説明

水溶性、低い置換度のヒドロキシエチルセルロース、それらの誘導体、それらの製造方法および使用

本発明は、約0.7〜1.3のヒドロキシエチルのモル置換度(HE−MS)を有する水溶性ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、および、それらの誘導体に関する。これらのHECは、増粘した水系において、従来技術のHEC生成物よりも効率的であり、低い水分活性系において特有のレオロジーを示す。これらのHECは、0.21未満の非置換の無水グルコース三量体の比率(U3R)、および、90重量%より大きい水溶解度を有する点で、従来技術や市販のHEC生成物と区別することができる。また、本発明は、水溶性の軽度に置換されたHECを製造するための、特有の連続的なカセイアルカリでの還元によるヒドロキシエチル化方法、および、機能的な系におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年3月2日付けで出願された米国仮出願第60/657,963号の利益を主張する。
発明の分野
本発明は、セルロースエーテル組成物、それらの誘導体、該組成物の製造方法、および、機能的な系におけるそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、0.7〜1.3のヒドロキシエチルのモル置換度(HE−MS)を有する水溶性ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、および、それらの誘導体に関する。本発明はまた、水溶性の軽度に置換されたHECを製造するための、連続的なカセイアルカリでの還元によるヒドロキシエチル化法、および、機能的な系におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、通常はアルカリセルロースとエチレンオキシド(EO)とを反応させることによって製造されるセルロースエーテルである。セルロース主鎖に十分な水溶性を提供するためには、セルロースのEOの無水グルコース単位に対するモル比が1.5より高いことが一般的である。HECは、水溶性/水膨潤性ポリマーであり、これは、一般的に、パーソナルケアや家庭用製品、塗料、建設資材製品、紙塗工、油田媒体、エマルジョン、ラテックス成分などの機能的な系の水性媒体を粘性化するのに用いられる。さらに高分子量HECは、医薬産業でも、遅延放出用途において膨潤性の拡散障壁を提供するための賦形剤として用いられる。
【0003】
一段階でのセルロースのエトキシ化によって製造される市販のHECの場合、ヒドロキシエチレン置換基は、ポリマーの無水グルコースセグメントの中でほぼランダムに分布される。HECの製造を開示している従来技術の例は、米国特許第2,572,039号、2,682,535号、2,744,894号、および、3,131,177号である。その他の市販のHEC生成物は、より高度に置換されたHECであり、この場合、エチレンオキシドは二工程で反応させ、それによって非置換の無水グルコース単位の量を減らすことができる。その結果、酵素分解を受けにくい、すなわち生物分解に対する耐性が強化されたセルロース誘導体の形成が起こる。このタイプのHECの製造を開示している従来技術の例は、米国特許第3,131,176号、カナダ特許第1014289号、および、米国特許出願US2005/0139130A1である。通常、これらのタイプのEO置換パターンを有するHECの溶液の粘度はセルロース主鎖の分子量に依存する。
【0004】
2006年2月14日付けで出願された「水溶性で低い置換度のヒドロキシエチルセルロース、それらの誘導体、それらの製造方法および使用(Water−Soluble,Low Substitution Hydroxyethylcellulose,Derivatives Thereof,Process Of Making,And Uses Thereof)」という名称の米国特許出願第11/353,621号では、市販のHEC生成物では知られていない会合性の増粘特性を示す、不均一に置換された(「むらのある」)ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、および、それらの誘導体を開示している。これらの不均一HEC生成物は、非置換の三量体のモル分率の、(ヒドロキシエチルで置換された)三量体の最も豊富なクラスのモル分率に対する比と定義される、非置換の三量体の比率(U3R)と呼ばれる新規のパラメーターを特徴とする。むらのある生成物のU3Rは、HE−MSが1.3〜5.0の範囲の場合、0.21より大きい。
【0005】
さらに、HECは、官能性を改善するための追加の置換基で修飾してもよい。例えば、米国特許第4,228,277号は、10〜24個の炭素原子を有する長鎖アルキル調節剤の使用を開示している。修飾HECのその他の例は、米国特許第4,826,970号で開示されており、ここでは、カルボキシメチルで疎水性修飾したヒドロキシエチルセルロースエーテル誘導体(CMHMHEC)が説明されおり、これは水性保護被膜組成物における増粘剤や保護コロイドとして用いられる。米国特許第4,904,772号は、6〜20個の炭素を有する疎水性ラジカルを2個またはそれ以上有する混合型の疎水性物質を含む水溶性HEC誘導体を開示しており、ここで、一方の疎水性ラジカルは、他方の疎水性ラジカルよりも少なくとも2個分長い炭素原子の炭素鎖長を有する。米国特許第4,663,159号は、水溶性カチオン性ヒドロキシエチルセルロースを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
市販のHEC生成物は、望ましいレオロジーおよび増粘効率を提供するため、多くの産業において最適な増粘剤である。にもかかわらず、増粘性の水系でより効率的であり、さらなる望ましいレオロジー特性が達成されるように系の成分および/またはそれ自身とより強く相互作用するHECベースのレオロジー改質剤が必要性が常にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、HECが水溶性になるようにEOがセルロース主鎖に沿って極めて均一に分布している軽度に置換されたHECの新しいクラスを対象とする。この特有のHECのクラスは、類似のヒドロキシエチルのモル置換度(HE−MS)とセルロースの分子量を有する従来技術のその他のHECのクラスとは異なり、水溶性である。これらの軽度に置換されたHECは、疎水性、カチオン性またはアニオン性試薬でさらに修飾されていてもよい。
【0008】
この製品の利点は、一般的な市販のHECよりも、同様の濃度および分子量でずっと高い溶液粘度を提供することである。その結果として、本発明のHECは、より少ない量で、同様の分子量を有する類似の市販のHECに匹敵する、またはそれよりも優れた粘度を付与することができる。さらに、驚くべきことに、本発明のHECおよびそれらの誘導体は、低い水分活性の溶液、例えば高の濃度の塩を含む溶液、または、混和性の有機溶媒の分画を含む溶液において、効率的な増粘剤および懸濁化剤であることが見出された。セルロース誘導体、天然ゴム類、および、合成カルボマーは、利用可能な遊離の水が低いレベルでしか含まれない溶液に溶解しないか、または、機能しないことが多いため、広範囲の水系において機能する万能な増粘剤への必要性がある。
【0009】
本発明は、セルロース主鎖上で均一に分布するヒドロキシエチル基を有する水溶性HECを対象とし、ここで、非置換の無水グルコース三量体の、最も高頻度で発生する置換された無水グルコース三量体(U3R)に対する比率は、0.21未満であり、該ヒドロキシエチルのモル置換度は、約0.7より大きく、約1.3未満である。
【0010】
本発明はさらに、上述のHEC組成物を製造するためのスラリー法を対象とし、本スラリー法は、以下を含む:
A)セルロース、水およびアルカリを混合し、有機溶媒中で、十分な時間、十分な温度でそれらを反応させ、アルカリセルロース混合物を形成すること、ここで、水の無水グルコース(AGU)に対するモル比は、約5〜35の範囲であり、アルカリのAGUに対するモル比は、約1.6より大きく、
B)十分な量のエチレンオキシドを添加し、望ましいヒドロキシエチルのモル置換度(HE−MS)を生産すること、
C)アルカリのAGUに対するモル比を、約0.4未満に減少させ、好ましくは約0.04より大きくするのに十分な量の酸を連続的に添加し、同時に、エチレンオキシドとアルカリセルロースとを、約0.7より大きく、約1.3未満のHE−MSを有する水溶性HEC生成物を形成するのに十分な温度および十分な時間反応させること。
【0011】
上述の方法で製造されたHEC生成物は、修飾HEC生成物を形成するために、少なくとも1種のその他の誘導体化試薬とさらに反応させてもよい。
同様に、HECまたは修飾HEC生成物は、さらに粘度低下剤と反応させてもよい。
【0012】
本発明はまた、低いHE−MSの水溶性HEC組成物、または、それらの誘導体を含む機能的な系の組成物に関する。
図面の簡単な説明
図1は、HECポリマーにおけるエチレンオキシドの分布プロファイルの棒グラフを示す。
【0013】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、低いHE−MSの水溶性HECは、本発明よりも前に記載されたことがない特有のレオロジーを生じさせることができ、さらに、ヒドロキシエチル化製造工程中の連続的なカセイアルカリでの還元を用いて製造することができることが見出された。
【0014】
本発明は、分子中の無水グルコース単位(AGU)の大部分がエチレンオキシド(EO)で置換されている、低いHE−MSの水溶性HEC、および、修飾HEC(非イオン性、アニオン性、および、カチオン性)を対象とする。これらのHECと従来技術とを区別する特徴は、約0.7より大きく、約1.3未満のHE−MSで高い水溶解度を有すること;および、構造的なパラメーターである非置換の三量体の比率(U3R)が、0.21未満であることである。このような、可溶性でありほぼ均一にヒドロキシエチル化されているHECの特有のクラスは、極めて低いHE−MSのために、驚くべき水素結合による会合性の挙動を示す。結果として、これらのHECは、類似のHE−MS(ヒドロキシエチルのモル置換度)、および、セルロース分子量を有するその他のクラスのHECと比較して、有意に高い溶液粘度を示す。その上、市販のHECは水和において難点を有するが、これらのHECは、塩を含む溶液や薄い溶媒において優れた粘性化する力を示す。
【0015】
本発明によれば、低いHE−MSの水溶性HEC組成物は、1種またはそれより多い非イオン性、アニオン性、および、カチオン性の置換基、または、それらの混合物でさらに修飾されていてもよい。このような置換基は、エーテル、エステルまたはウレタン結合を介してHEC主鎖に結合する。
【0016】
このような置換基が非イオン性の化学官能性を有する場合、置換基は、式:
−R、または、−A−R、
を有し、式中、Aは、
CH−CH(OH)、
CH−CH(OH)−CH
(CH−CH−O)(式中、nは、1〜100である)、
CH−CH(OH)−CH−O−(CH−CH−O)(式中、nは、1〜100である)、
CH(R)−C(O)−CH
であり、さらに、
Rは、以下の群のいずれかより選択される:
i)1〜30個の炭素原子を有する非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状の炭化水素部分、
ii)1〜30個の炭素原子、および、1個またはそれより多い酸素、窒素、または、ケイ素原子を有する、非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状のヘテロ原子を含む炭化水素部分、
iii)1〜30個の炭素原子を有し、1個またはそれより多い芳香族炭化水素基を有する非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状の炭化水素部分、
iv)1〜30個の炭素原子、および、1個またはそれより多い酸素、窒素、または、ケイ素原子、および、1個またはそれより多い芳香族基を有する、非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状のヘテロ原子を含む炭化水素部分、および、
v)1〜30個の炭素原子、および、1個またはそれより多い酸素、窒素、または、ケイ素原子を有し、さらに、1個またはそれより多い酸素、窒素、または、ケイ素基を含む1個またはそれより多い複素環式芳香族基を有する、非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状のヘテロ原子を含む炭化水素部分。
【0017】
上記式Rに基づいて、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルケニルアリール、アリールアルケニル、または、それらの混合物から選択することができ、これらは、場合により1〜30個の炭素原子を有する。
【0018】
置換基がアニオン性の化学官能性を有する場合、アニオン性の化学官能基は、カルボキシレート、スルフェート、スルホナート、ホスファート、ホスホナート、または、それらの混合物が可能である。この官能基のより具体的な例は、カルボキシメチル、スルホエチル、ホスホノメチル、および、それらの混合物である。
【0019】
置換基がカチオン性の化学官能性を有する場合、置換基は、式R(A)を有し、式中、Rは、−CH−CHOH−CH−、または、−CH−CH−であり、R、R、Rは、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキルまたはアリールアルキル基から選択され、Aは、ハロゲン化物、スルフェート、ホスファート、または、テトラフルオロボラートイオンである。
【0020】
より具体的には、カチオン性の置換基は、
2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、
2−ヒドロキシプロピルドデシルジメチルアンモニウム塩化物、
2−ヒドロキシプロピルココアルキルジメチルアンモニウム塩化物、
2−ヒドロキシプロピルオクタデシルジメチルアンモニウム塩化物、および、それらの混合物から選択することができる。
【0021】
本発明で用いることができるその他の重要なカチオン性の基は、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物とHECまたはその誘導体とのグラフト反応から誘導された基である。
本発明によれば、より具体的に修飾されたヒドロキシエチルセルロースは、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、オクチルヒドロキシエチルセルロース、セチルヒドロキシエチルセルロース、セトキシ−2−ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルセチルヒドロキシエチルセルロース、ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルセトキシ−2−ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルオクチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセトキシ−2−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルブトキシ−2−ヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルエチルヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルセチルヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルセトキシ−2−ヒドロキシプロピルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−エチルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−オクチルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−セチルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−セトキシ−2−ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルラウリルジメチルアンモニウム塩化物−ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−2−ヒドロキシプロピルラウリルジメチルアンモニウム塩化物−ヒドロキシエチルセルロース、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物−グラフト化ヒドロキシエチルセルロース、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物−グラフト化セチルヒドロキシエチルセルロースである。
【0022】
軽度にヒドロキシエチル化された水溶性HECは、セルロース繊維を、高い初期のカセイアルカリレベル(AC1)で完全に膨潤させること、次に、ヒドロキシエチル化反応中に連続的に低いカセイアルカリレベル(AC2)に「クエンチすること」によって製造することができる。この工程は、低いHE−MSで高い水溶解度になるように、より均一な置換を起こさせる。本発明によれば、この工程は、セルロースと、水およびアルカリとを混合し、有機溶媒中でそれらを反応させることを必要とし、ここで、アルカリの無水グルコース(AGU)に対するモル比は、約1.6より大きく、水のAGUに対するモル比は、5〜35である。20℃で約1時間たった後、塩基高含有のアルカリセルロースが形成される。その後、反応の際に最終的なHEC生成物のHE−MSが約0.7〜1.3となるように、この反応混合物にEOを添加する。次に、塩基高含有のアルカリセルロースを、アルカリのAGUに対するモル比が約0.4〜0.04になるまでアルカリ含量を減少させるのに十分な量の酸で連続的に中和して、同時に、エチレンオキシドとアルカリセルロースとを約60℃で反応させ、水溶性ヒドロキシエチルセルロース生成物を形成する。このような酸は、ヒドロキシエチル化の間に約30〜90分間にわたり添加してもよい。ヒドロキシエチル化が完了したら、非イオン性、アニオン性、または、カチオン性試薬で生成物をさらに修飾してもよい。加えて、当業者既知の通りに、生成物の粘度を減少させて、精製し、乾燥させ、磨砕してもよい。
【0023】
本発明のスラリー法において、この工程で用いられる有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメトキシエタン、または、それらの混合物から選択される。このスラリー法は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および、それらの混合物から選択されるアルカリを使用する。低いHE−MSの水溶性HECを製造するために本方法で用いられる未加工のセルロースの出発原料は、コットンリンター、木材パルプ、または、それらの混合物が可能である。
【0024】
上述の水溶性HEC組成物はさらに、少なくとも1種のその他の誘導体化試薬と反応させて、修飾されたヒドロキシエチルセルロース組成物を形成してもよい。このような修飾されたヒドロキシエチルセルロース組成物を製造するのに用いられる誘導体化試薬としては、非イオン性、カチオン性またはアニオン性の有機化合物、または、それらの混合物が挙げられる。このようなHECのヒドロキシル基と反応が可能な有機化合物としては、ハロゲン化物、エポキシド、グリシジルエーテル、カルボン酸、イソシアネート、または、それらの混合物が挙げられる。
【0025】
上述のスラリー法によって製造された本発明のHECまたはそれらの誘導体はさらに、例えば過酸化物、過硫酸塩、過酸、オキソ酸のハロゲン化物の塩、酸素、または、オゾンのような粘度低下剤と反応させることができる。このようにすれば、誰でもこの方法を用いることによって最終産物を、望ましい最終用途に応じた望ましい粘度またはその他の特性を有するように改変することができる。
【0026】
工程および工程条件は、セルロース主鎖に沿ってどの程度EOを分布させるかを決定する。本発明の生成物は特徴的であり、低いHE−MSのポリマーを単量体やオリゴマーに分解して、非置換のオリゴマー、より具体的には非置換の三量体の程度を測定することによって、従来技術によって製造されたHECと差別化することができる。非置換の三量体の比率(U3R)と呼ばれるパラメーターは、非置換の三量体のモル分率の、(ヒドロキシエチルで置換された)三量体の最も豊富なクラスのモル分率に対する比と定義することができ、この場合、0≦U3R≦1.0である。U3Rは、以下で説明されているマススペクトロメトリー技術によって測定される。本発明のHECのU3Rは、0.21に等しいか、または、約0.21未満であり、好ましくは0.18未満であり、一方、HE−MSは、0.7〜1.3の範囲である。
【0027】
三量体は、構造1で示される3個の無水グルコース単位とその他の化合物との重合度(DP)を有するオリゴマーであり、これは、過メチル化HEC誘導体の部分的なメタノリシスによって製造される。過メチル化HEC主鎖の切断はランダムプロセスであり、形成された構造1のオリゴマーは、サンプル全体のEO分布に典型的なEO分布を有すると予想される。
【0028】
【化1】

