説明

水洗式便器

【課題】簡易な構造で非常時に便鉢部内の汚物等を便器本体外へ排出することができる水洗式便器を提供する。
【解決手段】水洗式便器は、便鉢部11を有する便器本体10と、給水圧力を有する給水源に連通し、便鉢部11に洗浄水を供給する給水路20と、この給水路20を開閉する電気駆動式開閉装置30とを備えている。水洗式便器は、給水路20を便器本体10の輪郭内で分岐した分岐部25と、この分岐部25に接続し、便器本体10の輪郭内に収納したホース40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の水洗式便器を開示している。この水洗式便器は、便鉢部を有する便器本体と、給水圧力を有する給水源に連通し、便鉢部に洗浄水を供給する給水路と、給水路を開閉する電気駆動式開閉装置とを備えている。電気駆動式開閉装置は手動で給水路を開閉することができるハンドルを有している。
【0003】
この水洗式便器は、停電等によって電気駆動式開閉装置が電気駆動することができない場合、ハンドルを操作して給水路を開閉することができる。これによって、便鉢部に洗浄水を供給し、便鉢部内の汚物等を便器本体外へ排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−107439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の水洗式便器は、電気駆動式開閉装置に手動で給水路を開閉することができるハンドルを設けているため、電気駆動式開閉装置の構造が複雑で特殊なものになっている。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、簡易な構造で非常時に便鉢部内の汚物等を便器本体外へ排出することができる水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水洗式便器は、便鉢部を有する便器本体と、
給水圧力を有する給水源に連通し、前記便鉢部に洗浄水を供給する給水路と、
この給水路を開閉する電気駆動式開閉装置とを備えた水洗式便器であって、
前記給水路を前記便器本体の輪郭内で分岐した分岐部と、
この分岐部に接続し、前記便器本体の輪郭内に収納したホースとを備えていることを特徴とする。
【0008】
この水洗式便器は、停電時等において電気駆動式開閉装置が電気駆動することができない場合、給水路を分岐した分岐部に接続したホースを利用して、バケツ等に水を給水することができる。そして、バケツに溜めた水を便鉢部に空けることによって、便鉢部内の汚物等を便器本体外へ排出することができる。
【0009】
したがって、本発明の水洗式便器は簡易な構造で非常時に便鉢部内の汚物等を便器本体外へ排出することができる。
【0010】
また、この水洗式便器は、分岐部を便器本体の輪郭内に設けており、ホースを常時、便器本体の輪郭内に収納することができる。このため、この水洗式便器は、常時は外観をすっきりしたものにすることができる。さらに、この水洗式便器を備えたトイレルームでは、ホースがトイレルーム内に露出した状態で放置されず、整理整頓した状態を保つことができる。
【0011】
前記分岐部は前記電気駆動式開閉装置より上流側の前記給水路を分岐し得る。この場合、分岐部を電気駆動式開閉装置より上流側の給水路に設けることによって、簡易な構造で給水路を分岐することができる。
【0012】
前記ホースは先端部に止水栓を設け得る。この場合、ホースからバケツに水を給水する際、止水栓を手元で操作することができるため、吐水及び止水を容易に行うことができる。
【0013】
前記ホースは先端部にフックを設け得る。この場合、フックをバケツの縁等に係止することによって、ホースからバケツ内に容易に給水することができる。
【0014】
前記便器本体は着脱自在な側面部を有しており、この側面部は内面側に設けた水を貯留することができる容器を有し得る。この場合、側面部を取り外してホースから容器内に給水することができる。このため、バケツ等を別に用意する必要がなく、容器に溜めた水を便器本体の便鉢部に空けて、便鉢部内の汚物等を便器本体外へ排出することができる。
【0015】
前記便器本体は着脱自在な側面部を有しており、この側面部は内面側に前記ホースを係止する係止具を有し得る。この場合、ホースを係止具に係止することによって、便器本体の輪郭内にホースを容易に収納することができる。また、側面部を取り外すことによって、ホースが一緒に外部に引き出されるため、ホースを容易に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の水洗式便器を示す概念図である。
【図2】実施例1の水洗式便器において、ホースを収納した状態を示す概略図である。
【図3】実施例1の分岐部を形成する接続管を示す正面図である。
【図4】実施例2の容器を示す概略図である。
【図5】実施例2の他の容器の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の水洗式便器を具体化した実施例1及び2について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<実施例1>
実施例1の水洗式便器は、図1〜図3に示すように、便器本体10、給水路20、電気駆動式開閉装置30、及びホース40を備えている。便器本体10は、便鉢部11と、便鉢部11の下流側に連続して設けられた図示しない便器排水路と、便鉢部11の上端開口の周縁部から下方に延びた側面部12と、便鉢部11の上方に配置した便座装置13とを有している。
