説明

水溶性ベンゾアゼピン化合物及び医薬組成物

【課題】本発明の目的は、トルバプタンの水に対する溶解性が向上し、注射剤としての使用に適した新規なベンゾアゼピン化合物を提供することである。
【解決手段】本発明は、下記一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物またはその塩を提供する。


[式中、Rは、水素原子、保護基を有することのあるヒドロキシ基等を示す。Rは、水素原子またはヒドロキシ保護基を示す。Xは酸素原子または硫黄原子を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾアゼピン化合物及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記式(2)で表されるトルバプタンは、公知の化合物であり、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
【化1】

【0004】
トルバプタンは水利尿作用を有するバソプレッシン拮抗剤として有用であることが知られている(非特許文献1)。しかしながら、トルバプタンは水難溶性であることから、消化管から吸収されにくい、剤形や投与ルートが制限される等の問題点を有している。かかる問題点を解決すべく、トルバプタンを非晶質な固形製剤組成物の形態で投与する等の工夫がなされている(特許文献2)が、トルバプタンの使用にあたっては、依然として剤型や投与ルートが制限されているのが現状である。
【特許文献1】米国特許第5,258,510号明細書(実施例1199)
【特許文献2】特開平11−21241号公報
【非特許文献1】Circulation, 107, pp.2690-2696(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、トルバプタンの水に対する溶解性を向上した新規なベンゾアゼピン化合物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、トルバプタンをリン酸エステル体とすることにより、その水溶解性を著しく向上させ得ることを見出した。
【0007】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記項1〜13に示すベンゾアゼピン化合物及びそれを含む医薬組成物を提供する。
項1.一般式(1)
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、Rは、水素原子、保護基を有することのあるヒドロキシ基、保護基を有することのあるメルカプト基、または保護基を1個もしくは2個有することのあるアミノ基を示す。Rは、水素原子またはヒドロキシ保護基を示す。Xは酸素原子または硫黄原子を示す。]で表されるベンゾアゼピン化合物またはその塩。
項2.Xが酸素原子である項1記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
項3.Rが保護基を有することのあるヒドロキシ基である項1または2記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
項4.Rが水素原子、保護基を有することのあるメルカプト基、または保護基を1個もしくは2個有することのあるアミノ基である項1または2記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
項5.Rがヒドロキシ保護基である項1、2、3及び4のいずれかに記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
項6.Rが水素原子である項1、2、3及び4のいずれかに記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
項7.Xが硫黄原子である項1記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
項8.Xが酸素原子、Rがヒドロキシ基及びRが水素原子である項1記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
項9.項1に記載のベンゾアゼピン化合物またはその薬学的に許容される塩、並びに、薬学的に許容される希釈剤及び/または担体を含む医薬組成物。
項10.血管拡張剤、血圧降下剤、水利尿剤、PKDまたは血小板凝集抑制剤として使用される項9に記載の医薬組成物。
項11.項1に記載のベンゾアゼピン化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する水性溶液組成物。
項12.項1に記載のベンゾアゼピン化合物またはその薬学的に許容される塩、緩衝剤、等張化剤、及び、注射用水を含有し、注射剤の形態である項11に記載の水性溶液組成物。
項13.更に、pH調整剤を含有する項12に記載の水性溶液組成物。
【0011】
本発明において「低級」とは、特に指示がなければ炭素原子1〜6個を示す。
【0012】
「保護基を有することのあるヒドロキシ基」、「保護基を有することのあるメルカプト基」、及び「ヒドロキシ保護基」における保護基としては、低級アルキル基、フェニル(低級)アルキル基、シアノ低級アルキル基、低級アルキルオキシカルボニル低級アルキル基等が挙げられる。
【0013】
「保護基を1個もしくは2個有することのあるアミノ基」における保護基としては、ヒドロキシ基を有することのある低級アルキル基が挙げられる。
【0014】
低級アルキル基、並びに、フェニル(低級)アルキル基、シアノ低級アルキル基、低級アルキルオキシカルボニル低級アルキル基、及びヒドロキシ基を有することのある低級アルキル基における低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル,イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状アルキル基を挙げることができる。
【0015】
好ましいフェニル(低級)アルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、トリチル基等を挙げることができる。
【0016】
好ましいシアノ低級アルキル基としては、例えば、シアノメチル、2−シアノエチル、1−,2−,または3−シアノ−n−プロピル,1−,2−,または3−シアノ−イソプロピル、1−,2−,3−,または4−シアノ−n−ブチル、1−,2−,3−,または4−シアノ−イソブチル、1−,2−,3−,または4−シアノ−tert−ブチル、1−,2−,3−,または4−シアノ−sec−ブチル、1−,2−,3−,4−,または5−シアノ−n−ペンチル、1−,2−,3−,4−,または5−シアノ−イソペンチル、1−,2−,3−,4−,または5−シアノ−ネオペンチル、1−,2−,3−,4−,5−,または6−シアノ−n−ヘキシル、1−,2−,3−,4−,5−,または6−シアノ−イソヘキシル、1−,2−,3−,4−,5−,または6−シアノ−3−メチルペンチル基等の1個〜3個のシアノ基を有する炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状アルキル基を挙げることができる。
【0017】
好ましい低級アルキルオキシカルボニル低級アルキル基としては、例えば、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、n−プロポキシカルボニルメチル、イソプロポキシカルボニルメチル、n−ブトキシカルボニルメチル、イソブトキシカルボニルメチル、n−ペントキシカルボニルメチル、n−ヘキシルオキシカルボニルメチル、2−メトキシカルボニルエチル、3−メトキシカルボニルプロピル、4−メトキシカルボニルブチル、5−メトキシカルボニルペンチル、6−メトキシカルボニルヘキシル基等のアルキルオキシ部分が炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状アルキルオキシ基であり、アルキル部分が炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状アルキル基であるアルキルオキシカルボニルアルキル基を挙げることができる。
【0018】
好ましいヒドロキシ基を有することのある低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1−,2−,または3−ヒドロキシ−n−プロピル,1−,2−,または3−ヒドロキシ−イソプロピル、1−,2−,3−,または4−ヒドロキシ−n−ブチル、1−,2−,3−,または4−ヒドロキシ−イソブチル、1−,2−,3−,または4−ヒドロキシ−tert−ブチル、1−,2−,3−,または4−ヒドロキシ−sec−ブチル、1−,2−,3−,4−,または5−ヒドロキシ−n−ペンチル、1−,2−,3−,4−,または5−ヒドロキシ−イソペンチル、1−,2−,3−,4−,または5−ヒドロキシ−ネオペンチル、1−,2−,3−,4−,5−,または6−ヒドロキシ−n−ヘキシル、1−,2−,3−,4−,5−,または6−ヒドロキシ−イソヘキシル、1−,2−,3−,4−,5−,または6−ヒドロキシ−3−メチルペンチル基等の1個〜3個のヒドロキシ基を有することのある炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状アルキル基を挙げることができる。
【0019】
好ましい保護基を1個もしくは2個有することのあるアミノ基としては、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、n−プロピルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、ジ−n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、ジイソブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、ジ−tert−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、ジ−n−ペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、ジ−n−ヘキシルアミノ、ヒドロキシメチルアミノ、2−ヒドロキシエチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−(2−ヒドロキシエチル)アミノ、3−ヒドロキシプロピルアミノ、4−ヒドロキシブチルアミノ基等の1個〜3個のヒドロキシ基を有することのある炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状アルキル基が1個もしくは2個置換していてもよいアミノ基を挙げることができる。
【0020】
上記一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物のうち、下記化合物またはその塩がより好ましい。
【0021】
Xが酸素原子である場合、
(1) Rがヒドロキシ基及びR1が水素原子である化合物;
(2) Rがヒドロキシ基及びR1がヒドロキシ保護基である化合物;
(3) Rがメルカプト基及びR1がヒドロキシ保護基である化合物;
(4) Rが1個もしくは2個の保護基を有するアミノ基及びR1がヒドロキシ保護基である化合物。
【0022】
Xが硫黄原子である場合、
(1) Rがヒドロキシ基及びR1が水素原子またはヒドロキシ保護基である化合物。
【0023】
Xが酸素原子、Rがヒドロキシ基及びR1が水素原子である化合物、またはその塩が特に好ましい。
【0024】
上記一般式(1)で表されるベンゾアゼピン化合物は、種々の方法により製造され得るが、例えば、下記反応式−1〜7で示される方法等により製造される。
反応式−1
【0025】
【化3】

