水溶性フィルム
【課題】皮膚に貼付して使用するための化粧用水溶性フィルムとしての特性、すなわち、皮膚に貼付する前又は貼付後に皮膚上に液状又はジェル状の付着層を形成させることができ、当該皮膚上の液又はジェル層を保持し、かつ貼付し剥離後に皮膚上に液又はジェル層を残留させ、保湿感と有効成分を残留させ、かつ、皮膚上に粉吹きや粉残りのしないという特徴をもつ水溶性フィルムを提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均分子量1000〜30万の澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上、
(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸誘導体及びそれらの塩から選ばれる1種以上、
(C)可塑剤
を含有する水溶性フィルム。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均分子量1000〜30万の澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上、
(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸誘導体及びそれらの塩から選ばれる1種以上、
(C)可塑剤
を含有する水溶性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性フィルム、特に化粧料として有用な水溶性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性フィルムは、可食性フィルムとして口中清涼剤や口臭予防、口中抗菌用に使用されていたが、近年化粧料や医薬品用途に使用されることが増えてきている。その組成としては、澱粉を主成分とするものが多く、例えば澱粉、澱粉加水分解物、結晶セルロースとアルギン酸などのゲル化剤を用いた可食性フィルム(特許文献1)、皮膚外用剤として有効な成分を配合し油層成分などを安定に配合するために複数相のフィルムを積層したもの(特許文献2)、フィルム調製時にダマにならず、塗工性が良く、乾燥してフィルム調製後には、耐ブロッキング性があり、かつフィルム単体としての強度を保つものを調製するために、アセチル化及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化及びヒドロキシプロピル化等の化学修飾された澱粉やその酵素分解物、酸分解物に可塑剤を15%以下配合することによる澱粉主体のフィルム(特許文献3)や、加工澱粉としてハイアミロース澱粉由来の澱粉と加工澱粉を組み合わせた水溶性フィルム(特許文献4、5)が知られている。また、ポリビニルピロリドン(PVP)を水溶性フィルムに配合できることは毛髪セット剤(特許文献2)や眠気防止用口蓋貼付用フィルム(特許文献6)に記載されている。
【特許文献1】特開平10−215792号公報
【特許文献2】特開2002−212027号公報
【特許文献3】特開2003−213038号公報
【特許文献4】特開2005−306960号公報
【特許文献5】特開2007−56206号公報
【特許文献6】特開2007−99689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水溶性フィルムを化粧用として使用する際に、使用方法が多量の水分を供給して手のひらの上などで溶解して皮膚に塗布後に洗い流す場合(例えばフィルム状石鹸)では問題にならないが、少量の水分(例えば水、化粧水、乳液)により皮膚上で溶解して皮膚に成分供給や保湿感を供与する用途、すなわち、皮膚に塗布又は貼付して使用する(皮膚上にのこる)場合は、フィルムとしての安定性、素早い溶解性、溶解後のなじみやすさに加えて、乾燥した後のベトツキや肌残り、つまり粉残りや粉吹き等が問題となる。
また、このような水溶性フィルムでは、通常化粧用フィルムとして水に溶解して使用する前まで、水溶性フィルム単体であることが必要である。そこで、フィルムの形成能に富む組成物を作成することを目的として、調製時の溶解性や、保存時の耐ブロッキング性能を維持できるように、粉体組成物と配合量の最適化を行なっている。例えば、皮膚上で水に溶解して使用する用途に適したフィルムの賦形剤としては、加工澱粉やデキストリン、蛋白質、プルランやアルギン酸などの多糖類を多量に使用することが一般的であり、化粧水や乳液に速やかに溶解し、保湿感を付与し、かつ粉残り粉吹きなどをさせないという面では不十分であった。
本発明の目的は、皮膚に貼付して使用するための化粧用水溶性フィルムとしての特性、すなわち、貼付後に皮膚上に液状又はジェル状の付着層を形成させることができ、保湿感と有効成分を残留させ、かつ、皮膚上に粉吹きや粉残りがしないという特徴をもつ水溶性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者は、水溶性フィルムの配合について種々検討した結果、フィルムの主要構成成分である加工澱粉等の水溶性高分子及び可塑剤に加えて、ヒアルロン酸類を配合することにより、皮膚貼付後にも感触の良いジェル層を保持でき、液状又はジェル層を形成維持できる水溶性フィルムが得られることを見出した。特に、水ゲルと積層した際に形成されるジェル層は、粉吹きや粉残りが生じにくくなる。
【0005】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均分子量1000〜30万の澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上、
(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸誘導体及びそれらの塩から選ばれる1種以上、
(C)可塑剤
