説明

水溶性ミノキシジル組成物

【課題】 脱毛及び禿頭の治療に用い、組成物が水を基質としており、かつほとんど有機溶剤を含まない、水溶性ミノキシジル組成物の提供。
【解決手段】 外用の水溶性ミノキシジル(minoxidil)組成物は、ミノキシジル、水、吸収促進剤、溶解促進分子を含有し、前記組成物中の水分含量が95%に達することができ、有名な脱毛症治療剤ロゲイン(Rogaine;Regaine)と比較すると、水溶性ミノキシジル組成物の経皮吸収効率が明らかに向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外用の水溶性ミノキシジル組成物に関し、特に、高い水分を含有し、かつほとんど有機溶剤を含有しないという特殊性を備え、ミノキシジルの経皮吸収効果を顕著に高め、皮膚アレルギーのリスクを顕著に低下することができる、水溶性ミノキシジル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ミノキシジルは一種の血管拡張剤であり、臨床上血圧を下げるために用いられる。ミノキシジルの生物体内における分子メカニズムはまだ完全には解明されていないが、血管内皮のカリウムチャネルを活性化し、一酸化窒素の生成を促進することができ、この部分が非常に重要な役割を果たすと考えられている。ミノキシジルは心血管疾病を治療する口服薬として用いられるだけでなく、男性型脱毛症治療用の外用剤形としても用いられる(米国特許第4596812号、第4139619号)。
【0003】
ミノキシジルを用いた男性型脱毛症の治療はすでに十年以上の歴史がある。現在一般に用いられる剤形には、液剤、泡沫、ゲルがあり、中に含まれるミノキシジルは1〜5%である。ミノキシジルは水に溶けないため、外用のミノキシジル製剤はみな多量のアルコールとプロピレングリコールを含んでおり、例えば5%ロゲイン(Rogaine extra strength)はアルコール30%とプロピレングリコール50%を含有している。このようなアルコール/プロピレングリコール/水の混合溶剤キャリアーを皮膚に塗布すると、アルコールはすぐに揮発し、粘性のあるプロピレングリコールと水が塗布した部位に残り、このため、皮膚上に残ったプロピレングリコールが時にアレルギー反応を引き起こし、頭皮のかゆみや赤み、炎症、フケの増加を招くことがある。
【0004】
外用の親水性ミノキシジル製剤の開発において、ミノキシジルの水溶性を高めることは1つの重要な課題となっており、米国特許(第5030442号及び第4828837号)は、解離定数が5より小さい両性化合物を使用し、ミノキシジルの水中における溶解度を高めることを開示している。しかしながら、長時間このようなクリーナーや表面作用剤に似た両性化合物(例:N−methyl cocoyl taurate、laureth sulfosuccinate hemi−ester、lauryl sulfosuccinate、lysophosphatidic acid、monoalkyl phosphate ester、monoalkyl phosphonate、monoalkyl sulfonate、oleamido−PEG−2−sulfosuccinate等)に接触していると、アレルギー反応を引き起こすことがある。また、リポソーム(liposome)を使用してミノキシジルを被覆する(欧州特許第0177223号)ものもあるが、製剤を皮膚に塗布して一定時間が経過すると、これら両性溶剤またはリポソームが揮発または崩解し、やはりミノキシジルが結晶を発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4596812号明細書
【特許文献2】米国特許第4139619号明細書
【特許文献3】米国特許第5030442号明細書
【特許文献4】米国特許第4828837号明細書
【特許文献5】欧州特許第0177223号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、脱毛及び禿頭の治療に用い、組成物が水を基質としており、かつほとんど有機溶剤を含まない、水溶性ミノキシジル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水溶性ミノキシジル組成物は、ミノキシジル、水、溶解促進分子、吸収促進剤を含む。ミノキシジルと溶解促進分子の使用量の割合は4:1〜1:4とし、組成物の酸アルカリ値は約4〜5の間とし、使用する溶解促進分子はカルボマー(carbomers)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohols)、ポリアクリル酸(polyacrylic acids)、ポリアクリレート(polyacrylates)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidones)、ポリデキストロース(polydextroses)、シクロデキストロース(cyclodextroses)、ポリデキストリン(polydextrins)、シクロデキストリン(cyclodextrins)、ポリデキストラン(polydextranes)、シクロデキストラン(cyclodextranes)である。
【0008】