【0029】
一般的に、HECポリマーの過メチル化された誘導体は、多糖類のためのメチル化解析法で適用されているメチル化反応によって製造することができる。(F.−G.Hanisch,Biological Mass Spectrometry,23(1994)309〜312;B.Lindberg,U.Lindquist and O.Stenberg,Carbohydrate Research,170(1987)207〜214;および、P.W.Arisz,JA Lomax,and J.J.Boon,Carbohydrate Research,243(1993)99〜114という出版物を参照)。
【0030】
非置換の三量体の比率(U3R)決定
より具体的には、本発明において、調査したHECポリマーは、溶解しているか、または、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で膨潤させている。ポリマー中のヒドロキシル基は、リチウムメチルスルフィニルカルボアニオンのDMSO溶液を用いて脱プロトン化させ、それらとヨウ化メチルとを反応させて、メトキシル基に変換する。
【0031】
得られた過メチル化HECポリマーは、精製される。より具体的には、このような過メチル化HECポリマーは、塩酸で2未満のpHに酸性化した水性DMSO層から、クロロホルムを用いた3回の抽出工程で抽出される。プールしたクロロホルム抽出物を水で4回洗浄する。最後の洗浄工程の後にメタノールをいくらか添加し、全ての溶媒を蒸発させる。
【0032】
過メチル化されたポリマーは、メタノリシスによって部分的に分解される。より具体的には、過メチル化されたポリマーは、メタノール中に溶解しているか、膨潤している。メタノール中に十分な塩酸を添加して、約0.50モル濃度の塩酸を得る。サンプルを、50℃で15分間で完全に溶解させる。部分的なメタノリシスは、70℃で2.5時間で行われる。この反応は、2−メチル−2−プロパノールの添加によってクエンチされ、全ての溶媒を蒸発させ、構造1のオリゴマーの混合物で構成される残留物を得る。
【0033】
上記残留物をメタノールに溶解させ、このサンプルの分画を、ヨウ化ナトリウムが添加された2,5−ジヒドロキシ安息香酸溶液と混合する。このオリゴマー混合物のマススペクトルを、ブルカー・リフレックスII(Bruker Reflex II)MALDI−TOF−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置)で記録するが、この機器には、マイクロチャネルプレート検出器が備えられている。構造11の化合物は、それらのナトリウムイオン付加物として測定される。三量体のモノアイソトピック質量のピークの質量数は、m/z667.32、711.34、755.35、799.39等である。それらのモルのHE置換、置換基の鎖長、およびそれらの無水グルコース残基中の位置とは無関係に、全ての三量体は等しい確率で測定されると予想される。
【0034】
三量体の分画は、それらのモノアイソトピック質量のピークの測定されたピーク強度から2つのデータを加工する工程により得られる。まず、測定されたピーク強度からMALDIスペクトルのバックグラウンドシグナルを差し引く。第二に、主として構造1に包含される13C同位体のために、モノアイソトピック質量のピークは、例えばEO単位を0、1個、2個、3個結合させた三量体における全ての同位体のそれぞれ70.6、68.9、67.2、65.6%を占めるにすぎない。遺憾ながら、13C同位体のピーク強度は、MALDI−TOF−MSでは、強烈な質量ピークが記録された後にマイクロチャネルプレート検出器は回復時間を要するために正確に測定することができない。13C同位体のピークの失われた寄与率に関するシグナルを補うために、バックグラウンドを修正したモノアイソトピック質量のピーク強度に、理論上の三量体の同位体組成から計算した補正係数をかける。この係数は、構造1におけるC原子の数が増加するに従って大きくなり、EO単位を例えば0個、1個、2個、3個結合させた三量体に対して、それぞれ1.417、1.452、1.488、1.525の値が用いられた。
【0035】
図1は、HECポリマーから誘導される三量体のEO分布プロファイルの例を示す。非置換の三量体の分画は、灰色で示す。この例において三量体の最も豊富なクラスは、EO単位を7個結合させた三量体のクラスである。このクラスは、白色で示される。この例において、非置換の三量体の比率、すなわち白色の分画で割った灰色の分画は、0.121と計算される。注目すべきことに、三量体の最も豊富なクラスにおけるEO単位の数は、例えば、HECのモル置換度、および、HECを作製した工程の種類のような要因に応じて様々である。
【0036】
非イオン性、カチオン性、および、アニオン性の置換基およびそれらの混合物のような第二の置換基を含むHEC誘導体を非修飾HECと同様にして解析する。修飾レベルが、単量体(例えば会合性の疎水性試薬)100個単位あたりの置換基が3.5個よりも少ない場合、例えば修飾されているのは三量体の10%未満であり、その結果として修飾された三量体の分画は無視することができる。
【0037】
修飾されていない三量体の分画は、修飾剤の置換度(DS)が増加するに従って減少する。第二の置換基の分布がセルロース主鎖に沿ってランダムである場合、修飾されていない三量体は、0.21のDSレベルでたった半分以下と予想される。表2に列挙されたカルボキシメチル(CM)で修飾されたHMHECはいずれもこのような桁のCM−DS値を有するため、これらのサンプルに関してCMで修飾された三量体の分画は無視できないという結論になる。
【0038】
その上、HEC主鎖に結合しているCM基は、誘導体化法によってそれらのメチルエステルに変換される。2個のEO単位が結合し、2個のCM基が結合した二量体のナトリウムイオン付加物は、m/z667.28を有する。MALDI−TOF−MSの質量分解能は、この質量ピークを、m/z667.32、すなわち非置換の三量体の質量ピークから分離するには不十分であるため、カルボキシメチル化HEC誘導体の正確なU3R値は、該当なし(N/A)となる。
【0039】
水への溶解度の測定
0.25または0.50重量%のHEC水溶液を製造し、ポリマーが溶解するまで少なくとも2時間混合する。この溶液を10〜15ミクロンのフリットガラス製フィルターでろ過する。ろ液を、102℃の真空オーブン中で、少なくとも24時間、または、2時間を越えても重量変化が起こらなくなるまで乾燥させる。可溶性のパーセントは、重量測定によって以下の通りに決定される:
【0040】
【数1】