を含有する水溶性フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水溶性フィルムを用いれば、皮膚に貼付することのできる液状又はジェル状の付着層が速やかに形成でき、皮膚に貼付後に液状又はジェル層の付着層を残留させ、保湿感と有効成分を残留させることができ、かつ皮膚上に粉吹きや粉残りが生じにくい。特に皮膚に貼付する前に、水溶性フィルムにより形成される液状又はジェル状の付着層と水ゲル相との積層したものを調製し、2層積層体として肌に貼付する形態のゲルシートに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の水溶性フィルムに用いられる成分(A)は、平均分子量1000〜30万の、澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース及びポリビニルピロリドン(以下、PVPとする)から選ばれる1種以上である。当該成分(A)は、フィルムの主要構成成分である。ここで、澱粉としては、天然澱粉、例えばタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉等が挙げられる。また、ハイアミロース澱粉であるハイアミローストウモロコシ澱粉、緑豆澱粉、イエローピーなども用いることができる。
加工澱粉としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、それらの酸化物、及びそれらの酸架橋物が挙げられる。
エーテル化澱粉としては、ヒドロキシプロピル化物、ヒドロキシエチル化物、ヒドロキシメチル化物、及びヒドロキシプロピルメチル化物等のヒドロキシアルキル化澱粉が好ましく、エステル化澱粉としてはアセチル化澱粉が好ましい。
エーテル化澱粉又はエステル化澱粉の酸化物としては、それらの澱粉を次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤により漂白、酸化したものが挙げられる。また、エーテル化澱粉又はエステル化澱粉の酸架橋物としては、リン酸架橋物、アジピン酸架橋物、エピクロルヒドリン架橋物が挙げられる。
エーテル化澱粉又はエステル化澱粉の分解物としては、それらの澱粉の酸分解物、酵素分解物が挙げられる。ここで酸分解物としては、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液に浸漬して分解したものが挙げられる。酵素分解物としては、アミラーゼ分解物が挙げられる。
また、エーテル化澱粉又はエステル化澱粉の酸化物又はそれらの架橋物の分解物としては、前記と同様の酸分解物、酵素分解物が挙げられる。
【0008】
これらのうち、特にヒドロキシアルキル化澱粉、それらの酸化物、及びそれらの酸架橋物が好ましい。これらヒドロキシアルキル化澱粉又はその分解物は、フィルム形成性と、水ゲル上での残存を少なくするために、平均分子量が1000〜10万のものが好ましく、特に1万〜5万のものが好ましい。
【0009】
ヒドロキシアルキル化セルロースとしては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど水溶性のヒドロキシアルキルセルロースが好ましく、分子量は5千〜20万、さらに1万〜10万のものが好ましい。
【0010】
また、ポリビニルピロリドン(PVP)としては、平均分子量が5千〜百万の分子量のものが広く入手できるが、特に化粧料用として水ゲル層と積層した際に水ゲル中に移行させるためには分子量は5千〜10万、さらに5千〜6万のものが好ましい。
【0011】
これら分子量1000〜30万の加工澱粉分解物等、ヒドロキシアルキル化セルロース、PVPの水溶性フィルム中の含有量は、フィルム形成性からは、なるべく多く含まれることが好ましく、肌への貼付後のベタツキや肌残りからは少ないことが好ましいので、30〜85重量%、さらに35〜75重量%が好ましい。
【0012】
本発明の水溶性フィルムに用いられる成分(B)のヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸の誘導体及びそれらの塩としては、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸ナトリウムの加熱及び酵素分解物、アセチル化ヒアルロン酸等が挙げられる。用いるヒアルロン酸の平均分子量は、ヒアルロン酸の供給源により、例えば、鶏のトサカでは500万〜700万、乳酸菌等微生物発酵法により精製されたものでは100万〜300万である。本発明において、成分(B)は成分(A)と一緒にフィルムの骨格を構成する成分として働き、水ゲル上に高水分量のジェル層を形成し、貼付により皮膚に移行したあとには、湿潤感を付与・保持する作用を有する。高分子のヒアルロン酸のみを配合すると水溶性フィルム塗工前の液体の粘度が上昇しすぎ水溶性フィルムの塗工調製に問題が生じる。そのため、好ましくはヒアルロン酸の分解物や、アセチル化ヒアルロン酸などを使用するか、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウムと併用することが好ましい。ヒアルロン酸の分解物の平均分子量としては1000〜150万、より好ましくは10万〜100万である。
【0013】
成分(B)は、湿潤感、保湿性の付与、フィルム塗工性の点から成分(A)100重量部に対して1重量部以上、さらに1〜30重量部、さらに2〜15重量部、特に4〜10重量部含有するのが好ましい。
【0014】
本発明の水溶性フィルムに使用される成分(C)の可塑剤としては、通常の液状もしくは低分子、好ましくは平均分子量が1000未満のポリオールや多糖類などを用いることができる。具体的には、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコールなどが挙げられ、これら1種又は2種以上を使用することができる。また、ジグリセリンのポリオキシプロピレン(POP)又はポリオキシエチレン(POE)付加物や、平均分子量1,000未満のポリエチレングリコールは、水溶性フィルムの耐ブロッキング性の向上と、皮膚への保湿感の付与に有効である。
【0015】
成分(C)は、水溶性フィルムの柔軟性と耐ブロッキング性の点から、成分(A)100重量部に対して5〜80重量部、さらに5〜50重量部、特に10〜30重量部含有するのが好ましい。
【0016】
本発明の水溶性フィルムに用いられる成分(D)のポリアルキレングリコールとしては、平均分子量が1000〜6000のポリエチレングリコールが好ましく、特に平均分子量1000〜4000、さらに平均分子量1200〜3000のポリエチレングリコールが好ましい。
