説明

水添共重合体及びその組成物

【課題】耐溶剤性、自然収縮性、低温収縮性、剛性等に優れ、耐ブロッキング性、耐温水融着性、低温伸び及び耐衝撃性等の物性バランスに優れ、ゲルに起因するフィッシュアイ(FE)が少ない熱収縮性フィルムに好適な水添共重合体を提供する。
【解決手段】ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる非水添共重合体を水添し、特定重量のビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロック(A)と、特定のビニル芳香族炭化水素含有量のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体ブロック(B)を少なくとも1つ含有し、動的粘弾性測定の関数tanδのピークが80℃を越え、110℃以下の範囲に少なくとも1つ存在する水添共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルムに適した耐溶剤性、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性、低温伸び及び耐衝撃性等の物性バランスに優れた水添共重合体及びその組成物に関する。また、本発明は耐溶剤性、自然収縮性、低温収縮性、剛性、耐ブロッキング性、耐温水融着性、低温伸び及び耐衝撃性等の物性バランスに優れ、ゲルに起因するフィッシュアイ(FE)が少ないシート・フィルム、熱収縮性フィルム及び熱収縮多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素含有量が比較的高い、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体は、透明性、耐衝撃性等の特性を利用して射出成形用途、シート、フィルム等の押し出し成形用途等に使用されている。とりわけビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体樹脂を用いた熱収縮性フィルムは、従来使用されている塩化ビニル樹脂の残留モノマーや可塑剤の残留及び焼却時の塩化水素の発生の問題もないため、食品包装やキャップシール、ラベル等に利用されている。熱収縮性フィルムに必要な特性として自然収縮性、低温収縮性、透明性、機械強度、包装機械適性等の要求がある。これまで、これらの特性の向上と良好な物性バランスを得るため種々の検討がなされてきた。
例えば機械特性、光学特性、延伸特性及び耐クラック特性等に優れる組成物を得るため、脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体含有量が5〜80重量%で、ビカット軟化点が90℃を越えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また収縮特性、耐環境破壊性に優れた熱収縮性フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体のセグメントに特定のTgを有する熱収縮性フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。収縮特性、耐環境破壊性に優れた熱収縮性フィルムを得るため、特定構造のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体の組成物からなる熱収縮性フィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照)。低温収縮性、光学特性、耐クラック特性、寸法安定性等に優れる収縮フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素含有量が95〜20重量%で、ビカット軟化点が90℃を越えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物を延伸した低温収縮性フィルムが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
室温での自然収縮性を改良するため、スチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素からなるブロック共重合体とスチレン系炭化水素を含有した特定Tgのランダム共重合体の組成物からなるポリスチレン系熱収縮フィルムが開示されている(例えば、特許文献5参照)。フィルムの経時安定性と耐衝撃性に優れた透明性熱収縮性フィルムを得るため、ビカット軟化点が105℃を越えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物で、特定の熱収縮力を特徴とする熱収縮性硬質フィルムが開示されている(例えば、特許文献6参照)。透明性、剛性及び低温面衝撃性をバランスさせた組成物を得るため、特定構造と分子量分布を有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体とビニル芳香族炭化水素−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂との組成物が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0005】
透明性と耐衝撃性に優れた樹脂組成物を得るため、特定構造のビニル芳香族炭化水素ブロックビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体ブロックを有するブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を含有する透明高強度樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献8参照)。低温収縮性、光学特性、耐クラック特性、寸法安定性等に優れる収縮フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素含有量が95〜20重量%で、ビカット軟化点が90℃を越えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物を少なくとも1層有する多層低温収縮性フィルムが開示されている(例えば、特許文献9参照)。
自然収縮性、強度、表面特性、腰の強さ、低温収縮性等に優れる収縮フィルムを得るため、両外層が特定ブタジエン単位含量のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体とスチレン−ブチルアクリレートの混合物、中間層が特定ブタジエン単位含量のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体とスチレン−ブチルアクリレートの混合物からなる少なくとも3層の多層ポリスチレン系熱収縮フィルムが開示されている(例えば、特許文献10参照)。
【0006】
自然収縮性、耐熱融着性、透明性、収縮仕上がり性のいずれかの特性に優れた熱収縮性フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を組み合わせた配合物を中間層とし、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体を主成分とした混合重合体を表裏層とする熱収縮性ポリスチレン系積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献11参照)。低温での熱収縮特性、収縮仕上がり性、自然収縮率、熱時、フィルム同士のブロッキングが発生しない熱収縮性フィルムを得るため、中間層が特定のビカット軟化点のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分とし、内外層が特定のビカット軟化点のスチレン−共役ジエンブロック共重合体を主成分とする特定の熱収縮率を有する多層熱収縮性ポリスチレン系フィルムが開示されている(例えば、特許文献12参照)。
【0007】
加工特性、保存安定性、臭気が少なく、剛性や耐衝撃性に優れた樹脂組成物及びフィルム、多層フィルムを得るため、特定の分子量分布、残存単量体量を特徴とするスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる共重合体樹脂とスチレンと共役ジエンからなるブロック共重合体樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂組成物を主体とする層を有する(多層)熱収縮性フィルムが開示されている(例えば、特許文献13参照)。柔軟性に富み、反発弾性と耐傷付き性が優れ、且つ取り扱い性が良好な水添共重合体を得るため、ビニル芳香族炭化水素の含有量、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量、重量平均分子量、及び共役ジエンの二重結合の水添率が特定の範囲にある水添共重合体が開示されている(例えば、特許文献14参照)。柔軟性、引張強度、耐摩耗性、耐打痕性に優れ、且つ架橋性が良好な水添共重合体を得るため、ビニル芳香族炭化水素の含有量、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量、重量平均分子量、共役ジエンの二重結合の水添率及びtanδのピーク温度が特定の範囲にある水添共重合体が開示されている(例えば、特許文献15参照)。
