水溶性の織物又は編み物、その製造方法および水溶性の糸
【課題】水溶性の織物又は編み物が水に溶けるまでの時間を長くできるようにした水溶性の織物又は編み物、その製造方法および水溶性の糸を提供する。
【解決手段】細長い水溶性紙片を縒り上げてコヨリ状の細糸30を形成する第1工程と、前記細糸を複数本合わせて縒り上げて1本の堅牢なコヨリ状の太糸40が形成する第2工程と、次いで前記太糸を用いて織物または編み物を形成する第3工程とを備えている水溶性の織物又は編み物の製造方法。
【解決手段】細長い水溶性紙片を縒り上げてコヨリ状の細糸30を形成する第1工程と、前記細糸を複数本合わせて縒り上げて1本の堅牢なコヨリ状の太糸40が形成する第2工程と、次いで前記太糸を用いて織物または編み物を形成する第3工程とを備えている水溶性の織物又は編み物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性の織物又は編み物、その製造方法および水溶性の糸に関するものであり、より具体的には、水溶性を確保しつつも糸や織物、編み物が水に溶けるまでの時間を極めて長くできるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
織物や編み物を構成する糸は、天然繊維や合成繊維によって形成されているが、通常は水に溶けない非水溶性とされるのが一般的であり、したがって織物又は編み物そのものも非水溶性とされるのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、線状の和紙を撚糸すると共に溶融ワックスが付着された糸を用いて衣服を形成することにより、耐洗濯性等を高めたものが開示されている。この特許文献1に記載の糸や衣服は水溶性が全く無いものである。
【0004】
特許文献2には、細幅状に裁断された和紙を縒り上げて撚糸を形成し、この撚糸を用いて織物又は編み物を形成することが開示されている。この特許文献2に記載のものでは、和紙を利用して形成された織物又は編み物の強度向上を図ると共に柔軟性や弾力性を確保しようとするもので、糸や衣服そのものを積極的に水に溶けさせるという考えは全く認識されていない。
【0005】
特許文献3には、製紙用繊維によって形成された使い捨てのタオルやナプキン等に使われる吸水性の繊維質シート材料の製造方法が開示されている。この特許文献3に記載の繊維質シート材料は、柔軟性、強度、伸張性、吸収性、吸収容量、吸湿性、摩擦に対する抗力を高めたものであって、繊維質シート材料そのものは水に溶けないものである。
【0006】
特許文献4には、扁平な紙テープの巻き形状を工夫することにより、巻かれた紙テープを、各種紡績糸やフィラメント糸と同様の手段で容易に上方に引き出すことのできるようにしたものが開示されている。しかしながら、この特許文献4では、糸や織物、編み物を積極的に水に溶けさせるということは何等認識されていない。
【0007】
特許文献5には、紙紐を用いて植物栽培用支持具を形成する場合に、紙紐および支持具そのものの耐水性を高める技術が開示されている。この特許文献5に記載のものは、水に溶けさせるという観点とは全く逆の観点の発明となっている。
【0008】
特許文献6,特許文献7には、繊維に石けん液等を含浸させたものが開示されている。
【0009】
特許文献8には、スリット加工時の断紙トラブルの発生を防止でき、地合の良好な天然繊維を主とする紙糸用原紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−172541号公報
【特許文献2】特開平7−118975号公報
【特許文献3】特開昭50−13613号公報
【特許文献4】特開2005−306600号公報
【特許文献5】特開2000−32852号公報
【特許文献6】実開平2−11486号公報
【特許文献7】実開平6−7594号公報
【特許文献8】特開2006−265742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
織物又は編み物を適宜期間使用した後、水に溶けさせることができれば、焼却等の廃棄処分が不必要になり、二酸化炭素の削減等の上で好ましいものとなる。特に、天然成分からなる紙で形成された糸を用いて織物又は編み物を形成することは、天然資源の有効活用の点で好ましく、この上さらに織物又は編み物を使用後に水に溶かして処分することができれば、極めて好ましいものとなる。
【0012】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、水溶性を確保しつつも、水に溶けるまでの時間を極めて長くできるようにした水溶性の織物又は編み物、その製造方法および水溶性の糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明における水溶性の織物又は編み物の製造方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
細長い水溶性紙片を縒り上げてコヨリ状の細糸を形成する第1工程と、
前記細糸を複数本合わせて縒り上げて1本の堅牢なコヨリ状の太糸を形成する第2工程と、
前記太糸を用いて織物または編み物を形成する第3工程と、
を備えているようにしてある。
【0014】
上記解決手法によれば、織物又は編み物は、使用後水中に浸けることにより、水に溶け込むことになる。このため、使用後の織物又は編み物を廃棄する際に、焼却する必要がなくなる。また、水溶性紙を使用しているものの、水溶性紙をこより状の細糸にし、この細糸を複数本合わせたこより状の太糸とし、この太糸を用いて織物又は編み物を形成するので、織物又は編み物が水に溶けるまでに要する時間が極めて長くなって、タオル等水分に多量に触れるような使用にも耐えることができる。また、得られた織物又は編み物は強度や柔軟性、弾力性も確保されて、織物又は編み物として広い用途に使用できる。
【0015】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項4に記載のとおりである。すなわち、
