説明

水洗式便器

【課題】多量に水を流さなくても、尿石の発生を抑制する水洗式便器を提供する。
【解決手段】水洗式便器本体3と、便器の排水を下流側の管に導く排水管51と、水洗式便器本体3及び排水管51を結ぶ連結管41と、少なくとも連結管41を標的に液体を吐出する液体吐出手段131とを有し、液体吐出手段131は、水洗式便器本体3の内部に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
小便器では、人の使用後、尿を洗い流すために洗浄水が流される。従来の小便器にあっては、小便器上部から水が落下して尿と一緒にボール面を伝わり、その後、トラップ経由で、排水管に向けて流れるという洗い落とし方式が採用されている。しかし、洗い落とし方式では、洗浄水の量が少ないため、小便器から排水管への尿の排出効率が悪い。
【0003】
一方、尿を洗浄水で流した後であっても小便器内には少量ながらも尿は残る。残った尿は、細菌繁殖のもとになり、ぬめりや着色汚れを発生し、さらには臭気の原因になる。また、小便器内に残った尿中のリン酸イオンやカルシウムイオンが原因となって不溶性の尿石が、小便器のトラップと排水管とを結ぶ連結路内にできる虞がある。尿石ができると、連結路が狭くなる。そして、一旦付着した尿石は、ブラシで強く擦らないと除去しにくい。しかも、尿石を十分に除去するためには、専門の業者に依頼する必要があり、これが、小便器を管理する者の負担になっていた。
【0004】
そこで、排出効率を高めるため洗浄水の流量を多くすることで小便を流し、尿石の発生を抑制することが求められた。
しかしながら、洗浄水の量を多くしても洗い落とし便器では、トラップの瞬間排水量は変化することなく、又、尿石の発生しない箇所にも多くの水が流れることであり、それだけ無駄に洗浄水を使用することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−106049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、多量に水を流さなくても、尿石の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の水洗式便器は、次の手段を採用した。
すなわち、水洗式便器本体と、便器の排水を下流側の管に導く排水管と、前記水洗式便器本体及び前記排水管を結ぶ連結管と、少なくとも前記連結管を標的にして液体を吐出する液体吐出手段とを有する。
前記液体吐出手段は、水洗式便器本体の内部に設置されている。
【0008】
また本発明は、水洗式便器を洗浄する方法でもある。その特徴とするところは、次の通りである。すなわち、コンピュータが、洗浄水の流しの有無を示す信号を入力インターフェースから受信するステップと、流しが有ったと判定されるとタイマーを作動させるステップと、タイマーの作動開始から第1の所定時間経過したか否かを判定するステップと、前記第1の所定時間が経過したと判定したら、前記洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出するステップと、 前記液体の吐出後第2の所定時間が経過したら、前記吐
出を停止するステップと、を実行する水洗式便器を洗浄する方法である。
【0009】
さらに本発明は、水洗式便器を洗浄する方法であって、コンピュータが、タイマーが現在の時刻を検知するステップと、タイマーが所定の時刻を過ぎたか否かを判定するステップと、タイマーが前記所定の時刻を過ぎた場合には、前記水洗式便器の洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出するステップと、前記液体の吐出後所定時間が経過したか否かを判定するステップと、前記液体の吐出後所定時間が経過したら、前記吐出を停止するステップと、を実行する水洗式便器を洗浄する方法である。
【0010】
加えて、本発明は、水洗式便器を洗浄する方法であって、コンピュータが、
洗浄水の流しの有無を示す信号を入力インターフェースから受信するステップと、前記洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出するステップと、前記液体の吐出後所定時間が経過したか否かを判定するステップと、前記液体の吐出後所定時間が経過したら、前記吐出を停止するステップと、を実行する水洗式便器を洗浄する方法である。