【0041】
用途
これらのHECサンプルの多くは、最終用途の系において、新規で非常に望ましいレオロジーおよび性能特性を示す。本発明によれば、粘度は、従来の手段によってHECに付与されるだけでなく、分子の会合によって有意に高められる。このような会合は、低い水分活性系においてより強くなり、それによりネットワーク形成が起こり、これは薄い溶媒や水性の機能的な系においてゲル様の特性として示される。本発明のHECおよび誘導体は、必要とされるHECの使用者レベルを低くし、さらに、その他の従来技術のHECと比較して特有のレオロジー特性を提供することが示されている。
【0042】
その上、これらのHECおよびそれらの誘導体は、特定のレオロジー特徴、例えば、粘度、チキソトロピー、降伏応力、弾性、または、固体状態の特徴、例えば熱可塑性、および、膜柔軟性が要求される用途において使用可能である。機能的な系の例としては、水性のコーティング(例えば、ラテックス塗料)、建築および建設資材(例えば、セメント、しっくい)、パーソナルケア製品(例えば、スキンケア、ヘアケア、口腔ケア、ネイルケア、および、個人用衛生用品)、家庭用ケアプロダクト(例えば、工業用液状洗剤、ペットケア製品)、医薬(例えば、錠剤、カプセルおよび顆粒のための賦形剤)、油田における用途(例えば、掘削泥水、仕上げ流体、および、破砕流体)、土木工学、印刷用インク、接着剤、紙塗工用配合物、ならびに、製紙における歩留まり向上剤および濾水性向上剤が挙げられる。
【0043】
本発明によれば、機能的な系は、連続プロセスまたはバッチプロセスのいずれかで、さらに、成分を段階的に添加すること、または、単に全ての成分を一回で混合することのいずれかで製造することができる。また、成分を添加する順番も様々であり、多様な添加が可能である。例えば、機能的な成分は、ある時点で個々に一種類ずつ配合物に添加してもよいし、または、全てを一度に添加してもよいし、または、1回の工程で低いHE−MSの水溶性HEC生成物を配合した成分に直接添加することもできる。従って、水性の機能的な系(例えば、パーソナルケア製品、家庭用ケアプロダクト、油田施設用の流体、土木施設用の流体、紙塗工用製品、製紙用組成物、建築および建設用流体、釉がけ、選鉱のための製品、ならびに、水性の保護被膜、例えば建築用塗料および工業塗料)を増粘化する工程は、水性の機能的な系に適合する本発明の低いHE−MSの水溶性HECポリマーを十分な量で添加し、混合して、機能的な系を増粘させることを含む。得られた機能的な系は、市販のHECを含む類似の増粘剤を用いた場合と比較して、それに匹敵する、または、それよりも優れたレオロジーおよび粘度特性を有する。
【0044】
パーソナルケア
本発明によれば、本組成物がパーソナルケア組成物である場合、本組成物は、(a)約0.1%〜約99.0重量%の基剤成分、および、(b)少なくとも1種の活性パーソナルケア成分を含む。
【0045】
本発明によれば、パーソナルケア活性成分は、使用者の体に何らかの利点を提供するはずである。パーソナルケア製品としては、ヘアケア、スキンケア、口腔ケア、ネイルケア、および、個人用衛生用品が挙げられる。本発明に係る活性成分としてパーソナルケア製品に適切に包含させることができる物質の例は以下の通りである:
1)香料、これは、芳香剤および消臭香料の形態で嗅覚的反応を引き起こし、香りに対する反応を提供することに加えて、体の悪臭を減少させることができる;
2)皮膚用冷却剤、例えばメントール、酢酸メチル、メチルピロリドンカルボキシラートN−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミドおよびその他のメントール誘導体、これは、皮膚に冷たい感覚を起こすような触覚的反応を引き起こす;
3)皮膚軟化薬、例えばミリスチン酸イソプロピル、シリコーンオイル、鉱油および植物油、これは、皮膚の滑らかさを増すようにして触覚的反応を引き起こす;
4)香料以外の消臭剤、これは、皮膚表面のミクロフローラ、特に体の悪臭の発生に関与するミクロフローラの量を減少または排除するように機能する。香水以外の消臭剤の前駆体を用いてもよい;
5)制汗剤活性物質、これは、皮膚表面での発汗現象を減少または排除するように機能する;
6)保湿剤、これは、湿気を加えること、または、皮膚からの水分の蒸発を防ぐことのいずれかによって皮膚を湿潤した状態に保つ;
7)クレンジング剤、これは、汚れや油を皮膚から除去する;
8)日焼け止め活性成分、これは、UVなどの太陽からの有害な光線から皮膚および毛髪を保護する。本発明によれば、治療的に有効量は、通常は、組成物の0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%であり得る;
9)ヘアートリートメント剤、これは、毛髪をコンディショニングし、毛髪をきれいにし、毛髪のもつれをほどき、スタイリング剤、ボリュームナイジングし光沢を増す物質、ふけ防止剤、毛髪成長促進剤、毛髪用染料および顔料、毛髪用香水、ヘアリラクサー、毛髪の脱色剤、ヘアモイスチャライザー、毛髪のオイルトリートメント剤、および、縮れ防止剤として作用する;
10)髭剃り用製品、例えば、クリーム、ゲルおよびローション、ならびに、かみそり刃を潤滑させるストリップ;
11)ティッシュペーパー製品、例えば保湿ティッシュ、または、クレンジングティッシュ;
12)化粧品、例えばファンデーションパウダー、リップスティック、および、アイケア;および、
13)織物製品、例えば保湿繊維、または、クレンジング繊維。
【0046】
パーソナルケア組成物において、本発明のレオロジー改質剤を用いることができ、これは単独で用いてもよいし、または、その他の既知のレオロジー改質剤と組み合わせて用いてもよく、その他の既知のレオロジー改質剤としては、これらに限定されないが、多糖類(例えば、カラゲナン、ペクチン、アルギン酸塩)、セルロースエーテル、バイオポリマー(例えば、キサンタンガム)、合成ポリマー、および、研磨剤/増粘性シリカが挙げられる。
【0047】
家庭用ケア
本発明によれば、本組成物が家庭用ケア組成物である場合、本組成物は、(a)約0.1%〜約99.0重量%の基剤成分、および、(b)少なくとも1個の活性家庭用ケア成分を含む。
【0048】
本発明によれば、家庭用ケア活性成分は、使用者に何らかの利点を提供するはずである。家庭用ケアプロダクトとしては、布帛手入れ、ランドリー用洗浄剤、硬質表面洗浄剤、業務用液体石鹸、および、食器洗い用洗剤が挙げられる。本発明に従って適切に包含させることができる活性成分または物質の例は以下の通りである:
1)香料、これは、芳香剤および消臭香料の形態で嗅覚的反応を引き起こし、香りに対する反応を提供することに加えて、悪臭を減少させることができる;
2)昆虫忌避剤、これは、特定の領域から昆虫を締め出したり、または、皮膚への攻撃から守るように機能する;
3)気泡発生剤、例えばフォームまたは泡を生成する界面活性剤;
4)ペット脱臭剤、例えばペットの臭いを減少させるピレトリン;
5)ペット用シャンプー剤および活性物質、これは、皮膚および毛髪表面から汚れ、異物および微生物を除去するように機能する;
6)工業用固形石鹸、シャワージェル、および、液体石鹸の活性物質、これは、皮膚から微生物、汚れ、グリース、および、油を除去し、皮膚を衛生的にし、皮膚を整える;
7)多目的の洗浄剤、これは、台所、浴室、公共施設のような領域の表面から汚れ、油、グリース、微生物を除去する;
8)消毒成分、これは、家または公共施設で微生物を殺す、または、その成長を防ぐ;
9)敷物および室内装飾材料用クリーニング活性物質、これは、汚れや異物粒子を表面から浮き上がらせて除去し、さらに柔軟仕上げと香りを付与する;
10)洗濯用柔軟剤活性物質、これは、静電気を減少させ、織物の感触を柔らかくする;
11)洗濯用洗浄剤の成分、これは、汚れ、油、グリース、しみを除去し、微生物を殺す;
12)食器洗い用界面活性剤、これは、しみ、食べ物、微生物を除去する;
13)便器用洗剤、これは、しみを除去し、微生物を殺し、脱臭する;
14)洗濯用プレスポット用活性剤、これは、衣服からのしみの除去を促進する;
15)織物用サイズ剤、これは、織物の外観を向上させる;
16)乗り物用クリーニング活性剤、これは、乗り物や装置から汚れ、グリースなどを除去する;
17)潤滑剤、これは、部品間の摩擦を減少させる;および、
18)織物製品、例えばほこりを取るための繊維、または、消毒用の拭き取り繊維。
【0049】
家庭用ケア組成物において、本発明のレオロジー改質剤を用いることができ、本発明のレオロジー改質剤は単独で用いてもよいし、または、その他の既知のレオロジー改質剤と組み合わせて用いてもよく、その他の既知のレオロジー改質剤としては、これらに限定されないが、多糖類(例えば、カラゲナン、ペクチン、アルギン酸塩)、セルロースエーテル、バイオポリマー(例えば、キサンタンガム)、合成ポリマー、および、研磨剤/増粘シリカが挙げられる。
【0050】
上記は、パーソナルケアおよび家庭用活性成分の例に限ったものであり、使用可能な活性成分の完全な一覧ではない。これらのタイプの製品で使用可能なその他の成分は、当産業分野において周知である。慣習的に用いられる上記の成分に加えて、本発明に係る組成物は、着色剤、保存剤、抗酸化剤、栄養補給剤、活性増強剤、乳化剤、増粘剤(例えば、塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、および、塩化カリウム)、水溶性ポリマー(例えば、HEC、修飾HEC、カルボキシメチルセルロース)、および、脂肪族アルコール(例えば、セチルアルコール)、1〜6個の炭素を有するアルコール、ならびに脂肪および油のような成分を含んでいてもよい。
【0051】
保護被膜
一般的にセルロースエーテル誘導体が使用されている水性の保護被膜組成物(一般的には、塗料と称される)としては、ラテックス塗料または分散塗料が挙げられ、それらの主成分は被膜形成性の結合剤であり、このような結合剤としては、ラテックス、例えばスチレンブタジエンコポリマー、酢酸ビニルホモポリマーおよびコポリマー、ならびに、アクリル系ホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。塗料に一般的に用いられるその他の結合剤としては、アルキド樹脂、および、エポキシ樹脂が挙げられる。一般的に、塗料は、不透明顔料、分散剤、および、水溶性保護コロイドも含み、それらの比率は、組成物の総重量に基づき、ラテックスが約10部〜約50部、不透明顔料が約10部〜約50部、分散剤が約0.1部〜約2部、および、水溶性保護コロイドが約0.1部〜約2部である。
【0052】
これらの保護被膜は、水性の建築用塗料でもよいし、または、工業塗料組成物のいずれでもよい。建築用塗料は、住宅、商業用、業務用または工業用建築物の内表面または外表面へのその場での塗布を目的とする。工業塗料は、製造前に、または、製造後に、通常、塗布のための特殊な技術を用いて工場で製造された物品に塗布され、乾燥させる。
【0053】
でラテックス塗料の製造慣習的に用いられる水溶性ポリマーとしては、カゼイン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリビニルアルコール、スターチ、および、ナトリウムポリアクリラートが挙げられる。本発明のHECは、水性の保護被膜組成物のためのレオロジー改質剤として用いることができる。
【0054】
紙塗工および製紙
紙塗工は、無機物質のコーティングを塗布し、その後乾燥させることによって紙または板紙の表面構造を改善する工程である。コーティング工程は、水性の顔料スラリーを塗布し、これを数種の結合剤のいずれか一種によって表面に結合させることである。その他のコーティング成分を添加すれば、適切なレオロジーが得られ、白色度または耐水性のような特性が付与される。
【0055】
コーティング工程は、一般的に、以下の3種の異なる相に分けることができる:(1)コーティング配合物の製造(いわゆるコーティング用色素として知られている)、(2)コーティング、および、(3)乾燥。紙塗工を配合する一般原則は大部分が周知である。さらに、製紙業者はそれぞれ、その特定の必要条件に応じた独自の自社配合を有する。それゆえに特定のコーティング工程、コーティングタイプ、または、印刷工程に適した「配合」を入手することは不可能と思われる。しかしながら、一般的なコーティング配合物の配合は、75〜90%の顔料(例えば、粘土、サテンホワイト、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、合成物など)、0.10〜0.50%の分散剤、0.05〜0.30%のアルカリ、5〜20%の結合剤(例えば、スチレンブタジエンラテックス、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、スターチおよびスターチ誘導体、タンパク質、例えばカゼイン、ダイズ)、および、0〜2%のコバインダー(セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、および、溶液、または、ポリアクリラートエマルジョン)を含む。その他の機能的な添加剤、例えば潤滑剤、蛍光増白剤および消泡剤が、コーティング配合物に添加されることが多い。成分の量はいずれも、顔料の重量に基づく。本発明のHECは、水性紙塗工用組成物のためのレオロジー改質剤として用いることができる。
【0056】
紙塗工に加えて、本発明のHECは、製紙方法や表面サイジングで用いることもできる。製紙方法において、低いHE−MSの水溶性HECは、ストックへの添加剤として用いることができ、例えば精製剤、湿潤強度増強剤、乾燥強度増強剤、内部結合増強剤(internal bonding agent)、水分保持剤として用いられ、シート形成を改善することができる。表面サイジングのために、低いHE−MSの水溶性HECは結合剤として用いることができ、膜形成を補助することができる。
【0057】
油田施設用の流体
