説明

水溶性動物筋肉タンパク質生成物

動物筋肉組織タンパク質由来の水溶性ペプチド組成物を提供する。ペプチド組成物は、ペプチド組成物の重量に基づいて約1重量%未満の脂肪および油脂、およびペプチド組成物の重量に基づいて約2重量%未満の灰分を含有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、水溶性タンパク質生成物およびその水溶性タンパク質生成物を生成する方法に関する。より具体的には、本発明は、その方法において開始物質としての動物筋肉組織由来のタンパク質から得られる水溶性生成物に関する。
【0002】
本発明の以前において、動物タンパク質は、ペプトン生成物を生成するため、酵素により事前に消化されており、このペプトン生成物を微生物のための増殖培地として使用することができる。ペプトンは、細菌増殖のために利用されるペプチドである。残念ながら、これらのペプトン生成物の組成は、動物タンパク質の供給源に非常に幅広く依存しており、そのため利用者が、再現性のある結果を生み出すことは困難である可能性がある。大きく異なる可能性がある構成成分には、脂質および灰分(ミネラル)が含まれる。さらに、これらのペプトン生成物は、ペプトン組成物に基づいて約20重量%までの脂質および油脂、ならびにペプトン組成物の重量に基づいて12重量%までの灰分を含有する。脂質、油脂、および灰分は、残念ながら、増殖培地の栄養成分には寄与しない。本発明の以前には、低脂肪、低リンおよび低灰分の動物筋肉組織由来の水溶性ペプトンまたはペプチドは、ヒトの消費のためには利用可能なものではなかった。
【0003】
現在は、ヒトの消費のための動物筋肉由来のタンパク質は、タンパク質が中性または実質的に中性pH(pH 5.5〜7. 5)で回収され、大量のタンパク質(筋原線維性)が水にかなり不溶性である様な方法により得られる。Cortez- Ruizら(2001 J. Ag. Food Prod. Technol., 10 (4): 5-23)は、酸可溶化により抽出したbristly sardinesのタンパク質が、中性pH媒体を用いて再抽出した際、高塩濃度ではわずか13〜18%が可溶性であることを見いだした。そのような方法は、U. S. 特許6,005,073;6,288,216;6,136,959および6,451,975に開示されている。さらに、この不溶性タンパク質は、しばしば、好ましくないほどに濃い茶色がかった色をしており、このために食品添加物としてあまり好ましくない。白色、実質的に白色または透明であり、そのため添加される食品の色を実質的に変化させない様な食品添加物を使用することが好ましい。
【0004】
中性または実質的に中性のpHで水に可溶であり、そしてその栄養的価値を残している動物筋肉組織由来のタンパク質の形態(form)を提供することが好ましい。そのようなタンパク質の形態を、飲料、スープおよび固型食品を含むヒトの消費のための非常に他種類の食品のための食品グレードの添加物(food grade additive)として使用することができる。さらに、元の形態のタンパク質と比較して、栄養価が低くなっている訳ではない、魚肉または獣肉由来のそのような形態のタンパク質を提供することが好ましい。さらに、細菌を増殖するために利用することができる脂質、油脂、および灰分が少ない、そのような形態のタンパク質を提供することが好ましい。同様に、白色などの明るい色をしているものや、水に溶解したときに透明であるため添加する可能性がある食品の色を変化させない、そのような形態の食品を提供することが好ましい。
【0005】
発明の概要
本発明にしたがって、U. S.特許6,005,073;6,288,216または6,136,959(これらすべては、参考文献としてその全体を本明細書中に援用する)中に開示されている方法の一つにより得られる筋原線維(myofibrillar)タンパク質および筋形質(sarcoplasmic)タンパク質の混合物を、少なくとも一つの酵素を用いて消化し、中性または実質的に中性のpHで水に可溶なペプチドを生成する;これは、約5.5〜約7.5のpH、好ましくは約6.8〜約7.1のpHである。動物筋肉組織由来の初期タンパク質組成物は、筋原線維およびサルコメアを含まない筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質の混合物を含む。筋原線維タンパク質は、水に可溶性ではない。通常は水に可溶性の筋形質タンパク質は、極端なpH(pH<3.5またはpH>10.5)でいくらかの時間を過ごした筋原線維タンパク質の存在下では、かなり不溶性になる。タンパク質は、酵素組成物と混合した場合、固体形状であるか、または酸性溶液またはアルカリ性溶液中に存在していてもよい。