説明

水洗式便器

【課題】節水が可能な水洗式便器を提供すること。
【解決手段】サイホンジェット式が適用され、便器1に接続された給水管2の水圧をそのまま利用するフラッシュバルブ3が利用された水洗式便器である。便器1は、便を受けると共に、中空でかつ複数の孔が便器の内面に向けて形成されたリム13を有するボール部11と、便器本体10に洗浄水を送る給水管2から前記ボール部11との間に介装される水槽体5と、ボール部11に形成され、ボール部11に溜まった便を敷地外に排出するための排水管4に向けて便を洗浄水と共に排出するための便排出孔111と、前記水槽体5及びこの便排出孔111を結ぶ流路152Lと、前記リム13と前記水槽体5との間に設けられた隔壁5fpと、この隔壁5fpに設置され、前記リム13又は前記流路152Lにおけるそれぞれの水供給量を制御する制御手段15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗式便器は便を水で流すためのものである。水洗式便器として好ましいものは、便の状態に拘わらず、便をきれいに流し、便器に接続されている排水管経由で便を汚水管に搬送できるものである。
【0003】
ところで、便器のボール表面に便が付着することがある。付着した便をはがし易くするために次のようなことが行われている。すなわち、便器のリムを中空にし、かつリムの内側壁面に多数の小孔を設ける。そして、リムに給水管から水を通す。つまりリムを通水路にする。このようにすると、給水管からリムに供給された水が、前記小孔からボール表面に流れ出て水道直圧の水でボール面を洗浄することができる。これをリム洗浄という。
【0004】
また、水洗式便器にあっては、便器に水を流すことで、溜水(封水)が入れ替わる。このため、便器に水を流すたびに溜水は新しい状態を維持する。
【0005】
さらに水洗式便器は、排水設備の配管(排水管)を伝って下水道の悪臭やガスが屋内へ侵入するのを防ぐようにできている。そのために設けられたのが、前記配管の便器寄りの箇所に位置する排水トラップである。排水トラップは配管を縦方向においてS字形やU字形等に湾曲させてなるものである。その形状ゆえ、給水管から便器に流された水は、その全部が流れることはない。流れなかった水は、排水トラップに連通する便器底部に溜まる。溜まった水、すなわち溜水は、その深さ(封水深)が、規格によって定められている。
【0006】
溜水がなされると、便器の内外は、溜水によって遮断される。この結果、前記のように排水設備の配管を伝って悪臭やガスが進入するのを抑制する。そればかりか、排水トラップは、害虫やネズミなどが、排水管を伝って便器内へ進入するのも抑制する。
【0007】
一方、水洗式便器における水の流し方(洗浄方式)には、主流なものとして、洗い落とし式とサイホンジェット式がある。洗い落とし式は、便器から汚物を排出するにあたり、便器に流す水の勢いのみを利用する方式である。
【0008】
サイホンジェット式は、いわゆるサイホン現象を便器内で起こさせ、これと同時にサイホン現象を速めるため排水トラップにジェット噴流を加えることで、洗浄力を高めた方式である。サイホンジェット式は、スタンダードな方式である。またサイホンジェット式は、留水面の上昇によって、サイフォン作用をおこし易くして排水する方式なので、洗い落とし式に比べ、溜水の面積(溜水面)が広くなるようにしてある。つまり、封水深を深くしてある。溜水面は、便器のボール形状に起因して封水深に比例し、封水深が深いほど溜水面は大きい。そして、溜水面が大きいほど、便器のボール表面が水と接触する範囲が増える。当該接触範囲が増えるほど、ボール表面が乾燥しにくくなり、よって、ボール表面に便が付着しにくくなる。このため、ボール表面に汚物が付着したとしても、汚物はボール表面を滑降して溜水中に沈む。したがって、臭いが水に遮られるため便器から臭いが漏れにくくなる。なお、サイホン現象が起こるのは、排水管が便器と接続される箇所と、便器の溜水面との間の落差である排水落差が大きくなることに起因する。
【0009】
サイホン現象を起こすと、便器の溜水量は一時的に急減する。すると、溜水面が急激に下がる状態となって溜水は排出される。したがって、溜水面に浮遊した汚物を十分に流せ
る勢いが流水に生じる。
【0010】
そして、サイホン現象の結果、溜水面が便器底部の排水トラップの入り口辺りにまで低下すると、排水トラップに空気が吸引されるようになる。この結果、サイホンが破れ、サイホン現象を利用して便器から便の排出を終了する。一方、給水管からは水が便器に補給され、規格で決められている深さに封水深が至るまでボールに溜水される。これにて洗浄を終了する。
【0011】
一方、サイホンジェット式で用いられる給水弁の一例として、フラッシュバルブを挙げられる。フラッシュバルブは、便器に接続された給水管の水圧をそのまま利用する弁である。フラッシュバルブに設けられている排水ボタンや排水ハンドルを操作すると、便器に一定時間水を出した後、水は止まる。フラッシュバルブのことを洗浄弁ともいう。
【0012】
便器は、このようなフラッシュバルブにより、便器に対する水の供給と停止が制御されることにより洗浄される。このため、フラッシュバルブは、便器の洗浄用スイッチといえる。
【0013】
他方、トイレ洗浄水の大幅な節水が、昨今の環境問題に起因して強く求められている。そのためには、洗浄装置が流水量を正確にコントロールする必要がある。しかし、フラッシュバルブには、通常、装置自体に、節水を目的とした流量のコントロール調整機能がない。つまり、水のムダの原因は、フラッシュバルブの機構そのものにあるといえる。
【0014】
これは、フラッシュバルブの性能について規定したJIS(Japanese Industrial Standards)にある、「建築用においては、弁の標準吐水量は15リットルとし、許容誤差は
1.5リットルとするが、試験圧力1kgf/cm2(0.1MPa)以下においては、11〜16.5リットル、試験圧力4kgf/cm2(0.39MPa)以上においては、13.5〜19リットルとする。」という記載に起因する。
【0015】
この記載は、つまり、「フラッシュバルブは、水圧1キロ以下の状況で操作する場合ならば、11〜16.5リットル(66%の許容誤差)の範囲で、水圧4キロ以上なら13.5〜19リットル(71%)の範囲で流れるものであるならば、排水操作のたびに流水量がバラバラであっても正常な製品として認められる」ということをいっている。このため、1回の排水操作で約15リットル、水圧などの条件によっては約20リットルもの水が流れてしまうことさえある。
【0016】
そこで、エコロジーや自然環境保護への貢献という観点から、幾つかの技術的提案がされている。例えば、トイレ用の節水コマが提案されている。この節水コマは、上水道の蛇口内部に取り付けるゴム製又は樹脂製の節水用のコマであり、コマの中央部に突起が付いた形状となっている。そして、突起が流出しようとする水流を阻害し、半開時の流出量を5〜10%程度抑えるというものである。
【0017】
また、本出願人にあっては、正確な流水量を実現したフラッシュバルブが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−97704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
水の使用量を減らすことができれば水道料金を減らすことができる。さらには下水道への排水量を削減することも可能である。下水道への排水量を削減できれば、下水処理に要する電力の削減にもつながる。
このような背景から、世界的に節水への関心が高まり、さらなる節水技術の向上が望まれていた。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、さらなる節水が可能な水洗式便器を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
すなわち、本発明の水洗式便器は、便を受けると共に、中空でかつ複数の孔が便器の内面に向けて形成されたリムを有するボール部と、便器本体に水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、ボール部に形成され、ボール部に溜まった便を敷地外に排出するための排水管に向けて便を水と共に排出するための便排出孔と、前記水槽体及びこの便排出孔を結ぶ流路と、前記と前記水槽体との間に設けられた隔壁と、この隔壁に設置され、前記リム又は前記流路におけるそれぞれの水供給量を制御する制御手段とを有するものである。
【0022】
また、本発明は、洗浄方式としてサイホンジェット式が適用され、便器に接続された給水管にはその水圧をそのまま利用するフラッシュバルブが利用され、フラッシュバルブの操作により便を水と共に排水管に排出する水洗式便器であって、便を受けると共に中空でかつ複数の孔が便器の内面に向けて形成されたリムを有するボール部と、便器本体に水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、ボール部の底部に形成され、ボール部に溜まった便を敷地外に排出するための前記排水管に向けて便を水と共に排出するための便排出孔と、前記水槽体及びこの便排出孔を結ぶ流路と、前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、この隔壁に設置され、前記リム又は前記流路におけるそれぞれの水供給量を制御する制御手段とを有する。
【0023】
さらに、前記制御手段は、前記隔壁に取着される外ケースと、前記外ケースの内部を移動する内ケースと、当該内ケース及び前記外ケースの間に介在される弾性体とを備え、前記外ケースには、前記内ケースに水圧を加えるために外ケース内に水を導入する導入孔が形成されると共に、当該制御手段は、前記導入孔から前記外ケースに入った水圧を受けて移動する前記内ケースの前記外ケースにおける移動距離の程度に応じて、前記リムに向けて水を流す第1の水路又は前記流路に向けて水を流す第2の水路に切り替える水路切り替え手段として機能することを特徴とする。
【0024】
前記外ケースは筒形状をしており、その外周面には軸方向に一定の距離をおいて第1の開口及び第2の開口が形成されると共に、一端面には、前記導入孔が形成され、この一端面と対向する他端面には、前記外ケース及び内ケースに入った洗浄水を排出するための排出孔が形成され、前記内ケースは、前記外ケースに摺動自在に内嵌された一端開口他端閉塞な筒形状をしていると共に、前記制御手段が、前記水路切り換え手段として機能することで、洗浄水の流れ路が前記第1の水路となったときに、前記第1の開口と連通する連通路を備え、同様に前記洗浄水の流れ路が前記第2の水路となったときに、前記内ケースは、前記連通路の形成されていない箇所で、前記第1の開口及び前記第2の開口を閉塞することを特徴とする。
【0025】
さらにまた、前記制御手段は、前記給水管から便器に水を流した後、リム内に空気の流通を生じる空気流通手段として機能することを特徴としてもよい。
【0026】
そして、前記隔壁には、前記水槽体及び前記リムを連通する貫通孔が形成され、前記制
御手段は、前記貫通孔に対し、一方に移動することで当該貫通孔を閉じ、他方に移動することで当該貫通孔を開く開閉手段を有し、前記開閉手段は、前記貫通孔と同軸に配置され前記水槽体内における水の流れを受ける受け部と、当該受け部が水の流れを受けるときは当該受け部を前記一方に移動し、受け部が水の流れを受けないときは当該受け部を前記他方に移動する移動用手段と、を有することを特徴とする。
【0027】
加えて、前記移動用手段は、前記受け部が一方に移動したときに当該受け部を他方に押しやる押圧手段と、この押圧手段を前記貫通孔の軸方向に案内する案内手段とを有することを特徴とする。
そうして、前記受け部は、前記他方の側に羽根車を有することを特徴としてもよい。
【0028】
さらに、前記制御手段は、前記貫通孔と同軸に配置され前記水槽体内における水の流れによって生じる水圧を受ける部位と、当該受け部が水圧を受けるときは当該受け部を一方に移動し、受け部が水圧を受けないときは当該受け部を他方に移動する移動用手段と、を有することを特徴とする。
【0029】
また、前記移動用手段は、前記受け部が一方に移動したときに当該受け部を他方に引っ張る引張り手段を少なくとも有することを特徴とする。
【0030】
加えて、前記受け部は、前記水槽体内に位置しかつ前記貫通孔に対して同軸に配置された基部と、当該基部に対し、摺動自在に取着された可動軸と、この可動軸に固定され水圧を受けて移動する可動部とを含み、前記引張り手段は、前記可動軸に外嵌され、かつ前記基部の水の流れの上流側に位置する圧縮ばねであることを特徴とする。
【0031】
さらに、前記基部は、給水管に係る水の流れの下流側に向けて開く開口を有し、前記可動部は、この開口から前記基部に内嵌され、前記基部のうち前記可動部と対向する側には貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0032】
