説明

水洗式便器

【課題】洗浄水の供給量のばらつきが少なく、節水を図りつつ、良好に便器洗浄を行なうことができる水洗式便器を提供する。
【解決手段】水洗式便器は、便鉢部11を有する便器本体10と、給水源の給水圧により洗浄水を便器本体10に供給する便器洗浄装置20と、便器洗浄装置20を制御する制御装置30と、便鉢部11の水位が所定水位に到達したことを検知可能な水位センサー40とを備えている。制御装置30は、便器洗浄装置20が便器本体10へ洗浄水の供給を開始してから便鉢部11の水位が所定水位に到達したことを水位センサー40が検知するまでの増水時間T1を測定可能なタイマーTを有している。増水時間T1と、予め求められた便鉢部11へ洗浄水の供給を開始してから所定水位に到達するまでの洗浄水の供給量V1とから洗浄水の流量値X1を算出し、この流量値X1に基づいて便器洗浄装置20の便器本体10への洗浄水の供給を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の水洗式便器が開示されている。この水洗式便器は、便器本体と、洗浄水を便器本体に供給する便器洗浄装置と、便器洗浄装置を制御する制御装置とを備えている。便器本体は便鉢部及び便鉢部の下流側に連通する便器排水路を有している。便器洗浄装置は、洗浄水の単位時間当たりの流量(以下、流量という。)が多い第1給水手段と、第1給水手段に比べて洗浄水の流量が少ない第2給水手段とを有している。また、便器洗浄装置は便鉢部の水位を検知する圧力センサーを備えている。
【0003】
この水洗式便器では、便器洗浄の最後に覆水する際、当初は洗浄水の流量が多い第1給水手段から便鉢部へ洗浄水を供給し、その後、圧力センサーにより便鉢部の水位を測定しながら、洗浄水の流量が少ない第2給水手段により便鉢部へ洗浄水を供給する。このため、便鉢部の水位を所定の水位に精度良く設定することができる。
【0004】
また、特許文献2に従来の他の水洗式便器が開示されている。この水洗式便器は、便器本体と、洗浄水を便器本体に供給する便器洗浄装置と、便器洗浄装置を制御する制御装置とを備えている。便器本体は便鉢部及び便鉢部の下流側に連通する便器排水路を有している。便器洗浄装置は流量検出手段と開閉弁とを有している。また、便器洗浄装置は、便器本体が据え付けられたトイレルームに引き出された給水源に連通する給水管に接続され、給水源の給水圧により洗浄水を便器本体に供給可能である。
【0005】
この水洗式便器では、流量検出手段で洗浄水の流量を直接的に検出し、開閉弁の閉弁タイミングを制御している。このため、給水圧が異なる場合でも、便器本体に供給される洗浄水を所望する供給量にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−138432号公報
【特許文献2】特開2002−294791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の水洗式便器では、便鉢部の水位が所定の水位に到達したことを圧力センサーが検知した後に制御装置が便器洗浄装置の洗浄水の供給を停止する。つまり、便鉢部の水位が所定の水位に到達してから便器洗浄装置の洗浄水の供給が停止されるまでに時間差が生じてしまう。このため、便器本体に供給される洗浄水の流量が多い場合には、便器本体に供給される洗浄水の供給量が所望する供給量よりも多くなってしまうおそれがある。つまり、便器本体に供給される洗浄水の流量が変化すると、便器本体に供給される洗浄水の供給量がばらついてしまうおそれがある。このように、特許文献1の水洗式便器では便器本体に供給される洗浄水の供給量が便器本体に供給される洗浄水の流量の変化によりばらついてしまうおそれがある。このため、所望する節水を図ることができないおそれがある。
【0008】