前記第1工程または第2工程の少なくとも一方の工程における前記縒り上げを、水蒸気を吹き掛けつつ行なう、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、コヨリ状に縒り上げを行う際にかかる引張力やねじり力を小さくすることが可能となって、縒り上げ中に糸が不用意に切断されてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。そして、縒り上げ完了後は、付着された水分(水蒸気)が糸から容易かつ早期に蒸発するので、縒り上げ中に与えられた水蒸気が糸に長時間含まれたままとなってしまう事態も防止されることになる。なお、糸の切断防止のためには、例えば工業用油をつけることによっても可能であるが、この場合は、糸が工業用油を半永久的に含んだものとなってしまうために好ましくないものとなる。また、単に水をつけた場合は、水が多量に付着して水溶性紙が溶けてしまうことになる。
【0016】
前記水溶性紙片として、石けん、香料、殺菌・抗菌剤、天然染料の少なくとも1種類があらかじめ含浸されているものが用いられる、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、織物又は編み物に、あらかじめ含浸された材料に関連した機能性を与えておくことができる。
【0017】
前記第3工程の後に、前記織物または編み物の外周縁部を折り返して、該折り返した部分を水溶性の糸で縫着する第4工程をさらに備えている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、織物または編み物の外周縁部がほつれたり早期に水に溶けてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。
【0018】
前記3工程の後に、前記織物または編み物の外周縁部をプレス機によって圧着する第4工程をさらに備えている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、圧着という縫着よりも簡単な手法によって、織物または編み物の外周縁部がほつれたり早期に水に溶けてしまう事態を防止することができる。
【0019】
前記目的を達成するため、本発明における水溶性の織物又は編み物にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項6に記載のように、
織物又は編み物を形成している糸が、複数本の細糸を合わせて縒り上げたコヨリ状の太糸とされ、
前記細糸が、細長い水溶性紙片を縒り上げたコヨリ状とされている、
ようにしてある。この場合、請求項1に対応した効果を奏する水溶性の織物又は編み物を提供することができる。
【0020】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項7、請求項8に記載のとおりである。すなわち、
前記水溶性の織物又は編み物が、織物からなる水溶性のタオルとされ、
前記タオルの外周縁部が折り返されて、該折り返しされた部分が水溶性の糸で縫着されている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、タオルの外周縁部のほつれを防止でき、また多量の水に浸される機会の多いタオルがその外周縁部から早期に水に溶けてしまう事態を防止する上で好ましいものとなり、例えばホテル等で提供される使い捨てタオルとして好適なものが提供される。
【0021】
前記水溶性の織物又は編み物が、織物からなる水溶性のタオルとされ、
前記タオルの外周縁部が圧着されている、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、圧着という簡単な手法によって、請求項7の場合と同様の効果を得ることができる。
【0022】
前記目的を達成するため、本発明における水溶性の糸にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項9に記載のように、
細糸を複数本合わせて縒り上げたコヨリ状の太糸とされており、
前記細糸が、細長い水溶性紙片を縒り上げたコヨリ状とされている、
ようにしてある。この場合、水溶性を確保しつつ、水に溶けるまでの時間を極めて長くすることのできる糸を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水溶性を確保しつつ水に溶けるまでの時間を極めて長くすることができる。これにより、水溶性紙の適用範囲を従来よりも格段に広げて各種の織物又は編み物に適用でき、また使用後は焼却による廃棄処分に代えて水に溶かすというエネルギーや環境の上で好ましい廃棄処分を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】幅広の水溶性紙を示す図。
【図2】図1に示す水溶性紙を切断して得られた細長い水溶性紙片を示す拡大図。
【図3】図2に示す水溶性紙片を縒り上げることにより得られたコヨリ状の細糸を示す拡大図。
【図4】図3に示す複数本の細糸を縒り上げることにより得られたコヨリ状の太糸を示す拡大図。
【図5】図4に示す太糸を用いて形成されたタオルの一例を示す図。
【図6】本発明の製造方法例を示すフローチャート。
【図7】本発明によって形成されたタオルの好ましい例を示す平面図。
【図8】図7のX8−X8線相当断面図。
【図9】本発明によって形成されたタオルの好ましい別の例を示すもので、図8に対応した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、水溶性紙10を示す。水溶性紙10は、所用面積と厚みを有する幅広とされていて、その坪量は例えば約19g/平方mとされている。このような水溶性紙10としては、あらかじめ扱い易い大きさ(面積)の方形のものを用いてもよいが、例えば幅約1.2m、長さ約2,000mで、ロール状に巻かれた長尺のものをカットして用いることもできる。
【0026】
図2は、図1に示す幅広の水溶性紙10を幅方向に切断することにより得られた水溶性紙片20を示す。この水溶性紙片20は、図1に示す水溶性紙10をその幅方向等間隔(例えば3〜6mm間隔)に切断することにより得られる。図1には、切断位置が破線で示されているが、実際の破線の数は図1に示す場合よりも多くなる。
【0027】