【0011】
そして、本発明は、水洗式便器を洗浄する方法であって、コンピュータが、
洗浄水の流しの有無を示す信号を入力インターフェースから受信するステップと、前記流しの回数を数え、当該流しの回数が所定数を越えたか否かを判定するステップと、前記所定数を越えたと判定したら、前記洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出するステップと、 前記液体の吐出後所定時間が経過したか否かを判定するステップと、前記
吐出を停止するステップと、を実行する水洗式便器を洗浄する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水洗式便器において、多量に水を流さなくても、尿石の発生を抑制し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の便器を水洗式便器に適用した場合の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2の縦断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】水洗式便器のブロック図である。
【図6】実施例1のフローチャートである。
【図7】実施例2のフローチャートである。
【図8】実施例3のフローチャートである。
【図9】実施例4のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態(以下、実施形態)を実施例に基づいて例示的に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状その相対配置などは、特に特定的に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0015】
図1〜図6を参照して、実施例1に係る発明を水洗式小便器(以下、小便器1)に適用した場合について例示する。小便器1は、床置型(ストール型)、大型、中型、小型に分類される。本実施例に係る小便器1は、床面から上方に離隔した状態で設置される大型の小便器である(図1〜図3参照)。
【0016】
小便器1は、排出された小便を受ける便器本体3と、便器本体3を囲繞するケース体5と、便器本体3に排出された小便を小便器1の外に排泄する排泄設備7と、脱臭装置8とを有する(図1、図3参照)。
【0017】
便器本体3は、小便の排泄に使用される衛生陶器である。また、トイレ利用者は、立ったまま小便器1で用を足すようになっている。便器本体3は、使用者の前面に立設されて排尿を受ける部位である受面部31と、トイレ使用者の陰茎から垂れた尿を受ける垂れ受部分34と、ボール部32とを含む(図1、2、3参照)。
【0018】
受面部31は、ほぼ平らな面形状をしており、正面形状で長円を縦長にした如き形状をしている(図2参照)。また、受面部31は、その頂部近傍に、尿を流すための洗浄水を供給する給水部35を有する(図2、図3参照)。給水部35は、図示しない外部給水管と接続されている。そして当該給水部35は、前記外部給水管から供給された水を便器本体3内に供給し、これにより受面部31及びボール部32を洗浄する。また、給水部35の前方には、水流センサ132(図3、図5参照)が設けられている。水流センサには、水流によって磁石を動かし、リードスイッチで検知するタイプ(流水スイッチ)と、プロペラや水車で水量も検知するタイプ(水量センサ)とがある。
【0019】
垂れ受部分34は、受面部31とその下方で連続して形成され(図3参照)、使用者側に突き出している。このため、トイレ使用者の陰茎から垂れる尿を便器設置面に落とすことなく小便器1で受けられる。
また、ボール部32(図2、図3参照)は、受面部31と連続して形成され、かつ調理用の容器であるボールに似た形状をしている(図3参照)。
【0020】
ケース体5(図1〜図3参照)は、このような便器本体3を囲繞するものである。具体的には、便器本体3の受面部31と、垂れ受部分34を含むボール部32と、ボール部32の最低位部分に位置する排水口36と(図2、図3参照)、排水口36に接続された排水トラップ13と(図2参照)、臭気を外部に排出するための管である臭気排出管100(図3参照)とをケース体5が覆う。また、ケース体5の底面は、床面から離隔し、床面との間に空間SPを形成する(図2、図3参照)。