【0008】
しかしながら、これらのビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体又は該ブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体の組成物は、耐溶剤性、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性、耐ブロッキング性、耐温水融着性及び耐衝撃性のバランス及びゲルに起因するフィッシュアイ(FE)が十分でなく、これらの文献にはそれらを改良する方法に関して開示されておらず、依然として市場での問題点が指摘されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−221348号公報
【特許文献2】特開昭60−224520号公報
【特許文献3】特開昭60−224522号公報
【特許文献4】特開昭61−25819号公報
【特許文献5】特開平4−52129号公報
【特許文献6】特開平5−104630号公報
【特許文献7】特開平6−220278号公報
【特許文献8】特開平7−216187号公報
【特許文献9】特開昭61−41544号公報
【特許文献10】特開2000−185373号公報
【特許文献11】特開2000−6329号公報
【特許文献12】特開2002−46231号公報
【特許文献13】特開2002−201324号公報
【特許文献14】WO03/035705号公報
【特許文献15】WO04/003027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、耐溶剤性、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性及び耐衝撃性等の物性バランスに優れた熱収縮性フィルムに適した水添共重合体及びその組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の水添共重合体により上記の目的が達成されることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、
[1]ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる非水添共重合体を水添して得られ、ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロック(A)を少なくとも1つ、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体ブロック(B)を少なくとも1つ含有する水添共重合体(I)であって、下記の(1)〜(7)の特性を有することを特徴とする水添共重合体(I)、
(1)ビニル芳香族炭化水素含有量が該水添共重合体(I)の重量に対して、80重量%を越え、90重量%未満の範囲であり、
(2)重合体(A)の含有量が、該非水添共重合体の重量に対して、25重量%を越え、60重量%未満の範囲であり、
(3)共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素含有量が80重量%以上、95重量%未満の範囲であり、
(4)重量平均分子量が5万〜100万の範囲であり、
(5)該共役ジエン単位の二重結合の水添率が60重量%以上であり、
(6)該水添共重合体(I)のビカット軟化温度が65〜85℃の範囲であり、
(7)該水添共重合体(I)の動的粘弾性測定の関数tanδのピークが80℃を越え、110℃以下の範囲に少なくとも1つ存在する、
【0012】
[2](1)ビニル芳香族炭化水素含有量が該水添共重合体(I)の重量に対して、82〜89重量%の範囲であり、
(2)重合体ブロック(A)の含有量が、該非水添共重合体(I)の重量に対して、28〜55重量%の範囲であり、
(3)共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素含有量が83重量%以上、92重量%未満の範囲であり、
(4)重量平均分子量が10万〜80万の範囲であり、
(5)該共役ジエン単位の二重結合の水添率が70重量%以上であり、
(6)該水添共重合体(I)のビカット軟化温度が68〜80℃の範囲であり、
(7)該水添共重合体(I)の動的粘弾性の関数tanδのピークが83℃を越え、105℃以下の範囲に少なくとも1つ存在する、
ことを特徴とする上記1に記載の水添共重合体(I)、
【0013】
[3]水添共重合体(I)と少なくとも1個のプラスチック性重合体セグメントAと少なくとも1個のエラストマー性重合体セグメントBを有し、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が65/35〜82/18であるブロック共重合体で、該ブロック共重合体の動的粘弾性の関数tanδのピークが−95〜−10℃に少なくとも1つ有するブロック共重合体(II)とからなる組成物で、該組成物のビカット軟化温度が60〜83℃の範囲であり、水添共重合体(I)とブロック共重合体(II)の重量比が10/90〜90/10である重合体組成物。
[4]水添共重合体(I)、ブロック共重合体(II)およびスチレン含有量が70〜90重量%、脂肪族不飽和カルボン酸エステル含有量が30〜10重量%からなる脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体(III)とからなる組成物で、該組成物のビカット軟化温度が60〜83℃の範囲であり、共重合体(I)、ブロック共重合体(II)および脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体(III)の重量比が、合計量を100重量%として、(I)が10〜80重量%、(II)が10〜80重量%、および(III)が5〜50重量%の範囲からなる重合体組成物、
【0014】
[5]ブロック共重合体(II)中の共役ジエン単位の二重結合の水添率が1〜100重量%の範囲であることを特徴とする上記3または上記4に記載の重合体組成物。
【0015】
[6]上記1〜5のいずれかに記載の水添共重合体(I)及び重合体組成物からなるシート・フィルム。
[7]上記1〜5のいずれかに記載の水添共重合体(I)及び重合体組成物を延伸してなり、延伸方向における80℃の熱収縮率が5〜60%、延伸方向における引張弾性率が700〜3000MPaである熱収縮性フィルム。
[8]上記1または上記2に記載の水添共重合体(I)100重量部に対して、脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂および脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.01〜5重量部添加することを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の水添共重合体(I)、又は組成物、又はシート・フィルム、或いは熱収縮性フィルム。
【0016】
[9]上記1または上記2に記載の水添共重合体(I)100重量部に対して、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾールから選ばれる少なくとも1種の安定剤を0.05〜3重量部添加することを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の水添共重合体(I)、又は組成物、又はシート・フィルム、或いは熱収縮性フィルム。
[10]上記1または上記2のいずれかに記載の水添共重合体(I)100重量部に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダード・アミン系光安定剤から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤又は光安定剤を0.05〜3重量部添加することを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の水添共重合体(I)、又は組成物、又はシート・フィルム、或いは熱収縮性フィルム。
[11]上記1または上記に記載の水添共重合体(I)、或いは請求項3〜5のいずれかに記載の組成物からなる層を多層フィルムの少なくとも1つの層とし、延伸方向における80℃の熱収縮率が5〜60%であることを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
[12]延伸方向における引張弾性率が700〜3000MPaである上記11に記載の熱収縮性多層フィルム。
【発明の効果】
【0017】
本発明のブロック共重合体水添物を使用した熱収縮性フィルムは耐溶剤性、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性、低温伸び及び耐衝撃性等の物性バランスに優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の水添共重合体(I)は、非水添重合体のビニル芳香族炭化水素の含有量が80重量%を越え、90重量%未満、好ましくは82〜89重量%、更に好ましくは84〜89重量%の範囲である。ビニル芳香族炭化水素含有量が80重量%を越え、90重量%未満の範囲にあっては剛性と低温伸びのバランスに優れる熱収縮性フィルムを得ることができる。
【0019】
