説明

水洗式便器

【課題】便器装置をしっかりと便器本体に固定することができる水洗式便器を提供する。
【解決手段】水洗式便器は、機能部品を具備した便器装置10を便器本体1の後部に配置している。便器本体1は、便鉢2と、この便鉢2の上端開口部に連続して後方に広がる後上面部5と、この後上面部5に上端が開口して鉛直方向に延びた固定孔6とを備えている。便器装置10は、前方部分の下面から下方に延びて設けられた固定部材60を有し、この前方部分を後上面部5に載置しつつ、固定部材60を固定孔6に挿入して固定し、後方部分を便器本体1の後端よりも後方へはみ出した状態で便器本体1に固定されており、機能部品が取り付けられた支持部材20と、この支持部材20に固定され、固定部材60よりも前側からこの固定部材60よりも後ろ側まで延びている補強部材50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の水洗式便器が開示されている。この水洗式便器は、便器本体とバルブユニット及び蓄圧装置等を備えた便器装置とを備えている。この便器装置は支持部材を備えている。この支持部材は、前方部分を便器本体の後上面部に載置して、便器本体に固定されている。また、この支持部材は後方部分を便器本体の後端よりも後方へはみ出している。支持部材の後方部分にはバルブユニット及び蓄圧装置が固定されている。
【0003】
この水洗式便器では、便器本体の後方スペースを有効に利用してバルブユニット等を設置することができる。このため、水洗式便器の小型化を図ることができる。また、便器本体の後方スペースを利用して蓄圧装置を設置しているため、充分な洗浄水を貯留することのできる蓄圧装置を採用することができる。このため、便器洗浄を良好に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−287289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の水洗式便器では、支持部材の後方部分が便器本体の後端よりも後方へはみ出しているため、支持部材の強度を上げて、支持部材を便器本体に強固に固定する必要がある。つまり、支持部材の強度が不足していたり、便器本体への支持部材の固定が不充分であったりした場合、水洗式便器の使用者等が便器装置の後方部分に手を突く等して便器装置の後方部分に下方に向けた力が加わると、支持部材の前端部が浮き上がり、便器装置が便器本体の後上面部でがたつくおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器装置を便器本体にしっかりと固定することができる水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水洗式便器は、便器本体と機能部品を具備した便器装置とを備えた水洗式便器であって、
前記便器本体は、
便鉢と、この便鉢の上端開口部に連続して後方に広がる後上面部と、この後上面部に上端が開口して鉛直方向に延びた固定孔とを備え、
前記便器装置は、
前方部分の下面から下方に延びて設けられた固定部材を有し、この前方部分を前記後上面部に載置しつつ、前記固定部材を前記固定孔に挿入して固定し、後方部分を前記便器本体の後端よりも後方へはみ出した状態で前記便器本体に固定されており、前記機能部品が取り付けられた支持部材と、
この支持部材に固定され、前記固定部材よりも前側からこの固定部材よりも後ろ側まで延びている補強部材とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この水洗式便器では、便器本体の固定孔に支持部材の固定部材を挿入して固定することにより、便器装置を便器本体に固定する。支持部材は、固定部材より前側からこの固定部材よりも後ろ側まで延びた補強部材が固定されている。これにより、固定部材より前側から後ろ側に亘って支持部材が補強部材により補強される。また、支持部材の前方部分は便器本体の後上面部にしっかりと固定することができる。このため、水洗式便器の使用者等が便器装置の後方部分に手を突く等して便器装置の後方部分に下方に向けた力が加わったとしても支持部材の前端部が浮き上がり難くなり、便器装置が便器本体の後上面部でがたつくことを防止することができる。
【0009】
したがって、本発明の水洗式便器は、便器装置を便器本体にしっかりと固定することができる。
【0010】
前記補強部材は、前記支持部材の後端部まで延び得る。この場合、固定部材より前側から後端部に亘って支持部材が補強部材により補強される。これにより、支持部材が前後方向に湾曲し難くなる。このため、支持部材の便器本体への固定がしっかりと行えるとともに、支持部材の前端部が浮き上がり難くなり、便器装置が便器本体の後上面部でがたつくことを防止することができる。
【0011】
前記補強部材は、前記固定部材の前後において、この固定部材を挟むようにして左右方向に延びた補強片を有し得る。この場合、支持部材の固定部材の周りをさらに補強することができる。このため、支持部材の便器本体への固定がさらにしっかりと行えるとともに、支持部材の前端部が浮き上がり難くなり、便器装置が便器本体の後上面部でがたつくことをさらに防止することができる。
【0012】
前記固定部材は、前記支持部材から着脱可能であり、上端部に外側に広がるフランジ部を有しており、このフランジ部と前記便器本体の後上面部との間で前記支持部材及び前記補強部材を挟み込んで前記便器装置を前記便器本体に固定し得る。この場合、支持部材は固定部材によって便器本体にしっかりと固定することができる。このため、支持部材の前端部が浮き上がり難くなり、便器装置が便器本体の後上面部でがたつくことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の水洗式便器の概略図である。