【0021】
ケース体5で便器本体3を覆(囲)うと、便器本体3とケース体5との間の内部にスペースSが画成される(図2参照)。スペースSの形状は、便器本体3をケース体5で覆ったときにケース体5の内面と便器本体3の外面とによって画成される形状をしている。当該スペースSは、少なくとも、ボール部32と、その下方部にある排水トラップ13とを収納するに十分な大きさの容積を有する。
【0022】
そして、ケース体5には、その底部にトイレの床面に通じる開口Oが形成されている(図1,2参照)。ケース体5の底面は、既述のように床面から空間SPをもって離隔しているので、当該開口Oも、床面から所定高さに位置する。開口Oは、どんな形状でもかまわないが、好ましくは、ケース体5の下面に向けてできるだけ大きく開いた形状であるものがよい。
【0023】
なお、ここで、トイレ使用者が、小便器1に正対した状態で手前側を後ろといい、向こう側を前という。また、上下とは小便器1の長手(上下)方向に延びる中心線上において上方を上側といい、下方を下側という。さらに左右とは、小便器1に利用者が正対した状態で右側を右といい、左側を左という。
【0024】
また、図3及び図4に示すように、排泄設備7は、排水口36(図3参照)と、その後部に接続されている排水トラップ13と、排水管の一つであって、小便器1の排水を下流側の管に導くための横引き排水管51と、排水トラップ13及び横引き排水管51をつなぐ排水接続継手アダプタ41とを含む(図3参照)。なお、排水トラップ13と、排水接続継手アダプタ41との間には、ゴム製のガスケット130が介在されている(図4参照
)。
【0025】
排水トラップ13(図3参照)は、排水口36から所定の長さで後方に直進し、そこから上方に向けて凸状に湾曲した如き形状をしている。換言すれば、横倒しにしたSの字を変形させた如き形状である。当該凸の大きさは、小便器1が十分な封水深を確保できる程度のものである。そして、排水トラップ13は、その後端部における上位置でかつケース体5の内部にジェット洗浄器131(図4参照)が取り付けられている。ジェット洗浄器131とは、図示しない高圧水発生装置で加圧された高圧水をノズルから噴射し、その時の衝撃力を利用して主として排水接続継手アダプタ41の洗浄に供することにより、尿石などの除去を行うものである。
【0026】
なお、排水接続継手アダプタ41のうち排水トラップ13との接続箇所a(洗浄水の進行方向における所定の箇所。図4参照。)、換言すると、排水接続継手アダプタ41内であって、入り口付近が最も尿石が析出し易い。また、接続箇所aは、頂部が平らな山形の平らな頂部に該当する箇所である。そして、接続箇所aは、封水深よりも高所に位置する。このため、当該箇所aに尿を含んだ流水が常にあるとは必ずしも限らない。つまり接続箇所aでは、流水がある場合と流水の無い場合とがあり、流水が無い場合は、尿を含んだ流水が漸次乾燥するため尿石が成長し易い。反対に流水が有る場合は、たとえ流水に尿が含まれていたとしても下流に向けて水が流れるため尿石が出現し難い。換言すると、前記接続箇所aは、小便器使用者が用足しに使用することにより、当該接続箇所aを小便が通っては乾き、乾いては通ることにより、尿石が出来易い箇所である。
【0027】
そして、当該接続箇所aを標的にして高圧水をジェット洗浄器131のノズルから噴射し、その噴射力で前記接続箇所aにできる尿石を除去してもよいし、尿石ができる前に噴射して接続箇所aを洗浄するようにしてもよい。
【0028】
ジェット洗浄器131においては、前記接続箇所a及びその近傍をめがけて、斜め上後方から斜め下前方へと高圧水が噴射されるように(図4の白矢印A参照)、ノズルの位置調整がされている。ジェット洗浄器131は、ホース用ノズル133と、ホース用ノズル133に接続されて高圧の水を送る超高圧ホース134とで形成されている(図4参照)。
【0029】