タンパク質が酸性溶液またはアルカリ性溶液中にある場合、溶液のpHは、酵素組成物で消化された後に、上述したように実質的に中性に調整することができる。酵素組成物は、酸性pH、アルカリ性pH、または中性pHのいずれで活性であってもよい。酵素消化のあいだに、タンパク質は、水溶性ペプチドに変換される。酵素消化を、ペプチド溶液のpHを、酵素組成物が不活性であるpHに変化させることにより、停止させることができる。この反応は、加熱することにより停止させることもできる。酵素組成物は、1またはそれ以上の酵素を含んでいてもよい。スプレー乾燥、凍結乾燥、または蒸発などにより乾燥させることにより溶液からペプチドを回収し、乾燥ペプチド生成物を得ることができる。乾燥ペプチド生成物は、主として、開始タンパク質を脂質および油脂から単離する際の遠心工程のため、脂質および油脂が少ない。乾燥ペプチド生成物は、主として、酵素組成物による消化の前にタンパク質から塩を取り除くための1またはそれ以上の回数のタンパク質の洗浄工程のため、灰分が少ない。さらに、酵素消化により、開始タンパク質よりも色が明るい乾燥ペプチドが生成されることが見いだされた。この明るい色は、ペプチドが、既存の食品生成物への添加物など、ヒトの消費のために利用される場合には、重要である。
【0006】
具体的な態様の記載
本発明にしたがって、動物筋肉組織由来のそしてU. S.特許6,005,073;6,288,216または6,136,959(これらすべては、参考文献としてその全体を本明細書中に援用する)中に開示されている方法のうちの一つにより得られる、筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との乾燥タンパク質混合物または水溶性酸性タンパク質溶液を、本発明の方法において開始物質として利用する。タンパク質混合物は、2種類の方法のうちの一方により得られる。一つの方法(酸性方法)において、動物筋肉組織が、小組織粒子中で形成され、それを次いで十分な酸と混合して3.5以下のpHを有するがしかしながら動物組織タンパク質を不都合に修飾するほどに低いpHではない組織溶液を形成する。溶液を遠心にかけ、最下部の膜脂質層、水溶性酸性タンパク質溶液の中間層、および中性脂質(脂肪および油脂)の上部層を形成する。次いで、水溶性酸性タンパク質溶液の中間層を、膜脂質層から分離し、または膜脂質層および中性脂質層の両方から分離する。この方法において、タンパク質混合物は、筋原線維およびサルコメアを含まない。水溶性酸性タンパク質溶液中のタンパク質を、遠心分離の後に、蒸発、スプレー乾燥、または凍結乾燥などにより水溶性酸性溶液を乾燥させて、水溶性酸性タンパク質溶液中に溶解したときに有していた低pHを有する乾燥タンパク質混合物を形成することにより、回収する。次いで、乾燥タンパク質混合物を水溶液中の酵素組成物と混合する。ここで、酵素は酸性pHで活性である。あるいは、水溶性酸性タンパク質溶液を、乾燥させることなく、酸性活性化酵素組成物と混合することができる。これらの2種類の酸性方法の一つを使用して、乾燥タンパク質混合物または酵素と混合する前に乾燥する必要がない水溶性酸性タンパク質溶液を得ることが、好ましい。
【0007】
2番目の方法(アルカリ方法)において、動物筋肉組織は、十分な水溶性塩基性溶液と混合して組織溶液を形成する小組織粒子中に形成される。ここで、少なくとも75%の動物筋肉タンパク質が可溶化されるが、動物組織タンパク質を不都合に修飾するほどに高いpHではない。溶液を遠心分離にかけ、最下部の膜脂質層、中間水溶性タンパク質豊富層、および中性脂質(脂質および油脂)の上部層を形成する。次いで、中間水溶性タンパク質-豊富層を、膜脂質層からまたは膜脂質層および中性脂質層の両方から分離する。タンパク質混合物は、筋原線維およびサルコメアを含まない。次いで、タンパク質-豊富な水層のpHを、約3.5以下のpH、好ましくは約2.0〜3.5のpHに低下させる。水溶性酸性溶液中のタンパク質を、遠心分離の後、水溶性酸性タンパク質溶液を蒸発、スプレー乾燥、または凍結乾燥などにより乾燥させ、水溶性酸性溶液中に溶解されたときに有していた低pHを有する粉末生成物を形成することにより、回収する。あるいは、水溶性酸性溶液中のタンパク質は、酸性pHで活性な酵素と混合する前には乾燥させない。8.5以上のpHを有する水溶性塩基性溶液中の遠心分離の後に回収されたタンパク質は、粉末生成物を形成するためには乾燥されない。というのも、上述した水溶性酸性溶液から回収された乾燥組成物とは対照的に、これらの粉末が消費者にとって健康問題の原因となりうるためである。方法の一側面において、塩基性溶液のpHを、約5.5まで低下させて、タンパク質を沈殿させることができる。次いで、沈殿タンパク質のpHを、6.5〜8.5に上昇させて、そして固体生成物を、スプレー乾燥、凍結乾燥、または蒸発を含む乾燥などにより回収する。次いで、乾燥タンパク質を、タンパク質生成物のpHに依存して酸性pH、中性pH、またはアルカリ性pHで活性な、水溶液中の酵素組成物と混合する。