本発明の水添共重合体(I)の重合体(A)の含有量は、非水添重合体の重量に対して、25重量%を越え、60重量%未満、好ましくは28〜55重量%、更に好ましくは30〜50重量%の範囲である。重合体(A)の含有量が25重量%を越えると温水融着性に優れ、60重量%未満では低温収縮性が優れた熱収縮性フィルムを得ることができる。重合体(A)の含有量は非水添共重合体を四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)で測定でき、該方法により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分の重量(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めた値を云う。
重合体ブロック(A)(重量%)=(非水添共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(A)の重量/非水添共重合体中の重量)×100
尚、重合体ブロック(A)の水添共重合体(I)に対する含有率を水添共重合体(I)から直接測定する場合はWO04/003027号公報(27〜28頁)に記載の方法を用いても良い。
【0020】
本発明の水添共重合体(I)の共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素含有量は80重量%以上、95重量%未満の範囲、好ましくは83〜92重量%の範囲、更に好ましくは86〜92重量%の範囲である。共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素含有量が80重量%以上では剛性に優れ、95重量%未満では耐温水融着性に優れる。
本発明の水添共重合体(I)の重量平均分子量は5万〜100万の範囲、好ましくは10万〜80万の範囲、更に好ましくは13万〜60万の範囲である。重量平均分子量は5万〜100万の範囲にあっては成形加工性に優れる。本発明において分子量分布(Mw/Mn、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)の好ましい範囲は10以下、更に好ましくは1.05〜6の範囲、取り分け好ましい範囲は1.1〜3の範囲である。水添共重合体の重量平均分子量は、非水添共重合体の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、分子量を特定するものである。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)用の単分散ポリスチレンをGPCにより、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの数平均分子量との検量線を作成し、常法(例えば「ゲルクロマトグラフィー<基礎編>」講談社発行)に従って算出する。
【0021】
本発明の水添共重合体(I)の好ましいメルトフローレイト(JIS K6870により測定。条件はG条件で温度200℃、荷重5Kg)は成形加工性の点から、0.01〜100g/10min、0.05〜50g/10min、更に好ましくは0.5〜30g/10minであることが推奨される。重量平均分子量とメルトフローレイト(以下、MFRと略すこともある)は重合に使用する触媒量により任意に調整できる。
本発明の水添共重合体(I)のビカット軟化点は、65〜85℃の範囲、好ましくは68〜80℃の範囲、更に好ましくは68〜77℃であることが推奨される。ビカット軟化温度は、厚さ3mmに圧縮成形したものを試験片とし、ASTM D−1525に準じて測定(荷重:1Kg、昇温速度:2℃/min)した値である。
ビカット軟化温度が65〜85℃の範囲にあっては、自然収縮性、低温収縮性に優れる。ビカット軟化温度の調整は例えば、重量平均分子量を大きくすると高くなり、ビニル芳香族炭化水素の含有量を増すと高くなり、重合体(A)の含有量を増すことで高くなり、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素含有量を増すことで高くすることができる。
【0022】
本発明の水添共重合体(I)は、ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロック(A)を少なくとも1つ、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体ブロック(B)を少なくとも1つ含有する水添共重合体(I)であって、水添前のポリマー構造は特に制限は無いが、例えば一般式、
(A−B)n、A−(B−A)n 、B−(A−B)n+1
(C−A−B)n、A−(B−C−-A)n 、B−(C−A−B)n+1
[(A−B)k]m+1−X 、[(A−B)k−A]m+1−X
[(B−A)k]m+1−X 、[(B−A)k−B]m+1−X
[(C−A−B)k]m+1−X 、[(A−B−C)k−A]m+1−X
(上式において、A(重合体ブロック(A))はビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロック、B(共重合体ブロック(B))はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体ブロックであるが、共役ジエンからなる単独重合体ブロックCを含んでいても良い。Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、1,3ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ化大豆油等のカップリング剤の残基または多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。n、k及びmは1以上の整数、一般的には1〜5の整数である。また、Xに複数結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていても良い。)で表される線状水添共重合体やラジアル水添共重合体、或いはこれらのポリマー構造の任意の混合物が使用できる。また、上記一般式で表されるラジアル水添共重合体において、更にA及び/又はBが少なくとも一つXに結合していても良い。
【0023】
本発明で使用するブロック共重合体(II)又はその水添物ポリマー構造は一般式、
(Ab−Bb)n、Ab−(Bb−Ab)n、Bb−(Ab−Bb)n+1
(上式において、nは1以上の整数、一般的には1〜5である。)で表される線状ブロック共重合体、或いは一般式、
[(Ab−Bb)k]m+2−X、[(Ab−Bb)k−Ab]m+2−X
[(Bb−Ab)k]m+2−X、[(Bb−Ab)k−Bb]m+2−X
(上式において、Ab(プラスチック性重合体セグメントA)はビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックであり、Bb(エラストマー性重合体セグメントB)は共役ジエンを主体とする重合体である。AbブロックとBbブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、1,3ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ化大豆油等のカップリング剤の残基または多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。k及びmは1〜5の整数である。)で表されるラジアルブロック共重合体、或いはこれらのブロック共重合体の任意のポリマー構造の混合物が使用できる。本発明で使用するブロック共重合体(II)は、水添共重合体(I)の非水添共重合体と同様に炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンを重合することにより得ることができ、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比は65/35〜82/18の範囲、好ましくは70/30〜80/20の範囲である。
【0024】
本発明の水添共重合体(I)とブロック共重合体(II)からなる組成物のビカット軟化温度は60〜83℃、好ましくは63〜81℃、更に好ましくは65〜78℃の範囲である。ビカット軟化温度が60〜83℃の範囲にあっては自然収縮性、低温収縮性に優れる。
本発明において、水添前の非水添共重合体は、炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンを重合することにより得ることができる。本発明に用いるビニル芳香族炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンなどがあるが、特に一般的なものはスチレンが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0025】
共役ジエンとしては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
本発明において、水添前の非水添共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が使用できる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0026】