【図2】実施例の水洗式便器の要部拡大図である。
【図3】実施例の水洗式便器の要部分解図である。
【図4】実施例の便器装置の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の水洗式便器を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<実施例>
実施例の水洗式便器は、図1に示すように、便器本体1と便器装置10とを備えている。便器本体1は、便鉢2、便鉢2の下流側に連通した便器排水路3、便鉢2の上端開口部に連続して後方に広がる後上面部5、及び後上面部5に鉛直方向に延びて貫通した一対の固定孔6を備えている。固定孔6は上端が上方を向いて開口し、下端が下方を向いて開口している。便器排水路3は上流側の下端部に取り付けられたジェットノズル3Aを有している。ジェットノズル3Aは便器洗浄装置に連通している。便器排水路3は下流端部に排水接続具4が接続されている。排水接続具4は下流端を床面に引き出された排水管に接続される。
【0016】
便器装置10は、局部洗浄ノズル11等を有する局部洗浄用機能部品、昇降装置本体12等を有する昇降用機能部品、及びバルブユニット13等を有する便器洗浄用機能部品を具備している。便器装置10は、水洗式便器が設置される場所の給水圧が低い場合、便器洗浄用機能部品である蓄圧装置14を具備することができる。便器装置10は左右側面に連続して便器本体1の左右後方の側部を覆う下カバー43を有している。下カバー43は便器装置10及び便器本体1に対して着脱自在に取り付けられている。
【0017】
便器装置10は、図2〜図4に示すように、第1支持部材20と第2支持部材30とからなる支持部材、カバー部材40、便座41、便蓋42、及び補強部材50を備えている。
【0018】
第1支持部材20は、便器本体1の後上面部5から便器本体1の後端よりも後方へはみ出して広がる第1基盤部21と、バルブユニット13の下方側面を囲むように立設した第1立壁22とを有している。第2支持部材30は、便鉢2の後端部から第1基盤部21の上面に重なり合い第1立壁22の前方まで広がる第2基盤部31と、昇降装置本体12の昇降部12Bが挿入されて固定される凹部を形成する第2立壁32とを有している。このように、支持部材は、第1基盤部21の前端部の上面に第2基盤部31の後端部の下面を重ね合わせて形成されている。第1支持部材20及び第2支持部材30は樹脂製である。第1支持部材20及び第2支持部材30を樹脂製とし、後述するように補強部材50を金属製にすることで便器装置10のコストを下げることができる。
【0019】
バルブユニット13は、第1立壁22内に配置され、第1基盤部21に固定されている。第1基盤部21は、上面に昇降装置本体12を載置し、昇降装置本体12の固定部12Aが固定されている。
【0020】
第1基盤部21は、前端部の左右に離れた2か所に取付部23が設けられている。取付部23は固定部材である固定ボルト60が下方に延びて取り付けられている。取付部23は、第1支持部材20と第2支持部材30とからなる支持部材の前方部分に位置している。このため、固定ボルト60は第1支持部材20と第2支持部材30とからなる支持部材の前方部分の下面から下方に延びて設けられている。
【0021】
固定ボルト60は、上端部に外側に広がる四角形状のフランジ部61と、フランジ部61の下面から下方に延び、螺子山が設けられた胴部62とを有している。各取付部23は、フランジ部61を下方から挿入可能に形成された挿入開口部23Aと、挿入開口部23Aに連続して内側に延びて形成された係止開口部23Bとを有している。係止開口部23Bは固定ボルト60の胴部62が挿通し、係止開口部23Bの周りの上面に固定ボルト60のフランジ部61が係止する。このようにして、固定ボルト60は第1基盤部21の取付部23に取り付けられる。左右に並んだ係止開口部23Bは、便器本体1に設けられた一対の固定孔6に対応する位置に設けられている。このため、取付部23に取り付けられた各固定ボルト60は、便器本体1に設けられた一対の固定孔6に挿通可能である。
【0022】
第2支持部材30の第2基盤部31は、前端部に2本の局部洗浄ノズル11が取り付けられている。これら2本の局部洗浄ノズル11は第2基盤部31の前端から便鉢2内に出入り可能に伸縮する。また、第2基盤部31はカバー部材40が取り付けられている。カバー部材40は、第1支持部材20及び第2支持部材30に固定されたバルブユニット13、昇降装置本体12及び局部洗浄ノズル11等を内部に収納している。また、カバー部材40は、前方上面部に便座41及び便蓋42を軸支する軸支部44が設けられ、便座41及び便蓋42を回動自在に軸支している。
【0023】
昇降装置本体12の昇降部12Bは第1基盤部21に固定された固定部12Aに対して昇降可能である。このため、昇降部12Bが固定されている第2支持部材30は、昇降装置本体12によって、第1支持部材20に対して昇降可能に連結されている。このため、局部洗浄ノズル11、カバー部材40、便座41及び便蓋42は、昇降装置本体12によって、第2支持部材30とともに第1支持部材20に対して昇降可能である。
【0024】
第1支持部材20は第1基盤部21の下面に金属製の補強部材50を固定している。補強部材50は昇降装置本体12の固定部12Aを第1基盤部21に固定するボルトBにより第1基盤部21の下面に固定されている。補強部材50は第1基盤部21の前端部から後端部に亘る形状に形成されている。補強部材50は後端部を下方に折り曲げて形成した吊下げ部54を有している。吊下げ部54は、蓄圧装置14を吊下げて固定することができる。