一方、特許文献2の水洗式便器では、流量検出手段により直接的に洗浄水の流量を検出することができるが、瞬間の流量に基づいて開閉弁の閉弁を制御するため、供給源の給水圧が変化し、便器洗浄中に洗浄水の流量が変化した場合、便器本体への洗浄水の供給量がばらついてしまうおそれがある。このため、節水を図ることができなかったり、便器洗浄を良好に行うことができなかったりするおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、洗浄水の供給量のばらつきが少なく、節水を図りつつ、良好に便器洗浄を行なうことができる水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水洗式便器は、便鉢部及び便鉢部の下流側に連通する便器排水路を有する便器本体と、便器本体が据え付けられるトイレルームに引き出された給水源に連通する給水管に接続され、給水源の給水圧により洗浄水を便器本体に供給する便器洗浄装置と、便器洗浄装置を制御する制御装置とを備えた水洗式便器であって、
前記便鉢部の水位が所定水位に到達したことを検知可能な水位センサーを備え、前記制御装置は、前記便器洗浄装置が便器本体へ洗浄水の供給を開始してから便鉢部の水位が所定水位に到達したことを水位センサーが検知するまでの増水時間を測定可能なタイマーを有し、測定された増水時間と、予め求められた便鉢部へ洗浄水の供給を開始してから所定水位に到達するまでの洗浄水の供給量とから前記便器洗浄装置が便器本体へ供給する洗浄水の単位時間当たりの流量値を算出し、この流量値に基づいて便器洗浄装置の便器本体への洗浄水の供給を制御することを特徴とする。
【0011】
この水洗式便器では、便器本体へ洗浄水の供給が開始されてから便鉢部の水位が所定水位に到達するまでの増水時間をタイマーにより測定し、その増水時間と、その間に供給された予め求められた洗浄水の供給量とから便器本体に供給される洗浄水の流量値を求めている。このため、流量値は増水時間の間の平均値となるため、洗浄水の給水源の給水圧の変化等に起因して、その間に流量の変化が生じても、その影響を少なくすることができる。よって、その流量値に基づいて便器洗浄装置の便器本体への洗浄水の供給を制御するため、便器本体に供給される洗浄水は設定した洗浄水の供給量に近く、ばらつきの少ないものにすることができる。
【0012】
したがって、本発明の水洗式便器は、洗浄水の供給量のばらつきが少なく、節水を図りつつ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0013】
前記便器本体は、前記便鉢部の上端周縁部に設けられたリム通水路と、前記便器排水路の下流方向へ洗浄水を噴出するジェット噴出口とを有し、
前記便器洗浄装置は、リム通水路へ洗浄水を供給するリム洗浄と、ジェット噴出口へ洗浄水を供給するジェット洗浄とを実行可能であり、
前記制御装置は、便器洗浄をリム洗浄、ジェット洗浄の順に実行させるものであり、このリム洗浄の実行の際に覆水水位よりも上方の水位を前記所定水位として前記流量値を算出し、この流量値に基づいてジェット洗浄を制御し得る。
【0014】
この場合、ジェット洗浄の直前に実行されたリム洗浄の際に算出された流量値に基づいてジェット洗浄を制御するため、実際にジェット洗浄の際に供給される洗浄水の供給量を設定した供給量に近づけることができ、ばらつきの少ないものにすることができる。
【0015】
前記便器本体は、前記便鉢部の上端周縁部に設けられたリム通水路と、前記便器排水路の下流方向へ洗浄水を噴出するジェット噴出口とを有し、
前記便器洗浄装置は、リム通水路へ洗浄水を供給するリム洗浄と、ジェット噴出口へ洗浄水を供給するジェット洗浄とを実行可能であり、
前記制御装置は、便器洗浄をリム洗浄、ジェット洗浄、リム洗浄の順に実行して便器洗浄を終了させ、この2回目のリム洗浄の実行の際に覆水水位を前記所定水位として前記流量値を算出し、この流量値に基づいて次回の便器洗浄の洗浄水の供給を制御し得る。
【0016】
この場合、便器洗浄がリム洗浄、ジェット洗浄、リム洗浄の順に実行され、ジェット洗浄の際に汚物等は便鉢部から便器排水路の下流側へ排出される。このため、流量値を算出する2回目のリム洗浄の際には便鉢部内に浮遊する汚物等が存在せず、水位の検知を正確に行なうことができる。よって、算出された流量値は実際に供給される洗浄水の流量に近い値にすることができる。この流量値を用いて、次回の便器洗浄のリム洗浄及びジェット洗浄を制御するため、実際に便器本体に供給される洗浄水を設定した供給量に近づけることができる。
【0017】
前記便器本体は、前記便鉢部の上端周縁部に設けられたリム通水路を有し、
前記便器洗浄装置は、リム通水路へ洗浄水を供給するリム洗浄を実行可能であり、