また重合開始剤としては、一般的に共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等を用いることができる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。
具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。更に、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0027】
本発明において、水添前の非水添共重合体を製造する際の重合温度は一般的に−10℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は10時間以内であり、特に好適には0.5〜5時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガスなどをもって置換するのが望ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液層に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。更に重合系内には触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意する必要がある。
本発明の水添共重合体は、上記で得られた水添前の非水添共重合体を水素添加することにより得られる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0028】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜7MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0029】
本発明の水添共重合体(I)において、共役ジエンに基づく不飽和二重結合の水素添加率は、非水添共重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の60重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。水添率が60重量%以上にあっては、耐溶剤性に優れる。
本発明に使用されるブロック共重合体(II)の水添物において、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。ブロック共重合体(II)中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上が水添されていても良いし、一部のみが水添されていても良い。一部のみを水添する場合には、水添率が1%以上、70%未満、或いは10%以上、65%未満、所望によっては20%以上、60%未満にすることが好ましい。水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
【0030】
本発明において、水添共重合体(I)中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、極性化合物等の使用により任意に変えることができ、特に制限はない。一般に、ビニル結合量は5〜90%、好ましくは10〜80%、より好ましくは15〜75%の範囲で設定できる。なお、本発明においてビニル結合量とは、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)である。ビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)により把握することができる。
本発明の水添共重合体(I)において、動的粘弾性測定の関数tanδのピーク温度は80℃を越え、110℃以下の範囲、好ましくは83〜105℃、更に好ましくは83〜100℃、とりわけ好ましくは83〜95℃の範囲に少なくとも1つ存在することが必要である。また、本発明の水添共重合体において、動的粘弾性測定の関数tanδのピーク温度が−10℃〜80℃に存在しないことが必要であり、この温度範囲内にtanδのピーク温度が存在すると自然収縮性に劣るため好ましくない。
【0031】
本発明に使用されるブロック共重合体(II)の動的粘弾性の関数tanδのピークは−95〜−10℃の範囲、好ましくは−90〜−15℃の範囲、更に好ましくは−85〜−20℃の範囲に少なくとも1つ存在する。ブロック共重合体(II)の動的粘弾性の関数tanδのピークは−95〜−10℃の範囲にあっては、低温伸びに優れる。
動的粘弾性測定における関数tanδは、例えば(株)レオロジ製粘弾性測定解析装置DVE−V4或いは東洋ボールドウイン社製レオバイブロンDDV−3型等より測定した値であり、振動周波数35Hz、昇温速度3℃/minの条件で、厚さ0.5〜2mmの試験片を用いて測定する。ピークを示す温度とは、tanδの値の温度に対する変化量の第1次微分値が零となる温度を云う。このtanδのピーク温度は例えば、ビニル芳香族炭化水素含有量を増す、水添共重合体の分子量を高くする、水添共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(A)の含有量を増す、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素含有量を増すことによって高く調整することができる。
【0032】
本発明で使用する脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体(III)の脂肪族不飽和カルボン酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル等の炭素数C〜C12好ましくはC〜C12のアルコールとアクリル酸とのエステル、又はメタアクリル酸と炭素数C〜C12好ましくは炭素数C〜C12のアルコールとアクリル酸とのエステル、またα、β不飽和ジカルボン酸、例えばフマル酸、イタコン酸、マレイン酸等と炭素数C〜C12、好ましくはC〜C12のアルコールとのモノ又はジエステルから選ばれる少なくとも1種である。かかる脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体における脂肪族不飽和カルボン酸エステルの含有量は、10〜30重量%、好ましくは13〜27重量%、更に好ましくは15〜20重量%である。特に好ましい脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体はアクリル酸n−ブチルとスチレンを主体とする共重合体である。アクリル酸n−ブチルとスチレンを主体とする脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体を用いた熱収縮フィルムは収縮性、自然収縮性が良好である。
【0033】
本発明の組成物における水添共重合体(I)とブロック共重合体(II)の重量比は10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20、更に好ましくは30/70〜70/30である。また、共重合体(I)、ブロック共重合体(II)および脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体(III)の重量比は、合計量を100重量%として、(I)が10〜80重量%、(II)が10〜80重量%、および(III)が5〜50重量%の範囲、好ましくは(I)が15〜75重量%、(II)が15〜75重量%、および(III)が10〜45重量%の範囲、更に好ましくは(I)が20〜70重量%、(II)が20〜70重量%、および(III)が15〜40重量%の範囲である。本発明の組成物の各成分の重量比が本発明で規定した範囲内にあっては、耐溶剤性、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性及び耐衝撃性等の物性バランスに優れる。
【0034】
本発明の組成物には必要に応じて、非ゴム変性スチレン系重合体及びゴム変性スチレン系重合体を添加しても良い。非ゴム変性スチレン系重合体はスチレンもしくはこれと共重合可能なモノマーを重合して得られるもの(但し、脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体(III)を除く)である。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸等があげられる。スチレン系重合体としては、ポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレンも含む)、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられるが、特に好ましいスチレン系重合体としてはポリスチレンをあげることができる。これらのスチレン系重合体の重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。また、これらのスチレン系重合体はは単独又は二種以上の混合物として使用でき、剛性改良剤として利用できる。ゴム変性スチレン系重合体はビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとエラストマーとの混合物を重合することによって得られ、重合方法としては懸濁重合、乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等が一般的に行われている。ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしてはα−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等があげられる。又、共重合可能なエラストマーとしては天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム等が使用される。
