説明

水浄化装置及び水浄化方法

【課題】容易に小型化できる上に、優れた水処理性能を有する水浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明の水浄化装置は、炭素繊維を含むフリンジが内部に配置されたフリンジ配置槽(第1槽10、第2槽20、第3槽30)と、多孔質材料が内部に配置された多孔質材料配置槽(第4槽40)とを有する。本発明の水浄化装置においては、前記フリンジ配置槽に曝気手段が設けられていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を浄化するために用いられる水浄化装置及び水浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼、海の水を浄化する際に、または水質汚染の原因となる工場排水、温泉排水、飲食店排水、養鶏場排水、養豚場排水及び家庭排水などの下水を処理する際に、炭素繊維を含むフリンジを用いることが知られている。炭素繊維は、水を浄化する微生物が定着しやすいため、高い水浄化性能を有するとされている(特許文献1)。
また、排水処理においては、セメント等で作製された多孔質のブロックを水浄化材として使用することがある。例えば、多孔質ブロックの孔の中に微生物を担持させ、多孔質ブロックに排水を散水して排水処理をすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−290191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の炭素繊維を含むフリンジのみを用いた水処理では、処理が不充分であり、特に、水中の浮遊物質(SS)の除去が不充分であった。
一方、多孔質ブロックを用いた水浄化においては、充分な処理をおこなうためには、大型の水浄化装置が必要であり、広い敷地が必要であった。
本発明は、容易に小型化できる上に、優れた水処理性能を有する水浄化装置を提供すること、水浄化装置を容易に小型化できる上に、優れた水処理性能を有する水浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]炭素繊維を含むフリンジが内部に配置されたフリンジ配置槽と、多孔質材料が内部に配置された多孔質材料配置槽とを有する水浄化装置。
[2]前記フリンジ配置槽に曝気手段が設けられていることを特徴とする[1]に記載の水浄化装置。
[3]前記多孔質材料が多孔質セラミックス焼結体の粒状物であることを特徴とする[1]または[2]に記載の水浄化装置。
[4]前記多孔質セラミックス焼結体がスラグ、珪藻土及び汚泥からなる群から選ばれる少なくとも1つと粘土とを含む混合物が焼成されて得られたものであることを特徴とする[3]に記載の水浄化装置。
[5]前記フリンジが、炭素繊維の他にアクリル繊維を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の水浄化装置。
[6]前記フリンジが組紐であり、前記組紐を構成する繊維の一部が組紐本体部より突出していることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の水浄化装置。
[7]炭素繊維を含むフリンジに被処理水を接触させるフリンジ接触工程と、多孔質材料に被処理水を接触させる多孔質材料接触工程とを有する水浄化方法。
[8]前記フリンジ接触工程では、被処理水を曝気することを特徴とする[7]に記載の水浄化方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水浄化装置は、容易に小型化できる上に、優れた水処理性能を有する。
本発明の水浄化方法は、水浄化装置を容易に小型化できる上に、優れた水処理性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の水浄化装置の一実施形態で使用されるフリンジを示す写真である。
【図2】本発明の水浄化装置の他の実施形態で使用されるフリンジを示す写真である。
【図3】実施例の水浄化装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】実施例におけるフリンジへの微生物の付着状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「水浄化装置」
以下、本発明の実施形態に係る水浄化装置について説明する。
本実施形態の水浄化装置は、炭素繊維を含むフリンジが内部に配置されたフリンジ配置槽と、フリンジ配置槽の下流側に設けられ、多孔質材料が内部に配置された多孔質材料槽とを有する。フリンジ配置槽と多孔質材料槽とは配管を介して接続されている。
フリンジ配置槽及び多孔質材料槽は、各々、1槽であってもよいし、2槽以上であってもよい。フリンジ配置槽及び多孔質材料槽が、各々、2槽以上である場合、直列に接続されてもよいし、並列に接続されてもよい。
また、フリンジ配置槽及び多孔質材料配置槽は、各々、その内部が仕切り板で仕切られて複数に分割されてもよい。
【0009】
(フリンジ配置槽)
<フリンジ>
本実施形態におけるフリンジ配置槽の内部に配置されるフリンジは、図1に示すように、組紐であって、本線部11と、本線部11の側面から組紐を構成する炭素繊維と他の繊維の一部が突出して設けられた枝線部12とを備える。
