説明

水溶性アゾ化合物、インク組成物および着色体

【課題】インクジェット記録に適する高い鮮明性をもつ色相を有し、且つ記録物の堅牢度が強く、又保存安定性が優れたイエロー色素、およびこれを含有するインク組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される水溶性アゾ化合物又はその塩
【化1】


(式(1)中、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Y1はカルボキシル基、メチル基またはフェニル基を、Y2はヒドロキシル基またはアミノ基をそれぞれ表す。Y3及びY4はそれぞれ独立して水素原子、スルホン酸基またはカルボキシル基を表し、かつY3、Y4のうち少なくとも1つはスルホン酸基又はカルボキシル基である。Aは、脂肪族アミン残基、芳香族アミン残基、ヒドロキシル基、又はアゾ化合物の残基であり、Bは、脂肪族アミン残基、芳香族アミン残基又はヒドロキシル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性アゾ化合物またはその塩、これらを含有するインク組成物及びこれを用いて得られる着色体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種カラー記録法の中で、その代表的方法の一つであるインクジェットプリンタによる記録方法において、インクの吐出方式が各種開発されているが、いずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材料(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものとなっている。この方法では、記録ヘッドと被記録材料とが接触しない為、音の発生がなく静かであり、また小型化、高速化、カラー化が容易という特長の為、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。
従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用インクとしては、水溶性染料を水性媒体中に溶解したインクが使用されており、これらの水溶性インクにおいてはペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく一般に水溶性有機溶剤が添加されている。これらの従来のインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求され、また形成される画像には、耐水性、耐湿性、耐光性等の堅牢度が求められている。
【0003】
一方、コンピューターのカラーディスプレー上の画像又は文字情報をインクジェットプリンタによりカラ−で記録するには、一般にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色で表現される。CRTディスプレー等におけるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)による加法混色画像を減法混色画像で出来るだけ忠実に再現するには、使用する色素、中でもY、M、Cのそれぞれが、標準に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。さらに、インク組成物は長期の保存に対して安定であり、またプリントした画像の濃度が高く、しかも耐水性、耐湿性、耐光性及び耐ガス性等の堅牢度に優れている事が求められる。耐ガス性とは、空気中に存在する酸化作用を持つオゾンガス等が記録紙上又は記録紙中で染料と反応し、印刷された画像を変退色させるという現象に対する耐性のことである。オゾンガスは、インクジェット記録画像の退色現象を促進させる主要な原因物質とされている。この変退色現象はインクジェット画像に特徴的なものであるため、耐オゾンガス性の向上は重要な課題となっている。特に、写真画質インクジェット専用紙の表面に設けられるインク受容層には、インクの乾燥を早め、また高画質でのにじみを少なくする為に、多孔性白色無機物を用いているものが多く、このような記録紙上でオゾンガスによる変退色が顕著に見られる。最近のデジタルカメラの普及と共に、家庭でも画像をプリントする機会が増しており、得られたプリント物を保管する時に、空気中の酸化性ガスによる画像の変色が問題視されている。
水溶性及び鮮明性の優れるインクジェット用のイエローの色素骨格としては、ピラゾロンアゾ化合物の下記式(7)で示されるC.I.アシッドイエロー23(例えば、特許文献1〜4参照)あるいは特許文献4で提案されたもの等が挙げられるが色相、鮮明性、耐光性、耐水性、耐湿性、耐ガス性及び溶解安定性のすべてを満足させるものは得られていない。また、特許文献5に本発明の化合物に類似した化合物が記載されているが、インクジェット用途及びそれに適する耐オゾンガス性等、上記性能についての記載はない。
【0004】
【化4】

