へ浮上した浮遊系汚物をトラップ上昇管の流路断面の上側部分の湾曲部分により、トラップ上昇管内の流路断面の中心方向に集めて下流側に排出しやすくすることができる。したがって、汚物を含む汚水が排水トラップ管路から排出されずにボウル部内に残存することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水洗大便器によれば、便器洗浄中に汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路から排出されずにボウル部内に残存することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の部分側面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器の平面図である。
【図3】図2に示す水洗大便器の排水トラップ管路の部分を拡大した部分拡大図である。
【図4】図3に示す水洗大便器の排水トラップ管路のトラップ上昇管における流路縮径部及びガイド部の部分を拡大した部分拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路のトラップ上昇管のガイド部の入口から出口までの所定間隔毎の流路断面の形状変化について説明した図である。
【図6】図6の(a)〜(n)は、本発明の一実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路のトラップ上昇管のガイド部の入口から出口までの各流路断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器を説明する。
まず、図1及び図2により、本発明の第1実施形態による水洗大便器の構造を説明する。
ここで、図1は本発明の一実施形態による水洗大便器の部分側面図であり、図2は図1に示す水洗大便器の平面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、この便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体2の後方上部に配置された局部洗浄装置8を備えている。
さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されている。
【0015】
便器本体2には、汚物を受けるボウル形状のボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
【0016】
ジェット吐水口16は、ボウル部12の汚物を受ける汚物受け面20の底部20aに形成されており、排水トラップ管路14の入口部14aに指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐出するようになっている。
【0017】
リム吐水口18は、ボウル部12の上縁に形成するリム部22の後方側の領域における前方から見て左側の内周面22aに形成されている。このリム吐水口18からリム部22の内周面22aに沿って前方に吐出された洗浄水は、汚物受け面20の上縁とリム部22の下縁との間に形成されたボウル部12の棚部24から汚物受け面20に沿って旋回する流れ(旋回流)を形成するようになっている。
【0018】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。
ここで、排水トラップ管路14のトラップ下降管14cの下端には、排水管26が接続されている。
【0019】
本実施形態による水洗大便器1においては、リム吐水に関しては、リム部22のリム吐水口18よりも後方側に形成されたリム導水路18aが、洗浄水を供給する洗浄水源である水道(図示せず)に直結されており、水道の給水圧力により、リム導水路18aに供給された洗浄水は、リム吐水口18から前方へ吐出されるようになっている。なお、リム吐水口18へ洗浄水を供給する洗浄水源としては、本実施形態で示した水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式のものに限定されず、重力給水式の貯水タンクのようなタンク式のものや、フラッシュバルブ式のものや、ポンプの補圧を利用して洗浄水を供給するものであってもよい。
また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク(図示せず)に貯水された洗浄水は、機能部10に内蔵された加圧ポンプ(図示せず)によって加圧され、ボウル部12の後方側からジェット吐水口16にかけて形成されたジェット導水路16aを経て、ジェット吐水口16から吐出されるようになっている。
【0020】
つぎに、図1〜図4により、本実施形態による水洗大便器1の排水トラップ管路14について詳細に説明する。
図3は、図2に示す水洗大便器の排水トラップ管路の部分を拡大した部分拡大図であり、図4は、図3に示す水洗大便器の排水トラップ管路のトラップ上昇管における流路縮径部及びガイド部の部分を拡大した部分拡大図である。
【0021】