【0008】
まとめると、本発明の水溶性ペプチドを生成するために利用される、乾燥タンパク質混合物、pH 6.5〜8.5で形成される沈殿タンパク質、または水溶性酸性タンパク質溶液は、以下の方法により得ることができる。動物筋肉組織を、アルカリ性溶液中ではなく、酸性溶液中に溶解する方法により得られるタンパク質開始組成物を利用することが好ましい。このことは、アルカリ性溶液中に溶解される動物タンパク質がリシノアラニンを、特にヒトにおいて腎臓疾患を引き起こしかねない高い温度で、形成することができるという事実のためである。
【0009】
1. 細分した動物筋肉組織のpHを約3.5未満のpHにまで低下させて、酸性タンパク質溶液を形成し、溶液を遠心分離に供して脂質の豊富な相と水性相とを形成し、そして本発明において使用することができる膜脂質を実質的に含まない水溶性酸性タンパク質溶液を回収する。
【0010】
2. 方法1により得た水溶性酸性タンパク質溶液をスプレー乾燥して、本発明において使用することができる膜脂質を実質的に含まない乾燥タンパク質混合物を形成する。
3. 方法1により得た水溶性酸性タンパク質溶液を凍結乾燥して、本発明において使用することができる膜脂質を実質的に含まない乾燥タンパク質混合物を形成する。
【0011】
4. 方法1に由来する水溶性酸性タンパク質溶液のpHを約pH 5.0〜5.5にまで上昇させて、タンパク質の沈殿を生じさせ、そしてその後、最小容量中で酸を使用して約4.5以下のpHにまで戻すようにタンパク質を再調整して、3.5〜7%タンパク質となるように水溶性酸性タンパク質溶液を濃縮する。
【0012】
5. 細分した動物筋肉組織のpHを約10.5以上のpHにまで上昇させ、溶液を遠心分離に供して脂質の豊富な相と水性相とを形成させ、そして水溶性塩基性タンパク質溶液を回収する。一態様において、水溶性塩基性溶液のpHを約3.5未満のpHにまで低下させて、本発明において使用することができる膜脂質を実質的に含まない水溶性酸性タンパク質溶液を得る。第二の態様において、水溶性塩基性溶液のpHを約5.0〜5.5にまで低下させてタンパク質を沈殿させ、沈殿させたタンパク質のpHを6.5〜8.5に上昇させ、乾燥させ、そしてタンパク質を粉砕する。第三の態様において、水溶性塩基性溶液のpHを約5.0〜5.5まで低下させてタンパク質を沈殿させ、沈殿させたタンパク質のpHを4.5以下のpHにまで低下させて濃縮水溶性酸性溶液を形成し、そして濃縮水溶性酸性溶液を使用するか、または溶液を乾燥させて回収した乾燥タンパク質を使用する。
【0013】
6. 方法5により得た水溶性酸性タンパク質溶液をスプレー乾燥させて、本発明において使用することができる膜脂質を実質的に含まない乾燥酸性タンパク質混合物を形成する。
【0014】
7. 方法5により得た水溶性酸性タンパク質溶液を凍結乾燥させて、本発明において使用することができる膜脂質を実質的に含まない乾燥酸性タンパク質混合物を形成する。
8. 方法5由来の水性酸性タンパク質溶液のpHを約pH 5.0〜5.5まで上昇させてタンパク質の沈殿を生じさせ、そしてその後、最小容量中で酸を使用して約4.5以下のpHにまで戻すようにタンパク質を再調整して、3.5〜7%タンパク質となるように水溶性酸性タンパク質溶液を濃縮する。
【0015】
本発明において使用されるタンパク質生成物は、主として、顕著な量の筋形質タンパク質も含有する筋原線維タンパク質を含む。酵素と混合されるタンパク質開始組成物中の筋形質タンパク質は、乾燥酸性タンパク質混合物中のタンパク質全重量に基づいて、筋形質タンパク質重量にして、約8%以上、好ましくは約10%以上、より好ましくは約15%以上、そして最も好ましくは約18%以上、約30%までの、pH 6.5〜8.5で形成された沈殿タンパク質または水性酸性タンパク質溶液を含む。
【0016】
開始タンパク質は、獣肉または魚肉に由来するものであり、甲殻類動物肉を含む。代表的な適切な魚肉には、骨を取り除いたカレイ、ヒラメ、ハドック(haddock)、タラ(cod)、スズキ、サケ、マグロ、マス、などが含まれる。代表的な適切な甲殻類動物には、ムキエビ(shelled shrimp)、ザリガニ、ロブスター、ホタテ、カキ、または殻付きエビなどが含まれる。代表的な適切な獣肉には、牛肉、羊肉、豚肉、シカ肉、子牛肉、水牛肉など;鶏肉、機械的に骨を取り除いた鳥肉、七面鳥、アヒル、狩猟鳥、またはガチョウなどの鳥肉が含まれる。
【0017】