これらのポリアルキレングリコールは、水に溶解した時には粘度を上昇させず、乾燥時にフィルム形成を阻害せず、耐ブロッキング性を向上させることができ、油性成分の保持にも役立つ。分子量が小さすぎないことが、乾燥時のフィルム形成の耐ブロッキング性のために好ましい。また分子量が大きすぎないことが、フィルムの割れを防止するために好ましい。さらに、ポリアルキレングリコールは、可塑剤であるグリセリンとともに溶解した後、そこに水に溶解時に高粘度を示すヒアルロン酸やヒアルロン酸ナトリウム等を分散させた後に、水を加えダマにならないように水溶性フィルムの原液(原体)を調製できるといった利点もある。すなわち、可塑剤のみでは耐ブロッキング性の面から配合量の上限があり、ヒアルロン酸の分散剤として使用するには量的に少ない場合に、ポリアルキレングリコールを併用することでヒアルロン酸の分散剤としての機能を有する。
【0017】
成分(D)は、耐ブロッキング性、フィルムの温度耐性の点から、成分(A)100重量部に対して、5〜80重量部が好ましく、さらに5〜50重量部、特に5〜30重量部含有するのが好ましい。
【0018】
成分(C)と成分(D)の合計量は、耐ブロッキング性や皮膚上での保湿感保持の点から、成分(A)100重量部に対して、20〜140重量部が好ましく、特に30〜100重量部、さらに40〜80重量部が好ましい。また、成分(B)は、ジェル層の形成及び保湿感付与の点から、成分(C)及び成分(D)の合計量を100として5〜60重量部、さらに5〜30重量部、特に8〜20重量部含有するのが好ましい。
【0019】
本発明の水溶性フィルムにおいては、水溶性フィルムのフィルム形成剤として、ウロン酸を含む酸性多糖類などを併用することが、ジェル状の保水層を形成する上で好ましい。具体的にはペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸塩とその誘導体が挙げられる。
【0020】
また、本発明においては、フィルムの保形性を上げ、2層積層体の水ゲル中に移行し粉残りをしないようにするため、平均分子量100以上1000未満の澱粉分解物が配合することができる。澱粉分解物としては、澱粉の酸分解物又は酵素分解物が挙げられ、当該分解物の例としてはデキストリンが挙げられる。ここで、澱粉分解物は、より好ましくは平均分子量200以上1000未満のものが好ましい。またDE(dextrose equivalent)は7〜50が好ましく、特にDE20〜40が好ましい。
DEとは澱粉の分解の程度を示す指標で、DE=[(直接還元糖)/(固形分)]×100で求められる。分解が進み還元糖の量が増えるほどDE値は大きくなる。
【0021】
本発明の水溶性フィルムには、各種動植物エキス類、ビタミン及びその誘導体、抗酸化剤、抗菌及び防腐剤、抗炎症剤、酵素類、色素、香料、乳化剤、界面活性剤、風味剤、油脂類などを配合することができる。特に、貼付後のベタツキ抑制のために、油性成分としてエステル油や油溶性ビタミン類などの添加を行うことが好ましい。
【0022】
本発明の水溶性フィルムは、基材上に、前記成分(A)〜(C)及びその他の成分を含む水溶液を塗工し、乾燥することにより製造することができる。
【0023】
本発明に於ける基材(ライナーフィルム)は、合成樹脂のフィルムを用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、塩化ビニルなどの単層及び多層フィルムを用いることができ、厚みは10μm〜100μmが好ましい。また水溶性フィルムの原液を塗工しやすいように表面のコロナ処理など親水性処理を行なったものを使用しても良い。さらに、ゲル塗工時に裏表面の識別性やゲル上でのジェル層を保持する面からエンボスなどの合成樹脂フィルムも使用できる。また、ライナーフィルムに着色や印刷等を施してもよい。
【0024】
この基材に対して、乾燥後の水溶性フィルムの厚みとしては、ゲルシートに積層して使用する場合、好ましくは10〜400μm、特に好ましくは40〜150μmである。本発明の水溶性フィルムは外用剤用として、例えばゲルシートへ積層して使用する、又は水溶性フィルムを少量の水分で溶かしジェル状の化粧料として皮膚へ塗布する等の方法で用いることから、強いて薄くする必要はないが、粉残りせず、粉吹きしないためには、40〜100μmが好ましい。
【0025】
本発明の水溶性フィルムは、化粧用水溶性フィルム、特に皮膚に貼付して使用する化粧用水溶性フィルムとして有用である。すなわち、各種の薬効成分を含む水溶性フィルムシート剤として携帯でき、使用時に水を添加してジェル状として使用することもできるが、また水ゲルなどの水を含む支持体の表層にジェル層を形成してなるシート状組成物を構成するための部材としても有用である。従って、本発明の水溶性フィルムと水ゲルからなる化粧用シート状組成物は、皮膚に貼付して使用する化粧料として有用である。
【0026】
本発明の水溶液フィルムの使用形態として最も好ましいのは、ゲルシートに積層した後に肌に貼付し、液・又はジェル状に溶解した層を形成させて使用する化粧用の水溶性フィルムである。より具体的には、皮膚に貼付する前に水ゲル層との積層したものを調製し、2層積層体として肌に貼付使用することを目的とし、長時間貼付後に剥離した場合でも皮膚に保湿感を提供し、肌に残った液が皮膚上で乾いた際に粉残り粉吹きなどの問題の起きない水溶性フィルムである。
【実施例】
【0027】
以下、具体例をもって本発明を説明する。
【0028】
実施例1〜3、比較例1〜4
表1の配合組成に従って、以下の方法で調製を行なった。
成分(C)のグリセリン、プロピレングリコール、ジグリセリンPOE付加物と成分(D)のポリエチレングリコールを加熱溶解した液に、成分(B)のヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物を分散させ、成分(A)の加工澱粉等をその重量の等量から倍量の水に溶解させたものとを混ぜ合わせ、PEフィルム上に塗工し、乾燥後、25℃、湿度40%でエージングをさせた後、水溶性フィルムの評価を行った。なお、比較例2及び3は室温では粘度が高かったため、50℃に加温をして塗工を行なったが、液の伸展性が悪く塗工性が特に悪かった。
【0029】
