説明

水添高分子から金属触媒を除去する水添化共役ジエン系重合体の製造方法

【課題】水素化共役ジエン系重合体の製造に使用されるチタン系触媒およびリチウム系開始剤による共重合体の分解および最終共重合体の色相変化などによる水素化共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】水添化共役ジエン系重合体を製造する方法において、水添化共役ジエン系重合体溶液に対して、シュウ酸及び特定のα−ヒドロキシカルボン酸系化合物の中から選択した酸化合物と、アルコールおよび水を混合し、層分離して有機層の水素化共重合体を分離回収することによって、水添化共役ジエン系重合体溶液に残留する有機チタン触媒を効果的に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水添された共役ジエン系重合体の製造方法に関し、更に詳しくは、有機酸、アルコールおよび水を使用して水溶液層から抽出して水素化反応を行った後、共役ジエン系重合体溶液に残留する有機チタン触媒を効果的に除去してからなる水添された共役ジエン系重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエンやイソプレンのような共役ジエンの重合体または共役ジエン類と共重合が可能なスチレンのようなビニル芳香族単量体との共重合体などはエラストマーとして広く使用されている。
【0003】
このような共役ジエンとビニル芳香族単量体とのブロック共重合体は加硫しない熱可塑性エラストマーであり、耐衝撃性透明樹脂またはポリオレフィンおよびポリスチレン樹脂の改質剤として使用される。しかし、オレフィン性不飽和二重結合を含有する重合体は二重結合の反応性のために耐熱性、耐酸化性および耐候性などの安定性の問題を引き起こすため、太陽光や高温に露出されない、制限された範囲内で適用されている。従って、重合体の耐久性と耐酸化性を改善するために、重合体内の二重結合に水素を添加して部分または完全飽和させて使用している現状である。
【0004】
一方、一般的にオレフィン性二重結合を有する重合体を水素化させる方法については様々な方法が報告されているが、大きく下記のような2種類の方法に分けられる。第1の方法は、白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属触媒をカーボンやシリカ、アルミナのような担持体に担持して使用する金属担持触媒類を使用した不均一系触媒を使用する方法と、第2の方法は、ニッケル、コバルト類を使用したチーグラー触媒またはロジウムやチタンのような有機金属化合物の均一系触媒を使用する方法である。
【0005】
不均一系触媒を使用する水素化反応は高温、高圧条件で水素化反応が行われ、反応後にはフィルターを利用して高価の触媒を回収して再使用しなければならないという困難があり、更に、反応設備を備えるのに設備費用が高価であるという短所がある。一方、均一系触媒を使用する場合、触媒活性が高いので低温、低圧のよりマイルドな条件でも、少量でも高収率の水素化反応を期待することができ、また、設備費用が少ないという長所を持っている反面、反応後、均一系触媒を生成物から分離することが困難である短所がある。
【0006】
均一系触媒を利用した水素化反応は既に多くの方法が知られており、例えば、米国特許第3,494,942号、第3,670,054号および第3,700,633号にはVIII族金属、特に、ニッケルまたはコバルトの化合物とアルキルアルミニウム化合物等の適当な還元剤とを組み合わせた触媒を使用し、米国特許第4,501,857号、第4,673,714号、第4,980,421号、第5,039,755号、第5,583,185号、第6,040,390号はビス(シクロペンタジエニル)チタン化合物を主触媒として用いて、共役ジエン重合体の不飽和二重結合を水素化することができることを開示している。更に、米国特許第5,753,778号、第5,910,566号、第5,994,477号、第6,020,439号、第6,040,390号、第6,410,657号、第6,951,906号、国際出願第00/08069号ではモノシクロペンタジエニルチタン化合物を使用して共役ジエン重合体の水素化反応を実施することが提案されている。
【0007】
しかし、均一系触媒は一般的に少量でも高水素化率と高い再現性を見せるが、水素化反応後、ポリマー溶液に使用された金属触媒がそのまま残留する。このように残った金属成分は空気や紫外線などにより反応してポリマーの分解を招来したりし、最終ポリマーの色相にも影響を与え、商品価値を低下させる要因となるため、必ず除去しなければならない。この時、最終ポリマーに残った金属の量は20ppm以下が好ましい。一般的に、均一系触媒は反応後に濾過による物理的な分離では分離が難しく、従って、化学反応による分離が行われなければならない。