さらにまた、前記押圧手段及び引張り手段は、圧縮コイルばねであることを特徴とする。
そして、前記ボール部の前記便排出孔を封水する水を供給する供給手段を備え、この供給手段は、前記水槽体に設けられたタンクと、このタンク及び前記ボール部を貫通して結ぶ貫通孔とを有することを特徴とすることもできる。
【0033】
本発明は、また洗浄方式としてサイホンジェット式が適用され、便器に接続された給水管の水圧をそのまま利用するフラッシュバルブが利用され、フラッシュバルブの操作により、便を水と共に排水管に排出する水洗式便器システムでもある。
【0034】
本システムでは、前記便器は、便を受けると共に中空でかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、ボール部に一体形成され、前記フラッシュバルブが操作されると、便器本体便器本体に水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、ボール部に形成され、ボール部に溜まった便を敷地外に排出するための排水管に向けて便を水と共に排出するための便排出孔と、前記水槽体及びこの便排出孔を結ぶ流路と、前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、この隔壁に形成され、前記リムに向けて水を流す第1の水路及び前記流路に向けて水を流す第2の水路のいずれかに切り替えて、切り替えられた方の水路に水を供給する水路切り替え手段とを有することを特徴とする。
【0035】
また本発明は、便を受けると共に、中空でかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、便器本体に水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、ボール部に形成され、かつ排水管に向けて便を水と共に排出するための便排出孔と、この便排出
孔及び前記水槽体を結ぶ流路と、前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、この隔壁に形成され、前記リムの水供給量又は前記流路の水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器において、 前記制御手段が、前記隔壁に形成され前記水槽体及び前記リ
ムを連通する貫通孔に対し、一方に移動することで当該貫通孔を閉じ、他方に移動することで当該貫通孔を開く開閉手段と、この開閉手段に作用して当該開閉手段を前記他方に移動させる手段と、を有することを特徴とする水洗式便器に設置される制御手段でもある。
【0036】
さらに本発明は、便を受けると共に中空でかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、便器本体に水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体5と、ボール部に形成され、排水管に向けて便を水と共に排出するための便排出孔と、この便排出孔及び前記水槽体を結ぶ流路と、前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、この隔壁に形成され、前記リムの水供給量又は前記流路の水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器において、前記制御手段が、前記隔壁に形成され前記水槽体及び前記リムを連通する貫通孔に対し、一方に移動することで当該貫通孔を閉じ、他方に移動することで当該貫通孔を開く開閉手段と、当該開閉手段に作用して当該開閉手段を前記他方に移動させる手段と、を有し、前記開閉手段は、前記貫通孔と同軸に配置され前記水槽体内における水の流れによって生じる水圧を受ける部位と、当該水圧を受ける部位が水圧を受けるときは当該水圧を受ける部位を前記一方に移動し、水圧を受ける部位が水圧を受けないときは当該水圧を受ける部位を前記他方に移動する移動用手段と、を有することを特徴とする水洗式便器に設置される制御手段でもある。
【0037】
さらにまた、本発明は、便を受けると共に、便器の外縁として中空にかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、便器本体に水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体5と、ボール部に形成され、かつ排水管に向けて便を水と共に排出するための便排出孔と、この便排出孔及び前記水槽体を結ぶ流路と、前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、この隔壁に形成され、前記リムの水供給量又は前記流路の水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器において、前記制御手段が、内部に水を導入する導入孔が形成された外ケースと、この外ケースに前記導入孔経由で流入した水の流れによって生じる水圧により外ケース内を移動可能な内ケースとを備えると共に、前記外ケースにおける前記内ケースの移動距離に応じて、前記リムに向けて水を流す第1の水路又は前記流路に向けて水を流す第2の水路に切り替える水路切り替え手段として機能することを特徴とする水洗式便器に設置される制御手段でもある。
【0038】
また、本発明は、便を受けると共に、中空でかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、便器本体に水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、ボール部に形成され、かつ排水管に向けて便を水と共に排出するための便排出孔と、この便排出孔及び前記水槽体を結ぶ流路と、前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、この隔壁に形成され、前記リムの水供給量又は前記流路の水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器において、ねじの切られたスクリュー軸と、このスクリュー軸と螺合し、前記給水管から前記水槽体に流入した水の流れ及び当該水の流れによって生じる水圧により回転し進行する羽根車と、前記給水管からの水の供給が止まると、前記羽根車を押し戻す押圧手段とを有することを特徴とする水洗式便器に設置される制御手段でもある。
【発明の効果】
【0039】
本発明の水洗式便器は、従来の水洗式便器よりも節水を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明水洗式便器の第1実施例において、一部を切り欠いて示す全体外観斜視図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明水洗式便器の水路切り替え手段であるバルブの一部切り欠き斜視図である。
【図4】図1の縦断面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】図4の平面図である。
【図7】本発明水洗式便器のバルブの動作説明図である。
【図8】本発明水洗式便器の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明水洗式便器の第2実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明水洗式便器の第3実施例において、一部を切り欠いて示す全体外観斜 視図である。
【図11】図10の要部拡大図である。
【図12】本発明水洗式便器の第3実施例で用いられる水路切り替え手段であるバルブを前側から見た状態の拡大斜視図である。図12(a)は当該バルブに外力が加わっていない状態を示し、同図(b)は外力が加わっている状態を示している。
【図13】図12(a)の後側から見た斜視図である。
【図14】図13を矢印XIV側から見た図である。
【図15】本発明水洗式便器の第3実施例で用いられる、水路切り替え手段であるバルブの分解斜視図である。
【図16】本発明水洗式便器の第3実施例で用いられるバルブを便器に取り付け、バルブが開いている状態を示す部分縦断面図である。
【図17】図16の状態からバルブが閉じた状態を示す部分縦断面図である。
【図18】本発明水洗式便器の第4実施例に係る図であって、図11に相当する要部拡大図である。
【図19】本発明水洗式便器の第4実施例で用いられる水路切り替え手段であるバルブを前側から見た状態の拡大斜視図である。図19(a)は当該バルブに外力が加わっていない状態を示し、同図(b)は外力が加わっている状態を示している。
【図20】本発明水洗式便器の第4実施例で用いられる、水路切り替え手段であるバルブの分解斜視図である。
【図21】本発明水洗式便器の第4実施例で用いられる水路切り替え手段であるバルブを便器に取り付け、バルブが開いている状態を示す部分縦断面図である。
【図22】図21の状態からバルブが閉じた状態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、この発明を実施するための形態(以下、実施形態)を実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状その相対配置などは、特に特定的に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【実施例1】
【0042】
図1に示す水洗式便器(以下、便器)1は、水を溜めて水流を生じさせるためのタンク(水槽)がない、いわゆるフラッシュバルブ方式でかつサイホン現象により便器内の汚物を吸い込んで排出する便器である。なお、この実施例では、便器本体10に附属している便座や蓋は省略してある。
【0043】
便器本体10は、家屋の床面又は壁面に図示しないボルトキャップにより固定される。
ボルトキャップとは、ボルト頭にキャップが被されてなる取り付けボルトである。便器本体10は、図4に示すように、ボール部11に給水管2及び横引き排水管4が接続されている。
【0044】
給水管2は、図示しない水道本管から引き込まれ、便器本体10に水を送る。給水管2の便器本体10との接続箇所は、便器本体10の後部上方である。給水管2の途中には、フラッシュバルブ3が備えられている。フラッシュバルブ3は、フラッシュバルブ3に設けられている排水ボタンや排水ハンドルの操作後水を出し、一定時間経過すると、水を止める。
【0045】
ここで、本明細書における前後とは、便器1を使用するにあたり、トイレ使用者が図示しない便座に着座した状態での前をいい、その反対側を後という。また、トイレ使用者が前を向いた状態で左右の側をそれぞれ左及び右という。同じく着座した状態で上下の側をそれぞれ上及び下という。
【0046】
横引き排水管4は、ボール部11に溜まった便を敷地外に排出するための管である。この管4は、蛇腹状をした管である排水接続アダプタ41(図4参照)やエルボ(図示せず)を用いて、便器本体10の後部下方で接続される。横引き排水管4のうち便器本体10と反対側の端部(他端)は、図示しない汚水管に向けて延びている。
【0047】
また、便器本体10のうち給水管2と接続する部位を給水管接続部5という(図4参照)。給水管接続部5を、便器本体10における水の流れの始点とする。つまり、給水管接続部5は、排水ボタンや排水ハンドルをトイレ使用者が操作して、フラッシュバルブ3が作動すると、水道本管(図示せず)から便器1に向けて水道水(以下、洗浄水)が最初に便器1に入る部位である。
【0048】
同じく図4に示されている便器本体10のうち、給水管接続部5の下方に位置しかつ横引き排水管4との接続部を排水管接続部6という。排水管接続部6は、便器本体10において、便が洗浄水によって流される終点である。
【0049】
よって、トイレ使用者によりフラッシュバルブ3が作動されることにより、給水管2から便器本体10に供給される洗浄水は、便器本体10における洗浄水の流れの始点である給水管接続部5を経由する。そして、便器本体10に入り、次に便器本体10を通過し、最後に便器本体10における洗浄水の流れの終点である排水管接続部6に至る。その後は、横引き排水管4に至り、横引き排水管4の先にある図示しない汚水管を経由して、最終的には屎尿処理場に案内されて処理される。
【0050】
次に、図1、図4〜図6を参照して、便器本体10の各構成部分を説明する。
便器本体10は、縦断面形状が先細りの船首の如き外形状をしている。そして、便器本体10の外形状を形成する外郭部12と、既述した、ボール部11と、給水管接続部5と、排水管接続部6とを有する。外郭部12によりボール部11、給水管接続部5、排水管接続部6は囲繞される。
【0051】