図2に示す水溶性紙片20を縒り上げることにより、図3に示すようなコヨリ状の細糸30が形成される。この細糸30を複数本合わせて縒り上げることにより、図4に示すように1本の堅牢なコヨリ状の太糸40が形成される。
【0028】
上記太糸40を用いて織り出すことにより得られたタオル50の一例が、図5に示される(例えば幅25cm×長さ90cmで厚さ1〜2mm)。タオル50は、その用途に応じて適宜の大きさ(面積)や厚さのものとすることができる。例えば身体洗浄用の場合は、例えば幅25〜35cm×長さ75〜100cmの大きさとすることができる。また、例えば手ふき用の場合は、例えば幅5〜20cm×長さ5〜20cmの大きさとすることができる。
【0029】
タオル50は、多量に水に触れても、容易には溶けないものである。すなわち、単に水溶性紙10あるいは水溶性紙片20のままであれば、数十秒後には水に溶けてしまうので、タオルとしての機能は全く期待できないものである。しかしながら、本発明によって得られたタオル50は、水溶性紙片20をコヨリ状の細糸30とし、さらに細糸30を複数本合わせて1本の堅牢な太糸40として、この太糸40を織り出すことによってタオル50を得るようにしてあるので、長時間多量の水に触れたままでも溶けることがなく、タオルとして使用可能である。
【0030】
タオル50の使用後は、タオル50を水に浸けておくことにより、やがて水に溶けてしまうものである。よって、使用後に、タオル50を別途焼却処分する必要がないものであり(廃棄処分に際して、二酸化炭素の発生が無い)、使い捨てタオルとして極めて好ましいものとなる。
【0031】
図6は、図5に示すタオル50を得るための製造工程の一例を示すフローチャートである。以下この図6について説明するが、図中Sは工程(ステップ)を示す。なお、図6に示す例では、タオル50にあらかじめ石けんの機能等の特別の機能を別途付与するための例となっている。
【0032】
まず工程S1において、水溶性紙にあらかじめ石けん液、香料、殺菌・抗菌剤、の少なくとも1種類が含浸され、その後乾燥させることによって乾燥水溶性紙が得られる(図1に示す水溶性紙10が得られる)。なお、工程S1では、石けん液、香料、殺菌・抗菌剤に代えてあるいは一緒に、天然染料を含浸させることもできる。
【0033】
工程S2においては、工程S1での乾燥水溶性紙10をスリッタ(切断機)等によってその幅方向に切断することにより、図2に示すような細長い水溶性紙片20が得られる。工程S3では、工程S2で得られた水溶性紙片20を縒り上げることにより、所用直径と長さを有するコヨリ状の細糸30が得られる。
【0034】
工程S4では、工程S3で得られた細糸30を複数本(例えば3本)合わせて縒り上げることにより、1本の堅牢な太糸40が得られる。そして、工程S5では、工程S4で得られた太糸40を用いてタオル50が織り上げられる。得られたタオル50は、工程S1において含浸された材料に対応した機能を有するものとなる。
【0035】
ここで、工程S4あるいは工程S3での縒り上げの際には、図3、図4に示すように、水蒸気(スチーム)を吹きかけつつ行うのが、途中で糸30または40がテンションによって不用意に切断されてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。図3では、縒り上げを開始する付近とその前後に水蒸気を吹きかけるようにしてある。また、図4では、3本の細糸30が集合した直後付近(縒り上げが開始される付近とその前後)に対して、ノズル60から水蒸気(湯気)が吹きかけられるようにしてある。なお、ノズル60は、糸30,40の長手方向に間隔をあけて複数配置することができる。水蒸気を吹きかけることにより、縒り上げられつつある細糸30や太糸40に適度なしめり気が与えられて、縒り上げがスムーズに行われると共に、より小さなねじり力や引張力でもって縒り上げを行うことが可能になって、不用意な切断が防止されることになる(安定した回転(テンション)がかかって撚糸できる)。
【0036】
なお、縒り上げの際の切断防止には、水蒸気に代えて例えば工業用油をつけることによっても行うことが可能である。ただし、この場合は、縒り上げられた細糸30あるいは太糸40には、工業用油が少なからず含浸されたままとなってしまうので好ましくないものである。
【0037】
タオル50が長時間の耐水性を有する点についてより具体的に説明する。まず、水溶性紙10(水溶性紙片20)として、例えば、木材パルプ(NBKP(針葉樹パルプ)約70%とLBKP(広葉樹パルプ)約30%)に対して界面活性剤、柔軟剤、消泡剤を配合したもので、実坪量約19g/平方mのものを用意した。なお、繊維間の結合に対し他の結合剤を用いてもよい。
【0038】
水溶性紙10あるいは水溶性紙片20そのものは、数十秒で水に溶けてしまうものである。この水溶性紙10について、JIS−P4501による「ほぐれやすさ」を示す試験を行ったところ、ほぐれ時間は約19秒(柔軟剤有り)〜約26秒(柔軟剤なし)であった。このほぐれ時間について説明すると、上記JISに基づく試験において、マグネット回転子によって605〜610rpmの回転数とされた状態のビーカ内の500ccの水に対して、水溶性紙10を100mm四方の試験片としたものを投入する。試験片の抵抗によって一旦540rpmまで低回した時点で計測を開始し、試験片がほぐれるのにしたがって回転数が600rpmに上昇するまでに要した時間が上記ほぐれ時間である。
【0039】
水溶性紙片20の幅を3〜6mmとして、この水溶性紙片20から得られる細糸30の縒り上げは100cmあたり400〜750t(回転)とした。また、太糸40は、上記細糸30を3本合わせて縒り上げたもので、縒り上げは100cmあたり400〜750tとした。より具体的には、水溶性紙片20として、幅が3mmのものと、6mmのものとを用意した。幅が3mmの水溶性紙片20は縦糸用であり、幅が6mmの水溶性紙片20は横糸用である。この水溶性紙片20から得られる細糸30の縒り上げは、幅が3mmのものは750tで、幅が6cmのものは400tとした。また、幅が3mmの水溶性紙片20からなる細糸30を用いた太糸40の縒り上げは100cmあたり約750tとし、幅が6mmの水溶性紙片20からなる細糸30を用いた太糸40の縒り上げは約400tとした。
【0040】