本発明の組成物はさらに少なくとも1種類の吸収促進剤を含有し、使用する分量は0.1%〜1%とし、これら吸収促進剤が、NP−40、Tween−20、Tween−80、Triton X−100、Span−80、SDS、エタノール(ethanol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、グリセロール(glycerol)、PEG−400、コカミドベタイン(cocamide betaine)、ヤシ油イミダゾリンジカルボン酸(coco imidazoline dicarboxylate)、ラウロイルサルコシンナトリウム(sodium lauroyl sarcosinate)、ラウリルポリオキシエチレンエーテルスルホン酸ナトリウム(sodium polyoxyethylene lauryl ether sulfate)、ココイルグリシンカリウム(potassium cocoyl glycinate)、ラウリル硫酸アンモニウム(ammonium lauryl sulfate)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(coconut fatty acid diethanolamide)、ソルビタンモノラウレート(sorbitan monolaurate)、セスキオレイン酸ソルビタン(sobitan sesquioleate)、ソルビトール(sorbitol)である。
【0009】
水溶性ミノキシジル組成物は外用組成物であり、ゲル、クリーム、乳液剤、軟膏剤、泡沫剤、液剤に調製することができる。
【発明の効果】
【0010】
従来のプロピレングリコール及びアルコールを含有する組成物と比較すると、新しい水溶性組成物は皮膚のアレルギー現象を大幅に抑えることができ、また、水溶性ミノキシジル組成物は、より優れた経皮吸収効率を持ち、ミノキシジルが皮膚組織のより深くまで進入するよう助けるなど、その他の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】組成物の浸透能力の比較を表すグラフである。ロゲイン(Rogaine)5%と異なる濃度の水溶性ミノキシジル組成物を、脱毛したマウスの皮膚上において1時間処理後、皮膚に浸透して進入したミノキシジルを抽出、または先にテープで皮膚の角質層を除去した後に抽出を行い、抽出されたミノキシジルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量を行った。A:水溶性ミノキシジル組成物1%; B:水溶性ミノキシジル組成物2%; C:水溶性ミノキシジル組成物3%; D:水溶性ミノキシジル組成物4%; E:水溶性ミノキシジル組成物5%; F:ロゲイン5%。
【図2A】吸収促進剤による組成物の経皮吸収能力向上の比較(6時間実験グループ)。水溶性ミノキシジル組成物2%を異なる吸収促進剤に加え、フランツセル(Franz cell)経皮吸収試験機上に配置した脱毛マウスの皮膚を処理し、6時間後下方の接受槽の液体を取り、HPLCでミノキシジルの含量を分析した。A:ロゲイン5%; B:水溶性ミノキシジル組成物2%; C:水溶性ミノキシジル組成物2%+Tween−20が0.5%; D:水溶性ミノキシジル組成物2%+コカミドベタイン1%; E:水溶性ミノキシジル組成物2%+ソルビトール2%。
【図2B】吸収促進剤による組成物の経皮吸収能力向上の比較(24時間実験グループ)。水溶性ミノキシジル組成物2%を異なる吸収促進剤に加え、フランツセル(Franz cell)経皮吸収試験機上に配置した脱毛マウスの皮膚を処理し、24時間後下方の接受槽の液体を取り、HPLCでミノキシジルの含量を分析した。A:ロゲイン5%; B:水溶性ミノキシジル組成物2%; C:水溶性ミノキシジル組成物2%+NP-40が0.1%; D:水溶性ミノキシジル組成物2%+コカミドベタイン1%。
【発明を実施するための形態】
【0012】
水溶性ミノキシジル組成物は、ミノキシジル、溶解促進分子、吸収促進剤を混合して成り、溶解促進分子は組成物中でミノキシジルの水溶性を安定させ、吸収促進剤はミノキシジルがより容易に皮膚から吸収されるようにすることができる。図1に示すように、脱毛したマウスの背部皮膚を各種濃度の水溶性ミノキシジル組成物または5%ロゲインで1時間処理し、処理後の皮膚を切り取って、研磨して均質化した後、強酸でミノキシジルを抽出するか、または先にテープで角質層を除去した後、さらに均質化と抽出のステップを行い、最後にHPLCで定量発現解析を行った。完全な皮膚または角質を除去した皮膚において、水溶性ミノキシジル組成物2%の皮膚に浸透して進入したミノキシジルの総量は、ロゲイン5%処理グループとほぼ同じであった。図2では、フランツセルで水溶性ミノキシジル組成物2%の経皮吸収効率を分析した。6時間または24時間の処理後、吸収促進剤はミノキシジルがマウスの皮膚層に浸透するのを助け、その効果はロゲイン5%に比べずっと優れていることが分かった。経皮吸収促進剤が存在する場合、効率はロゲイン5%の10倍にも達した。ここで以下いくつかの組成物の実施例と調製ステップを用いて、さらに本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例と操作ステップに限定されない。
【0013】
水溶性ミノキシジル組成物(1〜5%)の調製は、以下の成分割合と混合ステップに基づいて完了することができ、ここで言うpartは重量を表す。
【実施例1】
【0014】


