説明

水溶性ハイパーブランチポリマー及び有効成分保持体

【課題】簡便に製造できて安価であり、酸やアルカリ環境下でも化学的に安定で、且つ、コア部分の合成に用いるモノマーの選択や反応モル比を変えることにより親水・疎水的バランスやコアの分岐点の粗密の程度を制御可能な、有効成分を内包できるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー及び該ハイパーブランチポリマーを保持主体として用いた有効成分保持体を提供する。
【解決手段】本発明に係るポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、下記式(1):
HO−CH−R−CH−OH (1)
(式(1)中、Rは、直接結合、分岐していても良い、飽和または不飽和の炭素数1〜6のアルキレン基を示す)で表される、1級水酸基を2個有するアルカンジオールと、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールとの脱水重縮合反応で得られた共重合体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、香料、薬剤などの有効成分を効率的に保持し、保持した有効成分を適宜に放出可能な有効成分保持体の保持主体に有用な新規な水溶性ハイパーブランチポリマー及び該ハイパーブランチポリマーを用いた有効成分保持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高度に分岐した分子構造を有するハイパーブランチポリマーは、「非晶質である、粘度が極端に低い、溶媒に対する溶解性が高い、機能性基を導入可能な鎖末端を多数有する」などの線状高分子にはない特異な特徴を有している。かかる特徴を有することから、ハイパーブランチポリマーは、近年、様々な分野での応用が期待されており、ハイパーブランチポリマーに関しての研究が盛んに行われている。
【0003】
ハイパーブランチポリマーには、多官能基を有するモノマーを一段階ずつ化学反応させ分岐構造を形成させるデンドリマーといわれるタイプと、ABx型モノマーの重縮合又はA2モノマー+B3モノマーの重縮合などで一気に分岐構造を形成するタイプ(ハイパーブランチ型)とが知られている。なお、ここで言うAとBは異なる官能基を示し、数字は1分子内の官能基の数を示す。
【0004】
上記後者のハイパーブランチポリマーはモノマーから重縮合で一気に製造することができるため、前者のデンドリマーと比べると、製造が容易であり、製造コストが安価であるという長所を有している。また、後者のハイパーブランチポリマーでは、合成条件を適宜選択することにより分岐度も制御できるため、用途に応じた分子設計も容易に実施できるものと期待されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0005】
上述のハイパーブランチポリマーの機能や用途については、例えば、非特許文献6〜非特許文献9に記載されているように、ハイパーブランチポリマーをコアシェル型のハイパーブランチポリマーに誘導した後、コアシェル型のハイパーブランチポリマーが有する分子カプセル機能を利用して、香料や色素、生理活性物質を内包させて利用する方法や、非晶質また低粘性を利用して潤滑剤や高分子電解質に利用する方法など(特許文献4〜特許文献7)、多岐に渡り検討されている。
【0006】
このようにハイパーブランチポリマーの用途面における期待は非常に大きいものがある。しかし、上記従来のハイパーブランチポリマーにおいて、特にコアシェル型に誘導したり、ビニル基やエポキシ基等の重合性基を有する化合物と結合させる(シェルの調製)ことができる一級水酸基を多数有する疎水性のハイパーブランチポリマーについては、工業的には、原料モノマーが高価であったり、入手し難い化合物であったり、ポリエステル型の化合物やアセタール型の化合物では加水分解が懸念されるなど、改善すべき点は多い。
【0007】
このような課題を解決するために、オキセタン化合物を用いてポリエーテルポリオール型のハイパーブランチポリマーを合成する方法(特許文献3、特許文献8、特許文献9、特許文献10)や、エポキシ基を複数有する化合物とポリオールとの反応によりポリエーテルポリオール型のハイパーブランチポリマーを合成する方法(非特許文献4)が報告されている。しかし、これらの製造方法においては、原料のオキセタンやエポキシ基を複数有する化合物をポリオールを原料にジエチルカーボネートやエピクロロヒドリンとの反応で製造した後で重合に用いなければならず、簡便な工業的製造法としてはまだ十分なものではない。
【0008】
一方、芳香環を分岐点とするポリエーテルポリオール型のハイパーブランチポリマーも報告されているが(非特許文献1)、芳香環は剛直であり、コアの分子運動性の自由度が低く、用途によっては適さない場合もあり得る。
【0009】
そこで、非芳香環タイプのポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーをターゲットとして、分岐点が密に分布し分子運動性の自由度が束縛されるタイプから分岐点が疎に分布し分子運動性の自由度が比較的大きいタイプまでを、汎用原料を用いて、また原料の一部を変えるだけで、同じ反応で、多種類の化合物(ハイパーブランチポリマー)を安価に製造できれば、用途展開を考える上で便利であり、そのような技術開発への期待は大きい。また、このような化合物(ハイパーブランチポリマー)をコアに用いた疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマーは、特に疎水性の有効成分を内包する化合物(有効成分保持主体)として期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−56894号公報
【特許文献2】特表2007−508430号公報
【特許文献3】特開2005−255973号公報
【特許文献4】特開2006−152291号公報
【特許文献5】特開2007−45880号公報
【特許文献6】特開2005−47979号公報
【特許文献7】特開平10−67847号公報
【特許文献8】特開2008−56942号公報
【特許文献9】特開2006−282698号公報
【特許文献10】特開2005−515283号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】K. E. Uhrich, C. J. Hawker, and J. M. Frechet, Macromolecules, 1992, 25, 4583-4587
【非特許文献2】Todd Emeick, Han-Ting Chang, and Jean M. J. Frechet, Macromolecules, 1999, 32, 6380-6382
【非特許文献3】Alexander Sunder, Ralf Hanselmann, Holger Frey, and Rolf Mulhaupt, Macromolecules, 1999, 32, 4240-4246
【非特許文献4】Todd Emeick, Han-Ting Chang, and Jean M. J. Frechet, Journal of Polymer Science : Part A : Polymer Chemistry, 38, 4850-4869(2000)
【非特許文献5】PEER FROEHING, Journal of polymer Science : Part A : Polymer Chemistry, 42, 3110-3115(2004)
【非特許文献6】Diana M Watkins, Yasmin Sayed-Sweet, June W. Klimash, Nicholas J. Turro, and Donald A. Tomalia, Langmuir, 1997, 13, 3136-3141
【非特許文献7】Guanghui Chen and Zhibin Guan, J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 2662-2663
【非特許文献8】Salah-Eddine Stirba, Holger Kauts, and Holger Frey, J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 9698-9699
【非特許文献9】Alexsander Sunder, Michael Kramer, Ralf Hanselmann, Rolf Mulhaupt, and Holger frey, Angew. Chem. Int. Ed., 1999, 38, 3552-3555
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、簡便に製造できて安価であり、酸やアルカリ環境下でも化学的に安定で、且つ、コア部分の合成に用いるモノマーの選択や反応モル比を変えることにより親水・疎水的バランスやコアの分岐点の粗密の程度(分子の単位容積当たりの分岐点の数の少い多い)を制御可能な、有効成分を内包できるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー及び該ハイパーブランチポリマーを保持主体として用いた有効成分保持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本願発明は、下記構成を採用したポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーおよび該ハイパーブランチポリマーを保持主体に用いた有効成分保持体を提供する。
【0014】
[1] 下記式(1):
HO−CH−R−CH−OH (1)
(式(1)中、Rは、直接結合、分岐していても良い飽和または不飽和の炭素数1〜6のアルキレン基を示す)で表される、1級水酸基を2個有するアルカンジオールと、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールとの脱水重縮合反応で得られた共重合体からなるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー。
[2] 前記共重合体をコアとし、該コアに存在する水酸基の一部もしくは全部を水酸基と反応する官能基を有する化合物を用いて修飾することにより得られるシェルが形成されていることを特徴とする、上記[1]に記載のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー。
[3] 前記コアが疎水性であり、前記シェルが親水性であることを特徴とする、上記[2]に記載のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー。
[4] 前記共重合体の重量平均分子量(Mw)が1000〜100000g/モルであり、かつ水酸基価が70〜400mgKOH/gであることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを保持主体として有し、該保持主体が水に溶解した状態で有効成分を保持していることを特徴とする有効成分保持体。
[6] 保持主体には保持される有効成分が薬用化合物、化粧用化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記[5]に記載の有効成分保持体。
【発明の効果】
【0015】
本願発明にかかるハイパーブランチポリマーは、汎用原料を用いて簡便に製造できる、新規な「1級水酸基を多数有するポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー」であり、水溶性となるように調製した場合は、そのままで、疎水性となるように調製した場合は、その表面に存在する水酸基の一部もしくは全部を水酸基と反応する官能基を有する化合物を用いて修飾することによって得られるシェルを設けて、香料成分あるいは薬効成分などの有効成分を効率的に保持可能な保持主体として用いることができる。
