説明

水溶性ポリマーの製造方法

【課題】不都合なエマルション化が惹起されず、均一で流動性に優れる(共)重合体粒子が得られるように改良された水溶性ポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】疎水性有機溶媒と乳化剤とを含む分散媒中にN−ビニルカルボン酸アミド又はこれと他の共重合成分を含む単量体水溶液を滴下し、重合開始剤の存在下に懸濁重合させて(共)重合体粒子のスラリーを得る重合工程、得られた(共)重合体粒子のスラリーに酸を添加して変性する変性工程を包含する水溶性ポリマーの製造方法において、疎水性有機溶媒に対して、0.5〜3.0質量%の乳化剤を使用して上記の重合を開始し、単量体水溶液の滴下量が80質量%に至った後であって変性工程に至るまでの間において、疎水性有機溶媒に対して、0.1〜3.0質量%の乳化剤を追添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ポリマーの製造方法に関し、詳しくは、ポリビニルアミン又はポリアミジンから成るスラリー状又は粒状の水溶性ポリマーの製造方法に関する。ポリビニルアミン及びポリアミジンは、凝集剤、製紙用薬剤、繊維処理剤、塗料添加剤などとして広く利用されている有用な物質である。なお、以下の説明において、水溶性ポリマーの用語は、ポリビニルアミン又はポリアミジンを意味するものとする。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアミンはN−ビニルカルボン酸アミドを重合した後に加水分解することにより得られ、また、ポリアミジンはN−ビニルカルボン酸アミド及び(メタ)アクリロニトリルを共重合した後に加水分解およびアミジン化することによって得られる。なお、以下の説明において、上記の加水分解またはこれとアミジン化をまとめて「変性」と総称する。
【0003】
上記の(共)重合法としては、水溶液重合や断熱重合の他、(逆相)懸濁重合が知られている。この懸濁重合は、(共)重合体粒子を得る方法であり、疎水性有機溶媒中、乳化剤の存在下、単量体および重合開始剤を含む水溶液を懸濁させて重合する方法である。
【0004】
水溶性ポリマーを得るための変性方法としては、懸濁重合後の反応液に酸を導入する方法が知られている。そして、粒状の水溶性ポリマーは、変性で得られた水溶性ポリマースラリー(懸濁液)を(共沸)蒸留脱水し、疎水性有機溶媒を分離し、更に、回収した水溶性ポリマーを乾燥することにより得られる(特許文献1〜6)。
【0005】
ところで、懸濁重合において、乳化剤の使用量は、(共)重合体粒子の粒径や懸濁のエマルション化に影響を及ぼすが、乳化剤の使用量を含めた使用態様については、未だ十分に検討されていないようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−86115号公報
【特許文献2】特開平5−86127号公報
【特許文献3】特開平5−97931号公報
【特許文献4】特開平5−125117号公報
【特許文献5】特開平5−255565号公報
【特許文献6】特開平6−329718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、乳化剤の使用量を含めた使用態様を改良することにより、不都合なエマルション化が惹起されず、均一で流動性に優れる(共)重合体粒子が得られるように改良された水溶性ポリマーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、疎水性有機溶媒と乳化剤とを含む分散媒中にN−ビニルカルボン酸アミド又はこれと他の共重合成分を含む単量体水溶液を滴下し、重合開始剤の存在下に懸濁重合させて(共)重合体粒子のスラリーを得る重合工程、得られた(共)重合体粒子のスラリーに酸を添加して変性する変性工程を包含する水溶性ポリマーの製造方法において、疎水性有機溶媒に対して、0.5〜3.0質量%の乳化剤を使用して上記の重合を開始し、単量体水溶液の滴下量が80質量%に至った後であって変性工程に至るまでの間において、疎水性有機溶媒に対して、0.1〜3.0質量%の乳化剤を追添加することを特徴とする水溶性ポリマーの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不都合なエマルション化を惹起せず、均一で流動性に優れる(共)重合体粒子が得られるように改良された水溶性ポリマーの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
<(共)重合>
本発明においては、疎水性有機溶媒と乳化剤とを含む分散媒中にN−ビニルカルボン酸アミド又はこれと他の共重合成分を含む単量体水溶液を滴下し、重合開始剤の存在下に懸濁重合させて(共)重合体粒子のスラリーを得る。
【0012】
疎水性有機溶媒としては、基本的に水に難溶性で且つ重合反応に不活性であれば、如何なるものも使用できる。その一例を挙げれば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環状炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。水と共沸する溶媒(共沸脱水溶媒)を選択するならば、後述の蒸留脱水工程を有利に行うことが出来る。上記の列挙した疎水性有機溶媒は何れも共沸脱水溶媒である。疎水性有機溶媒と後述の単量体水溶液の量比(容量比)は、通常10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5である。
【0013】