本発明に従って、筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質の乾燥タンパク質混合物または水溶液を、タンパク質をペプチドに転換する1またはそれ以上の酵素と混合する、酵素は、エクソプロテアーゼまたはエンドプロテアーゼのいずれであってもよく、そして酸性pH、アルカリ性pHまたは中性pHでペプチドを生成する様に活性であってもよい。酸性pHで有用な代表的な適切な酵素には、Enzeco Fungal Acid Protease(Enzyme Development Corp., New York, NY);Newlase A (Amano, Troy, VA);およびMilezyme 3.5(Miles Laboratories, Elkhart, IN)またはこれらの組み合わせが含まれる。アルカリ性pHで有用な代表的な適切な酵素には、Alcalase 2.4 LFG(Novozymes, Denmark)が含まれる。中性pHで有用な代表的な適切な酵素には、Neutrase 0.8L(Novozymes, Denmark)およびパパイン(Penta, Livingston, NJ)またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0018】
酵素は、酵素およびタンパク質の全重量に基づく重量で約0.02%〜約2%、好ましくは約0.05%〜約0.5%の量で、約4℃〜約55℃、好ましくは約25℃〜約40℃の温度で、約5分〜約24時間、好ましくは約0.5時間〜約2時間のあいだ、使用する。次いで、タンパク質組成物と酵素組成物との反応により形成されたペプチドを、反応が起こる溶液を乾燥させることにより回収する。乾燥は、蒸発、スプレー乾燥、凍結乾燥、などにより行うことができる。本発明により生成されるペプチドは、中性pHの水中で瞬間的に可溶である。
【0019】
本発明のペプチド生成物は、ペプチド重量に基づいて、約1重量%未満の脂質および油脂(全体)、好ましくは約0.2%重量%未満の脂肪および油脂を含有する。さらに、本発明のペプチド生成物は、ペプチド重量に基づいて、約2重量%の未満の灰分、好ましくは約0.9%重量%未満の灰分を含有する。この低量の灰分含量は、タンパク質開始物質を水で洗浄することにより得られる。灰分は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、またはリンなどのミネラルとして定義される。さらに、本発明のペプチド生成物は、瞬間的に水に可溶であり、透明な溶液を形成する。
【0020】
さらに、本発明のペプチド生成物は、一般的には、L, a, b性能による比色により測定された場合に、それらの由来となる同様の加水分解されていないタンパク質単離物の白色度単位(color whiteness units)と比較して、より淡い白色度単位を有する。このより淡い色は、牛肉、豚肉または鶏肉などの獣肉に由来する本発明の加水分解されたペプチドならびに例えば以下の実施例1で示される様な深海魚などの魚から得られた暗色筋肉組織に由来する本発明の加水分解されたペプチドにより、見いだされる。透明の水溶液を形成するためにより簡単に水中にペプチド生成物を溶解することができるため、この淡い色の特性は好ましい。
【0021】
白色度単位は、L, a, b値を式:100[(100-L)2+a2+b20.5を用いて変換することにより決定する。色は、3刺激比色計を使用して、当該技術分野において周知のRichard Hunterにより開発された普遍的に採用される“L, a, b”反対型スケールを使用して、測定される。“L”は、白から黒の範囲の光の測定値である。“a”値は緑から赤の範囲を測定し、そして“b”値は青から黄の範囲を測定する。これらの3つの座標を用いて、三次元値をいずれの色にも割り振ることができる。
【0022】
本発明の一側面において、ゲル形状でありそして本発明のペプチド生成物をある濃度で含有する微生物用の増殖培地を提供する。これは、増殖する微生物に対して増殖栄養を提供する。ペプチド生成物は、増殖培地のペプチドおよびゲル構成成分の全重量に基づいて、ペプチド重量にして、約0.5〜約10%、好ましくは約1%〜約5重量%のペプチドを含む。約10重量%より高いペプチド濃度では、ゲル構造を形成しそして維持することが困難であることに直面する。増殖培地のゲル構成成分は、乾燥タンパク質混合物、pH 6.5〜8.5で形成された沈殿タンパク質、または本発明の水溶性ペプチドを生成するために使用される水溶性酸性タンパク質溶液開始物質、を含む。ゲルは、タンパク質を予め氷で冷却しておくミニチョッパー中に入れることにより、これらの開始物質から形成する。