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(コア)の表面に存在する水酸基を水酸基と反応する官能基を有する化合物を用いて修飾する具体例としては、前記表面に存在する水酸基の一部を硫酸エステル塩に変換することが挙げられる。その他に、ポリオキシエチレン基やカチオン基などの他の親水性の官能基を付与する方法によって、疎水性ハイパーブランチポリマー(コア)の表面に存在する水酸基の一部もしくは全部を修飾してシェルを形成することも可能である。
本願発明にかかるハイパーブランチポリマーは、その製造原料であるアルカンジオールとトリオール、テトラオールを工業的な汎用原料として容易に安価に入手でき、硫酸などの安価な触媒を用いて簡便な反応条件で製造することができる。
【0016】
従来、水酸基を多数有するポリエーテルポリオール型のハイパーブランチポリマーとしては、複数のエポキシ基を有するモノマーやオキセタンなどの環状エーテルを分子内に持つモノマーを用いた開環重縮合物が知られている。しかし、かかる開環重縮合物の原料モノマーは、ポリオールを原料にエピクロロヒドリンやジエチルカーボネートと反応して得られるものであり、主に反応制御の容易さを考慮して選択された原料であり、安価な原料とは言い難いものであった。これまで報告されているハイパーブランチポリマーの多くは、A2B3型モノマーによる重合反応や、A2+B3型の重合反応で製造されている。
【0017】
これに対して、本願発明にかかるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、A2+Ax型の重合法によって得られ、得られたハイパーブランチポリマーに存在する官能基は、確実に1種(1級水酸基)である。
本願発明においては、ポリオールを原料に一段の反応でポリエーテルポリオール型のハイパーブランチポリマーを製造するので、より簡便な新しいハイパーブランチポリマーの製造法と言うことができる。
また、コアシェル型とする場合のシェルの合成法の1つである1級水酸基の硫酸エステル化反応は、例えばクロル硫酸や無水硫酸を用いる一般的な方法で簡便に行うことができる。また、シェルの合成の他の方法として、ポリオキシエチレン基やカチオン基などの他の親水性の官能基を付与するという反応では、例えば、エチレンオキシドや塩化グリシジルトリメチルアンモニウムなどを用いる一般的な方法で行うことができる。
【0018】
また、本願発明にかかるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーでは、ジオールのアルキレン鎖長を変えること、またジオールとトリオール又はテトラオールとの反応のモル比を変えることで、その親水性/疎水性バランスや分岐点の粗密性(単位容積当たりの分岐点の数の少い多い)も自由に容易に調整でき、有効成分の保持を考えたとき、有効成分の分子サイズや分子極性に合わせて容易に内部構造および表面状態を制御できる利点を有する。
【0019】
本願発明にかかるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを得るためのA2モノマー+Axモノマー型の重合反応では、常に重合反応する1級水酸基が反応物の官能基として残存するため、一見、反応終点の制御が難しいと考えられる。そのため、このようなポリエーテルポリオール型のハイパーブランチポリマーをコア部に用いた水溶性の疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマーの有効成分保持特性については、これまで報告されていない。
しかし、本願発明者らの検討により、本願発明において合成した1級水酸基を多数有するポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、有効成分を効率的に保持できることが分かり、親水性にも疎水性にも調製することができ、疎水性とした場合にはその表面の1級水酸基を利用して硫酸エステル基以外のポリオキシエチレン基やカチオン基などの親水性の官能基を付与してシェルを形成することにより水溶性とすることも可能であるため、広く応用されることが期待できる。
【0020】
本願発明に係るポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、表面の1級水酸基を硫酸エステル塩に変換することより、その表面に水溶性のシェルを容易に形成することができる。したがって、コアのみの場合であっても、コアシェル型とした場合であっても、本願発明に係るポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、水溶性を有することになり、コアの重量平均分子量が1、000以上であれば、非常に低濃度でも、分子カプセルとして香料や生理活性物質、色素などの有効成分を保持できる。
【0021】
本願発明に係るポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、工業原料として容易に入手できる1級水酸基を2個有するC2〜C8アルカンジオールと、工業原料として容易に入手できる1級水酸基を3〜4個有するアルキルポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)とを、酸触媒下、脱水縮合して得ることができる。
本願発明に係るポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、成分調整により親水性にも疎水性にも調製することができ、疎水性の有効成分の保持に有利なように疎水性とした場合には、水性溶媒への溶解などにおける取り扱いの容易性を確保するために、その外殻に多数存在する水酸基を例えば硫酸エステル塩に変換するなどにより親水性官能基で置換することで親水性のシェルを形成して水溶性とすることができる。
疎水性としたハイパーブランチポリマーをシェル形成により水溶性とする場合、例えば、1,3−プロパンジオールの重縮合物(分子量4000程度)を硫酸エステル塩にしても水溶性とはならない。このことから、1級水酸基を2個有するC2〜C8アルカンジオールと1級水酸基を3〜4個有するアルキルポリオールとの重縮合物をコアに用いることが、水溶性を得る要点であることが明らかであり、この点は、本願発明の主な特徴の1つである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述のように、本願発明にかかるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、下記式(1):
HO−CH−R−CH−OH (1)
(式(1)中、Rは、直接結合、分岐していても良い飽和または不飽和の炭素数1〜6のアルキレン基を示す)で表される、1級水酸基を2個有するアルカンジオールと、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールとの脱水重縮合反応で得られた共重合体からなる。
本願発明にかかるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、親水性にも疎水性にも調整可能である。親水性とした場合には、水性溶媒中で有効成分に接触させることにより有効成分を保持させることできる。また、疎水性の有効成分の保持に有利なように疎水性とした場合には、水性溶媒への溶解が可能となるように、その表面に存在する水酸基の一部もしくは全部を親水性修飾基に置換することにより親水性のシェルが形成される。
以下、本願発明にかかるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーの各構成要素について詳しく説明する。
【0023】
(ハイパーブランチポリマーの組成)
本願発明のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、下記式(1):
HO−CH−R−CH−OH (1)
(式(1)中、Rは、直接結合、分岐していても良い飽和または不飽和の炭素数1〜6のアルキレン基を示す)で表される、1級水酸基を2個有するアルカンジオールと、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールとの脱水重縮合反応により得られる。
【0024】
後述のように、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールと反応させる上記式(1)で示されるアルカンジオールとして、式(1)におけるRが直接結合であるアルカンジオール(エチレングリコール)を、所定の反応比率で用いることにより、得られるハイパーブランチポリマーを親水性とすることができる。それ以外の条件で反応させた場合、得られるハイパーブランチポリマーは疎水性となる。
得られるハイパーブランチポリマーが疎水性の場合で、化学式(1)中のRで示されるアルキレン基の炭素数6より大きいと、その表面の水酸基を硫酸エステル化しても水溶性とはならないので、Rで表されるアルキレン基の炭素数は6以下であることが大切となる。
【0025】
上記1級水酸基を2個有するアルカンジオールと、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールとの脱水重縮合反応は、無溶媒でも、粘度を下げるなどの目的で酸触媒に不活性な溶媒(トルエンやキシレンなど)を用いてもよい。
また、副生する水を反応系外に除去するために、不活性ガスを流通させたり、反応を減圧下で行ったり、溶媒を用いた共沸による除去のいずれの方法を用いてもよい。
【0026】
また、上記脱水重縮合の反応系において、脱水縮合を促進するため、硫酸やp-トルエンスルホン酸、固体酸触媒等の酸触媒を添加する。この酸触媒の使用量は、原料のジオールとポリオールの総重量に対して、下限は通常0.001重量倍、好ましくは0.002重量倍、上限は通常0.3重量倍、好ましくは0.2重量倍である。
【0027】
また、脱水縮合の反応温度は、下限が通常120℃以上、好ましくは140℃以上、上限が通常250℃以下、好ましくは220℃以下で行われる。
反応時間は、原料の種類や反応温度などの条件により異なるが、下限が通常1時間以上、好ましくは2時間以上、上限が通常40時間以下、好ましくは20時間以下である。
反応温度が120℃より低いと反応が進まず、250℃を超えると著しく着色が進む。
【0028】
上記ポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、重縮合反応後に必要に応じて後処理操作を行うことで得られる。硫酸などの酸触媒を添加した場合は、ポリマーの一部の水酸基と硫酸が反応して硫酸エステルを形成しているが、反応液に水を添加、加熱することで硫酸エステルを加水分解できる。加水分解を促進するため、ポリマーと水の両方に親和性のある有機溶媒を添加しても良い。水と疎水性有機溶媒を添加混合して分相し、酸触媒や水溶性のオリゴマーを含む水相を除去した後、ポリマーを含む相から有機溶媒などを減圧蒸留などの方法により除去すると、不純物の少ないポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーが得られる。
【0029】
(親水性または疎水性とする調製方法)
得られるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを親水性とする場合の調製は、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトール1モルに対して、前記式(1)で表されるアルカンジオールとして式(1)中のRが直接結合であるアルカンジオール(エチレングリコール)を4モル以上20モル以下のモル比で反応させることにより、実現できる。
この場合、式(1)中のRが炭素数1〜6のアルキレン基であるアルカンジールが反応系に共存することを排除するものではないが、目的のハイパーブランチポリマーを親水性とする目的を確実に実現するためには、エチレングリコールの反応モル比が少ないほど、式(1)中のRが炭素数1〜6のアルキレン基であるアルカンジールの共存を排除する必要がある。