なお、これらのフィルム製造時及びフィルムとしての安定性と、水を含む支持体の表層にジェル層を形成してなるシート状組成物での評価については、以下のように行った。それぞれ、乾燥後に所望の塗工厚みとなるようにベーカー式アプリケーターにて塗工し、フィルム塗工性、フィルム形成性、耐ブロッキング性を評価した。
【0030】
(フィルム塗工性)
フィルム塗工性としては、ベーカー式アプリケーターで一定厚に塗工した時に、20wt%〜70wt%の範囲で調製時に粘度が2000〜8000mP・sの範囲にあり、非常に高い粘度を示したりチキソトロピックな粘弾性を示さずに、粘度2000〜3000mP・sと粘度5000〜8000mP・sで一定厚みでムラ無く塗工できるかどうかを以下の基準で評価した。
○:ある粘度幅で、なめらかにムラなく塗工でき、塗工後の状態に変化がない。
△:ある粘度幅で、なめらかにムラなく塗工できるが、塗工後の状態が変化する。
×:ある粘度幅で、なめらかにムラなく塗工できない。
【0031】
(フィルム形成性)
乾燥し冷却後に得られたフィルムの表面及び、ライナーフィルムとともにロールで保管する場合に、割れや剥れがないかどうかを以下の基準で評価した。
○:フィルム表面がなめらかで、巻取り用にロールさせても剥れたり、割れたりしない。
△:フィルム表面がなめらかだが、巻取り用にロールさせるとわずかに剥れたり浮いたりヒビがはいることがある。
×:フィルム表面がなめらかでなく、巻取り用にロールさせると剥れたり、割れたりしてロール保管することができない。
【0032】
(耐ブロッキング性)
ライナーフィルムに塗工した状態で乾燥及び冷却した水溶性フィルムを、A4にカットし重ねて、25℃で相対湿度45%及び、50℃相対湿度45%で調整した容器中で3日間保管し、以下の基準で評価した。
○:ブロッキングを起こさず、1枚ずつはがすことができる。
△:ブロッキングを起こすが、水溶性フィルムが破れたりすることなく剥がすことができる。
×:ブロッキングして剥がすことができない。
【0033】
次に、表2の水ゲルをライナーフィルムつき水溶性フィルムと積層し、水ゲルが架橋するまで一週間保管した後に、3×4cmに切り出して、肌に貼付して水溶性フィルムがジェル層となった部分の評価を行った。結果をあわせて表1に示す。
【0034】
(ジェル層の保湿感)
肌に15分貼付後に、剥がした時にジェル層が肌に転写し、かつ保湿感を感じるかどうかを、以下の基準で評価した。
◎:剥離後に肌に十分に保湿層が転写され、皮膚上でなじませた後もうるおい感がある。
○:剥離後に肌に有意に保湿層が転写され、皮膚上でなじませた後もうるおい感がある。
△:剥離後に肌にわずかに保湿層が転写され、皮膚上でなじませた後もうるおい感はない。
×:剥離後に肌に保湿層が転写されず、皮膚上に何も残った感じがないか、もしくは粘稠物が残る。
【0035】
(ジェル層のベトツキ)
肌に15分貼付後に、剥がしてジェル層が肌に転写しなじませた後のべとつきを、以下の基準で評価した。
◎:剥離後に皮膚上でなじませた後、さらっとしベとつかない。
○:剥離後に皮膚上でなじませた後、べとつかない。
△:剥離後に皮膚上でなじませた後、ややべとつく。
×:剥離後に皮膚上でなじませた後、べとつく。
【0036】
(粉残り/粉吹き)
肌に15分貼付後に、皮膚に転写したジェル層をなじませたのちの状態を、以下の基準で評価した。
◎:剥離後に皮膚上でなじませた後、保湿感があり、白く粉残りや粉吹きがない。
○:剥離後に皮膚上でなじませた後、ほとんど、白く粉残りや粉吹きがない。
△:剥離後に皮膚上でなじませた後、やや白く粉残りや粉吹きがある。
×:剥離後に皮膚上でなじませた後、白く粉残りや粉吹きする。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表2は、カルボキシメチルセルロースをベースとし、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムで架橋した水ゲルであり、室温2日保存でほぼ架橋は終了したゲルとなるものである。配合方法としては、グリセリン、プロピレングリコール中にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムパラオキシ安息香酸メチルを分散させた液と、カルボキシメチルセルロースとヒドロキシエチルセルロースとコハク酸を水に溶解した液を混合し架橋反応をさせることで得ることができる。
2層積層体の製造方法は、このカルボキシメチルセルロースの架橋前のゲルを、水溶性フィルムをPETフィルム上に形成し乾燥させたものとPEフィルムの間に塗工し、水ゲル層の片面にジェル層を形成させることで得ることができる。
【0040】
実施例4〜8、比較例5、6
表3に示す組成のフィルムを表1と同様に製造した。PVP K−90の平均分子量は360000であり、PVP−K30の平均分子量は45000である。調製方法及び、評価方法は実施例1と同様である。
【0041】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性フィルム、特に化粧料として有用な水溶性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性フィルムは、可食性フィルムとして口中清涼剤や口臭予防、口中抗菌用に使用されていたが、近年化粧料や医薬品用途に使用されることが増えてきている。その組成としては、澱粉を主成分とするものが多く、例えば澱粉、澱粉加水分解物、結晶セルロースとアルギン酸などのゲル化剤を用いた可食性フィルム(特許文献1)、皮膚外用剤として有効な成分を配合し油層成分などを安定に配合するために複数相のフィルムを積層したもの(特許文献2)、フィルム調製時にダマにならず、塗工性が良く、乾燥してフィルム調製後には、耐ブロッキング性があり、かつフィルム単体としての強度を保つものを調製するために、アセチル化及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化及びヒドロキシプロピル化等の化学修飾された澱粉やその酵素分解物、酸分解物に可塑剤を15%以下配合することによる澱粉主体のフィルム(特許文献3)や、加工澱粉としてハイアミロース澱粉由来の澱粉と加工澱粉を組み合わせた水溶性フィルム(特許文献4、5)が知られている。また、ポリビニルピロリドン(PVP)を水溶性フィルムに配合できることは毛髪セット剤(特許文献2)や眠気防止用口蓋貼付用フィルム(特許文献6)に記載されている。