【0025】
補強部材50は左右前端部の2か所に前方に延びる延長部51を有している。延長部51は第1基盤部21に設けられた係止開口部23Bの内側に延びている。延長部51の前端部は係止開口部23Bよりも前側に延びている。つまり、係止開口部23Bに挿通された固定部材60よりも前側に延びている。このように、補強部材50は、第1基盤部21の下面から下方に延びた固定部材60よりも前側から第1基盤部21の後端部まで延びている。このため、第1支持部材20の第1基盤部21は固定部材60の前側から後端部に亘って補強部材50により補強されている。よって、第1基盤部21が前後方向に湾曲し難い。
【0026】
第1支持部材20は、固定部材60の胴部62を便器本体1の固定孔6に挿通し、ワッシャーWを介して、ナットNをねじ込むことにより、便器本体1の後上面部5に固定される。この際、第1支持部材20の第1基盤部21は、固定部材60の前側から後端部に亘って補強部材50により補強され、前後方向に湾曲し難いため、便器本体1の後上面部5にしっかりと固定することができる。このため、水洗式便器の使用者等が便器装置10の後方部分に手を突く等して便器装置10の後方部分に下方に向けた力が加わったとしても第1支持部材21の前端部が浮き上がり難い。また、第1支持部材21の前端部が浮き上がり難いため、第2支持部材31の前端部も浮き上がり難く、便器装置10が便器本体1の後上面部5でがたつくことを防止することができる。
【0027】
したがって、実施例の水洗式便器は、便器装置10を便器本体1にしっかりと固定することができる。
【0028】
また、補強部材50は、延長部51の前端部から左右方向の外側に延びる第1補強片52Aと、第1補強片52Aとの間に固定部材60の胴部62を挟み込める空間53を形成して左右方向の外側に延びる第2補強片52Bとを形成している。第1補強片52Aと第2補強片52Bとの間に形成される空間53は第1基盤部21の係止開口部23Bに対応する位置に形成されている。
【0029】
このため、固定部材60の胴部62が挿通する第1基盤部21の係止開口部23Bの周りを補強することができる。このため、第1支持部材20の便器本体1への固定がさらにしっかりと行える。よって、第1支持部材21の前端部及び第2支持部材31の前端部が浮き上がり難く、便器装置10が便器本体1の後上面部5でがたつくことをさらに防止することができる。
【0030】
第1支持部材20は、固定部材60のフランジ部61と便器本体1の後上面部5との間で第1基盤部21及び補強部材50を挟み込んで、便器本体1の後上面部5に固定されている。このため、第1支持部材20は固定部材60によって便器本体1にしっかりと固定することができる。よって、第1支持部材21の前端部及び第2支持部材31の前端部が浮き上がり難く、便器装置10が便器本体1の後上面部5でがたつくことをさらに防止することができる。
【0031】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、支持部材を第1支持部材と第2支持部材とに分割したが、分割せずに一体のものであってもよい。
(2)実施例では、補強部材が第1基盤部の前端部から後端部に亘る形状に形成されていたが、固定部材の前側から第1基盤部の後端部まで延ばさず、固定部材の後ろ側まで延びた形状に形成してもよい。
(3)実施例では、補強部材に第1補強片及び第2補強片が形成されていたが、第1補強片及び第2補強片は無くてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…便器本体
2…便鉢
5…後上面部
6…固定孔
10…便器装置
20、30…支持部材(20…第1支持部材、30…第2支持部材)
50…補強部材
52A、52B…補強片(52A…第1補強片、52B…第2補強片)
60…固定部材
61…フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と機能部品を具備した便器装置とを備えた水洗式便器であって、
前記便器本体は、
便鉢と、この便鉢の上端開口部に連続して後方に広がる後上面部と、この後上面部に上端が開口して鉛直方向に延びる固定孔とを備え、
前記便器装置は、
前方部分の下面から下方に延びて設けられた固定部材を有し、この前方部分を前記後上面部に載置しつつ、前記固定部材を前記固定孔に挿入して固定し、後方部分を前記便器本体の後端よりも後方へはみ出した状態で前記便器本体に固定されており、前記機能部品が取り付けられた支持部材と、
この支持部材に固定され、前記固定部材よりも前側からこの固定部材よりも後ろ側まで延びている補強部材とを備えていることを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記補強部材は、前記支持部材の後端部まで延びていることを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記補強部材は、前記固定部材の前後において、この固定部材を挟むようにして左右方向に延びた補強片を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記固定部材は、前記支持部材から着脱可能であり、上端部に外側に広がるフランジ部を有しており、
このフランジ部と前記便器本体の後上面部との間で前記支持部材及び前記補強部材を挟み込んで前記便器装置を前記便器本体に固定していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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