なお、上記エチレングリコールの反応モル数を20モル以下としたのは、それ以上の量を配合しても親水性とする効果の上で高原状態となるからである。
【0030】
一方、得られるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを疎水性とする場合の調製は、上記親水性とする場合の条件以外の条件にて、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールを、一般式(1)記載のアルカンジオールと反応させることにより、実現できる。
すなわち、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールと反応させるアルカンジオールとして、前記式(1)中のRが分岐していても良い飽和または不飽和の炭素数1〜6のアルキレン基であるアルカンジオールを用いるか、あるいは、式(1)中のRが直接結合であるエチレングリコールをトリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトール1モルに対して4モル未満のモル比で用いることにより、疎水性のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを得ることができる。
【0031】
得られるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーは、重量平均分子量が、下限が通常1000以上、好ましくは2000以上、上限が通常100000以下、好ましくは50000以下である。重量平均分子量が1000以下だとハイパーブランチ構造としては不十分であり、100000より大きいと重合物のハンドリング性が悪く、製造性に適さない。
【0032】
(シェル)
上述のようにして得られたハイパーブランチポリマーが水溶性である場合には、この水溶性のハイパーブランチポリマーを有効成分を保持する保持主体として利用することができる。すなわち、得られたハイパーブランチポリマーが水溶性である場合には、水溶性ハイパーブランチポリマーと有効成分とを水性溶媒環境下で混合することにより、水溶性溶媒中でハイパーブランチポリマーに有効成分を効率的に保持することができる。
一方、得られたハイパーブランチポリマーが疎水性である場合には、疎水性のハイパーブランチポリマーに存在する水酸基の一部もしくは全部を親水性の修飾基に置換して親水性シェルを形成することにより水性溶媒中に可溶とする。このように水溶性を獲得させたハイパーブランチポリマー(疎水性コア親水性シェル型のハイパーブランチポリマー)と有効成分とを水性溶媒環境下で混合することにより、水溶性溶媒中でハイパーブランチポリマーに有効成分を効率的に保持させることが可能となる。
【0033】
本発明において、親水性シェルに対して前記疎水性ハイパーブランチポリマーをコアと呼称する場合もある。コアに対してシェルを形成することにより、有効成分を保持しているハイパーブランチポリマーの表面特性を様々に制御することが可能となる。また、シェルによるコアの被覆率を制御することによりコアに保持されている有効成分の外部への放散速度(徐放性)を制御することもできる。
【0034】
(シェルを構成する化合物)
本願発明においてシェルを形成するための化合物としては、コア表面の水酸基を硫酸エステル塩に変換する作用を有する化合物が用いられる。かかる化合物としては、例えば、無水硫酸、クロロ硫酸などが挙げられる。
また、コア表面の水酸基をポリオキシエチレン基やカチオン基などの他の親水性の官能基に置換する場合に用いられる化合物としては、例えば、エチレンオキシドや塩化グリシジルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0035】
上記硫酸エステル塩への変換(硫酸エステル化)は、公知の一般的な合成法で行うことができる。例えば、無溶媒下、あるいはクロロエタンなどの硫酸化試薬に不活性な溶媒の存在下で、無水硫酸やクロロ硫酸で硫酸エステル化し、その後、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や、アミンで中和することによって、疎水性コアの表面に親水シェルを形成することができる。その結果、疎水性のハイパーブランチポリマーは、水性溶媒に可溶な水溶性ハイパーブランチポリマーに変換され、有効成分を保持する保持主体に有用となる。
【0036】
上記ハイパーブランチポリマーにおけるハイパーブランチ構造は、分子内に多数の1級水酸基を有する構造であり、有効成分保持主体に好適なものとする観点から、該ハイパーブランチポリマーの単位当たりの水酸基数は、水酸基価で定義すると、上述の重量平均分子量の範囲内で、70〜400mgKOH/gであることが好ましい。
【0037】
なお、本願発明における水溶性とは、有効成分を効率的に保持し、適宜に放出するという目的を考慮して、「25℃、100gの水に対して試料0.01gが目視で固体が存在しないこと」を意味する。
【0038】
(有効成分)
本願発明の有効成分保持体は、上記ポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー(親水性)、あるいは疎水性コア親水性シェル型のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを保持主体とし、この保持主体に所望の有効成分を保持した構成を有する。
本願発明の有効成分保持体に適用される有効成分としては、香料、金属イオン、殺菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、清涼剤、制汗剤、必須脂肪酸、ビタミン、着色顔料等が挙げられる。
【0039】
上記有効成分のうち、水難溶性物質(水への溶解度:25℃で5%未満)は、特にコアが疎水性である場合にコアと保持体を形成しやすい。一方、水溶性物質(水への溶解度:25℃で5%以上)は、親水性のコアまたは親水性のシェルが形成されたハイパーブランチポリマーに、特に保持されやすい。
【0040】
上記香料としては、アルデヒド(炭素数8〜20)、アニスアルデヒド、アセトフェノン、アセチルセドレン、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、α−ダマスコン、アンブロキサン、アニスアルデヒド、ベンジルアルコール、ボルニルアセテート、ベンズアルデヒド、セドロール、セレストリッド、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、シクラメンアルデヒド、クマリン、シンナミルアセテート、ジプロピレングリコール、ジメチルベンジルカービノール、ジヒドロミルセノール、ジフェニルオキサイド、エチルバニリン、オイゲノール、フェニルエチルフェニルアセテート、ガラキソリッド、ゲラニオール、ゲラニルニトリル、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス−3−ヘキセノール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ハイドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、インドール、イオノン、イソシクロシトラール、アンバーコア、イソEスーパー、イソブチルキノリン、ジャスモラクトン、コアボン、リリアール、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、リラール、マイヨール、γ−メチルイオノン、ムスクケトン、ムスクチベチン、ムスクモスケン、ミラックアルデヒド、ネロール、ノピールアルコール、フェニルエチルアルコール、α−ピネン、ローズオキサイド、サンダルマイソールコア、サンタレックス、バクダノール、ターピネオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロリナリールアセテート、テトラヒドロゲラニオール、トナリッド、トリプラール、チモール、バニリン、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、セダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ゼラニウム油、ジャスミン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、パチュリ油、ペパーミント油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、タイム油、ベチバー油、イランイラン油、トルーバルサム油、チュベローズ油等が挙げられる。
【0041】
上記金属イオンとしては、Auイオン、Agイオン、Cuイオン、Znイオン、Feイオン、Ptイオン、Pdイオン、Niイオン、Reイオン、Rhイオン、Ruイオン、Scイオン、Tiイオン、Vイオン、Crイオン、Mnイオン、Yイオン、Zrイオン、Nbイオン、Moイオン、Tcイオン、Hfイオン、Taイオン、Wイオン、Osイオン、Irイオン、Cdイオン、Hgイオン等が挙げられる。
【0042】
上記殺菌剤としては、ピロクトンオラミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、次亜塩素酸ナトリウム、アクリノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、クロラムフェニコール、塩酸オキシテトラサイクリン、グリセオフルビン、トリクロサン、クララエキス等が挙げられる。
【0043】
上記抗菌剤としては、カテキン、ヒノキチオール、1,8−シネオール、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸ブチル、タケ抽出オイル、シソオイル、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、没食子酸のエステル類、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、p−メトキシフェノール(PMP)、トコフェロール、トコトリエノール等が挙げられる。
【0044】
上記抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾン吉草酸塩、プロピオン酸クロベタゾール、イブプロフェン及びその塩、ジクロフェナック及びその塩、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、またはグリシルレチン酸、フェルビナク、インドメタシンが挙げられる。
【0045】
上記清涼剤としては、ハッカ油、マスティック油、パセリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、カルダモン油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、パインニードル油、メントール、メントン、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、オクチルアルデヒド、メンチルアセテート、3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、6−イソプロピル−9−メチル−1,4−ジオキサスピロ−(4,5)−デカン−2−メタノール、コハク酸メンチルおよびそのアルカリ土類塩、トリメチルシクロヘキサノール、N−エチル−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサンカルボキサミド、3−(1−メントキシ)−2−メチル-プロパン−1,2−ジオール、メントングリセリンケタール、乳酸メンチル、[1’R,2’S,5’R]−2−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)エタン−1−オール、[1’R,2’S,5’R]−3−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)プロパン−1−オール、[1’R,2’S,5’R]−4−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)ブタン−1−オール等が挙げられる。