【0035】
これらのエラストマーはビニル芳香族炭化水素もしくはこれと共重合可能なモノマー100重量部に対して一般に3〜50重量部該モノマーに溶解して或いはラテックス状で乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等に共される。特に好ましいゴム変性スチレン系重合体としては、耐衝撃性ゴム変性スチレン系重合体(HIPS)があげられ。ゴム変性スチレン系重合体は剛性、耐衝撃性、滑り性の改良剤として利用できる。これらのゴム変性スチレン系重合体の重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。ゴム変性スチレン系重合体の添加量は透明性維持を考慮すると0.1〜10重量部が好ましい。
【0036】
本発明の水添共重合体(I)及び組成物には滑剤として脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂および脂肪酸から選ばれる少なくとも1種を水添共重合体(I)100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部添加することによって、耐ブロッキング性が良好となる。
脂肪酸アミドとしては、ステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、ベヘンアミド、高級脂肪酸のモノ又はビスアミド、エチレンビスステアロアミド、ステアリルオレイルアミド、N−ステアリルエルクアミド等があるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。パラフィン及び炭化水素系樹脂としてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、パラフィン系合成ワックス、ポリエチレン・ワックス、複合ワックス、モンタン・ワックス、炭化水素系ワックス、シリコーンオイル等があるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。
【0037】
脂肪酸としては飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、が挙げられる。すなわち、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸、、メチレンビスステアリン酸、エチレンビスカプリン酸、エチレンビスラウリン酸、エチレンビスステアリン酸、エチレンビスイソステアリン酸、エチレンビスヒドロキシステアリン酸、エチレンビスベヘン酸、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸、m−キシリレンビスステアリン酸等があるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。
【0038】
本発明の水添共重合体(I)及び組成物には紫外線吸収剤及び光安定剤としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダード・アミン系光安定剤から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤及び光安定剤をブロック共重合体水添物100重量部に対して0.05〜3重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部、更に好ましくは0.1〜2重量部添加することによって、耐光性が向上する。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル酸,n−ヘキサデシルエステル、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,6−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ヘキサン等がある。
【0039】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−[4H]テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール等がある。
【0040】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,6,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアサスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物が挙げられる。
【0041】
また、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル]−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]、ポリ[6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジル)イミノ]、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキジベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボシ酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物が挙げられる。
【0042】
さらにまた、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6)−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレート等がある。
【0043】
本発明の水添共重合体(I)及び組成物には安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを水添共重合体(I)100重量部に対して0.05〜3重量部、更に好ましくは0.1〜2重量部添加することによって、ゲル抑制効果を得ることができる。
本発明の水添共重合体(I)及び組成物にはn−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のフェノール系安定剤の少なくとも1種を水添共重合体(I)100重量部に対して0.05〜3重量部、トリス−(ノニルフェニル)フォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2−〔〔2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル〕オキシ〕−N,N−ビス〔2−〔〔2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル〕オキシ〕−エチル〕−エタンアミン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等の有機ホスフェート系、有機ホスファイト系安定剤の少なくとも1種を水添共重合体(I)100重量部に対して0.05〜3重量部添加することができる。
【0044】
本発明の水添共重合体(I)及び組成物には、目的に応じて種々の重合体及び添加剤を添加することができる。好適な重合体としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体エラストマー又はその水添物、本発明の水添共重合体(I)とは異なるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体及び/又はその水添物等である。
本発明において、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体エラストマー又はその水添物は、ビニル芳香族炭化水素含有量が60重量%未満、好ましくは10〜50重量%のものが使用でき、本発明の水添共重合体(I)100重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部配合することにより、耐衝撃性や伸び等を改善することができる。
【0045】
ブロック共重合体エラストマーの水添物において、共役ジエンに基づく不飽和二重結合の水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。ブロック共重合体エラストマー中の共役ジエンに基づく不飽和二重結合の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上が水添されていても良いし、一部のみが水添されていても良い。一部のみを水添する場合には、水添率が10%以上、70%未満、或いは15%以上、65%未満、所望によっては20%以上、60%未満にすることが好ましい。