【0005】
【特許文献1】特開2000−178492 4ページ
【特許文献2】特開2002−241648 2〜4ページ 実施例1
【特許文献3】特開2002−53780 3ページ
【特許文献4】特開2002−226739 7〜8ページ 実施例1〜3
【特許文献5】特開2003−286420 1〜2ページ 実施例1〜3
【特許文献6】英国特許第753550号 7〜8ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は水に溶解性が高く、インクジェット記録に適する色相と鮮明性を有し、且つ記録物の耐水性、耐湿性、耐光、耐ガス堅牢性に優れた水溶性の色素(化合物)およびそれを含有するインク組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は前記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、特定の式で示される水溶性モノアゾ化合物およびそれを含有するインク組成物が前記課題を解決するものであることを見出し本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は
(1)下記式(1)で示される水溶性アゾ化合物又はその塩、
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Y1はカルボキシル基、メチル基またはフェニル基を、Y2はヒドロキシル基またはアミノ基をそれぞれ表す。Y3及びY4はそれぞれ独立して水素原子、スルホン酸基またはカルボキシル基を表し、かつY3、Y4のうち少なくとも1つはスルホン酸基又はカルボキシル基である。Aは、脂肪族アミン残基、芳香族アミン残基、ヒドロキシル基、又はアゾ化合物の残基であり、Bは、脂肪族アミン残基、芳香族アミン残基又はヒドロキシル基を示す。)
(2)式(1)のAが下記式(2)、(3)又は(4)である(1)に記載の水溶性アゾ化合物又はその塩、
【化2】

(式中、R1、Y1〜Y4は前記と同様の意味を表す)
(3)式(1)のBが下記式(5)又は(6)である(1)または(2)に記載の水溶性アゾ化合物又はその塩、
【化3】

(4)式(1)〜式(4)中のR1が水素原子またはメチル基、Y1がカルボキシル基、Y2がヒドロキシル基、Y3がスルホン酸基で、かつその位置が2位、Y4が水素原子である(1)から(3)のいずれか一項に記載の水溶性アゾ化合物又はその塩、
(5)(1)から(4)のいずれか一項に記載の水溶性アゾ化合物またはその塩を含有することを特徴とするインク組成物、
(6)水溶性有機溶剤を含有する(5)に記載のインク組成物、
(7)インクジェット記録用である(5)または(6)に記載のインク組成物、
(8)インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、インク組成物として(5)から(7)のいずれか一項に記載のインク組成物を用いることを特徴とするインクジェット記録方法、
(9)被記録材が情報伝達用シートである(8)に記載のインクジェット記録方法、
(10)情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有したインク受像層を有する用紙である(9)に記載のインクジェット記録方法、
(11)(1)から(4)に記載の水溶性アゾ化合物又はその塩、または(5)から(7)のいずれか一項に記載のインク組成物で着色された着色体、
(12)着色がプリンタによりなされた(11)に記載の着色体、
(13)(5)から(7)のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ、
に関する
【発明の効果】
【0008】
本発明の式(1)の水溶性アゾ化合物又はその塩は、インクジェット記録紙上で非常に鮮明性、明度の高い色相であり、水溶解性に優れ、インク組成物製造過程でのメンブランフィルターに対するろ過性が良好という特徴を有する。又、この化合物を使用した本発明のインク組成物は長期間保存後の結晶析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。そして本発明の水溶性アゾ化合物又はその塩をインクジェット記録用のインクとして使用した印刷物は被記録材(紙、フィルム等)を選択することなく理想的な色相であり、写真調のカラー画像の色相を紙の上に忠実に再現させることも可能である。更に写真画質用インクジェット専用紙(フィルム)のような多孔性白色無機物を表面に塗工した被記録材に記録しても各種堅牢性、すなわち耐水性、耐湿性、耐光性、耐ガス性が良好であり、写真調の記録画像の長期保存安定性に優れている。従って、式(1)の水溶性アゾ化合物又はその塩はインクジェット記録用のインク用の色素として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を詳細に説明する。尚、本発明において断りが無い限りスルホン酸基及びカルボキシル基は遊離酸の形で表す。
本発明の水溶性アゾ化合物は遊離酸の形で下記式(1)で表される。
【0010】
【化5】

(式(1)中、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Y1はカルボキシル基、メチル基またはフェニル基を、Y2はヒドロキシル基またはアミノ基をそれぞれ表す。Y3及びY4はそれぞれ独立して水素原子、スルホン酸基またはカルボキシル基を表し、かつY3、Y4のうち少なくとも1つはスルホン酸基又はカルボキシル基である。Aの部位は、任意の脂肪族アミン残基、芳香族アミン残基、ヒドロキシル基、又は任意のアゾ化合物の残基であり、Bの部位は、任意の脂肪族アミン残基、芳香族アミン又はヒドロキシル基残基を示す。)
【0011】
式(1)のR1における炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
式(1)中のR1、Y1、Y2、Y3、Y4、A、Bの特に好ましい組み合わせは、R1が水素原子またはメチル基、Y1がカルボキシル基、Y2がヒドロキシル基。Y3がスルホン酸基でかつその位置が2位、Y4が水素原子であり、Aが下記式(2)、(3)又は(4)であり、Bが下記式(5)又は(6)である組み合わせである。
【化6】