【0010】
本実施形態では、フリンジを構成する組紐は、長手方向に対して垂直方向の断面が円形状の丸打組物からなる。また、組紐(丸打組物)の本線部11の断面形状は、円形状であっても四角形(角打組物)等の多角形であってもよいが、繊維の切断を防ぐ点から、円形状が好ましい。さらに、本線部11は筒状であってもよいし、中実でもよい。
本線部11の長さは特に限定されるものではなく、水浄化装置の大きさに応じて、数cm〜数kmの長さの範囲で調整される。
【0011】
本実施形態では、本線部11の側面から突出した枝線部12が輪奈状(環状)になっている。
枝線部12の、本線部11の側面からの長さは、1cm〜20cmであることが好ましく、3cm〜10cmであることがより好ましい。枝線部12の長さが1cm以上であれば、水浄化の効果がより大きくなり、20cm以下であれば、微生物の付着による繊維同士の集束を抑制しやすくなり、繊維の開繊性が向上して、フリンジの表面積の低下を防ぐことができる。
【0012】
本実施形態における組紐は、炭素繊維と、炭素繊維以外の他の繊維により構成されている。
ここで、炭素繊維としては、アクリル繊維から形成したPAN系炭素繊維、石油・石炭ピッチから形成したピッチ系炭素繊維、レーヨンから形成した炭素繊維のいずれであってもよい。
炭素繊維のフィラメント数は特に制限されない。例えば、炭素繊維は、フィラメント数が48000本以上のラージトウであってもよいし、24000本以下のレギュラートウであってもよい。レギュラートウとしては、例えば、24000本のトウ、12000本のトウ、6000本のトウ、3000本のトウ、1000本のトウ等が挙げられる。
【0013】
炭素繊維以外の他の繊維としては、例えば、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、アラミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、綿、麻、絹、羊毛、レーヨン、トリアセテートなどの繊維が挙げられる。
これらの中でも、水浄化をおこなう微生物との親和性及び炭素繊維とのバランスの観点からは、特にアクリル繊維を含むことが好ましい。アクリル繊維と炭素繊維を含むフリンジであれば、微生物がより付着しやすく、水浄化性能により優れ、かつ、メンテナンスの際にフリンジに付着した微生物が除去されやすくなる。
【0014】
組紐における炭素繊維の含有割合は、水浄化性能の観点からは、0.1質量%以上が好ましく、1〜80質量%がより好ましく、10〜70質量%がさらに好ましい。
【0015】
また、フリンジにおいては、組紐が筒状で、その内部(本実施形態では本線部の内部)に鉄材または多孔質材料が充填されてもよい。
筒状の組紐の内部に鉄材が充填された場合には、水中のリンの除去効果を向上させることができる。特に炭素繊維と鉄材が接触した環境で除去効果が向上する。
鉄材を充填する場合には、組紐の内径は、0.01〜50cmが好ましく、0.05〜10cmがより好ましい。組紐の内径が0.01cm以上であれば、充分な量の鉄材を組紐内部に充填でき、50cm以下であれば、水浄化装置をより小型化しやすくなる。
【0016】
組紐内部に充填された鉄材は、水への浸漬時間が長くなるにつれて、溶出量が多くなり、次第に細くなっていく。組紐は長さ方向に伸びやすく、内径が小さくなりやすい。そのため、組紐内部の鉄材が次第に細くなっても、それに追従して組紐の内径が小さくなるので、炭素繊維と鉄材とを接触させ続けることができ、長期間にわたって優れた水浄化性能を維持できる。
【0017】
多孔質材料を組紐の内部に充填する場合には、汚泥の発生を抑制することができる。多孔質材料としては、後述する多孔質材料配置槽に配置される多孔質材料と同様に、スラグ、珪藻土及び汚泥からなる群から選ばれる少なくとも1つと粘土を含む混合物を焼成して得た多孔質セラミックス焼結体の粒状物が好ましい。前記多孔質セラミックス焼結体の粒状物によれば、微生物がより定着するため、より優れた水浄化性能が得られる。多孔質セラミックス焼結体の詳細については後述する。
【0018】
多孔質材料を充填する場合には、組紐の内径は、0.5〜50cmが好ましく、1〜10cmがより好ましい。組紐の内径が0.5cm以上であれば、充分な量の多孔質材料を組紐内部に充填でき、50cm以下であれば、水浄化装置をより小型化しやすくなる。
【0019】
フリンジの槽中での固定方法については特に制限はない。例えば、フリンジの一端のみを、棒、ロープ、金属線等の固定部材に取り付け、前記固定部材を水面上に配置し、フリンジを水中に向けて吊り下げる方法が挙げられる。また、フリンジの両端を前記固定部材に取り付け、一方の固定部材を水面上に配置し、他方の固定部材を水中に配置してもよい。また、フリンジの両端を枠体に鉛直方向または水平方向に取り付け、その枠体ごと、水中に浸漬してもよい。また、フリンジの一端を枠体に取り付け、その枠体ごと、水中に浸漬し、被処理水の水流によりフリンジが友禅流しのように流されるようにしてもよい。
その際、フリンジの本数は1本である必要はなく、水浄化性能をより高めるためには、複数本であることが好ましい。