2%NaCl水溶液を、チョッパーに添加し、そして材料を2〜3分間切り刻む。タンパク質ペーストを、ポリマー製の袋、例えばポリエチレン袋中に入れ、そしてすべての空気を手で押し出すことにより取り除く。ペーストを3 mmの厚さに丸めて、電子レンジの強に25秒間置き、その後冷却する。最終的な冷却した材料を二つ折りの能力について試験し、そしてKudoら(1973, Marine Fish. Rev. 32: 10-15)に記載されるように、5ポイントテストで順位付けする。ペプチドとゲル構成成分との混合物を、上述したようにゲル構成成分を酵素と部分的に反応させることにより、または上述したようにタンパク質開始物質を加水分解し、その後ゲルと加水分解した生成物とを混合することにより、形成することができる。ゲル-ペプチド組成物を、当該技術分野において周知であるように、微生物増殖を促進する温度条件の下で、ゲル-ペプチド組成物の表面上の微生物のための増殖培地として利用することができる。ゲル-ペプチド混合物もまたヒトの消費のための食品に対して添加され、食品のヒトの消費のための栄養素を提供する。
【0023】
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1:酸性pHでの加水分解
筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質とに由来する鶏肉タンパク質単離物を、US特許6,005,073に従って(pH 2.8;10,000 g-重力加速度)、生鶏肉胸肉から生成し、そしてpH 5.5に調整してタンパク質を沈殿させた。次いで、沈殿タンパク質を塩酸(2 N)を滴加することによりpH 3.5にまで戻すように再調整した。酸以外の追加される液体は、何も無かった。酸性化タンパク質のタンパク質濃度は、49.86 mg/mlであった。2つの一定量のタンパク質サンプルを、ガラスビーカーに入れ、そして50℃のウォーターバス中に入れた。ビーカーの一つに、0.05%(w/w)のS-16774 Enzeco Fungal Acid Protease(Enzyme Development Corporation, 21 Penn Plaza, 360 West 31st St., New York, NY)をスパチュラにより混合して分散させた。これらのサンプルを、50℃にて2.3時間インキュベートした。両方のサンプルとも、引き続いて、水酸化ナトリウム(2N)を滴加することにより、pH 7.0に調整した。酵素を何も添加していないサンプルをpH 5.5で沈殿させたが、しかしながらその後、中性pHに達する際に液体の状態に戻った。添加した酵素を伴うサンプルは、pH 3.5〜7.0の範囲の全体にわたって液体のままであった。次いで、両方のサンプルとも、冷蔵庫に入れた。両方のサンプルの部分を約5%の水分となるまで凍結乾燥し、そしてWhirl-Pak袋中で保存した。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例2:中性pHでの加水分解
筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質とに由来する鶏肉タンパク質単離物を、US特許6,005,073に従って(pH 2.8;10,000 g-重力加速度)、生鶏肉胸肉から生成し、そしてpH 5.5に調整してタンパク質を沈殿させた。次いで、沈殿タンパク質を水酸化ナトリウム(2 N)を滴加することによりpH 7に調整した。酸以外の追加される液体は、何も無かった。2つの一定量のタンパク質サンプルを、ガラスビーカーに入れ、そして40℃のウォーターバス中に入れた。ビーカーの一つに、0.2%(w/w)のNeutrase 0.8 L(Batch PWNO1208;Novozymes A/S, Krogshoejvej 36,2880 Bagsvaerd, Denmark)をスパチュラにより混合して分散させた。これらのサンプルを40℃にて0.5時間インキュベートした。次いで、両方のサンプルとも、粘度および溶解度を測定までは冷蔵庫に入れた。
【0027】
【表2】

【0028】
実施例3:アルカリ性pHでの加水分解
筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質とに由来する鶏肉タンパク質単離物を、US特許6,005,073に従って(pH 2.8;10,000 g-重力加速度)、生鶏肉胸肉から生成し、そしてpH 5.5に調整してタンパク質を沈殿させた。次いで、沈殿タンパク質を水酸化ナトリウム(2 N)を滴加することによりpH 8.0に調整した。酸以外の追加される液体は、何も無かった。2つの一定量のタンパク質サンプルを、ガラスビーカーに入れ、そして55℃のウォーターバス中に入れた。ビーカーの一つに、0.5%(w/w)のAlcalase 2.4 L FG(Batch PLNO5212;Novozymes A/S, Krogshoejvej 36, 2880 Bagsvaerd, Denmark)をスパチュラにより混合して分散させた。これらのサンプルを、55℃にて1.5時間インキュベートした。次いで、両方のサンプルとも、pH 7に調整し、そして粘度および溶解度の測定までは冷蔵庫に入れた。
