水洗式便器の排水路
【課題】便器洗浄を良好に行うことができる水洗式便器の排水路を提供する。
【解決手段】水洗式便器の排水路は、便鉢10の下流側に連通し、下流側に向けて上昇する上昇流路30を備えている。上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部31から中間部30Mにかけて上下方向の中央より上側の流路面積を下側の流路面積よりも大きく形成し、中間部30Mから下流端部にかけて上下方向の中央より下側の流路面積を上側の流路面積よりも大きく形成している。
【解決手段】水洗式便器の排水路は、便鉢10の下流側に連通し、下流側に向けて上昇する上昇流路30を備えている。上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部31から中間部30Mにかけて上下方向の中央より上側の流路面積を下側の流路面積よりも大きく形成し、中間部30Mから下流端部にかけて上下方向の中央より下側の流路面積を上側の流路面積よりも大きく形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器の排水路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の水洗式便器の排水路が開示されている。この水洗式便器の排水路は、便鉢の下流側に連通し、下流側に向けて上昇する上昇流路を備えている。この上昇流路は、下流側に位置する頂部が洗浄水の排水方向に対して直角方向に延びた水平面を有している。上昇流路は、頂部が形成された部分の横幅が上昇流路と同じかそれよりも広く形成されている。
【0003】
このため、この水洗式便器の排水路では、水位上昇によって頂部を乗り越える洗浄水の水量を多くすることができる。このため、便器洗浄の初期に大量の洗浄水が一気に頂部を乗り越え、上昇流路の下流に連通した下降流路内に水膜を形成することができる。これによって、この水洗式便器は排水路内にサイホン作用を発生して便器洗浄を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−324367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の水洗式便器の排水路では、頂部に至るまでの上昇流路の形状が考慮されていない。上昇流路の形状によっては、排水路内にサイホン作用が発生しても上昇流路内を洗浄水が良好に流れず、汚物等の搬送が良好に行われないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器洗浄を良好に行うことができる水洗式便器の排水路を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水洗式便器の排水路は、便鉢の下流側に連通し、下流側に向けて上昇する上昇流路を備えた水洗式便器の排水路であって、
前記上昇流路は、
洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部から中間部にかけて上下方向の中央より上側の流路面積を下側の流路面積よりも大きく形成し、中間部から下流端部の上流側近傍にかけて上下方向の中央より下側の流路面積を上側の流路面積よりも大きく形成していることを特徴とする。
【0008】
発明者らは、水洗式便器の排水路において、上昇流路の上流端部で洗浄水の排水方向が下方向から上方向に変化することに起因して、上昇流路の下側面の近傍では、上流側で洗浄水の流速が遅く洗浄水が淀み易く、下流側の方が上流側より洗浄水の流速が速いこと、及び上昇流路の上側面の近傍では、上流端部の近傍で洗浄水の流速が速いが、その下流側の洗浄水の流速が遅く洗浄水が淀み易いことを知得した。
【0009】
このため、この水洗式便器の排水路では、上昇流路の上流端部から中間部までは、洗浄水の流速が早い領域である上側の流路面積を大きくし、上昇流路の中間部から下流端部の上流側近傍までは、洗浄水の流速が早い領域である下側の流路面積を大きくした。これによって、上昇流路の洗浄水の淀みを少なくして上昇流路内の全領域で大流量の洗浄水を良好に流すことができる。このため、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0010】
したがって、本発明の水洗式便器の排水路は便器洗浄を良好に行うことができる。
【0011】
前記上昇流路は、下側面が洗浄水の排水方向及びこの排水方向に対して直角方向に延びた略平坦面を有し得る。この場合、下側面の近傍の流路面積を拡大することができるため、流速の早い領域において大流量の洗浄水を流すことができる。このため、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0012】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上側面を中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型に形成し得る。この場合、上昇流路の上側面の近傍における洗浄水の流速が遅くなる領域を山型にすることによって、その領域の流路面積を小さくして洗浄水の流速を速くし、洗浄水の淀みを防止することができる。このため、上昇流路内の洗浄水を良好に流すことができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0013】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、前記上側面を中央部から左右下方に延びて内側に膨らんだ傾斜面に形成し得る。この場合、上昇流路の上側面の近傍において洗浄水が淀み易い領域を内側に膨らんだ傾斜面にすることによって、その領域の洗浄水の流速をさらに速くして洗浄水の淀みを防止することができる。これによって、上昇流路内を洗浄水が良好に流れ、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の水洗式便器の断面図である。
【図2】実施例の水洗式便器の平面図である。
【図3】図1の矢視A−A断面図である。
【図4】図1の矢視B−B断面図である。
【図5】図1の矢視C−C断面図である。