上記太糸40を用いて(縦糸用と横糸用の2種類の太糸40を用いて)織り出されたタオル50は、その幅が約25cm、長さが約90cm、厚さが約1〜2mmとした。このタオル50が水に溶けるまでの時間は約60分であった。また、水につけられたタオル50が、少なくとも身体洗浄用として使用可能な程度にまで強度や形状を保持している時間は約40分であった。なお、原紙(水溶性紙10)の段階での木材パルプの配合割合の調整、結合剤の材料配合割合の調整、柔軟剤の有無、密度および坪量調整、水溶性紙片20の幅、細糸30や太糸40の縒り上げの回転調整等によって、タオル50が水に溶けるまでの時間を調整(変更)することができる。
【0041】
図7,図8は、本発明によって形成された織物としてのタオル50の好ましい例を示す。すなわち、本例では、タオルの全外周縁部に短い折り返し部51を形成して、この折り返し部51を水溶性糸(実施形態では縦糸用の細い太糸40を用いてある)でもってタオル50に縫い合わせてあり(縫着)、この縫着部分の軌跡が符合αで示される。タオル50を織り上げた直後においては、その外周縁部は太糸40の端面が露出されていて、ほぐれたり水に溶けやすい部分となるが、図7,図8に示すような構造とすることにより、タオル50がその外周縁部からほぐれたり早期に水に溶けてしまう事態を防止できる。図7,図8に示すようなタオル50を得る処理は、図6に示す行程S5の後に行われる。
【0042】
図9は、タオル50の外周縁部の処理を行う別の例を示すものである。本例では、タオル50の外周縁部をプレス機71A、71B(簡略して上下の押圧部のみを示す)によって圧着することによって、別途縫着を行うことなく、外周縁部のほつれ防止や外周縁部が早期に水に溶けてしまう事態を防止することができる。図8の例では、折り返し部51を有して、圧着後は、外周縁部の厚さが他の部分とほぼ同一の厚さを有するようにされている(圧着によって、外周縁部の厚さが薄くなる一方、その密度が高くなる)。プレス機71A、71Bによる圧着は、折り返し部51を有しない場合であっても適用できる。この圧着の際に、タオル50の外周縁部にスチーム(蒸気)をかけつつ行うこともできる。
【0043】
タオル50の外周縁部(折り返し部51があっても無くてもいずれでもよい)の処理としては、図7〜図9に示す場合の他、天然成分(例えばセルロース、でんぷん質等)での糊圧着を行うようにしてもよい。なお、図7,図8に示すような外周縁部の処理や、図9に示すプレス機71A、71Bによる圧着処理、さらには糊圧着は、タオルに限らず、他の織物や編み物にも同様に適用し得るものである。
【0044】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。図6の工程S1は有しないものであってもよい(石けん液、香料、殺菌・抗菌剤、天然染料等を全く含まないものであってもよい)。タオル50のような織物に限らず、編み物にも同様に適用し得る。本発明が適用できる織物又は編み物としては、例えば、おむつ(おむつカバー)、買い物袋等の各種袋物、ホテル等にて提供される浴衣、パジャマ等の衣服や枕カバー、カーテン、レストラン等で使用される飲食用ダスト(ふきん)、介護用体拭き、衣類、使い捨て下着、おしぼり(手ふき)、手洗い用具(石けん等の洗浄剤を含浸させたもの)等があるが、これらに限定されないものである。また、例えば、繊維加工剤や二次加工等を行ったり、別繊維糸と融合させることにより、別途様々な用途の素材に対応できる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば使い捨てタオル等に適用して好適である。
【符号の説明】
【0046】
10:水溶性紙
20:水溶性紙片
30:細糸
40:太糸
50:タオル
60:ノズル(水蒸気供給用)
71A、71B:プレス機
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性の織物又は編み物、その製造方法および水溶性の糸に関するものであり、より具体的には、水溶性を確保しつつも糸や織物、編み物が水に溶けるまでの時間を極めて長くできるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
織物や編み物を構成する糸は、天然繊維や合成繊維によって形成されているが、通常は水に溶けない非水溶性とされるのが一般的であり、したがって織物又は編み物そのものも非水溶性とされるのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、線状の和紙を撚糸すると共に溶融ワックスが付着された糸を用いて衣服を形成することにより、耐洗濯性等を高めたものが開示されている。この特許文献1に記載の糸や衣服は水溶性が全く無いものである。
【0004】
特許文献2には、細幅状に裁断された和紙を縒り上げて撚糸を形成し、この撚糸を用いて織物又は編み物を形成することが開示されている。この特許文献2に記載のものでは、和紙を利用して形成された織物又は編み物の強度向上を図ると共に柔軟性や弾力性を確保しようとするもので、糸や衣服そのものを積極的に水に溶けさせるという考えは全く認識されていない。
【0005】
特許文献3には、製紙用繊維によって形成された使い捨てのタオルやナプキン等に使われる吸水性の繊維質シート材料の製造方法が開示されている。この特許文献3に記載の繊維質シート材料は、柔軟性、強度、伸張性、吸収性、吸収容量、吸湿性、摩擦に対する抗力を高めたものであって、繊維質シート材料そのものは水に溶けないものである。
【0006】
特許文献4には、扁平な紙テープの巻き形状を工夫することにより、巻かれた紙テープを、各種紡績糸やフィラメント糸と同様の手段で容易に上方に引き出すことのできるようにしたものが開示されている。しかしながら、この特許文献4では、糸や織物、編み物を積極的に水に溶けさせるということは何等認識されていない。
【0007】
特許文献5には、紙紐を用いて植物栽培用支持具を形成する場合に、紙紐および支持具そのものの耐水性を高める技術が開示されている。この特許文献5に記載のものは、水に溶けさせるという観点とは全く逆の観点の発明となっている。
【0008】
特許文献6,特許文献7には、繊維に石けん液等を含浸させたものが開示されている。
【0009】