【0008】
水素化反応が終了したポリマー溶液には有機金属触媒が残るが、これを除去するためには触媒を溶解するために激烈な攪拌や温度が必要である。従来は金属の除去において塩酸や硫酸のような強酸を使用していたが、そのような混合物は非常に腐食性があり、反応器や使用される装置などに損傷を被らせるなどの被害を与え得る。
【0009】
このような問題を解決するために多様な方法が提示されており、米国特許第3,780,138号では薄いクエン酸で抽出する工程を公知しているが、これは多量の抽出液が必要であり、抽出時間が相対的に非常に長く、相分離がうまく行われないなどの短所がある。米国特許第4,595,749号にはニッケルを含むVIII族金属を除去するために、ジカルボン酸と酸素または過酸化水素(H)などの過酸化物で触媒をキレートさせて除去し、米国特許第5,104,972号にはこのような酸化された金属をシリケートに吸着して触媒を除去した。米国特許第5,089,541号には酸素と反応したニッケル触媒を活性炭に吸着させて除去し、米国特許第3,531,448号には硫酸アンモニアを利用してニッケル触媒を除去した。米国特許第5,242,961号ではビス(シクロペンタジエニル)チタン化合物で水素化された重合体を水、過酸化物またはアルコールで処理し、非フェノール性抗酸化剤を添加して重合体の変色を防止したが、残存するチタン化合物を完全に除去することができなかった。更に、米国特許第6,465,609号ではビス(シクロペンタジエニル)チタン化合物で水素化された重合体を塩酸とアルコールで処理して除去したが、強酸の使用により機器および装置類の材質が耐酸性を有する高価の材質を使用しなければならない。
【特許文献1】米国特許第3,494,942号
【特許文献2】米国特許第3,670,054号
【特許文献3】米国特許第3,700,633号
【特許文献4】米国特許第4,501,857号
【特許文献5】米国特許第4,673,714号
【特許文献6】米国特許第4,980,421号
【特許文献7】米国特許第5,039,755号
【特許文献8】米国特許第5,583,185号
【特許文献9】米国特許第6,040,390号
【特許文献10】米国特許第5,753,778号
【特許文献11】米国特許第5,910,566号
【特許文献12】米国特許第5,994,477号
【特許文献13】米国特許第6,020,439号
【特許文献14】米国特許第6,040,390号
【特許文献15】米国特許第6,410,657号
【特許文献16】米国特許第6,951,906号
【特許文献17】国際出願第00/08069号
【特許文献18】米国特許第3,780,138号
【特許文献19】米国特許第4,595,749号
【特許文献20】米国特許第5,104,972号
【特許文献21】米国特許第5,089,541号
【特許文献22】米国特許第3,531,448号
【特許文献23】米国特許第5,242,961号
【特許文献24】米国特許第6,465,609号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来水素化された共役ジエン系重合体の製造に使用されるチタン系触媒およびリチウム系開始剤による共重合体の分解および最終共重合体の色相変化などによる商品性の低下などの問題を改善するために、最終共重合体に含有されたチタンおよびリチウムなどの金属の含有量を20ppm以下の範囲を維持するようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はチタン系触媒下で、共役ジエン系重合体を水素化反応させて水素化された共役ジエン系重合体溶液を製造する段階と、前記水素化された共役ジエン系重合体溶液に、シュウ酸および下記化学式1に表されるα−ヒドロキシカルボン酸系化合物の中から選択される酸化合物とアルコールおよび水を混合し、層分離して有機層の水素化された共役ジエン系重合体を分離して回収する段階を含めてからなる水素化された共役ジエン系重合体の製造方法にその特徴がある。
【0012】
【化1】

【0013】
前記化学式1において、RおよびRは水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0014】