【0020】
本実施形態で使用される上記フリンジは組紐により構成されているため、炭素繊維同士が組まれて(他の繊維を含む場合には、炭素繊維と他の繊維も組まれて)拘束され、炭素繊維が水処理時に抜けて流出することを抑制できる。また、上記フリンジでは、本線部11の組紐の側面から組紐を構成する繊維の一部が突出して設けられた枝線部12を有し、表面積が大きくなるため、より多くの微生物を定着させることができ、水浄化性能をより向上させることができる。
【0021】
微生物が多く付着しすぎると、微生物の付着によって炭素繊維同士が集束して開繊性が低下し、かえって表面積を低下させる上に、微生物の付着力が強くなる傾向にある。そのため、組紐を構成する繊維が炭素繊維のみからなり、枝線部12を有する場合には、水浄化性能を損ない、また、メンテナンス性が低下するおそれがある。しかし、上記フリンジを構成する組紐は、炭素繊維以外に他の繊維を含むため、微生物の定着を適度に抑制できる。そのため、微生物の付着による炭素繊維の集束を防ぐことができ、開繊性を確保でき、表面積を高いまま維持できる。さらに、定着した微生物の付着力を適度に低下させることができるため、ホース等で水をかけたり、曝気手段により強めに曝気することにより、フリンジから微生物を容易に除去でき、メンテナンス性に優れる。
【0022】
<曝気手段>
本実施形態におけるフリンジ配置槽には、その内部の被処理水を曝気する曝気手段が設けられている。曝気手段により被処理水を曝気することにより、フリンジに付着した微生物に酸素を供給して微生物の活性を向上させることができ、また、メンテナンスの際にフリンジに付着した微生物を除去して洗浄することができる。
曝気手段は、フリンジ配置槽の底部、下部、中央部、上部のいずれか、または、これらのうちの複数の位置に設けられるが、微生物に酸素を供給しやすく、また、洗浄性が高いことから、少なくともフリンジ配置槽の底部に設けることが好ましい。
【0023】
(多孔質材料配置槽)
本実施形態における多孔質材料配置槽の内部に配置される多孔質材料としては、多孔質セラミックス焼結体、多孔質セメント成形体、多孔質プラスチック成形体などを用いることができる。その形状は球状、柱状、板状、円筒状等のいずれであってもよい。
多孔質材料の中でも、水浄化装置の小型化と高い水浄化性能とをより容易に両立できることから、多孔質セラミックス焼結体の粒状物が好ましく、スラグ、珪藻土及び汚泥からなる群から選ばれた少なくとも1つと粘土とを含む混合物を焼成して得た多孔質セラミックス焼結体がより好ましい。
【0024】
多孔質セラミックス焼結体は、マイクロメートルオーダーの気孔及び/又はミリメートルオーダーの気孔が互いに連通して、連通孔が形成されているものが好ましい。このような連通孔が形成された多孔質セラミックス焼結体では、微生物がより付着しやすく、また、被処理水との接触性もより優れる。
ここで、マイクロメートルオーダーの気孔とは、気孔の最大径(単に孔径ということがある)1〜1000μmのものを意味する。ここで、マイクロメートルオーダーの孔径は、多孔質セラミックス焼結体の切断面を電子顕微鏡で観察することによって測定した値である。
ミリメートルオーダーの気孔とは、気孔の最大径(単に孔径ということがある)1mm超5000mm以下のものを意味する。ここで、ミリメートルオーダーの孔径は、多孔質セラミックス焼結体を切断し、その切断面に形成されている孔をスケールで測定した値である。
気孔の孔径は、原料の種類や、焼成条件を組み合わせることにより調節できる。
【0025】
多孔質セラミックス焼結体の飽和含水率は、低すぎると充分な水浄化性能が得られず、高すぎると強度が不充分になるおそれがある。このため、多孔質セラミックス焼結体の飽和含水率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15〜80質量%がさらに好ましく、30〜80質量%が特に好ましく、40〜70質量%が最も好ましい。
飽和含水率は、試料を水に60分間浸漬し、水中から取り出し、表面の水滴を除去する程度に布に接触させた後、直ちに質量(飽和含水状態質量)を測定し、下記(1)式により求められる値である。
【0026】
飽和含水率(質量%)=[(飽和含水状態質量−絶乾質量)/絶乾質量]×100・・・(1)
【0027】
多孔質セラミックス焼結体の嵩比重は、1.0g/cm以下が好ましく、0.2〜0.95g/cmがより好ましく、0.4〜0.9g/cmがさらに好ましい。上記上限値超であると、水浄化装置全体の質量が重くなり、また、多孔質セラミックス焼結体自体が重くなるため、多孔質セラミックス焼結体の運搬や多孔質材料配置槽への配置などの取り扱い時の作業性が低下するおそれがある。上記下限値未満であると水処理時に浮き上がりすぎてしまい、水浄化性能が低下するおそれがある。
【0028】
上記多孔質セラミックス焼結体は、原料を混合して混合物を得る混合工程と、混合物を成形して成形体とする成形工程と、成形体を焼成してセラミックス焼結体を得る焼成工程とを有する製造方法によって製造される。この製造方法により得られた多孔質セラミックス焼結体は、連通孔を有し、多くの気孔を有するものとなる。
以下、上記製造方法の各工程について説明する。
【0029】