油またはガス井の掘削は、油井を生産態勢にする前後に数種の工程を要する複雑な作業である。原油採取作業は、油井を掘削し、ケーシングを地層にセメンチングし、油またはガス生産の前に油井を完成させることを含む。油井製造中の補正作業の間に、通常、油井を強化したり、または、油井の経済的寿命を延長させる試みのような改修作業が必要な場合がある。流体の流速が減少した場合、掘削した穴への流体の流れを速くするような何らかの方法で貯蔵タンクを処理することが可能である。この操作は二次的な回復と呼ばれ、破砕/刺激操作として知られている。これらは、酸洗浄または水圧破砕のいずれかによって行われる。貯蔵タンクが枯渇した場合、生産速度を高めるために油井回復操作の強化が必要な場合がある。この操作は三次的な回復と呼ばれ、掘削した穴への地層の流体流速を高めるために、生産井周囲の地層への流体の注入を含む。
【0058】
掘削泥水は、一次的な油井の回復のための掘削プログラムにおける不可欠な構成要素である。これは、掘削操作の成功を決定する多数の機能が発揮されるように特別に設計される。それらの主要な機能としては、ただしこれらに限定されないが、以下が挙げられる:
・有効なホールクリーニング効率(H.C.E.)、
・開口したホール形成の安定性を維持すること、
・地層への薄い低透過性膜のケークの形成、
・地層の損傷を最小化すること、
・ドリルストリングと地層との間の摩擦の低減、
・ドリルビットの冷却と清浄化。
【0059】
これらの機能を発揮させるために、掘削泥水は、レオロジー、密度およびろ過制御に関する特定の特性を有するべきである。ろ過制御は、その他の全ての特性に影響を与える主要な性能特性である。実際に、掘削泥水から地層に相当量の水が損失すると、試錐孔の安定性に深刻な影響を与えると思われる全体的な掘削泥水特性(密度およびレオロジー)の回復不能の変化が起こると予想される。
【0060】
様々な添加剤のなかでも、水性の掘削泥水特性を最適化するために、カルボキシメチルセルロース(CMC)、HEC、および、ポリアニオン性セルロース(PAC)が、広く用いられている。レオロジー、および、流体損失の予防特性のためには高粘度タイプが用いられ、一方、ろ過制御特性のためにはもっぱら低粘度タイプが用いられる。ほとんどの場合、これらのタイプは、掘削泥水組成物において一緒に用いられている。掘削作業中において、さらに異なる成分を組み合わせることによって最適な掘削泥水特性が達成され、このような異なる成分としては、粘土、CMC/PAC、キサンタンガム(一次レオロジー改質剤)、スターチ(ろ過制御の改善)、およびその他の分散または頁岩の阻害特性に必要と思われる合成ポリマーが挙げられる。
【0061】
仕上げ流体および改修流体とは、油井を完成させる作業や補正のための改修過程の間に用いられる特殊化な流体である。これらは、油井に穴を開けた後に、ただし生産態勢に入る前に、選択されたペイゾーンを通過して投入される。これらの流体は、油またはガスの生産速度を改善するために、密度によって地中の圧力を制御しなければならないだけでなく、仕上げ作業と改修作業の際に地層の損傷を最小化しなければならない。なぜならあらゆる油井は、程度の差はあるが(わずかな生産速度の減少から、特定のゾーンの完全な目詰まりまで)、地層の損傷の影響を受けやすく、掘削中よりも仕上げ作業および改修作業のときのほうが、永続的な損傷を受ける可能性が大きいため、ペイゾーンの地層に損傷を起こす可能性が最小限の流体を使用することが必須である。仕上げ流体および改修流体の主要な機能としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
・地中圧力の制御、
・地層の損傷を最小化すること、
・ドリルホールの安定性を維持すること、
・流体の地層への損失を制御すること、
・固体を搬出すること、
・安定な流体特性を維持すること。
【0062】
仕上げ流体および改修流体のタイプは、透明な固形物質非含有のブラインと、架橋剤/増量剤、および、油ベース、水ベース、転換された泥水、発泡体などのその他の流体を含むポリマーで粘性化したブラインに分類することができる。適切な仕上げ流体または改修流体の一次選択基準は、密度である。透明な固形物質非含有のブラインは、最も一般的に使用される流体であり、ポリマー(CMC/PAC、キサンタンガム、グアール、および、グアール誘導体、および、HEC)で粘性化され、さらに、密度を高めたり、または架橋させるために、酸可溶性の炭酸カルシウム、または、サイズ化された塩化ナトリウム塩のような後で溶解させることができる固体を包含させてもよい。ブラインベースの系にはHECが最も適切なポリマーであるが、CMC/PAC、および、キサンタンガムも、低密度の(12ppg以下)一価の塩ベースのブラインにおいてそれらの使用が認められている。
【0063】
水圧破砕は、流体圧力を、断裂または破砕が起こるまで露出した貯留岩にかける工程と定義することもできる。貯留岩が断裂した後に、流体圧力の継続的な適用により、フラクチャーが断裂地点から外へ向かって伸長する。これは、現存する天然のフラクチャーと連結する可能性もあり、加えて、貯蔵タンクからの追加の排水領域を提供する可能もある。液圧を貯留岩に転送するのに用いられる流体が、破砕流体と呼ばれる。ポンプ輸送を止めた場合にフラクチャーが閉じないようにするため、サイズ化した砂のようなプロップ剤が、破砕流体に添加される。プロップ剤は、処理の後にフラクチャーを開けたまま保持し、フラクチャーの改善された能力を提供するための支持体として作用し、それにより油またはガスをフラクチャーを通って掘削した穴に導くことができる。
【0064】
本発明の低いHE−MSの水溶性HECおよびそれらの誘導体は、水性の油田施設用の流体のための、改善された効率を有するレオロジー改質剤として用いることができる。
土木施設用の流体
土木工学における用途としては、トンネル施工、地中連続壁の施工、杭打ち、溝掘り、水平ボーリング、および、井戸掘削が挙げられる。これらの用途は、あらゆる種類の汚染または汚濁を最小化するための厳しい環境規制が施行されている状況下でのアグロメレーションの起こしやすさを特徴とすることが多い。それに対応する作業現場はさらに、水溶性ポリマー(WSP)を効率的に分散し溶解させるには極めて不十分なその場での混合器具しか利用できないことを特徴とする。土木工学における用途において、安定で環境に優しく、さらに全ての排出規制を満たすポリマー懸濁液が要求されている。
【0065】
本発明の低いHE−MSの水溶性HECおよびそれらの誘導体は、トンネル施工、杭打ち、地中連続壁の施工、掘削、および、ベントナイトのドーピングなどの土木工学用途における流体中のレオロジー改質剤としてとして用いられる。
【0066】
構築/建築用組成物
建築用組成物は、また建設資材としても知られており、例えば、コンクリート、タイルセメント、および、接着剤、プロジェクションプラスター(projection plaster)、セメントベースの化粧しっくい、および、合成バインダー、レディーミクストモルタル、手作業で塗布されるモルタル、水中コンクリート、目地セメント、ジョイントコンパウンド、石膏ボード、ひび割れ充填材、床用定規モルタル、および、貼り付けモルタル挙げられる。これらの組成物は、実質的には、様々な建設用途に必要な特徴を付与するための機能的な添加剤を含むポルトランドセメント、焼石膏、または、ビニルコポリマーである。
【0067】
目地セメントは、粘土および雲母を含んでいてもよいし、または、粘土非含有(すなわち粘土は0.5未満重量%しか含まれない)でもよい。かつては石灰が建築用組成物における水の比率制御するための好ましい材料であったが、現状ではセルロースエーテルが最も多く用いられており、これは、セルロースエーテルは、保水性やその他の物理特性(例えば作業性、粘稠度、開放時間、粘性、ブリーディング、接着力、設定時間、および、空気連行)の改善に貢献するためである。
【0068】
本発明の低いHE−MSの水溶性HECおよびそれらの誘導体は、上述の建築および建設資材用組成物においてレオロジー改質剤として用いられる。
医薬
医薬組成物は通常、錠剤、カプセル、または、顆粒の形態である。医薬組成物の唯一の目的は、その形態に関係なく、治療活性を有する薬剤を望ましい適用部位に送達することである。薬物送達システムの最も一般的な形態は、錠剤の形態である。錠剤またはカプセルの形態において、生産、送達および経済面を考慮した上で少なくとも1種の不活性成分を使用することが一般的である。不活性成分の例は、賦形剤、希釈剤、充填剤、および、結合剤である。薬剤と不活性成分との組み合わせによって、直接錠剤に圧縮できる、または、カプセル化のための顆粒または凝集体に形成することができる配合物が提供される。直接圧縮可能な製品を提供するために、これらの賦形剤は、所定の物理特性、例えば、流動する能力、十分な粒度分布、結合能力、許容できるかさ密度およびタップ密度、ならびに、経口投与の際に薬剤を放出させるための許容できる溶解特性を有していなければならない。
【0069】
本発明の低いHE−MSの水溶性HECまたはそれらの誘導体は、流動しやすく、直接圧縮可能な遅延放出顆粒組成物で用いることができ、このような組成物は、薬剤として使用するための賦形剤に応じて乾式混合、ローラー圧縮または湿式造粒によって製造することができる。このような賦形剤は、低いHE−MSの水溶性HEC、または、HEC誘導体を約5〜約80重量%含む。また、このような医薬組成物は、不活性な医薬用充填剤を約0.01〜約95重量%の量で含んでいてもよい。医薬用充填剤の例は、単糖、二糖類、多糖類、多価アルコール、無機化合物、および、それらの混合物である。また、この賦形剤の組成物は、約0.01〜50%の追加の制御放出剤、例えばセルロースエーテル、セルロースエステル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、および、コポリマー、メタクリル酸誘導体、ろう質の脂質様物質、天然の親水コロイド、および、カーボポール(Carbopol(R))誘導体を含んでいてもよい。
【0070】
本発明によれば、経口投与のための遅延放出医薬錠剤は、低いHE−MSの水溶性HECまたはそれらの誘導体が、組成物総量の約5〜約80重量%、不活性医薬用充填剤(上述した通り)が、約90重量%以下、および、治療上有効になるような治療活性を有する薬剤の有効量で構成される。薬剤と低いHE−MSの水溶性HEC(親水性材料)との比率は、部分的に、薬剤の相対的な溶解性と、望ましい放出速度に基づく。このような錠剤の比率および/または総重量を変化させることによって、様々な遅延放出プロファイルを達成することができ、ある種の薬剤の溶解を約24時間まで延長させることも可能である。
【0071】
本発明の即時放出型の錠剤組成物は、約0.5〜10重量%の低いHE−MSの水溶性HEC、適切な充填剤、および、錠剤形成を補助する物質、および、有効量の治療活性を有する薬剤で構成される。活性な薬剤の量は、望ましい作用を送達するのに必要な望ましい量に応じて様々である。
【0072】
実施例
以下の実施例は、明のHECを製造し、説明し、使用するための考えられる様々な方法を示す。これらの実施例は単に説明のためであり、本発明を特定の化合物、方法、条件または用途に制限するものとして解釈されないこととする。全ての部およびパーセンテージは、特に他の指定がない限り、重量に基づく。
【0073】
サンプルの製造手順
表1に、個々の実施例の詳細を示す。セルロース、水および溶媒を、種々の表で説明されている比率で窒素散布した反応がまに入れた。この反応器を窒素で不活性化した。カセイアルカリを添加して、望ましいアルカリのAGUに対するモル比(AC1)に到達させ、アルカリセルローススラリーの温度を20℃で約1時間維持した。この反応混合物に、エチレンオキシドを添加した。次に、30分間60℃に加熱しながら酸を連続的に添加し、60℃で30分間保持し、望ましいアルカリのAGUに対するモル比(AC2)に到達させた。温度を100℃に高め、60分間保持し、ヒドロキシエチル化を完了させた。この反応混合物を周囲温度まで冷却し、十分な酸で中和して、全ての過量のアルカリを中和した。次に、このHEC生成物を精製し、乾燥させ、望ましい粒度に磨砕した。
【0074】
修飾HECに関して、HEC反応混合物を周囲温度に冷却した後、カセイアルカリを添加して、修飾に関する望ましいアルカリ/AGUモル比(ACM)に到達させた。修飾剤を入れた。疎水性修飾の場合、反応器を115℃に加熱し、この温度を2.5時間維持した。アニオン性、または、カチオン性修飾の場合、反応器を60℃に加熱し、この温度を2.5時間維持した。修飾反応が完了したら、この反応混合物を周囲温度まで冷却し、十分な酸で中和して、全ての過量のアルカリを中和した。次に、生成物を精製し、乾燥させ、望ましい粒度に磨砕した。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例1〜6
本発明は、0.7〜1.3のHE−MS、高い水溶性、および、0.21未満の非置換の三量体の比率を有するHECに基づく。表2に、本発明の実施例1〜5に記載のHECに関する特性を示す。表1は、軽度にヒドロキシエチル化されたHECが、セルロース繊維を、高い初期のカセイアルカリレベル(AC1)で完全に膨潤させること、次に、反応中に連続的に低いカセイアルカリレベル(AC2)に「クエンチすること」によってどのように製造されるかを説明している。この工程は、低いHE−MSで高い水溶性になるように、より均一な置換を起こさせる。表2に記載の実施例1〜5は、極めて均一な構造の指標である0.12未満の非置換の三量体の比率(U3R)を有し、90%を超える十分な水への溶解度を有する。実施例6は、0.7のHE−MSを有し、100%の水溶解度を有するが、U3Rは0.26であるHECを説明しており、これが本発明のHE−MSの下限を設定している。
【0077】
また、表2において、1.5〜1.8の範囲のHE−MSを有する市販のナトロソル(Natrosol)HECの特性も示す。0.7〜1.3の範囲のHE−MSを有する市販のHECは、水溶解度および粘性化する力が不十分であるために、利用不可能である。本発明のHECに関して、有意に低いHE−MSで、かつてない水溶解度および非置換の三量体の比率が達成される。実施例3〜5は、さらなる疎水性、カチオン性およびアニオン性試薬による修飾が実行可能であることを実証する。
【0078】
【表2】