本発明の水添共重合体(I)とは異なるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体及び/又はその水添物は、ビニル芳香族炭化水素含有量が60〜95重量%、好ましくは65〜90重量%で、本発明の水添共重合体(I)100重量部に対して5〜90重量部、好ましくは10〜80重量部配合することにより、耐衝撃性や剛性、伸び等を改善することができる。
【0046】
その他の好適な添加剤としては、クマロン−インデン樹脂、テルペン樹脂、オイル等の軟化剤、可塑剤が挙げられる。又各種の安定剤、顔料、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤等も添加できる。尚、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤としては、例えば脂肪酸アマイド、エチレンビスステアロアミド、ソルビタンモノステアレート、脂肪酸アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリストール脂肪酸エステル等、又紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,5−ビス−[5’−t−ブチルベンゾオキサゾリル−(2)]チオフェン等、「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧」(化学工業社)に記載された化合物が使用できる。これらは、一般的に0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%の範囲で用いられる。
【0047】
本発明の水添共重合体(I)及びその組成物は、シート、フィルムや射出成形品等の各種成形材料等に使用することができる。
本発明の水添共重合体(I)及びその組成物を用いた熱収縮性1軸又は2軸延伸フィルムは、水添共重合体(I)を通常のTダイ又は環状ダイからフラット状又はチューブ状に150〜250℃、好ましくは170〜220℃で押出成形し、得られた未延伸物を実質的に1軸延伸又は2軸延伸する。
例えば1軸延伸の場合、フィルム、シート状の場合はカレンダーロール等で押出方向に、或いはテンター等で押出方向と直交する方向に延伸し、チューブ状の場合はチューブの押出方向又は円周方向に延伸する。2軸延伸の場合、フィルム、シート状の場合には押出フィルム又はシートを金属ロール等で縦方向に延伸した後、テンター等で横方向に延伸し、チューブ状の場合にはチューブの押出方向及びチューブの円周方向、即ちチューブ軸と直角をなす方向にそれぞれ同時に、或いは別々に延伸する。
【0048】
本発明においては、延伸温度60〜160℃、好ましくは70〜150℃、更に好ましくは80〜140℃で、縦方向及び/又は横方向に延伸倍率1.5〜8倍、好ましくは2〜6倍に延伸するのが好ましい。延伸温度は、延伸時の破断の観点からが60℃以上であり、収縮特性の観点から110℃以下である。延伸倍率は、熱収縮率の観点から1.5倍以上であり、安定生産の観点から8倍以下である。2軸延伸の場合、縦方向及び横方向における延伸倍率は同一であっても、異なっていてもよい。1軸延伸又は2軸延伸の熱収縮性フィルムは、次いで必要に応じて60〜160℃、好ましくは80〜155℃で短時間、例えば3〜60秒間、好ましくは10〜40秒間熱処理して室温下における自然収縮を防止する手段を実施することも可能である。
【0049】
このようにして得られた熱収縮性のフィルムを熱収縮性包装用素材や熱収縮性ラベル用素材として使用するには、延伸方向における80℃の熱収縮率が5〜60%、好ましくは10〜55%、更に好ましくは15〜50%である。熱収縮率がかかる範囲の場合、熱収縮率と自然収縮率のバランスに優れた熱収縮性フィルムが得られる。尚、本発明において80℃の熱収縮率は低温収縮性の尺度であり、1軸延伸又は2軸延伸フィルムを80℃の熱水、シリコーンオイル、グリセリン等の成形品の特性を阻害しない熱媒体中に10秒間浸漬したときの成形品の各延伸方向における熱収縮率である。本発明においては、上記熱収縮率の範囲において、熱収縮フィルム自体の自然収縮率が2.5%以下、好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下であることが推奨される。ここで熱収縮フィルム自体の自然収縮率とは、上記熱収縮率の範囲の熱収縮フィルムを35℃で5日間放置し、後述する式により算出した値である。
【0050】
更に、本発明の1軸延伸または2軸延伸フィルムは、延伸方向における引張弾性率が700〜3000MPa、好ましくは1000〜2500MPaであることが熱収縮包装材として必要である。延伸方向における引張弾性率は、収縮包装工程においてヘタリの問題から700MPa以上であり、フィルムの耐衝撃性の問題から3000MPa以下である。
本発明の1軸延伸又は2軸延伸フィルムを熱収縮性包装材として使用する場合、目的の熱収縮率を達成するために130〜300℃、好ましくは150〜250℃の温度で数秒から数分、好ましくは1〜60秒加熱して熱収縮させることができる。
【0051】
本発明の熱収縮性フィルムは、少なくとも2層、好ましくは少なくとも3層構造を有する多層積層体であっても良い。多層積層体としての使用形態は、例えば特公平3−5306号公報に開示されている形態が具体例として挙げられる。本発明の水添共重合体(I)又は組成物を中間層及び両外層に用いても良い。本発明の水添共重合体(I)又は組成物を多層フィルムに使用する場合、本発明の水添共重合体(I)又は組成物を使用したフィルム層以外の層は特に制限はなく、構成成分や組成等が異なる本発明の水添共重合体(I)又はその組成物、或いは本発明以外の水添共重合体或いは本発明以外の水添共重合体と前記のビニル芳香族炭化水素系重合体との組成物を組み合わせた多層積層体であっても良い。またその他、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン系重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等)アイオノマー樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ABS樹脂、前記のビニル芳香族炭化水素系重合体等より少なくとも1種選ばれた成分が挙げられるが、好ましくは本発明以外の水添共重合体或いは本発明以外の水添共重合体と前記のビニル芳香族炭化水素系重合体との組成物、前記のビニル芳香族炭化水素系重合体である。
【0052】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、延伸方向における80℃の熱収縮率が5〜60%、好ましくは10〜55%、更に好ましくは15〜50%であり、延伸方向における引張弾性率が700〜3000MPa、好ましくは1000〜2500MPaである熱収縮性多層フィルムを得ることもできる。
本発明の熱収縮性フィルム及び熱収縮性多層フィルムの厚さは10〜300μm、好ましくは20〜200μm、更に好ましくは30〜100μmで、両表層と内層の厚みの割合(両表層の和/内層)は5/95〜50/50、好ましくは10/90〜35/65であることが推奨される。
【0053】
本発明の熱収縮性フィルムは、その特性を生かして種々の用途、例えば生鮮食品、菓子類の包装、衣類、文具等の包装等に利用できる。特に好ましい用途としては、本発明で規定するブロック共重合体の1軸延伸フィルムに文字や図案を印刷した後、プラスチック成形品や金属製品、ガラス容器、磁器等の被包装体表面に熱収縮により密着させて使用する、いわゆる熱収縮性ラベル用素材としての利用が挙げられる。
取り分け、本発明の1軸延伸熱収縮性フィルムは耐溶剤性、低温収縮性、剛性及び自然収縮性に優れるため、高温に加熱すると変形を生じる様なプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材の他、熱膨張率や吸水性等が本発明のブロック共重合体とは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた容器の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0054】
尚、本発明の熱収縮性フィルムが利用できるプラスチック容器を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック容器は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
尚、本発明の熱収縮性フィルムを熱収縮性ラベル用素材として使用する場合、延伸方向と直交する方向における80℃、10秒間後の熱収縮率は20%未満、好ましくは10%以下である。従って、本発明において熱収縮性ラベル用として1軸延伸するとは、延伸方向における80℃、10秒間後の熱収縮率が5〜60%で延伸方向と直交する方向の熱収縮率が20%未満になる様に延伸処理を施すことを云う。
【実施例】
【0055】
以下に本発明の実施例を説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。表1に水添共重合体(I)、表2にブロック共重合体(II)とビニル芳香族炭化水素系重合体としてスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体及び汎用ポリスチレン(GPPS)を示した。