前記制御装置は、リム洗浄の実行の際に覆水水位よりも上方の上昇水位を前記所定水位として前記流量値を算出し、この流量値に基づいてリム洗浄を制御し得る。
【0018】
この場合、算出された流量値に基づいてリム洗浄が終了するタイミングを特定し、便器洗浄を終了させることができる。このため、実際にリム洗浄により便器本体に供給される洗浄水を設定した供給量に近づけることができる。
【0019】
前記便器排水路内の空気を吸引する吸引装置を備え、前記制御装置は前記流量値に基づいて吸引装置の吸引制御を行ない得る。この場合、吸引装置が便器排水路内の空気を吸引することにより便器排水路内にサイホン作用を発生させ、吸引装置が便器排水路内へ空気を排出することにより便器排水路内のサイホン作用が終了する。このため、流量値の大小に応じて、吸引装置を制御することにより、便器排水路内に良好にサイホン作用を発生させることができ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の水洗式便器を表す断面図である。
【図2】実施例1の便器洗浄において、(A)は便鉢部の水位、(B)はリム洗浄、(C)はジェット洗浄を表すグラフである。
【図3】実施例1の便器洗浄の工程を示すフローチャートである。
【図4】実施例2の水洗式便器を表す断面図である。
【図5】実施例3の水洗式便器を表す断面図である。
【図6】実施例3の便器洗浄において、(A)は便鉢部の水位、(B)はリム洗浄、(C)は吸引タンクの吸引量を表すグラフである。
【図7】実施例3の便器洗浄の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の水洗式便器を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0022】
実施例1の水洗式便器は、図1に示すように、便器本体10と、洗浄水を便器本体10に供給する便器洗浄装置20と、便器洗浄装置20を制御する制御装置30とを備えている。便器本体10は、便鉢部11及び便鉢部11の下流側に連通する便器排水路12を有している。
【0023】
便鉢部11の上端周縁部にはリム通水路13が設けられている。リム通水路13にはリム連通管13Jが連通されている。このため、便器洗浄装置20からリム連通管13Jを介してリム通水路13へ洗浄水を供給する、いわゆるリム洗浄が実行可能である。リム洗浄では、リム通水路13に供給された洗浄水が一方向に流れ、徐々に便鉢部11の表面に沿って流れ落ち、便鉢部11内に旋回流が形成される。
【0024】
また、便器排水路12の上流下端部に貫設された貫通孔14には、ジェット噴出口16が形成されたジェットノズル15が取り付けられている。ジェットノズル15にはジェット連通管15Jが接続されている。このため、便器洗浄装置20からジェット連通管15Jを介してジェット噴出口16へ洗浄水を供給する、いわゆるジェット洗浄が実行可能である。ジェット洗浄では、ジェット噴出口16から便器排水路12の下流方向へ洗浄水が噴出される。
【0025】
便器排水路12の下流端部は、便器本体10が据え付けられた床面Fに固定された排水接続管17の上部開口に挿入され、連結されている。排水接続管17の下部開口は、床面Fに引き出された排水管Dに連結されている。
【0026】
便器洗浄装置20は、便器本体10が据え付けられたトイレルームRに引き出された給水源Sに連通する給水管21に接続されている。また、便器洗浄装置20は、リム連通管13Jの上流端に連結されるリム吐出管23Aと、ジェット連通管15Jの上流端に連結されるジェット吐出管23Bとを有している。また、便器洗浄装置20は、リム吐出管23A及びジェット吐出管23Bの夫々に設けられた開閉弁22A、22Bを有している。このため、開閉弁22Aが開弁されることによりリム洗浄が実行可能であり、開閉弁22Bが開弁されることによりジェット洗浄が実行可能である。
【0027】
実施例1の水洗式便器は、便鉢部11の後部上方に水位センサー40を備えている。水位センサー40は光学式センサーであり、便鉢部11の水位が所定水位に到達したことを検知可能である。
【0028】