(式中、R1、Y1〜Y4は前記と同様の意味を表す)
【化7】

【0012】
式(1)の化合物の塩は、無機又は有機陽イオンの塩である。塩としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、または一般式(8)で表されるアンモニウム塩である。
【0013】
【化8】

【0014】
(式(8)中、X1〜X4はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシアルコキシアルキル基を表わす。)
式(8)のX1〜X4におけるアルキル基の例としてはメチル基、エチル基等があげられ、ヒドロキシアルキル基の例としてはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基等があげられ、更にヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシエチル基、3−ヒドロキシエトキシプロピル基、3−ヒドロキシエトキシブチル基、2−ヒドロキシエトキシブチル基等があげられる。
【0015】
これらのうち好ましいものとしては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいものは、リチウム塩およびナトリウムの塩である。
【0016】
上記において式(1)の化合物の塩は、例えば、反応液、ウェットケーキまたは乾燥品を水に溶解したものに食塩を加えて、塩析、濾過することによってナトリウム塩をウェットケーキとして得ることができる。又、そのウェットケーキを再び水に溶解後、塩酸を加えてpHを1〜2に調整して得られる結晶を濾過すれば、遊離酸(あるいは一部はナトリウム塩のまま)の形で得ることができる。更に、その遊離酸のウェットケーキを水と共に撹拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水または式(2)の水酸化物等を添加してアルカリ性にすれば、各々相当するカリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩が得られる。これらの塩のうち、特に好ましいものは、前記した通りリチウムおよびナトリウムの塩である。
【0017】
本発明の式(1)で示される水溶性アゾ化合物は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、常法により、下記式(C)で示される芳香族アミンをジアゾ化し、下記式(D)で示されるカップラーと室温下(通常20〜25℃)、弱アルカリ性(通常pH8〜9)でカップリング反応することにより、下記式(E)で示されるアミノ基含有アゾ化合物を得る。次にこのアミノ基含有アゾ化合物を氷冷下(通常0〜5℃)、酸性(通常pH2〜3)で塩化シアヌルと1次縮合し、さらに置換基を有してもよい脂肪族若しくは芳香族アミンと25〜35℃、pH5〜6で2次縮合を行なうことにより、下記式(F)で示される2次縮合物を得る。続いてこの2次縮合物を置換基を有してもよい脂肪族若しくは芳香族アミンと80〜90℃、pH7〜8で3次縮合を行なうことにより、本発明の式(1)で示される水溶性アゾ化合物を得ることができる。
【0018】
【化9】