【0029】
【表3】

【0030】
実施例4:加水分解していないタンパク質単離物と加水分解したタンパク質単離物の混合物から形成されるゲル
方法:
筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質とに由来する鶏肉タンパク質単離物を、US特許6,005,073に従って(pH 2.8;10,000 g-重力加速度)、生鶏肉胸肉から生成し、そしてpH 5.5に調整してタンパク質を沈殿させた。次いで、沈殿タンパク質を塩酸(2 N)を滴加することによりpH 3.5にまで戻すように再調整した。酸以外の追加される液体は、何も無かった。酸性化タンパク質のタンパク質濃度は、49.86 mg/mlであった。タンパク質サンプルをガラスビーカーに入れ、そして50℃のウォーターバス中に入れた。ビーカーの一つに、0.05%(w/w)のS-16774 Enzeco Fungal Acid Protease(Enzyme Development Corporation, 21 Penn Plaza, 360 West 31st St. , New York, NY)をスパチュラで混合して分散させた。これらのサンプルを、50℃にて2.3時間インキュベートした。これらのサンプルを、引き続いて、水酸化ナトリウム(2N)を滴加することにより、pH 7.0に調整した。添加した酵素を伴うサンプルは、pH 3.5〜7.0の範囲の全体にわたって液体のままであった。サンプルを、冷蔵庫に入れた。サンプルを約5%の水分となるまで凍結乾燥させ、そしてWhirl-Pak袋中に保存した(“加水分解”)。
【0031】
筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質とに由来するブタタンパク質単離物を、US特許6,005,073に従って(pH 2.8 ; 10,000 g-重力加速度)、生豚肉筋肉から生成し、そしてpH 5.5に調整してタンパク質を沈殿させた。沈殿物をpH 7.0に調整し、そして約5%の水分となるまで凍結乾燥させ、Whirl-Pak袋中に保存した(“非加水分解”)。
【0032】
“加水分解”鶏肉タンパク質および“非加水分解”豚肉タンパク質単離物を使用して、以下の様にしてゲルを作製した:“非加水分解”豚肉粉末(20.01 g)を、74.84 gの氷/冷水混合物、0.98 gのNaCl、そして0.94 gの“加水分解”鶏肉タンパク質と共にProcter-Silexミニチョッパーに添加した。混合物を、約4分間、または最終温度が8℃に到達するまで混合した。タンパク質ペーストをWhirl-Pak袋に入れ、そしてすべての空気を手で押し出すことにより取り除いた。このペーストを3 mmの厚さに丸めて、Sharp Carousel電子レンジの強に25秒間置き、そしてその後冷却した。最終的な冷却した材料を二つ折りの能力について試験し、そしてKudoら(1973, Marine Fish. Rev. 32: 10-15)に記載される様に5ポイントテストで順位づけた。二つ折りした後に割れ目(break)が無いサンプルを、最高の5と順位づけた。
【0033】
結果:
6種類の“加水分解”ゲルと“非加水分解”ゲルのタンパク質単離物混合物のうち6サンプルが、スコア5に順位づけられ、二つ折りされた際に検出可能な割れ目が存在しないことがわかった。材料は、好ましい黄褐色、褐色であり、若干調理済み豚肉の匂いがした。
【0034】
実施例5:酸安定性酵素を使用して部分加水分解したタラ筋肉タンパク質のゲル化および溶解度
方法
筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質とに由来するタラタンパク質単離物を、US特許6,005,073に従って(pH 2.8;10,000 g-重力加速度)、生タラ筋肉から生成した。可溶化筋肉タンパク質の一部を、大型のWhirl-Pak袋に入れ、それに酵素を添加した。袋の中では、0.05%(w/w)のS-16774 Enzeco Fungal Acid Protease(Enzyme Development Corporation, 21 Penn Plaza, 360 West 31st St. , New York, NY)を混合して分散させた(Stomacher混合装置を模する様に混合は手で行った)。サンプルを、45℃(pH 2.8)にて20分間インキュベートした。このサンプルを、引き続いて、水酸化ナトリウム(2N)を滴加することによりpH 5.5に調整し、タンパク質を沈殿させた。沈殿物は、Sorvall RC-5B遠心器で11,000×gの遠心力を使用して脱水した。残った水分を、触れるくらいまで乾燥して、タンパク質から手で搾った。次いで、沈殿タンパク質を水酸化ナトリウム(2N)を滴加することによりpH 7に調整した。酸以外の追加される液体は、何も無かった。脱水したタンパク質単離物を5%ソルビトール、4%スクロースおよび0.3%トリポリリン酸ナトリウムと混合し、そしてWhirl-Pak袋の中で凍結させた(-30℃)。
【0035】
ゲルを、サンプルを室温で壊すことができるまで、しかし柔らかくならない程度に融解することにより作製した。タンパク質を、氷で予め冷却して置いたProctor-Silexミニチョッパーに入れた。2%NaClをチョッパーに添加し、そして材料を2〜3分間切り刻んだ。タンパク質ペーストをWhirl-Pak袋に入れ、そしてすべての空気を手で押し出すことにより取り除いた。このペーストを3 mmの厚さに丸めて、Sharp Carousel電子レンジの強に25秒間置き、そしてその後冷却した。最終的な冷却した材料を二つ折りの能力について試験し、そしてKudoら(1973, Marine Fish. Rev. 32: 10-15)に記載される様に5ポイントテストで順位づけた。二つ折りした後に割れ目がないサンプルを、最高の5と順位づけた。ホモジネートおよび上清画分に対してTorten, J.およびWhitaker, J. R.(1969, J Food Sci. 29: 168-174)のビュレット法を使用することにより、タンパク質含量を測定した。タンパク質溶解度を、上清グラムタンパク質/ホモジネートグラムタンパク質×100として表す。
【0036】
対照には、酵素を用いて行う20分間のインキュベーション工程以外の上述の工程すべてを行った。
結果
対照サンプルおよび酵素インキュベーションしたサンプルの両方とも、二つ折りテストで5のスコアであることが見いだされた。5のスコアは、材料を二つ折りした後に見いだされる認識できる割れ目がないゲルであることを意味する。対照に対するタンパク質溶解度は、17.3%±3.6であることが見いだされた。酵素的に処理したサンプルの溶解度は、31.2±2.9であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋原線維(myofibril)および筋形質(sarcoplasmic)画分からなる動物筋肉組織タンパク質由来の水溶性ペプチド組成物であって、前記ペプチド組成物が、ペプチド組成物の重量に基づいて約1重量%未満の脂肪および油脂、およびペプチド組成物の重量に基づいて約2重量%未満の灰分を含有する、前記水溶性ペプチド組成物。
【請求項2】
ペプチド組成物の重量に基づいて約0.2重量%未満の脂肪および油脂およびペプチド組成物の重量に基づいて約0.9重量%未満の灰分を含有する、請求項1に記載のペプチド組成物。
【請求項3】
前記動物筋肉組織が魚肉である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記動物筋肉組織が甲殻類動物肉である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記甲殻類動物がエビである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記動物筋肉組織が獣肉である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記動物筋肉組織が鳥肉である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
前記動物筋肉組織が、アヒル、七面鳥、ガチョウ、狩猟鳥およびニワトリからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記動物筋肉組織が、牛肉、羊肉、豚肉、子牛肉、水牛肉およびシカ肉からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
動物筋肉組織由来のタンパク質組成物から水溶性ペプチド組成物を形成するための方法であって、以下の工程:
(a)動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との乾燥タンパク質混合物、動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との水溶性酸性タンパク質溶液、およびこれらの混合物、からなる群から選択されるタンパク質混合物を提供する工程、
(b)工程(a)由来の前記タンパク質混合物を、前記タンパク質混合物由来の前記ペプチド組成物を形成する酵素組成物と混合する工程、そして
(c)前記ペプチド組成物を回収する工程、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記タンパク質混合物が、前記タンパク質混合物の酸性水溶液を乾燥することにより形成された乾燥タンパク質混合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記動物筋肉組織が魚肉である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記動物筋肉組織が甲殻類動物肉である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記甲殻類動物がエビである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記動物筋肉組織が鳥肉である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項16】
前記動物筋肉組織が、七面鳥、アヒル、ガチョウ、狩猟鳥、およびニワトリからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記動物筋肉組織が獣肉である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項18】
前記動物筋肉組織が、ハム、牛肉、羊肉、豚肉、子牛肉、水牛肉およびシカ肉からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との乾燥タンパク質混合物、動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との水溶性酸性タンパク質溶液、およびこれらの混合物からなる群から選択され、かつ増殖培地のペプチドおよびゲル構成成分の全重量に基づいて約0.5〜約10重量%の請求項1に記載のペプチドである、タンパク質混合物に基づくゲルを含む、ゲル組成物。
【請求項20】
動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との乾燥タンパク質混合物、動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との水溶性酸性タンパク質溶液、およびこれらの混合物からなる群から選択され、かつ増殖培地のペプチドおよびゲル構成成分の全重量に基づいて約1〜約5重量%の請求項1に記載のペプチドである、タンパク質混合物に基づくゲルを含む、ゲル組成物。
【請求項21】
動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との乾燥タンパク質混合物、動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との水溶性酸性タンパク質溶液、およびこれらの混合物からなる群から選択され、かつ増殖培地のペプチドおよびゲル構成成分の全重量に基づいて約0.5〜約10重量%の請求項2に記載のペプチドである、タンパク質混合物に基づくゲルを含む、ゲル組成物。
【請求項22】
動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との乾燥タンパク質混合物、動物筋肉組織由来の筋原線維タンパク質と筋形質タンパク質との水溶性酸性タンパク質溶液、およびこれらの混合物からなる群から選択され、かつ増殖培地のペプチドおよびゲル構成成分の全重量に基づいて約1〜約5重量%の請求項2に記載のペプチドである、タンパク質混合物に基づくゲルを含む、ゲル組成物。

【公表番号】特表2006−518378(P2006−518378A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502924(P2006−502924)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/001665
【国際公開番号】WO2004/073415
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505107697)プロテウス・インダストリーズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】