制御装置30は便器洗浄装置20の開閉弁22A、22Bの開閉を制御可能である。実施例1の水洗式便器では、図示しないリモコン装置に設けられた便器洗浄ボタンが操作され、便器洗浄が開始されると、図2に示すように、リム洗浄、ジェット洗浄、リム洗浄の順に実行されるように制御装置30は開閉弁22A、22Bの開閉を制御する。この便器洗浄では、1回目のリム洗浄により、便鉢部11の水位は上昇水位L2まで上昇する。次に実行されるジェット洗浄により、ジェット噴出口16から噴出する洗浄水が便鉢部11内の汚物等を便器排水路12の下流へ排出し、便鉢部11の水位は便器排水路12の上流端開口付近まで下降する。次に実行される2回目のリム洗浄により、便鉢部11の水位は覆水水位L1まで上昇し、水封が形成される。
【0029】
また、制御装置30は、図1に示すように、水位センサー40の駆動、設定及び検知信号の処理を制御可能である。実施例1の水洗式便器では、制御装置30により、所定水位が1回目のリム洗浄により便鉢部11の水位が最も上昇した上昇水位L2に設定されている。このため、水位センサー40は便鉢部11の水位が上昇水位L2に到達したことを検知可能である。
【0030】
また、制御装置30は、便器洗浄装置20のリム吐出管23Aに設けられた開閉弁22Aが開弁され、リム洗浄が開始されてから便鉢部11の水位が上昇水位L2に到達したことを水位センサー40が検知するまでの増水時間T1を測定可能なタイマーTを有している。
【0031】
また、制御装置30は、予め求められているリム洗浄が開始される前の便鉢部11の覆水水位L1から便鉢部11の水位が上昇水位L2に到達するまでに要する洗浄水の供給量V1が記憶されている記憶部Mを有している。
【0032】
これにより、制御装置30は、タイマーTにより測定した増水時間T1と、記憶部Mに記憶されている供給量V1とにより、1回目のリム洗浄において便鉢部11に供給された洗浄水の流量値X1を算出する。このため、算出された流量値X1は、増水時間T1の間の平均値になる。よって、洗浄水の給水源の給水圧の変化等に起因して、その間の流量の変化が生じても、その影響を少なくすることができる。
【0033】
一方、便器洗浄におけるジェット洗浄において便器本体10に供給される洗浄水の供給量V2、及び2回目のリム洗浄において便鉢部11のジェット洗浄における最低水位から覆水水位L1に到達するまでに要する洗浄水の供給量V3は予め設定されており、夫々が記憶部Mに記憶されている。このため、流量値X1と供給量V2、V3とからジェット洗浄時間T2及び2回目のリム洗浄時間T3を算出することができる。流量の変化の影響が少ない流量値X1に基づいてジェット洗浄時間T2及び2回目のリム洗浄時間T3が算出されているため、実際にジェット洗浄及び2回目のリム洗浄で供給される洗浄水の供給量は、設定した供給量V2、V3に近く、ばらつきの少ないものにすることができる。
【0034】
したがって、実施例1の水洗式便器は、洗浄水の供給量のばらつきが少なく、節水を図りつつ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0035】
算出されたジェット洗浄時間T2及び2回目のリム洗浄時間T3は記憶部Mに記憶される。記憶されたジェット洗浄時間T2及び2回目のリム洗浄時間T3に従って、ジェット洗浄及び2回目のリム洗浄は実行される。
【0036】
次に、このように構成された実施例1の水洗式便器の便器洗浄の工程を図3を参照しつつ説明する。
【0037】
図示しないリモコン装置に設けられた便器洗浄ボタンが操作され、便器洗浄が開始されると、便器洗浄装置20の開閉弁22Aが開弁され、1回目のリム洗浄が開始される(ステップS1)。これにより便鉢部11の水位は上昇する。1回目のリム洗浄が開始されるとともにタイマーTが時間測定を開始する(ステップS2)。便鉢部11の水位が上昇水位L2に到達したのを水位センサー40が検知すると、タイマーTが増水時間T1の測定し、開閉弁22Aが閉弁され、1回目のリム洗浄が終了する(ステップS3、S4)。
【0038】
一方、上述したように、タイマーTにより測定された増水時間T1に基づいて流量値X1が算出され、流量値X1に基づいてジェット洗浄時間T2及び2回目のリム洗浄時間T3を算出する(ステップS12)。
【0039】