本発明はチタン系触媒および還元剤などを使用して共役ジエン重合体の不飽和二重結合を水素化する工程において、前記共役ジエン重合体溶液中に残存する有機チタン化合物およびリチウム塩などの残留物を特定の有機酸とアルコール、水を使用する層分離工程を通して効果的に除去することで、前記残留成分による共重合体の分解および色相変化が起きない。使用される酸の量が塩酸や硫酸システムに比べて少なく、使用される機器および駆動ミキサーの材質として一般ステンレススチールを使用することができるため、高価の材質の使用による費用の増加を軽減することができ、アルコールの使用により有機酸でキレートされた金属塩を容易に水溶液層で抽出することができるため、沈殿および相分離などによる所要時間を短縮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は共役ジエン系重合体に、チタン系触媒、リチウム系開始剤および還元剤などを利用して水素化反応を行い、水素化された共役ジエン系重合体溶液の製造時、前記重合体溶液に含有されたチタン系触媒、リチウム系開始剤および還元剤などの残留物が効果的に除去された水素化された共役ジエン系重合体に関する。これらの残留物は少量でも最終生産品の色や物性に影響を与え得る金属成分として、本発明は特定の有機酸と反応させてキレート化合物を形成させ、アルコールに溶解させて生成された重合体有機溶液から水溶液層で残留物を抽出することで、水素化された共役ジエン系重合体内の残留金属成分を効果的に除去する方法に関する。
【0016】
本発明による水素化された共役ジエン系重合体を製造する方法をより詳しく説明すると下記の通りである。
【0017】
まず、共役ジエン系重合体に、チタン系触媒下で水素化反応を行い、水素化された共役ジエン系重合体溶液を製造する。
【0018】
前記共役ジエン系重合体は当分野で一般的に使用されるものであれば特別に限定しないが、具体的に分子量500〜1,000,000である共役ジエンホモポリマーまたは共役ジエンと芳香族ビニル系単量体とのランダム、テーパーまたはブロック共重合体などを使用することができ、これらの共役ジエン単位の不飽和二重結合にのみ水素添加が可能である。
【0019】
共役ジエン系重合体は一般的に陰イオン形に重合して製造する。前記使用可能な共役ジエン単量体は具体的に1,3−ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどのような4〜12個の炭素原子を含有する共役ジエン系化合物、好ましくは、1,3−ブタジエンおよびイソプレンを使用する。共役ジエン単量体と共重合が可能な芳香族ビニル系単量体は具体的にスチレン、α−メチルスチレン、アルコキシ基で置換されたスチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルナフタレンおよびアルキル基で置換されたビニルナフタレンなどのようなビニルアリル化合物を使用することができ、好ましくはスチレンおよびα−メチルスチレンを使用する。
【0020】
この時、共役ジエン単量体と芳香族ビニル系単量体を混合して共重合体を製造する場合は、0.5:9.5〜9.5:0.5重量比を混合使用することができるが、共役ジエンの使用量が0.5重量比未満の場合、耐衝撃性が低下して使用が制限的であり、9.5重量比を超過する場合は、製品加工性において困難が発生するため前記範囲を維持することが好ましい。
【0021】
このような共役ジエン系重合体は当分野で一般的に使用される重合法により製造されるが、本発明は有機リチウム化合物を開始剤として利用して陰イオン重合を行い、リビング重合体を製造し、これを利用して水素化反応を行い水素された共役ジエン系重合体を製造する。
【0022】
前記水素化反応に使用される触媒は当分野で一般的に使用されるものであれば特別に限定しないが、モノシクロペンタジエニルチタン系化合物またはビス(シクロペンタジエニル)チタン系化合物を使用することができる。この時、前記触媒は還元剤と混合使用するか、還元剤なしに単独で使用することができる。
【0023】
このような触媒はシクロペンタジエニルチタン化合物であり、例えば、シクロペンタジエニルチタンハロゲン化物化合物、シクロペンタジエニル(アルコキシ)チタンジハロゲン化物化合物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジハロゲン化物化合物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアルキル化合物、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジアリル化合物およびビス(シクロペンタジエニル)チタンジアルコキシ化合物から選択されるものであり、単独または混合して使用することができる。
【0024】
本発明に使用された水素化重合反応は国際特許出願第00/08069号の方法を基にし、さらに米国特許第4,501,857号、第4,673,714号、第4,980,421号、第5,753,778号、第5,910,566号、第6,020,439号に記載されたチタン触媒系システムを使用することができる。
【0025】