【図6】(A)上昇流路の断面図である。(B)図6(A)の矢視D−D〜H−H断面図である。(C)図6(A)の矢視I−I断面図である。
【図7】図1の矢視J−J断面図である。
【図8】図1の矢視K−K断面図である。
【図9】図1の矢視L−L断面図である。
【図10】図1の矢視P−P断面図である。
【図11】図1の矢視Q−Q断面図である。
【図12】図1の矢視R−R断面図である。
【図13】図1の矢視R−Rの反対側から見た断面図である。
【図14】他の実施例の下降流路を示す部分断面図である。
【図15】他の実施例の下降流路を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水洗式便器の排水路を備えた水洗式便器を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<実施例>
実施例の水洗式便器は、図1及び図2に示すように、便器本体1、便器本体1の後部上面に載置したタンク本体2、タンク本体2に貯留した洗浄水を便器本体1に吐水する分配管3、及び便器本体1の排出口40Aと便器本体1が設置されるトイレルームの床面に開口する図示しない排水管の流入口とを連通する接続配管4を有している。接続配管4は、排出口40Aの直下に排水口40Aから流下した洗浄水が衝突し、飛散する絞り部5を形成している。この絞り部5に洗浄水が衝突して飛散することによって水膜形成領域Sに水膜が形成される。これによって、排水路内にサイホン作用を発生させることができる。
【0017】
便器本体1は、便鉢10、導入路20、上昇流路30、及び下降流路40を備えている。導入路20、上昇流路30、下降流路40及び接続配管4が水洗式便器の排水路を構成している。
【0018】
便鉢10は上部内周縁にリム通水路11を形成している。分配管3は、タンク本体2の排出口に接続した流入口3Aと、流入口3Aの下方で分岐した第1吐出管3B及び第2吐出管3Cとを有している。便器洗浄を実行すると、タンク本体2に貯留した洗浄水を第1吐出管3Bからリム通水路11に沿って吐水するとともに、第2吐出管3Cから便鉢10の後部に向けて吐水する。第1吐出管3Bからリム通水路11に沿って吐水した洗浄水は、リム通水路11上を流れつつ、便鉢10の内面に流れ落ちる。また、第1吐出管3Bから吐水する洗浄水の水量は第2吐出管3Cから吐水する洗浄水の水量よりも多いため、便鉢10の上方から見ると、便鉢10内には反時計回りに流れる旋回流FLが形成される。
【0019】
導入路20は、図1及び図3〜図5に示すように、便鉢10の下端部に連続しており、管状に形成されている。導入路20は、便鉢10の下端部から便器本体1の後方に向けて下方に傾斜している。つまり、導入路20は上昇流路30の上流端部31へ向けて下方に傾斜している。導入路20の下流端部と上昇流路30の上流端部31とは連続して形成されている。導入路20は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、左下コーナー部20L、31Lの方が右下コーナー部20R、31Rに比べ曲率の小さい緩やかな曲がり具合のR面に形成されている。これに伴い、右側面31Cが直線的に立ち上がっている。
【0020】
洗浄水は、便鉢10内で反時計回りに流れる旋回流FLを形成して導入路20内に流入する。この際、左下コーナー部20L、31Lが緩やかな曲がり具合のR面であるため洗浄水は導入路20内にスムーズに流入する。導入路20内に流入した洗浄水は、曲率の大きい曲がり具合がきついR面の右下コーナー部20R、31Rから直線的に立ち上がっている右側面31Cに衝突して排水路の下流方向への流れに変化する。このように、導入路20によって、便鉢10内で旋回していた洗浄水の流れを排水路の下流方向の流れに変化して、かつ下流方向の流れを加速し、整流化することができる。
【0021】
導入路20の下流端部であって、上昇流路30の上流端部31は、図5に示すように、断面形状が横長の略矩形である。上昇流路30の上流端部31を境にして、洗浄水の排水方向が下方向から上方向に変化することに起因して、上側面31T側に流速の速い洗浄水が流れる。上昇流路30の上流端部31の近傍の排水路の断面形状において、上下寸法を大きくすると、下側面31B側の洗浄水の流速が遅くなり、下側面31B側の近傍の整流化された洗浄水が淀んでしまうおそれがある。そこで、上昇流路30の上流端部31の近傍においては、上下方向の寸法を小さくして整流化された洗浄水が淀まないようにするとともに、流量を確保するために横方向の寸法を大きく形成している。このため、上昇流路30の上流端部31は断面形状が横長の略矩形に形成している。
【0022】
また、上昇流路30の上流端部31において、上下方向の中央Mより上側の流路面積A1を下側の流路面積B1よりも大きく形成している。これによって、洗浄水の流速が速い領域である上側の流路面積A1を大きくし、上昇流路30に大量の洗浄水を流すことができるとともに、上昇流路30の上流端部31において、下側面31Bの近傍における洗浄水の流速を速くし、整流化された洗浄水の淀みを少なくすることができる。なお、上述したように、曲率の大きい曲がり具合のきついR面の右下コーナー部20R、31Rから直線的に立ち上がった右側面31Cによって、導入路20内で洗浄水の流れを排水路の下流方向に変化させ、かつ下流方向の流れを加速することによって最適化を図ることができる。
【0023】
上昇流路30は上流端部31から便器本体1の後方(下流側)に向けて上昇している。上昇流路30は、図1、図6(A)〜(C)及び図7に示すように、下側面33、下側面33の左右両端から立ち上がる左右側面34L、34R、及び左右側面34L、34Rの上端を連結する上側面35に囲まれて形成されている。
【0024】
上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上下方向の最大長さを上流端部31から下流側に向けて(上流端部31から図6(A)の矢視D−D断面に至るまでの間に)拡大している。これにより、上昇流路30は、この断面形状における上下方向の長さを上昇流路30の下流側で大きくすることができる。このため、上昇流路30の下流端の頂部32を汚物等が通過する際に上昇流路31の上側面35に汚物等が引っ掛かることを防止することができる。よって、排水路内で汚物等が滞留せず、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0025】