【0079】
実施例7〜15
実施例7〜15は、上記の合成手法は、一群の低いHE−MSの水溶性HEC生成物を生成するために、コットンリンターから木材パルプに至る多様なセルロース完成紙料に対して行うことができることを実証する。
【0080】
実施例7、8および12〜15は、コットンリンターから生産された高分子量の低いHE−MSの水溶性HECは、32,000cP以下の1重量%のブルックフィールド粘度(スピンドル3,3rpm,25℃で)を有することを示す。市販の高分子量HEC、例えばナトロソル250HHBR&HBR、ナトロソルHI−VIS、セロサイズ(Cellosize)QP100MH、および、タイロース(Tylose)H200000YP2という商標で販売されている製品は、概して、1重量%で、4,500〜6,000cPの範囲の粘度を有する。
【0081】
実施例16:建築用塗料
低いHE−MSの水溶性HECは、建築用塗料用途における強化された増粘効率を示す。実施例7、および、ナトロソル250HHRを、示されたUcarラテックス379G70−PVCつや消しペイント配合物で評価した。新規の増粘剤は、表3に記載された通りに示されるように、250HHRよりも30%効率的であり、同時に類似の塗料の特性を維持していた。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
実施例17:仕上げ流体/改修流体
本発明のHECは、高比重ブラインの新規の増粘化を示す。仕上げ流体は、異なる塩分を有する様々なブラインで構成され、このようなブラインは、海水の8.5ppg(ポンド/ガロン)から、亜鉛と臭化カルシウム塩とを含む高比重ブラインの19.2ppgに及ぶ範囲の密度を有することをを特徴とする。標準的な高粘性HECは、一般的に、9〜13ppgの範囲のでブラインのための増粘剤として使用される。現状において、14ppg(CaBr)〜19.2ppg(ZnBr/CaBr)の範囲の密度を有する高比重ブラインのための効率的な増粘剤はない。これらのブラインは、利用可能な自由水の含量のレベルが極めて低く、従って、標準的なHECの最適な水和を促進することができない。これらのブラインは、極めて低いpHを特徴とする(ZnBr/CaBrの場合、pHは1未満)。
【0085】
実施例13および15の本発明のHECを、4種の異なるブライン系(淡水、塩飽和水、CaBr、および、ZnBr/CaBr)中0.57重量%で評価した。これらを、仕上げ流体で広く用いられる標準的なHEC(ナトロソルHI−VIS)と比較した。室温で一晩、静置してエイジングさせた後に、粘度および流体損失の特性を測定した。表4−a〜4−dに詳細な結果を報告した。
【0086】
本発明の実施例13および15は、これらの系で生じた高い見かけ粘度(A.V.)と降伏値(Yv)で詳細に示されるように(表4c〜d)、高密度、高比重ブライン溶液(低い水分活性を特徴とする)において優秀な増粘を示した。それに対して、市販のHI−VISは、このような低い水分活性系において溶液によく混合されなかった。加えて、本発明のHECの実施例は、6および3rpmにおけるファン(Fann)のダイヤル目盛りからわかるように、明らかに最低レベルのレオロジーを発生させ、適切な流体損失値を示した。
【0087】
低いHE−MSの水溶性HECサンプルのなかでも、実施例15が、全ての系(新しい水、海水、および、高密度のブライン)において傑出した増粘効率を示した。本発明の実施例で作製された溶液は、高比重ブラインにおいて、粘度の測定値が目盛りの範囲外になるほど粘性のゲルとなり、これは、様々な溶液において高い万能性を有し、かつ効率的な増粘剤であることを示唆している。
【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
実施例18
油井用セメンチング
低いHE−MSの水溶性HECは、高温で、かつ高濃度の塩の存在下で優秀な流体損失特性を示す。油井のセメンチングとは、セメント、水および添加剤のスラリーを混合し、それらを、油井の壁とケーシングの外側との間の環状のスペースに臨界点まで鋼製のケーシングを介してポンプ注入する工程である。設定時間の制御、摩擦の低減、スラリー密度の改変、セメントの接着性、および、流体損失の予防のような様々な機能特性を付与するために、セメントスラリーに添加剤が包含される。これらの特性のなかでも、流体損失の予防が重要な問題であり、高塩濃度および高温のような厳しい環境条件下では特に制御が難しい。初期におけるセメントスラリーの脱水と、それに関連する問題を予防するために、流体損失を予防するための添加剤が、設計されたスラリー特性の完全性の維持を促進するために添加される。
【0093】
現在、セメントスラリー製造において、油井の環境に応じて多種多様の流体損失を予防するための添加剤が用いられている。中温での運転に関しては、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)、および、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)のようなセルロース誘導体が、最も一般的に使用される流体損失に関する添加剤である。流体損失の予防とレオロジー特性との優れたバランスを達成するためには、セルロース誘導体のなかでも、様々な運転条件下でのポリマー適用量の柔軟性をより高くすることができることから低分子量の誘導体が好ましい。これらのポリマーは、穏やかな運転条件下では許容できる流体損失の予防を提供するが、高温および高塩濃度環境下では不十分である。従って、多様な運転条件下において改善された、流体損失を制御する添加剤への必要性がある。
【0094】
驚くべきことに、低いHE−MSと高い溶解性を有する低分子量のHECは、油井用セメントにおける流体の損失を有意に減少させることが発見された。本発明のHECは、標準的な市販のセメントグレードのHEC(ナトロソル180GXR,アクアロン社(Aqualon company)より入手可能)を超える優れた温度および塩耐性を示す。その上、実施例3のブチルで修飾された低いHE−MSの水溶性HECは、その他のあらゆる比較例サンプルよりも優れた性能を発揮する。
【0095】
本発明の実施例2および3、および、ナトロソル180GXRを、0および18%の塩(含水量に基づく)を含むことが示されるセメントスラリー配合物において評価した。これらのスラリー密度は、約15.8〜16.2ppgであった。中温と高温で、すなわちそれぞれ80°F、および、180°Fで、流体損失性能を測定した。
【0096】
【表9】