【0019】
便器本体10は、便鉢部11と便器排水路とによって封水部を形成しており、洗浄水を貯留して水封を形成する。水洗式便器は、便鉢部11に洗浄水を供給することによって、汚物等を便鉢部11内から便器排水路を介して便器本体10外へ排出する。
【0020】
側面部12は、便器本体10の前端部から左右後方に向けて延びた第1側面部12Aと、第1側面部12Aの左右後端の夫々より後方に設けられた第2側面部12Bとを有している。第1側面部12Aは便鉢部11と一体に形成されている。第2側面部12Bは、第1側面部12Aとは別体に形成されており、便器本体10の左右後部側面から着脱自在である(図4参照)。
【0021】
便座装置13は、便座13A、便蓋13B、及びこれらを回動自在に軸支し、便器本体10の後方上部に配置した便座ボックス13Cを有している。便座ボックス13Cは、電気駆動式開閉装置30の一部分や局部洗浄装置14等を収納している。
【0022】
給水路20は水洗式便器を設置したトイレルームに引き出された給水管50に接続した第1止水栓51と便器本体10の便鉢部11とを連通している。つまり、給水路20は、第1止水栓51と電気駆動式開閉装置30とを連通する柔軟性を有する一次側給水管21、電気駆動式開閉装置30内の内部給水路、及び電気駆動式開閉装置30と便鉢部11とを連通する二次側給水管22とから形成されている。給水管50は上流端を給水圧力を有する給水源に連通している。
【0023】
電気駆動式開閉装置30は内部給水路を開閉する電気駆動式ダイヤフラム弁を有している。電気駆動式開閉装置30は電気駆動式ダイヤフラム弁より上流側の内部給水路を分岐した分岐給水路を有している。分岐給水路は局部洗浄用給水管23を介して局部洗浄装置14に連通している。
【0024】
水洗式便器は便器本体10の輪郭内で一次側給水管21を分岐した分岐部25を備えている。一次側給水管21は下流端部に電気駆動式開閉装置30の下流端部に接続する接続管26(図3参照)を有している。分岐部25は接続管26に設けられている。つまり、分岐部25は電気駆動式開閉装置30より上流側の一次側給水管21を分岐している。接続管26は、一次側給水管21の下流端部に接続する流入口26Aと、電気駆動式開閉装置30の内部給水路の上流端部に接続する第1流出口26Bと、ホース40の上流端部に接続する第2流出口26Cとを有している。このように、給水路20を簡易な構造で分岐することができる。
【0025】
ホース40は上流端部を接続管26の第2流出口26Cに接続している。このホース40は、図2に示すように、柔軟性を有しており、便器本体10の一方の第2側面部12Bの内面側に設けた係止具15に複数回巻かれた状態で係止され、便器本体10の輪郭内に収納されている。このように、この水洗式便器は、一方の第2側面部12Bを便器本体10の後部側面に取り付けることによって、ホース40を便器本体10の輪郭内に容易に収納することができる。
【0026】
係止具15は、棒状部材を折り曲げて形成されており、一方の第2側面部12Bの内面に固定した固定部15Aと、固定部15Aの下端から内側水平方向に延びる水平部15Bと、水平部15Bの先端から上方に延びる垂直部15Cとを有している。また、係止具15は後述するホース40のフック42を係止する鉤部16を有している。鉤部16は、固定部15Aの上部に連結しており、一方の第2側面部12Bの内側面との間に隙間を設けて上方に延びている。
【0027】
ホース40は先端部に第2止水栓41とフック42とを設けている。第2止水栓41は、吐水口を具備した本体部41Aと、本体部41A内に設けた止水弁と、本体部41Aから突出し、止水弁を開閉するレバー部41Bとを有している。第2止水栓41は、本体部41Aを握りながらレバー部41Bを押し下げることができ、レバー部41Bが押し下げられると、止水弁が開弁し、吐水口から水を吐水する。レバー部41Bは押し下げた状態にロックすることができる。
【0028】
このような構成を有する水洗式便器は、非停電時において、図示しない便器洗浄ボタン等を操作することによって、電気駆動式開閉装置30に電気が通電され、電気駆動式ダイヤフラム弁が開閉する。これによって、水洗式便器は、便鉢部11に洗浄水が供給され、汚物等を便鉢部11内から便器排水路を介して便器本体10外へ排出することができる。
【0029】
また、この水洗式便器は、停電時等において電気駆動式開閉装置30が電気駆動することができない場合、図2に示すように、バケツ1に水を給水し、その水を便鉢部11に空けることによって、便鉢部11内の汚物等を便器本体10外へ排出することができる。
【0030】
バケツ1に水を給水する際には、先ず、便器本体10の後部側面から一方の第2側面部12Bを取り外す。すると、第2側面部12Bの内面側の係止具15に係止されたホース40が外部に引き出される。このように、この水洗式便器は便器本体10の輪郭内に収納したホース40を容易に引き出すことができる。
【0031】
引き出したホース40の先端部のフック42をバケツ1の縁に係止し、第2止水栓41のレバー部41Bを押し下げてロックする。このようにして、第2止水栓41の止水弁を開弁して本体部41Aの吐水口から水を吐水し、バケツ1に水を給水することができる。バケツ1に水を充分に給水した後、レバー部41Bのロックを解除して第2止水栓41の止水弁を閉弁し、バケツ1への給水を終了する。このように、ホース40の先端部に第2止水栓41を設けているため、第2止水栓41を手元で操作することができ、吐水及び止水を容易に行うことができる。また、ホース40の先端部のフック42をバケツ1に係止して給水することができるため、ホース40からバケツ1内に容易に給水することができる。