ジェット洗浄器131は、フランジ136を有している。そして、排水トラップ13の天井面13aには、ホース用ノズル133が貫通される貫通孔13bが形成されており、当該貫通孔13bにフランジ136が当接するまで圧入される。このとき、ホース用ノズル133の先端からフランジ136までの寸法の方が、貫通孔13bの長さ寸法よりも長い。このため、ジェット洗浄器131を貫通孔13bに組み込んだときに、ホース用ノズル133の先端13dが、貫通孔13bからわずかに下方に突出する。このときホース用ノズル133の吐出口133dが前記部位aをめがけて排水することができるように、ホース用ノズル133を貫通孔13bに組み込む。なお、貫通孔13bとホース用ノズル133との間にブシュ13cが組み込まれている(図4参照)。これは、ホース用ノズル133が貫通孔13bから抜け出るのを防止すると共に、ホース用ノズル133と貫通孔13bとの間の隙間から排水トラップ13内から外に向けた水漏れの発生を抑制するためである。
【0030】
なお、ジェット洗浄器131を天井面13aの貫通孔13bに圧入することで、ジェット洗浄器131を排水トラップ13の天井面13aに取り付けたものを示したが、これに限らず、ジェット洗浄器131と天井面13aとを螺合することで、ジェット洗浄器131を排水トラップ13の天井面13aに取り付けるようにしてもよい。ジェット洗浄器131を天井面13aの貫通孔13bに圧入することでも、天井面に対するノズルの位置調
整は可能であるが、螺合によって位置調整した場合は微調整ができる。
【0031】
このように、ホース用ノズル133を貫通孔13bに組み込むことにより、ジェット洗浄器131が排水トラップ13の天井面13aに対して垂直に立設される。併せてホース用ノズル133の先端(ホース用ノズル133を貫通孔13bに組み込んだときの下端)が、前記貫通孔13bから下方に突出する。
【0032】
そして、この状態でジェット洗浄器131を作動させることにより、尿石が出来やすい部位である、排水トラップ13と排水接続継手アダプタ41との接合箇所における接続箇所aに向けて、または排水接続継手アダプタ41のうち白矢印Aの延長線上の箇所に対してホース用ノズル133から水等の液体がジェット噴射されるようになっている。
さらに、尿石ができる前にジェット洗浄器131を定期的に作動すれば、尿石が発生しにくい。
【0033】
また、排水トラップ13の前端には、小便器1の外部に設置された排水接続継手アダプタ41が既述のように、接続されている(図4参照)。そして、排水トラップ13と、排水接続継手アダプタ41との間には、既述のように、ゴム製のガスケット130が介在されている。さらに、排水接続継手アダプタ41の下流側に横引き排水管51が接続されている。
【0034】
横引き排水管51は、建物の床下などに横(左右)方向に設置されてる。また、横引き排水管51は、小便器に排出された小便を、図示しない外部下水管に向けて搬送するための管であり、排水接続継手アダプタ41と交叉する方向で接続されている。
【0035】
排水接続継手アダプタ41は、前記排水トラップ13及び横引き排水管51をつなぐ連結管として機能する。そのため、排水接続継手アダプタ41は、その上流側端が排水トラップ13と接続されるトラップ用接続構造400とされ(図3、図4参照)、排水接続継手アダプタ41の下流側端は、横引き排水管51と接続される横引き排水管用接続構造413とされている(図4参照)。
【0036】
トラップ用接続構造400は(図4参照)、排水接続継手アダプタ41(図4参照)の上流側端に形成された外嵌部402に、ケース体5の背面から前方に突出して形成され、前記外嵌部402と嵌合する内嵌部404が嵌合することで形成される(図4参照)。また、内嵌部404の外周面には、シールリング406が取り付けられており(図4参照)、外嵌部402に内嵌部404を嵌合すると両者の間がシールリング406によってシールされる。
【0037】
横引き排水管用接続構造413(図4参照)は、排水接続継手アダプタ41の下流側端の外周面周りに形成された内嵌部412に、横引き排水管51にU字状に巻着される巻着部414の自由端414aを外嵌することで形成される(図4参照)。内嵌部412の外周面には、シールリング415が取り付けられており(図4参照)、これにより、巻着部414の自由端414aと排水接続継手アダプタ41との嵌合箇所をシールする(図4参照)。
【0038】