図3及び図4に示すように、排水トラップ管路14のトラップ上昇管14bは、入口部14aから後方側(下流側)に所定距離に延びた流路縮小部28を備え、この流路縮小部28の流路断面の横幅w1が、流路縮小部28の上流側端部である入口28aから流路縮小部28の下流側端部である出口28bに向って徐々に縮小するようになっている。これにより、水洗大便器1の洗浄中にボウル部12内の汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路14の入口部14aからトラップ上昇管14bの流路縮小部28を通過する際に、この流路縮小部28内で汚物の詰まりを発生することなくスムーズに汚水を下流側へ排出することができ、汚水が排水トラップ管路14から排出されずにボウル部12内に残存することを防ぐことができるようになっている。
【0022】
また、排水トラップ管路14のトラップ上昇管14bは、流路縮小部28の出口28bに接続されたガイド部30を備え、このガイド部30により、水洗大便器1の洗浄中にボウル部12から排水トラップ管路14の入口部14a経てトラップ上昇管14b内に流入した汚物を含む洗浄水(汚水)が、トラップ上昇管14bの流路縮小部28を経てガイド部30に流入した後、或いはトラップ上昇管14bの流路縮小部28を経てガイド部30を通過した後、上流側方向へ排水トラップ管路14の入口部14aに向ってトラップ上昇管内14bを逆流する汚水をトラップ上昇管14bの流路断面のほぼ中央の領域Aに導くことができるようになっている。
【0023】
さらに、トラップ上昇管14bのガイド部30は、流路縮小部28の出口28bに相当する入口30aよりも下流側に隣接した位置から横方向(図4の前方側から見て左右方向)に流路断面の横幅w2が下流側に向って拡張するように形成された上流側ガイド部30bと、この上流側ガイド部30bの下流側端部からガイド部30の出口30cに向って流路断面の横幅w3が下流側に向って徐々に縮小するように形成された下流側ガイド部30dとを備えている。
【0024】
また、本実施形態の水洗大便器1では、図3及び図4に示すように、ジェット吐水口16及びジェット導水路16aの流路断面の大きさ(横幅w4)が、排水トラップ管路14の流路縮小部28及びガイド部30の流路断面の大きさ(横幅w1〜w3)よりも小さく設定されており、水洗大便器1の洗浄が開始されて最初にリム吐水口18からのボウル部12内に洗浄水(リム吐水)が吐出され、ボウル部12内の汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路14へ排出された後、ジェット吐水口16から排水トラップ管路14内に吐出された洗浄水(ジェット吐水)がトラップ上昇管14bの流路縮小部28及びガイド部30の流路断面のほぼ中央の領域を勢いよく流れるようになっている。
【0025】
これにより、水洗大便器1の洗浄が開始されてボウル部12のリム部22のリム吐水口18からボウル部12内に洗浄水が吐水され、ボウル部12から排水トラップ管路14のトラップ上昇管14b内に流入した汚物を含む洗浄水(汚水)が、図3及び図4に示すように、トラップ上昇管14bのガイド部30内の流路断面の中央の領域からその両側(外側)領域に向かって迂回するような流れf1を形成し、排水トラップ管路14の入口部14aに向って逆流しようとする流れが発生したとしても、このトラップ上昇管14bのガイド部30内を逆流しようとする汚水(流れf1)が、上流側ガイド部30bの内周面から下流側ガイド部30dの内周面に沿って再びトラップ上昇管14bの断面のほぼ中央の領域Aに導かれるようになっている。そして、このトラップ上昇管14bの断面のほぼ中央の領域Aに導かれた汚水は、ボウル部12のジェット吐水口16から排水トラップ管路14の入口部14aを経てトラップ上昇管14b内に新たに流入するジェット吐水の水圧や噴流(図3及び図4に示す流れf2参照)により、トラップ上昇管14b内の汚水が押し上げられ、排水トラップ管路14の頂部14dを超えてトラップ下降管14cから排出されるようになっており、汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路14から排出されずに逆流してボウル部12内に残存することを防ぐことができるようになっている。
【0026】
つぎに、図1及び図4〜図6により、本実施形態による水洗大便器1の排水トラップ管路14のトラップ上昇管路14bのガイド部30における流路断面について詳細に説明する。
ここで、図5は本発明の一実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路のトラップ上昇管のガイド部の入口から出口までの所定間隔毎の流路断面の形状変化について説明した図である。なお、図4及び図5においては、トラップ上昇管14bのガイド部30の入口30a(流路縮小部28の出口28b)を「断面a」とし、ガイド部30の出口30cにおける上下方向に延びる垂直な流路断面を「断面n」とし、ガイド部30の入口30aから出口30cまでの5mm毎のガイド部30の垂直な流路断面のそれぞれについて、「断面b〜m」とする。
