説明

水溶性アミン化合物の検出方法

【目的】水中に含まれる水溶性アミン化合物を簡単にかつ迅速に検出する。
【構成】下記の一般式(1)で表わされる化合物と、当該化合物と水溶性アミン化合物との反応生成物を溶解可能で被試験水に不溶の有機溶媒とを被試験水へ添加して所定時間撹拌した後、水相と有機溶媒相とに分離させる。有機溶媒相は、被試験水が水溶性アミン化合物を含むときに生成する発色物質により黄〜橙色に変色し、水溶性アミン化合物を含まないときは変色しない。


(一般式(1)中、Xはハロゲン原子を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性アミン化合物の検出方法、特に、被試験水に含まれる水溶性アミン化合物を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラへボイラ給水を供給して加熱し、それにより発生する蒸気を負荷装置において利用すると共に、当該蒸気が凝縮して得られる復水を蒸気ボイラへ供給するボイラ給水と混合して再利用する蒸気ボイラ装置が知られている。このような蒸気ボイラ装置は、復水をボイラ給水の一部として再利用しているため、補給水量を削減することができ、蒸気ボイラの経済的な運転が可能になる。
【0003】
このような蒸気ボイラ装置では、ボイラ給水に含まれる炭酸アルカリ成分が加熱時に分解し、炭酸ガスを生成する。この炭酸ガスは、蒸気中に混入し、蒸気の凝縮時に復水中に混入するが、復水に混入した炭酸ガスは、復水を再利用するための流路となる鋼管製の復水配管を腐食させる原因となる。そこで、蒸気ボイラ装置においては、復水配管の腐食を抑制するために、ボイラ給水または蒸気ボイラで発生した蒸気に対し、炭酸ガスを中和するための水溶性アミン化合物、例えばモルホリンやシクロヘキシルアミンを添加することが多い。蒸気へ添加された水溶性アミン化合物は、蒸気とともに負荷装置を経由して復水配管へ到達し、復水に溶解して炭酸ガスを中和する。
【0004】
水溶性アミン化合物の添加による復水配管の腐食抑制では、蒸気へ添加した水溶性アミン化合物が復水配管へ到達していることを確認するために、復水配管を流れる復水から定期的に復水試料を採取し、その復水試料に水溶性アミン化合物が含まれていることを検査する必要がある。この検査の結果、復水試料に水溶性アミン化合物が含まれていないことが判明したときは、添加した水溶性アミン化合物が復水配管へ到達していないものと考えることができ、復水配管の腐食を十分に抑制できていないものと判断することができる。逆に、復水試料に水溶性アミン化合物が含まれていることが判明したときは、添加した水溶性アミン化合物が復水配管へ到達し、復水配管の腐食抑制のために機能しているものと判断することができる。
【0005】
ところで、復水等の水中に含まれる水溶性アミン化合物の検査は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた分析方法により実施されている(例えば、非特許文献1、2、3)。しかし、このような分析方法は、復水などから採取した検査用の被試験水をHPLCやGC/MSでの分析に適したものに調製するための複雑で煩雑な前処理を要し、さらに、機器自体での分析にも長時間を要する。
【0006】
【非特許文献1】Determination of Trace Amounts of Morpholine and its Thermal Degradation Products in Boiler Water by HPLC(HPLCによるボイラ水中の痕跡量モルホリンとその熱分解生成物の定量) M. Joseph, V. Kagdiyal, D.K. Tuli, Chromatographia Vol.35, No3/4, February 1993
【非特許文献2】Liquid Chromatographic Determination of Morpholine and its Thermal Breakdown Products in Steam-Water Cycles at Nuclear Plants(原子力発電所の蒸気−水循環系におけるモルホリンとその熱分解生成物の液体クロマトグラフ定量) C. Lamarre, R. Gilbert, A. Gendron, Journal of Chromatography, 467 (1989) 249-258
【非特許文献3】化学物質分析法開発調査報告書(平成5年度 環境庁環境保健部保健調査室)22−34頁
【0007】
本発明の目的は、水中に含まれる水溶性アミン化合物を簡単にかつ迅速に検出することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被試験水に含まれる水溶性アミン化合物を検出するための方法に関するものであり、下記の一般式(1)で表わされる4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと、水溶性アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応生成物を溶解可能で被試験水に不溶の有機溶媒とを被試験水へ添加して所定時間撹拌した後、水相と有機溶媒相とに分離させる工程と、有機溶媒相の変色を判定する工程とを含んでいる。
【0009】
【化1】

一般式(1)中、Xはハロゲン原子を示す。
【0010】