1回目のリム洗浄が終了した後、タイマーTをリセットし(ステップS5)、ジェット洗浄が開始される(ステップS6)。ジェット洗浄は算出されたT2時間の間、実行される(ステップS7)。ジェット洗浄の間、便鉢部11内の汚物等は便器排水路12の下流へ排出され、便鉢部11の水位は下降する。ジェット洗浄が終了する(ステップS8)と、2回目のリム洗浄が開始される(ステップS9)。2回目のリム洗浄は算出されたT3時間の間、実行される(ステップS10)。2回目のリム洗浄により、便鉢部11の水位は覆水水位L1まで上昇し、水封が形成され、2回目のリム洗浄が終了し(ステップS11)、便器洗浄が終了する。
【0040】
このように実行される便器洗浄において、洗浄水の給水源の給水圧の変化等に起因して流量が変化した場合、図2(A)〜(C)に示すように、便鉢部11の水位、リム洗浄の流量及び時間、ジェット洗浄の流量及び時間が変化する。つまり、図2では、流量が多く、増水時間T1が短い場合が点線で示され、流量が少なく、増水時間T1が長い場合が二点鎖線で示され、その中間の場合が実線で示されている。リム洗浄及びジェット洗浄の供給量は、図2(B)、(C)のグラフで示される各台形の面積で表せるが、増水時間T1が変化しても、各台形の面積は略等しい。つまり、実施例1の水洗式便器は、流量が変化しても便器本体に供給される洗浄水の供給量はばらつきが少なく、節水を図りつつ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【実施例2】
【0041】
実施例2の水洗式便器は、図4に示すように、便鉢部11の後部上方に備えられた水位センサー41が覆水水位L1に到達したことを検知可能である。また、タイマーTは、便器洗浄における2回目のリム洗浄の際に、開閉弁22Aが開弁され、リム洗浄が開始されてから便鉢部11の水位が覆水水位L1に到達したことを水位センサー41が検知するまでの増水時間T4を測定する。また、制御装置31の記憶部Mには、予め求められている2回目のリム洗浄が開始される前の便鉢部11の下降水位L3から便鉢部11の水位が覆水水位L1に到達するまでに要する洗浄水の供給量V4が記憶されている。
【0042】
これにより、制御装置31は、タイマーTにより測定した増水時間T4と、記憶部Mに記憶されている供給量V4とにより、2回目のリム洗浄において便鉢部11に供給された洗浄水の流量値X2を算出する。このため、算出された流量値X2は、増水時間T4の間の平均値になる。よって、洗浄水の給水源の給水圧の変化等に起因して、その間の流量の変化が生じても、その影響を少なくすることができる。
【0043】
一方、便器洗浄における1回目のリム洗浄において便鉢部11の水位が覆水水位L1から所定の高さの上昇水位に到達するまでに要する洗浄水の供給量V5、及びジェット洗浄において便器本体10に供給される洗浄水の供給量V6は予め設定されており、夫々が記憶部Mに記憶されている。このため、流量値X2と供給量V5、V6とから1回目のリム洗浄時間T5及びジェット洗浄時間T6を算出することができる。これにより、次回の便器洗浄における1回目のリム洗浄及びジェット洗浄が実行される。このように、流量の変化の影響が少ない流量値X2に基づいて1回目のリム洗浄時間T5及びジェット洗浄時間T6が算出されているため、実際に1回目のリム洗浄及びジェット洗浄で供給される洗浄水の供給量は、設定した供給量V5、V6に近く、ばらつきの少ないものにすることができる。他の構成については、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0044】
したがって、実施例2の水洗式便器は、洗浄水の供給量のばらつきが少なく、節水を図りつつ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【実施例3】
【0045】
実施例3の水洗式便器は、図5に示すように、便器本体100と、洗浄水を便器本体100に供給する便器洗浄装置120と、便器洗浄装置120を制御する制御装置130とを備えている。便器排水路112は、便鉢11に一体に形成された上流側便器排水路112Aと、上流側便器排水路112Aの下流端開口に連結された下流側便器排水路112Bとから構成されている。下流側排水路112Bは、排水接続管117を介して床面Fに引き出された排水管Dと連通されている。また、実施例3の水洗式便器は、便器排水路112内の空気を吸引する吸引装置50を備えている。他の構成は、実施例1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0046】