上昇流路30は下側面33を下流側に位置する頂部32に向けて徐々に広げて形成している。また、下側面33は、上昇流路30において、洗浄水の排水方向及び排水方向に対して直角方向に延びた平坦面に形成されている。また、下側面33の頂部32は洗浄水の排水方向に対して直角方向に延びた略水平面を有している。
【0026】
上昇流路30の下側面33の近傍では上流側より下流側において洗浄水の流速が速い。このため、上昇流路30の下側面30を下流端に位置する頂部32に向けて徐々に広げることによって、洗浄水の流速が速い領域の流路面積を拡大し、大流量の洗浄水が上昇流路30を流れるようにしている。また、下側面33を頂部32に連続して形成しているため、上昇流路30内の洗浄水がスムーズに流れることができる。このため上昇流路30内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0027】
また、頂部32が洗浄水の排水方向に対して直角方向に延びた略水平面を有しているため、上昇流路30の下流端部に流れる大流量の洗浄水を一気に頂部32の下流側の下降流路40へ流下することができる。下降流路40を流下した洗浄水は、接続配管4の絞り部5に衝突して飛散することによって、水膜形成領域Sに水膜を形成し、排水路内にサイホン作用を確実に発生させることができる。サイホン作用の発生によって、洗浄水は排水路内をさらに勢いよく流れるため、汚物等は、その速い流速の洗浄水に乗って上昇流路30の流路面積が拡大した領域に搬送され、上昇流路30を良好に搬送することができる。
【0028】
上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部31の上側面31Tは上方に膨らんだ曲面に形成されているが、上流端部31より下流側において上側面35は中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型に形成されている。これによって、上昇流路30の上側面35の近傍における洗浄水の流速が遅くなる領域において、流路面積を小さくすることによって、洗浄水の流速を速くして整流化された洗浄水の淀みを防止することができる。このため、上昇流路30内の洗浄水を良好に流すことができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0029】
また、山型に形成された上側面35の上流端部31側では、上側面35を中央部から左右下方に延びて内側に膨らんだ傾斜面に傾斜している。上流端部31より下流側の近傍では、洗浄水の流れ方向が下方向から上方向に変化した直後であるため、上側面35の近傍において洗浄水が淀み易い。このため、この淀み易い領域の上側面35を内側に膨らんだ傾斜面にすることによって、洗浄水の流速をさらに速くし、整流化された洗浄水の淀みを防止することができる。これによって、上昇流路30内の洗浄水が良好に流れ、上昇流路30内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0030】
上昇流路30は、上述したように、上流端部31では、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状における上下方向の中央Mより上側の流路面積A1を下側の流路面積B1よりも大きく形成している。つまり、上昇流路30の上流端部31では、上側面31T側の近傍の洗浄水の流速が速いため、上側の流路面積A1を大きくして大流量の洗浄水が流れるようにしている。上昇流路30は、上流端部31よりも下流側に進むにつれて上側面35の近傍の洗浄水の流速が遅くなる。このため、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状における上下方向の中央Mより上側の流路面積を徐々に小さくし、それにつれて下側の流路面積を徐々に大きくしている。上流端部31から中間部30Mまでは、上側の流路面積が下側の流路面積よりも大きく形成されている。中間部30Mから下流端部までは、図6(B)及び図7に示すように、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上下方向の中央Mより下側の流路面積B2を上側の流路面積A2よりも大きく形成している。
【0031】
このように、上昇流路30の上流端部31から中間部30Mまでは、洗浄水の流速が速い領域である上側の流路面積を大きくし、上昇流路30の中間部30Mから下流端部までは、洗浄水の流速が速い領域である下側の流路面積を大きくしているため、上昇流路30の整流化された洗浄水の淀みを少なくして上昇流路30内の全領域で大流量の洗浄水を良好に流すことができる。このため、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。このため、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0032】
したがって、実施例の水洗式便器の排水路は便器洗浄を良好に行うことができる。
【0033】
下降流路40は、図1、及び図8〜図13に示すように、上昇流路30の下流側に連続して形成されている。下降流路40は垂直下方に延びている。つまり、下降流路40は下流側に向けて下降している。下降流路40は下端部に排出口40Aを形成している。排出口40Aは、接続配管4の上流側の接続口に挿入され、接続配管4を介してトイレルームの床面に開口する排水管の流入口に連通することができる。
【0034】
下降流路40は、上昇流路30の頂部32から延びて、下降流路40の内周面に沿って内側に突出して形成され、内側上方を向いた傾斜面からなる棚部41を有している。棚部41が下降流路40の内周面に沿って内側に突出しているため、頂部32を乗り越えた洗浄水が棚部41に沿って流れ、下降流路40の後方に洗浄水を送ることができる。棚部41から下降流路40内に流れ落ちた洗浄水は、接続配管4に形成した絞り部5に衝突して飛散する。これによって、水膜形成領域Sに水膜が形成され、排水路内にサイホン作用を早期に発生させることができる。つまり、少ない洗浄水でもサイホン作用を早期に発生させることができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0035】