図4、図5に示されているようにボール部11は、椀形状をしている。そして、前記外郭部12の上縁にあたるリム13が便器本体10の最上位に位置する。また、ボール部11の底面における後方寄り中央部分には、ボール部11から横引き排水管4に向けて便を排出する便排出孔111が形成されている(図1、図4参照)。便排出孔111は、図6に示されているように、平面で見ると四隅が丸くされた矩形状をしている。但し、便排出孔111は、図6の形状に限定されるものではない。円形、楕円形でもよい。
【0052】
リム13は、図6に示されているように、その平面形状が卵形のリング形状をしている。当該リング形状をしたリム13が、便器本体10の開口を画する。また、リム13は、中空にされており、その内部を洗浄水が流れる。
【0053】
そして、リム13は、図4及び図5からわかるように、その横断面の形状が矩形である。ただし、当該横断面の形状は、リムの部位によって若干異なる。つまり、トイレ使用者の臀部と接触する辺りの後部から前部に掛けてリム13の横断面形状は、漸次変化する。
【0054】
具体的には便器の後方寄り箇所にあるリム13の横断面は相対的に大きく、反対に便器の前方寄り箇所にあるリム13の横断面は相対的に小さい。そして、両者の間の部位の断面積は後方から前方に行くほど次第に小さくなるようにされている。リム13には、下方向きに多数の小孔131が形成されている(図4、図6参照)。また、便器の後方寄り箇所から便器の前方寄り箇所にかけて、リム13の横断面形状の横幅が徐々に狭くなる。
【0055】
リム13の横断面が場所により相違するようにしてあるのは、リム13のうち給水管接続部5から近い箇所(後部箇所)にあるリム13の小孔131から噴出する洗浄水の総量と、給水管接続部5から遠い箇所(前方箇所)にある小孔131から噴出する洗浄水の総量とを同じにするためである。
【0056】
つまり、給水管接続部5から近い箇所にあるリム13を流れる洗浄水はリム13の横断面が大きいのでその速度が相対的にゆっくりであるのに対し、給水管接続部5から遠い箇所にあるリム13を流れる洗浄水はリム13の横断面が小さいのでその速度が相対的に速くなる。
【0057】
しかし、給水管接続部5に近い箇所にあるリム13の小穴131ほど早くから洗浄水を吹き出すのに対し、給水管接続部5から遠い箇所にあるリム13の小穴131ほど洗浄水を吹き出すのが遅い。よって、給水管接続部5から近い箇所にあるリム13の小孔131から噴出する洗浄水の総量と、給水管接続部5から遠い箇所にある小孔131から噴出する洗浄水の総量との差異が少なくなる。
なお、図4、図5からわかるように、リム13は、給水管接続部5と高さ位置が同じで面一に形成されている。
【0058】
さらに、図6からわかるように、給水管接続部5とリム13とは、リム13の後端部に形成されたリム接続部133を介してつながっている。したがって、給水管2から送られてきた洗浄水は、給水管接続部5及びリム接続部133を経由してリム13に流入する。
【0059】
そして、リム13内を流れる洗浄水は、小孔131から吹き出る。小孔131から吹き出た洗浄水は、ボール部11の内表面を伝い、ボール部11の底面に位置する既述した便排出孔111(図1、図4、図6参照)に向かう。当該便排出孔111に向かう洗浄水は、溜水として徐々に便器の底部に貯水されてゆく。溜水として貯まるまでの間、リム13の小孔131から出た洗浄水は、ボール部11の表面洗浄を行う。当該洗浄のことをリム洗浄という。ただし、リム13の小孔131から溜水として供給される洗浄水は、後述する溜水用タンク52R(図1参照)から供給される水量より少なく補給用である。
【0060】
図4に示されているように、便排出孔111は、便排出路141を介して、排水接続アダプタ41とつながっている。便排出路141を設けることにより、便器内に排水トラップが形成される。便排出路141は、給水管接続部5の直下に位置し、図4で示す縦断面で見た形状で上側が凸状となるように湾曲している。当該凸の程度は、便器1がサイホン現象を実現するに十分な封水深h(図4参照)を確保できる程度である。
【0061】
詳しくは、便排出路141は、便排出孔111となる開口部を起点にそこから後方側が高くなるように(図4では左肩上がりに)斜めに上昇するトラップ上昇管141aと、トラップ上昇管141aと連続しかつトラップ上昇管の上昇する角度よりも急な角度で降下するトラップ下降管141bとを有する。
【0062】
トラップ上昇管141aは円筒管形状をしている。これに対し、トラップ下降管141bは、トラップ上昇管141aに連続する曲管形状をしている。そして、図4の縦断面で見る限り、トラップ下降管141bは、次に述べる外角部141b1及び内角部141b2を有する(図4参照)。
【0063】
外角部141b1は、内角部141b2よりも上部に位置し、排水管接続部6から相対的に遠方にある。これに対し、内角部141b2は、外角部141b1の直下に位置し、前記排水管接続部6から相対的に近辺に位置する。
【0064】
また、トラップ下降管141bは、図4に示す限りにおいて、外角部141b1から先端(後側の端)までが湾曲形状をしている。そして、内角部141b2から同先端までがLの字を90°反時計回りに回転させて倒した如き反転L字形をしている。
このようなトラップ下降管141bは、その先端部が前記排水管接続部6とされている。
【0065】
そして、溜水時に、内角部141b2の位置で溜水が満水になるように、すなわち、規定された封水深hとなるように(図4参照)、ボール部11の容積・トラップ上昇管141aの容積や設置角度・給水管2から便器本体10に供給される水量・リム13の小孔131から出る水量などが予め設定されている。満水時の溜水の面を溜水面という。また満水になるのに必要な溜水量も予め定められている。
【0066】
このようなトラップ上昇管141a及びトラップ下降管141bからなる便排出路141が既述した排水トラップである。このため便排出路141の入り口をトラップ入り口という。さらに、内角部141b2のことを、溜水が当該箇所で満水になるという意味でトラップ頂部ということにする。
【0067】
ボール部11のうちトラップ入り口と対向する部位には、フラッシュバルブ3を操作したときに、ジェット噴流の出るジェット噴流孔11jが形成されている(図4参照)。ジェット噴流孔11jについては、次に述べる給水管接続部5の説明をしてから述べることにする。
【0068】
給水管接続部5は、図1、図4〜図6からわかるように、排水トラップである便排出路141の上部に隣接して位置する水槽体である。給水管接続部5は、図1からわかるように、給水管2から洗浄水の供給を最初に受ける箱状の受水槽部50と、受水槽部50の前方で、枝分かれし給水管2からの洗浄水が受水槽部50を経由して流れる一対の腕部52L、52Rを有する。すなわち、全体形状が、概略、L字形をした箱体を一対、若干の間隔をおいて並列させそれらの上にトレイをその開口が上を向いた状態で乗せた如き形状をしている。受水槽部50は、その前面壁の一部を介して、リム13とつながっている。
【0069】
さらに、給水管接続部5は、図4に示されているように、前記トレーにあたる部分の底面の一部が中央で盛り上がった容器形状をしている。さらにまた、図5に示す横断面図では、給水管接続部5は、底面の一部が下方及び内部に盛り上がった形状をしている。当該底面の盛り上がりは、便排出路141が、給水管接続部5の底面と一体形成されていることに起因する。
【0070】
このような給水管接続部5は、換言すると、給水管2から水を受ける前記トレイに相当する受水槽部50と(図1、図4〜図6参照)、受水槽部50の左右両側からそれぞれ前方に向けて延びる前記一対のL字形をした箱体に相当する一対の腕部52L、52Rとからなる。
受水槽部50は、その前面壁の一部を介して、リム13とつながっている。
【0071】
前記腕部52L、52Rのうち、図6における上方(トイレ使用者が便座に着座したときの左側)に位置する腕部52Lは、給水管接続部5及び便排出孔111を結び、給水管接続部5から便排出孔111に洗浄水を案内する流路152Lを有する。また、同図における下方(トイレ使用者が便座に着座したときの右側)に位置する腕部52Rは、洗浄水を溜水として貯留するタンクとして機能する(以下、腕部52Rのことを溜水用タンク52Rと呼称する。)。
【0072】
流路152Lは、便排出孔111の左側を前方へ向けてほぼ直進状に降下した後(図4〜6参照)、便排出孔111を前方へ越えた辺りにおいて、右回りで後方に急カーブを描いて曲がっている。そして、その状態で、流路152Lは、便排出孔111の前方縁111aに形成されている前記ジェット噴流孔11j(図4、図6参照)と、先端が接続されている。
【0073】
ジェット噴流孔11jは、図4に示されているように、流路152Lの口径と比較して、かなり小さな径の孔である(図4参照)。このため、大径な流路152Lが小径なジェット噴流孔11jと接続可能なように、流路152Lは、その径が漸次小さくなるように形成されている。すなわち、流路152Lは、これが受水槽部50と接続されている基端側からジェット噴流孔11jと接続されている先端側に掛けて、徐々にその径が小さくなるように形成されている(図6参照)。
【0074】
よって、既述のように、フラッシュバルブ3が給水管2の水圧をそのまま利用するものであることと、流路152Lを流下する洗浄水に掛かる重力の影響、及びジェット噴流孔11jが流路152Lと比較してかなり小径であることとが相俟って、流路152Lを流下する洗浄水は、ジェット噴流孔11jから便排出孔111に向けて、極めて勢いのあるジェット水流として噴出する。この状態をジェット洗浄が実行されている状態という。ジェット洗浄を実行することで便を確実に流す。
【0075】
次に図5及び図6を参照して、溜水用タンク52Rについて述べる。
溜水用タンク52Rは、その前端部にボール内面に開口する貫通路(貫通孔)521Rを有する。溜水用タンク52Rに貯留されている洗浄水は、溜水用タンク52Rに洗浄水がある間貫通路521Rを経由してボール部11内に流出する。その後、当該流出した洗浄水は、ボール部11の表面を伝って、ボール部11の底面に位置する便排出孔111(図4、図6参照)に向かう。そして、最後は、溜水として、ボール部11の底部に溜まる。溜水用タンク52Rに貯留されている洗浄水は、溜水用タンク52Rに貯留されている間は、貫通路521Rを経由してボール部11内に流出する。
【0076】
さらに、給水管接続部5は、図6からわかるように、平面形状が矩形形状のリム接続部133を介して、リム13とつながって一体化する。
【0077】
リム接続部133は、リング状のリム13内の中空通路と給水管接続部5内の受水槽部50とを接続する接続経路を形成する。給水管接続部5の一壁である前面壁5fの一部5fpと(図6参照)、前面壁5fから前方へ向けて、相互に他方に対して一定の間隔を左右方向に開けて平行に延びる一対の突出壁133F、133Rと、一対の突出壁133L、133Rの上下方向において蓋をする天井壁(図示せず)及びベース壁133Bを有する(図2、図6参照)。そして、これら4壁が、リム13の後端と一体に形成されることで、既述のように、給水管接続部5と、リム13とが、リム接続部133を介して一体化する。
【0078】
給水管接続部5の一壁である前面壁5fの一部5fpは、給水管接続部5とリム13とを区分けする壁でもある。このため、以降前面壁5fの一部5fpを隔壁5fpと呼称する。
【0079】
隔壁5fpは、既述のように、リム接続部133を介してリム13と接続される。そしてリム13が、リング形状であるため、リム13と交差するリム接続部133は、リム13と二股状態で通ずるようになる(図1、図6参照)。
【0080】
また、隔壁5fpには、バルブ15が貫通状態で取り付けられている。バルブ15を隔壁5fpに通すため、隔壁5fpには、貫通孔212aが形成されている(図7参照)。貫通孔212aが隔壁5fpに設置されることで、水槽体である給水管接続部5とリム13とが、連通するようになる。よって貫通孔211aは連通孔ともいえる。貫通孔212aには、両端開口でゴム製の筒体であるブッシュ7が内嵌されている。
【0081】
ブッシュ7は、貫通孔212aに内嵌された状態では軸方向に移動できない。これは、ブッシュ7の軸方向における両端にそれぞれ張り出しフランジ71F、71Rが形成され、張り出しフランジ71F、71Rの間隔が、隔壁5fpの肉厚と同じであり、貫通孔212aにブッシュ7が内嵌されると、当該ブッシュ7は、軸方向に身動きが取れなくなるからである。張り出しフランジ71F、71Rのうち、前側に位置するものを符号71Fで示し、後側に位置するものを符号71Rで示す。
【0082】
張り出しフランジ71F、71Rは、円板形状である。但し、ブッシュ7を貫通孔212aに後方から挿入し易いように、前側に位置する張り出しフランジ71Fの円板形状の前方の面は、周辺部に対して中央部が丸く突き出す、断面円弧状の曲面を形成している。
そして、貫通孔212aにブッシュ7が嵌められた状態で、前記バルブ15をブッシュ7の通し孔7hに挿入する。これにより、ブッシュ7が貫通孔212aとバルブ15との間に介在されるようになる。