前記のようなチタン触媒と合わせて使用される還元剤は、当分野で一般的に使用されるものであれば特別に限定はしないが、具体的にアルキルアルミニウム化合物、アルキルマグネシウム化合物、有機リチウム化合物、アルカリ金属水素化物など多様なアルカリ金属化合物を使用することができ、チタン触媒との組合わせおよび使用比率は当分野で一般的に使用されるものならば特別に限定しない。好ましくは、還元剤アルカリ金属水素化物を、主触媒であるチタン触媒1モルに対して4〜30モル比の範囲で還元剤を混合使用するのが良い。
【0026】
前記チタン系触媒は共役ジエン系重合体100g当り0.01〜20mmol、更に好ましくは、重合体100g当り0.05〜5mmolを使用する。触媒の使用量が0.01mmol未満の場合、水添反応が遅いため生産性に問題が発生し、20mmolを超過する場合は不必要な量の触媒により経済性が低下し、反応後に触媒除去のために過量の化学物質を使用しなければならない問題が発生するため、前記範囲を維持することが好ましい。
【0027】
前記水素化反応は開始剤を利用した陰イオン重合を行い、前記開始剤は当分野で一般的に使用されるものならば特別に限定しないが、有機リチウム化合物は、具体的にn−ブチルリチウムやs−ブチルリチウムなどを使用することができる。このような開始剤の使用量は当分野で一般的に使用されるものであり、目的とする高分子の分子量により自由自在に調節が可能である。
【0028】
前記水素化反応は不活性溶媒中で行われ、前記不活性溶媒は重合や水素化反応のいずれの反応物とも反応しない溶媒を意味し、具体的にn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペプタンのような脂環族炭化水素類、およびジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類を挙げることができ、これらの中から選択して単独または混合して使用することができる。溶媒に対して共役ジエン系重合体の濃度が1〜50重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲を維持する。
【0029】
一方、水素化反応は重合体溶液を水素やヘリウム、アルゴン、窒素のような不活性気体雰囲気下で一定温度に維持した後、攪拌または未攪拌状態で水素化触媒を添加し、水素ガスを一定圧力で注入することで行われる。更に、水素化反応の温度は50〜140℃、圧力は2〜30kg/cmの範囲で行う。
【0030】
前記温度が50℃未満の場合、反応性が低下して十分な反応収率を得ることが困難であり、140℃を超過する場合は、高分子の熱老化による副反応による問題が発生し、圧力が2kg/cm未満では、反応速度が著しく低下して反応時間が長くなり、30kg/cmを超過する場合は、反応器に投資する費用が急激に上昇して経済性の問題が発生するため、前記範囲を維持するのが好ましい。
【0031】
水素化反応が完了した共役ジエン系重合体溶液において、残留したチタン金属とリチウム塩を除去するためには、まず水素化された共役ジエン系重合体溶液に、シュウ酸および下記化学式1に表されるα−ヒドロキシカルボン酸系化合物の中から選択される酸化合物をアルコールまたは水と混合した溶液を加えて激烈に混合した後、アルコール層を分離または分離せずに一定量の水を添加してポリマー溶液層と水溶液層を層分離し、チタン金属を水溶液層で抽出して分離する。
【0032】
本発明で水素化された共役ジエン系重合体から金属残留物を除去するために適切な試薬の選択において、まずポリマーとポリマー溶液に対して非活性でなければならず、触媒成分と結合されたキレート化合物は有機溶媒に対して原則的に広範囲にpH領域で不溶でなければならない。
【0033】
前記で言及したα−ヒドロキシカルボン酸は化学式1に表される有機酸であり、具体的にグリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチルプロピオン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸および2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸などを使用することができ、より好ましくはグリコール酸、乳酸および2−ヒドロキシ−3−メチルプロピオン酸などを使用する。
【0034】
【化2】

【0035】
前記化学式1において、RおよびRは水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0036】
前記シュウ酸またはα−ヒドロキシカルボン酸はチタン系触媒に対して0.5〜50.0モル比、好ましくは0.5〜1.0モル比の範囲を使用するのが良い。前記使用量が50モル比を超過する場合、使用された酸による廃水処理費用が増加し、0.5モル比未満で使用する場合、金属塩を除去するには効果的ではない。