【0019】
(式(C)〜式(F)中、R1、Y1、Y2、Y3、Y4、Aは前記と同様の意味を表す。)
【0020】
次に本発明の式(1)で示される水溶性アゾ化合物の具体例を表1に挙げる。尚、本発明の化合物がこれらに限定されるものではなく、また、表1中、Phはフェニル基を、Y3、Y4の( )中の数字はフェニル基において、ピラゾールとの結合位置を1としたときの置換位置を示す。またNH列の数字は、フェニル基と塩化シアヌル誘導体との結合位置について、フェニル基とピラゾールとの結合位置を1としたときの置換位置を示す。)
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
本発明の水溶性アゾ化合物は、天然及び合成繊維材料又は混紡品の染色に適しており、さらにこれらの化合物は、筆記用インクおよびインクジェット記録用インク組成物の製造に適している。
本発明の式(1)の水溶性アゾ化合物を含む反応液は、本発明のインク組成物の製造に直接使用する事が出来る。しかし、反応液から単離し、乾燥、例えばスプレー乾燥させ、次にインク組成物に加工することもできる。本発明の記録用インク組成物は、本発明の化合物を水溶液中に通常0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは2〜10質量%含有する。本発明のインク組成物中、水溶性有機溶剤は通常0〜30質量%、インク調製剤は通常0〜5質量%含有する。
【0024】
本発明のインク組成物に用いうる水溶性有機溶剤の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1〜C4アルカノール、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類、アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、チオジグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の(C2〜C6)アルキレン単位を有するモノマー、オリゴマー又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール、グリセリン、ヘキサン−1.2.6−トリオール等のポリオール(トリオール)、エチレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテル又はトリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの(C1〜C4)アルキルエーテル、γーブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等があげられる。これらの水溶性有機溶剤は、単独もしくは混合して用いられる。
これらのうち好ましいものは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコールであり、より好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールである。
【0025】
インク調製剤としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、界面活性剤などがあげられる。防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンツチアゾール系、ニトチリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオシキド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオシキド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、無機塩系化合物としては、例えば無水酢酸ソーダが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤としてソルビン酸ソーダ安息香酸ナトリウム等があげられる。
【0026】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを通常7.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどがあげられる。
【0027】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化されたベンゾフェノン又はスルホン化されたベンゾトリアゾール等があげられる。水溶性高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等があげられる。染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等があげられる。界面活性剤としては、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などがあげられる。アニオン界面活性剤としてはアルキルスリホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸およびその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。
【0028】
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどのアセチレングリコール系(例えば、日信化学社製サーフィノール104、104PG50、82、465、オルフィンSTGなど)、などが挙げられる。これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0029】
本発明のインク組成物は、式(1)で表される水溶性アゾ化合物を水に、必要により水溶性有機溶剤及び上記インク調製剤などと共に溶解させることによって製造できる。
式(1)の水溶性アゾ化合物の反応液を直接インク組成物の製造に使用する際には、金属陽イオンの塩化物、硫酸塩等の無機物の含有量が少ないものを用いるのが好ましく、その含有量の目安は例えば1質量%以下程度である。無機物の少ない色素を製造するには、例えばそれ自体公知の逆浸透膜による方法等で、脱塩処理すればよい。
【0030】
前記製造方法において、各成分を溶解させる順序には特に制限はない。あらかじめ水及び又は水溶性有機溶剤に式(1)で表される水溶性アゾ化合物を溶解させ、インク調製剤を添加して溶解させてもよいし、式(1)で表される水溶性アゾ化合物を水に溶解させたのち、水溶性有機溶剤、インク調製剤を添加して溶解させてもよい。またこれと順序が異なっていてもよいし、式(1)で表される水溶性アゾ化合物の反応液又は逆浸透膜による脱塩処理を行った液に、水溶性有機溶剤、インク調製剤を添加してインク組成物を製造してもよい。本発明のインク組成物を調製するにあたり、用いられる水はイオン交換水又は蒸留水など不純物が少ない物が好ましい。さらに、必要に応じメンブランフィルターなどを用いて精密濾過を行って夾雑物を除いてもよく、更にインクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1ミクロン〜0.1ミクロン、好ましくは、0.8ミクロン〜0.2ミクロンである。
【0031】
本発明の水溶性アゾ化合物を含有するインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録法、特にインクジェット記録における使用に適する。この場合、水、日光、オゾンおよび摩擦に対する良好な耐性を有する高品質のイエロー印捺物が得られる。
【0032】
本発明の着色体は前記の本発明の化合物で着色されたものである。着色されるべきものとしては、特に制限無く、例えば紙、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等があげられるがこれらに限定されない。着色法としては、例えば浸染法、捺染法、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェットプリンタによる方法等があげられるが、インクジェットプリンタによる方法が好ましい。
【0033】
インクジェットプリンタにおいて、高精細な画像を供給することを目的に、高濃度のインクと低濃度のインクの2種類のインクが設定されたものもある。その場合、本発明の式(1)で表される水溶性アゾ化合物を用いて高濃度のインクと、低濃度のインクを作製しそれを併用したインクセットとして使用しうる。またどちらか一方だけに式(1)で表される水溶性アゾ化合物を含有するインクを用いてもよい。
また本発明の式(1)で表される水溶性アゾ化合物を公知のイエロー色素と併用してもよい。また他の色、例えばブラック色素の色相を調整する為、あるいはマゼンタ色素やシアン色素と混合して、レッドインクやグリーンインクを調整する為に式(1)で表される水溶性アゾ化合物を用いることもできる。
【0034】
本発明のインクジェット記録方法を適用しうる被記録材(メディア)としては例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維及び皮革等が挙げられる。情報伝達用シートについては、表面処理されたもの、具体的にはこれらの基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工することにより、また多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等インク中の色素を吸収し得る多孔性白色無機物をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工することにより設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙(フィルム)あるいは光沢紙(フィルム)と呼ばれ、例えばピクトリコ(旭硝子(株)製)、カラーBJペーパー、カラーBJフォトフィルムシート、プロフェッショナルフォトペーパー(いずれもキャノン(株)製)、カラーイメージジェット用紙(シャープ(株)製)、PM写真用紙、スーパーファイン専用光沢フィルム(いずれもエプソン(株)製)、ピクタファイン(日立マクセル(株)製)等として市販されている。なお、普通紙にも利用できることはもちろんである。
【0035】
これらのうち、特に多孔性白色無機物を表面に塗工した被記録材に記録した画像がオゾンガスによって変退色が大きくなることが知られているが、本発明のインク組成物はガス耐性が優れているため、このような被記録材への記録の際に特に効果を発揮する。
【0036】
本発明のインクジェット記録方法で、被記録材に記録するには、例えば上記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定位置にセットし、通常の方法で、被記録材に記録すればよい。本発明のインクジェット記録方法では、本発明の水性イエローインク組成物、公知公用のマゼンタインク組成物、シアンインク組成物、必要に応じて、グリーンインク組成物、ブルー(又はバイオレット)インク組成物、レッドインク組成物、及びブラックインク組成物等と併用される。各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、その容器を、本発明のインクジェット記録用水性イエローインク組成物を含有する容器と同様に、インクジェットプリンタの所定位置に装填されて使用される。インクジェットプリンタとしては、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式のプリンタや加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式のプリンタ等があげられる。
【0037】
本発明のインク組成物は、鮮明な黄色であり、特にインクジェット光沢紙において鮮明度が高く、インクジェット記録に適した色相を有する。また、記録画像の堅牢度も非常に高いことを特徴とする。
【0038】
本発明のインク組成物は貯蔵中に沈澱、分離することがない。また、本発明のインク組成物をインクジェット記録において使用した場合、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。本発明によるインクは連続式インクジェットプリンタによる比較的長い時間一定の再循環下又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
【実施例】
【0039】
以下に本発明を実施例により、より具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。
【0040】
実施例1 (表1におけるNo.1の化合物の合成)
2−アミノ−安息香酸−5−スルホンアミド21.6部を水400部で溶解し、亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を5〜10℃の5%塩酸255部中に1時間かけて滴下した後、10℃以下で1時間攪拌し、ジアゾ化反応を行った。生成したジアゾニウム塩中に、水50部に1−(4−アミノ−2スルホフェニル)−3−カルボキシ−5−ピラゾロン29.9部を懸濁させた液を投入し、水酸化ナトリウム溶液を用いてpH6〜7、5〜10℃で3時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を熱風乾燥機(80℃)で全乾燥し、アミノ基含有アゾ化合物を52.0部を得た。次に塩化シアヌル18.5部を400部の氷水中で激しく攪拌懸濁し、この中へ水500部で溶解させたアミノ基含有アゾ化合物を52.0部を1時間かけて滴下し、滴下後pH3〜3.5、5〜10℃で1時間攪拌した。続いて2−アミノ−安息香酸−5−スルホンアミド21.6部をこの反応液に投入し、pH5〜6、30〜40℃で3時間攪拌した後、タウリン12.5部を投入し、pH7〜8、80〜90℃で2時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を熱風乾燥機(80℃)で全乾燥し、色素粉末97.0部を得た。この色素粉末を水300部、メタノール700部中に投入し、1時間攪拌後、ろ過した。得られたウエットケーキを熱風乾燥機(80℃)で全乾燥することにより、式(10)で示される化合物(水中でのλmax 423nm)80.0部を得た。
【0041】
【化10】