水中に含まれる水溶性アミン化合物は、4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと反応し、460〜500nmの波長領域で吸光する発色物質を生成する。この発色物質は、水に不溶であり、有機溶媒に溶解する。
【0011】
被試験水が水溶性アミン化合物を含む場合、有機溶媒と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとを被試験水へ添加して所定時間撹拌すると、上記反応により発色物質が生成し、この発色物質は有機溶媒に溶解して有機溶媒相を変色させる。したがって、この変色を確認することができた場合、被試験水は、水溶性アミン化合物を含むものと判定することができる。また、有機溶媒相の変色の度合いを判定することで、被試験水中に含まれる水溶性アミン化合物の濃度を測定することもできる。
【0012】
一方、被試験水が水溶性アミン化合物を含まない場合、同様の操作をしても上記反応による発色物質は生成せず、有機溶媒相は変色しない。したがって、有機溶媒相が変色しない場合は、被試験水が水溶性アミン化合物を含まないものと判定することができる。
【0013】
この検出方法において用いられる有機溶媒は、通常、塩素系有機溶媒である。
【0014】
この検出方法の一形態では、色見本との対比により有機溶媒相の変色を判定する。これによると、複雑な装置を用いずに、被試験水に水溶性アミン化合物が含まれるか否かを簡単に判定することができ、また、色見本との対比により有機溶媒相の変色の濃淡を判定することで、被試験水における水溶性アミン化合物濃度を推測することもできる。
【0015】
また、この検出方法の他の形態では、有機溶媒相における460〜500nmの吸光度に基づいて有機溶媒相の変色を判定する。この場合、有機溶媒相の変色の有無を高精度で判定することができるため、被試験水に水溶性アミン化合物が含まれるか否かの判定制度が高まる。また、吸光度と水溶性アミン化合物濃度との関係を予め調べておくと、被試験水における水溶性アミン化合物濃度を高精度で測定することもできる。
【0016】
本発明の検出方法により検出可能な水溶性アミン化合物は、例えば、モルホリン、シクロヘキシルアミンおよびピペリジンのうちの一つである。
【0017】
本発明のキットは、被試験水に含まれる水溶性アミン化合物を検出するためのものである。このキットは、上記の一般式(1)で表わされる4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンを封入した、被試験水を採取するための無色で透明な第一容器と、水溶性アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応生成物を溶解可能で被試験水に不溶の有機溶媒を封入した第二容器とを備えている。
【0018】
このキットを用いて被試験水に含まれる水溶性アミン化合物を検出するときは、第一容器および第二容器を開封し、所定量の被試験水と第二容器の有機溶媒とを第一容器内へ加える。そして、第一容器の内容物を振とう等の手法により所定時間撹拌してから静置すると、第一容器の内容物は水相と有機溶媒相とに分離する。
【0019】
被試験水が水溶性アミン化合物を含むときは、既述の反応により発色物質が生成し、それが有機溶媒相を変色させる。この変色の有無は、無色透明の第一容器において外部から確認することができる。そして、変色を確認することができたときは被試験水に水溶性アミン化合物が含まれるものと判定することができ、変色を確認することができなかったときは被試験水に水溶性アミン化合物が含まれないものと判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る水溶性アミン化合物の検出方法は、上述の工程を含むため、水中に含まれる水溶性アミン化合物を簡単にかつ迅速に検出することができる。
【0021】
本発明に係る水溶性アミン化合物の検出用キットは、上述の第一容器と第二容器とを備えているため、水中に含まれる水溶性アミン化合物を簡単にかつ迅速に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る水溶性アミン化合物の検出方法は、水中において水溶性アミン化合物が含まれるか否かを判定したり、水溶性アミン化合物が含まれる場合はその濃度を判定したりすることを目的として、水中の水溶性アミン化合物を検出するための方法である。この検出方法を適用可能な水は、例えば、鋼管などの金属製配管の腐食を抑制することを目的として水溶性アミン化合物が添加された、蒸気ボイラ装置の復水配管を流れる復水や、復水が混合されたボイラ給水などから採取した被試験水である。また、この検出方法により検出可能な水溶性アミン化合物は、後述する4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応により水に不溶で後述する有機溶媒に溶解可能な発色物質を生成可能なものであり、通常は揮発性のものである。例えば、蒸気ボイラ装置の復水配管の腐食抑制剤として利用されるモルホリン、シクロヘキシルアミンおよびピペリジンなどである。
【0023】
この検出方法では、先ず、所定量の被試験水をガラス製や化学的に安定な樹脂製などの容器に採る。容器は、後述する変色の判定をするために、無色透明なものを用いるのが好ましい。
【0024】
次に、容器内の被試験水に対し、下記の一般式(1)で表わされる4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと有機溶媒とを加える。