【0037】
前記シュウ酸またはα−ヒドロキシカルボン酸系化合物はそれ自体を使用するか、希釈して使用するため、水素化されたポリマー溶液にシュウ酸またはα−ヒドロキシカルボン酸系化合物を効果的に混合するために一定量希釈して使用することが好ましい。この時、希釈溶液はアルコールまたは水を使用することが好ましい。前記希釈されたシュウ酸またはα−ヒドロキシカルボン酸系化合物は0.1〜85重量%の濃度、好ましくは0.5〜50重量%の濃度の範囲を維持することが好ましい。前記希釈された濃度が0.1重量%未満の場合、触媒除去の効率が低下し、最終高分子が含む触媒残量が増加し、85重量%を超過する場合は溶解度に問題が発生して混合の問題があるため、前記範囲を維持することが好ましい。前記希釈に使用されるアルコールは具体的にメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールおよび2−エチル−1−ヘキサノールなどを使用することができ、好ましくはメタノール、エタノールおよびイソプロパノールを使用する。
【0038】
本発明はアルコールと水を利用した層分離法を行うが、前記共役ジエン系重合体溶液を、シュウ酸またはα−ヒドロキシカルボン酸を含有するアルコール1容積比に対して1〜20容積比の範囲、好ましくは2〜10容積比の範囲で使用し、前記重合体使用量が1容積比未満の場合、重合体が溶液中で分離して下記工程にて移送が不可であり、20容積比の範囲を超過する場合は重合体溶液中の触媒を除去することが難しいという問題があるため前記範囲を維持することが好ましい。
【0039】
シュウ酸またはα−ヒドロキシカルボン酸系化合物が含まれたアルコールと、混合された共役ジエン系重合体溶液はアルコール層の分離または分離なしに水と混合して水溶液層でアルコールおよびチタン金属化合物が分離されて抽出される。この時、重合体混合水と水の容積比は水1容積比に対して重合体混合物1〜10容積比の範囲、好ましくは2〜5容積比の範囲で使用する。前記使用量が1容積比未満の場合、下記工程で高分子を固体化するのにおいて、多くの費用が消耗されて非経済的であり、10容積比を超過する場合は層分離が容易ではないため触媒除去が非効率的であるという問題があるため、前記範囲を維持することが好ましい。
【0040】
前記シュウ酸および下記化学式1に表されるα−ヒドロキシカルボン酸系化合物の中から選択された酸化合物、共役ジエン系重合体、アルコールおよび水は50〜120℃、好ましくは50〜90℃の範囲、圧力は0.1〜20気圧、好ましくは0.5〜5気圧の範囲で行う。また、接触時間は攪拌器の形態や効率によって異なるが、0.01〜10時間の範囲で攪拌することが好ましい。
【0041】
前記温度が50℃未満の場合、溶液粘度が増加して混合が困難であるため、触媒除去の効率が低下し、120℃を超過する場合は溶媒の蒸気圧により触媒除去の効率が低下するという問題があるため前記範囲を維持するのが好ましく、圧力が0.1気圧未満の場合、溶媒の蒸気圧による触媒除去の効率の低下が表れ、20気圧を超過する場合は高価の設備により非経済的であるため前記範囲を維持するのが好ましい。
【0042】
アルコールとポリマーの混合溶液の分離またはポリマー溶液と水との分離は比重差を利用したデカンター分離機または遠心分離機または向流抽出機(counter
current extractor)を使用することができる。
【0043】
以上、分離回収された水素化された共役ジエン系重合体は前記重合体内に不純物としてチタン系触媒が20ppm以下、好ましくは1〜20ppmを含有するため、最終高分子の色相が非常に優れている。
【0044】
以下、本発明を実施例に依拠して詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるわけではない。
【実施例】
【0045】
1.製造例:共役ジエン系共重合体の合成
(製造例1)スチレン−ブタジエン−スチレン型リビングブロック共重合体
10Lオートクレーブ反応器にシクロヘキサン4800gとテトラヒドロフラン9.6g、スチレン単量体116gを添加し、温度を40℃に調整した後、n−ブチルリチウム12.5mmolを注入して断熱反応を始めて30分間重合を行った。次に、1,3−ブタジエン単量体568gを反応器内に注入して1時間重合させた後、スチレン単量体116gを添加して30分間重合した後に得られた共重合体溶液に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール12.5mmolを添加して失活させた。
【0046】
前記で製造された共重合体の結合スチレン含有率は30%であり、ブタジエン単位の1,2−ビニル結合含有率は39%であり、数平均分子量(Mn)62,000であるスチレン−ブタジエン−スチレン型リビングブロック共重合体が得られた。