【0046】
上記制汗剤としては、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコール、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β−ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム等が挙げられる。
【0047】
上記必須脂肪酸としては、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等が挙げられる。
【0048】
上記ビタミンとしては、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンK(フィロキノン)、ビタミンK(メナキノン)、ビタミンK(メナジオール二リン酸ナトリウム)等が挙げられる。
【0049】
上記着色顔料としては、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料が挙げられる。
【0050】
上記有効成分のうち、水難溶性物質(水への溶解度:25℃、5質量%未満)は、疎水コアを有するハイパーブランチポリマーによって特に複合化されやすく、水溶性物質(水への溶解度:25℃、5質量%以上)は、親水コア単独あるいは親水性コア+親水シェルを有するハイパーブランチポリマーによって特に複合化されやすい。これは、分子間の相互作用が強くなるためであると考えられる。また、ハイパーブランチポリマー末端水酸基の化学修飾(硫酸エステル化)により、ハイパーブランチポリマーをコアとし、このコアにシェルが形成されたコアシェル型が構成されことにより、揮発性物質への保持能が向上する。
【0051】
上記水難溶性物質としては、アルデヒド(炭素数8〜20)、アニスアルデヒド、アセトフェノン、アセチルセドレン、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、α−ダマスコン、アンブロキサン、アニスアルデヒド、ベンジルアルコール、ボルニルアセテート、ベンズアルデヒド、セドロール、セレストリッド、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、シクラメンアルデヒド、クマリン、シンナミルアセテート、ジプロピレングリコール、ジメチルベンジルカービノール、ジヒドロミルセノール、ジフェニルオキサイド、エチルバニリン、オイゲノール、フェニルエチルフェニルアセテート、ガラキソリッド、ゲラニオール、ゲラニルニトリル、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス−3−ヘキセノール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ハイドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、インドール、イオノン、イソシクロシトラール、アンバーコア、イソEスーパー、イソブチルキノリン、ジャスモラクトン、コアボン、リリアール、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、リラール、マイヨール、γ−メチルイオノン、ムスクケトン、ムスクチベチン、ムスクモスケン、ミラックアルデヒド、ネロール、ノピールアルコール、フェニルエチルアルコール、α−ピネン、ローズオキサイド、サンダルマイソールコア、サンタレックス、バクダノール、ターピネオール、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロリナリールアセテート、テトラヒドロゲラニオール、トナリッド、トリプラール、チモール、バニリン、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、セダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ゼラニウム油、ジャスミン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、パチュリ油、ペパーミント油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、タイム油、ベチバー油、イランイラン油、トルーバルサム油、チュベローズ油、ピロクトンオラミン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、イソプロピルメチルフェノール、アクリノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、クロラムフェニコール、グリセオフルビン、トリクロサン、パラメトキシフェノール、クララエキス、カテキン、ヒノキチオール、1,8−シネオール、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸ブチル、タケ抽出オイル、シソオイル、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、没食子酸のエステル類、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、トコトリエノール、ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベタメタゾン吉草酸塩、プロピオン酸クロベタゾール、イブプロフェン、ジクロフェナック、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、グリシルレチン酸、フェルビナク、インドメタシン、ハッカ油、マスティック油、パセリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、カルダモン油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、パインニードル油、メントール、メントン、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、オクチルアルデヒド、メンチルアセテート、3−(1−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、6−イソプロピル−9−メチル−1,4−ジオキサスピロ−(4,5)−デカン−2−メタノール、コハク酸メンチルおよびそのアルカリ土類塩、トリメチルシクロヘキサノール、N−エチル−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサンカルボキサミド、3−(1−メントキシ)−2−メチル−プロパン−1,2−ジオール、メントングリセリンケタール、乳酸メンチル、[1’R,2’S,5’R]−2−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)エタン-1-オール、[1’R,2’S,5’R]−3−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)プロパン−1−オール、[1’R,2’S,5’R]−4−(5’−メチル−2’−(メチルエチル)シクロヘキシルオキシ)ブタン−1−オール、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等が挙げられる。
【0052】
上記水溶性物質として、Auイオン、Agイオン、Cuイオン、Znイオン、Feイオン、Ptイオン、Pdイオン、Niイオン、Reイオン、Rhイオン、Ruイオン、Scイオン、Tiイオン、Vイオン、Crイオン、Mnイオン、Yイオン、Zrイオン、Nbイオン、Moイオン、Tcイオン、Hfイオン、Taイオン、Wイオン、Osイオン、Irイオン、Cdイオン、Hgイオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩酸オキシテトラサイクリン、カテキン、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、エリソルビン酸、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコール、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β−ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム等が挙げられる。
【0053】
上記水難溶性物質として、製剤への汎用性という観点から、好ましくは、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ゲラニオールリリアール、リモネン、リナロール、リラール、ムスクケトン、トリプラール、チモール、バニリン、ピロクトンオラミン、イソプロピルメチルフェノール、パラメトキシフェノール、ヒノキチオール、1,8−シネオール、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸のエステル類、イブプロフェン、アセチルサリチル酸、フェルビナク、インドメタシン、メントール、メントン、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸等が挙げられる。
【0054】
上記水溶性物質として、製剤への汎用性という観点から、好ましくは、Auイオン、Agイオン、Cuイオン、Znイオン、Feイオン、Ptイオン、Pdイオン、Niイオン、Reイオン、Rhイオン、Tiイオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、次亜塩素酸ナトリウム、カテキン、アスコルビン酸、エリソルビン酸、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム等が挙げられる。
【0055】
(有効成分の保持形態)
本願発明におけるハイパーブランチポリマー(保持主体)への有効成分の保持は、該ハイパーブランチポリマーと有効成分との混合することにより得られる。ハイパーブランチポリマーへの有効成分の保持は、配位結合、イオン結合、共有結合、静電的相互作用、疎水性相互作用、分子間力相互作用、などの結合形態により実現される。
【0056】
(有効成分の保持化方法)
本願発明におけるハイパーブランチポリマーへの有効成分の保持を実現する方法は、特に限定されないが、ハイパーブランチポリマーと有効成分のそれぞれをそのままで混合する方法、何れか一方を水性溶媒に溶解させてから、もう片方をそのままで混合する方法、どちらも水性溶媒に溶解させてから混合する方法などが挙げられる。
【0057】
上記混合を行う時の温度は、−20℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、0℃〜120℃である。混合時間は1分〜10時間、より好ましくは、10分〜5時間として、有効成分のハイパーブランチポリマーへの保持を完結させる。
【0058】
(本願発明の有効成分保持体の用途)
本願発明の有効成分保持体は、多くの用途に使用することができる。例えば、化粧品、洗浄剤、医薬品、芳香剤、ポリウレタン配合物、塗料、水性塗料、接着剤、硬化樹脂、生物学的適合性ポリマー、機能性物質や触媒の担持体として、医薬、生化学、および合成における有効成分等に使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、それに先だって、各実施例および比較例で得られた試料の性能を評価するために用いた評価項目およびその測定方法を以下に説明する。
【0060】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
下記分析条件にて測定した。