また、図6の(a)〜(n)は、本発明の一実施形態による水洗大便器の排水トラップ管路のトラップ上昇管のガイド部の入口から出口までの各流路断面を示す図である。なお、図6の(a)はトラップ上昇管14bのガイド部30の入口30a(流路縮小部28の出口28b)における上下方向に延びる垂直な流路断面とし、図6の(n)は、トラップ上昇管14bのガイド部30の出口30cにおける上下方向に延びる垂直な流路断面を示しており、図6の(b)〜(m)は、ガイド部30の入口30aから出口30cまでの5mm毎のガイド部30の垂直な流路断面をそれぞれ示している。
【0027】
図1及び図4〜図6に示すように、排水トラップ管路14のトラップ上昇管14bの流路縮小部28及びガイド部30の流路断面a〜jは、これらの上側部分が上方に張り出した湾曲部分28c,30eを備えた概ね台形形状となっている。特に、ガイド部30の流路断面g〜jの上側の湾曲部分30eは円弧状となっている。
また、ガイド部30の流路断面k〜nにおいては、上側部分が上方に張り出した湾曲部分30eとなっており、下側部分が下方に張り出した湾曲部分30fとなっている。
これらのトラップ上昇管14bの流路断面a〜nの湾曲部分30e,30fにより、これらの流路断面a〜nの各断面積Sa〜Snと、流路断面a〜nに外接する仮想的な四角形の各断面積Sa’〜Sn’(図6の(a)〜(n)の破線Sa’〜Sn’参照)とを比較した場合に、流路断面a〜nの各断面積Sa〜Snの方が、四角形状の流路断面の断面積Sa’〜Sn’よりも狭くなるため、排水トラップ管路14のトラップ上昇管14bの流路縮小部28やガイド部30の流路内で上方へ浮上した浮遊系汚物が、トラップ上昇管14bの流路縮小部28やガイド部30の流路断面a〜nの上側部分の湾曲部分28c,30eにより、トラップ上昇管14bの流路縮小部28やガイド部30の流路断面a〜nの中心方向に集めてジェット吐水により下流側へ排出しやすくすることができるようになっている。
【0028】
上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1によれば、ボウル部12のリム部22のリム吐水口18からボウル部12内に洗浄水が吐水されて水洗大便器1の洗浄が行われ、ボウル部12から汚物を含む洗浄水が排水トラップ管路14の入口部14aからトラップ上昇管14bの流路縮径部28を経てガイド部30内に流入した後、上流側方向へ排水トラップ管路14の入口部14aに向って逆流する流れf1が発生したとしても、このトラップ上昇管14b内を逆流する流れf1の汚物を含む洗浄水(汚水)がトラップ上昇管14bのガイド部30の下流側ガイド30dから上流側ガイド部30bを経てトラップ上昇管14の断面のほぼ中央の領域A(図3及び図4参照)に導かれる。そして、このトラップ上昇管14b内のほぼ中央の領域Aに逆流した汚水は、この後、ジェット吐水口16から排水トラップ管路14の入口部14aを経てトラップ上昇管14bの流路縮径部28内に新たに流入する洗浄水(図3に示すジェット吐水の流れf2参照)の水圧と噴流により、トラップ上昇管14b内を頂部14dに向って押し上げられ、この排水トラップ管路14の頂部14dを超えてトラップ下降管14bから排水管26へ排出される。この結果、汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路14から排出されずにボウル部12内に残存することを防ぐことができる。
【0029】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器洗浄中にボウル部12内の汚物を含む洗浄水(汚水)が排水トラップ管路14の入口部14aからトラップ上昇管14bの流路縮小部28を経てトラップ上昇管14bのガイド部30に流入する際に、トラップ上昇管14bの流路縮小部28の流路断面の横幅w1が、流路縮小部28の上流側端部である入口28aから流路縮小部28の下流側端部である出口28bに向って徐々に縮小しているため、この流路縮小部28内で汚物の詰まりを発生することなくスムーズに汚物を含む汚水を下流側へ排出することができる。この結果、汚物を含む汚水が排水トラップ管路14から排出されずにボウル部12内に残存することを防ぐことができる。
【0030】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、排水トラップ管路14のトラップ上昇管14bの概ね台形形状の流路断面a〜jの上側部分が上方に張り出した湾曲部分30eを備えていることにより、例えば、このトラップ上昇管14bの概ね台形形状の流路断面a〜jの断面積Sa〜Sjと、この流路断面a〜jを外接する四角形状の流路断面の断面積Sa’〜Sj’とを比較した場合に、トラップ上昇管14bの概ね台形形状の流路断面a〜jの断面積Sa〜Sjの方が四角形状の流路断面の断面積Sa’〜Sj’よりも狭くなるため、排水トラップ管路のトラップ上昇管14bの流路縮小部28及びガイド部30内で上方へ浮上した浮遊系汚物をトラップ上昇管14bの流路断面a〜jの上側部分の湾曲部分28c,30eにより、トラップ上昇管14bの流路断面a〜jの中心方向に集めてジェット吐水により下流側へ排出しやすくすることができる。この結果、汚物を含む汚水が排水トラップ管路14から排出されずにボウル部12内に残存することを防ぐことができる。