吸引装置50は、吸引タンク51と駆動装置52とを有している。吸引タンク51の内部は、図示しない上下方向に移動可能な隔膜により、上下の2室に区画されている。吸引タンク51の下面には、下方に延びる円筒状の吸引口51Aが設けられている。吸引口51Aは、下流側便器排水路112Bの後部上面に形成された接続口112Cに連結されている。吸引タンク51の上面には、開口部が貫設され、駆動装置52に連結された接続管51Jが接続されている。
【0047】
駆動装置52は、モーターEを内蔵し、モーターEが駆動されることにより、接続管51Jを介して吸引タンク51内の隔膜より上方の上部室に対し、空気を吸引したり、排出したりすることができる。駆動装置52が吸引タンク51内の上部室の空気を吸引することにより、吸引タンク51内の隔膜が上方に移動する。これにより、便器排水路112内の空気を吸引タンク51内の隔膜より下方の下部室が吸引する。また、駆動装置52が吸引タンク51内の上部室に空気を排出することにより、吸引タンク51内の隔膜が下方に移動する。これにより、吸引タンク51内の下部室に吸引された空気が便器排水路112内へ排出される。
【0048】
下流側便器排水路112Bの下流端部は、便器本体100が据え付けられた床面Fに固定された排水接続管117の上部開口に挿入され、連結されている。排水接続管117は螺旋状に湾曲し、洗浄水が滞留する滞留部が形成されている。排水接続管17の下部開口は、床面Fに引き出された排水管Dに連結されている。
【0049】
便器洗浄装置120は、リム連通管13Jの上流端に連結され、開閉弁22A2を有している。開閉弁22Aが開弁されることによりリム洗浄が実行可能である。
【0050】
制御装置130は、吸引装置50を制御可能である。つまり、制御装置130は駆動装置52を制御し、吸引タンク51の便器排水路112内の空気の吸引と、吸引タンク51内の空気の便器排水路112内への排出を行なうことができる。
【0051】
実施例3の水洗式便器では、図示しないリモコン装置に設けられた便器洗浄ボタンが操作され、便器洗浄が開始されると、図6に示すように、リム洗浄が実行される。リム洗浄の実行中に吸引装置50の吸引タンク51が便器排水路112内の空気の吸引及び排出を実行する。このように開閉弁22Aを開閉し、吸引装置50の駆動装置52を駆動するよう制御装置130は開閉弁22A及び吸引装置50を制御する。この便器洗浄では、リム洗浄が開始され、吸引タンク51が便器排水路112内の空気を吸引するまでの間、便鉢部11の水位は上昇水位L2まで上昇する。吸引タンク51が便器排水路112内の空気を吸引すると、便器排水路112内にサイホン作用が発生する。便器排水路112内に発生したサイホン作用により、便鉢部11内の汚物等は便器排水路112の下流へ排出され、便鉢部11の水位は上流側便器排水路112Aの上流端開口付近まで下降する。次に吸引タンク51内の空気が便器排水路112内に排出されると、サイホン作用が終了する。これにより、便鉢部11の水位は覆水水位L1まで上昇し、水封が形成されてリム洗浄が終了する。
【0052】
制御装置130は、便器洗浄(リム洗浄)に利用される洗浄水の供給量V8は予め設定されており、記憶部Mに記憶されている。また、制御装置130は、タイマーTにより測定した増水時間T1と、供給量V1とにより流量値X1を算出する。このため、流量値X1と供給量V8とによりリム洗浄時間T8を算出することができる。流量の変化の影響が少ない流量値X1に基づいてリム洗浄時間T8が算出されているため、実際にリム洗浄で供給される洗浄水の供給量は、設定した供給量V8に近く、ばらつきの少ないものにすることができる。
【0053】
したがって、実施例3の水洗式便器も、洗浄水の供給量のばらつきが少なく、節水を図りつつ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0054】