【0047】
(製造例2)スチレン−ブタジエン−スチレン型リビングブロック共重合体
10Lオートクレーブ反応器にシクロヘキサン4800gとテトラヒドロフラン9.6g、スチレン単量体116gを添加し、温度を40℃に調整した後、n−ブチルリチウム19mmolを注入して断熱反応を始めて30分間重合を行った。次に、1,3−ブタジエン単量体568gを反応機内に注入して1時間重合させた後、スチレン単量体116gを添加して30分間重合した後に得られた共重合体溶液に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール19mmolを添加して失活させた。
【0048】
前記で製造された共重合体の結合スチレン含有率は29.4%であり、ブタジエン単位の1,2−ビニル結合含有率は40%であり、数平均分子量(Mn)45,000であるスチレン−ブタジエン−スチレン型リビングブロック共重合体が得られた。
【0049】
(製造例3)スチレン−ブタジエンラジアルブロック共重合体
10Lオートクレーブ反応器にシクロヘキサン4800gとテトラヒドロフラン9.6g、スチレン単量体240gを添加し、温度を40℃に調整した後、n−ブチルリチウム19mmolを注入して断熱反応を始めて30分間重合を行った。次に、1,3−ブタジエン単量体560gを反応機内に注入して1時間重合させた後、四塩化ケイ素4.5mmolを添加して30分間重合した。
【0050】
前記重合により得られた共重合体は結合スチレン含有率30%であり、ブタジエン単位の1,2−ビニル結合含有率は40%であり、カップリング効率(CE)が90%であり、数平均分子量(Mn)158,000であるスチレン−ブタジエンラジアルブロック共重合体が得られた。
【0051】
(製造例4)ブタジエンホモポリマー
10Lオートクレーブ反応器にシクロヘキサン4800gとテトラヒドロフラン9.6g、ブタジエン単量体800gを添加し、温度を40℃に調整した後、n−ブチルリチウム12.5mmolを注入して断熱反応を始めて1時間重合を行った。次に、前記共重合体溶液に2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール12.5mmolを添加して失活させた。
【0052】
前記得られた共重合体はブタジエン単位の1,2−ビニル結合含有率は39%であり、数平均分子量(Mn)60,000であるブタジエンホモポリマーが得られた。
【0053】
2.実施例:水素化された共役ジエン系重合体
(実施例1)
前記製造例1で得られたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体溶液2800gを5Lオートクレーブ反応器に入れ、60℃で加熱した。その次に、水素化リチウム0.096g(12mmol)をオートクレーブ反応器の重合体溶液に加えた後、シクロペンタジエニル(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)二塩化チタン0.49g(1.2mmol)を添加し、10kg/cmの水素で加圧して水素化反応を行った。前記で製造された水素化された共重合体をNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の97%の二重結合を飽和させ、ポリスチレンブロックは全く飽和させなかったことを確認することができた。
【0054】
前記水素化反応が終わった共重合体溶液は90℃で乳酸(85%水溶液)2.5gとイソプロパノール600mLを加え、30分間激烈に攪拌させた。この混合溶液を12時間滞留させてポリマー溶液層とアルコール層を分離させ、アルコール層を除去した後、ポリマー溶液の容積の1/4に該当する水を加えて10分間攪拌させ、再び1時間滞留させて水層を分離して除去した。洗浄後のポリマー溶液はスチームストリッピングにより固体の高分子を得、ロール製粉機(roll
mill)で乾燥した。
【0055】
(実施例2)
前記実施例1と同様に実施するが、製造例1で得られたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体溶液を使用し、ビス(シクロペンタジエニル)二塩化チタン0.3gと還元剤として水素化リチウム0.096g(12mmol)を触媒として使用して水素化反応を行った。前記水素化されたポリマーをNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の98%の二重結合を飽和させ、ポリスチレンブロックは全く飽和させなかったことを確認することができた。
【0056】