ミノキシジルを水中に分散させ、10分間継続して撹拌した後、適量の硫酸(5M)を加えてミノキシジルの溶解を促進する。このときの酸アルカリ値は3より小さい。その後ポリアクリル酸(Polyacrylic acid)を加えてさらに継続して10分間撹拌し、最後に適量の水酸化ナトリウム溶液(5M)を加え、酸アルカリ値を4〜4.5の間に調整する。組成物中に使用する硫酸と水酸化ナトリウム溶液の重量比は約1:2〜2:1の間とする。
【実施例2】
【0015】


ミノキシジルを水中に分散させ、10分間継続して撹拌した後、適量の硫酸(5M)を加えてミノキシジルの溶解を促進する。このときの酸アルカリ値は3より小さい。ポリビニルアルコールを摂氏80℃で1時間撹拌して水中に溶解させ、その後2種類の溶液を混合し、最後に適量の水酸化ナトリウム溶液(5M)を加え、酸アルカリ値を4〜4.5の間に調整する。組成物中に使用する硫酸と水酸化ナトリウム溶液の重量比は約1:2〜2:1の間とする。
【実施例3】
【0016】



ミノキシジルを水中に分散させ、10分間継続して撹拌した後、適量の硫酸(5M)を加えてミノキシジルの溶解を促進する。このときの酸アルカリ値は3より小さい。β-シクロデキストリン(beta−cyclodextrin)を水酸化ナトリウム溶液中に溶解させ、その後2種類の溶液を混合し、最後に酸アルカリ値を4〜4.5の間に調整する。組成物中に使用する硫酸と水酸化ナトリウム溶液の重量比は約1:2〜2:1の間とする。
【実施例4】
【0017】



ミノキシジルを水中に分散させ、10分間継続して撹拌した後、適量の硫酸(5M)を加えてミノキシジルの溶解を促進する。このときの酸アルカリ値は3より小さい。その後ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)を加えてさらに10分間継続して撹拌し、最後に適量の水酸化ナトリウム溶液(5M)を加えて酸アルカリ値を4〜4.5の間に調整する。組成物中に使用する硫酸と水酸化ナトリウム溶液の重量比は約1:2〜2:1の間とする。
【実施例5】
【0018】



ミノキシジルを水中に分散させ、10分間継続して撹拌した後、適量の硫酸(5M)を加えてミノキシジルの溶解を促進する。このときの酸アルカリ値は3より小さい。その後ポリデキストロース(polydextrose)を加えてさらに10分間継続して撹拌し、最後に適量の水酸化ナトリウム溶液(5M)を加えて酸アルカリ値を4〜4.5の間に調整する。組成物中に使用する硫酸と水酸化ナトリウム溶液の重量比は約1:2〜2:1の間とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭髮の生育を促進する組成物であって、その成分が、
少なくとも1種類の有効成分と、
少なくとも1種類の皮膚吸収促進剤と、
少なくとも1種類の溶解促進分子と、
水と、
を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、ゲル剤、クリーム剤、乳液剤、軟膏剤、液剤とすることができることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、前記有効成分がミノキシジル(minoxidil)であることを特徴とする、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、前記皮膚吸収促進剤が、NP−40、Tween−20、Tween−80、Triton X−100、Span−80、SDS、エタノール(ethanol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、グリセロール(glycerol)、PEG−400、コカミドベタイン(cocamide betaine)、ヤシ油イミダゾリンジカルボン酸(coco imidazoline dicarboxylate)、ラウロイルサルコシンナトリウム(sodium lauroyl sarcosinate)、ラウリルポリオキシエチレンエーテルスルホン酸ナトリウム(sodium polyoxyethylene lauryl ether sulfate)、ココイルグリシンカリウム(potassium cocoyl glycinate)、ラウリル硫酸アンモニウム(ammonium lauryl sulfate)、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(coconut fatty acid diethanolamide)、ソルビタンモノラウレート(sorbitan monolaurate)、セスキオレイン酸ソルビタン(sobitan sesquioleate)、ソルビトール(sorbitol)であることを特徴とする、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、前記溶解促進分子が、カルボマー(carbomer)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、ポリデキストロース(polydextrose)、シクロデキストロース(cyclodextrose)、ポリデキストリン(polydextrin)、α−シクロデキストリン(alpha−cyclodextrin)、β-シクロデキストリン(beta−cyclodextrin)、ガンマ−シクロデキストリン(gamma−cyclodextrin)、ポリデキストラン(polydextrane)、シクロデキストラン(cyclodextrane)であることを特徴とする、組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の組成物であって、前記ミノキシジルが前記組成物中で使用される濃度が1%〜5%であることを特徴とする、組成物。
【請求項7】
請求項4に記載の組成物であって、前記皮膚吸収促進剤が前記組成物中で使用される濃度が0.01%〜2%であることを特徴とする、組成物。
【請求項8】
請求項4に記載の組成物であって、前記皮膚吸収促進剤が前記組成物中で使用される濃度が0.05%〜1%であることを特徴とする、組成物。
【請求項9】
請求項5に記載の組成物であって、前記溶解促進分子が前記組成物中で使用される濃度が0.5%〜10%であることを特徴とする、組成物。
【請求項10】
請求項5に記載の組成物であって、前記溶解促進分子が前記組成物中で使用される濃度が1%〜5%であることを特徴とする、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、前記水が前記組成物中で使用される濃度が60%〜96%であることを特徴とする、組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2011−57583(P2011−57583A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206795(P2009−206795)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(509252302)群泰生物科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】