(水添共重合体(I)A−1〜A−6の調製)
水添前の非水添共重合体はシクロヘキサン溶媒中n−ブチルリチウムを触媒とし、テトラメチルエチレンジアミンをランダム化剤として、表1に示したスチレン含有量(重量%)、スチレン重合体ブロック(重量%)、重量平均分子量を有するブロック共重合体を製造した。スチレン含有量はスチレンとブタジエンの添加量で、スチレン重合体ブロックはスチレン単独及びスチレンとブタジエンの添加量の重量比で、重量平均分子量は触媒量で調整した。なお、共重合体の調製において、モノマーはシクロヘキサンで濃度20重量%に希釈したものを使用した。
また、水添触媒は、窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた水添触媒を使用した。
【0056】
1)水添共重合体A−1
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下でスチレン19重量部を含むシクロヘキサン溶液にn−ブチルリチウムを0.055重量部、テトラメチルエチレンジアミンを0.05重量部添加し、70℃で20分間重合し、5分間保持した。次にスチレン51重量部と1,3−ブタジエン11重量部を含むシクロヘキサン溶液を70分間連続的に添加して70℃で重合した後、5分間保持した。
次にスチレン19重量部を含むシクロヘキサン溶液を添加して70℃で20分間重合し、5分間保持した。次に、上記で得られた重合体の溶液に、水添触媒を重合体100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した後、脱溶媒して水添共重合体A−1を得た。水添共重合体A−1の水添率は、水添率が96%になるように水素量で調整した。
2)水添共重合体A−2〜A−5
水添共重合体A−2〜A−5は、表1のスチレンとブタジエンの組成で、A−1同様の方法(スチレンとブタジエンの添加速度及び重合温度が同一)で調製した。
【0057】
(ブロック共重合体B−1、B−2の調製)
表2に実施例で使用した、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1つの重合体ブロックと共役ジエンからなる少なくとも1つの重合体ブロック及び共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなる少なくとも1つの重合体ブロックを有するブロック共重合体を示した。ブロック共重合体はシクロヘキサン中でノルマルブチルリチウムを重合開始剤として、必要に応じて単連鎖スチレン含有量の調整のためテトラメチルエチレンジアミンをランダム化剤として添加、重合することによって得た。なお、ブロック共重合体の調製において、モノマーはシクロヘキサンで濃度20重量%に希釈したものを使用した。
【0058】
1)ブロック共重合体B−1
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下でスチレン24重量部を含むシクロヘキサン溶液にn−ブチルリチウムを0.070重量部、テトラメチルエチレンジアミンを0.02重量部添加し、75℃で20分間連続供給して重合した。次にスチレン14重量部と1,3−ブタジエン21重量部とイソプレン5重量部を含むシクロヘキサン溶液を75℃で50分間連続供給して重合した。次にスチレン36重量部含むシクロヘキサン溶液を75℃で30分間連続供給して重合し、その後75℃で10分間保持した後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加して重合を停止し、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体組成物100重量部に対して0.6重量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体を得た。
2)ブロック共重合体B−2
ブロック共重合体B−2はB−1と同様な方法で調製した。
【0059】
(脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体の調製)
スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体B−3とスチレン−メチルメタアクリレート共重合体B−4は、撹拌器付き10Lオートクレーブにスチレンとアクリル酸n−ブチル又はメチルメタアクリレートを表2に示す比率で5kg添加し、同時にエチルベンゼン0.3kgと、MFRを調整するため1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを所定量仕込み、110〜150℃で2〜10時間重合後、ベント押出機で未反応スチレン、アクリル酸n−ブチル、メチルメタアクリレート、エチルベンゼンを回収して製造した。得られたB−3のMFRは3.0g/10min、B−4のMFR2.6g/10minであった。
【0060】
(測定・評価方法)
実施例及び比較例に記載した測定、評価は以下の方法で行った。
1)スチレン含有量
水添共重合体(I)のスチレン含有量は、紫外分光光度計(装置名:UV−2450;島津製作所製)を用いて測定した。
2)重合体ブロック(A)
水添前の非水添共重合体を、四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)で測定した。また、重合体ブロック(A)は同法により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めた。
重合体ブロック(A)(重量%)=(非水添共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(A)の重量/非水添共重合体中の重量)×100
【0061】
3)重量平均分子量
水添共重合体(I)の分子量は、GPC装置(米国、ウォーターズ製)を用いて測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、35℃で測定した。重量平均分子量と数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、重量平均分子量を求めた。
4)水素添加率
水添共重合体(I)の水添前の非水添共重合体と水添後の水添共重合体を用い,核磁気共鳴装置(装置名:DPX−400;ドイツ国、BRUKER社製)で測定して求めた。
5)ビカット軟化温度
水添共重合体(I)を厚さ3mmに圧縮成形したものを試験片とし、ASTM D−1525に準じて測定(荷重:1Kg、昇温速度:2℃/min)した値である。
【0062】
6)動的粘弾性測定
動的粘弾性測定は、粘弾性測定装置DVE−V4(レオロジ(株)社製)を用い、振動周波数35Hz、昇温速度3℃/min、測定温度−100℃〜150℃の範囲で、熱プレス圧縮成形で得た厚さ2.0mmのシートをサンプルとして測定した。熱プレス圧縮成形は、温度200℃、圧力14.7MPa、圧縮時間5分で行った。
7)収縮率
80℃収縮率は、延伸フィルムを80℃のシリコーンオイル中に10秒間浸漬し、次式により算出した。
熱収縮率(%)=(L−L1)/L×100、
L:収縮前の長さ、L1:収縮後の長さ。
8)自然収縮率
80℃、5分後の収縮率が40%の延伸フィルムを35℃で5日間放置し、次式により算出した値である。
自然収縮率(%)=(L2−L3)/L2×100、
L2:放置前の長さ、L3:放置後の長さ。
自然収縮率が小さいほど、自然収縮性は優れる。
【0063】
9)引張弾性率及び破断伸び
引張試験機を用い、引張速度100mm/minでフィルムのMD方向について測定した。試験片は幅を15mm、標線間を30mmとした。測定温度は引張弾性率は23℃、破断伸びは5℃で行った。単位は引張弾性率がMPa、伸びは%。
10)パンクチャー衝撃強度
JIS P−8134に準拠して測定した。単位はJ。
11)Haze
延伸フィルムの表面に流動パラフィンを塗布し、ASTM D1003に準拠して測定した。単位は%。
【0064】
12)耐溶剤性
MD方向15cm×TD方向15cmの延伸フィルムにメチルエチルケトン/イソプロピルアルコール(比率は7/3)を刷毛で塗り、30℃で7日間乾燥後、印刷前後の0℃のフィルムMD方向の伸びの保持率で判定した。
<判定基準>
○:保持率50%以上
×:保持率50%未満
13)ブロッキング性
MD方向5cm×TD方向5cmの延伸した多層フィルムを2枚重ねて98Paの荷重をかけ、40℃、7日間放置し、フィルムのブロッキング状態を目視判定した。
<判定基準>
○:ブロッキングが認められない。
×:ブロッキングが認められる。
【0065】
14)温水融着性
延伸フィルムを直径約8cmのガラス瓶に巻き付け、70℃温水中に3本俵積みで5分間放置し、フィルムの融着状態を目視判定した。
<判定基準>
○:融着していない
×:融着してすぐには離れない。
15)FE
水添共重合体(I)を40mmシート押出機を用いて押出温度240℃の条件で厚さ0.3mmのシートを6時間連続シート成形し、運転開始5分後と6時間後のシート面積300cmあたりの0.5mm以上のFE個数をそれぞれカウントし、相互のFE個数の差で評価した。
<判定基準>
○:差が100個未満
×:差が100個を越える
【0066】
[実施例1〜6、比較例1〜3]