【0025】
【化2】

一般式(1)において、Xは、塩素やフッ素などのハロゲン原子を示す。
【0026】
ここで用いられる有機溶媒は、水溶性アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応により生成する発色物質を溶解可能で被試験水に不溶なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、クロロメタン、メチレンクロライドおよびクロロホルムのような塩素系有機溶媒、エーテル類並びに酢酸エチルなどである。このうち、生成する発色物質を選択的に溶解可能なことから、塩素系有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0027】
4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンの添加量は、特に限定されるものではないが、通常、被試験水中に含まれると予想される水溶性アミン化合物量の少なくとも1.0倍当量に設定するのが好ましく、1.2倍当量以上に設定するのがより好ましい。この添加量が1.0倍当量未満のときは、被試験水が水溶性アミン化合物を微量に含む場合において、水溶性アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応が進行しにくくなり、水溶性アミン化合物を正確に検出するのが困難になる可能性がある。また、水溶性アミン化合物の定量をする必要がある場合は、水溶性アミン化合物の全てが4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと反応せず、定量結果の信頼性を損なう可能性がある。
【0028】
有機溶媒の添加量は、特に限定されるものではないが、被試験水量と有機溶媒量との比率の制御で上述の発色物質による有機溶媒の発色強度をコントロールできることから、被試験水量に対して水溶性アミン化合物の判定下限濃度が判定できる比率に設定するのが望ましい。例えば、水溶性アミン化合物がモルホリンであり、その1ミリグラム/リットルを判定下限濃度とする場合、被試験水量(A)と有機溶媒(B)との比率は重量比(A:B)で1:2程度に設定するのが好ましい。
【0029】
この工程においては、必要に応じ、被試験水のpHを7.5〜8.5の範囲に調整するためのpH調整剤を被試験水に対して併せて添加するのが好ましい。pH調整剤としては、例えば、ホウ酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、炭酸塩緩衝液、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液などを用いることができる。
【0030】
次に、4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザン、有機溶媒および必要に応じてpH調整剤が添加された被試験水を所定時間攪拌する。攪拌は、20〜25℃程度の室温で実行することができる。この攪拌操作により、被試験水に含まれる水溶性アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとが反応し、発色物質が生成する。攪拌操作は、容器を振とうすることによって実行することもできるし、マグネチックスターラーなどの攪拌装置を用いて実行することもできる。攪拌時間は、水溶性アミン化合物と4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応を十分に進行させるのに十分な時間、例えば、1〜5分に設定するのが好ましい。
【0031】
攪拌後の容器を静置すると、容器内は、被試験水相と有機溶媒相とに分離する。ここで、上述の反応により発色物質が生成した場合、この発色物質は、被試験水に不溶で有機溶媒に溶解するため、有機溶媒相を変色させる。そこで、有機溶媒相が発色物質により変色したか否かを判定する。因みに、有機溶媒相は、発色物質により、460〜500nmの波長領域で吸光する黄〜橙色の色彩へ変色する。
【0032】
ここで、有機溶媒相が変色しなかった場合は、4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンの反応相手となる水溶性アミン化合物が被試験水に含まれていないため、発色物質が生成しなかったことになる。したがって、被試験水は、水溶性アミン化合物を含まないものと判定することができる。一方、有機溶媒相が変色した場合は、被試験水に含まれる水溶性アミン化合物が4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと反応して発色物質が生成したことになる。したがって、被試験水は、水溶性アミン化合物を含むものと判定することができる。
【0033】
有機溶媒相の変色の有無は、視覚的に判定することもできるし、吸光光度法により判定することもできる。視覚的に判定するときは、発色物質により着色される有機溶媒相の色見本を作成し、有機溶媒相とこの色見本とを対比することで判定することができる。ここで、有機溶媒相は発色物質の濃度が高まるに従って濃色に変色するため、変色の度合いと発色物質濃度とを関連させた段階的な色見本を作成しておくと、水溶性アミン化合物の濃度を推測することができる。
【0034】