特許文献8には、スリット加工時の断紙トラブルの発生を防止でき、地合の良好な天然繊維を主とする紙糸用原紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−172541号公報
【特許文献2】特開平7−118975号公報
【特許文献3】特開昭50−13613号公報
【特許文献4】特開2005−306600号公報
【特許文献5】特開2000−32852号公報
【特許文献6】実開平2−11486号公報
【特許文献7】実開平6−7594号公報
【特許文献8】特開2006−265742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
織物又は編み物を適宜期間使用した後、水に溶けさせることができれば、焼却等の廃棄処分が不必要になり、二酸化炭素の削減等の上で好ましいものとなる。特に、天然成分からなる紙で形成された糸を用いて織物又は編み物を形成することは、天然資源の有効活用の点で好ましく、この上さらに織物又は編み物を使用後に水に溶かして処分することができれば、極めて好ましいものとなる。
【0012】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、水溶性を確保しつつも、水に溶けるまでの時間を極めて長くできるようにした水溶性の織物又は編み物、その製造方法および水溶性の糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明における水溶性の織物又は編み物の製造方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
細長い水溶性紙片を縒り上げてコヨリ状の細糸を形成する第1工程と、
前記細糸を複数本合わせて縒り上げて1本の堅牢なコヨリ状の太糸を形成する第2工程と、
前記太糸を用いて織物または編み物を形成する第3工程と、
を備えているようにしてある。
【0014】
上記解決手法によれば、織物又は編み物は、使用後水中に浸けることにより、水に溶け込むことになる。このため、使用後の織物又は編み物を廃棄する際に、焼却する必要がなくなる。また、水溶性紙を使用しているものの、水溶性紙をこより状の細糸にし、この細糸を複数本合わせたこより状の太糸とし、この太糸を用いて織物又は編み物を形成するので、織物又は編み物が水に溶けるまでに要する時間が極めて長くなって、タオル等水分に多量に触れるような使用にも耐えることができる。また、得られた織物又は編み物は強度や柔軟性、弾力性も確保されて、織物又は編み物として広い用途に使用できる。
【0015】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項4に記載のとおりである。すなわち、
前記第1工程または第2工程の少なくとも一方の工程における前記縒り上げを、水蒸気を吹き掛けつつ行なう、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、コヨリ状に縒り上げを行う際にかかる引張力やねじり力を小さくすることが可能となって、縒り上げ中に糸が不用意に切断されてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。そして、縒り上げ完了後は、付着された水分(水蒸気)が糸から容易かつ早期に蒸発するので、縒り上げ中に与えられた水蒸気が糸に長時間含まれたままとなってしまう事態も防止されることになる。なお、糸の切断防止のためには、例えば工業用油をつけることによっても可能であるが、この場合は、糸が工業用油を半永久的に含んだものとなってしまうために好ましくないものとなる。また、単に水をつけた場合は、水が多量に付着して水溶性紙が溶けてしまうことになる。
【0016】
前記水溶性紙片として、石けん、香料、殺菌・抗菌剤、天然染料の少なくとも1種類があらかじめ含浸されているものが用いられる、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、織物又は編み物に、あらかじめ含浸された材料に関連した機能性を与えておくことができる。
【0017】
前記第3工程の後に、前記織物または編み物の外周縁部を折り返して、該折り返した部分を水溶性の糸で縫着する第4工程をさらに備えている、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、織物または編み物の外周縁部がほつれたり早期に水に溶けてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。
【0018】
前記3工程の後に、前記織物または編み物の外周縁部をプレス機によって圧着する第4工程をさらに備えている、ようにしてある(請求項5対応)。この場合、圧着という縫着よりも簡単な手法によって、織物または編み物の外周縁部がほつれたり早期に水に溶けてしまう事態を防止することができる。
【0019】
前記目的を達成するため、本発明における水溶性の織物又は編み物にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項6に記載のように、
織物又は編み物を形成している糸が、複数本の細糸を合わせて縒り上げたコヨリ状の太糸とされ、
前記細糸が、細長い水溶性紙片を縒り上げたコヨリ状とされている、
ようにしてある。この場合、請求項1に対応した効果を奏する水溶性の織物又は編み物を提供することができる。
【0020】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項7、請求項8に記載のとおりである。すなわち、
前記水溶性の織物又は編み物が、織物からなる水溶性のタオルとされ、
前記タオルの外周縁部が折り返されて、該折り返しされた部分が水溶性の糸で縫着されている、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、タオルの外周縁部のほつれを防止でき、また多量の水に浸される機会の多いタオルがその外周縁部から早期に水に溶けてしまう事態を防止する上で好ましいものとなり、例えばホテル等で提供される使い捨てタオルとして好適なものが提供される。
【0021】