【特許文献1】特開平10−215792号公報
【特許文献2】特開2002−212027号公報
【特許文献3】特開2003−213038号公報
【特許文献4】特開2005−306960号公報
【特許文献5】特開2007−56206号公報
【特許文献6】特開2007−99689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水溶性フィルムを化粧用として使用する際に、使用方法が多量の水分を供給して手のひらの上などで溶解して皮膚に塗布後に洗い流す場合(例えばフィルム状石鹸)では問題にならないが、少量の水分(例えば水、化粧水、乳液)により皮膚上で溶解して皮膚に成分供給や保湿感を供与する用途、すなわち、皮膚に塗布又は貼付して使用する(皮膚上にのこる)場合は、フィルムとしての安定性、素早い溶解性、溶解後のなじみやすさに加えて、乾燥した後のベトツキや肌残り、つまり粉残りや粉吹き等が問題となる。
また、このような水溶性フィルムでは、通常化粧用フィルムとして水に溶解して使用する前まで、水溶性フィルム単体であることが必要である。そこで、フィルムの形成能に富む組成物を作成することを目的として、調製時の溶解性や、保存時の耐ブロッキング性能を維持できるように、粉体組成物と配合量の最適化を行なっている。例えば、皮膚上で水に溶解して使用する用途に適したフィルムの賦形剤としては、加工澱粉やデキストリン、蛋白質、プルランやアルギン酸などの多糖類を多量に使用することが一般的であり、化粧水や乳液に速やかに溶解し、保湿感を付与し、かつ粉残り粉吹きなどをさせないという面では不十分であった。
本発明の目的は、皮膚に貼付して使用するための化粧用水溶性フィルムとしての特性、すなわち、貼付後に皮膚上に液状又はジェル状の付着層を形成させることができ、保湿感と有効成分を残留させ、かつ、皮膚上に粉吹きや粉残りがしないという特徴をもつ水溶性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者は、水溶性フィルムの配合について種々検討した結果、フィルムの主要構成成分である加工澱粉等の水溶性高分子及び可塑剤に加えて、ヒアルロン酸類を配合することにより、皮膚貼付後にも感触の良いジェル層を保持でき、液状又はジェル層を形成維持できる水溶性フィルムが得られることを見出した。特に、水ゲルと積層した際に形成されるジェル層は、粉吹きや粉残りが生じにくくなる。
【0005】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均分子量1000〜30万の澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上、
(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸誘導体及びそれらの塩から選ばれる1種以上、
(C)可塑剤
を含有する水溶性フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水溶性フィルムを用いれば、皮膚に貼付することのできる液状又はジェル状の付着層が速やかに形成でき、皮膚に貼付後に液状又はジェル層の付着層を残留させ、保湿感と有効成分を残留させることができ、かつ皮膚上に粉吹きや粉残りが生じにくい。特に皮膚に貼付する前に、水溶性フィルムにより形成される液状又はジェル状の付着層と水ゲル相との積層したものを調製し、2層積層体として肌に貼付する形態のゲルシートに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の水溶性フィルムに用いられる成分(A)は、平均分子量1000〜30万の、澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース及びポリビニルピロリドン(以下、PVPとする)から選ばれる1種以上である。当該成分(A)は、フィルムの主要構成成分である。ここで、澱粉としては、天然澱粉、例えばタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉等が挙げられる。また、ハイアミロース澱粉であるハイアミローストウモロコシ澱粉、緑豆澱粉、イエローピーなども用いることができる。
加工澱粉としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、それらの酸化物、及びそれらの酸架橋物が挙げられる。
エーテル化澱粉としては、ヒドロキシプロピル化物、ヒドロキシエチル化物、ヒドロキシメチル化物、及びヒドロキシプロピルメチル化物等のヒドロキシアルキル化澱粉が好ましく、エステル化澱粉としてはアセチル化澱粉が好ましい。
エーテル化澱粉又はエステル化澱粉の酸化物としては、それらの澱粉を次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤により漂白、酸化したものが挙げられる。また、エーテル化澱粉又はエステル化澱粉の酸架橋物としては、リン酸架橋物、アジピン酸架橋物、エピクロルヒドリン架橋物が挙げられる。
エーテル化澱粉又はエステル化澱粉の分解物としては、それらの澱粉の酸分解物、酵素分解物が挙げられる。ここで酸分解物としては、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液に浸漬して分解したものが挙げられる。酵素分解物としては、アミラーゼ分解物が挙げられる。
また、エーテル化澱粉又はエステル化澱粉の酸化物又はそれらの架橋物の分解物としては、前記と同様の酸分解物、酵素分解物が挙げられる。
【0008】
これらのうち、特にヒドロキシアルキル化澱粉、それらの酸化物、及びそれらの酸架橋物が好ましい。これらヒドロキシアルキル化澱粉又はその分解物は、フィルム形成性と、水ゲル上での残存を少なくするために、平均分子量が1000〜10万のものが好ましく、特に1万〜5万のものが好ましい。
【0009】
ヒドロキシアルキル化セルロースとしては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど水溶性のヒドロキシアルキルセルロースが好ましく、分子量は5千〜20万、さらに1万〜10万のものが好ましい。