【0026】
[式中、R及びRは、各々、低級アルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基を示す。また、R及びRは、これらが結合する窒素原子と共に、1個以上の他のヘテロ原子を介しまたは介することなく互いに結合して、飽和または不飽和の5〜8員環を形成してもよい。R1a及びR2aは、同一または異なって、ヒドロキシ保護基を示す。]
低級アルキル基としては、前記と同様のものを挙げることができ、例えば、メチル、エチル、n−プロピル,イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。
【0027】
置換基を有していてもよいフェニル基の置換基としては、前記のような低級アルキル基;例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖状アルコキシ基;及び弗素原子、塩素原子、臭素原子及び沃素原子のようなハロゲン原子が挙げられる。
【0028】
置換基を有していてもよいフェニル基の好ましい例としては、フェニル、2−,3−または4−メチルフェニル、2−,3−または4−クロロフェニル、2−,3−または4−メトキシフェニル基等を挙げることができる。
【0029】
及びRが互いに結合して形成される飽和または不飽和の5〜8員環としては、例えば、モルホリン環等が挙げられる。
【0030】
化合物(4)は、化合物(2)及び化合物(3)を、適当な溶媒中、酸の存在下で反応させることにより製造される。
【0031】
溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸エチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル等が挙げられる。
【0032】
酸としては、例えば、1H−テトラゾール、5−メチルテトラゾール、臭化水素酸ピリジニウム等の緩酸が挙げられる。
【0033】
酸の使用量は、化合物(2)1モルに対して、少なくとも1モル程度、好ましくは1〜10モル程度とするのがよい。
【0034】
化合物(2)と化合物(3)との使用割合は、化合物(2)1モルに対して化合物(3)を通常0.5〜2モル、好ましくは0.7〜1.5モルである。
【0035】
反応温度は、通常−20〜50℃、好ましくは0〜50℃、より好ましくは0℃〜室温である。反応時間は、通常15分〜24時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜3時間である。
【0036】
化合物(1a)は、化合物(4)を適当な溶媒中で酸化剤と反応させることにより製造される。
【0037】
溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル等が挙げられる。
【0038】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素;メタクロル過安息香酸、過酢酸、過マレイン酸等の過酸が挙げられる
酸化剤の使用量は、化合物(4)1モルに対して、少なくとも1モル程度、好ましくは1〜3モル程度とするのがよい。
【0039】
反応温度は通常−100〜50℃、好ましくは−40℃〜室温、より好ましくは−40〜0℃である。反応時間は、通常15分〜24時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは30分〜2時間である。
【0040】
化合物(1b)は、化合物(1a)の保護されたヒドロキシ基を、通常用いられる方法により脱保護することにより、得られる。
【0041】
例えば、ヒドロキシ保護基が低級アルキル基の場合は、通常用いられる加水分解条件下に脱保護することができる。
【0042】
加水分解は、塩基もしくは酸(ルイス酸を含む)の存在下で実施するのが好ましい。
【0043】
塩基としては、公知の無機塩基及び有機塩基を広く使用できる。好適な無機塩基としては、例えばアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム、カルシウム等)、これらの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩等が挙げられる。好適な有機塩基としては、例えば、トリアルキルアミン(例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等)、ピコリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン等が挙げられる。
【0044】
酸としては、公知の有機酸及び無機酸を広く使用できる。好適な有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸;トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のトリハロ酢酸等が挙げられる。好適な無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、塩化水素、臭化水素等が挙げられる。ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素エーテル錯体、三臭化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化第二鉄等が挙げられる。
【0045】
酸としてトリハロ酢酸またはルイス酸を用いる場合には、カチオン捕捉剤(例えばアニソール、フェノール等)の存在下で実施するのが好ましい。
【0046】
塩基または酸の使用量は、加水分解に必要な量である限り、特に制限されない。
【0047】
反応温度は、通常−20〜100℃、好ましくは0〜50℃、より好ましくは0℃〜室温である。反応時間は、通常5分〜24時間、好ましくは15分〜6時間、より好ましくは15分〜3時間である。
【0048】
また、例えば、ヒドロキシ保護基がフェニル(低級)アルキル基の場合は、通常用いられる方法で接触還元することにより脱保護することができる。
【0049】
接触還元に使用される好適な触媒は、白金触媒(例えば白金板、海綿状白金、白金黒、コロイド状白金、酸化白金、白金線等)、パラジウム触媒(例えば海綿状パラジウム、パラジウム黒、酸化パラジウム、パラジウム炭素、パラジウム/硫酸バリウム、パラジウム/炭酸バリウム等)、ニッケル触媒(例えば還元ニッケル、酸化ニッケル、ラネーニッケル等)、コバルト触媒(例えば還元コバルト、ラネーコバルト等)、鉄触媒(例えば還元鉄等)等である。パラジウム炭素触媒を用いる場合には臭化亜鉛の存在下で実施するのが好ましい。
【0050】
接触還元に用いられる触媒の使用量は、特に制限がなく、通常の使用量でよい。
【0051】
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは0〜50℃、より好ましくは室温〜50℃である。反応時間は、通常5分〜24時間時間、好ましくは5分〜3時間、より好ましくは5分〜1時間である。
反応式−2
【0052】
【化4】

【0053】
化合物(2)をオキシ塩化リンと反応させ、次いで加水分解して化合物(1b)が得られる。
【0054】
オキシ塩化リンの使用量は、化合物(2)1モルに対して通常1モル〜大過剰モル、好ましくは1〜5モルである。
【0055】
この反応は、適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下で行われる。
【0056】
オキシ塩化リンとの反応で用いられる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル等が挙げられる。
【0057】
塩基性化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩;ピリジン、イミダゾール、N−エチルジイソプロピルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN),1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0058】
塩基性化合物の使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常少なくとも3モル程度、好ましくは3〜10モル程度である。
【0059】
反応温度は通常−100〜50℃、好ましくは−50℃〜室温、より好ましくは−30℃〜室温である。反応時間は、通常15分〜24時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜3時間である。
【0060】
加水分解は上記の反応液に水を加えるか、反応液を水に注いで達成される。
【0061】
過剰の試薬の分解を伴うために通常は発熱があるので、加水分解は冷却下に行うのが好ましい。反応を完結させるため、初期の反応がおさまってから加熱することが好ましい。
【0062】
反応時間は、通常15分〜24時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜3時間である。
反応式−3
【0063】
【化5】

【0064】
[式中、R1は前記に同じ。]
化合物(2)とジフェニルホスファイトとを反応させ、次いでアルコール(R1OH)と反応させることにより、化合物(1c)が得られる。
【0065】
ジフェニルホスファイトの使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常1モル〜大過剰モル、好ましくは1〜5モルである。アルコール(R1OH)の使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常1モル〜大過剰モル、好ましくは1〜10モルである。
【0066】
上記反応は、適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下に行われる。
【0067】
溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル等が挙げられる。
【0068】
塩基性化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩;ピリジン、イミダゾール、N−エチルジイソプロピルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN),1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0069】
塩基性化合物の使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常少なくとも1モル程度、好ましくは1〜10モル程度である。有機塩基を溶媒として用いることもできる。
【0070】
反応温度は、通常−100〜50℃、好ましくは−50℃〜室温、より好ましくは−30℃〜室温である。反応時間は、通常15分〜24時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜3時間である。
反応式−4
【0071】
【化6】