また、図示しない電磁弁装置により、給水部35(図2、図3参照)から配水される洗浄水が、受面部31とボール部32の内面を洗浄する。洗浄後の水の流れは、前記排水口36(図3参照)から、排水トラップ13、排水接続継手アダプタ41及び横引き排水管51を経由して(図3、図4参照)、図示しない外部下水管に排水される。
【0039】
ところで、既述した垂れ受部分34があっても(図3参照)、尿が小便器1の内から外
へ飛散したり、小便器1からそれて小便器1の周囲を汚したりする場合がある。このような場合において、床面に垂れてしまった尿から発する臭いを除去するためのものが、前記開口O及びこの開口Oにつながる臭気排出管100を含む脱臭装置8である(図2〜図4参照)。脱臭装置8によれば、その臭気排出管100(図4参照)は、便器本体3の背面に開口102(図4参照)が形成され、かつトイレの外部(ケース体5の外部)に通じている。床面に垂れた尿の臭いは、次のようにして外部に排出される。
【0040】
すなわち、小便器1は、臭いの発生源となる小便器1から小便が漏れたり、付着したりして、小便の溜まる便器本体3の底部付近及びケース体5の外部をトイレの床面に通じる開口O及び臭気排出管100を介して通じさせる(図2〜図4参照)。よって、尿の臭いをケース体5の外部に向けて排出できる。これは、物質の拡散、すなわち、粒子、熱、運動量などが自発的に散らばり、かつ広がる物理現象を利用したものである。よって、尿の悪臭によりトイレ利用者に不快感を低減することができる。
【0041】
次に排水接続継手アダプタ41を用いて排水トラップ13と、横引き排水管51とのつなぎ方を説明する。排水接続継手アダプタ41は、その上流側端が既述したトラップ用接続構造400を介して排水トラップ13と接続されている(図3、図4参照)。また、排水接続継手アダプタ41の下流側端は、既述した横引き排水管用接続構造413を介して横引き排水管51と接続されている(図4参照)。
【0042】
さらに、図4に示すように、小便器1を右側面から見たときに、排水接続継手アダプタ41の上流側端が、横引き排水管51よりも高い位置にある。よって、小便器1と横引き排水管51との間に落差を生じる。
【0043】
このため、給水部35から小便器1のボール部32及び排水トラップ13を経由して、排水接続継手アダプタ41に至った排水(図3、図4参照)は、勢いがついた状態で排水接続継手アダプタ41を横引き排水管51に向けて流れる。
【0044】
また、排水接続継手アダプタ41よりも上位に既述したジェット洗浄器131が設置されている(図4参照)。そして、既述したように、接続箇所a(図4参照)を標的にして高圧水をジェット洗浄器131のノズルから噴射し、その噴射力で前記接続箇所aにできる尿石を除去する。
【0045】
なお、噴射力で尿石を除去する箇所、すなわち標的は、前記接続箇所aに限られない。例えば、排水接続継手アダプタ41のうち白矢印Aの延長線上にある排水接続継手アダプタ41でもよい。この場合、ジェット洗浄器131のノズル133から白矢印Aの延長方向にある排水接続継手アダプタ41は、図4に正対した場合において右斜め下方にあるので、ジェット洗浄器131のノズル133から排水接続継手アダプタ41に向けて噴射があると、この噴射による力と重力とが相俟って、排水接続継手アダプタ41の内面に付着している尿石を除去する除去力が高まる。
【0046】
横引き排水管51に至った排水は、横引き排水管51に案内された後、横引き排水管51よりも下流の排水管であって上下に延びる縦管や排水本管(いずれも図示せず)を経由して、最終的に屎尿処理場に案内され、そこで処理される。
【0047】
図5は、本発明に係る水洗式便器のブロック図である。
図5において、制御部70には、中央処理装置(CPU)、ジェット洗浄器131の動作時間を設定するタイマー70a、流しの回数をカウントするカウンター70bを有する。その他、制御部70は、図示しない、発信される情報のデータの読み出し/書き込みメモリ(RAM)、本システム実行用のプログラムを記憶する読み出し専用メモリ(ROM
)、これらを接続するバスを有するように構成されている。
【0048】
また、図5における小便器1には、ジェット洗浄器131及び水流センサ132を有するように構成されている。