また、流量値X1と吸引タンク51が便器排水路112内の空気の吸引を開始してから吸引タンク51内の空気を便器排水路112内へ排出するまでの吸引時間T7とは相関関係がある。つまり、流量値X1が少なくなれば、吸引時間T7は短くする。これは、便鉢部11内の洗浄水が殆んど排出されることにより破封音が生じてしまうことを防ぐため、流量値X1が少ない場合には、吸引時間T7を短くし、便鉢部11内の洗浄水がなくなる前に吸引タンク51内の空気を便器排水路112内へ排出してサイホン作用を終了させる。制御装置130の記憶部Mには、流量値X1と吸引時間T7との相関関係を示すチャートが記憶されており、流量値X1に応じて吸引時間T7が決定される。
【0055】
次に、このように構成された実施例3の水洗式便器の便器洗浄の工程を図7を参照しつつ説明する。
【0056】
図示しないリモコン装置に設けられた便器洗浄ボタンが操作され、便器洗浄が開始されると、便器洗浄装置120の開閉弁22Aが開弁され、リム洗浄が開始される(ステップS31)。これにより便鉢部11の水位は上昇する。リム洗浄が開始されるとともにタイマーTが時間測定を開始する(ステップS32)。便鉢部11の水位が上昇水位L2に到達したのを水位センサー40が検知すると、すると、タイマーTが増水時間T1を測定する。
【0057】
一方、上述したように、タイマーTにより測定された増水時間T1に基づいて流量値X1が算出され、流量値X1に基づいて吸引時間T7及びリム洗浄時間T8を算出する(ステップS40)。
【0058】
便鉢部11の水位が上昇水位L2に到達したのを水位センサー40が検知した後、タイマーTをリセットし(ステップS34)、吸引装置50の吸引タンク51による便器排水路112内の空気の吸引を開始する(ステップS35)。これにより、便器排水路112内にサイホン作用が発生する。サイホン作用は、吸引状態が継続する間(ステップS36)、つまり算出された吸引時間T7の間、継続する。この間、弁鉢部11内の汚物等は便器排水路112の下流へ排出され、便鉢部11の水位は下降する。吸引時間T7を経過すると吸引タンク51内の空気を便器排水路112内へ排出する(ステップS37)。これにより、便器排水路112内のサイホン作用は終了し、便鉢部11の水位は上昇する。リム洗浄時間T8が経過するまで(ステップS38)、リム洗浄が継続され、便鉢部11の水位は覆水水位L1まで上昇し、水封が形成される。リム洗浄時間T8を経過するとリム洗浄が終了し(ステップS39)、便器洗浄が終了する。
【0059】
このように実行される便器洗浄において、洗浄水の給水源の給水圧の変化等に起因して流量が変化した場合、図6(A)〜(C)に示すように、便鉢部11の水位、リム洗浄の流量及び時間、吸引タンクの吸引時間が変化する。つまり、図6では、流量が多く、増水時間T1が短い場合が点線で示され、流量が少なく
増水時間T1が長い場合が実線で示されている。リム洗浄の供給量は、図6(B)のグラフで示される各台形の面積で表せるが、増水時間T1が変化しても、各台系の面積は略等しい。つまり、実施例3の水洗式便器も、流量が変化しても便器本体に供給される洗浄水の供給量はばらつきが少なく、節水を図りつつ、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0060】
本発明は、上記記載及び図面によって説明した実施例1〜3に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、2回目のリム洗浄時間を算出し、2回目のリム洗浄を終了させていたが、覆水水位を検知可能な水位センサーを備え、その検知により2回目のリム洗浄を終了させてもよい。また、同様に実施例3においても、覆水水位を検知可能な水位センサーを備え、その検知によりリム洗浄を終了させてもよい。
(2)実施例3では、便器排水路内の空気を吸引する吸引装置を備えていたが、吸引装置を備えず、リム洗浄のみを実施する水洗式便器であってもよい。
(3)実施例1〜3では、水位センサーは光学式であったが、他の方式のものであってもよい。例えば、ジェットノズルに取り付けた圧力センサーで水頭圧を計るものやフロート式のものであってもよい。
(4)実施例1及び2では、便器洗浄をリム洗浄、ジェット洗浄、リム洗浄の順に実行するものであったが、リム洗浄後のジェット洗浄を実行して便器洗浄を終了させてもよい。その場合、ジェット洗浄により便鉢部の水位を覆水水位に復帰させる。