また、棚部41が内側上方を向いた傾斜面からなるため、棚部41によって下降流路40の流路面積が小さくなるが、その変化を緩やかにすることができる。このため、棚部41による汚物等の詰まりを防止することができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0036】
また、棚部41は上昇流路30の頂部32から下降流路40の内周面に沿って後方に向けて下降している。このため、頂部32から棚部41に流れる洗浄水が少なくても下降流路40の内周面に沿って下降流路40の後部まで洗浄水を送ることができる。つまり、少ない洗浄水でも下降流路40の周囲から洗浄水が流れ落ち、水膜形成領域Sに水膜を確実に形成することができる。よって、少ない洗浄水で早期にサイホン作用を発生させることができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0037】
また、棚部41は下降流路40の内周面に沿って後方に向けて幅が徐々に細くなっている。棚部41は、排水路内にサイホン作用が発生し、下降流路40内を洗浄水と共に汚物等が流れる際には抵抗となる。このため、棚部41の幅を後方に向けて徐々に細くすることにより、早期にサイホン作用を発生させることができるとともに、洗浄水等の流れの抵抗を減少し、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0038】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、上昇流路を導入路の下流端部に連続して形成したが、上昇流路を下流端部とは別体に形成して、導入路の下流端部に連結してもよい。
(2)実施例では、下降流路を上昇流路の下流側に連続して形成したが、下降流路を上昇流路とは別体に形成して、上昇流路の下流側に連結してもよい。
(3)実施例では、サイホン式の水洗式便器であったが、サイホン式でなくてもよい。この場合、下降流路に棚部を設けなくてもよい。
(4)実施例では、便器本体の後部上面に載置したタンク本体に貯留した洗浄水を便器本体に供給する水洗式便器であったが、タンク本体を有さず、開閉弁を介して給水源から直接的に洗浄水を供給する水洗式便器であってもよい。
(5)実施例では、上昇流路の下側面を頂部に向けて徐々に広がって形成したが、上昇流路の下側面は頂部に向けて同じ幅で延びていてもよい。
(6)実施例では、上昇流路の下側面が略平坦面に形成したが、平坦面でなくてもよい。
(7)実施例では、頂部が洗浄水の排水方向に対して直角方向に延びた略水平面を有しているが、頂部が略水平面でなくてもよい。
(8)実施例では、上昇流路の上側面を山型に形成したが、山型でなくてもよい。
(9)実施例では、下降流路に棚部を形成したが、棚部はなくてもよい。
(10)実施例では、棚部が下降流路の内周面に沿って後方に向けて下降していたが、下降していなくてもよい。
(11)実施例では、棚部が下降流路の内周面に沿って後方に向けて幅が徐々に細くなっていたが、細くしなくてもよい。
(12)実施例では、棚部が内側上方を向いた傾斜面に形成されていたが、図14に示すように、棚部は水平面141であってもよく、また、図15に示すように、外側上方を向いた傾斜面241に形成されてもよい。
(13)実施例では、便鉢の下端部と上昇流路の上流端部とを連結する導入路を備えていたが、導入路を備えず、便鉢の下端部に直接的に上昇流路の上流端部を連結してもよい。
(14)実施例では、便鉢内に反時計回りに流れる旋回流を形成したが、洗浄水を時計回りに旋回させるものであってもよい。この場合、導入路の形状は実施例における形状を左右反転したものになる。
(15)実施例では、接続配管に絞り部を形成したが、下降流路に絞り部を形成してもよい。
(16)実施例では、上昇流路を洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上下方向の最大長さを上流端部から下流側に向けて拡大したが、上昇流路の下流端の頂部を汚物等が通過する際に汚物等が引っ掛からないようにすればよく、上昇流路の適宜位置の断面形状の上下方向の長さが下流端部より拡大していればよい。
(17)実施例では、上昇流路の中間部から下流端部までは洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上下方向の中央より下側の流路面積を上側の流路面積よりも大きく形成しているが、上流端部近傍では上側の流路面積を下側の流路面積より大きくしてもよい。上昇流路の上流端部近傍では、上側面まで洗浄水が満水にならない場合が多く、上側面の形状や流路面積が流れに影響しないからである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…便鉢
20…導入路
30…上昇流路
30M…中間部
31…(上昇流路の)上流端部
33…下側面
35…上側面
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器の排水路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の水洗式便器の排水路が開示されている。この水洗式便器の排水路は、便鉢の下流側に連通し、下流側に向けて上昇する上昇流路を備えている。この上昇流路は、下流側に位置する頂部が洗浄水の排水方向に対して直角方向に延びた水平面を有している。上昇流路は、頂部が形成された部分の横幅が上昇流路と同じかそれよりも広く形成されている。
【0003】