HPLC装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
試料濃度:0.5%テトラヒドロフラン溶液
カラム:TSK-GEL Super Multipore HZ-N
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
温度:40℃
注入量:10μL、
検出器:RI
標準試料:MW500、2500、9490、37200、98900の東ソー(株)製TSK標準ポリスチレン

【0061】
(水酸基価の測定)
化粧品原料基準新訂版(平成11年発行、(株)薬事日報社)の「24.水酸基価測定法」に従って測定した。
【0062】
(分岐度の評価)
非特許文献2を参考に、トリメチロールエタンと1,6−ヘキサンジオールとの重縮合物をHNMRで解析することで分岐度を算出した。重縮合反応によりトリメチロールエタンの3個の水酸基が一置換から三置換にエーテル化されるに従って、トリメチロールエタン由来のメチル基が低磁場にケミカルシフトし各々のピークが分離して観測されることから、これらのピーク面積を求め下記に示す式で分岐度を算出した。

分岐度(%)=100×(三置換体のメチル基のピーク面積)/〔(一置換体のメチル基のピーク面積)+(二置換体のメチル基のピーク面積)+(三置換体のメチル基のピーク面積)〕

【0063】
(水溶性の評価)
試料が100ppm以上水に溶解する化合物を水溶性とした。合成して得たハイパーブランチポリマーの水溶性は、下記の方法で確認した。
(評価方法)
100mLバイアル瓶に試料0.01gを正確に量り、イオン交換水を加えて全量を100gとした。この溶液を25℃で攪拌し、溶液の状態を目視判定した。
(判定基準)
均一溶液(水溶性) :○
不溶物あり(水不溶性):×
【0064】
(有効成分保持特性の評価)
有効成分の保持性は、有効成分として色素(オイルオレンジSS(東京化成(株)製の試薬))とリナロール(東京化成(株)製の試薬)を用い、それらの可溶化量を下記の方法で測定した。
【0065】
(オイルオレンジSSの可溶化量測定による評価1)
疎水性有効成分のモデル化合物としてオイルオレンジSS(1-[(2-メチルフェニル)アゾ]-2-ナフトール)を選び、その水中における試料への内包量を測定した。
まず、試料の1重量%水溶液を50mL調製した。この1重量%水溶液をイオン交換水で10倍希釈して波長485nmにおける吸光度を測定し、ブランクの吸光度とした。
次に、20mLバイアル瓶に試料1重量%の測定液10gを採取し、これにオイルオレンジSS 0.01gを添加して、超音波にて30分間処理した。この分散液を0.20μmのディスクフィルターで濾過し、濾液をイオン交換水で10倍希釈して、波長485nmにおける吸光度を測定し、サンプル吸光度とした。
上記ブランク吸光度およびサンプル吸光度から以下の計算式にしたがってオイルオレンジSS可溶化量(g/試料100g)を求めた。なお、下記式中の係数18.1は、オイルオレンジSSのメタノール溶液で作成した検量線の傾きである。