前記水素化反応が終了した共重合体溶液は90℃で、シュウ酸2.2gとイソプロパノール600mLを使用して層分離および洗浄、乾燥過程を行った。
【0057】
(実施例3)
前記実施例1と同様に実施するが、製造例1で得られたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体溶液を使用し、ビス(シクロペンタジエニル)二塩化チタン0.3gと還元剤として水素化リチウム0.096g(12mmol)を触媒として使用して水素化反応を行った。前記水素化されたポリマーをNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の98%の二重結合を飽和させ、ポリスチレンブロックは全く飽和させなかったことを確認することができた。
【0058】
前記水素化反応が終了した共重合体溶液は90℃で、グリコール酸3gとイソプロパノール600mLを使用して層分離および洗浄、乾燥過程を行った。
【0059】
(実施例4)
前記実施例1と同様に実施するが、製造例2で得られたポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体溶液を使用し、ビス(シクロペンタジエニル)二塩化チタン0.3gと還元剤として水素化リチウム0.096g(12mmol)を触媒として使用して水素化反応を行った。前記水素化された共重合体をNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の98%の二重結合を飽和させ、ポリスチレンブロックは全く飽和させなかったことを確認することができた。
【0060】
前記水素化反応が終了した共重合体溶液は90℃で、2−ヒドロキシ−3−メチルプロピオン酸3gとイソプロパノール600mLを使用して層分離および洗浄、乾燥過程を行った。
【0061】
(実験例1)
前記実施例1〜4で得られた高分子を誘導結合プラズマ(ICP)を利用した元素分析を通して高分子内に存在するチタンの量を測定し、その結果を下記表1に表した。
【0062】

【0063】
(実施例5)
前記実施例2のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体溶液を使用し、ビス(シクロペンタジエニル)二塩化チタン0.3gと還元剤として水素化リチウム0.096g(12mmol)を触媒として使用して水素化反応を行った。前記水素化されたポリマーをNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の98%の二重結合を飽和させたことを確認することができた。その後に、メタノールと前記水素化反応を行った高分子溶液を1:6容積比に固定し、乳酸(85重量%水溶液)とイソプロパノールの混合比率を下記表2のような範囲で調節して層分離工程を行い、分離された高分子溶液はスチームストリッピング工程を経た後、ロール製粉機で乾燥した。
【0064】
前記乾燥された試片から若干量を取り、誘導結合プラズマ(ICP)を利用した元素分析を通してポリマー内に存在するチタンの量を測定し、その結果を下記表2に表した。
【0065】

【0066】
(実施例6)
前記実施例1と同様に実施するが、製造例2のポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体溶液を使用し、ビス(シクロペンタジエニル)二塩化チタン0.3gと還元剤として水素化リチウム0.096g(12mmol)を触媒として使用して水素化反応を行った。
【0067】
その後、シュウ酸2.2gとメタノール400mLを使用して30分間攪拌した後、アルコール層の分離なしに下記表3に表されるように、一定量の水(混合共重合体溶液に対して1/2〜1/10容積比)を添加した後、10分間攪拌させ、30分間滞留させ、アルコールを含む水溶液層を分離し、分離された共重合体溶液はスチームストリッピング工程を経た後、ロール製粉機で乾燥した。
【0068】
前記乾燥した試片から若干量を取り、誘導結合プラズマ(ICP)を利用した元素分析を通してポリマー内に存在するチタンの量を測定し、その結果を下記表3に表した。
【0069】

【0070】
(実施例7)
前記実施例1と同様に実施するが、製造例3で得られたポリスチレン−ポリブタジエン−ラジアル共重合体溶液を使用し、ビス(シクロペンタジエニル)二塩化チタン0.3gと還元剤として水素化リチウム0.096g(12mmol)を触媒として使用して水素化反応を行った。前記水素化された共重合体をNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の97%の二重結合を飽和させることを確認することができた。
【0071】
