説明

水溶性化合物の油溶化剤

【課題】水溶性化合物を透明に、かつ長期間安定に油溶化することができる油溶化剤を提供する。また、この油溶化剤を含有させた油脂、及び、この油脂を使用して製造された食品、化粧品、医薬品を提供する。
【解決手段】平均縮合度が3以下であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルと、平均縮合度が4以上であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとからなる油溶化剤であり、平均縮合度3以下であるエステルの含有率が15〜70重量%である。油脂は、油溶化剤を添加した油脂であり、食品、化粧品、医薬品は、この油脂を使用して製造されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性化合物を油脂中に透明に、かつ安定に油溶化する油溶化剤、油脂、及び食品、化粧品、医薬品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水溶性化合物を油脂中に分散させる場合、一般に乳化剤などを用いて油中水型乳化物を作成し、均一な分散状態とするが、外観は白濁を呈している。また、乳化物は熱力学的に不安定であることから、長期間保存すると、水溶性化合物の沈殿や分離が発生する。この様に、水溶性化合物を分散させた油脂は、分散前のものと比べて、外観、安定性等が劣ったものであり、使用用途も制限されてしまう。
【0003】
水溶性化合物を分散させた油脂の外観や安定性を向上させるには、水溶性化合物を油脂中に透明に油溶化することが必要である。水溶性化合物を油脂中に油溶化する方法としては、これまで、特許文献1に、乳化剤にポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを用いる方法が開示されているが、この方法では、水溶性化合物を透明に油溶化することは困難であった。
【0004】
そこで、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとポリオールを使用する方法(特許文献2)や、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、HLBが6〜14の乳化剤、酵素分解レシチンを使用する方法(特許文献3)が開示されたが、特許文献2では、ポリオール類由来のくすみが生じるため、透明な油溶化物とは言えず、また、ポリオールを配合しているため、食品などへの利用が制限される問題があった。特許文献3においても、水溶性化合物を油脂中に透明な状態で油溶化することは困難であり、食品へ利用した場合には、通常の油脂を用いた食品と比べて外観が著しく劣るものであった。
【0005】
さらに、特許文献4には、構成脂肪酸の不飽和度が15%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて水溶性の抗酸化物質を油溶化する方法が開示されているが、水溶性化合物の配合量が0.2重量%以下でしか透明な状態が得られず、それ以上配合すると白濁、沈殿が生じていた。
【0006】
【特許文献1】特開平2−111426号公報
【特許文献2】特開平7−16075号公報
【特許文献3】特開平6−254378号公報
【特許文献4】特開2003−305355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、水溶性化合物の配合量が多くとも、水溶性化合物を透明に、かつ長期間安定に油溶化することができる油溶化剤、及び油溶化方法を提供することを目的とするものである。また、この油溶化剤を含有させた油脂、及び、この油脂を使用して製造された食品、化粧品、医薬品を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、縮合リシノール酸の縮合度が異なるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを併用することで、従来の方法で油溶化した油脂よりも、透明性、安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、水溶性化合物を油脂中に油溶化するポリグリセリン縮合リシノール酸エステルからなる油溶化剤であって、縮合リシノール酸の縮合度が異なるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを併用することを特徴とする水溶性化合物の油溶化剤である。
【0010】
前記ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルにおいて、縮合リシノール酸の平均縮合度が3以下であるエステルと、平均縮合度が4以上であるエステルとからなる混合物であり、前記縮合リシノール酸の平均縮合度が3以下であるエステルの含有率が15〜70重量%であることが好適である。含有率が15〜70重量%である場合、水溶性化合物を油溶化した油脂の透明性は向上し、その状態を長期間保つことができる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された油溶化剤によれば、縮合リシノール酸の平均縮合度が3以下であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルと平均縮合度が4以上のエステルとを併用することで、水溶性化合物を透明、かつ安定に油溶化することができる。
【0012】
また、上記の様に油溶化した油脂によれば、水溶性化合物が透明に油溶化されているため、通常の油脂と外観上の差違は全くない油脂となる。また、この油脂は、通常の油脂と同様な加工方法により、何ら問題なく食品、化粧品、医薬品に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、実施形態に基づいて本発明を説明する。本実施形態における油溶化剤は、ポリグリセリンと縮合リシノール酸をエステル化させて得られるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルであり、水溶性化合物を油脂中に油溶化する油溶化剤として使用される。