オイルオレンジSS濃度(ppm)=18.1×(サンプル吸光度−ブランク吸光度)×10

オイルオレンジSS可溶化量(g/試料100g)=100×オイルオレンジSS濃度(ppm)/試料濃度10000(ppm)

【0066】
(オイルオレンジSSの可溶化量測定による評価2)
疎水性有効成分のモデル化合物としてオイルオレンジSS(1-[(2-メチルフェニル)アゾ]-2-ナフトール)を選び、その水中における試料への内包量を測定した。
まず、試料の100ppm水溶液を50mL調製した。この溶液の波長485nmにおける吸光度を測定して、ブランクの吸光度とした。
次に、20mLバイアル瓶に試料100ppmの測定液10gを採取し、オイルオレンジSS 0.01gを添加して、超音波にて30分間処理した。この分散液を0.20μmのディスクフィルターで濾過し、濾波長485nmにおける吸光度を測定し、サンプル吸光度とした。
上記ブランク吸光度およびサンプル吸光度から以下の計算式にしたがってオイルオレンジSS可溶化量(g/試料100g)を求めた。なお、下記式中の係数18.1は、オイルオレンジSSのメタノール溶液で作成した検量線の傾きである。

オイルオレンジSS濃度(ppm)=18.1×(サンプル吸光度−ブランク吸光度)

オイルオレンジSS可溶化量(g/試料100g)=100×オイルオレンジSS濃度(ppm)/試料濃度100(ppm)

【0067】
(リナロールの可溶化量測定による評価)
試料0.1g、リナロール0.05g、水10gを混合し、25℃で3時間攪拌し、有効成分保持体が形成された混合溶液を得た。
リナロールの可溶化量を、シクロヘキサノンを標準物質とした内部標準法を用いて、ガスクロマトグラフィーで定量し、以下の計算式により、リナロールの可溶化量(g/試料100g)を求めた。

リナロールの可溶化量(g/試料100g)=リナロールの可溶化量(g/水10g)/試料0.1(g/水10g)×100

なお、リナロールを有効成分とした有効成分保持特性の評価では、後述のように、比較対照試料として、α-スルホパルミチン酸メチルエステルナトリウム(比較例6)及びメタクリル酸2-(N-カルボキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウム)-エチルエステル70部とメタクリル酸オクタデシルエステル30部との共重合物(三菱化学(株)製、商品名「ユカフォーマーR402」:比較例7)で同様実験を行った。
【0068】
(シェル(硫酸基)量(mmol/g)の測定)
(NMR測定用サンプルの調製)
酢酸ナトリウム(関東化学社製)約1gを50mLのバイアル壜に精密に量り、全量が50mLになるように重水を加えてメスアップして、内部標準液を調製した。
次に、試料約100mgを5mLのバイアル壜に精密に量り、内部標準液を正確に2mL加えてNMR測定用サンプルを調製し、日本電子製の270MHz NMR測定装置で測定した。
【0069】
(硫酸基量の算出)
上記NMR測定値に基づいて、下記の式により硫酸基量を算出した。

硫酸基量(mmoL/g)=1000×[(4.0〜4.2ppmのメチレンピーク積分値/2)/(2.1ppmのメチルピーク積分値)/3)]×[(標準液の濃度(g/mL)×2)]/[82×試料重量(g)]