前記水溶性の織物又は編み物が、織物からなる水溶性のタオルとされ、
前記タオルの外周縁部が圧着されている、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、圧着という簡単な手法によって、請求項7の場合と同様の効果を得ることができる。
【0022】
前記目的を達成するため、本発明における水溶性の糸にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項9に記載のように、
細糸を複数本合わせて縒り上げたコヨリ状の太糸とされており、
前記細糸が、細長い水溶性紙片を縒り上げたコヨリ状とされている、
ようにしてある。この場合、水溶性を確保しつつ、水に溶けるまでの時間を極めて長くすることのできる糸を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水溶性を確保しつつ水に溶けるまでの時間を極めて長くすることができる。これにより、水溶性紙の適用範囲を従来よりも格段に広げて各種の織物又は編み物に適用でき、また使用後は焼却による廃棄処分に代えて水に溶かすというエネルギーや環境の上で好ましい廃棄処分を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】幅広の水溶性紙を示す図。
【図2】図1に示す水溶性紙を切断して得られた細長い水溶性紙片を示す拡大図。
【図3】図2に示す水溶性紙片を縒り上げることにより得られたコヨリ状の細糸を示す拡大図。
【図4】図3に示す複数本の細糸を縒り上げることにより得られたコヨリ状の太糸を示す拡大図。
【図5】図4に示す太糸を用いて形成されたタオルの一例を示す図。
【図6】本発明の製造方法例を示すフローチャート。
【図7】本発明によって形成されたタオルの好ましい例を示す平面図。
【図8】図7のX8−X8線相当断面図。
【図9】本発明によって形成されたタオルの好ましい別の例を示すもので、図8に対応した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、水溶性紙10を示す。水溶性紙10は、所用面積と厚みを有する幅広とされていて、その坪量は例えば約19g/平方mとされている。このような水溶性紙10としては、あらかじめ扱い易い大きさ(面積)の方形のものを用いてもよいが、例えば幅約1.2m、長さ約2,000mで、ロール状に巻かれた長尺のものをカットして用いることもできる。
【0026】
図2は、図1に示す幅広の水溶性紙10を幅方向に切断することにより得られた水溶性紙片20を示す。この水溶性紙片20は、図1に示す水溶性紙10をその幅方向等間隔(例えば3〜6mm間隔)に切断することにより得られる。図1には、切断位置が破線で示されているが、実際の破線の数は図1に示す場合よりも多くなる。
【0027】
図2に示す水溶性紙片20を縒り上げることにより、図3に示すようなコヨリ状の細糸30が形成される。この細糸30を複数本合わせて縒り上げることにより、図4に示すように1本の堅牢なコヨリ状の太糸40が形成される。
【0028】
上記太糸40を用いて織り出すことにより得られたタオル50の一例が、図5に示される(例えば幅25cm×長さ90cmで厚さ1〜2mm)。タオル50は、その用途に応じて適宜の大きさ(面積)や厚さのものとすることができる。例えば身体洗浄用の場合は、例えば幅25〜35cm×長さ75〜100cmの大きさとすることができる。また、例えば手ふき用の場合は、例えば幅5〜20cm×長さ5〜20cmの大きさとすることができる。
【0029】
タオル50は、多量に水に触れても、容易には溶けないものである。すなわち、単に水溶性紙10あるいは水溶性紙片20のままであれば、数十秒後には水に溶けてしまうので、タオルとしての機能は全く期待できないものである。しかしながら、本発明によって得られたタオル50は、水溶性紙片20をコヨリ状の細糸30とし、さらに細糸30を複数本合わせて1本の堅牢な太糸40として、この太糸40を織り出すことによってタオル50を得るようにしてあるので、長時間多量の水に触れたままでも溶けることがなく、タオルとして使用可能である。
【0030】
タオル50の使用後は、タオル50を水に浸けておくことにより、やがて水に溶けてしまうものである。よって、使用後に、タオル50を別途焼却処分する必要がないものであり(廃棄処分に際して、二酸化炭素の発生が無い)、使い捨てタオルとして極めて好ましいものとなる。
【0031】
図6は、図5に示すタオル50を得るための製造工程の一例を示すフローチャートである。以下この図6について説明するが、図中Sは工程(ステップ)を示す。なお、図6に示す例では、タオル50にあらかじめ石けんの機能等の特別の機能を別途付与するための例となっている。
【0032】
まず工程S1において、水溶性紙にあらかじめ石けん液、香料、殺菌・抗菌剤、の少なくとも1種類が含浸され、その後乾燥させることによって乾燥水溶性紙が得られる(図1に示す水溶性紙10が得られる)。なお、工程S1では、石けん液、香料、殺菌・抗菌剤に代えてあるいは一緒に、天然染料を含浸させることもできる。
【0033】
工程S2においては、工程S1での乾燥水溶性紙10をスリッタ(切断機)等によってその幅方向に切断することにより、図2に示すような細長い水溶性紙片20が得られる。工程S3では、工程S2で得られた水溶性紙片20を縒り上げることにより、所用直径と長さを有するコヨリ状の細糸30が得られる。
【0034】
工程S4では、工程S3で得られた細糸30を複数本(例えば3本)合わせて縒り上げることにより、1本の堅牢な太糸40が得られる。そして、工程S5では、工程S4で得られた太糸40を用いてタオル50が織り上げられる。得られたタオル50は、工程S1において含浸された材料に対応した機能を有するものとなる。
【0035】