(5)実施例1及び2では、便器洗浄においてリム洗浄、ジェット洗浄、リム洗浄をオーバーラップさせずに実行させたが、これらをオーバーラップして実行してもよい。
(6)実施例1〜3では、制御装置は開閉弁の開閉制御を行なったが、流量調整機能を有する開閉弁等にすることにより、便器本体に供給される洗浄水の流量を制御してもよい。
(7)実施例3では、制御装置は吸引装置の吸引時間を制御したが、吸引量を制御してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、100…便器本体
11…便鉢部
12、112…便器排水路
13…リム通水路
16…ジェット噴出口
20、120…便器洗浄装置
21…給水管
30、130…制御装置
40、41…水位センサー
50…吸引装置
R…トイレルーム
S…給水源
T…タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部及び便鉢部の下流側に連通する便器排水路を有する便器本体と、便器本体が据え付けられるトイレルームに引き出された給水源に連通する給水管に接続され、給水源の給水圧により洗浄水を便器本体に供給する便器洗浄装置と、便器洗浄装置を制御する制御装置とを備えた水洗式便器であって、
前記便鉢部の水位が所定水位に到達したことを検知可能な水位センサーを備え、前記制御装置は、前記便器洗浄装置が便器本体へ洗浄水の供給を開始してから便鉢部の水位が所定水位に到達したことを水位センサーが検知するまでの増水時間を測定可能なタイマーを有し、測定された増水時間と、予め求められた便鉢部へ洗浄水の供給を開始してから所定水位に到達するまでの洗浄水の供給量とから前記便器洗浄装置が便器本体へ供給する洗浄水の単位時間当たりの流量値を算出し、この流量値に基づいて便器洗浄装置の便器本体への洗浄水の供給を制御することを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記便器本体は、前記便鉢部の上端周縁部に設けられたリム通水路と、前記便器排水路の下流方向へ洗浄水を噴出するジェット噴出口とを有し、
前記便器洗浄装置は、リム通水路へ洗浄水を供給するリム洗浄と、ジェット噴出口へ洗浄水を供給するジェット洗浄とを実行可能であり、
前記制御装置は、便器洗浄をリム洗浄、ジェット洗浄の順に実行させるものであり、このリム洗浄の実行の際に覆水水位よりも上方の水位を前記所定水位として前記流量値を算出し、この流量値に基づいてジェット洗浄を制御することを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記便器本体は、前記便鉢部の上端周縁部に設けられたリム通水路と、前記便器排水路の下流方向へ洗浄水を噴出するジェット噴出口とを有し、
前記便器洗浄装置は、リム通水路へ洗浄水を供給するリム洗浄と、ジェット噴出口へ洗浄水を供給するジェット洗浄とを実行可能であり、
前記制御装置は、便器洗浄をリム洗浄、ジェット洗浄、リム洗浄の順に実行させるものであり、この2回目のリム洗浄の実行の際に覆水水位を前記所定水位として前記流量値を算出し、この流量値に基づいて次回の便器洗浄の洗浄水の供給を制御することを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記便器本体は、前記便鉢部の上端周縁部に設けられたリム通水路を有し、
前記便器洗浄装置は、リム通水路へ洗浄水を供給するリム洗浄を実行可能であり、
前記制御装置は、リム洗浄の実行の際に覆水水位よりも上方の上昇水位を前記所定水位として前記流量値を算出し、この流量値に基づいてリム洗浄を制御することを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記便器排水路内の空気を吸引する吸引装置を備え、前記制御装置は前記流量値に基づいて吸引装置の吸引制御を行なうことを特徴とする請求項4記載の水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−38308(P2011−38308A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186333(P2009−186333)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】