混合工程で使用する原料としては、スラグ、有機汚泥、珪藻土からなる群から選択される少なくとも1種と粘土とを含むものが好ましく、スラグ、有機汚泥、珪藻土及び粘土を含むものがより好ましい。スラグを用いることで大きなミリメートルオーダーの気孔を容易に形成することができ、珪藻土を用いることでマイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成することができる。加えて、有機汚泥を用いることでマイクロメートルオーダーの気孔と、さらに小さな気孔を容易に形成することができる。
飽和含水率の向上と嵩比重の低減との観点からは、スラグと有機汚泥と粘土とを含むもの、もしくはスラグと珪藻土と粘土とを含むものが好ましく、多孔質材料配置槽の小型化と多孔質セラミックス焼結体の強度の向上の観点からは、有機汚泥と珪藻土と粘土とを含むものが好ましい。飽和含水率と嵩比重とをよりバランス良くするためには、スラグ、有機汚泥、珪藻土及び粘土を含むものが好ましい。
【0030】
スラグは、特に限定されず、例えば、金属精錬時に発生する高炉スラグ、都市ゴミの溶融時に発生する都市ゴミ溶融スラグ、下水汚泥の溶融時に発生する下水汚泥溶融スラグ、ダクタイル鋳鉄等の鋳鉄時に発生する鋳鉄スラグ等のガラス質スラグ等が挙げられる。これらの中でも、鋳鉄スラグがより好ましい。鋳鉄スラグは、組成が安定しているため安定した発泡状態が得られると共に、他のスラグに比べ1.5〜2倍程度の発泡率であり、これを用いることで、偏平な形状のミリメートルオーダーの気孔を形成でき、透水性や保水性を高めることができる。
【0031】
混合物中のスラグの配合量は、混合物の成形性を勘案して決定することができるが、80質量%以下が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス焼結体の嵩比重を容易に好適な範囲にすることができる。
【0032】
有機汚泥は、主成分として有機物を含有する汚泥である。有機汚泥としては特に制限されないが、下水や工場等の排水処理に由来する活性汚泥が好ましい。活性汚泥は、活性汚泥法を用いた排水処理設備から、凝集・脱水工程を経て排出される。
有機汚泥を用いることで、マイクロメートルオーダーの気孔を効率的に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を容易に形成できる。ナノメートルオーダーの気孔が形成されることで、嵩比重の低い多孔質セラミックス焼結体を容易に得ることでき、また、微生物の定着箇所を増加させることができる。さらに、有機汚泥はもともと主として微生物の凝集物であるため、有機汚泥の消失場所には微生物が定着しやすい。さらに、廃棄物の位置付けであった排水処理由来の活性汚泥を原料としてリサイクルすることができる。
ナノメートルオーダーの気孔とは、気孔の最大径が1nm以上1000nm未満のものを意味する。ナノメートルオーダーの孔径は、多孔質セラミックス焼結体の切断面を電子顕微鏡で観察することによって測定した値である。
有機汚泥の含水率は、60〜90質量%が好ましく、65〜85質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、均質な混合物が得られると共に、良好な成形性を維持しやすい。
【0033】
有機汚泥中の有機物の含有量は、特に限定されないが、有機汚泥の固形分中の有機物の含有量(有機物含有量)として70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。前記有機物含有量が多いほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を形成できる。なお、有機物含有量は、乾燥後の汚泥をJIS M8812−1993に準じ、炭化温度700℃で灰分(質量%)を測定し、下記(2)式により求められる値である。
【0034】
有機物含有量(質量%)=100(質量%)−灰分(質量%) ・・・(2)
【0035】
有機汚泥の平均粒子径は、好ましくは1〜5μm、より好ましくは1〜3μmとされる。平均粒子径が小さいほど、マイクロメートルオーダーの気孔を容易に形成でき、さらに、ナノメートルオーダーの気孔を容易に形成できる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)により測定される体積基準のメディアン径(体積50%径)である。
【0036】
混合物中の有機汚泥の含有量は、混合物の成形性等を勘案して決定することができるが、1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば混合物は適度な流動性と可塑性とを備え、成形工程における成形性が向上し、成形装置内に閉塞することなく円滑に成形できる。
【0037】
珪藻土は、珪藻の遺骸からなる堆積物であり、マイクロメートルオーダーの気孔を有する多孔質である。珪藻土を用いることで、珪藻土に由来する微細な気孔を粒状セラミックスに形成できる。
珪藻土としては、特に限定されず、従来、耐火断煉瓦、濾過材等に使用されていたものと同様のものを用いることができる。珪藻土に夾雑している粘土鉱物(モンモリロナイト等)や石英、長石等を分別精製する必要はなく、これらの含有率を把握した上で、混合物への配合量を調整すればよい。また、珪藻土を用いて得られた耐火断煉瓦、濾過材等の粉砕物を用いてもよい。