乳化剤としては、通常、W/O(油中水滴)型乳化が可能な界面活性剤が使用される。斯かる界面活性剤としては、HLB(Hydrophilic Lipophilic Balance)が通常9〜20、好ましくは12〜19のノニオン系界面活性剤が好適であり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、モリグリセリド、ソルビトールアルキルエステル、スクロースアルキルエステル等であり、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。具体的には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート等の化合物が例示される。乳化剤を使用量は後述する。
【0014】
本発明で使用するN−ビニルカルボン酸アミドとしては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピルアミド等が例示される。これらの中では、N−ビニルホルムアミド(CH=CHNHCHO)は、重合性が高くて高分子量重合体が得られ易いこと、加水分解によるポリビニルアミンへの変換が容易なこと等から好ましい。N−ビニルカルボン酸アミドは、単独重合させてもエチレン性不飽和結合を有する任意の単量体と共重合させてもよい。
【0015】
共重合させ得る単量体としては、(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びその塩あるいは4級化物、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びその塩あるいは4級化物、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びその塩あるいはその4級化物、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル等が例示される。
【0016】
ポリビニルアミンを製造する際、単量体組成物中のN−ビニルホルムアミドの含有割合は、通常50モル%以上、好ましくは90〜100モル%である。
【0017】
一方、ポリアミジンを製造する際はN−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルとの共重合が行われる。N−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリロニトリルとのモル比は、後述するアミジン化反応の観点から、通常20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30である。
【0018】
上記の単量体は水溶液として使用され、その濃度は、通常20〜80重量%、好ましくは50〜80重量%、更に好ましくは60〜80重量%である。単量体水溶液は、回分仕込みでも連続滴下仕込みでもよい。また、分散媒と単量体水溶液の量比(容量比)は、通常10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5である。
【0019】
重合開始剤としては、一般的なラジカル重合開始剤を使用することが出来るが、アゾ化合物が好ましい。特に好ましいラジカル重合開始剤は水溶性のアゾ化合物であり、その具体例としては、2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパンの塩酸塩、硫酸塩および酢酸塩、アゾビス−N,N′−ジメチレンイソブチルアミジンの塩酸塩、硫酸塩および酢酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩などが例示される。ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体に対し、重量基準として、通常100〜10000ppm、好ましくは500〜5000ppmである。ラジカル重合開始剤は単量体水溶液に溶解して使用される。重合開始剤は、単量体水溶液の滴下に先立って分散媒中に添加しても、単量体水溶液と一緒に分散媒中に滴下してもよい。
【0020】
本発明においては、緩衝液などの重合安定剤を使用してもよい。重合安定剤としては、塩化アンモニウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。重合安定剤の使用量は、単量体に対し、通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%である。
【0021】
重合温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃である。pHは通常5〜9である。pHがこの範囲を外れると、N−ビニルカルボン酸アミド、特にN−ビニルホルムアミドの加水分解によるロスが増加する。また、重合時間は、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜8時間である。なお、重合に際しては、重合熱が発生するので、通常、重合系を冷却することにより、重合温度が上記範囲内に保持されるように調節される。
【0022】