前記水素化反応が終了した後、共重合体溶液は50℃で、シュウ酸2.2gとメタノール溶液600mLを添加して30分間攪拌し、滞留、アルコールを含む水溶液層を分離し、分離されたポリマー溶液はスチームストリッピング工程を経た後、ロール製粉機で乾燥した。
【0072】
前記乾燥した試片から若干量を取り、誘導結合プラズマ(ICP)を利用した元素分析を通してポリマー内に存在するチタンおよびリチウムの量を測定し、その結果を下記表4に表した。
【0073】
(実施例8)
前記実施例1と同様に実施するが、製造例4で得られたブタジエン単独重合体を使用し、ビス(シクロペンタジエニル)二塩化チタン0.3gと還元剤として水素化リチウム0.096g(12mmol)を触媒として使用して水素化反応を行った。前記水素化された共重合体をNMRで分析した結果、ポリブタジエンブロック内の97%の二重結合を飽和させることを確認することができた。
【0074】
前記水素化反応が終了した後、共重合体溶液は50℃で、乳酸(85%水溶液)4gとメタノール溶液600mLを添加して30分間攪拌し、滞留、アルコールを含む水溶液層を分離し、分離されたポリマー溶液はスチームストリッピング工程を経た後、ロール製粉機で乾燥した。
【0075】
前記乾燥した試片から若干量を取り、誘導結合プラズマ(ICP)を利用した元素分析を通してポリマー内に存在するチタンおよびリチウムの量を測定し、その結果を下記表4に表した。
【0076】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系触媒下で、共役ジエン系重合体を水素化反応させ、水素化された共役ジエン系重合体溶液を製造する段階と、
前記水素化された共役ジエン系重合体溶液に、シュウ酸および下記化学式1に表されるα−ヒドロキシカルボン酸系化合物の中から選択される酸化合物と、アルコールおよび水を混合し、層分離して有機層の水素化された共役ジエン系重合体を分離回収する段階を含むことを特徴とする、水添化共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】

前記化学式1において、RおよびRは水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【請求項2】
前記共役ジエン系重合体は共役ジエンホモポリマー、または共役ジエン単量体と芳香族ビニル系単量体のランダム、テーパーまたはブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記分離回収された水素化された共役ジエン系重合体は、不純物として、チタン系触媒を1〜20ppm含むことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記化学式1のα−ヒドロキシカルボン酸系化合物は、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチルプロピオン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸および2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸の中から選択される1種の単一化合物または2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
前記酸化合物は、チタン系触媒1モルに対して0.5〜10モル比で使用することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
前記酸化合物は、アルコールまたは水溶液に溶解させて使用することを特徴とする、請求項1または5記載の製造方法。
【請求項7】
前記重合体溶液は、シュウ酸またはα−ヒドロキシカルボン酸を含有するアルコール1容積に対して1〜20容積比で使用することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
前記重合体溶液は、水1容積比に対して1〜10容積比の範囲で使用することを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
前記層分離のための混合は、50〜120℃の温度範囲および0.1〜20気圧範囲で行うことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−91574(P2009−91574A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255769(P2008−255769)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(508293117)錦湖石油化學株式會社 (1)
【Fターム(参考)】