そして、制御部70及び小便器1は、インターフェース(I/F)を介在させることによって、制御部70からジェット洗浄器131に向けて情報が伝達され、水流センサ132から制御部70に向けて情報が伝達されることが示されている。
【0049】
なお、コンピュータの部品間の通信リンクとしてこの実施例では、シリアル通信が使われている。シリアル通信アーキテクチャの例としては、次に示すようなものを例示できるがこれらに限定されるものではない。例えば、単にON/OFFを検出するスイッチの信号から、0(Low)、1(High)の信号を制御部70に入力してもよい。
・RS-232 (低速、シリアルポートで使われる)
・RS-423
・RS-485
・Universal Serial Bus
・I2C(アイ・スクエアド・シー)
但し、水流センサを用いる代わりに水洗をON/OFFするためのセンサ、例えば、赤外線センサの出力信号により、水の流れを検知してもよい。つまり、センサにより、水の流れ指示が為されたことを持って、水流を検知したものと見なしてもよい。
【0050】
図6は、このような構成の水洗式便器を用いて、ジェット洗浄器131から定期的に水等が噴射される場合の制御部70による手順を示すフローチャートである。
【0051】
S61では、その日のうちにされた給水部35による最初のトイレへの流しの有無を例えば水流センサ132で検知する。検知したデータは制御部70に送信され制御部70により流しの有無が判定される。肯定判定すればS62に進む。否定判定すればS61のステップを繰り返す。
S62では、タイマー70aが作動を開始する。
S63では、所定時間(第1の所定時間)が、S62におけるタイマー70aの作動開始から経過したか否かを判定する。例えば3h経過したか否かを判定する。肯定判定の場合はS64に進む。否定判定の場合は、本ルーチンを繰り返す。
S64では、ジェット洗浄器131が作動する。この結果、前記洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出する。所定の箇所とは、例えば、排水接続継手アダプタ41内であって、入り口付近である。排水接続継手アダプタ41の入り口付近が最も尿石が析出し易い。
S65では、ジェット洗浄器131の作動後所定時間(第2の所定時間)が経過したか否かを判定し、肯定判定したらS66に進む。否定判定の場合はこのルーチンを繰り返す。
S66では、ジェット洗浄器131の作動が停止し、洗浄水の進行方向における所定の箇所への液体の吐出が終了する。その後はS61に戻る。
【0052】
(作用効果)
実施例1に係る発明では、排水トラップ13の前端上部にジェット洗浄器131が取り付けられている。ジェット洗浄器131は、少なくとも前記排水接続継手アダプタ41を標的にして液体を吐出する液体吐出手段として機能する。そして、ジェット洗浄器131は、高圧で水や薬液などの液体を少なくとも排水接続継手アダプタ41を標的に噴射する。ジェット洗浄器131が作動することにより、尿石が除去される。また、尿石ができる前にジェット洗浄器131を定期的(この実施例では、例えば3時間毎:図6のS63)に作動するようになっているので、尿石が発生しにくい。排水接続継手アダプタ41を標
的にして噴射するということはピンポイントで高圧の液体を噴射するということなので、尿石が発生していても集中的に除去し易くなる。したがって、除去効率がよい。また、ピンポイントで高圧の液体を噴射するので、多量に水を流さなくても、尿石の発生を抑制し易い。
【0053】
また、ジェット洗浄器131がケース体5の内部に設置されているので、ジェット洗浄器131から噴出される水等の液体が吐出されることにより生ずる音も低減される。このため、さほど音が気にならない。
【実施例2】
【0054】
次に図7を参照して実施例2について述べる。この実施例2に係る発明は、制御部70によりタイマーを作動させることで、夜中にジェット洗浄器を作動させるというものである。
【0055】
S71では、現在の時刻を検知する。
S72ではS71で検知した時刻が夜の12時を過ぎているか否かを判定する。S72で肯定判定すればS73に進む。否定判定した場合は、肯定判定するまでこのルーチンを繰り返す。
【0056】
S73では、ジェット洗浄器が作動する。