【0038】
珪藻土の含水率は特に限定されず、自然乾燥状態での含水率が20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましく、35〜45質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、含水率を把握すると共に、混合の際に夾雑物中の粗粒子分を除去して使用することで、成形性が良好な混合物を得ることができる。
なお、含水率は、下記仕様の赤外線水分計を用い、試料を乾燥(200℃、12分)し、下記(3)式により求められた値である。
【0039】
[仕様]
測定方式:乾燥減量法(加熱乾燥・質量測定方式)
最小表示:含水率;0.1質量%
測定範囲:含水率;0.0〜100質量%
乾燥温度:0〜200℃
測定精度:試料質量5g以上で、含水率±0.1質量%
熱源:赤外線ランプ;185W
【0040】
含水率(質量%)=[(m−m)/(m−m)]×100 ・・・(3)
:乾燥前の容器の質量と乾燥前の試料の質量との合計質量(g)
:乾燥後の容器の質量と乾燥後の試料の質量との合計質量(g)
:乾燥後の容器の質量(g)
【0041】
混合物中の珪藻土の含有量は、多孔質セラミックス焼結体に求める飽和含水率や強度等を勘案して決定できるが、55質量%以下が好ましく、1〜45質量%がより好ましい。上記上限値以下であれば、混合物の成形性が良好であり、上記下限値以上であれば、所望の飽和含水率の多孔質セラミックス焼結体や、所望の強度の多孔質セラミックス焼結体が得られやすい。
【0042】
多孔質セラミックス焼結体の原料として使用される粘土は、一般的に窯業原料として用いられる粘土状の性状を示す鉱物材料であり、珪藻土以外のものである。
具体的には、粘土は、石英、長石、粘土系等の鉱物組成で構成されるが、構成鉱物はカオリナイトを主とし、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライトを含むものが好ましい。中でも、焼結時のクラックの進展を抑え、多孔質セラミックス焼結体の破壊を防ぐ観点から粒子径が500μm以上の石英の粗粒を含むものがより好ましい。このような粘土としては、例えば、蛙目粘土等が挙げられる。粘土は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合される。
【0043】
混合物中の粘土の含有量は、多孔質セラミックス焼結体に求める強度や成形性等を勘案して決定できるが、5〜55質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。上記範囲内であれば混合物の成形性を損なわず、かつ円滑に成形できると共に、多孔質セラミックス焼結体の強度を充分なものにできる。
【0044】
混合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、マイティ2000WH(商品名、花王株式会社製)等のナフタリン系の流動化剤、メルメントF−10(商品名、昭和電工株式会社製)等のメラミン系の流動化剤、ダーレックススーパー100pH(商品名、グレースケミカルズ株式会社製)等のポリカルボン酸系の流動化剤、銀、銅、亜鉛等の抗菌剤、ゼオライト、アパタイト等の吸着剤、金属アルミニウム等が挙げられる。また、ホウケイ酸ガラスなどの高融点ガラスの破砕物などを多孔質セラミックス焼結体の強度向上剤として含有させてもよい。
【0045】
混合物に任意成分を配合する場合、任意成分の配合量は、5〜10質量%の範囲内にすることが好ましい。なお、ホウケイ酸ガラスなどの高融点ガラスの破砕物など、多孔質セラミックス焼結体の組成に近い物質であれば、他の成分との配合バランスにもよるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、30質量%程度添加ですることも可能である。
加えて、後述する混合工程において、有機汚泥が好適な配合比で配合されている場合には、混合工程にて水を添加しなくてもよいし、混合物の流動性の調整等を目的として、適宜、水を配合してもよい。
【0046】
混合工程に用いられる混合装置は特に限定されず、公知の混合装置を用いることができる。具体的に、混合装置としては、ミックスマラー(東新工業株式会社製)等の混練機や、ニーダー(株式会社モリヤマ製)、混合機(日陶科学株式会社製)等を使用することができる。
【0047】
混合工程における混合時間は、原料の配合比、混合物の流動性等を勘案して決定することができるが、混合物が可塑状態となるような混合時間にすることが好ましい。具体的には、混合時間は、15〜45分の範囲とすることが好ましく、25〜35分の範囲とすることがより好ましい。
【0048】
混合工程における温度は特に限定されず、原料の配合比や含水率等を勘案して決定することができるが、40〜80℃の範囲とすることが好ましく、50〜60℃の範囲とすることがより好ましい。
【0049】
成形工程は、混合工程で得られた混合物を所定の形状に成形する工程である。