このため、この水洗式便器の排水路では、水位上昇によって頂部を乗り越える洗浄水の水量を多くすることができる。このため、便器洗浄の初期に大量の洗浄水が一気に頂部を乗り越え、上昇流路の下流に連通した下降流路内に水膜を形成することができる。これによって、この水洗式便器は排水路内にサイホン作用を発生して便器洗浄を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−324367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の水洗式便器の排水路では、頂部に至るまでの上昇流路の形状が考慮されていない。上昇流路の形状によっては、排水路内にサイホン作用が発生しても上昇流路内を洗浄水が良好に流れず、汚物等の搬送が良好に行われないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器洗浄を良好に行うことができる水洗式便器の排水路を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水洗式便器の排水路は、便鉢の下流側に連通し、下流側に向けて上昇する上昇流路を備えた水洗式便器の排水路であって、
前記上昇流路は、
洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部から中間部にかけて上下方向の中央より上側の流路面積を下側の流路面積よりも大きく形成し、中間部から下流端部の上流側近傍にかけて上下方向の中央より下側の流路面積を上側の流路面積よりも大きく形成していることを特徴とする。
【0008】
発明者らは、水洗式便器の排水路において、上昇流路の上流端部で洗浄水の排水方向が下方向から上方向に変化することに起因して、上昇流路の下側面の近傍では、上流側で洗浄水の流速が遅く洗浄水が淀み易く、下流側の方が上流側より洗浄水の流速が速いこと、及び上昇流路の上側面の近傍では、上流端部の近傍で洗浄水の流速が速いが、その下流側の洗浄水の流速が遅く洗浄水が淀み易いことを知得した。
【0009】
このため、この水洗式便器の排水路では、上昇流路の上流端部から中間部までは、洗浄水の流速が早い領域である上側の流路面積を大きくし、上昇流路の中間部から下流端部の上流側近傍までは、洗浄水の流速が早い領域である下側の流路面積を大きくした。これによって、上昇流路の洗浄水の淀みを少なくして上昇流路内の全領域で大流量の洗浄水を良好に流すことができる。このため、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0010】
したがって、本発明の水洗式便器の排水路は便器洗浄を良好に行うことができる。
【0011】
前記上昇流路は、下側面が洗浄水の排水方向及びこの排水方向に対して直角方向に延びた略平坦面を有し得る。この場合、下側面の近傍の流路面積を拡大することができるため、流速の早い領域において大流量の洗浄水を流すことができる。このため、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0012】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上側面を中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型に形成し得る。この場合、上昇流路の上側面の近傍における洗浄水の流速が遅くなる領域を山型にすることによって、その領域の流路面積を小さくして洗浄水の流速を速くし、洗浄水の淀みを防止することができる。このため、上昇流路内の洗浄水を良好に流すことができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0013】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、前記上側面を中央部から左右下方に延びて内側に膨らんだ傾斜面に形成し得る。この場合、上昇流路の上側面の近傍において洗浄水が淀み易い領域を内側に膨らんだ傾斜面にすることによって、その領域の洗浄水の流速をさらに速くして洗浄水の淀みを防止することができる。これによって、上昇流路内を洗浄水が良好に流れ、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の水洗式便器の断面図である。
【図2】実施例の水洗式便器の平面図である。
【図3】図1の矢視A−A断面図である。
【図4】図1の矢視B−B断面図である。
【図5】図1の矢視C−C断面図である。
【図6】(A)上昇流路の断面図である。(B)図6(A)の矢視D−D〜H−H断面図である。(C)図6(A)の矢視I−I断面図である。
【図7】図1の矢視J−J断面図である。
【図8】図1の矢視K−K断面図である。
【図9】図1の矢視L−L断面図である。
【図10】図1の矢視P−P断面図である。
【図11】図1の矢視Q−Q断面図である。
【図12】図1の矢視R−R断面図である。
【図13】図1の矢視R−Rの反対側から見た断面図である。
【図14】他の実施例の下降流路を示す部分断面図である。
【図15】他の実施例の下降流路を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水洗式便器の排水路を備えた水洗式便器を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<実施例>
実施例の水洗式便器は、図1及び図2に示すように、便器本体1、便器本体1の後部上面に載置したタンク本体2、タンク本体2に貯留した洗浄水を便器本体1に吐水する分配管3、及び便器本体1の排出口40Aと便器本体1が設置されるトイレルームの床面に開口する図示しない排水管の流入口とを連通する接続配管4を有している。接続配管4は、排出口40Aの直下に排水口40Aから流下した洗浄水が衝突し、飛散する絞り部5を形成している。この絞り部5に洗浄水が衝突して飛散することによって水膜形成領域Sに水膜が形成される。これによって、排水路内にサイホン作用を発生させることができる。
【0017】
便器本体1は、便鉢10、導入路20、上昇流路30、及び下降流路40を備えている。導入路20、上昇流路30、下降流路40及び接続配管4が水洗式便器の排水路を構成している。
【0018】