【0072】
[式中、R1は前記に同じ。]
亜リン酸エステルの酸化は、約1から約3当量の亜リン酸−酸化剤を用い、約0℃から約50℃の範囲の温度で行うことができる。好ましくは、該反応は、約5〜15%過剰の亜リン酸−酸化剤を用い、0℃〜室温で行われる。
【0073】
亜リン酸−酸化剤は、亜リン酸エステルを酸化してリン酸エステルにする試薬である。その例としては、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸等の過酸、水中のヨウ素、臭素、四酸化窒素等が挙げられる。水中のヨウ素が好ましい。
【0074】
この反応は、適当な溶媒中で行われる。
【0075】
溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンのハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル;ピリジン等が挙げられる。
【0076】
反応温度は、通常−100〜50℃、好ましくは−50℃〜室温、より好ましくは−30℃〜室温である。反応時間は、通常15分〜24時間、好ましくは15分〜6時間、より好ましくは15分〜3時間である。
反応式−5
【0077】
【化7】

【0078】
[式中、R1は前記に同じ。R11とR12は、同一または異なって、水素原子またはヒドロキシ基を有することのある低級アルキル基を示す。]
アミン(R11R12NH)及び四塩化炭素を亜リン酸ジエステル(1c)と反応させることにより、ホスホロアミダイト(1e)が得られる。
【0079】
四塩化炭素の代わりに次亜塩素酸ナトリウムを用いることもできる。
【0080】
四塩化炭素の使用量は、化合物(1c)1モルに対して、通常1モル〜大過剰モル、好ましくは1〜5モルである。アミン(R11R12NH)の使用量は、化合物(1c)1モルに対して、通常1モル〜大過剰モル、好ましくは1〜10モルである。
【0081】
この反応は、適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下で行われる。
【0082】
溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル等が挙げられる。
【0083】
塩基性化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩;ピリジン、イミダゾール、N−エチルジイソプロピルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN),1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基またはこれらの混合物を挙げることができる。塩基性化合物の使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常少なくとも1モル程度、好ましくは1〜10モル程度である。有機塩基を溶媒として用いることもできる。
【0084】
反応温度は、通常−100〜50℃、好ましくは−50℃〜室温、より好ましくは−30℃〜室温である。反応時間は、通常1分〜24時間、好ましくは1分〜6時間、より好ましくは1分〜3時間である。
反応式−6
【0085】
【化8】

【0086】
[式中、R1は前記に同じ。]
亜リン酸ジエステル(1c)に硫黄を反応させることにより、ホスホロチオ酸ジエステル(1f)が得られる。
【0087】
硫黄の使用量は、化合物(1c)1モルに対して、通常1モル〜大過剰モル、好ましくは1〜5モルである。
【0088】
この反応は、適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下に行われる。
【0089】
溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル;ピリジン等が挙げられる。
【0090】
塩基性化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属;ナトリウムアミド;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムn−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコラート類;ピリジン、イミダゾール、N−エチルジイソプロピルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN),1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基またはこれらの混合物を挙げることができる。塩基性化合物の使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常少なくとも1モル程度、好ましくは1〜10モル程度である。有機塩基を溶媒として用いることもできる。
【0091】
反応温度は、通常−100〜50℃、好ましくは−50℃〜室温、より好ましくは−30℃〜室温である。反応時間は、通常15分〜24時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜3時間である。
反応式−7
【0092】
【化9】

【0093】
[式中、R1’はヒドロキシ保護基を示す。]
反応式−6で得られる化合物(1f)のうちR1がヒドロキシ保護基を示す化合物(1g)の保護基を除去することにより、化合物(1h)が得られる。
【0094】
例えば、R1がシアノエチル基を示す場合、塩基性化合物を用いることにより保護基を除去することができる。
【0095】
この反応は、適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下で行われる。
【0096】
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;アセトニトリル等、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0097】
塩基性化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属;ナトリウムアミド;ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムn−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコラート類;ピリジン、イミダゾール、N−エチルジイソプロピルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN),1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基またはこれらの混合物を挙げることができる。塩基性化合物の使用量は、化合物(2)1モルに対して、通常少なくとも1モル程度、好ましくは1〜10モル程度である。有機塩基を溶媒として用いることもできる。
【0098】
反応温度は、通常−100〜50℃、好ましくは−50℃〜室温、より好ましくは−30℃〜室温である。反応時間は、通常15分〜24時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜3時間である。
【0099】
前記反応式における化合物(2)、(3)、(4)、(1a)、(1b)、(1c)、(1d)、(1e)、(1f)、(1g)及び(1h)は、適当な塩であってもよい。かかる適当な塩としては、化合物(1)と同様な塩を挙げることができる。
【0100】
上記各反応式で得られる各々の目的化合物は、反応混合物を、例えば、冷却した後、濾過、濃縮、抽出等の単離操作によって粗反応生成物を分離し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作によって、反応混合物から単離精製することができる。
【0101】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、立体異性体、光学異性体及び溶媒和物(水和物、エタノレート等)を包含する。
【0102】
本発明の一般式(1)で表される化合物の塩は、薬学的に許容される塩であって、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩;アンモニウム塩;有機塩基塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エチレンジアミン塩、N、N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩、エタノールアミン塩等)等を挙げることができる。その中でも好ましくは、アルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0103】
このような塩は、本発明の化合物に、医薬的に許容される対応の塩基性化合物を作用させることにより容易に形成することができる。作用させる該塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができる。
【0104】
本発明の化合物は、例えば、バソプレッシン拮抗作用、血管拡張作用、血圧降下作用、肝糖放出抑制作用、メサンギウム細胞増殖抑制作用、水利尿作用、血小板凝集抑制作用等を有している。本発明の化合物は、血管拡張剤、血圧降下剤、水利尿剤、血小板凝集抑制剤として有用であり、高血圧、浮腫(例えば、心性浮腫、肝性浮腫、腎性浮腫、脳性浮腫等)、腹水、心不全(例えば重症心不全等)、腎機能障害、バソプレシン分泌異常症候群(SIADH)、肝硬変、低ナトリウム血症、低カリウム血症、糖尿病、循環不全、多発性嚢胞腎(PKD)、脳梗塞、心筋梗塞等の予防及び治療に有効である。
【0105】
本発明の化合物を医薬として人体に投与する場合、他のバソプレッシン拮抗剤、ACE阻害剤、β遮断剤、利尿剤、アンジオテンシンII拮抗薬(ARB)、ジゴキシン等の薬剤と同時に、または別々に用いてもよい。
【0106】
本発明の化合物は、通常一般的な医薬製剤の形態で用いられる。医薬製剤は、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤及び/または賦形剤を用いて慣用の方法により調製される。
【0107】
本発明の化合物を含有する医薬製剤の形態は、治療目的に応じて適宜選択できる。医薬製剤の形態としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、軟膏剤、顆粒剤等が挙げられる。特に、注射剤、点眼剤等の水性溶液製剤が好ましい。
【0108】
例えば、本発明の化合物を用いて注射剤を調製する場合には、殺菌されかつ血液と等張である液剤、乳剤及び懸濁剤に製剤するのが好ましい。また、本発明の化合物を用いて、これら液剤、乳剤及び懸濁剤の形態に製剤するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用できる。そのような希釈剤としては、例えば水、乳酸水溶液、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。なお、この場合、等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖、マンニトールまたはグリセリン等の等張化剤を医薬製剤中に配合してもよい。また通常のpH調整剤、溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。
【0109】
本発明の化合物を用いた注射剤は、一般式(1)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、緩衝剤、等張化剤、注射用水、及び必要に応じpH調整剤を用いて慣用の方法により調製することができる。
【0110】
緩衝剤としては、例えば、炭酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リンゴ酸塩及び酒石酸塩等が挙げられる。また、これらの緩衝剤を構成する酸および塩基を単独で用いることもできる。
【0111】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物、塩酸等の酸が挙げられる。
【0112】
さらに、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を医薬製剤中に配合してもよい。
【0113】
本発明の一般式(1)で表される化合物またはその塩の、医薬組成物中の含有量は、特に限定されず、広範囲から適宜選択される。その含有量は、通常、医薬組成物中0.01〜70重量%である。
【0114】
上記の医薬組成物の投与方法について特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、患者の症状の程度等に応じた方法で投与される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には経口投与される。また、注射剤の場合には、単独でまたはブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与される。また、注射剤は、必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。
【0115】
本発明の医薬組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択される。通常、有効成分である一般式(1)で表される化合物は、1日あたり体重1kgに対して0.001〜100mg、好ましくは0.001〜50mgを1回〜数回に分けて投与される。
【0116】
上記投与量は、種々の条件で変動するので、上記範囲より少ない投与量で充分な場合もあるし、また上記範囲を超えた投与量が必要な場合もある。
【0117】
本発明で引用した特許、特許出願及び文献は、参考として挿入される。
【発明の効果】
【0118】
本発明の化合物(1)またはその塩は、例えば、水に対する溶解性が著しく優れ、また吸収性に優れている。
【0119】
特に化合物(1b)またはその塩は、例えば、水に対する溶解性が著しく優れ、経口吸収性に優れている。
【0120】
本発明の化合物(1)またはその塩、特に化合物(1b)またはその塩は、人体に投与した際に、活性成分であるトルバプタンを容易に生成させ得る。
【0121】
更に、本発明の化合物(1)またはその塩は、晶析されやすく、操作性に優れている。加えて、本発明の化合物(1)またはその塩は、化学的安定性にも優れている。
【0122】
本発明の化合物(1a)は、化合物(1b)を製造するための原料として好適に使用される。
【0123】
本発明の化合物(1)またはその塩を用いることにより、有用な薬物であるトルバプタンと同等の薬理効果を発現する種々の形態を備えた組成物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0124】
以下の実施例、試験例及び製剤例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0125】
実施例1
【0126】
【化10】