【0010】
また、ポリビニルピロリドン(PVP)としては、平均分子量が5千〜百万の分子量のものが広く入手できるが、特に化粧料用として水ゲル層と積層した際に水ゲル中に移行させるためには分子量は5千〜10万、さらに5千〜6万のものが好ましい。
【0011】
これら分子量1000〜30万の加工澱粉分解物等、ヒドロキシアルキル化セルロース、PVPの水溶性フィルム中の含有量は、フィルム形成性からは、なるべく多く含まれることが好ましく、肌への貼付後のベタツキや肌残りからは少ないことが好ましいので、30〜85重量%、さらに35〜75重量%が好ましい。
【0012】
本発明の水溶性フィルムに用いられる成分(B)のヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸の誘導体及びそれらの塩としては、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸ナトリウムの加熱及び酵素分解物、アセチル化ヒアルロン酸等が挙げられる。用いるヒアルロン酸の平均分子量は、ヒアルロン酸の供給源により、例えば、鶏のトサカでは500万〜700万、乳酸菌等微生物発酵法により精製されたものでは100万〜300万である。本発明において、成分(B)は成分(A)と一緒にフィルムの骨格を構成する成分として働き、水ゲル上に高水分量のジェル層を形成し、貼付により皮膚に移行したあとには、湿潤感を付与・保持する作用を有する。高分子のヒアルロン酸のみを配合すると水溶性フィルム塗工前の液体の粘度が上昇しすぎ水溶性フィルムの塗工調製に問題が生じる。そのため、好ましくはヒアルロン酸の分解物や、アセチル化ヒアルロン酸などを使用するか、ヒアルロン酸又はヒアルロン酸ナトリウムと併用することが好ましい。ヒアルロン酸の分解物の平均分子量としては1000〜150万、より好ましくは10万〜100万である。
【0013】
成分(B)は、湿潤感、保湿性の付与、フィルム塗工性の点から成分(A)100重量部に対して1重量部以上、さらに1〜30重量部、さらに2〜15重量部、特に4〜10重量部含有するのが好ましい。
【0014】
本発明の水溶性フィルムに使用される成分(C)の可塑剤としては、通常の液状もしくは低分子、好ましくは平均分子量が1000未満のポリオールや多糖類などを用いることができる。具体的には、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコールなどが挙げられ、これら1種又は2種以上を使用することができる。また、ジグリセリンのポリオキシプロピレン(POP)又はポリオキシエチレン(POE)付加物や、平均分子量1,000未満のポリエチレングリコールは、水溶性フィルムの耐ブロッキング性の向上と、皮膚への保湿感の付与に有効である。
【0015】
成分(C)は、水溶性フィルムの柔軟性と耐ブロッキング性の点から、成分(A)100重量部に対して5〜80重量部、さらに5〜50重量部、特に10〜30重量部含有するのが好ましい。
【0016】
本発明の水溶性フィルムに用いられる成分(D)のポリアルキレングリコールとしては、平均分子量が1000〜6000のポリエチレングリコールが好ましく、特に平均分子量1000〜4000、さらに平均分子量1200〜3000のポリエチレングリコールが好ましい。
これらのポリアルキレングリコールは、水に溶解した時には粘度を上昇させず、乾燥時にフィルム形成を阻害せず、耐ブロッキング性を向上させることができ、油性成分の保持にも役立つ。分子量が小さすぎないことが、乾燥時のフィルム形成の耐ブロッキング性のために好ましい。また分子量が大きすぎないことが、フィルムの割れを防止するために好ましい。さらに、ポリアルキレングリコールは、可塑剤であるグリセリンとともに溶解した後、そこに水に溶解時に高粘度を示すヒアルロン酸やヒアルロン酸ナトリウム等を分散させた後に、水を加えダマにならないように水溶性フィルムの原液(原体)を調製できるといった利点もある。すなわち、可塑剤のみでは耐ブロッキング性の面から配合量の上限があり、ヒアルロン酸の分散剤として使用するには量的に少ない場合に、ポリアルキレングリコールを併用することでヒアルロン酸の分散剤としての機能を有する。
【0017】
成分(D)は、耐ブロッキング性、フィルムの温度耐性の点から、成分(A)100重量部に対して、5〜80重量部が好ましく、さらに5〜50重量部、特に5〜30重量部含有するのが好ましい。
【0018】
成分(C)と成分(D)の合計量は、耐ブロッキング性や皮膚上での保湿感保持の点から、成分(A)100重量部に対して、20〜140重量部が好ましく、特に30〜100重量部、さらに40〜80重量部が好ましい。また、成分(B)は、ジェル層の形成及び保湿感付与の点から、成分(C)及び成分(D)の合計量を100として5〜60重量部、さらに5〜30重量部、特に8〜20重量部含有するのが好ましい。
【0019】
本発明の水溶性フィルムにおいては、水溶性フィルムのフィルム形成剤として、ウロン酸を含む酸性多糖類などを併用することが、ジェル状の保水層を形成する上で好ましい。具体的にはペクチン、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸塩とその誘導体が挙げられる。
【0020】
また、本発明においては、フィルムの保形性を上げ、2層積層体の水ゲル中に移行し粉残りをしないようにするため、平均分子量100以上1000未満の澱粉分解物が配合することができる。澱粉分解物としては、澱粉の酸分解物又は酵素分解物が挙げられ、当該分解物の例としてはデキストリンが挙げられる。ここで、澱粉分解物は、より好ましくは平均分子量200以上1000未満のものが好ましい。またDE(dextrose equivalent)は7〜50が好ましく、特にDE20〜40が好ましい。
DEとは澱粉の分解の程度を示す指標で、DE=[(直接還元糖)/(固形分)]×100で求められる。分解が進み還元糖の量が増えるほどDE値は大きくなる。
【0021】
本発明の水溶性フィルムには、各種動植物エキス類、ビタミン及びその誘導体、抗酸化剤、抗菌及び防腐剤、抗炎症剤、酵素類、色素、香料、乳化剤、界面活性剤、風味剤、油脂類などを配合することができる。特に、貼付後のベタツキ抑制のために、油性成分としてエステル油や油溶性ビタミン類などの添加を行うことが好ましい。