【0083】
ブッシュ7が貫通孔212aとバルブ15との間に介在されることにより、貫通孔212aとバルブ15との間の隙間が埋まる。また、バルブ15は、貫通孔212aとの間にブッシュ7を介在したことで、ブッシュ7との間に生じる摩擦抵抗により軸周りの回転が抑制される。
【0084】
次にバルブ15について詳述する。バルブ15は、3つの構成要件からなる。すなわち、図3及び図7に示されているように、円筒形状をした外ケース51と、外ケース51の内部において軸方向に摺動自在に嵌合され、かつ一端が開口されて他端が閉塞された内ケース53と、内ケース53及び外ケース51の両方に介在される弾性体としての圧縮コイルばね55とからなる。バルブ15が組み立てられたとき、これらはいずれも同一軸線上に位置する。
【0085】
外ケース51は、これが前記ブッシュ7にしまり嵌め状態で内嵌されるように、外ケース51の外径とブッシュ7の通し孔7hの内径とが設定されている。つまり、外ケース51の外径の方が、ブッシュ7の通し孔7hの内径よりもわずかに大きい(図7参照)。このため、外ケース51の外表面と、ブッシュ7の通し孔7h内表面との間で生じる接触圧が高くなる。
【0086】
また、外ケース51は、その外周面でかつ軸方向におけるほぼ中央に張り出しフランジ511を有する(図2、図3及び図7参照)。張り出しフランジ511は、バルブ15を隔壁5fpに設置したときに、外ケース51の軸方向における位置決めを行うためのものである。張り出しフランジ511は、図7に示されているように、その外径が、ブッシュ
7の張り出しフランジ71Rの外径よりもわずかに小さい。張り出しフランジ511を外ケース51に形成したことにより、給水管2からの洗浄水の供給により流水がバルブ15に至っても、バルブ15が取着されている隔壁5fpからのバルブ15の移動を抑制する。
【0087】
さらに、外ケース51は、その両端面中央にそれぞれ大きさの相違する孔が形成されている(図2、図3及び図7参照)。すなわち、外ケース51は、前端面51fに形成された前端貫通孔513fと、後端面51rに形成された後端貫通孔513rとを有するが、前端貫通孔513fよりも後端貫通孔513rの方が小さい。
【0088】
当該貫通孔513f、513rのうち、後端貫通孔513rは、フラッシュバルブ3の操作により、給水管2から供給されて、水槽体である前記給水管接続部5に引き込まれる洗浄水の一部を外ケース51に導入するための孔である。また、前端貫通孔513fは、バルブ15から洗浄水を排出し、排出した洗浄水をリム13内に導入するための孔である。よって、貫通孔513fは、外ケース51及び内ケース53に入った洗浄水を排出するための排出孔513fであるとともに、リムに洗浄水を導入する導入孔といえる。
【0089】
さらに、外ケース51の外周壁には、前記張り出しフランジ511を境にそれよりも後方に位置する後方側開口514と(図2及び図7参照)、同じく外周壁に形成されて前方に位置する前方側開口516とが軸方向に一定の距離をおいて複数形成されている(この実施例では、後方側開口514及び前方側開口516が、それぞれ1つずつ合計2個ずつ形成されている)。換言すると、外ケース51には、その軸方向に一定の距離をおいて、後方側開口514と前方側開口516とが、外周壁にそれぞれ複数形成されている。後方側開口514と前方側開口516とをそれぞれ第1の開口及び第2の開口という。
【0090】
前方側開口516は、ブッシュ7の長さ相当分だけ、張り出しフランジ511から軸方向前方に離隔された箇所に設けられている。
後方側開口514は、張り出しフランジ511の後方近傍に形成され、給水管接続部5に引き込まれた洗浄水の一部を内ケース53に導入するための開口である。
【0091】
また、前方側開口516は、内ケース53に入った洗浄水を排出し、リム13内に導入するための開口である。いずれの開口514、516も外ケース51の円周方向に等間隔で形成されている。なお、後方側開口514の方が前方側開口516よりも大径である。
【0092】
このような、外ケース51内に次に述べる内ケース53を収納できる構造になっているが、説明を省略する。
【0093】
内ケース53は、既述のように前方端(一端)が開口され、後方端(他端)が閉塞された、一端開口他端閉塞な円筒状ケースである。そして、内ケース53がスムーズに外ケース51内を摺動できるように、外ケース51の内径及び内ケース53の外径が設定されている。すなわち外ケース51の内径の方が内ケース53の外径よりもわずかに大きく設定されている。
【0094】
また、内ケース53の長さ寸法は、外ケース51のそれのほぼ2/3である(図7参照)。内ケース53にも外ケース51と同様、外周壁に開口534が形成されている。開口534は内ケース53の軸方向におけるほぼ中央部において円周方向に等間隔で複数形成されている(この実施例では、開口534が1つずつ合計2個形成されている。例えば、図7(a)では、内ケース53の断面図の上下に2個明示されている)。外ケース51の場合は、外周壁に形成されている開口は、符号514、516で示す2種類であったが、内ケース53の場合は、開口534が外周壁に形成されているだけである。
【0095】
さらに、内ケース53は外ケース51に対して軸方向には移動可能であっても、軸回りには回転できないようになっている。そのために例えば、外ケース51の内面に軸方向に延びる金属製の棒体であるキー(図示せず)を形成し、このキーに摺動自在に嵌合するキー溝(図示せず)を内ケース53の外面に設けること(又はその逆)が考えられる。
【0096】
キー溝にキーを嵌合することにより、内ケース53と外ケース51とは軸方向には動けても軸周りの動きが抑制された状態になる。そして、内ケース53を外ケース51に組み合わせたときに、外ケースの開口514と内ケースの開口534とが上下方向で対面関係になるように、両開口514、534の位置が決められている。その結果、給水管接続部5からの洗浄水の流れが、バルブ15の外と内との間で生じる(図7の矢印参照)。バルブ15に対する洗浄水の流れに関しては順次説明する。
【0097】
内ケース53が外ケース51内を軸方向前方に移動すると、内ケース53の閉塞端53rと外ケース51の後端面51rとの間には隙間Sができる(図7(b)参照)。この隙間Sは、貫通孔513r経由で外ケース51に入った洗浄水(図7(b)、(c)の矢印参照)により、既述した圧縮コイルばね55(図3及び図7参照)が、その弾性に抗して軸方向に圧縮されて縮小し、当該圧縮コイルばね55の縮小により、内ケース53が、外ケース51内を前方に移動した結果できる空間である。内ケース53が外ケース51を前方に最大限移動したときにできる隙間Sが、最も大きい。
【0098】
次に圧縮コイルばね55について述べる。圧縮コイルばね55は、これに負荷が掛からない状態(図7(a)参照)、つまり、フラッシュバルブ3が作動しておらず、よって、洗浄水便器1に供給されていない状態で、内ケース53に2/3ほど収納される長さを有する。当該負荷の掛かっていない状態の圧縮コイルばね55と共に内ケース53を外ケース51に入れたときに、内ケース53が、外ケース51の前端から最も後方に離れた状態となる。
【0099】
このとき、外ケース51の前記一端(前方の端)内面に圧縮コイルばね55の前端が当接する(図7(a)参照)。そして、外ケース51の他端側に位置する内ケース53の他端(後方の端)内面に圧縮コイルばね55の後端が当接する。
バルブ15がこの状態にあるときが、圧縮コイルばね55に水圧が掛かっていないときである。そのときの内ケース53の外ケース51における位置を初期位置ということにする。
【0100】
そして、排水ボタンや排水ハンドルをトイレ使用者が操作することで、フラッシュバルブ3が作動し、これにより、水道本管から便器1に向けて、洗浄水が給水管接続部5に一定量又は一定時間供給される。すると、圧縮コイルばね55は、外ケース51の後端面51rに形成された後端貫通孔513rから外ケース51内に流入した洗浄水の圧力により、内ケース53が、外ケース51内を前方に移動することに伴って、前記水圧に抗しながら水道本管から便器1に向けての水の供給が停止するまで圧縮される(図7(b)参照)。
【0101】
さらに、水量の増大に伴って内ケース53が水圧により一段と進行すると、内ケース53の先端が、やがて外ケース51の前端面51fに当接する(図7(c)参照)。これにより、内ケース53はそれ以上の進行ができなくなる。当該状態に内ケース53がある場合を内ケース53が停止位置にあるという。
【0102】
当該停止位置では洗浄水の流れは抑制される。これは内・外ケース51、53に形成された孔513r、514,534、516、513fを通じた洗浄水の流通が、いずれの
孔においてもないからである。このため、バルブ15に洗浄水が流入することはない。よって、給水管2から受水槽部50に流れてくる洗浄水のうち、バルブ15を経由してリム13に流れていた洗浄水は、受水槽部50の左右両側からそれぞれ前方に向けて延びる一方の腕部52Lの流路152L又は、他方の腕部52Rである溜水用タンク52Rに向けてのみ流れるようになる。
【0103】
このように、バルブ15への洗浄水の流入の有無により、リム13に洗浄水が流れるのか、又は流路152L及び溜水用タンク52Rに洗浄水が流れるのかが決まる。このためバルブ15のことを、洗浄水の流れ路を切り替えるための手段、すなわち水路切り替え手段と呼称する。また、バルブ15の作動により、リム13、又は、前記流路152L及び溜水用タンク52Rにおけるそれぞれの水供給量が制御される。よって、バルブ15は、水供給量を制御する制御手段ともいえる。
【0104】
要するにバルブ15は、外ケース51の後端に形成された貫通孔513r経由で外ケース51に入った洗浄水の圧力を受けて移動する内ケース53の、外ケース51における移動距離に応じて、リム13に向けて洗浄水を流す第1の水路、又は前記流路152L及び溜水用タンク52Rに向けて洗浄水を流す第2の水路のいずれかに水路を切り替える。
【0105】
バルブ15の作動状態に応じて、リム13、又は流路152L及び溜水用タンク52Rにおけるそれぞれの水供給量が制御される。ここで、第1の水路とは、バルブ15から出た洗浄水をリム13に向けて案内する水路であればよい。そして、第2の水路とは、バルブ15から出た洗浄水を流路152L及び溜水用タンク52Rに向けて案内する水路であればよく、いずれもその形態は問わない。
【0106】
なお、図7(a)、(b)の状態に内ケース53がある場合は、バルブ15に洗浄水が流入して、バルブ15内で洗浄水の流れを生じる。このため、図7(c)の停止位置に対し、図7(a)、(b)の状態に内ケース53がある場合を、内ケース53が流水位置にあるということにする。内ケース53が流水位置にあるときリム洗浄が行われる。
【0107】
そして、図7(c)の停止位置に内ケース53があると、外ケース51の外周壁に形成された開口514及び516が、内ケース53の外周壁のうち、開口534の形成されていない箇所である非開口形成部536により閉塞され、リム洗浄が停止する。リム洗浄が停止した状態ではバルブ15は水圧を受けなくなる。これは既述のように、内・外ケース51、53に形成された孔513r、514、534、516、513fを通じた洗浄水の流通が、いずれの孔においてもないからである。このため、バルブ15に洗浄水が流入することが抑制されるので、バルブ15は、その圧縮コイルばね55の弾撥力により、図7(c)の状態から図7(a)の状態に戻る。このとき、内ケース53の閉塞端53rと外ケース51の後端面51rとの間の隙間Sに流入していた洗浄水は、圧縮コイルばね55の弾撥力により、内ケース53が外ケース51内を軸方向後方に移動することで隙間Sが小さくなるため、外ケース51の後端面51rに形成されていた後端貫通孔513r経由で、バルブ15の外に排出される。この状態、つまり図7(a)の状態は、次にトイレ使用者が便器1に洗浄水を流すまでの間継続される。よって、その間は、内ケース53に水圧が掛かるのを抑制された状態を維持する。
【0108】
ところで、図7(a)の状態に戻ると、リム13には、その小孔131から放出し切れなかった残り水がある程度存在するようになる。当該残り水は、小孔131が多数あっても洗浄水の表面張力により流出しない。
当該残り水の利用については実施例2で述べる。
【0109】
このように、内ケース53が停止位置にあるときに、外ケース51の開口514及び5
16が、内ケース53の非開口形成部536により閉塞されるよう、外ケース51及び内ケース53の長さ寸法、外ケース51の開口514及び516の大きさや、形成箇所、非開口形成部536の大きさや形成箇所が設定されている。
【0110】
また、前記の如く内ケース53に前記水圧が掛からなくなると、圧縮コイルばね55は、内ケース53を図7(a)の初期位置にまで押しやって、もとの長さに戻る弾撥力を有する。このため初期位置にある外ケース51は、その開口514及び516が、内ケース53の非開口形成部536により閉塞されなくなるので開口状態になる(図7(a)参照)。