【0127】
トルバプタン(化合物(2))1.0g及び1H−テトラゾール460mgを塩化メチレン30mlに溶解し、該溶液に室温攪拌下、ジベンジルジイソプロピルホスホラミジト1.2gを滴下し、同温度で2時間攪拌した。
【0128】
得られた反応液を−40℃に冷却し、該溶液にメタクロル過安息香酸920mgの塩化メチレン溶液6mlを滴下した。この混合物を、同温度で30分、更に0℃で30分攪拌した。反応混合物をチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和重曹水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた反応混合物を濾過し、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製することにより、化合物(1a−1)のアモルファスフォーム1.5g(収量97.2%)を得た。
NMR(DMSO-d6,100℃)δppm; 9.86(1H, brs), 7.56(1H, s), 7.50-7.10(17H, m), 7.00-6.80(2H, m), 5.60-5.50(1H, m), 5.15-5.00(4H, m), 5.00-2.75(2H, m), 2.36(3H, s), 2.34(3H, s), 2.10-1.70(4H, m)。
【0129】
実施例2
【0130】
【化11】

【0131】
トルバプタン(化合物(2))4.5g及び1H−テトラゾール2.2gを塩化メチレン120mlに溶解し、該溶液に氷冷攪拌下、ジt-ブチルジイソプロピルホスホラミジト4.0gを塩化メチレン10mlに溶解した溶液を滴下した。混合物を次いで室温下で2時間攪拌した。
【0132】
得られた反応混合物を−40℃に冷却し、該溶液にメタクロル過安息香酸4.0gの塩化メチレン溶液20mlを滴下した。次いでこの混合物を、同温度で30分、さらに0℃で40分攪拌した。反応混合物をチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和重曹水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた反応混合物を濾過し、濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製することにより、化合物(1a−2)のアモルファスフォーム3.0g(収量46.7%)を得た。
NMR(DMSO-d6) δppm; 10.50-10.20(1H, m), 8.00-6.50(10H, m), 5.55-5.20(1H, m), 4.90-4.50(1H, m), 2.85-2.60(1H, m), 2.40-2.20(6H, m), 2.20-1.60(4H, m), 1.60-1.30(18H, m)。
【0133】
実施例3
【0134】
【化12】

【0135】
化合物(1a−1)5.3gをエタノール100mlに溶解した。5%パラジウム炭素2gを触媒として用い、常温、常圧下で10分間、該溶液を接触還元した。該溶液から触媒を濾去し、得られた濾液を濃縮した(4.2g)。得られた残渣をメタノール−水より結晶化した。結晶を濾取し、減圧下乾燥(五酸化二リン)することにより、化合物(1b)の白色粉末3.5g(収量88.5%)を得た。
融点: 150〜152℃
NMR(DMSO- d6-D2O,100℃) δppm; 7.50-6.70(10H, m), 5.50-5.40(1H, m), 5.00-2.50 (2H, m), 2.37(6H, s), 2.40-1.50(4H, m)。
【0136】
実施例4
【0137】
【化13】

【0138】
化合物(1a−2)3.0gを塩化メチレン100mlに溶解し、該溶液に、氷冷攪拌下、トリフルオロ酢酸10mlを塩化メチレン5mlに溶解した溶液を滴下した。次いでこの混合物を、同温度で2時間攪拌した。該溶液から溶媒を留去し、得られた残渣を塩化メチレンに再度溶解後、濃縮した。得られた残渣をメタノール−水より結晶化した。結晶を濾取し、減圧下乾燥(五酸化二リン)することにより、化合物(1b)の白色粉末1.9g(収量76.8%)を得た。
【0139】
実施例5
【0140】
【化14】

【0141】
トルバプタン(化合物(2)) 30 g(66 ミリモル)に、1,2−ジメトキシエタン(DME)240 ml及び トリエチルアミン84 ml(0.60モル, 9 当量)を加え、窒素気流下−15℃に冷却した。得られる混合物にオキシ塩化リン(POCl3)19 ml (0.20 モル, 3 当量.)を内温-12℃以下で滴下して加え、その後−12℃で2 時間撹拌した。氷片1 kgに5N-水酸化ナトリウム水溶液200mlを加え、これに前記の反応液を、撹拌しながら少量ずつ加えた。得られる混合物にトルエン500 mlを加え、50℃に加熱し、水層とトルエン層とに分液した。水層に再度トルエン500mlを加え、50 ℃で撹拌後、水層とトルエン層とに分液した。水層を10℃に冷却し、6N-塩酸80mlを加え、酢酸エチル500 mlで2回抽出した。抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過後、濾液を濃縮した。濃縮物を室温で減圧乾燥し、アモルファスの化合物(1b)34 gを得た。
収率:97 %。
【0142】
実施例6
化合物(1b)のカルシウム塩の製造
【0143】
【化15】

【0144】
(1) 化合物(1b)2.6 g (5.0 ミリモル)をイソプロパノール 25 mlに溶解させ、これに室温で5N-水酸化ナトリウム水溶液 2.2 mlを加えた。得られる混合物を減圧濃縮した。残渣に水30mlを加えて固形分を溶解させ、次いでこれに塩化カルシウム0.61 g (5.5 ミリモル)の水溶液を加えた。析出する固体を濾取し、水で洗浄し、60 ℃で温風乾燥し、化合物(1b)のカルシウム塩2.2 gを白色粉末として得た。
収率:78 %
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.3-2.4 ( 10H, m ), 2.8-4.5 ( 2H, m ), 5.2-5.8 ( 1H, m ), 6.4-8.1 ( 10H, m ), 9.0-10.2 ( 1H, m )。
【0145】
(2) 化合物(1b)280mg (0.53ミリモル)をメタノール2ml及び水1mlの混合溶液に溶解させ、次いでこれに水酸化カルシウム43mg(0.58ミリモル)を加えた。この混合物を室温で1時間撹拌した。析出する固体を濾取した。濾物をメタノールに懸濁し、加熱撹拌後、熱時濾過した。濾液を濃縮し、残渣をメタノールから再結晶して、化合物(1b)のカルシウム塩75.4mgを白色粉末として得た。
収率:25%
融点:263-265℃。
【0146】
実施例7
化合物(1b)のマグネシウム塩の製造
【0147】
【化16】