成形方法は、公知の成形方法を用いることができ、混合物の性状や所望する成形体の形状を勘案して決定することができる。成形方法は、例えば、成形機を用いて、板状、粒状又は柱状等の成形体を得る方法、混合物を任意の形状の型枠に充填して成形体を得る方法、あるいは、混合物を押し出し、延伸又は圧延した後、任意の寸法に切断する方法等が挙げられる。
成形機としては、真空土練成形機、平板プレス成形機、平板押出し成形機等が挙げられ、中でも、真空土練成形機が好ましい。
【0050】
焼成工程は、成形工程で得られた成形体を乾燥し(乾燥操作)、乾燥した成形体を焼成し(焼成操作)、粘土等を焼結してセラミックス焼結体を得る工程である。
乾燥操作は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、成形体を自然乾燥してもよいし、50〜220℃の熱風乾燥炉で任意の時間処理して乾燥してもよい。乾燥後の成形体の含水率は、特に限定されないが、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましい。
焼成操作は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ローラーハースキルン等の連続式焼結炉、シャトルキルン等の回分式焼結炉を用い、任意の温度で焼成する方法が挙げられる。中でも、焼成操作には、生産性の観点から連続式焼結炉を用いることが好ましい。
焼成温度は、混合物の性状等に応じて決定でき、例えば、900℃〜1200℃とされる。上記下限値以上であれば、有機汚泥由来の臭気成分が熱分解され解消されると共に、有機汚泥中の有機物の大部分が揮発して減量する。また、スラグが発泡し嵩比重が低下し、飽和含水率も向上する。上記上限値超であると、セラミックス焼結体の組織全体のガラス化が進み、成形体が破損したり、気孔が閉塞するおそれがある。
【0051】
焼成工程の後、必要に応じて破砕工程を有してもよい。破砕工程では、焼成工程で得られたセラミックス焼結体をハンマーミル等で破砕し(破砕操作)、得られた破砕物を任意の粒子径になるように篩分けする(篩分操作)。なお、破砕操作の条件設定にて、所望する範囲の粒子径の多孔質セラミックス焼結体が得られる場合には、必ずしも篩分操作を行う必要はない。
【0052】
上記の多孔質セラミックス焼結体としては、特開2005−239467号公報に記載のセラミックス焼結体、国際公開第10/106724号パンフレットに記載の多孔質セラミックス焼結体等、及び必要に応じてこれらを破砕したもの等が挙げられる。また、多孔質セラミックス焼結体であるグリーンビズ(登録商標、小松精練株式会社製)及び必要に応じてこれを破砕したもの等が挙げられる。
【0053】
多孔質セラミックス焼結体の粒状物の粒子径は0.1cm超、50cm以下が好ましく、0.5〜10cmがより好ましい。粒状物の粒子径が0.1cm超であると、被処理水の浄化中に多孔質セラミックス焼結体が流出しにくく、50cm以下であれば、被処理水の多孔質セラミックス焼結体の接触時間を維持でき、より優れた水処理性能を有する。
なお、上記の粒子径は篩分けにより得た粒子径である。例えば、開口径が0.1mmの篩を通過しない粒状物の粒子径は0.1mm超であり、一方、通過した粒状物は0.1mm以下である。
【0054】
多孔質材料配置槽における多孔質材料の槽中での固定方法については特に制限はない。例えば、槽の底部に多孔質材料を敷き詰めてもよいし、槽内に固定した金網、目皿、ネットなどの上に多孔質材料を配置してもよいし、ネットや籠の中に多孔質材料を充填してもよい。
【0055】
多孔質材料配置槽には、その内部の被処理水を曝気する曝気手段を設けてもよいし、曝気手段を設けなくてもよい。曝気手段により曝気する場合には、微生物に酸素を供給でき、また、多孔質材料を洗浄することができる。被処理水を曝気しない場合には、嫌気性の微生物が増殖し、この嫌気性微生物によって被処理水を浄化するものと思われる。
【0056】
「水浄化方法」
上記水浄化装置を用いた水浄化方法の実施形態について説明する。
本実施形態の水浄化方法は、フリンジ配置槽にてフリンジに被処理水を接触させるフリンジ接触工程と、多孔質材料配置槽にて多孔質材料に被処理水を接触させる多孔質材料接触工程とを有する。
【0057】
フリンジ接触工程では、フリンジに被処理水を接触させて、フリンジに含まれる炭素繊維に定着した微生物によって生物処理して浄化する。
フリンジには、速やかに水浄化を開始できることから、あらかじめ水浄化用の微生物を付着させておくことが好ましい。フリンジに微生物を付着させる方法としては、微生物付着用の槽にてフリンジに微生物を付着させる方法、フリンジを槽内に配置し、水に浸漬させ、槽内に水処理用の微生物(種菌)を添加する方法が挙げられる。槽内に微生物を添加する場合には、フリンジに微生物が充分付着した後、水量を増やし、水を浄化することが好ましい。
【0058】
本実施形態におけるフリンジ接触工程では、被処理水を曝気手段により曝気する。これにより、被処理水中に空気(酸素)を供給することができ、微生物の活性、特にフリンジに付着している大量の微生物の活性が向上するため、水浄化の効率がより向上する。
【0059】