【0111】
このように、前記流水位置(図7(a)、(b)参照)に内ケース53があるときに、バルブ15に洗浄水が流入できるように、また、停止位置(図7(c)参照)に内ケース53があるときに、バルブ15に洗浄水が流入するのを阻止できるように、外ケース51及び内ケース53の長さ寸法、外ケース51の開口514及び516の大きさや形成箇所、内ケース53の外周壁のうち開口534が形成されていない非開口形成部536の大きさや形成箇所が設定されている。
【0112】
さらに、初期位置〜停止位置に至るまでの間に給水管接続部5からリム13に流れる水量及び溜水用タンク52Rに溜水用として貯留される水量も予め定められている。それらの量は、総流水量に予め含まれている量であるから、便器の底部に溜水するのに必要以上に洗浄水を消費することが抑制される。
【0113】
また、図7(a)、(b)の状態に内ケース53がある場合において、リム洗浄よりもジェット洗浄の方が、流れる水量が大きいのはいうまでもない。リム洗浄は、ボール部11の表面洗浄であるのに対し、ジェット洗浄は便を便器から排出することが目的の洗浄方式だからである。
【0114】
次に図8を参照して作用効果を説明する。フラッシュバルブ3に設けられている前記排水ボタンや排水ハンドル等の操作手段を操作すると、給水管2から便器1に洗浄水を一定時間流した後、自動的に止水する。便器1に洗浄水を流した結果、流水により便器1が洗浄されると共に溜水もされる。当該操作のことを洗浄操作という。
【0115】
洗浄操作には次に示す複数のステップがある。当該複数のステップのうち、ステップS1〜S5の実行に併せて、リム洗浄S123、ジェット洗浄S234及び溜水用タンク52Rからの補給水供給S45の各ステップがそれぞれ実行される。
【0116】
S1では、前記排水ボタンや排水ハンドル等の操作手段を操作することで、給水管2から便器1に洗浄水を流す。つまりS1は、便器1への流水が開始されるステップである。S1の後、しばらくして便器内ではサイホン現象を生じ、便器1の溜水量は一時的に急減し、溜水面が急激に低下して排水を生じる。
【0117】
S1が実行されると、水槽体である給水管接続部5に洗浄水が溜まり、そこでの貯水量に応じてバルブ15が開く(図7(a)参照)。バルブ15が開いている間、リム13に洗浄水が供給され、リム13に設けられた多数の小孔131から洗浄水が出て、リム洗浄が実施される(図8のリム洗浄S123参照)。S1はリム洗浄の開始時期をも示す。
【0118】
なお、リム13は、既述のように、リム接続部133を介して、給水管接続部5とつながっている(図2、6参照)。また、リム13はリング形状をしている。よって、給水管接続部5に入った洗浄水は、リム接続部133で二股状に分岐してリム13に供給される。このため、リム13に入った洗浄水は、左右両側からリム13に洗浄水を供給する。
【0119】
そして、給水管接続部5への洗浄水の供給量が高まると、ステップS2ではバルブ15の閉止を開始する(図7(b)、参照)。ステップS2をバルブ閉止開始のステップという。またステップS2のバルブ15の閉止開始時期よりも幾分早い時期に、ジェット洗浄が開始される(図8のジェット洗浄S234参照)。
【0120】
その後、給水管接続部5への洗浄水の供給量がさらに高まると、次のステップS3では、バルブ15の閉止を完了する(図7(c)参照)。よって、S3をバルブ閉止完了のステップという。S3のバルブ閉止完了は、リム洗浄の終了を意味する(図8のリム洗浄S123参照)。バルブ15が完全に閉じるため、リム13への洗浄水の供給が止まり、ボール表面に向けて洗浄用の洗浄水が吐出しなくなるからである。つまり、S3のバルブ閉止完了に同期してリム洗浄が終了する。
【0121】
また、上記S2とS3との間は、リム洗浄S123とジェット洗浄S234とが共に実行されている期間である。
【0122】
リム洗浄が終了してもまだジェット洗浄S234は継続されている(S123及びS234参照)。すなわち、リム洗浄が終了後、しばらくはジェット洗浄S234だけが単独で実行され、その後、しばらくしてからジェット洗浄S234も終了する。リム洗浄もジェット洗浄もいずれも終了することを流水完了といいこれをステップS4という。
【0123】
流水完了よりも幾分前に、つまりジェット洗浄の終了間際にこれと同期して、溜水用タンク52Rに貯留されていた洗浄水が、溜水用としてリム13からボール部11に供給される洗浄水の補給用の洗浄水(補給水)として機能するために供給される(S45の"タ
ンクから補給水"参照)。
【0124】
その後、しばらくすると溜水用タンク52Rに貯留されていた洗浄水もなくなる。これを補給水の止水といいステップS5で実行される。補給水の供給停止は、溜水が満水になったことを意味する。つまり、ステップS4の流水完了よりも幾分手前の段階から、溜水用としてリム13からボール部11に供給される洗浄水を補給するための補給水として機能するために、溜水用タンク52Rに貯留されていた洗浄水が貫通路521Rから供給される。そして、当該補給水の供給は、ステップS5の補給水止水まで継続される。
【0125】
実施例1の便器1にあっては、サイホン現象を起こす上にジェット噴流を生じるため、便器に流す洗浄水に勢いがある。よって、便器1に使用される水量は少ない洗浄水でも便をきれいに流し去ることができる。したがって、それだけでも節水はできる。
【0126】
これに加え、本発明の便器1では、給水管2により便器1に供給される洗浄水のうち、溜水用の水量をバルブ15の制御によって、及び溜水用タンク52Rの貯水量によって確保できる。当該溜水量は予め決まった量であるので、溜水をするのに無駄を抑制する。このため、これによっても節水に寄与する。
【0127】
さらには、バルブ15によって、リム13に流れる水量に制限が掛かる。このため、便器に一定時間洗浄水を出した後、洗浄水が止まるまでの期間において、リム経由の洗浄水が垂れ流し状態にならない。これがもっとも節水に寄与する。
【実施例2】
【0128】
図9を参照して実施例2について説明する。
実施例2が実施例1と相違する点は、リム洗浄を実施した場合でも、リム13には、ある程度の量の残り洗浄水が存在するので、これを無駄にせずに溜水として活用するという
点にある。それゆえ、その場合には、実施例1の溜水用タンク52Rの貫通路521Rを不要にすることが可能である。
【0129】
図9が図8と相違する点は、溜水するためのステップS5以降である。ステップS1からS4までのステップは、実施例1の場合と同じである。また、ステップS1からS4までの間に生じるリム洗浄及びジェット洗浄がどの時点で実行されるかについても同じである。また、上記のように、溜水用タンク52Rの貫通路521Rを不要にできるので、ステップS45はない。よって、実施例2では、これらの説明を省略し、ステップS5以降について説明する。但し、説明の便宜上ステップS1〜S4についても説明する場合がある。
【0130】
ステップS5からS8は、リム13に設けた多数の小孔131からリム13内に残存している洗浄水を溜水として使用するためのステップである。
ステップS5ではバルブ15を開放する(図7(a)参照)。ここでステップS5の前のステップS4では、リム洗浄もジェット洗浄も終了する流水完了がなされる。このため、給水管2から新たに給水がなされなければ、バルブ15は、図7(c)の状態から図7(a)の開放状態になる。
【0131】
また、図7(a)の状態にバルブ15があって給水管2から洗浄水が供給されていないとき、リム13内には、空気の流通を生じる。一方、図7(c)の状態にバルブ15がある場合、リム13内の前記残り水は、表面張力により小孔131からの流出が阻害されている。よって、リム13からは溜水としての洗浄水がボール底面に補給されない。
【0132】
これは、リム洗浄を行うステップS123が、停止状態にあるからである。当該停止状態をトリガーとして、図7(a)の状態にバルブ15がなることにより、リム13内に空気の流通を生じるようになる(ステップS6参照)。このため、小孔131からの流出が表面張力により阻害されることが破れる。このように、給水管2から便器1に水を流した後、バルブ15の作動状態によっては、リム13内に空気の流通を生じる。このため、バルブ15を空気流通手段ということにする。
【0133】
このように小孔131からの洗浄水の流出が表面張力により阻害されなくなった結果、リム13の小孔131から残り水が流出し、ステップS7で溜水としてボール底面に貯留される。ステップS5のバルブ開放の終了直後からステップS7の終了までの間において、リム13より補給水が供給される(S67参照)。
【0134】
前記残り水が供給されることによっても、封水深hを確保できるよう、リム13の容積や当該容積に因る残り水の量などが予め定められている。
【0135】
ステップS7の補給水流入後、リム13に残っていた洗浄水もなくなる。つまり補給水の供給が停止する。これを補給水止水といいステップS8で実行される。ステップS8の補給水止水は、溜水が満水になったことを意味する。
【0136】
実施例2に係る便器にあっても、実施例1と同様、給水管2により便器1に供給される洗浄水のうち、溜水用の水量をバルブ15の制御によりリム13内に残存している洗浄水を吐出ことで確保することが可能である。当該溜水量は予め決まった量であるので、溜水をするのに無駄を抑制することができる。このため、これによっても節水に寄与する。
【0137】
さらには、バルブ15によって、リム13に流れる水量に制限が掛かる。このため、便器に一定時間洗浄水を出した後、洗浄水が止まるまでの期間において、リム経由の洗浄水が垂れ流し状態になりにくい。これがもっとも節水に寄与する。
【0138】
なお、実施例2にあっては、溜水用タンク52Rに貯水されていた洗浄水をジェット洗浄用の水として適用してもよい。その場合、溜水用タンク52Rを流路152Lを有する腕部52Lのような形態にする。
【実施例3】
【0139】
図10〜図17を参照して、実施例3について説明する。
実施例3が、実施例1及び2と相違する点は、バルブの形態にある。よって、既述した実施例と同一箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0140】
実施例3に係るバルブ15Cは、給水管2のうち給水管2が給水管接続部5と接続する部分に設けられたバルブ作動管31C(図10、図11、図16、図17参照)と、バルブ作動管31Cに設けられ、貫通孔212aと同軸方向に延びる軸部としてのスクリュー軸33(図12〜図17参照)と、スクリュー軸33に対して前後動する羽根車35(図12〜17参照)と、羽根車35が前方(一方)に移動したときに当該羽根車35を後方(他方)に押しやる押圧手段としての円錐コイルばね37(図12〜図17参照)と、円錐コイルばね37のばね力を受けるばね受け部38(図12〜図17参照)と、羽根車35及びばね受け部38との間に介在されるワッシャー39とを有する(図15〜図17参照)。
【0141】
バルブ作動管31C(図10、図11、図16、図17参照)は、給水管2の下端開口に位置する中空の箱状体である。そして、給水管2の内表面に沿うように配置されている。そして、バルブ作動管31Cの下方部は、給水管2の下端開口(図17、図18参照)から給水管接続部5内に突出する。また、バルブ作動管31Cは、給水管2の下端開口の拡開度に合わせて、その長手方向における途中で屈曲されている(図16、図17参照)。
【0142】
さらにバルブ作動管31Cは、給水管接続部5に向けて給水管2を流下してくる洗浄水の一部を利用してその水圧でバルブ15Cを作動させる。それゆえ、バルブ作動管31C内を洗浄水が流通できるように、バルブ作動管31Cは、その上下部が開口する。当該開口のうち上側の開口(以下、上側開口)311は上方に向けられ、下側の開口(以下、下側開口)313は、貫通孔212aの方向に向けられている(図16、図17参照)。
【0143】
スクリュー軸33は、バルブ作動管31Cのうち下側開口313と対向する壁面に植設され、貫通孔212aに向けて延びている。その長さは、スクリュー軸33をバルブ作動管31Cに取り付けたときに、貫通孔212aの中程にまで先端が届く程度である(図1図6,図17参照)。スクリュー軸153の後方側略3分の1は、ねじ切りのされてない非ねじ切り部331であり、残り3分の2がねじ切りのされたスクリュー部333である(図16、図17参照)。
【0144】
スクリュー部333は、これを後方から見た場合において、羽根車35が反時計回りに回転されると前方に進むようにねじ切りがされている。言い換えれば、スクリュー部333は、羽根車35が時計回りに回転されると後方に進むようにねじ切りがされている(図12〜図17参照)。
【0145】