【0097】
表5は、本発明の実施例2および3の優れた性能を実証する。本発明の実施例によって提供される流体損失の予防は、標準的なHECよりも温度および塩によって受ける影響が少ない。本発明の実施例は、180°F、18%の塩濃度で優れた性能を示す。このような極端な条件下でも、実施例2および3の流体損失性能は、市販のHECよりも10〜20倍優れている。
【0098】
【表10】

【0099】
実施例19:紙
低いHE−MSの水溶性HECは、紙塗工において高い効率を有する増粘剤および水分保持剤である。以下に示す通りにして、実施例1および2の本発明のHEC、市販のサンプルであるアクアロン7L1TCMC、および、ナトロソル250GRを、紙塗工用配合物における増粘剤および保水性の補助剤として評価した。表6に、ブルックフィールド粘度を、1500+/−50cPに維持するのに必要なレオロジー改質剤の量、水の損失、および、ハーキュリーズ(Hercules)の高剪断粘度を示す。実施例1および2の低いHE−MSの水溶性HEC、ならびにHEC250GRは、類似の分子量と溶液粘度を有するが、低いHE−MSの水溶性HEC生成物は、HEC250GRよりも有意に高い適用量効率(それより最大50%効率的)を有し、同時にその低い水の損失率も維持した。加えて、実施例1および2は、アクアロン7L1TCMCよりもかなり低い水の損失と、より高い適用量効率を有する。
【0100】
【表11】