多孔質材料接触工程では、多孔質物質に被処理水を接触させることにより浄化する。多孔質物質は、孔が多数形成されており、微生物の定着場所になると共に、表面積が広く、水との接触面積が大きくなり、SSの付着量を増やすことができるため、被処理水を浄化することができる。特に、連通孔を有しているものは、水処理時に被処理水と多孔質材料内部の孔との接触がさらに増え、被処理水をより浄化できる。
【0060】
(作用効果)
上記実施形態の水浄化装置及び水処理方法では、水処理の性能に優れ、SSについても充分に除去でき、また、短時間で大量の水を処理することができる。したがって、水浄化装置を容易に小型化できるため、狭いスペースに設置することができる。
また、フリンジ配置槽にてフリンジに被処理水を接触させた後に多孔質材料配置槽にて多孔質材料に被処理水を接触させる上記実施形態では、水の浄化効率をより向上させることができる。
【0061】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、本発明で使用されるフリンジは、図2に示すように、枝線部は輪奈状でなくてもよく、輪奈が切断されて、端部13aを有する非環状の枝線部13でもよい。
また、組紐は、丸打組物に限らず、平打組物であってもよい。
また、本発明の水浄化装置で使用されるフリンジは組紐ではなく、編紐、撚紐、織紐、束紐やその他一般的なフリンジであってもよい。また、フリンジは、他の繊維を有さず、炭素繊維のみで構成されていてもよい。
また、フリンジ配置槽に曝気手段を設けず、フリンジ接触工程にて被処理水を曝気しなくても構わない。
【0062】
また、本発明の水浄化装置は、フリンジ配置槽と、フリンジ配置槽の上流側に設けられた多孔質材料配置槽とを有するものでもよい。あるいは、第1のフリンジ配置槽と、該第1のフリンジ配置槽の下流側に設けられた多孔質材料配置槽と、該多孔質材料配置槽の下流側に設けられた第2のフリンジ配置槽とを有するものでもよい。あるいは、第1の多孔質材料配置槽と、該第1の多孔質材料配置槽の下流側に設けられたフリンジ配置槽と、該フリンジ配置槽の下流側に設けられた第2の多孔質材料配置槽とを有するものでもよい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0064】
(使用原料)
実施例に用いた材料は、以下の通りである。
<有機汚泥>
染色工場(小松精練株式会社、美川工場)の活性汚泥法による排水処理設備から、凝集・脱水工程を経て排出された活性汚泥。この活性汚泥の有機物含有量(対固形分)は83質量%、含水率は70質量%であった。
<粘土>
蛙目粘土(岐阜県産又は愛知県産)。
<珪藻土>
能登地区産の耐火煉瓦の原料で、含水率が5質量%の粉末状の珪藻土。
<鋳鉄スラグ>
SiO、Al、CaO、Fe、FeO、MgO、MnO、KO、NaOを主成分とするダクタイル鋳鉄スラグ。
【0065】
<多孔質セラミックス焼結体>
以下の製造方法で多孔質セラミックス焼結体を製造した。
有機汚泥10質量部と、鋳鉄スラグ55質量部と、粘土30質量部と、珪藻土5質量部とをミックスマラー(東新工業株式会社製)で混合して混合物とし、これを真空土練成形機(高浜工業株式会社製)で板状に成形して成形体とした。得られた成形体を1000℃で焼成し多孔質セラミックス焼結体を得た。得られたセラミックス焼結体を破砕し、篩を通過させて0.5cm〜3cmの粒状の多孔質セラミックス焼結体を得た。
得られた多孔質セラミックス焼結体は、連通孔が形成されたものであり、嵩比重0.75g/cm、飽和含水率50質量%であった。なお、嵩比重及び飽和含水率は、任意の10個についての測定結果の平均値である。
【0066】
<フリンジ>
フリンジとして、図2に示す組紐を用いた。
すなわち、フリンジを構成する組紐は、炭素繊維、アクリル繊維(毛糸)、アクリル繊維(スパン)から構成され、本線部11と、本線部11の側面から炭素繊維13b及びアクリル繊維(毛糸)13cの一部が突出して設けられた枝線部13(輪奈を切断したもの、本線部11からの長さは5cm)とを有するものとした。組紐の本線部11は内径が1.5cmの断面形状が円形状で筒状の丸打組物である。また、本線部の長さは1.5mとした。
組紐にける炭素繊維、アクリル繊維(毛糸)、アクリル繊維(スパン)の質量割合は、炭素繊維:アクリル繊維(毛糸):アクリル繊維(スパン)=30:28:2とした。枝線部13における炭素繊維とアクリル繊維(毛糸)は、炭素繊維とアクリル繊維(毛糸)の質量割合は1:1とした。
【0067】
<水浄化装置>
図3に、本実施例の水浄化装置を示す。この水浄化装置は、タテ2.5m、ヨコ1.2m、高さ2mの水槽(第1槽10、第2槽20、第3槽30、第4槽40)を直列に4つ備え、各槽10,20,30,40の内部が、ヨコ方向を二分する仕切り板Dを有して2つの室A,Bに分割されたものである。各槽が仕切られて形成された各室A,Bの底部には、各室A,B同士を連通する配管を設けた。また、仕切られて分割された各室A,Bの底部には曝気手段を取り付けた。また、各槽はオーバーフローした水が次の槽に流れ込むように、配管Cを介して上部で連結した。
上流側の3つの槽(第1槽10、第2槽20、第3槽30)はフリンジが配置されるフリンジ配置槽とした。具体的に、第1槽10、第2槽20、第3槽30では、分割により形成された各室A,Bに、1.5mのフリンジ60本を吊り下げた枠を1枠ずつ配置した。したがって各槽には2枠(フリンジ数60本×2=120本)ずつ配置した。フリンジの上下は紐を用いて枠に固定した。