【0070】
(合成例1〜4:本反応で得られる生成物がハイパーブランチポリマーであることの確認)
以下の合成例1〜4では、本特許記載の化合物がハイパーブランチポリマー構造になっていることの確認を行った。1,6−ヘキサンジオールとトリメチロールエタンを下記の方法で重縮合し、上記の方法にて、それら反応物の重量平均分子量と水酸基価、及び分岐度を測定した。
【0071】
パーソナル有機合成装置(東京理化器械株式会社製、商品名「Zodiac CCX-3200」)を用いて、窒素導入管と攪拌子を取り付けたφ35mmのガラス製反応容器に、下記(表1)に示す所定のモル比で1,6−ヘキサンジオール(東京化成株式会社製)とトリメチロールエタン(東京化成株式会社製)を、合計量が約40g程度になるように仕込み、触媒の硫酸をジオールとトリメチロールエタンの合計のモル数に対して1モル%量添加した。
窒素を200mL/minの流量で反応液中にバブリングしながら、攪拌しつつ170℃に昇温した。
反応で生成する水は窒素気流と共に系外に除去される。反応の進行度を、2時間ごとに反応液の一部をサンプリングし重量平均分子量を測定することで確認し、約10000の重量平均分子量になった時点で加熱を中止し、反応を停止した。
その後、室温まで冷却し、ガラス製反応容器の窒素導入管を取り外して新たに還流冷却管を取り付け、反応液にイオン交換水10gとn−ブタノール10gを添加して、撹拌しながら120℃まで昇温した。
還流を1時間行って、部分的に生成した硫酸エステルを加水分解し、室温まで冷却した。その後、反応液を200mL分液ロートに移して酢酸エチル70mLとイオン交換水40mLを添加して生成物を抽出した。有機層をイオン交換水40mLで3回洗浄し、有機層を分液したした後、減圧下、溶媒留去し、真空ポンプで残渣を乾燥することでポリエーテルポリオール型のハイパーブランチポリマー(コア)を得た。
【0072】
上述のようにして得られた各合成例のハイパーブランチポリマーの水酸基価および重量平均分子量は(表1)に示し、分岐度は(表2)に示した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
(表1)に記載の水酸基価から、合成例1〜4で得たハイパーブランチポリマーには水酸基が多数存在することがわかる。また、非特許文献2では、トリメチロールエタンの水酸基がエーテル結合で一置換から三置換されると、各々の置換体に対応する1本のメチル基シングルピークがケミカルシフトを伴いながら観測されている。しかし、本化合物では、各置換体に対応した3本のメチル基シングルピークとしては観測されず、高磁場に一置換体に相当すると思われる1本のメチル基ピークが観測され、より低磁場に二置換体に相当すると思われる2本のメチル基ピーク、さらに低磁場に三置換体に相当すると思われる3本のメチル基ピークが観測された。二置換体と三置換体においてメチル基が複数のケミカルシフトを持つ理由の詳細は不明だが、本反応で得られる化合物はデンドリマーとは異なり、秩序正しい構造ではないため、水酸基に置換している各々のエーテル基の周辺の環境が種々異なる状態が存在することから、複数の電子密度を持つメチル基が存在するため複数のメチル基ピークが観測されたのではないかと推測される。
【0076】
(表2)に示す結果から、三置換されているトリメチロールエタンが40〜60%程度あることから、合成例1〜4で得た共重合物は、目的通りの高分岐ポリマー(ハイパーブランチポリマ)となっていることがわかる。
【0077】
(実施例1)
この実施例1では、原料としてエチレングリコールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比は、エチレングリコール/トリメチロールプロパン=8/1とした。反応温度、窒素流量を変えた以外は合成例1〜4と同様に反応を行い、下記所定の重量平均分子量の時点で反応を停止し、後処理は合成例1〜4と同様に行って、親水性のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーHBP1を得た。
得られた親水性ハイパーブランチポリマーHBP1のH NMR(CDCl, δppm)測定値は、0.79+0.88(t+t,3H)、1.32+1.50(m+m,2H)、2.42(br,0.95H)、3.2〜3.93(m,38H)であった。
【0078】
下記実施例2〜8では、原料アルコール、反応温度、窒素流量を変えた以外は合成例1〜4と同様に反応を行い、下記所定の重量平均分子量の時点で反応を停止し、後処理は合成例1〜4と同様に行って、疎水性のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを得た。
次に、得られた疎水性ハイパーブランチポリマーをコアとして、該コアの表面に多数存在する水酸基を塩酸エステル化して親水性シェルを形成し、疎水性コア親水性シェル型の水溶性ハイパーブランチポリマーを調製した。
なお、下記実施例2〜8、および後述の比較例に用いた原料の入手先は、後にまとめて示した。
【0079】
(実施例2)
(疎水性ハイパーブランチポリマー(p1)の調製)
本実施例の疎水性ハイパーブランチポリマー(p1)は、原料として1,3-プロパンジオールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比(1,3-プロパンジオール/トリメチロールプロパン)は、4/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(p1)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、0.79+0.88(t+t,3H)、1.32+1.50(m+m,2H)、1.76(m,8H)、2.52(br,1.3H)、3.2〜3.71(m,22H)であった。
【0080】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP2)の調製)
塩化カルシウム管、攪拌子、滴下ロート、窒素導入管を取り付けた100mLの2口ナスフラスコに、上記疎水性ハイパーブランチポリマー(p1)約15gと、1,2-ジクロロエタン50gを仕込んだ。
窒素を反応液中に100mL/minで流入し、攪拌しながら疎水性ハイパーブランチポリマー(p1)の水酸基数(水酸基価から算出)と等モルのクロロ硫酸を水冷下でゆっくり滴下した。滴下終了後、40℃に昇温して1時間熟成させた後、室温まで冷却した。反応物がゲル化したときは、溶媒を追加した。
300mLビーカーに、仕込みの疎水性ハイパーブランチポリマー(p1)の水酸基と等モル量の水酸化ナトリウム、イソプロパノール50g、水20gを仕込み、撹拌しながら氷冷下で、反応液をビーカー中にゆっくりと注ぎ込んだ。pHメーターで確認しながら水酸化ナトリウム水溶液または塩酸水溶液で最終的に中性になるように調製した後、イソプロパノールを用いて水を共沸させながら溶媒留去し、50℃に加温しながら真空ポンプで乾燥することで、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP2)を得た。
【0081】
硫酸エステル塩(シェル)が導入されたことは、日本電子製の270MHz NMR測定装置でH NMR(DO、50℃)を測定すると、4.0〜4.2ppm付近(TMS基準)に硫酸エステル基の付け根のメチレンピークが観測されることにより確認した。
【0082】
(実施例3)
(疎水性ハイパーブランチポリマー(p2)の調製)
本実施例の疎水性ハイパーブランチポリマー(p2)は、原料として1,3-プロパンジオールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比(1,3-プロパンジオール/トリメチロールプロパン)は、4/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(p2)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、0.81+0.90(t+t, 3H)、1.31+1.50+1.68(m+m+m, 18H)、2.27(br, 1H)、3.21〜3.70(m, 22H)であった。
【0083】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP3)の調製)
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(p2)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP3)を得た。
【0084】
(実施例4)
(疎水性ハイパーブランチポリマー(p3)の調製)
本実施例の疎水性ハイパーブランチポリマー(p3)は、原料として1,6-ヘキサンジオールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比(1,6-ヘキサンジオール/トリメチロールプロパン)は、1/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(p3)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、0.81+0.90(t+t, 3H)、1.31+1.52(br+br, 10H)、2.38(br, 1H)、3.21〜3.84(m, 10H)であった。
【0085】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP4)の調製)
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(p3)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP4)を得た。
【0086】
(実施例5)
(疎水性ハイパーブランチポリマー(p4)の調製)
本実施例の疎水性ハイパーブランチポリマー(p4)は、原料として1,6-ヘキサンジオールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比(1,6-ヘキサンジオール/トリメチロールプロパン)は、4/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(p4)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、0.79+0.89(t+t, 3H)、1.31+1.52(br+br, 32H)、2.12(br, 3H)、3.32〜3.66(m, 22H)であった。
【0087】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP5)の調製)
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(p4)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP5)を得た。
【0088】
(実施例6)
(疎水性ハイパーブランチポリマー(p5)の調製)
本実施例の疎水性ハイパーブランチポリマー(p5)は、原料として1,6-ヘキサンジオールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比(1,6-ヘキサンジオール/トリメチロールプロパン)は、4/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(p5)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、0.79+0.91(t+t, 3H)、1.34+1.53(br+br, 32H)、2.00(br, 0.85H)、3.22〜3.64(m, 22H)であった。
【0089】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP6)の調製)
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(p5)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP6)を得た。
【0090】
(実施例7)
(疎水性ハイパーブランチポリマー(p6)の調製)
本実施例の疎水性ハイパーブランチポリマー(p6)は、原料として1,6-ヘキサンジオールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比(1,6-ヘキサンジオール/トリメチロールプロパン)は、8/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(p6)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、0.79+0.90(t+t, 3H)、1.34+1.53(br+br, 66H)、1.93(br, 1.3H)、3.21〜3.67(m, 38H)であった。