【0148】
(1) 化合物(1b)1.0 g (1.9 ミリモル)をメタノール 15 mlに溶解させ、これに5N-水酸化ナトリウム水溶液 0.76 mlを加え、減圧濃縮した。残渣をメタノール 10 mlに溶解させ、得られる溶液に塩化マグネシウム 0.18 gのメタノール溶液3 mlを室温で加えた。析出する不溶物(NaCl)を濾過して除き、濾液を濃縮した。残渣に水10 mlを加え、加熱撹拌した。撹拌後の混合物を室温まで放冷した。不溶物を濾取し、水で洗浄し、60℃で減圧乾燥し、化合物(1b)のマグネシウム塩400mgを白色粉末として得た。
収率:38%
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.4-2.4 ( 10H, m ), 2.8-4.5 ( 2H, m ), 5.3-5.5 ( 1H, m ), 6.4-7.8 ( 10H, m ), 9.7 ( 1H, br )。
【0149】
(2) 化合物(1b)282mg (0.53ミリモル)をメタノール2mlに溶解させ、氷冷下マグネシウムエトキシド41mg(0.70ミリモル)を加えた。得られる混合物にさらに水酸化マグネシウム36mg(0.58ミリモル)の水懸濁液(0.5ml)及びエタノール2mlを加え、室温で1時間撹拌した。不溶物を濾去し、濾液を一夜放置した。析出する固体を濾取し、これを減圧下に乾燥して、化合物(1b)のマグネシウム塩24.9mgを白色粉末として得た。
収率:11%
融点:250-252℃。
【0150】
実施例8
化合物(1b)の1ナトリウム塩の製造
【0151】
【化17】

【0152】
化合物(1b)266mg (0.5ミリモル)のメタノール溶液(2ml)に氷冷下1N-水酸化ナトリウム水溶液 0.5 ml及び水1mlを加え、得られる混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣をメタノール−水から再結晶して、化合物(1b)の1ナトリウム塩45.2mgを白色粉末として得た。
収率:16%
融点:235-238℃。
【0153】
実施例9
化合物(1b)の2ナトリウム塩の製造
【0154】
【化18】

【0155】
化合物(1b)276mg (0.52ミリモル)のメタノール溶液(2ml)に氷冷下1N-水酸化ナトリウム水溶液 1.0 mlを加え、得られる混合物を5分間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣をアセトン−水から再結晶して、化合物(1b)の2ナトリウム塩221mgを白色粉末として得た。
収率:73%
融点:250-252℃。
【0156】
実施例10
化合物(1b)の2アンモニウム塩の製造
【0157】
【化19】

【0158】
化合物(1b)271mg (0.51ミリモル)のメタノール溶液(2ml)に氷冷下25%アンモニア水1.0 mlを加え、得られる混合物を10分間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣をメタノール−水から再結晶して、化合物(1b)の2アンモニウム塩104mgを白色粉末として得た。
収率:36%。
融点:195-198℃。
【0159】
実施例11
化合物(1b)1カリウム塩の製造
【0160】
【化20】

【0161】
化合物(1b)276mg (0.52ミリモル)のメタノール溶液(2ml)に氷冷下1N-水酸化カリウム水溶液 0.5 mlを加え、得られる混合物を10分間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣をイソプロピルアルコールから再結晶して、化合物(1b)1カリウム塩110.6mgを白色粉末として得た。
収率:37%
融点:200-203℃。
【0162】
実施例12
化合物(1b)2カリウム塩の製造
【0163】
【化21】

【0164】
化合物(1b)276mg (0.52ミリモル)のメタノール溶液(2ml)に氷冷下1N-水酸化カリウム水溶液 1.0 mlを加え、得られる混合物を5分間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えた。不溶物を濾取し、乾燥して、化合物(1b)2カリウム塩273.9mgを白色粉末として得た。
収率:86%
融点:255-265℃(分解)。
【0165】
実施例13
化合物(1b)の亜鉛塩の製造
【0166】
【化22】

【0167】
化合物(1b)1.0 g (1.9 ミリモル)をメタノール 15 mlに溶解させ、この溶液に5N-水酸化ナトリウム水溶液 0.76 mlを加え、減圧下に濃縮した。得られる残渣をメタノール 10 mlに溶解させ、これに塩化亜鉛 259mgのメタノール溶液3 mlを室温で加えた。析出する不溶物(NaCl)を濾去し、濾液を濃縮した。得られる残渣に水10 mlを加え、加熱撹拌した。次いで混合物を室温まで放冷した。不溶物を濾取し、水で洗浄し、60℃で減圧乾燥して、化合物(1b)の亜鉛塩900mgを白色粉末として得た。
収率:80%
融点:235−239℃(分解)
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.3-2.4 ( 10H, m ), 2.8-4.5 ( 2H, m ), 5.3-5.7 ( 1H, m ), 6.6-7.7 ( 10H, m ), 9.7 ( 1H, br )。
【0168】
実施例14
化合物(1b)のエチレンジアミン塩の製造
【0169】
【化23】

【0170】
化合物(1b)600mg (1.1ミリモル)のエタノール溶液(10ml)にエチレンジアミン0.074 ml (1.1ミリモル)を加えた。得られる混合物を減圧下に濃縮し、残渣をイソプロピルアルコールから再結晶して、化合物(1b)のエチレンジアミン塩250mgを白色粉末として得た。
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.5-2.0 ( 3H, m ), 2.1-2.4 ( 7H, m ), 2.77 ( 4H, s ), 2.8-4.3 ( 2H, m ), 5.3-5.5 ( 1H, m ), 6.6-6.9 ( 1H, m ), 6.9-7.2 ( 2H, m ), 7.2-7.5 ( 5H, m ), 7.58 ( 2H, d, J=7.6Hz), 9.80 ( 1H, br )。
【0171】
実施例15
化合物(1b)の2エタノールアミン塩の製造
【0172】
【化24】

【0173】
化合物(1b)600mg (1.1ミリモル)のイソプロピルアルコール溶液(6ml)にエタノールアミン0.14 ml (2.3ミリモル)を加えた。得られる混合物にイソプロピルアルコール6mlを加えて加熱溶解し、イソプロピルアルコールから再結晶して、化合物(1b)の2エタノールアミン塩280mgを白色粉末として得た。
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.4-2.0 ( 3H, m ), 2.2-2.5 ( 7H, m ), 2.75 ( 4H, t, J=5.5 Hz ), 3.52 ( 4H, t, J=5.5Hz ), 2.8-4.3 ( 2H, m ), 5.3-5.5 ( 1H, m ), 6.7-6.9 ( 1H, m ), 6.9-7.2 ( 2H, m ), 7.2-7.4 ( 4H, m ), 7.42 ( 1H, d, J=7.7 Hz ), 7.57 ( 2H, d, J=6.5 Hz ), 7.58 ( 2H, d, J=7.6Hz), 9.80 ( 1H, br )。
【0174】
実施例16
【0175】
【化25】

【0176】
トルバプタン(化合物(2)) 1.0 g(2.2 ミリモル)のピリジン溶液(10 ml)に氷冷下ジフェニルホスファイト1.3 ml(6.6ミリモル)を加えた。得られる混合物を0℃で30分間、次いで室温で30分間撹拌した。反応混合物にエタノール0.58mlを加え、室温で30分間撹拌した。この混合物に1N-塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過後、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=27:73→0:100)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣をアセトニトリル10mlと水10mlの混合溶媒に溶解し、次いで凍結乾燥して、目的化合物450mgを白色無定形固体として得た。
収率:38%
1H-NMR (Toluene-d8,100℃ ) δppm : 1.0-1.1 ( 3H, m ), 1.4-1.9 ( 4H, m ), 2.31 ( 3 H, s ), 2.42 ( 3H, s ), 2.0-4.0 ( 2H, m ), 3.7-4.1 ( 2H, m ), 5.5 ( 0.5H, d, J=4.8 Hz ), 6.4-7.5 ( 10H, m ), 7.8 ( 0.5H, d, J=8.6 Hz )。
【0177】
実施例17
【0178】
【化26】