S74では、ジェット洗浄器が作動してから所定時間経過したか否かを判定する。肯定判定する場合は、S75に進む。否定判定する場合は、肯定判定するまでこのルーチンを繰り返す。「ジェット洗浄器が作動してから所定時間」の"所定時間"とは、当該所定時間の間"ホース用ノズル133"が作動している時間である。つまり当該所定時間、ホース用ノズル133が作動したならば、ぬめりや着色汚れの発生を抑制し、さらには臭気の原因を断ち易くできるようになる時間である。加えて、小便器1内に残った尿中のリン酸イオンや、カルシウムイオンが原因となって不溶性の尿石が、小便器1の排水トラップ13と横引き排水管51とを結ぶ排水接続継手アダプタ41内にできるのを抑制し易くなる時間である。
【0057】
S75では、ジェット洗浄器の作動を停止し、洗浄水の進行方向における所定の箇所への液体の吐出が終了する。S74で所定時間ジェット洗浄器が作動すると、ぬめり等の発生を抑制できる。このため、それ以上、ジェット洗浄器の作動を継続する必要がないからである。
【0058】
(作用効果)
実施例2によれば、タイマーを作動させることで、皆が寝静まっている夜中にジェット洗浄器を作動させるというものである。夜中であれば、皆が眠っているため、ジェット洗浄器の音があっても気にならない。
【実施例3】
【0059】
次に図8を参照して実施例3について述べる。実施例3に係る発明は、トイレへの給水部35(図2、図3参照)からの給水1回毎にジェット洗浄器131の作動を制御部70により1回行うというものである。
【0060】
S81では、トイレの流しがあったか否かを水流センサ132で検知し、検知したデータはI/Fを経由して制御部70に渡され、トイレの流しの有無が判定される。
肯定判定すればS82に進む。S82で否定判定すれば肯定判定するまでこのルーチンを繰り返す。
【0061】
S82では、ジェット洗浄器が作動する。
S83では、ジェット洗浄器が作動してから所定時間経過したか否かを判定する。肯定判定する場合は、S75に進む。否定判定する場合は、肯定判定するまでこのルーチンを繰り返す。「ジェット洗浄器が作動してから所定時間」の"所定時間"とは、当該所定時間の間"ホース用ノズル133"が作動している時間である。つまり当該所定時間、ホース用ノズル133が作動したならば、ぬめりや着色汚れの発生を抑制し、さらには臭気の原因を断ち易くできるようになる時間である。加えて、小便器1内に残った尿中のリン酸イオンや、カルシウムイオンが原因となって不溶性の尿石が、小便器1の排水トラップ13と横引き排水管51とを結ぶ排水接続継手アダプタ41内にできるのを抑制し易くなる時間である。
【0062】
S84では、ジェット洗浄器の作動を停止する。S83でジェット洗浄器が所定時間作動すると(例えば3分)、ぬめり等の発生を抑制できる。このため、それ以上、ジェット洗浄器の作動を継続する必要がないからである。
また、実施例3では、給水1回毎にジェット洗浄器131の作動を制御部70により1回行う。このため尿石の発生を抑制し易い。
【0063】
(作用効果)
実施例3では、給水部35からの給水1回毎にジェット洗浄器131の作動を1回行う。このため、ジェット洗浄器131の作動が頻繁に行われるといえるので、ジェット洗浄器131による洗浄性能が高いといえる。
【実施例4】
【0064】
次に図9を参照して実施例4について述べる。この実施例4に係る発明は、トイレの流し回数が所定回数になったなら、制御部70によりジェット洗浄器を作動させるというものである。
【0065】
S91では、給水部35によるトイレへの流しがあったか否かを判定する。肯定判定すればS92に進む。否定判定した場合は、肯定判定するまでこのルーチンを繰り返す。
S92では、給水部35による流しが何回目かカウンター70bによりカウントする。流しの回数がN回目に等しくなったら肯定判定し、S93に進む。否定判定した場合は、肯定判定するまでこのルーチンを繰り返す。
【0066】
S93ではジェット洗浄器131による作動が実行される。
S94ではジェット洗浄器131が作動してから所定時間(例えば3分)が経過したか否かを判定する。肯定判定すればS95に進む。否定判定した場合は、肯定判定するまでこのルーチンを繰り返す。S94でいう所定時間は、ジェット洗浄器131の作動時間を示す。
S95では、ジェット洗浄器131の作動を停止する。
【0067】
(作用効果)