熱収縮性フィルム性能の測定は、表1及び表2に示した水添共重合体(I):A−1〜A−7、ブロック共重合体(II):B−1及びB−2、スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体:B−3、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体:B−4の種類と量の組成物を、40mm押出機を用いて200℃で厚さ0.25mmのシート状に成形し、その後延伸温度を88℃(比較例1は88℃で延伸不可のため、105℃で延伸した)として、テンターを用いて横軸に延伸倍率を5倍に1軸延伸して厚さ約60μmの熱収縮性フィルムを得た。
この熱収縮性フィルムのフィルム性能を表3に示した。本発明の熱収縮性フィルムの性能は引張弾性率で表される剛性、80℃収縮率で表される低温収縮性、自然収縮性、パンクチャー衝撃強度で表される耐衝撃性、耐溶剤性、Hazeで表される透明性に優れていることが分かる。尚、表3に示したシート、フィルム性能は上記の方法で行った。
尚、実施例で使用した水添共重合体(I)A−1〜4の動的粘弾性の関数tanδのピーク温度は−10〜80℃の範囲に認められなかった。
【0067】
[実施例7及び8]
表5に示した配合組成物を中層、表裏層とした3層シートをTダイより押出し、縦方向に1.2倍の延伸を行い、厚さ0.25mmのシートに成形した。次いで、テンターにより延伸温度を95℃として横方向に5倍延伸して厚さ約50μmの熱収縮フィルムを得た。中層と表層・裏層の厚みの比率(%)は15(表層)/70(中層)/15(裏層)であった。得られた3層熱収縮フィルムの性能を表5に示した。尚、紫外線吸収剤として表裏層100重量部に対してアデカスタブLA−32(旭電化工業(株)社製(登録商標))を0.2重量部添加した。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の水添共重合体を使用した熱収縮性フィルムは透明であり、耐溶剤性、剛性、自然収縮性、低温収縮性、温水融着性、低温伸び及び耐衝撃性に優れることから、フィルムの薄肉化と寸法安定性及び低温収縮性を同時に達成でき、飲料容器包装やキャップシール及び各種ラベル等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる非水添共重合体を水添して得られ、ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロック(A)を少なくとも1つ、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体ブロック(B)を少なくとも1つ含有する水添共重合体(I)であって、下記の(1)〜(7)の特性を有することを特徴とする水添共重合体(I)。
(1)ビニル芳香族炭化水素含有量が該水添共重合体(I)の重量に対して、80重量%を越え、90重量%未満の範囲であり、
(2)重合体ブロック(A)の含有量が、該非水添共重合体(I)の重量に対して、25重量%を越え、60重量%未満の範囲であり、
(3)共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素含有量が80重量%以上、95重量%未満の範囲であり、
(4)重量平均分子量が5万〜100万の範囲であり、
(5)該共役ジエン単位の二重結合の水添率が60重量%以上であり、
(6)該水添共重合体(I)のビカット軟化温度が65〜85℃の範囲であり、
(7)該水添共重合体(I)の動的粘弾性測定の関数tanδのピークが80℃を越え、110℃以下の範囲に少なくとも1つ存在する。
【請求項2】
(1)ビニル芳香族炭化水素含有量が該水添共重合体(I)の重量に対して、82〜89重量%の範囲であり、
(2)重合体ブロック(A)の含有量が、該非水添共重合体(I)の重量に対して、28〜55重量%の範囲であり、
(3)共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族炭化水素含有量が83重量%以上、92重量%未満の範囲であり、
(4)重量平均分子量が10万〜80万の範囲であり、
(5)該共役ジエン単位の二重結合の水添率が70重量%以上であり、
(6)該水添共重合体(I)のビカット軟化温度が68〜80℃の範囲であり、
(7)該水添共重合体(I)の動的粘弾性の関数tanδのピークが83℃を越え、105℃以下の範囲に少なくとも1つ存在する、
ことを特徴とする請求項1記載の水添共重合体(I)。
【請求項3】
水添共重合体(I)と、少なくとも1個のプラスチック性重合体セグメントAと少なくとも1個のエラストマー性重合体セグメントBを有し、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が65/35〜82/18であるブロック共重合体で、該ブロック共重合体の動的粘弾性の関数tanδのピークが−95〜−10℃に少なくとも1つ有するブロック共重合体(II)とからなる組成物で、該組成物のビカット軟化温度が60〜83℃の範囲であり、水添共重合体(I)とブロック共重合体(II)の重量比が10/90〜90/10である重合体組成物。
【請求項4】
水添共重合体(I)と、ブロック共重合体(II)およびスチレン含有量が70〜90重量%、脂肪族不飽和カルボン酸エステル含有量が30〜10重量%からなる脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体(III)とからなる組成物で、該組成物のビカット軟化温度が60〜83℃の範囲であり、共重合体(I)、ブロック共重合体(II)および脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体(III)の重量比が、合計量を100重量%として、(I)が10〜80重量%、(II)が10〜80重量%、および(III)が5〜50重量%の範囲からなる重合体組成物。
【請求項5】
ブロック共重合体(II)中の共役ジエン単位の二重結合の水添率が1〜100重量%の範囲であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の重合体組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の水添共重合体(I)及び重合体組成物からなるシート・フィルム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の水添共重合体(I)及び重合体組成物を延伸してなり、延伸方向における80℃の熱収縮率が5〜60%、延伸方向における引張弾性率が700〜3000MPaである熱収縮性フィルム。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の水添共重合体(I)100重量部に対して、脂肪酸アミド、パラフィン、炭化水素系樹脂および脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.01〜5重量部添加することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水添共重合体(I)、又は組成物、又はシート・フィルム、或いは熱収縮性フィルム。
【請求項9】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の水添共重合体(I)100重量部に対して、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾールから選ばれる少なくとも1種の安定剤を0.05〜3重量部添加することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水添共重合体(I)、又は組成物、又はシート・フィルム、或いは熱収縮性フィルム。
【請求項10】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の水添共重合体(I)100重量部に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダード・アミン系光安定剤から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤又は光安定剤を0.05〜3重量部添加することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水添共重合体(I)、又は組成物、又はシート・フィルム、或いは熱収縮性フィルム。
【請求項11】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の水添共重合体(I)、或いは請求項3〜5のいずれかに記載の組成物からなる層を多層フィルムの少なくとも1つの層とし、延伸方向における80℃の熱収縮率が5〜60%であることを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項12】
延伸方向における引張弾性率が700〜3000MPaである請求項11に記載の熱収縮性多層フィルム。

【公開番号】特開2006−117879(P2006−117879A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309859(P2004−309859)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】