スクリュー軸33の先端には、円錐コイルばね37のスクリュー軸33からの抜けを防止するストッパー335が設けられている(図12参照)。ストッパー335は、スクリュー軸33に対して着脱自在となるよう螺孔335aが形成されている(図15参照)。螺孔335aは、ストッパー335に貫通している。
このようなスクリュー軸33と螺合し、スクリュー軸33上を前後に移動するのが次に
述べる羽根車35である。
【0146】
羽根車35は、図15に示されているように、円盤部351と、円盤部351の中心部に位置し、円盤部351の後方及び前方へ突出する両端開口の筒体353と、円盤部351の後面に形成され、後方筒体353の周囲に位置する羽根部355とを有する。円盤部351と、筒体353と、羽根部355とは一体成形されている。
【0147】
円盤部351は、その直径が円錐コイルばね37の最大径と同じか幾分大きめに形成されている。そして、図16からわかるように、円盤部351の直径は、貫通孔212aの内径よりもわずかに小さい。
【0148】
円盤部351の中央部に位置する筒体353は、外径が円盤部351の外径の3分の1程度の大きさであって、円盤部351の中央から前後方向に延びるように形成された円筒形状体である。また筒体353には、その長手方向に螺孔353aが形成されている(図15参照)。螺孔353aには、スクリュー軸33が螺入される。
【0149】
羽根部355は、羽根車35をスクリュー軸33に取り付けたときの後面に位置する前記筒体353の一部と、その外周面に形成され、周方向に等間隔で配置された複数(本実施例では4枚)の羽根355aとからなる(図12〜図15参照)。
【0150】
羽根の形状は、吐出し量と全揚程(圧力)の関係から決まる。この実施例では、図14に示されているように、後面から見た形状が時計回りの緩やかな円弧形状をしている。また、側面から見た場合の羽根の形状は、図16、図17よりわかるように、直角三角形状に近い形態をしている。
【0151】
つまり、羽根部355は、羽根車内を通過する洗浄水が、羽根車35の半径方向外側に向けて流れるようにされた、三次元の湾曲面を持つ複数の羽根355aから構成されている(図12、図13、図15参照)。
【0152】
羽根車35の回転速度は、羽根355aの形状とバルブ作動管31Cを流通する洗浄水の抵抗によって定まる。また、羽根車35は、図16及び図17の矢印a1で示すような流水経路を形成できるように、羽根車35の回転方向が定められている。
【0153】
換言すると、給水管2から給水管接続部5に流下する洗浄水(図16及び図17の矢印a1参照)が羽根車35に当たると、羽根車35は、これを後方から見た場合に、必ず反時計回り方向(図14の矢印A参照)に回転できるように、及び所定の回転速度を得られるように、羽根形状の傾斜角度、曲率、及び羽根車35を案内するスクリュー軸33の雄ネジ及び筒体353の螺孔353aの雌ネジのそれぞれの切り込み方向が決められている。
【0154】
円錐コイルばね37(図12〜図17参照)は、ストッパー335及びばね受け部38の間に位置する。そして、スクリュー軸33との間に大きくすきまを取った状態で外嵌される。また、円錐コイルばね37は、円錐といっても頭部のない切頭円錐状をしている(図12〜図15参照)。このような切頭円錐状の前端を符号37aで示す。そして、前端37a側が前方に位置するように、円錐コイルばね37はスクリュー軸33に外嵌される。なお、円錐コイルばね37はスクリュー軸33に外嵌した状態おいて、円錐コイルばね37の前端37aと反対側の端、すなわち後端を符号37b(図15参照)で示す。
【0155】
ばね受け部38(図15参照)は、円錐コイルばね37を直接受ける直受け盤部381と、直受け盤部381の中心部に形成された貫通孔383とを有する。貫通孔383は、
そこに、羽根車35の筒体353が挿入される。
【0156】
直受け盤部381は、その直径が円錐コイルばね37の最大径と比較してそれと同じか幾分大きめである。この実施例では、直受け盤部381は、既述した円盤部351と同径なものを示す(図17参照)。また直受け盤部381の中央には、筒体353の通る筒体383が形成されている(図12、図15参照)。
【0157】
筒体353は、直受け盤部381の外径の3分の1程度の外径を有する円筒形状体である(図15参照)。当該外径は、円錐コイルばね37の前端37aの内径寸法よりも小さい(図16、図17参照)。
【0158】
また、筒体353には、その長手方向に螺孔353aが貫通状態で形成されている(図15参照)。この螺孔353aにスクリュー軸33が螺入される。当該螺入前に、直受け盤部381及び円盤部351の間にそれらと同軸にワッシャー39が介在される。
【0159】
ワッシャー39は、その中央に前記筒体353がゆるみ嵌め状に嵌められる通し孔391が形成されている。また、ワッシャー39は、前記各盤部381、351よりも外径が小さい(図15参照)。ワッシャー39を介在させることにより、羽根車35が、前記ばね受け部38に対して回転可能になる。
【0160】
ワッシャー39が介在されないと、羽根車35の円盤部351がばね受け部38と直に接触する。このため、羽根車35が回転したときに、両者間で生じる摩擦により羽根車35が回転不能になる。これを回避するためにワッシャー39が必要になる。
【0161】
次にこのような構成のバルブ15Cの組付け手順を説明する。なお、スクリュー軸33は、バルブ作動管31Cに予め取り付けられているものとする。そして、スクリュー軸33の先端には、ストッパー335が螺着されている。
【0162】
最初にスクリュー軸33からストッパー335を外す。
次に、羽根車35、ワッシャー39、ばね受け部38及び円錐コイルばね37の順で、それらをスクリュー軸33にはめ込む。その後、スクリュー軸33の先端にストッパー335を取り付けて、組み付けを終了する。
【0163】
当該組み付けにあたり、羽根車35は、その羽根355aのある側を後ろ側(洗浄水の流れの上流側)に位置するようにし、円盤部351のある側を前側(洗浄水の流れの下流側)に位置するようにして組み付けられる。また、円錐コイルばね37は、前端37a(図15参照)の側が前側になるようにして取り付けられる。ワッシャー39とばね受け部38とには前後の区別はない。
【0164】
最後にストッパー335をスクリュー軸33の先端に螺合することで、羽根車35、ワッシャー39、ばね受け部38及び円錐コイルばね37がスクリュー軸33から脱落するのが防止される。
【0165】
このようにして、バルブ15Cが組み付けられる。
なお、円錐コイルばね37は、その長手方向に外力が掛かっていない状態にあるときは伸びている。けれども、外力が掛かっているときは圧縮された状態になる。
【0166】
このようなバルブ15Cに外力が作用していないとき、すなわち、給水管2から洗浄水が供給されていないとき、羽根車35はスクリュー軸33の螺溝の最後端に位置する。そして、当該状態では、円錐コイルばね37に弾力が生じていない。
【0167】
また、ストッパー335の螺孔335aは貫通している。このため、ストッパー335をスクリュー軸33に対して回転させることによりスクリュー軸の軸方向に前後させることで、バルブ15Cに洗浄水が流れていない段階におけるストッパー335と直受け盤部381との間にある円錐コイルばね37の圧縮度合いを調整することができる。
【0168】
次にこのような構成のバルブ15Cの作用効果を述べる。
フラッシュバルブ3に設けられている前記排水ボタンや排水ハンドル等の操作手段を操作すると、給水管2から給水管接続部5に向けて流下する洗浄水の一部は、バルブ作動管31Cを経由する(図16参照)。
【0169】
バルブ作動管31Cに導かれた当該洗浄水は、隔壁5fpに設置された貫通孔212aを経由して、給水管接続部5からリム13に向けて流れる(図16参照)。当該洗浄水が流れる間、バルブ15Cの羽根車35は、流下する洗浄水及び当該洗浄水の流れによって生じる水圧により図14の矢印A方向(バルブ15Cを後方から見た場合の反時計回り方向)に回転する。すると、羽根車35は、スクリュー軸33を、後方から前方(図面左側から右側)に向けて進行する(図16参照)。
【0170】
当該進行に連れ、ストッパー335との間に設けられた円錐コイルばね37が圧縮され、その弾撥力は次第に大きくなる。そして、最終的に羽根車35は、スクリュー軸33の先方に位置するストッパー335により、その進行が阻止される(図17参照)。洗浄水が流れている間、羽根車35は、円錐コイルばね37の弾撥力に抗して、図17に示す位置を維持する。
【0171】
このとき時の弾撥力が一番大きい。当該状態にあるとき、羽根車35の推進力と円錐コイルばね37の弾撥力とは拮抗している。よって、羽根車35は、図17に示す移動位置を維持する。このときが羽根車35の進行の終点であり、図17に示されているように、貫通孔212aは、その内径とほぼ同じや幾分小さめの外径をした羽根車35により閉鎖される(本実施例では幾分小さめの羽根車を例示する)。
【0172】
流水中にあっては、羽根車35には、円錐コイルばね37の弾撥力が作用する。しかしながら、給水管2からの洗浄水の供給が停止すると、水力による羽根車35の推進力がなくなる。それゆえ、羽根車35の推進力と円錐コイルばね37の弾撥力との拮抗が崩れ、円錐コイルばね37の弾撥力が大きくなる。
【0173】
したがって、羽根車35は円錐コイルばね37の弾撥力により押し戻される。つまり、円錐コイルばね37は、図17の圧縮状態から図16の非圧縮状態になる。この結果、羽根車35によって、閉塞されていた貫通孔212aは再び開口する。
【0174】
よって、このように貫通孔212aを開閉する羽根車のことを開閉手段ということにする。また、開閉手段である羽根車35を後方(他方)に押しやる円錐コイルばね37のことを他方に移動させる手段ということにする。
【0175】
上記の動作をフラッシュバルブ3に設けられている前記排水ボタンや排水ハンドル等の操作手段を操作するごとに実施する。
【0176】
さらに、バルブ15Cは、円盤部351が洗浄水の流れを受けるときは、当該円盤部351を前方に移動し、円盤部351が洗浄水の流れを受けないときは、円盤部351を後方に移動する移動用手段32を有するといえる(図12参照)。なお、円盤部351は洗浄水の流れを受ける受け部ということにする。
【0177】
移動用手段32としては、前記受け部である円盤部351が前方に移動したときに、円盤部351を後方に押しやる押圧手段としての既述した円錐コイルばね37と、円錐コイルばね37を前記貫通孔212aの軸方向に案内する案内手段としてのスクリュー軸33を例示できる。
【0178】
次にこのような構成の実施例3に係る便器1の作用効果について述べる。
実施例3に係る便器1にあっても実施例1及び2と同様の作用効果を奏する。すなわち便器1は、給水管2により便器1に供給される洗浄水のうち、溜水用の水量をバルブ15Cの制御によって、及び溜水用タンク52Rの貯水量によって確保できる。当該溜水量は予め決まった量であるので、溜水するのに無駄を抑制することができる。このため、節水に寄与する。
【0179】
さらには、バルブ15Cによって、リム13に流れる水量に制限が掛かる。したがって、便器1に一定時間洗浄水を出した後、洗浄水が止まるまでの期間において、リム経由の洗浄水が垂れ流し状態になりにくい。よって、一層節水に寄与できる。
【実施例4】
【0180】
図18〜図22を参照して、実施例4を説明する。
実施例4が実施例3と相違する点はバルブの形態にある。よって、実施例3と同一箇所には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0181】
実施例4に係るバルブ15Dは、給水管2のうち給水管2が給水管接続部5と接続する部分に設けられたバルブ作動管31D(図18、図21、図22参照)と、バルブ作動管31Dに後ろ側から嵌合され、貫通孔212aと同軸に配置されて、かつ洗浄水の流れの下流側に向いた開口を有する基部8(図21、図22参照)と、基部8に対して摺動自在に取着された軸部としての可動軸34(図21、図22参照)と、この可動軸34の先端部に固定され水圧を受けて可動軸34と共に前後方向に移動する可動部9(図21、図22参照)と、を有する。
【0182】
バルブ作動管31Dは、基部8をバルブ作動管31Dに取着する取着用開口部81が形成されている点でバルブ作動管31Cと異なる(図21、図22参照)。
【0183】
取着用開口部81は、前方へ突出する両端開口の筒状体である。取着用開口部81には、基部8が内嵌される。取着用開口部81の突出量は、取着用開口部81に基部8が取着されたときに、基部8がぐらつかせない程度にされている。また、取着用開口部81は、給水管2からバルブ15Dに流れてくる洗浄水の流れを妨げない程度に、給水管2との間に十分な距離が確保されている。
【0184】