【0101】
【表12】

【0102】
実施例20:建設
ジョイントコンパウンドにおいて、低いHE−MSの水溶性HECは、強化された粘度を示す。以下で説明するようにして、増粘剤として、実施例9およびナトロソル250HHR製品を、多目的ジョイントコンパウンド配合物中0.30重量%で評価した。表7によれば、本発明の実施例のHECを含む配合物は、より効率的であり(ジョイントコンパウンドの粘度より高い)、同時に、優れた接着、作業性、および、へこみ特性を維持することが示される。
【0103】
【表13】

【0104】
【表14】

【0105】
実施例21:パーソナルケア
低いHE−MSの水溶性HECは、パーソナルケア配合物において強化された粘度を示す。以下に示す通りにして、ヘアーコンディショナー配合物において、ナトロソル(R)ヒドロキシエチルセルロースタイプ250HHR、および、実施例8の低いHE−MSの水溶性HECを0.7重量%で増粘効率に関して比較した。
【0106】
【表15】

【0107】
手法
上記増粘性ポリマーを、撹拌しながら水に添加した。次に、pHを8.0〜8.5に調節した。このスラリーを少なくとも30分間、または、ポリマーが溶解するまで撹拌した。この溶液を、約65℃に加熱し、セチルアルコールを添加し、均一になるまで混合した。この混合物を約50℃に冷却し、塩化カリウムを添加した。ミリスチン酸イソプロピルを添加し、この混合物が均一に見えるようになるまで混合した。この混合物のpHを、クエン酸および/またはNaOH溶液で5.3〜5.5に調節した。このコンディショナーを、0.5gのガーマベン(Germaben)IIを用いて保存し、混合物が室温に達するまで混合した。
【0108】
実施例8の低いHE−MSの水溶性HECを含むコンディショニング配合物の粘度は3,730cPであり、それと比較して、ナトロソル(R)250HHRを含むコントロールは、910cPであり、4倍改善された。
【0109】
実施例22:口腔ケア−薄い溶媒のゲル
低いHE−MSの水溶性HECは、その他の市販の高分子量のHECとは異なり、薄い溶媒中で強いゲルを形成する。低い水分活性の組成物、例えば含水アルコール溶液や薄い溶媒の溶液においてもよく機能する、パーソナルおよび口腔ケア用途における効率的な増粘剤、および、ゲル化剤への必要性がある。薄い溶媒は、練り歯磨き配合物の基剤であり、典型的には、水と、混和性の有機溶媒、例えばソルビトールまたはグリセロールとの混合物である。親水性ポリマーは、これらの薄い溶液において完全に水和することが困難な場合が多く、これは高い塩濃度を有する溶液でも、ポリマーに接近できる水がより少ないため同様である。
【0110】
これらの低いHE−MSの水溶性HECサンプルは、市販のHECとは異なり、グリセロール−水溶液において効率的なゲル化剤として作用することが発見された。実施例12および14、および、ナトロソル250HHXの1重量%水溶液を製造した。これらの3種のサンプルは、類似の分子量を有する。低いHE−MSサンプルをグリセロールで0.5重量%に希釈すると、2日が経過する間に弾性ゲルが生成した。これらのゲルサンプルを静置したところ、3週間が経過しても有意な離液を示さなかった。この挙動は、両方の条件下で流動しやすい溶液が生じる我々の標準的なナトロソルHEC材料のいずれとも異なる。
【0111】
表8に、試験された3種のHECに関する0.5重量%溶液の特性およびゼロ剪断粘度の目視による評価を列挙する。低いHE−MSのHECサンプルの他と異なる挙動は、50:50のグリセロールと水との溶液におけるゼロ剪断粘度を比較した場合に特に明白である。実施例12および14は、予想よりも6〜10倍大きい溶液粘度を明らかに示す。その上、レオロジーのプロファイルから、降伏点を有する弾性ゲルであることが示される。
【0112】
上記の集合体は、即時ではないが、時間をかけて(数時間〜数日)形成される。これは、練り歯磨き配合物のような、最終的に包装した後にその場で増粘することによって材料が最終用途の包装に容易にポンプ注入できる能力が要望されるようなパーソナルケア用途において、使用が見出される可能性がある。また、降伏応力の発生も、固体成分を懸濁する際に有利である。重要なことは、本明細書で説明したあらゆる操作が、加熱または溶液pHの大幅な変化を起こすことなく行われたことを指摘している点である。それに対抗する降伏応力を発生させる技術は、例えばカラゲナン(加熱/冷却)、または、合成カルボマー(pHの制御)などであり、これらは配合物中のその他の成分を不相溶性にする可能性がある方策を用いている。
【0113】
これらの系で観察されたゲル様の特徴を発生させるために、まず、強溶媒(すなわち水)中で上記ポリマーを溶解させ、続いて、上述のような非溶媒で希釈した。この一例としては、50:50のグリセロール:水の使用が挙げられる。グリセロールをいずれかの水混和性の共溶媒(例えばアルコール)で交換(replacement)することによって、類似の挙動を示すと予想される。
【0114】
【表16】

【0115】
実施例23:家庭用
低いHE−MSの水溶性HECは、一般的な家庭用ケア配合物中で優れた増粘能力を示す。ナトロソル(R)ヒドロキシエチルセルロースタイプ250HHR CS、および、実施例8の低いHE−MSの水溶性HECを、多目的クリーナーにおけるそれらの適合性、増粘効率および透明度に関して0.2重量%で評価した。表9によれば、実施例8は、多目的クリーナーを増粘し、さらに、類似の分子量を有するナトロソル(R)250HHR CSよりもほぼ2.5倍優れていたことが示される。さらに、実施例8の透明度は高いままであり、すなわちこれらが家庭用クリーナーに適合することを示す。
【0116】
手法
1重量%ポリマー溶液20gを、リゾール(Lysol)多目的クリーナー(pH8)80gに添加した。生成物を25℃で少なくとも2時間調整したところで、ブルックフィールドLVT粘度計を用いて最終産物の粘度を測定した。分光光度計を用いて、生成物の透明度を600nmで測定した。透明度の測定において、%透過率(%T)が100%の場合、完全に透明であると報告される。
【0117】
【表17】

【0118】
実施例24:医薬
低いHE−MSの水溶性HEC賦形剤は、優れた錠剤の硬度を提供する。医薬産業において、HECは、遅延放出用途において膨潤性の拡散障壁を提供するための賦形剤として用いられる。ゲルマトリックスの形態は、系への水性の流体の拡散を制限し、系から活性物質を溶解させる。
【0119】
HECは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)では再現できない特有の放出調節特性をいくつか有する。しかしながら、現在の知見によれば、HPMCやHPCと比較すると、HECの市販品グレードは著しく劣った圧縮特性を示す。このポリマーの不良な圧縮性のために、一般的には、産業上選択されることが多い直接の圧縮加工ではなく湿式造粒加工にのみ適したポリマーになる。
【0120】
このような制限を改善するために、アストラゼネカ(Astra Zeneca)の科学者は国際特許出願WO02/19990A1において、有機溶媒の添加による沈殿の前に水への溶解によってHECを精製する手法を説明している。この沈殿を洗浄し、続いて特殊な手法でミリングする。精製したHECは、著しく改善された錠剤圧縮性を有する。
【0121】
本発明は、製薬、家庭用、および、農業用途のための持続放出性の錠剤のような圧縮用途に使用するための直接圧縮可能な錠剤を製造するための、高度に圧縮可能な低いHE−MSの水溶性HEC材料の使用に関する。
【0122】
表10は、低いHE−MSのHEC、および、市販のナトロソル250HHX医薬用HECから製造された純粋なポリマー錠剤(潤滑のために1%ステアリン酸を含む)の強度を示す。水溶性を有するHEC(HE−MSは1.1)は、通常のナトロソル250HHX医薬用と比較して、錠剤の硬度において9倍の増加を達成した。典型的な放出調節製剤において、これらの材料はいずれも、市販のナトロソル250HHX医薬用と比較して優良な直接の圧縮性能と薬物放出の動力学を示した。
【0123】
【表18】