本発明においては、前記の(共)重合の後、公知の不溶化防止剤を使用して不溶化防止処理を行うことが好ましい。不溶化防止処理とは、加水分解に先立ち又は加水分解と平行して、アルデヒド基とオキシム化反応や酸化還元反応などを起こす、アルデヒド基との反応性が高い物質(不溶化防止剤)を添加する処理である。不溶化防止剤としては、特開平5−86127号公報や特開5−125109号公報に示されているような、ヒドロキシルアミン又はその塩酸塩若しくは硫酸塩、過酸化水素、水素化硼素ナトリウム、アスコルビン酸、硫酸水素ナトリウム、二酸化硫黄、亜二チオン酸ナトリウム、アミノグアニジン、フェニルヒドラジン、尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、アンモニア、塩化アンモニウム、或いは硫酸アンモニウム等が挙げられる。特に、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩、水素化硼素ナトリウム、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が好適である。
【0023】
不溶化防止剤の使用量は、(共)重合体中に残存する単量体量によって異なるが、重合時の転化率が98%以上の場合、(共)重合体100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜2重量部である。
【0024】
前記の(共)重合においては(共)重合体粒子はスラリーとして得られる。重合体粒子の装置などへの付着を緩和するため付着防止剤を使用することが出来る。付着防止剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、アルキレングリコールアルキルエーテル等のノニオン界面活性剤;テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などのカチオン界面活性剤;シリコーンオイル、シリコーンエマルション等のシリコーン類などが例示される。これらは2種以上を併用してもよい。付着防止剤の使用量は、(共)重合体100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部である。付着防止剤は、重合段階から使用することも可能である。
【0025】
本発明の最大の特徴は、乳化剤の使用量を含めた使用態様にある。
【0026】
先ず、疎水性有機溶媒に対して0.5〜3.0質量%の乳化剤を使用して上記の重合を開始しする。重合開始時の乳化剤の使用量が0.5質量%未満の場合は、得られる(共)重合体粒子の粒径の肥大化が起こる。その結果、懸濁液の移送の際にトラブルが生じたり、その粒子形状のまま加水分解すると、生成する水溶性ポリマーの組成にばらつきが生じたり、加水分解した粒子同士が合着し易くなったりする。一方、重合開始時の乳化剤の使用量が3.0質量%より多い場合は懸濁液のエマルション化が起こる。その結果、懸濁液の粘性が増し、除熱が十分に出来ないため沸騰する危険がある。疎水性有機溶媒に対して0.5〜3.0質量%の乳化剤を使用して上記の重合を開始するならば、前記の種々の問題を惹起することなく、粒径の揃った(共)重合体粒子を得ることが出来る。重合開始時の疎水性有機溶媒に対する乳化剤の使用量は、好ましくは1.0〜3.0質量%、更に好ましくは1.3〜2.9質量%である。
【0027】
次に、単量体水溶液の滴下量が80質量%に至った後であって変性工程に至るまでの間において、疎水性有機溶媒に対して、0.1〜3.0質量%の乳化剤を追添加する。乳化剤の追添加量が上記の範囲未満の場合は、懸濁液の流動性は増加する効果が少なく、上記の範囲より多い場合は、懸濁液の流動性は増すが、加水分解時や共沸脱水時に発砲が増大して不都合を生じる可能性がある。
【0028】
本発明の好ましい態様においては、重合開始時の乳化剤の使用量と乳化剤の追添加量の合計量は、疎水性有機溶媒に対して、通常4.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下である。斯かる条件を満足することにより、加水分解や共沸脱水に供される懸濁液中の乳化剤の含有量がより一層適切な範囲に抑えられて加水分解時や共沸脱水時の発砲の増大を一層効果的に抑制し得る。
【0029】
乳化剤の追添加の時期は、通常、単量体水溶液の滴下終了後であるが、前述のように単量体水溶液の滴下量が80質量%に至った後であればよい。このことは重合が完全に終了する前に添加してよいことを意味する。
【0030】
<加水分解>
加水分解には水溶性の一価の強酸のいずれもが使用できる。例えば、塩化水素、臭素水素、フッ化水素、硝酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などが例示されるが、塩化水素が特に好ましい。この場合、塩化水素はガス状で反応系に導入してもよいし、塩酸水溶液として添加してもよい。酸の使用量は、所望する加水分解率によって異なるが、目的とするポリビニルアミン中のビニルアミン単位に対し、通常0.8〜2倍当量、好ましくは1〜1.5倍当量である。加水分解率は、N−ビニルカルボン酸アミド単量体単位に対する割合として、通常0.1〜100モル%、好ましくは1〜95モル%である。
【0031】
加水分解は通常20℃〜90℃で行われる。反応時間は、温度によって異なるが、通常1分から1週間である。加水分解により、N−ビニルカルボン酸アミド重合体は、カチオン性のポリビニルアミン(塩)に変換される。(メタ)アクリロニトリルを共重合している場合は、加水分解条件によっては生成したアミンの一部が後述のアミジン化することがある。
【0032】
<アミジン化>
アミジン化は、分子内にアミジン環を形成する反応であり、アミノ基と隣接するシアノ基が反応してアミジン環を形成する。アミジン化は加水分解後に行っても加水分解と共に行ってもよい。そして、アミジン化率は、通常60〜150℃、好ましくは70〜120℃、更に好ましくは80〜100℃の熱処理(加熱熟成)により高めることが出来る。加熱熟成の時間は通常0.5〜24時間である。
【0033】
前記の方法により得られたスラリー状の水溶性ポリマーは、粒子同志の合着が抑制され、従って、保存安定性に優れている。