基部8は、洗浄水の流れの下流側である前方に開口した箱状体である(図21参照)。そして、当該箱形状をした基部8の周壁80のうち開口近傍部分80aは、基部8の他の部位に比べて厚肉である(図20、図21、図22参照)。このため、両者の間に段差85を生じる(図19、図20参照)。
【0185】
当該段差85は、基部8をバルブ作動管31Dに取着する時に、軸方向における後方側へのバルブ作動管31Dの抜けを抑制するためのものである。基部8のうち開口近傍部分80aを除く部分の外径は、前記取着用開口部81の内径よりもわずかに大きい。よって、取着用開口部81に基部8をはめ込んだとき、取着用開口部81に対し基部8はしまり嵌め状体になる。取着用開口部81に基部8をはめ込んだときのしまり具合は、バルブ15Dに流水したときの洗浄水の流れの勢いでは外れない程度のしまり具合である。
【0186】
図20に示されているように、基部8の底部8aの中央部にはボス82が形成されている。ボス82は、次に述べる可動軸34の取り付けを補強するための円筒形をした軸心部分である。ボス82はその両端が開口している。そして、底部8aのうち、ボス82の近傍には、ボス82の内径の略3分の1程度の直径の小孔(貫通孔)810が形成されている。
【0187】
可動軸34は、基部8の後ろ側からボス82の貫通孔821に挿入される(図20〜図22参照)。そして、可動軸34は、軸部330と、軸部330に外嵌される圧縮ばね334と、軸部330の後端に形成されたストッパー335とを有する(図20参照)。
【0188】
軸部330の先端部には可動部9が取り付けられている(図20〜図22参照)。可動部9は、軸部330に対して動くのではなく、軸部330に固定され、軸部330と共に軸方向に移動する(図21、図22参照)。これらは、水圧を受けたときと受けていないときとでその位置が相違する。
【0189】
水圧を受けているときは、バルブ作動管31Dに取着されている基部8から離隔する方向(前方)に移動する(図22参照)。反対に水圧を受けていないときは、圧縮ばね334により元の位置に戻される(図21参照)。元の位置に移動するとは、つまり、基部8の底部8aに可動部9が当接するよう軸部330と可動部9が後方に向けて移動することをいう。当該元の位置を初期位置という。そして、初期位置に対し、軸部330及び可動部9が水圧を受けることによって、それらが前方に向けて最大に移動したときの位置を受圧位置という。
【0190】
軸部330は、その長さが、前記初期位置に可動部9があるときの基部8と可動部9との軸方向における組み合わせ長さ(以下、初期位置長さ)よりも長い(図21参照)。けれども軸部330の長さは、可動部9が受圧位置にあるときの基部8と可動部9との軸方向における組み合わせ長さ(以下、受圧位置長さという)と比べ同じかわずかに短い(図22参照)。具体的にいえば、基部8と可動部9との初期位置長さは、軸部330の略3分の2の長さである。また、受圧位置長さは、軸部330とほぼ同じ長さである。
【0191】
圧縮ばね334は、基部8の底部8aとストッパー335との間に位置する。そして、圧縮ばね334に外力である水圧が掛かっていないとき、すなわち初期位置に可動部9があるときの圧縮ばね334の長さは、軸部330のほぼ5分の2である(図21参照)。
反対に水圧が掛かっているとき、つまり受圧位置に可動部9があるときの圧縮ばね334の長さは、軸部330のほぼ5分の1である(図22参照)。
【0192】
このように、圧縮ばね334の長さが変化するのは、ストッパー335と基部8の底部8aとの間で、圧縮ばね334に圧力が掛かったり掛からなかったりするからである。圧縮ばね334に圧の掛からない初期位置に可動部9があるときは、前者のごとく圧縮ばね334の長さは相対的に長い。反対に圧縮ばね334に圧の掛かる受圧位置に可動部9があるときは、後者のごとく圧縮ばね334の長さは相対的に短い。圧縮ばね334の長さが短くなるほど圧縮ばね334の弾撥力は高まる。
【0193】
ストッパー335は、フランジ形状をしている。またストッパー335の大きさは、直径で比較して、軸部330の3倍ほどである。当該大きさは、軸部330に圧縮ばね334が外嵌された状態において、圧縮ばね334がストッパー335からはみ出ない程度の大きさでもある。
【0194】
可動部9は、基部8の開口を覆う蓋部91と、蓋部91からスカート状に垂れ下がる(
図21、図22では前後方向に延びる)円筒形状をした周壁部93とを有する(図20参照)。
【0195】
蓋部91は、その中央部にボス911が形成されている(図20、図21、図22参照)。ボス911は、可動軸34の先端部に可動部9を取り付けるため、可動軸34を嵌合するためのものである。そして、このボス911を囲繞するように、蓋部91の外周縁よりも内側に形成されたものが前記周壁部93である。
また、蓋部91は、貫通孔212aの内径とほぼ同じかわずかに小さな外径を有する(図22参照)。
【0196】
周壁部93が、蓋部91の外周縁よりも内側に位置するゆえ、蓋部91は、周壁部93の先端に固定されたフランジ形状の部位といえる。そして、周壁部93から半径方向への蓋部91の突出量は、基部8の開口近傍部分80aの肉厚と同じである(図21、図22参照)。また、周壁部93は、基部8の周壁80に摺動可能に内嵌されている。
【0197】
可動軸34に可動部9を取り付けられるようにするため、可動軸34は、その先端部に雄ネジが形成されている。そして、ボス911は、その通し孔911aに雌ネジが形成されている。このため可動軸34とボス91とを螺合することで、可動軸34に可動部9を取り付けることができる。螺合の代わりに圧入でもよい。圧入の場合、ボス91の通し孔911aが、可動軸34の外径よりも幾分小さい(図20参照)。
【0198】
次にこのような構成のバルブ15Dの作用効果について説明する。
なお、軸部330及び可動部9が、前記初期位置にあり(図21参照)、この初期位置から前記受圧位置に軸部330及び可動部9が移動し(図22参照)、次に軸部330及び可動部9が受圧位置から初期位置に移動するまでを述べる。
【0199】
フラッシュバルブ3に設けられている前記排水ボタンや排水ハンドル等の操作手段を操作することで、給水管2から給水管接続部5に向けて流下する洗浄水の一部は、実施例3の場合と同様であり、本実施例では、符号31Dで示すバルブ作動管を経由する。
【0200】
バルブ作動管31Dに導かれた洗浄水は、隔壁5fpに形成された貫通孔212aを経由して、給水管接続部5からリム13に向けて流れる。その間、箱形状をした基部8の底部8aに形成された小孔810経由で、洗浄水が基部8内に後方から進入する(図19の矢印a3参照)。
【0201】
当該洗浄水の基部8内への侵入により、基部8内の水圧が高まる。当該水圧は、蓋部91に作用する。その結果、蓋部91は、基部8から前方に向けて移動される(図21、図22参照)。よって、蓋部91の後面91aは、水圧を受ける部位(受圧部)という。また、基部8のことを可動部9を加圧する加圧部という。
【0202】
当該前方への移動に連れて、ストッパー335と基部8の底部8aとの間に設けられた圧縮ばね334が圧縮される(図22参照)。圧縮ばね334が圧縮されると弾撥力を生じる。この弾撥力は、蓋部91を初期位置に戻そうとする力として作用する。当該弾撥力は、蓋部91の進行が進むに連れて次第に大きくなる。ただし、ストッパー335及び圧縮ばね334の弾撥力が、妨げになって、蓋部91の進行は制限される(図22参照)。当該進行が制限される位置が前記受圧位置である。
【0203】
蓋部91が受圧位置にある状態において、バルブ15Dに洗浄水が流れている間、蓋部91は、圧縮ばね334の弾撥力に抗しながら、図22に示す位置を維持する。このとき、すなわち蓋部91のそれ以上の前方への進行が阻止されている時の弾撥力が一番大きい
。当該弾撥力は、圧縮ばね334により、可動軸34及び可動軸34に固定された蓋部91を後方へ引っ張る力である。
【0204】
このように蓋部91が受圧位置にあるとき、蓋部91の水圧による推進力と圧縮ばね334の弾撥力とは拮抗している。よって、蓋部91は、図22に示す移動位置を維持する。このときが蓋部91の進行の終点であり、図22に示されているように、貫通孔212aは、その内径とほぼ同じ外径の蓋部91が水流の妨げとなり、リム側へのみずの流れを閉鎖する。
【0205】
そして、バルブ15Dに洗浄水が流れている流水中にあっては、圧縮ばね334には、弾撥力が作用する。しかしながら、給水管2からの洗浄水の供給が停止すると、水圧による蓋部91の推進力がなくなる。それゆえ、蓋部91の推進力と圧縮ばね334の弾撥力との拮抗関係が崩れ、後者の弾撥力の方が大きくなる。したがって、蓋部91は圧縮ばね334の弾撥力により後方へ押し戻される。圧縮ばね334は、図22の圧縮状態から図21の非圧縮状態(元の状態)になる。この結果、蓋部91によって閉塞されていた、リム13に通じる貫通孔212aは再び開口する。
【0206】
以上の動作をフラッシュバルブ3に設けられている前記排水ボタンや排水ハンドル等の操作手段が操作されるごとに実施する。
なお、実施例4において移動手段とは、前記蓋部91が、前方に移動したときに当該蓋部91を後方に押しやる圧縮ばね334を少なくとも含む。
【0207】
実施例4に係る便器1にあっても前記各実施例とほぼ同様の作用効果を奏する。
すなわち便器1は、給水管2により便器1に供給される洗浄水のうち、溜水用の水量をバルブ15Dの制御によって、及び溜水用タンク52Rの貯水量によって確保できる。当該溜水量は予め決まった量であるので、溜水するのに無駄を抑制することができる。よって、節水に寄与する。
【0208】
また、バルブ15Dによって、リム13に流れる水量に制限が掛かる。このため、便器1に一定時間洗浄水を出した後、洗浄水が止まるまでの期間において、リム経由の洗浄水が垂れ流し状態になりにくい。
【0209】
さらに、本発明は、タンク式の便器にも適用できる。
そして、本発明に係る水路切り替え手段であるバルブは、本実施例のような機械式でなくても電磁バルブを用いてもよい。
【符号の説明】
【0210】
1 便器
2 給水管
3 フラッシュバルブ
4 横引き排水管(排水管)
5 給水管接続部(水槽体)
5f 前面壁
5fp 隔壁
6 排水管接続部
7 ブッシュ
7h ブッシュの通し孔
8 基部(加圧部)
8a 底部
9 可動部
10 便器本体
11 ボール部
11j ジェット噴流孔
12 外郭部
13 リム
15 バルブ(水路切り替え手段、制御手段)
15C バルブ(水路切り替え手段、制御手段)
15D バルブ(水路切り替え手段、制御手段)
31 バルブ作動管
31C バルブ作動管
31D バルブ作動管
32 移動用手段
33 スクリュー軸(案内手段)
34 可動軸(移動用手段)
35 羽根車(開閉手段)
37 円錐コイルばね(押圧手段、開閉手段を他方(後方)に移動させる手段)
37a 円錐コイルばねの前端
37b 円錐コイルばねの後端
38 ばね受け部
39 ワッシャー
41 排水接続アダプタ
50 受水槽部
51 外ケース
51f 前端面(他端面)
51r 後端面(一端面)
52L 腕部(水槽体及び便排出孔を結ぶ流路)
52R 腕部(溜水用タンク、流路)
53 内ケース
53r 閉塞端
55 圧縮コイルばね(弾性体)
71F 前側の張り出しフランジ
71R 後側の張り出しフランジ
80 周壁
80a 開口近傍部分
81 取着用開口部
82 ボス
85 段差
91 蓋部(開閉手段)
91a 蓋部の後面(受圧部)
93 前記周壁部
93 周壁部
111 便排出孔
111a 前方縁
131 小孔(リムに形成された孔)
133 リム接続部
133B ベース壁
133L 突出壁
133R 突出壁
141 便排出路
141a トラップ上昇管
141b トラップ下降管
141b1 外角部
141b2 内角部
153 スクリュー軸
212a 貫通孔(連通孔)
311 上側開口
313 下側開口
330 軸部(移動用手段、案内手段)
331 非ねじ切り部
333 スクリュー部
334 圧縮ばね(移動用手段、引張り手段)
335 ストッパー
335a 螺孔
351 円盤部(水の流れを受ける受け部)
353 筒体
353a 螺孔
355 羽根部
355a 羽根
381 直受け盤部
383 前方筒体
382 貫通孔
383a 螺孔
511 張り出しフランジ
513 貫通孔
513f 前端貫通孔(排出孔)
513r 後端貫通孔(導入孔)
514 後方側開口(第1の開口)
516 前方側開口(第2の開口)
521R 貫通路(貫通孔)
534 開口(連通路)
536 非開口形成部
810 小孔
821 貫通孔
911 ボス
911a 通し孔
a1 矢印
a2 矢印
a3 矢印
L 反転
S 隙間
h 封水深

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便を受けると共に、中空で、かつ便器の内面に向けられ前記中空に通じる複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、