【0042】
実施例2 (表1におけるNo.3の化合物の合成)
2−アミノ−安息香酸−5−スルホンアミド21.6部を水400部で溶解し、亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を5〜10℃の5%塩酸255部中に1時間かけて滴下した後、10℃以下で1時間攪拌し、ジアゾ化反応を行った。生成したジアゾニウム塩中に、水50部に1−(4−アミノ−2スルホフェニル)−3−カルボキシ−5−ピラゾロン29.9部を懸濁させた液を投入し、水酸化ナトリウム溶液を用いてpH6〜7、5〜10℃で3時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を熱風乾燥機(80℃)で全乾燥し、アミノ基含有アゾ化合物52.0部を得た。次に塩化シアヌル18.5部を400部の氷水中で激しく攪拌懸濁し、この中へ水500部で溶解させたアミノ基含有アゾ化合物を52.0部を1時間かけて滴下し、滴下後pH3〜3.5、5〜10℃で1時間攪拌した。続いて2−アミノイソフタル酸18.1部をこの反応液に投入し、pH5〜6、30〜40℃で3時間攪拌した後、タウリン12.5部を投入し、pH7〜8、80〜90℃で2時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を熱風乾燥機(80℃)で全乾燥し、色素粉末90.0部を得た。この色素粉末を水300部、メタノール700部中に投入し、1時間攪拌後、ろ過した。得られたウエットケーキを熱風乾燥機(80℃)で全乾燥することにより、式(11)で示される化合物(水中でのλmax 423nm)75.0部を得た。
【0043】
【化11】