【0022】
本発明の水溶性フィルムは、基材上に、前記成分(A)〜(C)及びその他の成分を含む水溶液を塗工し、乾燥することにより製造することができる。
【0023】
本発明に於ける基材(ライナーフィルム)は、合成樹脂のフィルムを用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、塩化ビニルなどの単層及び多層フィルムを用いることができ、厚みは10μm〜100μmが好ましい。また水溶性フィルムの原液を塗工しやすいように表面のコロナ処理など親水性処理を行なったものを使用しても良い。さらに、ゲル塗工時に裏表面の識別性やゲル上でのジェル層を保持する面からエンボスなどの合成樹脂フィルムも使用できる。また、ライナーフィルムに着色や印刷等を施してもよい。
【0024】
この基材に対して、乾燥後の水溶性フィルムの厚みとしては、ゲルシートに積層して使用する場合、好ましくは10〜400μm、特に好ましくは40〜150μmである。本発明の水溶性フィルムは外用剤用として、例えばゲルシートへ積層して使用する、又は水溶性フィルムを少量の水分で溶かしジェル状の化粧料として皮膚へ塗布する等の方法で用いることから、強いて薄くする必要はないが、粉残りせず、粉吹きしないためには、40〜100μmが好ましい。
【0025】
本発明の水溶性フィルムは、化粧用水溶性フィルム、特に皮膚に貼付して使用する化粧用水溶性フィルムとして有用である。すなわち、各種の薬効成分を含む水溶性フィルムシート剤として携帯でき、使用時に水を添加してジェル状として使用することもできるが、また水ゲルなどの水を含む支持体の表層にジェル層を形成してなるシート状組成物を構成するための部材としても有用である。従って、本発明の水溶性フィルムと水ゲルからなる化粧用シート状組成物は、皮膚に貼付して使用する化粧料として有用である。
【0026】
本発明の水溶液フィルムの使用形態として最も好ましいのは、ゲルシートに積層した後に肌に貼付し、液・又はジェル状に溶解した層を形成させて使用する化粧用の水溶性フィルムである。より具体的には、皮膚に貼付する前に水ゲル層との積層したものを調製し、2層積層体として肌に貼付使用することを目的とし、長時間貼付後に剥離した場合でも皮膚に保湿感を提供し、肌に残った液が皮膚上で乾いた際に粉残り粉吹きなどの問題の起きない水溶性フィルムである。
【実施例】
【0027】
以下、具体例をもって本発明を説明する。
【0028】
実施例1〜3、比較例1〜4
表1の配合組成に従って、以下の方法で調製を行なった。
成分(C)のグリセリン、プロピレングリコール、ジグリセリンPOE付加物と成分(D)のポリエチレングリコールを加熱溶解した液に、成分(B)のヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物を分散させ、成分(A)の加工澱粉等をその重量の等量から倍量の水に溶解させたものとを混ぜ合わせ、PEフィルム上に塗工し、乾燥後、25℃、湿度40%でエージングをさせた後、水溶性フィルムの評価を行った。なお、比較例2及び3は室温では粘度が高かったため、50℃に加温をして塗工を行なったが、液の伸展性が悪く塗工性が特に悪かった。
【0029】
なお、これらのフィルム製造時及びフィルムとしての安定性と、水を含む支持体の表層にジェル層を形成してなるシート状組成物での評価については、以下のように行った。それぞれ、乾燥後に所望の塗工厚みとなるようにベーカー式アプリケーターにて塗工し、フィルム塗工性、フィルム形成性、耐ブロッキング性を評価した。
【0030】
(フィルム塗工性)
フィルム塗工性としては、ベーカー式アプリケーターで一定厚に塗工した時に、20wt%〜70wt%の範囲で調製時に粘度が2000〜8000mP・sの範囲にあり、非常に高い粘度を示したりチキソトロピックな粘弾性を示さずに、粘度2000〜3000mP・sと粘度5000〜8000mP・sで一定厚みでムラ無く塗工できるかどうかを以下の基準で評価した。
○:ある粘度幅で、なめらかにムラなく塗工でき、塗工後の状態に変化がない。
△:ある粘度幅で、なめらかにムラなく塗工できるが、塗工後の状態が変化する。
×:ある粘度幅で、なめらかにムラなく塗工できない。
【0031】
(フィルム形成性)
乾燥し冷却後に得られたフィルムの表面及び、ライナーフィルムとともにロールで保管する場合に、割れや剥れがないかどうかを以下の基準で評価した。
○:フィルム表面がなめらかで、巻取り用にロールさせても剥れたり、割れたりしない。
△:フィルム表面がなめらかだが、巻取り用にロールさせるとわずかに剥れたり浮いたりヒビがはいることがある。
×:フィルム表面がなめらかでなく、巻取り用にロールさせると剥れたり、割れたりしてロール保管することができない。
【0032】
(耐ブロッキング性)
ライナーフィルムに塗工した状態で乾燥及び冷却した水溶性フィルムを、A4にカットし重ねて、25℃で相対湿度45%及び、50℃相対湿度45%で調整した容器中で3日間保管し、以下の基準で評価した。
○:ブロッキングを起こさず、1枚ずつはがすことができる。
△:ブロッキングを起こすが、水溶性フィルムが破れたりすることなく剥がすことができる。
×:ブロッキングして剥がすことができない。
【0033】
次に、表2の水ゲルをライナーフィルムつき水溶性フィルムと積層し、水ゲルが架橋するまで一週間保管した後に、3×4cmに切り出して、肌に貼付して水溶性フィルムがジェル層となった部分の評価を行った。結果をあわせて表1に示す。
【0034】
(ジェル層の保湿感)
肌に15分貼付後に、剥がした時にジェル層が肌に転写し、かつ保湿感を感じるかどうかを、以下の基準で評価した。
◎:剥離後に肌に十分に保湿層が転写され、皮膚上でなじませた後もうるおい感がある。
○:剥離後に肌に有意に保湿層が転写され、皮膚上でなじませた後もうるおい感がある。
△:剥離後に肌にわずかに保湿層が転写され、皮膚上でなじませた後もうるおい感はない。
×:剥離後に肌に保湿層が転写されず、皮膚上に何も残った感じがないか、もしくは粘稠物が残る。
【0035】
(ジェル層のベトツキ)
肌に15分貼付後に、剥がしてジェル層が肌に転写しなじませた後のべとつきを、以下の基準で評価した。
◎:剥離後に皮膚上でなじませた後、さらっとしベとつかない。
○:剥離後に皮膚上でなじませた後、べとつかない。