給水部35による給水回数が複数回に一回の割合でジェット洗浄器131による洗浄が行われる。このため、節水に寄与する。
【符号の説明】
【0068】
1 小便器(水洗式便器)
3 水洗式便器本体
5 ケース体
7 排泄設備
8 脱臭装置
13 排水トラップ
13a 天井面
13b 貫通孔
13c ブシュ
31 受面部
32 ボール部
34 垂れ受部分
35 給水部
36 排水口
41 排水接続継手アダプタ(連結管)
51 横引き排水管
70 制御部
70a タイマー
70b カウンター
100 臭気排出管
102 開口
130 ガスケット
131 ジェット洗浄器(液体吐出手段)
133 ホース用ノズル
134 超高圧ホース
136 フランジ
400 トラップ用接続構造
402 外嵌部
404 内嵌部
406 シールリング
412 内嵌部
413 排水管用接続構造
414 巻着部
414a 自由端
415 シールリング
A 白矢印
a 部位
O 開口
S スペース
SP 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗式便器本体と、
前記水洗式便器本体からの排水を下流側の管に導く排水管と、
前記水洗式便器本体及び前記排水管を結ぶ連結管と、
少なくとも前記連結管を標的にして液体を吐出する液体吐出手段とを有する水洗式便器。
【請求項2】
前記液体吐出手段は、水洗式便器本体の内部に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
水洗式便器を洗浄する方法であって、
コンピュータが、
洗浄水の流しの有無を示す信号を入力インターフェースから受信するステップと、
流しが有ったと判定されるとタイマーを作動させるステップと、
タイマーの作動開始から第1の所定時間経過したか否かを判定するステップと、
前記第1の所定時間が経過したと判定したら、前記洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出するステップと、
前記液体の吐出後第2の所定時間が経過したら、前記吐出を停止するステップと、を実行する水洗式便器を洗浄する方法。
【請求項4】
水洗式便器を洗浄する方法であって、
コンピュータが、
タイマーが現在の時刻を検知するステップと、
タイマーが所定の時刻を過ぎたか否かを判定するステップと、
タイマーが前記所定の時刻を過ぎた場合には、前記水洗式便器の洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出するステップと、
前記液体の吐出後所定時間が経過したか否かを判定するステップと、
前記液体の吐出後所定時間が経過したら、前記吐出を停止するステップと、を実行する水洗式便器を洗浄する方法。
【請求項5】
水洗式便器を洗浄水する方法であって、
コンピュータが、
洗浄水の流しの有無を示す信号を入力インターフェースから受信するステップと、
前記洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出するステップと、
前記液体の吐出後所定時間が経過したか否かを判定するステップと、
前記液体の吐出後所定時間が経過したら、前記吐出を停止するステップと、を実行する水洗式便器を洗浄する方法。
【請求項6】
水洗式便器を洗浄する方法であって、
コンピュータが、
洗浄水の流しの有無を示す信号を入力インターフェースから受信するステップと、
前記流しの回数を数え、当該流しの回数が所定数を越えたか否かを判定するステップと、
前記所定数を越えたと判定したら、前記洗浄水の進行方向における所定の箇所に液体を吐出するステップと、
前記液体の吐出後所定時間が経過したか否かを判定するステップと、
前記吐出を停止するステップと、を実行する水洗式便器を洗浄する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−104281(P2013−104281A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251135(P2011−251135)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000155333)株式会社木村技研 (29)
【Fターム(参考)】