便鉢10は上部内周縁にリム通水路11を形成している。分配管3は、タンク本体2の排出口に接続した流入口3Aと、流入口3Aの下方で分岐した第1吐出管3B及び第2吐出管3Cとを有している。便器洗浄を実行すると、タンク本体2に貯留した洗浄水を第1吐出管3Bからリム通水路11に沿って吐水するとともに、第2吐出管3Cから便鉢10の後部に向けて吐水する。第1吐出管3Bからリム通水路11に沿って吐水した洗浄水は、リム通水路11上を流れつつ、便鉢10の内面に流れ落ちる。また、第1吐出管3Bから吐水する洗浄水の水量は第2吐出管3Cから吐水する洗浄水の水量よりも多いため、便鉢10の上方から見ると、便鉢10内には反時計回りに流れる旋回流FLが形成される。
【0019】
導入路20は、図1及び図3〜図5に示すように、便鉢10の下端部に連続しており、管状に形成されている。導入路20は、便鉢10の下端部から便器本体1の後方に向けて下方に傾斜している。つまり、導入路20は上昇流路30の上流端部31へ向けて下方に傾斜している。導入路20の下流端部と上昇流路30の上流端部31とは連続して形成されている。導入路20は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、左下コーナー部20L、31Lの方が右下コーナー部20R、31Rに比べ曲率の小さい緩やかな曲がり具合のR面に形成されている。これに伴い、右側面31Cが直線的に立ち上がっている。
【0020】
洗浄水は、便鉢10内で反時計回りに流れる旋回流FLを形成して導入路20内に流入する。この際、左下コーナー部20L、31Lが緩やかな曲がり具合のR面であるため洗浄水は導入路20内にスムーズに流入する。導入路20内に流入した洗浄水は、曲率の大きい曲がり具合がきついR面の右下コーナー部20R、31Rから直線的に立ち上がっている右側面31Cに衝突して排水路の下流方向への流れに変化する。このように、導入路20によって、便鉢10内で旋回していた洗浄水の流れを排水路の下流方向の流れに変化して、かつ下流方向の流れを加速し、整流化することができる。
【0021】
導入路20の下流端部であって、上昇流路30の上流端部31は、図5に示すように、断面形状が横長の略矩形である。上昇流路30の上流端部31を境にして、洗浄水の排水方向が下方向から上方向に変化することに起因して、上側面31T側に流速の速い洗浄水が流れる。上昇流路30の上流端部31の近傍の排水路の断面形状において、上下寸法を大きくすると、下側面31B側の洗浄水の流速が遅くなり、下側面31B側の近傍の整流化された洗浄水が淀んでしまうおそれがある。そこで、上昇流路30の上流端部31の近傍においては、上下方向の寸法を小さくして整流化された洗浄水が淀まないようにするとともに、流量を確保するために横方向の寸法を大きく形成している。このため、上昇流路30の上流端部31は断面形状が横長の略矩形に形成している。
【0022】
また、上昇流路30の上流端部31において、上下方向の中央Mより上側の流路面積A1を下側の流路面積B1よりも大きく形成している。これによって、洗浄水の流速が速い領域である上側の流路面積A1を大きくし、上昇流路30に大量の洗浄水を流すことができるとともに、上昇流路30の上流端部31において、下側面31Bの近傍における洗浄水の流速を速くし、整流化された洗浄水の淀みを少なくすることができる。なお、上述したように、曲率の大きい曲がり具合のきついR面の右下コーナー部20R、31Rから直線的に立ち上がった右側面31Cによって、導入路20内で洗浄水の流れを排水路の下流方向に変化させ、かつ下流方向の流れを加速することによって最適化を図ることができる。
【0023】
上昇流路30は上流端部31から便器本体1の後方(下流側)に向けて上昇している。上昇流路30は、図1、図6(A)〜(C)及び図7に示すように、下側面33、下側面33の左右両端から立ち上がる左右側面34L、34R、及び左右側面34L、34Rの上端を連結する上側面35に囲まれて形成されている。
【0024】
上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上下方向の最大長さを上流端部31から下流側に向けて(上流端部31から図6(A)の矢視D−D断面に至るまでの間に)拡大している。これにより、上昇流路30は、この断面形状における上下方向の長さを上昇流路30の下流側で大きくすることができる。このため、上昇流路30の下流端の頂部32を汚物等が通過する際に上昇流路31の上側面35に汚物等が引っ掛かることを防止することができる。よって、排水路内で汚物等が滞留せず、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0025】
上昇流路30は下側面33を下流側に位置する頂部32に向けて徐々に広げて形成している。また、下側面33は、上昇流路30において、洗浄水の排水方向及び排水方向に対して直角方向に延びた平坦面に形成されている。また、下側面33の頂部32は洗浄水の排水方向に対して直角方向に延びた略水平面を有している。
【0026】
上昇流路30の下側面33の近傍では上流側より下流側において洗浄水の流速が速い。このため、上昇流路30の下側面30を下流端に位置する頂部32に向けて徐々に広げることによって、洗浄水の流速が速い領域の流路面積を拡大し、大流量の洗浄水が上昇流路30を流れるようにしている。また、下側面33を頂部32に連続して形成しているため、上昇流路30内の洗浄水がスムーズに流れることができる。このため上昇流路30内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0027】
また、頂部32が洗浄水の排水方向に対して直角方向に延びた略水平面を有しているため、上昇流路30の下流端部に流れる大流量の洗浄水を一気に頂部32の下流側の下降流路40へ流下することができる。下降流路40を流下した洗浄水は、接続配管4の絞り部5に衝突して飛散することによって、水膜形成領域Sに水膜を形成し、排水路内にサイホン作用を確実に発生させることができる。サイホン作用の発生によって、洗浄水は排水路内をさらに勢いよく流れるため、汚物等は、その速い流速の洗浄水に乗って上昇流路30の流路面積が拡大した領域に搬送され、上昇流路30を良好に搬送することができる。
【0028】