一方、吸光光度法により有機溶媒相の変色を判定するときは、予め、有機溶媒のみにおける460〜500nmの吸光度(基準吸光度と云う)を測定しておき、有機溶媒相における同波長範囲の吸収ピークの吸光度(測定吸光度と云う)が基準吸光度から変化したか否かを判定する。そして、測定吸光度が基準吸光度よりも増加しているときは有機溶媒相が変色していることになり、この場合は被試験水に水溶性アミン化合物が含まれているものと判定することができる。また、被試験水における水溶性アミン化合物濃度と測定吸光度との関係を予め調べて検量線などを作成しておくと、被試験水における水溶性アミン化合物濃度を測定吸光度から求めることもできる。
【0035】
次に、上述の検出方法をより簡単に実施するためのキットを説明する。このキットは、第一容器および第二容器の二つの容器を備えている。
【0036】
第一容器は、ガラス製などの無色で透明な容器であり、所定量の4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンを封入したものである。一方、第二容器は、上述の有機溶媒に対して安定な材料からなるものであり、所定量の有機溶媒を封入したものである。第二容器は、必要に応じて、上述のpH調整剤の所定量をさらに封入していてもよい。第一容器は、開封したときに所定量の被試験水および第二容器の内容物の全量を加えることができるよう、第二容器よりも大型に形成されている。
【0037】
このキットを用いて被試験水に含まれる水溶性アミン化合物を検出するときは、第一容器を開封し、その中に所定量の被試験水を加える。また、第二容器を開封し、その内容物を第一容器内へ加える。そして、第一容器の内容物を所定時間攪拌した後に静置し、第一容器内において水相と分離した有機溶媒相について、既述の方法で変色の有無を判定する。
【0038】
このようなキットを用いれば、蒸気ボイラ装置の運転現場など、被試験水の発生現場において迅速に、しかも簡単に、被試験水から水溶性アミン化合物を検出することができる。
【実施例】
【0039】
検量線Aの作成
モルホリン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、モルホリン濃度が3.2ミリグラム/リットル、6.5ミリグラム/リットルおよび10.1ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0040】
標準液2ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定した。
【0041】
各標準液の吸光度とモルホリン濃度とに基づいて作成した、モルホリン濃度測定用の検量線を図1に示す。
【0042】
検量線Bの作成
シクロヘキシルアミン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、シクロヘキシルアミン濃度が3.6ミリグラム/リットル、6.9ミリグラム/リットルおよび11.5ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0043】
標準液20ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液1.0ミリリットルおよびクロロホルム2gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定した。
【0044】
各標準液の吸光度とシクロヘキシルアミン濃度とに基づいて作成した、シクロヘキシルアミン濃度測定用の検量線を図2に示す。
【0045】
検量線Cの作成
ピペリジン(和光純薬工業株式会社の和光特級[98.0+% Capillary GC])0.1gに純水を添加して、全量を1リットルにした。この溶液を純水でさらに希釈し、ピペリジン濃度が4.6ミリグラム/リットル、8.6ミリグラム/リットルおよび15.2ミリグラム/リットルの三種類の標準液を調製した。
【0046】
標準液2ミリリットルに対し、pH調整剤として1Mトリス塩酸緩衝液(pH=8.0)1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを混合し、5分間撹拌した。これを静置して分離したクロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして479nmの吸光度を測定した。
【0047】
各標準液の吸光度とピペリジン濃度とに基づいて作成した、ピペリジン濃度測定用の検量線を図3に示す。
【0048】
被試験水Aの調整
モルホリン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、モルホリン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、モルホリン濃度が7ミリグラム/リットルの被試験水Aを調製した。
【0049】
被試験水Bの調整
シクロヘキシルアミン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、シクロヘキシルアミン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、シクロヘキシルアミンが濃度7ミリグラム/リットルの被試験水Bを調製した。
【0050】
被試験水Cの調整
ピペリジン0.1gに蒸留水を加えて全量を1リットルにし、ピペリジン濃度を100ミリグラム/リットルに調整した。この溶液7gに蒸留水を加えて全量を100ミリリットルにし、ピペリジン濃度が7ミリグラム/リットルの被試験水Cを調製した。