便器本体に洗浄水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、
ボール部に形成され、ボール部に溜まった便を敷地外に排出するための排水管に向けて便を洗浄水と共に排出するための便排出孔と、
前記水槽体及びこの便排出孔を結ぶ流路と、
前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、
この隔壁に設置され、前記リム又は前記流路におけるそれぞれの水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器。
【請求項2】
洗浄方式としてサイホンジェット式が適用され、便器に接続された給水管にはその水圧をそのまま利用するフラッシュバルブが利用され、フラッシュバルブの操作により便を洗浄水と共に排水管に排出する水洗式便器であって、
便を受けると共に便器の外縁として中空に形成されかつ複数の孔が便器の内面に向けて形成されたリムを有するボール部と、
便器本体に洗浄水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、
ボール部の底部に形成され、ボール部に溜まった便を敷地外に排出するための前記排水管に向けて便を洗浄水と共に排出するための便排出孔と、
前記水槽体及びこの便排出孔を結ぶ流路と、
前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、
この隔壁に設置され、前記リム又は前記流路におけるそれぞれの水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記隔壁に取着される外ケースと、
前記外ケースの内部を移動する内ケースと、
当該内ケース及び前記外ケースの間に介在される弾性体とを備え、
前記外ケースには、前記内ケースに水圧を加えるために外ケース内に洗浄水を導入する導入孔が形成されると共に、
当該制御手段は、前記導入孔から前記外ケースに入った水圧を受けて移動する前記内ケースの前記外ケースにおける移動距離の程度に応じて、前記リムに向けて洗浄水を流す第1の水路又は前記流路に向けて洗浄水を流す第2の水路に切り替える水路切り替え手段として機能することを特徴とする請求項1又は2に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記外ケースは筒形状をしており、その外周面には軸方向に一定の距離をおいて第1の開口及び第2の開口が形成されると共に、一端面には、前記導入孔が形成され、この一端面と対向する他端面には、前記外ケース及び内ケースに入った洗浄水を排出するための排出孔が形成され、
前記内ケースは、前記外ケースに摺動自在に内嵌された一端開口他端閉塞な筒形状をしていると共に、前記制御手段が、前記水路切り換え手段として機能することで、洗浄水の流れ路が前記第1の水路となったときに、前記第1の開口と連通する連通路を備え、同様に前記洗浄水の流れ路が前記第2の水路となったときに、
前記内ケースは、前記連通路の形成されていない箇所で、前記第1の開口及び前記第2の開口を閉塞することを特徴とする請求項3に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記給水管から便器に洗浄水を流した後、リム内に空気の流通を生じる空気流通手段として機能することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記隔壁には、前記水槽体及び前記リムを連通する貫通孔が形成され、
前記制御手段は、
前記貫通孔に対し、一方に移動することで当該貫通孔を閉じ、他方に移動することで当該貫通孔を開く開閉手段を有し、
前記開閉手段は、
前記貫通孔と同軸に配置され前記水槽体内における洗浄水の流れを受ける受け部と、
当該受け部が洗浄水の流れを受けるときは当該受け部を前記一方に移動し、受け部が洗浄水の流れを受けないときは当該受け部を前記他方に移動する移動用手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の水洗式便器。
【請求項7】
前記移動用手段は、前記受け部が一方に移動したときに当該受け部を他方に押しやる押圧手段と、この押圧手段を前記貫通孔の軸方向に案内する案内手段とを有することを特徴とする請求項6に記載の水洗式便器。
【請求項8】
前記受け部は、前記他方の側に羽根車を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の水洗式便器。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記貫通孔と同軸に配置され前記水槽体内における洗浄水の流れによって生じる水圧を受ける部位と、
当該受け部が水圧を受けるときは当該受け部を一方に移動し、受け部が水圧を受けないときは当該受け部を他方に移動する移動用手段と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水洗式便器。
【請求項10】
前記移動用手段は、前記受け部が前記一方に移動したときに当該受け部を前記他方に引っ張る引張り手段を少なくとも有することを特徴とする請求項9に記載の水洗式便器。
【請求項11】
前記受け部は、
前記水槽体内に位置しかつ前記貫通孔に対して同軸に配置された基部と、
当該基部に対し、摺動自在に取着された可動軸と、
この可動軸に固定され水圧を受けて移動する可動部とを含み、
前記引張り手段は、前記可動軸に外嵌され、かつ前記基部の洗浄水の流れの上流側に位置する圧縮ばねであることを特徴とする請求項10に記載の水洗式便器。
【請求項12】
前記基部は、給水管に係る洗浄水の流れの下流側に向けて開く開口を有し、
前記可動部は、この開口から前記基部に内嵌され、
前記基部のうち前記可動部と対向する側には貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の水洗式便器。
【請求項13】
前記押圧手段及び引張り手段は、圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項7又は10に記載の水洗式便器。
【請求項14】
前記ボール部の前記便排出孔を封水する洗浄水を供給する供給手段を備え、
この供給手段は、前記水槽体に設けられたタンクと、
このタンク及び前記ボール部を貫通して結ぶ貫通孔とを有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の水洗式便器。
【請求項15】
洗浄方式としてサイホンジェット式が適用され、便器に接続された給水管の水圧をそのまま利用するフラッシュバルブが利用され、フラッシュバルブの操作により便を洗浄水と
共に排水管に排出する水洗式便器システムであって、
前記便器は、
便を受けると共に便器の外縁として中空かつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、
ボール部に一体形成され、前記フラッシュバルブが操作されると、便器本体便器本体に洗浄水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、
ボール部に形成され、ボール部に溜まった便を敷地外に排出するための排水管に向けて便を洗浄水と共に排出するための便排出孔と、
前記水槽体及びこの便排出孔を結ぶ流路と、
前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、
この隔壁に形成され、前記リムに向けて洗浄水を流す第1の水路及び前記流路に向けて洗浄水を流す第2の水路のいずれかに切り替えて、切り替えられた方の水路に洗浄水を供給する水路切り替え手段とを有する水洗式便器システム。
【請求項16】
便を受けると共に、中空でかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、
便器本体に洗浄水を送る給水管2及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、
ボール部に形成され、かつ排水管に向けて便を洗浄水と共に排出するための便排出孔と、
この便排出孔及び前記水槽体を結ぶ流路と、
前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、
この隔壁に形成され、前記リムの水供給量又は前記流路の水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器において、
前記制御手段が、
前記隔壁に形成され前記水槽体及び前記リムを連通する貫通孔に対し、一方に移動することで当該貫通孔を閉じ、他方に移動することで当該貫通孔を開く開閉手段と、
この開閉手段に作用して当該開閉手段を前記他方に移動させる手段と、
を有することを特徴とする水洗式便器に設置される制御手段。
【請求項17】
便を受けると共に、中空でかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、
便器本体に洗浄水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、
ボール部に形成され、排水管に向けて便を洗浄水と共に排出するための便排出孔と、
この便排出孔及び前記水槽体を結ぶ流路と、
前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、
この隔壁に形成され、前記リムの水供給量又は前記流路の水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器において、
前記制御手段が、
前記隔壁に形成され前記水槽体及び前記リムを連通する貫通孔に対し、一方に移動することで当該貫通孔を閉じ、他方に移動することで当該貫通孔を開く開閉手段と、
当該開閉手段に作用して当該開閉手段を前記他方に移動させる手段と、を有し、
前記開閉手段は、
前記貫通孔と同軸に配置され前記水槽体内における洗浄水の流れによって生じる水圧を受ける部位と、
当該水圧を受ける部位が水圧を受けるときは当該水圧を受ける部位を前記一方に移動し、水圧を受ける部位が水圧を受けないときは当該水圧を受ける部位を前記他方に移動する移動用手段と、を有することを特徴とする水洗式便器に設置される制御手段。
【請求項18】
便を受けると共に、中空でかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、
便器本体に洗浄水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、
ボール部に形成され、かつ排水管に向けて便を洗浄水と共に排出するための便排出孔と、
この便排出孔及び前記水槽体を結ぶ流路と、
前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、
この隔壁に形成され、前記リムの水供給量又は前記流路の水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器において、
前記制御手段が内部に洗浄水を導入する導入孔が形成された外ケースと、
この外ケースに前記導入孔経由で流入した洗浄水の流れによって生じる水圧により外ケース内を移動可能な内ケースとを備えると共に、
前記外ケースにおける前記内ケースの移動距離に応じて、前記リムに向けて洗浄水を流す第1の水路又は前記流路に向けて洗浄水を流す第2の水路に切り替える水路切り替え手段として機能することを特徴とする水洗式便器に設置される制御手段。
【請求項19】
便を受けると共に、中空でかつ複数の孔が形成されたリムを有するボール部と、
便器本体に洗浄水を送る給水管及び前記ボール部の間に介装される水槽体と、
ボール部に形成され、かつ排水管に向けて便を洗浄水と共に排出するための便排出孔と、
この便排出孔及び前記水槽体を結ぶ流路と、
前記リムと前記水槽体との間に設けられた隔壁と、
この隔壁に形成され、前記リムの水供給量又は前記流路の水供給量を制御する制御手段とを有する水洗式便器において、
前記制御手段が、ねじの切られたスクリュー軸と、
このスクリュー軸と螺合し、前記給水管から前記水槽体に流入した洗浄水の流れ及び当該洗浄水の流れによって生じる水圧により回転し進行する羽根車と、
前記給水管からの洗浄水の供給が止まると、前記羽根車を押し戻す押圧手段とを有することを特徴とする水洗式便器に設置される制御手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−40530(P2013−40530A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179549(P2011−179549)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000155333)株式会社木村技研 (29)
【Fターム(参考)】