上昇流路30は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部31の上側面31Tは上方に膨らんだ曲面に形成されているが、上流端部31より下流側において上側面35は中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型に形成されている。これによって、上昇流路30の上側面35の近傍における洗浄水の流速が遅くなる領域において、流路面積を小さくすることによって、洗浄水の流速を速くして整流化された洗浄水の淀みを防止することができる。このため、上昇流路30内の洗浄水を良好に流すことができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0029】
また、山型に形成された上側面35の上流端部31側では、上側面35を中央部から左右下方に延びて内側に膨らんだ傾斜面に傾斜している。上流端部31より下流側の近傍では、洗浄水の流れ方向が下方向から上方向に変化した直後であるため、上側面35の近傍において洗浄水が淀み易い。このため、この淀み易い領域の上側面35を内側に膨らんだ傾斜面にすることによって、洗浄水の流速をさらに速くし、整流化された洗浄水の淀みを防止することができる。これによって、上昇流路30内の洗浄水が良好に流れ、上昇流路30内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0030】
上昇流路30は、上述したように、上流端部31では、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状における上下方向の中央Mより上側の流路面積A1を下側の流路面積B1よりも大きく形成している。つまり、上昇流路30の上流端部31では、上側面31T側の近傍の洗浄水の流速が速いため、上側の流路面積A1を大きくして大流量の洗浄水が流れるようにしている。上昇流路30は、上流端部31よりも下流側に進むにつれて上側面35の近傍の洗浄水の流速が遅くなる。このため、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状における上下方向の中央Mより上側の流路面積を徐々に小さくし、それにつれて下側の流路面積を徐々に大きくしている。上流端部31から中間部30Mまでは、上側の流路面積が下側の流路面積よりも大きく形成されている。中間部30Mから下流端部までは、図6(B)及び図7に示すように、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上下方向の中央Mより下側の流路面積B2を上側の流路面積A2よりも大きく形成している。
【0031】
このように、上昇流路30の上流端部31から中間部30Mまでは、洗浄水の流速が速い領域である上側の流路面積を大きくし、上昇流路30の中間部30Mから下流端部までは、洗浄水の流速が速い領域である下側の流路面積を大きくしているため、上昇流路30の整流化された洗浄水の淀みを少なくして上昇流路30内の全領域で大流量の洗浄水を良好に流すことができる。このため、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。このため、上昇流路内における汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0032】
したがって、実施例の水洗式便器の排水路は便器洗浄を良好に行うことができる。
【0033】
下降流路40は、図1、及び図8〜図13に示すように、上昇流路30の下流側に連続して形成されている。下降流路40は垂直下方に延びている。つまり、下降流路40は下流側に向けて下降している。下降流路40は下端部に排出口40Aを形成している。排出口40Aは、接続配管4の上流側の接続口に挿入され、接続配管4を介してトイレルームの床面に開口する排水管の流入口に連通することができる。
【0034】
下降流路40は、上昇流路30の頂部32から延びて、下降流路40の内周面に沿って内側に突出して形成され、内側上方を向いた傾斜面からなる棚部41を有している。棚部41が下降流路40の内周面に沿って内側に突出しているため、頂部32を乗り越えた洗浄水が棚部41に沿って流れ、下降流路40の後方に洗浄水を送ることができる。棚部41から下降流路40内に流れ落ちた洗浄水は、接続配管4に形成した絞り部5に衝突して飛散する。これによって、水膜形成領域Sに水膜が形成され、排水路内にサイホン作用を早期に発生させることができる。つまり、少ない洗浄水でもサイホン作用を早期に発生させることができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0035】
また、棚部41が内側上方を向いた傾斜面からなるため、棚部41によって下降流路40の流路面積が小さくなるが、その変化を緩やかにすることができる。このため、棚部41による汚物等の詰まりを防止することができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0036】
また、棚部41は上昇流路30の頂部32から下降流路40の内周面に沿って後方に向けて下降している。このため、頂部32から棚部41に流れる洗浄水が少なくても下降流路40の内周面に沿って下降流路40の後部まで洗浄水を送ることができる。つまり、少ない洗浄水でも下降流路40の周囲から洗浄水が流れ落ち、水膜形成領域Sに水膜を確実に形成することができる。よって、少ない洗浄水で早期にサイホン作用を発生させることができ、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0037】
また、棚部41は下降流路40の内周面に沿って後方に向けて幅が徐々に細くなっている。棚部41は、排水路内にサイホン作用が発生し、下降流路40内を洗浄水と共に汚物等が流れる際には抵抗となる。このため、棚部41の幅を後方に向けて徐々に細くすることにより、早期にサイホン作用を発生させることができるとともに、洗浄水等の流れの抵抗を減少し、汚物等の搬送を良好に行うことができる。
【0038】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、上昇流路を導入路の下流端部に連続して形成したが、上昇流路を下流端部とは別体に形成して、導入路の下流端部に連結してもよい。
(2)実施例では、下降流路を上昇流路の下流側に連続して形成したが、下降流路を上昇流路とは別体に形成して、上昇流路の下流側に連結してもよい。