【0051】
実施例1
被試験水A2ミリリットルに対し、pH調整剤としてトリス塩酸緩衝液1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液0.5ミリリットルおよびクロロホルム4gを加えた混合物を5分間攪拌した。攪拌終了後に混合物を静置したところ、混合物は水相と、黄色〜橙色に変色したクロロホルム相とに分離した。クロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定したところ、0.399であった。検量線Aに基づいてこの吸光度からモルホリン濃度を判定したところ、6.96ミリグラム/リットルであった。この結果は、被試験水Aのモルホリン濃度と略一致している。
【0052】
実施例2
被試験水B20ミリリットルに対し、pH調整剤としてトリス塩酸緩衝液1ミリリットル、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(一般式(1)のXがフッ素原子のもの)の0.1重量%水溶液1.0ミリリットルおよびクロロホルム4gを加えた混合物を5分間攪拌した。攪拌終了後に混合物を静置したところ、混合物は水相と、黄色〜橙色に変色したクロロホルム相とに分離した。クロロホルム相を採取し、株式会社日立製作所製の分光光度計(型番:U−2010)を用いてクロロホルムをブランクとして465nmの吸光度を測定したところ、0.086であった。検量線Bに基づいてこの吸光度からシクロヘキシルアミン濃度を判定したところ、6.62ミリグラム/リットルであった。この結果は、被試験水Bのシクロヘキシルアミン濃度と略一致している。
【0053】
実施例3
被試験水Aに替えて被試験水Cを用いた点を除いて実施例1と同様に操作したところ、混合物は水相と黄〜橙色へ変色したクロロホルム相とに分離した。このクロロホルム相を採取して実施例1と同様にして479nmの吸光度を測定したところ、0.221であった。検量線Cに基づいてこの吸光度からピペリジン濃度を判定したところ、7.04ミリリットル/リットルであった。この結果は、被試験水Cのピペリジン濃度と略一致している。
【0054】
実施例4
被試験水Aに替えて蒸留水を用いた点を除いて実施例1と同様に操作したところ、混合物は水相とクロロホルム相とに分離した。但し、クロロホルム相は無色のままであり、変色しなかった。このクロロホルム相を採取して実施例1と同様にして465nmおよび479nmの吸光度を測定したところ、いずれも0.000であった。検量線A、検量線Bおよび検量線Cに基づいてこの吸光度からモルホリン濃度、シクロヘキシルアミン濃度およびピペリジン濃度をそれぞれ判定したところ、いずれも0ミリリットル/リットルであった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例で作成した検量線Aのグラフ。
【図2】実施例で作成した検量線Bのグラフ。
【図3】実施例で作成した検量線Cのグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験水に含まれる水溶性アミン化合物を検出するための方法であって、
下記の一般式(1)で表わされる4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンと、前記水溶性アミン化合物と前記4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応生成物を溶解可能で前記被試験水に不溶の有機溶媒とを前記被試験水へ添加して所定時間撹拌した後、水相と有機溶媒相とに分離させる工程と、
前記有機溶媒相の変色を判定する工程と、
を含む水溶性アミン化合物の検出方法。
【化1】

(一般式(1)中、Xはハロゲン原子を示す。)
【請求項2】
前記有機溶媒が塩素系有機溶媒である、請求項1に記載の水溶性アミン化合物の検出方法。
【請求項3】
色見本との対比により前記有機溶媒相の変色を判定する、請求項1または2に記載の水溶性アミン化合物の検出方法。
【請求項4】
前記有機溶媒相における460〜500nmの吸光度に基づいて前記有機溶媒相の変色を判定する、請求項1または2に記載の水溶性アミン化合物の検出方法。
【請求項5】
前記水溶性アミン化合物がモルホリン、シクロヘキシルアミンおよびピペリジンのうちの一つである、請求項4に記載の水溶性アミン化合物の検出方法。
【請求項6】
被試験水に含まれる水溶性アミン化合物を検出するためのキットであって、
下記の一般式(1)で表わされる4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンを封入した、前記被試験水を採取するための無色で透明な第一容器と、
前記水溶性アミン化合物と前記4−ハロゲノ−7−ニトロベンゾフラザンとの反応生成物を溶解可能で前記被試験水に不溶の有機溶媒を封入した第二容器と、
を備えた水溶性アミン化合物の検出用キット。
【化2】

(一般式(1)中、Xはハロゲン原子を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−249573(P2008−249573A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92801(P2007−92801)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】