【0034】
粒状の水溶性ポリマーは、前記の方法で得られた水溶性ポリマースラリーを蒸留脱水し、回収した水溶性ポリマーを乾燥することにより得られる。この場合、蒸留脱水の前に水溶性ポリマースラリーにメタノールを添加し、酸変性によって副生したギ酸をエステル化して蒸留脱水により除去するのが好ましい。これにより、不純物の少ない粒状の水溶性ポリマーが得られる。なお、ギ酸は、水分と共に留去可能であるが、エステル化することにより、その腐食性が抑えられると共に、その沸点が大幅に下がるので除去が容易になる。
【0035】
乾燥機としては公知の種々の装置を使用し得る。具体的には、バンド乾燥機、振動流動乾燥機、ディスク乾燥機、コニカル乾燥機などが使用される。乾燥温度は、適宜選択することが出来るが、温度が低すぎる場合は、乾燥効率が悪く水分の調節に時間が掛かりすぎるため、組成が変化することがある。一方、温度が高すぎる場合は、(共)重合体劣化の原因となる。従って、乾燥温度は、通常50〜140℃、好ましくは60〜130℃、更に好ましくは70〜100℃である。また、減圧にする方法は低温で短時間に処理でき、製品の劣化を防ぐ点で優れている。この際、空気や窒素などの乾燥ガスを流通してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1:
攪拌機、冷却管、薬品滴下口、ジャケット冷却器、窒素ガス導入管を備えた反応容器を使用した。先ず、シクロヘキサン373質量部に、乳化剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル(第一工業製薬(株)商品名「ノイゲンET140E」HLB値14)9.4質量部、重合安定剤として塩化アンモニウム20重量%水溶液23.7質量部を添加し、攪拌下55℃に昇温し分散媒を調製した。次に、窒素ガス気流下、2,2‘−アゾビス−2−アミジノプロパン2塩酸塩12重量%水溶液3.2質量部を添加後、薬品滴下口からN−ビニルホルムアミド(純度99.5%)95.7質量部、水34.8質量部の水溶液を2.5時間かけて攪拌下に上記の分散媒中に滴下した。その後、ポリオキシエチレンオレイルエーテル1.9質量部を追添加し窒素ガス気流下56.5℃で1時間攪拌し、N−ビニルホルムアミド重合体水溶液のシクロヘキサン懸濁液を得た。得られた懸濁液を反応容器から取り出す際、エマルション化の有無、懸濁液の粒子状態および流動性を目視観察した。結果を表1に示す。
【0038】
その後、攪拌可能な加圧反応容器に反応物を移し、攪拌下、塩化水素ガス19.8質量部を吹き込み、その後、内温70℃に加熱し、その温度を保ったまま3時間加水分解反応を行い、ポリビニルアミンののシクロヘキサン懸濁液を得た。得られた懸濁液を反応容器から取り出す際、エマルション化の有無、懸濁液の粒子状態および流動性を目視観察した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例2〜5:
実施例1において、ポリオキシエチレンオレイルエーテルの追添加量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に重合を行った。結果を表1に示す。また、実施例1と同様に加水分解反応を行い、ポリビニルアミンののシクロヘキサン懸濁液を得た。得られた懸濁液を反応容器から取り出す際、懸濁液の粒子状態および流動性を目視観察した。結果を表1に示す。
【0040】
比較例1及び2:
実施例1において、ポリオキシエチレンオレイルエーテルの追添加を止め、表1に示した全量をシクロヘキサン中に添加した以外は、実施例1と同様に重合を行った。結果を表1に示した。また、実施例1と同様に加水分解反応を行い、ポリビニルアミンののシクロヘキサン懸濁液を得た。得られた懸濁液を反応容器から取り出す際、懸濁液の粒子状態および流動性を目視観察した。結果を表1に示す。但し、重合開始時の乳化剤の使用量を3.5質量%とした比較例1の場合は、初期の段階でエマルション(乳化)化が起こり、系全体が増粘し、除熱できないため制御不能となったので中断した。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性有機溶媒と乳化剤とを含む分散媒中にN−ビニルカルボン酸アミド又はこれと他の共重合成分を含む単量体水溶液を滴下し、重合開始剤の存在下に懸濁重合させて(共)重合体粒子のスラリーを得る重合工程、得られた(共)重合体粒子のスラリーに酸を添加して変性する変性工程を包含する水溶性ポリマーの製造方法において、疎水性有機溶媒に対して、0.5〜3.0質量%の乳化剤を使用して上記の重合を開始し、単量体水溶液の滴下量が80質量%に至った後であって変性工程に至るまでの間において、疎水性有機溶媒に対して、0.1〜3.0質量%の乳化剤を追添加することを特徴とする水溶性ポリマーの製造方法。
【請求項2】
重合開始時の乳化剤の使用量と乳化剤の追添加量の合計量が疎水性有機溶媒に対して4.0質量%以下である請求項1に記載の水溶性ポリマーの製造方法。
【請求項3】
疎水性有機溶媒としてHLBが9〜20のノニオン系界面活性剤を使用する請求項1又は2に記載の水溶性ポリマーの製造方法。
【請求項4】
分散媒中に重合開始剤を添加した後に単量体水溶液を滴下する請求項1〜3の何れかに記載の水溶性ポリマーの製造方法。


【公開番号】特開2012−131926(P2012−131926A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286167(P2010−286167)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】