【0124】
特定の実施態様に関して本発明を説明したが、当然ながら本発明はそれらに限定されないこととし、本発明の本質および範囲から逸脱することなく多くの変更や改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】HECポリマーにおけるエチレンオキシドの分布プロファイルの棒グラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース主鎖上に均一に分布しているヒドロキシエチル基を有するヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含む組成物であって、非置換の三量体の比率(U3R)が約0.21未満であり、水への溶解度が約90%より大きく、該ヒドロキシエチルのモル置換度は、約0.7より大きく、約1.3未満である、上記組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシエチルセルロースは、非イオン性、アニオン性、および、カチオン性ならびにそれらの混合からなる群より選択される化学官能性を有する1個またはそれより多い置換基でさらに修飾されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記置換基は、エーテル、エステルまたはウレタン結合部分を介してヒドロキシエチルセルロース主鎖に結合している、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
存在する前記置換基は、非イオン性の化学官能性を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記置換基は、式:
−R、または、−A−R
を有し、式中、
Aは、
CH−CH(OH)、
CH−CH(OH)−CH
(CH−CH−O)(式中、nは、1〜100である)、
CH−CH(OH)−CH−O−(CH−CH−O)(式中、nは、1〜100である)、および、
CH(R)−C(O)−CH
からなる群より選択され、
Rは:
i)1〜30個の炭素原子を有する非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状の炭化水素部分、
ii)1〜30個の炭素原子、および、1個またはそれより多い酸素、窒素、または、ケイ素原子を有する、非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状のヘテロ原子を含む炭化水素部分、
iii)1〜30個の炭素原子を有し、1個またはそれより多い芳香族炭化水素基を有する非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状の炭化水素部分、
iv)1〜30個の炭素原子、および、1個またはそれより多い酸素、窒素、または、ケイ素原子、および、1個またはそれより多い芳香族基を有する、非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状のヘテロ原子を含む炭化水素部分、および、
v)1〜30個の炭素原子、および、1個またはそれより多い酸素、窒素、または、ケイ素原子、および、1個またはそれより多い酸素、窒素、または、ケイ素基を含む1個またはそれより多い複素環式芳香族基を有する、非環式または環式の、飽和または不飽和の、分岐状または直鎖状の、ヘテロ原子を含む炭化水素部分、
からなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルケニルアリール、アリールアルケニル、および、それらの混合物からなる群より選択され、これらは、場合により1〜30個の炭素原子を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
存在する前記置換基は、アニオン性の化学官能性を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記アニオン性の化学官能性は、カルボキシレート、スルフェート、スルホナート、ホスファート、ホスホナート、および、それらの混合からなる群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記置換基は、カルボキシメチル、スルホエチル、ホスホノメチル、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
存在する前記置換基は、カチオン性の化学官能性を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記置換基は、式R(A)を有し、式中、
は、−CH−CHOH−CH−、または、−CH−CH−であり、
、R、Rは、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキルまたはアリールアルキル基からなる群より選択され、および、
は、ハロゲン化物、スルフェート、ホスファート、または、テトラフルオロボラートである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記置換基は、
2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、
2−ヒドロキシプロピルドデシルジメチルアンモニウム塩化物、
2−ヒドロキシプロピルココアルキルジメチルアンモニウム塩化物、
2−ヒドロキシプロピルオクタデシルジメチルアンモニウム塩化物、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記カチオン性の基は、HEC組成物とジアリルジメチルアンモニウム塩化物とのグラフト反応から誘導される、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記修飾されたヒドロキシエチルセルロースは、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、オクチルヒドロキシエチルセルロース、セチルヒドロキシエチルセルロース、セトキシ−2−ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルセチルヒドロキシエチルセルロース、ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルセトキシ−2−ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルオクチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセトキシ−2−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルブトキシ−2−ヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルエチルヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルセチルヒドロキシエチルセルロース、スルホエチルセトキシ−2−ヒドロキシプロピルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−エチルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−オクチルヒドロキシエチルセルロース2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−セチルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−セトキシ−2−ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルラウリルジメチルアンモニウム塩化物−ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物−2−ヒドロキシプロピルラウリルジメチルアンモニウム塩化物−ヒドロキシエチルセルロース、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物−ヒドロキシエチルセルロースグラフトコポリマー、および、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物−セチルヒドロキシエチルセルロースグラフトコポリマーからなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
前記非置換の三量体の比率(U3R)は、0.18未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記ヒドロキシエチルのモル置換度は、約0.8より大きく、約1.3未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1に記載のヒドロキシエチルセルロース組成物を製造するためのスラリー法であって、
A)セルロース、水およびアルカリを混合し、有機溶媒中で、十分な時間、十分な温度でそれらを反応させ、アルカリセルロース混合物を形成すること、ここで、水の無水グルコース(AGU)に対するモル比は、約5〜35の範囲であり、アルカリのAGUに対するモル比は、約1.6より大きく、
B)十分な量のエチレンオキシドを添加し、望ましいHE−MSを生じさせること、
C)アルカリのAGUに対するモル比を、約0.4未満に減少させ、好ましくは約0.04より大きくするのに十分な量の酸を連続的に添加し、同時に、エチレンオキシドとアルカリセルロースとを、約0.7より大きく、約1.3未満のヒドロキシエチルのモル置換度を有する水溶性HEC生成物を形成するのに十分な温度および十分な時間反応させること、
を含む、上記スラリー法。
【請求項18】
前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、および、ジメトキシエタン、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項17に記載のスラリー法。
【請求項19】
前記アルカリは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項17に記載のスラリー法。
【請求項20】
前記セルロースは、コットンリンター、木材パルプ、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項17に記載のスラリー法。
【請求項21】
前記HEC組成物を、少なくとも1種のその他の誘導体化試薬とさらに反応させ、修飾されたヒドロキシエチルセルロース組成物を形成する、請求項17に記載のスラリー法。
【請求項22】
前記誘導体化試薬は、非イオン性、カチオン性、アニオン性有機化合物、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項21に記載のスラリー法。
【請求項23】
前記有機化合物は、ハロゲン化物、エポキシド、グリシジルエーテル、カルボン酸、イソシアネート、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項22に記載のスラリー法。
【請求項24】
前記HECまたは修飾HEC組成物はさらに、粘度低下剤と反応させる、請求項17または21に記載のスラリー法。
【請求項25】
前記粘度低下剤は、過酸化物、過硫酸塩、過酸、セルロース分解酵素、オキソ酸のハロゲン化物の塩、酸素、および、オゾンからなる群より選択される、請求項24に記載のスラリー法。
【請求項26】
a)パーソナルケア組成物、家庭用ケア組成物、医薬組成物、建築用および建設資材用組成物、乳化重合のための組成物、油田施設用の流体組成物、土木施設用の流体組成物、紙塗工用組成物、製紙用組成物、建築用塗料組成物、工業塗料組成物、印刷用インク組成物、接着剤組成物、ならびに、選鉱および回収のための組成物からなる群より選択される機能的な系、および、
b)請求項1に記載のヒドロキシエチルセルロース(HEC)、または、請求項2に記載の修飾されたヒドロキシエチルセルロース、
を含む組成物。
【請求項27】
前記機能的な系は、水性の建築用塗料または工業塗料組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
ラテックス、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、および、エポキシド樹脂からなる群より選択される結合剤をさらに含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記機能的な系は、コンクリート、タイルセメント、および、接着剤、しっくい、化粧しっくい、モルタル、水中コンクリート、ジョイントコンパウンドもしくはセメント、ひび割れ充填材、床用定規モルタル、および、貼り付けモルタルからなる群より選択される建築または建設資材用組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記機能的な系は、パーソナルケア組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
前記パーソナルケア組成物は、スキンケア、ヘアケア、口腔ケア、ネイルケア、および、個人用衛生用品からなる群より選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記機能的な系は、家庭用ケア組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項33】
前記家庭用ケア組成物は、布帛の手入れ、ランドリー用洗浄剤、硬質表面洗浄剤、業務用液体石鹸、および、食器洗い用洗剤からなる群より選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記機能的な系は、油田施設用の流体組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項35】
前記油田施設用の流体組成物は、掘削泥水、仕上げ流体または改修流体、破砕流体、および、油井のセメンチング用流体からなる群より選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記機能的な系は、紙塗工用組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項37】
前記機能的な系は、製紙用組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項38】
前記機能的な系は、医薬組成物である、請求項26に記載の組成物。
【請求項39】
前記医薬組成物は、錠剤、カプセルおよび顆粒からなる形態から選択される、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物は、賦形剤として用いられる、請求項38に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−536959(P2008−536959A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558279(P2007−558279)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/007663
【国際公開番号】WO2006/094211
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】