【0179】
トルバプタン(化合物(2))10.0 g(22 ミリモル)のピリジン溶液(50 ml)を氷冷し、これに窒素雰囲気下ジフェニルホスファイト13 ml(66ミリモル)をゆっくり加えた。得られる混合物を室温で30分間撹拌した。該混合物にメタノール4.5mlを加え、室温で30分間撹拌した。氷冷下、得られる反応混合物を2N-塩酸325mlに加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0→93:7)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、目的化合物10.5gを白色無定形固体として得た。
収率:91%
1H-NMR ( Toluene-d8,100℃ ) δppm : 1.5-2.0 ( 4H, m ), 2.41 ( 3H, s ), 2.49 ( 3H, s ), 3.0-4.2 ( 2H, m ), 5.5 ( 0.5H, d, J=4.8 Hz ), 5.5-5.8 ( 1H, m ), 6.6 ( 1H, d, J=8.3 Hz ), 6.7-6.9 ( 1H, m ), 6.9-7.2 (6H, m ), 7.3-7.5 ( 2H, m ), 7.81, 7.84 (0.5H, d, J=8.1 Hz )。
【0180】
実施例18
【0181】
【化27】

【0182】
実施例17の目的化合物500mg(0.95ミリモル)のピリジン溶液(5ml)に水0.1ml及びヨウ素254mg(1.0ミリモル)を加え、得られる混合物を室温で30分間撹拌した。該混合物にトリエチルアミン2mlを加え、これを減圧下に濃縮した。残渣にトルエン20mlを加えて減圧下に濃縮した。残渣に水を加え、酢酸エチル及びジエチルエーテルの混合溶媒で洗浄した。水層に1N−塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=90:10→50:50)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣を水30mlに溶解した。得られる溶液をセライト濾過し、濾液を凍結乾燥して、目的化合物140mgを白色無定形固体として得た。
1H-NMR ( Toluene-d8,100℃ ) δppm : 1.4-2.0 ( 4H, m ), 2.33 ( 3 H, s ), 2.34 ( 3H, s ), 2.5-4.5 ( 5H, m ), 5.4-5.7 ( 2H, m ), 6.5 ( 2H, d, J=7.9 Hz ), 6.7 ( 2H, d, J=7.9 Hz ), 6.8-7.2 ( 5H, m ), 7.2-7.4 ( 2H, m ), 7.55 (1H, s )。
【0183】
実施例19
【0184】
【化28】

【0185】
実施例17の目的化合物500mg(0.9ミリモル)のピリジン溶液(5ml)に硫黄64mg(1.0ミリモル)を加え、得られる混合物を室温で2時間撹拌した。該混合物にトリエチルアミン1mlを加え、これを減圧下に濃縮した。得られる残渣にトルエン10mlを加え、減圧下に濃縮した。残渣に水を加えて溶解し、セライト濾過した。濾液に1N−塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣に水を加え、不溶物を濾取し、乾燥して、目的化合物300mgを白色粉末として得た。
1H-NMR ( Toluene-d8,100℃ ) δppm : 1.1-2.0 ( 4H, m ), 2.2-2.5 ( 6H, m ), 3.5 ( 3H, dd, J=13.9, 14.9 Hz), 2.5-5.0 ( 2H, m ), 3.5-5.7 ( 1H, m ), 6.4-7.5 ( 10H, m )。
【0186】
実施例20
【0187】
【化29】

【0188】
実施例17の目的化合物500mg(0.95ミリモル)のアセトニトリル溶液(5ml)に、水0.5ml、四塩化炭素0.5ml、トリエチルアミン0.5ml及びエタノールアミン0.072ml(1.2ミリモル)を加え、得られる混合物を室温で10分間撹拌した。該混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0→80:20)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、目的化合物540mgを白色無定形固体として得た。
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.6-2.3 ( 4H, m ), 2.36 (6H, s ), 2.7-3.1 ( 2H, m ), 2.5-4.5 ( 2H, m ), 3.3-3.5 ( 2H, m ), 3.65 ( 3H, dd, J=9.6, 11.2 Hz ), 4.0-4.3 ( 1H, m ), 4.4-4.8 ( 1H, m ), 5.3-5.7 ( 1H, m ), 6.7-7.1 ( 2H, m ), 7.1-7.5 ( 5H, m ), 7.57 ( 1H, s), 9.76 ( 1H, s)。
【0189】
実施例21
【0190】
【化30】

【0191】
実施例17の目的化合物500mg(0.95ミリモル)のアセトニトリル溶液(5ml)に、水0.5ml、四塩化炭素0.5ml、トリエチルアミン0.5ml及びメチルアミン(40%メタノール溶液)0.119ml(1.2ミリモル)を加え、得られる混合物を室温で10分間撹拌した。該混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=94:6→85:15)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、目的化合物250mgを白色無定形固体として得た。
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.7-2.3 ( 4H, m ), 2.37 (6H, s ), 2.4-2.6 ( 3H, m ), 2.8-4.3 ( 2H, m ), 3.63 ( 3H, t, J=10.7 Hz ), 4.4-4.8 ( 1H, m ), 5.3-5.6 ( 1H, m ), 6.6-7.1 ( 2H, m ), 7.1-7.5 ( 5H, m ), 7.58 ( 1H, s), 9.81 ( 1H, s)。
【0192】
実施例22
【0193】
【化31】

【0194】
実施例17の目的化合物500mg(0.95ミリモル)のアセトニトリル溶液(5ml)に、水0.5ml、四塩化炭素0.5ml、トリエチルアミン0.5ml及びジエタノールアミン0.115ml(1.2ミリモル)を加え、得られる混合物を室温で10分間撹拌した。該混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=88:12→70:30)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣を含水メタノールから再結晶して、目的化合物250mgを白色粉末として得た。
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.6-2.2 ( 4H, m ), 2.37 (6H, s ), 3.0-3.2 ( 4H, m ), 3.5-3.7 ( 7H, m ), 2.8-4.3 ( 2H, m ), 4.1-4.4 ( 1H, m ), 5.3-5.7 ( 1H, m ), 6.7-7.1 ( 2H, m ), 7.1-7.5 ( 7H, m ), 7.5-7.7 ( 1H, m ), 9.80 ( 1H, br )。
【0195】
実施例23
【0196】
【化32】

【0197】
トルバプタン(化合物(2))3.0 g(6.7ミリモル)のピリジン溶液(10ml)にジフェニルホスファイト3.8mg(20ミリモル)を加え、得られる混合物を室温で1時間撹拌した。該混合物に水2mlを加え、室温で30分間撹拌した。得られる反応混合物を減圧下に濃縮し、残渣に1N-塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0→50:50)で精製した。精製物を減圧下に濃縮した。残渣を水に溶解し、1N-塩酸を加えて析出した不溶物を濾取し、乾燥して、目的化合物0.83gを白色粉末として得た。
収率:24%
1H-NMR ( DMSO-d6 ,100℃) δppm : 1.7-2.2 ( 4H, m ), 2.35 ( 3H, s ), 2.36 ( 3H, s ), 2.8-4.3 ( 2H, m ), 5.4-5.6 ( 1H, m ), 5.8 ( 0.5H, br ), 6.7-7.4 ( 8H, m ), 7.47 ( 1H, d, J=2.3 Hz ), 7.55 ( 1H, s ), 9.79 ( 1H, br )。
【0198】
実施例24
【0199】
【化33】

【0200】
窒素気流下、テトラヒドロフラン(THF)(29ml)に三塩化リン2.9mlを加え、得られる混合物を氷冷し、これにトリエチルアミン6.1ml(44ミリモル)を加えた。該混合物を氷−メタノール浴で冷却し、これにトルバプタン(化合物(2))10.0g(22ミリモル)のTHF溶液(120ml)を内温−10℃以下で滴下して加え、同温度で2時間撹拌した。得られる反応混合物に1N-水酸化ナトリウム水溶液130mlを内温0℃以下で滴下して加え、さらに水200mlを加え、トルエンで2回洗浄した。得られる水溶液を氷−メタノール浴で冷却し、これに1N-HClを内温0℃以下で滴下して加え、これを酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮して、目的化合物6.8gを白色無定形固体として得た。
収率:60%。
【0201】
実施例25
【0202】
【化34】