ここで、工程S4あるいは工程S3での縒り上げの際には、図3、図4に示すように、水蒸気(スチーム)を吹きかけつつ行うのが、途中で糸30または40がテンションによって不用意に切断されてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。図3では、縒り上げを開始する付近とその前後に水蒸気を吹きかけるようにしてある。また、図4では、3本の細糸30が集合した直後付近(縒り上げが開始される付近とその前後)に対して、ノズル60から水蒸気(湯気)が吹きかけられるようにしてある。なお、ノズル60は、糸30,40の長手方向に間隔をあけて複数配置することができる。水蒸気を吹きかけることにより、縒り上げられつつある細糸30や太糸40に適度なしめり気が与えられて、縒り上げがスムーズに行われると共に、より小さなねじり力や引張力でもって縒り上げを行うことが可能になって、不用意な切断が防止されることになる(安定した回転(テンション)がかかって撚糸できる)。
【0036】
なお、縒り上げの際の切断防止には、水蒸気に代えて例えば工業用油をつけることによっても行うことが可能である。ただし、この場合は、縒り上げられた細糸30あるいは太糸40には、工業用油が少なからず含浸されたままとなってしまうので好ましくないものである。
【0037】
タオル50が長時間の耐水性を有する点についてより具体的に説明する。まず、水溶性紙10(水溶性紙片20)として、例えば、木材パルプ(NBKP(針葉樹パルプ)約70%とLBKP(広葉樹パルプ)約30%)に対して界面活性剤、柔軟剤、消泡剤を配合したもので、実坪量約19g/平方mのものを用意した。なお、繊維間の結合に対し他の結合剤を用いてもよい。
【0038】
水溶性紙10あるいは水溶性紙片20そのものは、数十秒で水に溶けてしまうものである。この水溶性紙10について、JIS−P4501による「ほぐれやすさ」を示す試験を行ったところ、ほぐれ時間は約19秒(柔軟剤有り)〜約26秒(柔軟剤なし)であった。このほぐれ時間について説明すると、上記JISに基づく試験において、マグネット回転子によって605〜610rpmの回転数とされた状態のビーカ内の500ccの水に対して、水溶性紙10を100mm四方の試験片としたものを投入する。試験片の抵抗によって一旦540rpmまで低回した時点で計測を開始し、試験片がほぐれるのにしたがって回転数が600rpmに上昇するまでに要した時間が上記ほぐれ時間である。
【0039】
水溶性紙片20の幅を3〜6mmとして、この水溶性紙片20から得られる細糸30の縒り上げは100cmあたり400〜750t(回転)とした。また、太糸40は、上記細糸30を3本合わせて縒り上げたもので、縒り上げは100cmあたり400〜750tとした。より具体的には、水溶性紙片20として、幅が3mmのものと、6mmのものとを用意した。幅が3mmの水溶性紙片20は縦糸用であり、幅が6mmの水溶性紙片20は横糸用である。この水溶性紙片20から得られる細糸30の縒り上げは、幅が3mmのものは750tで、幅が6cmのものは400tとした。また、幅が3mmの水溶性紙片20からなる細糸30を用いた太糸40の縒り上げは100cmあたり約750tとし、幅が6mmの水溶性紙片20からなる細糸30を用いた太糸40の縒り上げは約400tとした。
【0040】
上記太糸40を用いて(縦糸用と横糸用の2種類の太糸40を用いて)織り出されたタオル50は、その幅が約25cm、長さが約90cm、厚さが約1〜2mmとした。このタオル50が水に溶けるまでの時間は約60分であった。また、水につけられたタオル50が、少なくとも身体洗浄用として使用可能な程度にまで強度や形状を保持している時間は約40分であった。なお、原紙(水溶性紙10)の段階での木材パルプの配合割合の調整、結合剤の材料配合割合の調整、柔軟剤の有無、密度および坪量調整、水溶性紙片20の幅、細糸30や太糸40の縒り上げの回転調整等によって、タオル50が水に溶けるまでの時間を調整(変更)することができる。
【0041】
図7,図8は、本発明によって形成された織物としてのタオル50の好ましい例を示す。すなわち、本例では、タオルの全外周縁部に短い折り返し部51を形成して、この折り返し部51を水溶性糸(実施形態では縦糸用の細い太糸40を用いてある)でもってタオル50に縫い合わせてあり(縫着)、この縫着部分の軌跡が符合αで示される。タオル50を織り上げた直後においては、その外周縁部は太糸40の端面が露出されていて、ほぐれたり水に溶けやすい部分となるが、図7,図8に示すような構造とすることにより、タオル50がその外周縁部からほぐれたり早期に水に溶けてしまう事態を防止できる。図7,図8に示すようなタオル50を得る処理は、図6に示す行程S5の後に行われる。
【0042】
図9は、タオル50の外周縁部の処理を行う別の例を示すものである。本例では、タオル50の外周縁部をプレス機71A、71B(簡略して上下の押圧部のみを示す)によって圧着することによって、別途縫着を行うことなく、外周縁部のほつれ防止や外周縁部が早期に水に溶けてしまう事態を防止することができる。図8の例では、折り返し部51を有して、圧着後は、外周縁部の厚さが他の部分とほぼ同一の厚さを有するようにされている(圧着によって、外周縁部の厚さが薄くなる一方、その密度が高くなる)。プレス機71A、71Bによる圧着は、折り返し部51を有しない場合であっても適用できる。この圧着の際に、タオル50の外周縁部にスチーム(蒸気)をかけつつ行うこともできる。
【0043】
タオル50の外周縁部(折り返し部51があっても無くてもいずれでもよい)の処理としては、図7〜図9に示す場合の他、天然成分(例えばセルロース、でんぷん質等)での糊圧着を行うようにしてもよい。なお、図7,図8に示すような外周縁部の処理や、図9に示すプレス機71A、71Bによる圧着処理、さらには糊圧着は、タオルに限らず、他の織物や編み物にも同様に適用し得るものである。
【0044】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。図6の工程S1は有しないものであってもよい(石けん液、香料、殺菌・抗菌剤、天然染料等を全く含まないものであってもよい)。タオル50のような織物に限らず、編み物にも同様に適用し得る。本発明が適用できる織物又は編み物としては、例えば、おむつ(おむつカバー)、買い物袋等の各種袋物、ホテル等にて提供される浴衣、パジャマ等の衣服や枕カバー、カーテン、レストラン等で使用される飲食用ダスト(ふきん)、介護用体拭き、衣類、使い捨て下着、おしぼり(手ふき)、手洗い用具(石けん等の洗浄剤を含浸させたもの)等があるが、これらに限定されないものである。また、例えば、繊維加工剤や二次加工等を行ったり、別繊維糸と融合させることにより、別途様々な用途の素材に対応できる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば使い捨てタオル等に適用して好適である。