△:剥離後に皮膚上でなじませた後、ややべとつく。
×:剥離後に皮膚上でなじませた後、べとつく。
【0036】
(粉残り/粉吹き)
肌に15分貼付後に、皮膚に転写したジェル層をなじませたのちの状態を、以下の基準で評価した。
◎:剥離後に皮膚上でなじませた後、保湿感があり、白く粉残りや粉吹きがない。
○:剥離後に皮膚上でなじませた後、ほとんど、白く粉残りや粉吹きがない。
△:剥離後に皮膚上でなじませた後、やや白く粉残りや粉吹きがある。
×:剥離後に皮膚上でなじませた後、白く粉残りや粉吹きする。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表2は、カルボキシメチルセルロースをベースとし、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムで架橋した水ゲルであり、室温2日保存でほぼ架橋は終了したゲルとなるものである。配合方法としては、グリセリン、プロピレングリコール中にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムパラオキシ安息香酸メチルを分散させた液と、カルボキシメチルセルロースとヒドロキシエチルセルロースとコハク酸を水に溶解した液を混合し架橋反応をさせることで得ることができる。
2層積層体の製造方法は、このカルボキシメチルセルロースの架橋前のゲルを、水溶性フィルムをPETフィルム上に形成し乾燥させたものとPEフィルムの間に塗工し、水ゲル層の片面にジェル層を形成させることで得ることができる。
【0040】
実施例4〜8、比較例5、6
表3に示す組成のフィルムを表1と同様に製造した。PVP K−90の平均分子量は360000であり、PVP−K30の平均分子量は45000である。調製方法及び、評価方法は実施例1と同様である。
【0041】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均分子量1000〜30万の澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上、
(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸誘導体及びそれらの塩から選ばれる1種以上、
(C)可塑剤
を含有する水溶性フィルム。
【請求項2】
さらに(D)平均分子量1000〜6000のポリアルキレングリコールを含む請求項1記載の水溶性フィルム
【請求項3】
成分(A)が、平均分子量1000〜10万の、エーテル化もしくはエステル化澱粉分解物、エーテル化もしくはエステル化澱粉の酸化物及び/又はその分解物、エーテル化もしくはエステル化澱粉の酸架橋物及び/又はその分解物、澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース並びにポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上を、水溶性フィルム中に30〜85質量%含む請求項1又は2記載の水溶性フィルム。
【請求項4】
成分(A)100重量部に対して、成分(C)を5〜80重量部、かつ成分(C)及び成分(D)の合計量が20〜140重量部である請求項2又は3記載の水溶性フィルム。
【請求項5】
成分(A)100重量部に対し、成分(B)が1重量部以上であり、成分(C)及び成分(D)の合計量を100として成分(B)が5〜60重量部である請求項2〜4のいずれかに記載の水溶性フィルム。
【請求項6】
皮膚に貼付して使用する化粧用水溶性フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の水溶性フィルムと水ゲルからなる化粧用シート状組成物。
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均分子量1000〜30万の澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上、
(B)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸誘導体及びそれらの塩から選ばれる1種以上、
(C)可塑剤
を含有する水溶性フィルム。
【請求項2】
さらに(D)平均分子量1000〜6000のポリアルキレングリコールを含む請求項1記載の水溶性フィルム
【請求項3】
成分(A)が、平均分子量1000〜10万の、エーテル化もしくはエステル化澱粉分解物、エーテル化もしくはエステル化澱粉の酸化物及び/又はその分解物、エーテル化もしくはエステル化澱粉の酸架橋物及び/又はその分解物、澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロース並びにポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上を、水溶性フィルム中に30〜85質量%含む請求項1又は2記載の水溶性フィルム。
【請求項4】
成分(A)100重量部に対して、成分(C)を5〜80重量部、かつ成分(C)及び成分(D)の合計量が20〜140重量部である請求項2又は3記載の水溶性フィルム。
【請求項5】
成分(A)100重量部に対し、成分(B)が1重量部以上であり、成分(C)及び成分(D)の合計量を100として成分(B)が5〜60重量部である請求項2〜4のいずれかに記載の水溶性フィルム。
【請求項6】
皮膚に貼付して使用する化粧用水溶性フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の水溶性フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の水溶性フィルムと水ゲルからなる化粧用シート状組成物。
【公開番号】特開2009−221391(P2009−221391A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68907(P2008−68907)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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