【0203】
トルバプタン(化合物(2))3.0 g(6.7ミリモル)のピリジン溶液(10 ml)にジフェニルホスファイト3.8 ml(20ミリモル)を加え、得られる混合物を室温で1時間撹拌した。該混合物にグリコール酸メチル5.2ml(66.6ミリモル)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水50mlを加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を1N−塩酸で2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=50:50→0:100)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、目的化合物0.79gを白色無定形固体として得た。
収率:20%
1H-NMR ( Toluene-d8,100℃ ) δppm : 1.6-2.2 ( 4H, m ), 2.51 ( 3H, s ), 2.60 ( 3H, s ), 3.2-4.4 ( 2H, m ), 3.53 ( 3H, s ), 4.43 ( 1H, s ), 4.47 ( 1H, s ), 5.87 ( 0.5H, s ), 5.9-6.1 ( 1H, m ), 6.6-6.8 ( 1H, m ), 6.8-7.0 ( 2H, m ), 7.0-7.4 ( 5H, m ), 7.48 ( 1H, s ), 7.63 ( 1H, s ), 8.27 ( 0.5H, s )。
【0204】
実施例26
【0205】
【化35】

【0206】
実施例25の目的化合物0.79g(1.35ミリモル)のピリジン溶液(7.9ml)に水0.8mlを加えた。得られる混合物に、氷冷下、ヨウ素0.34g(2.7ミリモル)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に1N−塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣を水に溶解し、凍結乾燥して、目的化合物80mgを白色無定形固体として得た。
収率:9.9%
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.7-2.3 ( 4H, m ), 2.35 ( 3H, s ), 2.36 ( 3H, s ), 2.8-4.3 ( 2H, m ), 4.49 ( 2H, dd, J=1.7, 10.1 Hz ), 5.4-5.6 ( 1H, m ), 6.7-7.1 ( 2H, m ), 7.1-7.5 ( 7H, m ), 7.54 ( 1H, s ), 9.79 ( 1H, br )。
【0207】
実施例27
【0208】
【化36】

【0209】
ジフェニルホスファイト3.8ml(20ミリモル)のピリジン溶液(15ml)にトルバプタン(化合物(2))3.0 g(6.7ミリモル)を少量ずつ加え、得られる混合物を室温で0.5時間撹拌した。該混合物に3−ヒドロキシプロピオニトリル2.8ml(40ミリモル)を加え、室温で0.5時間撹拌した。得られる反応混合物に1N-塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0→10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、目的化合物2.8gを白色無定形固体として得た。
収率:75%
1H-NMR ( Toluene-d8,100℃ ) δppm : 1.4-2.0 ( 6H, m ), 2.33 ( 3H, s ), 2.40 ( 3H, s ), 3.1-3.8 ( 4H, m ), 5.40 ( 0.5H, d, J=3.1Hz ), 5.3-5.4 ( 1H, m ), 6.5-6.7 ( 1H, m ), 6.7-6.9 ( 1H, m ), 6.9-7.2 ( 6H, m ), 7.2-7.5 ( 2H, m ), 7.76 ( 0.5H, d, J=8.5 Hz )。
【0210】
実施例28
【0211】
【化37】

【0212】
実施例27の目的化合物1.0g(1.8ミリモル)のピリジン溶液(10ml)に硫黄0.115g(3.6ミリモル)を加え、得られる混合物を室温で2時間撹拌した。該混合物に1N−塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0→85:15)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、目的化合物0.91gを白色無定形固体として得た。
収率:85%
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃) δppm : 1.6-1.9 ( 3H, m ), 2.0-2.3 ( 1H, m ), 2.10 ( 3H, m ), 2.36 ( 6H, s ), 2.3-4.2 ( 2H, m ), 2.7-2.8 ( 2H, m ), 3.9-4.2 ( 2H, m ), 5.5-5.8 ( 1H, m ), 6.7-6.9 ( 1H, m ), 7.0-7.4 ( 7H, m ), 7.4-7.5 ( 1H, m ), 7.56 ( 1H, s ), 7.7-7.8 ( 0.3H, m ), 8.5-8.6 ( m, 0.7H ), 9.76 ( 1H, br )。
【0213】
実施例29
【0214】
【化38】

【0215】
実施例28の目的化合物300mg(0.5ミリモル)を28%アンモニア水5mlに加え、得られる混合物を室温で3日間撹拌した。該混合物に1N−塩酸を加えた。析出する固体を濾取し、乾燥して、目的化合物100mgを白色粉末として得た。
収率:37%
1H-NMR ( Pyridine-d5-D2O,90℃ ) δppm : 1.6-2.4 ( 4H, m ), 2.43 ( 3H, s ), 2.53 ( 3H, s ), 2.8-4.3 ( 2H, m ), 5.1-5.4 ( 1H, m ), 6.8-7.3 ( 6H, m ), 7.4-7.7 ( 2H, m ), 7.7-8.1 ( 2H, m )。
【0216】
実施例30
【0217】
【化39】

【0218】
窒素気流下、テトラヒドロフラン(THF)(5ml)に、オキシ塩化リン0.62ml(6.6ミリモル)及びトリエチルアミン0.92ml(6.6ミリモル)を加えた。得られる混合物を氷−メタノール浴で冷却し、これにトルバプタン(化合物(2)) 1.0g(2.2ミリモル)のTHF溶液(10ml)を滴下して加え、同温度で30分間撹拌した。該混合物にトリエチルアミン2.8ml(20ミリモル)及びメタノール1.1ml(26.4ミリモル)を加え、30分間撹拌した。得られる反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濾液を濃縮した。得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0→80:20)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣を含水メタノールから再結晶して、目的化合物400mgを白色粉末として得た。
収率:33%
1H-NMR ( DMSO-d6,100℃ ) δppm : 1.7-2.2 ( 4H, m ), 2.36 ( 6H, s ), 2.8-4.3 ( 2H, m ), 3.71 ( 6H, dd, J=10.2, 11.1Hz ), 5.5-5.6 ( 1H, m ), 6.8-7.1 ( 2H, m ), 7.1-7.5 ( 7H, m ), 7.58 ( 1H, s ), 9.80 ( 1H, br )。
【0219】
試験例1
化合物(1b)の溶解度
0.1Nリン酸ナトリウム緩衝液(pH5、pH6、pH7、pH8、pH9、またはpH10)、0.1N Tris/HCl緩衝液(pH8またはpH9)、0.1N炭酸水素ナトリウム/HCl緩衝液(pH8)、または0.1Nクエン酸ナトリウム緩衝液(pH8)中に、実施例3または4で得られた化合物(1b)を過剰量加え、室温で16日間振とうした。試験化合物を約6〜8w/v%以上加えた後も、溶解する場合は、それ以上の試験化合物の添加は行わなかった。
【0220】
これらの溶液を0.45μmのフィルターで濾過後、下記のHPLC条件を用いて、絶対検量線法で化合物(1b)の溶解度を測定した。
HPLC条件;
検出:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:YMC (ODS) AM-302 (4.6×150mm)
カラム温度:25℃付近の一定温度
溶出液: アセトニトリル:水:リン酸混液=450/550/1
流量:1ml/min
注入量:10μl
【0221】
【表1】

【0222】
試験例2
化合物(1)の塩の溶解度
試験化合物適量を試験管に入れ、水2.5mlを加える。37℃で30分間振とう後、0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、この濾液0.5mlを正確に量り、移動相を加えて正確に50mlとし、試料溶液とする(希釈倍率:100倍)。別にフリー体標準品約5mgを正確に量り、アセトニトリルを加えて正確に50mlとする。この液2mlを正確に量り、移動相を加えて正確に20mlとし、標準溶液とする(10μg/ml相当)。試料溶液及び標準溶液20μlにつき、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、試料溶液及び標準溶液のピーク面積At及びAsを求める。
【0223】
【数1】

【0224】
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(検出波長:254nm)
カラム:TOSOH TSKgel ODS-80Ts (0.46cm×15cm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸=500/500/1
流量:1ml/min
【0225】
【表2】

【0226】
試験例3
トルバプタンの溶解度
ブリトン−ロビンソン緩衝液(pH2、pH7、またはpH12)、または精製水中に、トルバプタンを過剰量加え、25℃±1℃で4時間振とうした。この溶液をフィルター濾過後、HPLCを用いて、絶対検量線法でトルバプタンの溶解度を定量した。
【0227】
【表3】