【0091】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP7)の調製)
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(p6)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP7)を得た。
【0092】
(実施例8)
(疎水性ハイパーブランチポリマー(p7)の調製)
本実施例の疎水性ハイパーブランチポリマー(p7)は、原料として1,8-オクタンジオールとペンタエリスリトールを用い、それらのモル比(1,8-オクタンジオール/ペンタエリスリトール)は、8/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(p7)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、1.29(br, 64H)、1.50(br, 32H)、2.22(br, 1.5H)、3.21〜3.66(m, 40H)であった。
【0093】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP8)の調製)
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(p7)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP8)を得た。
なお、上記アルカンジオール(1,8-オクタンジオール)は、先に示した式(1)におけるRの炭素数が8と見なされるが、配合に当たって、両端のメチレンの2個分が差し引かれるので、実質的な炭素数は6となる。
【0094】
(比較例1)
(コアポリマー(c1)の調製)
本比較例のコアポリマー(c1)は、原料として1,3-プロパンジオールのみを用いて重合させて得た。
得られたコアポリマー(c1)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、1.78(quin, 2H)、2.03(0.14)、3.46(t, 4H)であった。
【0095】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のポリマー(C1)の調製)
上記コアポリマー(c1)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のポリマー(C1)を得た。
【0096】
(比較例2)
(コアポリマー(c2)の調製)
本比較例のコアポリマー(c2)は、原料として1,10-デカンジオールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比(1,10-デカンジオール/トリメチロールプロパン)は、4/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(c2)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、0.78+0.87(t+t,3H)、1.29+1.55(br+br,66H)、2.05(br,0.7H)、3.2〜3.66(m,22H)であった。
【0097】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のポリマー(C2)の調製)
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(c2)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のポリマー(C2)を得た。
【0098】
(比較例3)
(コアポリマー(c3)の調製)
本比較例のコアポリマー(c3)は、原料として1,10-デカンジオールとトリメチロールプロパンを用い、それらのモル比(1,10-デカンジオール/トリメチロールプロパン)は、8/1とした。
得られた疎水性ハイパーブランチポリマー(c3)のH NMR(CDCl, δ ppm)測定値は、0.78+0.87(t+t,3H)、1.30+1.55(br+br,130H)、2.05(br,0.9H)、3.2〜3.66(m,38H)であった。
【0099】
(シェルの調製:疎水コア親水シェル型のポリマー(C3)の調製)
上記疎水性ハイパーブランチポリマー(c4)を用いたこと以外、実施例2と同様にして、硫酸エステル塩をシェル部とする疎水コア親水シェル型のポリマー(C3)を得た。
【0100】
(比較例4)
疎水性コア親水性シェル型のポリマーの代わりに分子量20000であるポリエチレングリコール(純正化学(株)製、商品名「ポリエチレングリコール20000」)を用いた。
【0101】
(比較例5)
疎水性コア親水性シェル型のポリマーの代わりにドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)を用いた。
【0102】
(比較例6)
疎水性コア親水性シェル型のポリマーの代わりに下記のようにして得たα-スルホパルミチン酸ナトリウムを用いた。
【0103】
(α-スルホパルミチン酸メチルエステルナトリウムの合成)
温度計、攪拌器、滴下ロート、乾燥用塩化カルシウム管を取り付けた1Lの4口フラスコにパルミチン酸メチルエステル67.5g(0.25モル)、四塩化炭素540gを仕込み、反応温度が15℃以下になるように保持しながら無水硫酸24g(0.3モル)を滴下した。滴下終了後、3時間還流攪拌した。
次に、エバポレーターを用いて反応溶媒を水浴50℃で留去した後、メタノール500mLを添加して20分間還流攪拌した。その後、20%水酸化ナトリウム水溶液で反応液をpH7に調整した。反応溶媒を減圧下で留去した。途中発泡するので、イソプロパノールを加え共沸しながら水を留去した。
残渣をエタノール/水=9/1(v/v)で50〜60℃に加温溶解し、不溶物を除去した。ろ液を5℃に冷却して再結晶した後、析出物を濾別、真空乾燥することでα-スルホパルミチン酸メチルエステルナトリウムを74.5g(収率80%)得た。
得られた析出物のH NMR(D2O、δ ppm、50℃)の測定値は、δ0.99(t, 3H)、1.40(br, 24H)、2.15(br, 2H)、3.90-3.95(s(3H)+t(1H), 4H)であった。
【0104】
(比較例7)
疎水性コア親水性シェル型のポリマーの代わりに、メタクリル酸2-(N-カルボキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウム)-エチルエステル70部とメタクリル酸オクタデシルエステル30部との共重合物(三菱化学(株)製、商品名「ユカフォーマーR402」)を用いた。
【0105】
(原料入手先)
実施例2〜8、比較例1〜4で用いた原料の入手先は、下記の通りである。
なお、下記記載において(a)〜(h)の符号は、後出の(表3)、(表4)中の原料表記に用いている。
(ジオール)
(a)エチレングリコール(純正化学(株)製、試薬)
(b)1,3‐プロパンジオール(東京化成(株) 製、試薬)
(c)1,4‐ブタンジオール(東京化成(株) 製、試薬)
(d)1,6‐ヘキサンジオール(東京化成(株) 製、試薬)
(e)1,8‐オクタンジオール(東京化成(株) 製、試薬)
(f)1,10-デカンジオール(東京化成(株) 製、試薬)
(ポリオール)
(g)トリメチロールプロパン(東京化成(株) 製、試薬)
(h)ペンタエリスリトール(東京化成(株) 製、試薬)
【0106】
(評価)
上記実施例1〜8、比較例1〜3の各ポリマーの組成および製造条件を後出の(表3)に示した。
また、上記実施例1〜8、比較例1〜3で得られた試料について、それらの水酸基価、重量平均分子量および分岐度を、上記測定方法と同様の測定方法により、測定した。
また、実施例1〜8の試料についてシェル(硫酸エステル塩)の形成の確認および生成量の測定は、先述の方法および基準により行った。
また、実施例1〜8、比較例1〜7の試料の有効成分保持特性の評価は、先述の方法および基準により行った。それらの結果は、以下の(表4)および(表5)に示した。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
上記(表)から、実施例1で使用したハイパーブランチポリマーが親水的であり、且つ疎水的な色素(オイルオレンジSS)の可溶化性を有していることがわかり、また、同程度の分子量で、且つ非常に似た構造をもつ水溶性化合物であるポリエチレングリコール(比較例4)と比べて、理由は不明だが、明らかに優位の可溶化性を持つことがわかる。
上記(表)から、実施例2〜8で使用した疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマーが、疎水的なコアを持つ水溶解性の化合物であり、かつ、色素(オイルオレンジSS)の可溶化性からわかるように代表的界面活性剤(比較例6,7)と同様な疎水性環境を高分子内部にもっていることが推測される。また、界面活性剤が臨界ミセル濃度CMC(例えば、比較例6のα−スルホパルミチン酸メチルエステルナトリウムではCMC=135ppm)以下では可溶化能がなくなるのに対して、実施例2〜8で使用した疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマーはそのCMC(例えば、実施例5の疎水コア親水シェル型のハイパーブランチポリマー(HBP5)では、CMC=140ppm)以下でも、CMC以上と同等の可溶化能をもっていることから、疎水性物質を保持する挙動が分子カプセルとして機能していることがわかる。
【0111】
また、実施例2、5,6、比較例6、比較例7から、本願発明の疎水性コア親水性シェル型のハイパーブランチポリマーは、疎水的な香料であるリナロールに対して、疎水性化合物の可溶化量が大きいと言われる長鎖の界面活性剤や、水溶性の直鎖の両性ポリマー「ユカフォーマーR402」と比べて、可溶化量が2倍程度大きいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本願発明によれば、簡便に製造できて安価であり、酸やアルカリ環境下でも化学的に安定で、且つ、コア部分の合成に用いるモノマーの選択や反応モル比を変えることにより親水・疎水的バランスやコアの分岐点の粗密の程度を制御可能な、有効成分を内包できるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー及び該ハイパーブランチポリマーを保持主体として用いた有効成分保持体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
HO−CH−R−CH−OH (1)
(式(1)中、Rは、直接結合、分岐していても良い、飽和または不飽和の炭素数1〜6のアルキレン基を示す)で表される、1級水酸基を2個有するアルカンジオールと、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールとの脱水重縮合反応で得られた共重合体からなるポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー。
【請求項2】
前記共重合体をコアとし、該コアに存在する水酸基の一部または全部を水酸基と反応する官能基を有する化合物を用いて修飾することにより得られるシェルが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー。
【請求項3】
前記コアが疎水性であり、前記シェルが親水性であることを特徴とする請求項2に記載のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー。
【請求項4】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)が1000〜100000g/モルであり、かつ水酸基価が70〜400mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエーテルポリオール型ハイパーブランチポリマーを保持主体として有し、該保持主体が水に溶解した状態で有効成分を保持していることを特徴とする有効成分保持体。
【請求項6】
保持主体に保持される有効成分が薬用化合物、化粧用化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の有効成分保持体。

【公開番号】特開2011−84602(P2011−84602A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236564(P2009−236564)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】