【0044】
実施例3 (表1におけるNo.5の化合物の合成)
2−アミノ−安息香酸−5−スルホンアミド21.6部を水400部で溶解し、亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を5〜10℃の5%塩酸255部中に1時間かけて滴下した後、10℃以下で1時間攪拌し、ジアゾ化反応を行った。生成したジアゾニウム塩中に、水50部に1−(4−アミノ−2スルホフェニル)−3−カルボキシ−5−ピラゾロン29.9部を懸濁させた液を投入し、水酸化ナトリウム溶液を用いてpH6〜7、5〜10℃で3時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を熱風乾燥機(80℃)で全乾燥し、アミノ基含有アゾ化合物を52.0部を得た。次に塩化シアヌル9.3部を200部の氷水中で激しく攪拌懸濁し、この中へ水500部で溶解させたアミノ基含有アゾ化合物を52.0部を1時間かけて滴下し、滴下後pH5〜6、20〜25℃で2時間、pH5〜6、30〜40℃で2時間攪拌した。続いてタウリン12.5部を投入し、pH7〜8、80〜90℃で2時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を熱風乾燥機(80℃)で全乾燥し、色素粉末70.0部を得た。この色素粉末を水210部、メタノール490部中に投入し、1時間攪拌後、ろ過した。得られたウエットケーキを熱風乾燥機(80℃)で全乾燥することにより、式(12)で示される化合物(水中でのλmax 422nm)55.0部を得た。
【0045】
【化12】

【0046】
実施例4〜6
(A)インクの調製
上記実施例1、2及び3で得られた各化合物を用いて表3に示した組成の液体を調製し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事により各インクジェット記録用インク組成物を得た。また水はイオン交換水を使用した。尚、インク組成物のpHがpH=7〜9、総量100部になるように水、アンモニア水を加えた。実施例1、実施例2及び実施例3で得られた化合物を用いた試験をそれぞれ実施例4、実施例5、実施例6とする。
【0047】
表3(インク組成物の調製)
実施例1、実施例2または実施例3の化合物 3.0部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
サーフィノール104PG50(日信化学社製) 0.1部
水+アンモニア水 77.9部
計 100.0部
【0048】
比較対象として、インクジェット用黄色色素として広く用いられている下記式(7)で示されるC.I.アシッドイエロー23を用いて表4の組成でインクを調製した。得られたインク組成物で得られた試験を比較例1とする。
【0049】
【化13】