【0228】
試験例4
化合物(1b)の溶液を雌性ラットの尾静脈投与後における血清中のトルバプタン濃度
実験方法
化合物(1b)の溶液(トルバプタンに換算して1mg/ml)を調製した。
【0229】
【表4】

【0230】
調製方法
リン酸二水素ナトリウム・二水和物79mg及びマンニトール5gを注射用水約90mlに溶解し、これに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pH7の溶液を調製した。この溶液に、トルバプタン100mgに相当する化合物(1b)を溶解させ、これに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを7に調整した。得られた溶液に注射用水を加えて100mlにし、0.2μmのフィルターで無菌濾過を行うことにより、化合物(1b)溶液(トルバプタンに換算して1mg/ml)を調製した。
【0231】
この溶液を雌性ラットの尾静脈より、トルバプタンに換算して1mg/kgの用量で急速投与した。経時的に、軽度エチルエーテル麻酔下、頚静脈より採血を行い、血清中のトルバプタン濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【0232】
結果を図1に示す。
【0233】
化合物(1b)の溶液を雌性ラットに静脈内投与後、5分後からトルバプタンが検出された。このことは、化合物(1b)は、ラット体内でトルバプタンに速やかに加水分解されることを示している。
【0234】
試験例5
化合物(1b)の溶液を雌性ラットに経口投与した後における血清中のトルバプタン濃度
実験方法
化合物(1b)の溶液(トルバプタンに換算して0.4mg/ml)を調製した。
【0235】
【表5】

【0236】
調製方法
炭酸水素ナトリウム1gを注射用水約400mlに溶解し、これに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pH9.0に調整後、注射用水を添加して0.2%炭酸水素ナトリウム溶液500mlを調製した。この0.2%炭酸水素ナトリウム溶液約40mlに、1N水酸化ナトリウム溶液を89μl及びトルバプタン20mgに相当する化合物(1b)を加え、溶解させ、さらに0.2%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて50mlに調整することで、化合物(1b)溶液(トルバプタンに換算して0.4mg/ml)を調製した。この溶液のpHは9.1であった。この溶液を、以下「溶液A」という。
【0237】
トルバプタンとして60mgに相当するトルバプタンのスプレードライ品(日本特許公開1999-21241号公報の実施例3と同様にして調製)を注射用水50mlに陶製乳鉢内で懸濁させた。この懸濁液を注射用水で3倍希釈し、トルバプタンとして0.4mg/mlに相当するスプレードライ品懸濁液を調製した。この懸濁液を、以下「懸濁液B」という。
【0238】
溶液A及び懸濁液Bの経口吸収特性について検討するために、以下の試験を行った。実験動物として約18時間絶食したWistar系雌性ラット(体重約160g)を用いた。溶液A及び懸濁液Bを2.5ml/kgの用量(これはトルバプタンに換算して1mg/kgの用量)で経口投与用ゾンデを用いて強制的に経口投与した。投与後、経時的に、軽度エチルエーテル麻酔下、頚静脈より採血を行い、血清中のトルバプタン濃度をUPLC-MS/MS(Waters)を用いて測定した。
【0239】
得られた結果を図2及び表6に示す。図2は、溶液A及び懸濁液Bを経口投与した後の血清中のトルバプタン濃度の推移を示す(n=4)。表6には、薬物動態学的パラメータの平均値を示す(n=4)。なお、表6中の各パラメータは次の意味を示す。
AUC8hr:投与後8時間までの血清中濃度−時間曲線下面積(ng・hr/ml)
AUC:投与後無限大時間までの血清中濃度−時間曲線下面積(ng・hr/ml)
Cmax:最高血清中濃度(ng/ml)
Tmax:最高血清中濃度到達時間(hr)
この結果、化合物(1b)の溶液(溶液A)では、トルバプタンのスプレードライ懸濁液(懸濁液B)に比して最高血清中濃度到達時間が短くなり、最高血清中濃度(Cmax)及び血清中濃度−時間曲線下面積(AUC8hr, AUC)が共に増大することが確認された。
【0240】
【表6】

【0241】
以上の結果から、本発明の化合物、特に化合物(1b)は、生体に経口投与した際に、従来の非晶質化による吸収性の改善よりもさらに吸収性が向上し、トリバプタンのバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が改善されることが明らかとなった。
【0242】
製剤例1
リン酸二水素ナトリウム・二水和物79mg及びマンニトール5gを注射用水約90mlに溶解し、これに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pH7の溶液を調製した。この溶液に、トルバプタン100mgに相当する化合物(1b)を溶解させ、これに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを7に調整した。得られた溶液に注射用水を加えて100mlにし、0.2μmのフィルターで無菌ろ過を行うことにより、化合物(1b)(トルバプタンに換算して1mg/ml)を含有する、本発明の注射剤を調製した。
【0243】
製剤例2
リン酸二水素ナトリウム・二水和物79mg及びマンニトール5gを注射用水約90mlに溶解し、これに水酸化ナトリウム溶液を添加し、pH7.5の溶液を調製した。その溶液に、トルバプタン10mgに相当する化合物(1b)を溶解させた。得られた溶液に注射用水を加えて100mlにし、0.2μmのフィルターで無菌ろ過を行うことにより、化合物(1b)(トルバプタンに換算して0.1mg/ml)を含有する、本発明の注射剤を調製した。
【0244】
製剤例3
リン酸三ナトリウム・12水和物380mg及びマンニトール4gを注射用水約90mlに溶解した。得られた溶液に、トルバプタン100mg、300mgまたは1000mgに相当する化合物(1b)を溶解させた。なお、トルバプタン1000mgに相当する化合物(1b)を溶解させる場合、その溶解性を高めるために水酸化ナトリウム溶液を添加した。得られた溶液のpHを水酸化ナトリウムまたは塩酸で8〜9に調整し、注射用水を加えて100mlにした。得られた溶液を0.2μmのフィルターで無菌濾過することにより、化合物(1b)(トルバプタンに換算して1mg/ml、3mg/mlまたは10mg/ml)を含有する、本発明の注射剤を調製した。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1は、化合物(1b)の溶液を雌性ラットの尾静脈より1mg/kg急速投与後における血清中のトルバプタン濃度の推移を示すグラフである。
【図2】図2は、化合物(1b)の溶液を雌性ラットに1mg/kg経口投与した後における血清中トルバプタン濃度の推移を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは、水素原子、保護基を有することのあるヒドロキシ基、保護基を有することのあるメルカプト基、または保護基を1個もしくは2個有することのあるアミノ基を示す。Rは、水素原子またはヒドロキシ保護基を示す。Xは酸素原子または硫黄原子を示す。]
で表されるベンゾアゼピン化合物またはその塩。
【請求項2】
Xが酸素原子である請求項1記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
【請求項3】
Rが保護基を有することのあるヒドロキシ基である請求項1または2記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
【請求項4】
Rが水素原子、保護基を有することのあるメルカプト基、または保護基を1個もしくは2個有することのあるアミノ基である請求項1または2記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
【請求項5】
Rがヒドロキシ保護基である請求項1、2、3及び4のいずれかに記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
【請求項6】
Rが水素原子である請求項1、2、3及び4のいずれかに記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
【請求項7】
Xが硫黄原子である請求項1記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
【請求項8】
Xが酸素原子、Rがヒドロキシ基及びRが水素原子である請求項1記載のベンゾアゼピン化合物またはその塩。
【請求項9】
請求項1に記載のベンゾアゼピン化合物またはその薬学的に許容される塩、並びに、薬学的に許容される希釈剤及び/または担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
血管拡張剤、血圧降下剤、水利尿剤、PKDまたは血小板凝集抑制剤として使用される請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のベンゾアゼピン化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する水性溶液組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のベンゾアゼピン化合物またはその薬学的に許容される塩、緩衝剤、等張化剤、及び、注射用水を含有し、注射剤の形態である請求項11に記載の水性溶液組成物。
【請求項13】
更に、pH調整剤を含有する請求項12に記載の水性溶液組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−521397(P2009−521397A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530267(P2008−530267)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/JP2006/326311
【国際公開番号】WO2007/074915
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】