(3)実施例では、サイホン式の水洗式便器であったが、サイホン式でなくてもよい。この場合、下降流路に棚部を設けなくてもよい。
(4)実施例では、便器本体の後部上面に載置したタンク本体に貯留した洗浄水を便器本体に供給する水洗式便器であったが、タンク本体を有さず、開閉弁を介して給水源から直接的に洗浄水を供給する水洗式便器であってもよい。
(5)実施例では、上昇流路の下側面を頂部に向けて徐々に広がって形成したが、上昇流路の下側面は頂部に向けて同じ幅で延びていてもよい。
(6)実施例では、上昇流路の下側面が略平坦面に形成したが、平坦面でなくてもよい。
(7)実施例では、頂部が洗浄水の排水方向に対して直角方向に延びた略水平面を有しているが、頂部が略水平面でなくてもよい。
(8)実施例では、上昇流路の上側面を山型に形成したが、山型でなくてもよい。
(9)実施例では、下降流路に棚部を形成したが、棚部はなくてもよい。
(10)実施例では、棚部が下降流路の内周面に沿って後方に向けて下降していたが、下降していなくてもよい。
(11)実施例では、棚部が下降流路の内周面に沿って後方に向けて幅が徐々に細くなっていたが、細くしなくてもよい。
(12)実施例では、棚部が内側上方を向いた傾斜面に形成されていたが、図14に示すように、棚部は水平面141であってもよく、また、図15に示すように、外側上方を向いた傾斜面241に形成されてもよい。
(13)実施例では、便鉢の下端部と上昇流路の上流端部とを連結する導入路を備えていたが、導入路を備えず、便鉢の下端部に直接的に上昇流路の上流端部を連結してもよい。
(14)実施例では、便鉢内に反時計回りに流れる旋回流を形成したが、洗浄水を時計回りに旋回させるものであってもよい。この場合、導入路の形状は実施例における形状を左右反転したものになる。
(15)実施例では、接続配管に絞り部を形成したが、下降流路に絞り部を形成してもよい。
(16)実施例では、上昇流路を洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上下方向の最大長さを上流端部から下流側に向けて拡大したが、上昇流路の下流端の頂部を汚物等が通過する際に汚物等が引っ掛からないようにすればよく、上昇流路の適宜位置の断面形状の上下方向の長さが下流端部より拡大していればよい。
(17)実施例では、上昇流路の中間部から下流端部までは洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上下方向の中央より下側の流路面積を上側の流路面積よりも大きく形成しているが、上流端部近傍では上側の流路面積を下側の流路面積より大きくしてもよい。上昇流路の上流端部近傍では、上側面まで洗浄水が満水にならない場合が多く、上側面の形状や流路面積が流れに影響しないからである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…便鉢
20…導入路
30…上昇流路
30M…中間部
31…(上昇流路の)上流端部
33…下側面
35…上側面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢の下流側に連通し、下流側に向けて上昇する上昇流路を備えた水洗式便器の排水路であって、
前記上昇流路は、
洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部から中間部にかけて上下方向の中央より上側の流路面積を下側の流路面積よりも大きく形成し、中間部から下流端部の上流側近傍にかけて上下方向の中央より下側の流路面積を上側の流路面積よりも大きく形成していることを特徴とする水洗式便器の排水路。
【請求項2】
前記上昇流路は、下側面が洗浄水の排水方向及びこの排水方向に対して直角方向に延びた略平坦面を有していることを特徴とする請求項1記載の水洗式便器の排水路。
【請求項3】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上側面を中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型に形成していることを特徴とする請求項1又は2記載の水洗式便器の排水路。
【請求項4】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、前記上側面を中央部から左右下方に延びて内側に膨らんだ傾斜面に形成していることを特徴とする請求項3記載の水洗式便器の排水路。
【請求項1】
便鉢の下流側に連通し、下流側に向けて上昇する上昇流路を備えた水洗式便器の排水路であって、
前記上昇流路は、
洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上流端部から中間部にかけて上下方向の中央より上側の流路面積を下側の流路面積よりも大きく形成し、中間部から下流端部の上流側近傍にかけて上下方向の中央より下側の流路面積を上側の流路面積よりも大きく形成していることを特徴とする水洗式便器の排水路。
【請求項2】
前記上昇流路は、下側面が洗浄水の排水方向及びこの排水方向に対して直角方向に延びた略平坦面を有していることを特徴とする請求項1記載の水洗式便器の排水路。
【請求項3】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、上側面を中央部から左右下方に向けて徐々に横幅を広くした山型に形成していることを特徴とする請求項1又は2記載の水洗式便器の排水路。
【請求項4】
前記上昇流路は、洗浄水の排水方向に対して直角方向の断面形状において、前記上側面を中央部から左右下方に延びて内側に膨らんだ傾斜面に形成していることを特徴とする請求項3記載の水洗式便器の排水路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−127114(P2012−127114A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279722(P2010−279722)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]