【0031】
なお、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、例として、リム吐水口及びジェット吐水口からボウル部と排水トラップ管路へ洗浄水を供給して、サイホン作用を発生させ、これにより、ボウル部内の汚物を排出するようにしたサイホンジェット式の水洗大便器の形態について説明したが、このような形態に限られず、ジェット吐水口を省略してリム吐水口のみを採用したサイホン式の水洗大便器であってもよいし、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、洗い落し式の水洗大便器であってもよい。
【0032】
また、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1では、排水トラップ管路14のトラップ上昇管14bの流路縮小部28について、この流路縮小部28の流路断面の横幅w1が、流路縮小部28の上流側端部である入口28aから流路縮小部28の下流側端部である出口28bに向って徐々に縮小するような形態について説明したが、このような形態に限定されず、流路縮小部28の流路断面の横幅w1を徐々に縮小する代わりに流路断面の縦幅を徐々に縮小するようにしてもよい。さらに、トラップ上昇管14bのガイド部30についても、上流側ガイド部30の流路断面の横幅w2を下流側に向って拡張すると共に下流側ガイド部30の流路断面の横幅w3を下流側に向って徐々に縮小する代わりに、上流側ガイド部30の流路断面の縦幅を下流側に向って拡張すると共に下流側ガイド部30の流路断面の縦幅を下流側に向って徐々に縮小するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 便座
6 カバー
8 局部洗浄装置
10 機能部
12 ボウル部
12a ボウル部内の前端部
12b ボウル部内の右側端部
12c ボウル部内の後端部
12d ボウル部内の左側端部
14 排水トラップ管路
14a 排水トラップ管路の入口部
14b トラップ上昇管
14c トラップ下降管
14d 排水トラップ管路の頂部
16 ジェット吐水口
16a ジェット導水路
18 リム吐水口
18a リム導水路
20 ボウル部の汚物受け面
20a ボウル部の汚物受け面の底部
22 ボウル部のリム部
22a ボウル部のリム部の内周面
24 ボウル部の棚部
24a ボウル部の棚部の傾斜部
26 排水管
28 流路縮小部
28a 流路縮小部の入口
28b 流路縮小部の出口
28c 流路縮小部の流路断面の湾曲部分
30 ガイド部
30a ガイド部の入口
30b 上流側ガイド部
30c ガイド部の出口
30d 下流側ガイド部
30e ガイド部の流路断面の湾曲部分
30f ガイド部の流路断面の湾曲部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、
洗浄水源から供給される洗浄水を吐水するリム吐水口が形成されたリム部を備えたボウル部と、
このボウル部の下方に接続される入口部と、この入口部から上昇するトラップ上昇管と、このトラップ上昇管から下降するトラップ下降管と、このトラップ下降管と上記トラップ上昇管との間に位置する頂部と、を備えた排水トラップ管路と、を有し、
上記排水トラップ管路のトラップ上昇管は、便器の洗浄中に上記ボウル部から上記トラップ上昇管内に流入して上記トラップ上昇管内を上流側へ流れようとする洗浄水を上記トラップ上昇管の断面のほぼ中央の領域に導くガイド部を備えていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記ボウル部は、更に、上記排水トラップ管路の入口部に指向するように形成されて上記トラップ上昇管内にジェット吐水を行うジェット吐水口を備えている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記排水トラップ管路のトラップ上昇管は、更に、上記入口部から上記トラップ上昇管のガイド部まで延びる流路の断面の所定方向の幅が上記入口部から上記ガイド部に向かって徐々に縮小するように形成された流路縮小部を備えている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記排水トラップ管路のトラップ上昇管は、概ね台形形状の流路断面を備え、この流路断面の上側部分は、上方に張り出した湾曲部分を備えている請求項3記載の水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72238(P2013−72238A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212865(P2011−212865)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【特許番号】特許第5110412号(P5110412)
【特許公報発行日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】