【0032】
そして、バケツ1に溜めた水を便鉢部11に空けることによって、便鉢部11内の汚物等を便器本体10外へ排出することができる。
【0033】
したがって、実施例1の水洗式便器は簡易な構造で非常時に便鉢部11内の汚物等を便器本体10外へ排出することができる。
【0034】
また、この水洗式便器は、分岐部25を便器本体10の輪郭内に設けており、ホース40を常時、便器本体10の輪郭内に収納することができる。このため、この水洗式便器は、常時は外観をすっきりしたものにすることができる。さらに、この水洗式便器を備えたトイレルームでは、ホース40がトイレルーム内に露出した状態で放置されず、整理整頓した状態を保つことができる。
【0035】
<実施例2>
実施例2の水洗式便器は、図4に示すように、便器本体10の他方の第2側面部12Bの内面側に水を貯留することができる容器17を設けている。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0036】
容器17は、他方の第2側面部12Bの内面に一体に形成されており、上方が開口した直方体形状である。他方の第2側面部12Bの内面側に容器17を設けているため、この第2側面部12Bを取り外した状態で容器17内にホース40から給水することができる。このため、バケツ等を別に用意する必要がなく、容器17に溜めた水を便器本体10の便鉢部11に空けることによって、便鉢部11内の汚物等を便器本体10外へ排出することができる。
【0037】
また、他方の第2側面部12Bの内面に、図5に示すように、蛇腹形状の左右側面19及び底面を有する容器18を一体に形成してもよい。この場合、他方の第2側面部12Bを便器本体10の後部側面に取り付ける際、蛇腹形状の左右側面19及び底面を折りたたむことができる。このため、便器本体10の輪郭内に容器18を容易に収納することができる。また、他方の第2側面部12Bを便器本体10の後部側面から取り外して、容器18の蛇腹形状の左右側面19及び底面を引き延ばすことによって、容器18内に充分な水量の水をためることができる。
【0038】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、分岐部は一次側給水管を分岐して形成されているが、電気駆動式開閉装置の内部給水路を分岐した形成してもよい。
(2)実施例1及び2では、ホースの先端部に止水栓を設けていたが、ホースの先端部に止水栓を設けず、分岐部に設けてもよい。
(3)実施例1及び2では、ホースの先端部にフックを設けているが、フックを設けなくてもよい。
(4)実施例1及び2では、着脱自在な側面部を有していたが、着脱自在な側面部を有さず、ホースや容器が収納できる凹所を設けているのみでもよい。
(5)実施例1及び2では、電気駆動式開閉装置が電気駆動することができない場合に、ホースからバケツ等に水を給水し、その水を便鉢部に空けて便鉢部内の汚物等を便器本体外へ排出することに利用したが、電気駆動式開閉装置が電気駆動することができる場合でも、水洗式便器を掃除するためにホースからバケツ等に水を給水することに利用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…便器本体
11…便鉢部
12B…第2側面部(側面部)
15…係止具
20…給水路
25…分岐部
30…電気駆動式開閉装置
40…ホース
41…第2止水栓(止水栓)
42…フック
17、18…容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部を有する便器本体と、
給水圧力を有する給水源に連通し、前記便鉢部に洗浄水を供給する給水路と、
この給水路を開閉する電気駆動式開閉装置とを備えた水洗式便器であって、
前記給水路を前記便器本体の輪郭内で分岐した分岐部と、
この分岐部に接続し、前記便器本体の輪郭内に収納したホースとを備えていることを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記分岐部は前記電気駆動式開閉装置より上流側の前記給水路を分岐していることを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記ホースは先端部に止水栓を設けていることを特徴とする請求項1又は2記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記ホースは先端部にフックを設けていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記便器本体は着脱自在な側面部を有しており、この側面部は内面側に設けた水を貯留することができる容器を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記便器本体は着脱自在な側面部を有しており、この側面部は内面側に設けた前記ホースを係止する係止具を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92003(P2013−92003A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235597(P2011−235597)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】