最も下流側の1槽(第4槽40)は、多孔質材料が配置される多孔質材料配置槽とした。具体的に、第4槽40では、分割により形成された各室A,Bの底部から30cm上方の位置に目皿を配置し、その目皿の上に多孔質物質を250kgずつ配置した。
【0068】
<排水の浄化>
[フリンジへの微生物の固定]
第1槽10、第2槽20、第3槽30の各々に、小松精練株式会社にて発生した排水6mを入れ、次いで、小松精練株式会社において通常の水処理に用いている微生物(種菌:MLSS14000mg/L)を10リットル/日投入して、水処理を開始した。水処理の際には、水中の溶存酸素が2〜3mg/Lとなるように各槽内部の排水を曝気した。これにより、フリンジに微生物を固定させた。
水処理開始から10日後のフリンジでは、図4に示すように、枝線部の炭素繊維が、微生物の付着による集束が抑制され、開繊性が高くなっていた。そのため、繊維が広がった状態で微生物が付着しており、微生物の付着量が多かった。
【0069】
[水浄化処理]
フリンジに微生物を固定した後、小松精練株式会社にて発生した排水を水浄化装置に連続供給した。排水の供給量は0.6m/h、1.2m/h、3.6m/h、4.8m/hとして、排水を水処理した。水処理の際には、水中の溶存酸素が2〜3mg/Lとなるように各槽を曝気した。また、水浄化装置内の滞留時間はおよそ、0.6m/hで40時間、1.2m/hで20時間、2.4m/hで12時間、3.6m/hで7時間、4.8m/hで5時間とした。
【0070】
各供給量での処理後のBOD、SSの値は
0.6m/h( 288kL処理後) BOD 8mg/L、SS 5mg/L
1.2m/h( 194kL処理後) BOD 11mg/L、SS 2mg/L
3.6m/h( 444kL処理後) BOD 6mg/L、SS 4mg/L
4.8m/h(1027kL処理後) BOD 2mg/L、SS 2mg/L
であった。
なお、小松精練株式会社から排出される排水のBOD、SSは時間とともに変化するため参考値であるが1点測定したところ、処理前のBODが21mg/L、SSが260mg/Lであった。
【0071】
水浄化処理前の排水は濁っていたが、浄化処理後では、いずれの流量の条件でも透き通っていた。したがって、本実施例の水浄化装置によれば、いずれの流量でも排水を充分に浄化できることが確認された。また、短時間で大量の排水を処理でき、装置のさらなる小型化も可能であることが確認された。
さらに、水処理終了後、曝気手段の出力を最大としたところ、フリンジに付着していた微生物を容易に除去でき、メンテナンス性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の水浄化装置は、優れた水浄化能力を有するため、滞留しやすい湖沼水の処理や、工場、温泉、飲食店、養鶏場、養豚場、家庭などから排出される排水を連続的に処理することもできる。また、本発明の水浄化装置は容易に小型化でき、狭いスペースにおいても設置できる。
【符号の説明】
【0073】
10 第1槽
11 本線部
12,13 枝線部
13a 端部
13b 炭素繊維
13c アクリル繊維
20 第2槽
30 第3槽
40 第4槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維を含むフリンジが内部に配置されたフリンジ配置槽と、多孔質材料が内部に配置された多孔質材料配置槽とを有する水浄化装置。
【請求項2】
前記フリンジ配置槽に曝気手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水浄化装置。
【請求項3】
前記多孔質材料が多孔質セラミックス焼結体の粒状物であることを特徴とする請求項1または2に記載の水浄化装置。
【請求項4】
前記多孔質セラミックス焼結体がスラグ、珪藻土及び汚泥からなる群から選ばれる少なくとも1つと粘土とを含む混合物が焼成されて得られたものであることを特徴とする請求項3に記載の水浄化装置。
【請求項5】
前記フリンジが、炭素繊維の他にアクリル繊維を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水浄化装置。
【請求項6】
前記フリンジが組紐であり、前記組紐を構成する繊維の一部が組紐本体部より突出していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水浄化装置。
【請求項7】
炭素繊維を含むフリンジに被処理水を接触させるフリンジ接触工程と、多孔質材料に被処理水を接触させる多孔質材料接触工程とを有する水浄化方法。
【請求項8】
前記フリンジ接触工程では、被処理水を曝気することを特徴とする請求項7に記載の水浄化方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−34960(P2013−34960A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174199(P2011−174199)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】