【符号の説明】
【0046】
10:水溶性紙
20:水溶性紙片
30:細糸
40:太糸
50:タオル
60:ノズル(水蒸気供給用)
71A、71B:プレス機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い水溶性紙片を縒り上げてコヨリ状の細糸を形成する第1工程と、
前記細糸を複数本合わせて縒り上げて1本の堅牢なコヨリ状の太糸を形成する第2工程と、
前記太糸を用いて織物または編み物を形成する第3工程と、
を備えていることを特徴とする水溶性の織物又は編み物の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1工程または第2工程の少なくとも一方の工程における前記縒り上げを、水蒸気を吹き掛けつつ行なう、ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記水溶性紙片として、石けん、香料、殺菌・抗菌剤、天然染料の少なくとも1種類があらかじめ含浸されているものが用いられる、ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第3工程の後に、前記織物または編み物の外周縁部を折り返して、該折り返した部分を水溶性の糸で縫着する第4工程をさらに備えている、
ことを特徴とする織物又は編み物の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記3工程の後に、前記織物または編み物の外周縁部をプレス機によって圧着する第4工程をさらに備えている、ことを特徴とする織物又は編み物の製造方法。
【請求項6】
織物又は編み物を形成している糸が、複数本の細糸を合わせて縒り上げたコヨリ状の太糸とされ、
前記細糸が、細長い水溶性紙片を縒り上げたコヨリ状とされている、
ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物。
【請求項7】
請求項6において、
前記水溶性の織物又は編み物が、織物からなる水溶性のタオルとされ、
前記タオルの外周縁部が折り返されて、該折り返しされた部分が水溶性の糸で縫着されている、
ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物。
【請求項8】
請求項6において、
前記水溶性の織物又は編み物が、織物からなる水溶性のタオルとされ、
前記タオルの外周縁部が圧着されている、
ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物。
【請求項9】
細糸を複数本合わせて縒り上げたコヨリ状の太糸とされており、
前記細糸が、細長い水溶性紙片を縒り上げたコヨリ状とされている、
ことを特徴とする水溶性の糸。
【請求項1】
細長い水溶性紙片を縒り上げてコヨリ状の細糸を形成する第1工程と、
前記細糸を複数本合わせて縒り上げて1本の堅牢なコヨリ状の太糸を形成する第2工程と、
前記太糸を用いて織物または編み物を形成する第3工程と、
を備えていることを特徴とする水溶性の織物又は編み物の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1工程または第2工程の少なくとも一方の工程における前記縒り上げを、水蒸気を吹き掛けつつ行なう、ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記水溶性紙片として、石けん、香料、殺菌・抗菌剤、天然染料の少なくとも1種類があらかじめ含浸されているものが用いられる、ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第3工程の後に、前記織物または編み物の外周縁部を折り返して、該折り返した部分を水溶性の糸で縫着する第4工程をさらに備えている、
ことを特徴とする織物又は編み物の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記3工程の後に、前記織物または編み物の外周縁部をプレス機によって圧着する第4工程をさらに備えている、ことを特徴とする織物又は編み物の製造方法。
【請求項6】
織物又は編み物を形成している糸が、複数本の細糸を合わせて縒り上げたコヨリ状の太糸とされ、
前記細糸が、細長い水溶性紙片を縒り上げたコヨリ状とされている、
ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物。
【請求項7】
請求項6において、
前記水溶性の織物又は編み物が、織物からなる水溶性のタオルとされ、
前記タオルの外周縁部が折り返されて、該折り返しされた部分が水溶性の糸で縫着されている、
ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物。
【請求項8】
請求項6において、
前記水溶性の織物又は編み物が、織物からなる水溶性のタオルとされ、
前記タオルの外周縁部が圧着されている、
ことを特徴とする水溶性の織物又は編み物。
【請求項9】
細糸を複数本合わせて縒り上げたコヨリ状の太糸とされており、
前記細糸が、細長い水溶性紙片を縒り上げたコヨリ状とされている、
ことを特徴とする水溶性の糸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−111987(P2010−111987A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214788(P2009−214788)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(508303025)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(508303025)
【Fターム(参考)】
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