【0050】
表4(インク組成物の調製)
C.I.アシッドイエロー23 3.0部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
サーフィノール104PG50(日信化学社製) 0.1部
水+アンモニア水 77.9部
計 100.0部
【0051】
(B)インクジェットプリント
インクジェットプリンタ(キヤノン社製 Pixus 860i)を用いて、色素受容層を有する光沢紙1(キヤノン社製 プロフェッショナルフォトペーパー PR−101)、光沢紙2(エプソン社製 写真用紙<光沢> KA450PSK)の2種にインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際、反射濃度が数段階の階調が得られるように画像パターンを作り、黄色の印字物を得た。
耐光試験、耐オゾン試験は試験前の印刷物の反射濃度D値が1に最も近い部分で行った。また、反射濃度は測色システム「GRETAG SPM50:GRETAG社製」を用いて測色した。
【0052】
(C)記録画像の耐湿性試験
光沢紙1と光沢紙2にプリントした試験片を恒温恒湿器(応用技研産業(株)製)を用いて50℃、90%RHで7日間放置し、試験前後の色素(染料)の滲みを目視により判定した。結果を表5に示す。評価基準は以下のようである。
○ 染料の滲みがほとんど見られない。
△ 染料の滲みがやや見られる。
× 染料の滲みがかなり見られる。
【0053】
(D)記録画像のキセノン耐光性試験
光沢紙1と光沢紙2にプリントした試験片をキセノンウェザオメータCi4000(ATLAS社製)を用い、0.36W/平方メートル照度で50時間照射し、試験前後の反射濃度比(試験後の反射OD値 / 試験前の反射OD値 ×100)から試験後の残存率を求め、以下の評価基準で評価を行った。
75%以上・・・・・・・・○
65%以上75%未満・・・△
65%未満・・・・・・・・×
結果を表5に示す。
【0054】
(E)記録画像の耐オゾンガス性試験
光沢紙1と光沢紙2にプリントした試験片をオゾンウェザーメーター(スガ試験機社製)を用いてオゾン濃度40ppm、湿度60%RH、温度24℃の環境下に3時間放置した。試験後の残存率を算出し以下の評価基準で評価を行った。
60%以上・・・・・・・・○
50%以上60%未満・・・△
50%未満・・・・・・・・×
結果を表5に示す。
【0055】
表5
耐湿性 耐光性 耐オゾン性
実施例4(光沢紙1) ○ ○ ○
実施例4(光沢紙2) ○ ○ ○
実施例5(光沢紙1) ○ ○ ○
実施例5(光沢紙2) ○ ○ ○
実施例6(光沢紙1) ○ ○ ○
実施例6(光沢紙2) ○ ○ ○
比較例1(光沢紙1) × × ×
比較例1(光沢紙2) × × ×
【0056】
表5より、実施例4、5、6は、比較例1に比べ耐湿性、耐光性、耐オゾン性のいずれにおいても極めて優れていることがわかり、本発明の化合物はインクジェット記録に適した非常に有用な化合物であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される水溶性アゾ化合物又はその塩
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を、Y1はカルボキシル基、メチル基またはフェニル基を、Y2はヒドロキシル基またはアミノ基をそれぞれ表す。Y3及びY4はそれぞれ独立して水素原子、スルホン酸基またはカルボキシル基を表し、かつY3、Y4のうち少なくとも1つはスルホン酸基又はカルボキシル基である。Aは、脂肪族アミン残基、芳香族アミン残基、ヒドロキシル基、又はアゾ化合物の残基であり、Bは、脂肪族アミン残基、芳香族アミン残基又はヒドロキシル基を示す。)
【請求項2】
式(1)のAが下記式(2)、(3)又は(4)である請求項1に記載の水溶性アゾ化合物又はその塩
【化2】

(式中、R1、Y1〜Y4は前記と同様の意味を表す)
【請求項3】
式(1)のBが下記式(5)又は(6)である請求項1または2に記載の水溶性アゾ化合物又はその塩
【化3】

【請求項4】
式(1)〜式(4)中のR1が水素原子またはメチル基、Y1がカルボキシル基、Y2がヒドロキシル基、Y3がスルホン酸基で、かつその位置が2位、Y4が水素原子である請求項1から3のいずれか一項に記載の水溶性アゾ化合物又はその塩
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の水溶性アゾ化合物またはその塩を含有することを特徴とするインク組成物
【請求項6】
水溶性有機溶剤を含有する請求項5に記載のインク組成物
【請求項7】
インクジェット記録用である請求項5または6に記載のインク組成物
【請求項8】
インク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に記録を行うインクジェット記録方法において、インク組成物として請求項5から7のいずれか一項に記載のインク組成物を用いることを特徴とするインクジェット記録方法
【請求項9】
被記録材が情報伝達用シートである請求項8に記載のインクジェット記録方法
【請求項10】
情報伝達用シートが多孔性白色無機物を含有したインク受像層を有する用紙である請求項9に記載のインクジェット記録方法
【請求項11】
請求項1から4に記載の水溶性アゾ化合物又はその塩、または請求項5から7のいずれか一項に記載のインク組成物で着色された着色体
【請求項12】
着色がプリンタによりなされた請求項11に記載の着色体
【請求項13】
請求項5から7のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ

【公開番号】特開2006−96855(P2006−96855A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284206(P2004−284206)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】