【0014】
ポリグリセリンは特に限定されるものではないが、水酸基価から算出される平均重合度が2〜15のポリグリセリンを使用すると良い。本明細書において水酸基価から算出される平均重合度(n)とは、末端分析法によって算出される値であり、次式(式1)及び(式2)から算出される。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
前記水酸基価とは、エステル化物中に含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのエステル化物に含まれる遊離のヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいい、水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、1996年度版」に準じて算出される。
【0015】
縮合リシノール酸は、主としてひまし油を原料とするリシノール酸を縮合したもので、その平均縮合度は酸価から算出する。本発明に使用する縮合度3以下の縮合リシノール酸の縮合度は、好ましくは2〜3のものが良い。また、縮合度4以上の縮合リシノール酸の縮合度は、好ましくは4〜10のものが良い。
本明細書において酸価から算出される平均縮合度(m)とは、末端分析法によって算出される値であり、次式(式3)及び(式4)から算出される。
(式3)分子量=280m+18
(式4)酸価=56110/分子量
前記酸価とは、油脂中の遊離脂肪酸の指標となる数値であり、1gの油脂に含まれる遊離の脂肪酸を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいい、水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、1996年度版」に準じて算出される。
【0016】
縮合リシノール酸の平均縮合度が3以下であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルと平均縮合度が4以上であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとの混合比率としては、前記縮合リシノール酸の平均縮合度が3以下であるエステルの含有率が15〜70重量%であることが好適である。この範囲の比率で混合を行うと水溶性物質の油溶化状態が格段に良化するからである。含有率が、15〜70重量%であれば、単に縮合リシノール酸の平均縮合度が3以下のエステルのみを使用した場合や、平均縮合度4以上のエステルのみを使用して油溶化した場合では成し得なかった透明性、安定性に優れた水溶性化合物の油溶化が可能となる。
【0017】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルは、例えば、次の方法によって製造することができる。リシノール酸に水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を加えた後、常圧もしくは減圧下において常法に従って縮合反応を行わせる。エステル化反応は、ポリグリセリンと縮合リシノール酸とを仕込み、常圧もしくは減圧下において常法に従って行わせる。エステル化反応は、仕込んだ縮合リシノール酸のほぼ全てがエステル化するまで反応させる。即ち、遊離の脂肪酸が殆どなくなるまで十分に反応させる。
【0018】
本発明で用いられる水溶性化合物としては、その種類に制限はなく、油脂中に溶解しない全ての化合物が使用できる。水溶性化合物には不純物が含まれていても良い。例えば、旨味料、着色料、苦味料、甘味料、酸味料、香辛料、保存料、天然エキス、ペプチド、アミノ酸、ミネラル、水溶性ビタミン、有機酸、蛋白質、糖質、無機塩類、澱粉、食物繊維、セルロース、香料、色素、抗酸化成分、酵素、菌類、生理活性物質、栄養強化剤、生薬エキス、抗アレルギー剤、抗生物質、抗腫瘍剤、ワクチン等が挙げられる。
【0019】
また、上記水溶性化合物は、親水性溶媒に溶解させた状態でも良い。親水性溶媒としては、特に制限はなく、具体的には蒸留水、精製水、エタノール、低級アルコール、エーテル類などが挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる油脂としては、特に制限されるものではなく、動物脂や動物油である動物油脂、又は、植物脂や植物油である植物油脂の何れであっても良い。動物脂としては、牛乳脂、ヤギ乳脂、牛脂、豚脂、羊脂が例示される。動物油としては、イワシ油、サバ油、サメ肝油が例示される。植物脂としては、ヤシ油、パーム油、カカオ脂、シア脂、木ロウパーム核油などである。植物油としては、乾性油、半乾性油及び不乾性油の何れであっても良く、乾性油としては、アマニ油、キリ油、サフラワー油、ブドウ種子油が例示され、半乾性油としては、大豆油、コーン油、ゴマ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油が例示され、不乾性油としては、オリーブ油、カラシ油、ツバキ油、ヒマシ油、落花生油、マカデミアンナッツ油ヘーゼルナッツ油が例示される。また、油脂に含まれる構成油脂を分別したものや水素添加油脂であっても良く、油脂が中鎖トリグリセライドやジグリセライドであっても良い。また、油脂には、ステロールやステロールエステルが添加されていても良い。
【0021】
本発明の油溶化剤には、必要に応じて他の成分を添加、配合することができる。添加、配合できる他の成分としては、糖類や多価アルコール、pH調製剤などが挙げられる。
【0022】
本実施形態における油脂は、従来から食品、化粧品、医薬品に使用されている通常の油脂と同様に使用することが可能である。食品としては、例えば、マヨネーズ、ドレッシングなどの水中油型乳化食品、マーガリン等の加工油脂製品、菓子類、水産練り製品、乳製品、飲料、スープ類、健康食品が挙げられる。化粧品としては、シャンプー、口紅、クリーム、乳液など、医薬品としては、栄養ドリンク、軟膏、カプセル剤、外用液剤、内用液剤などが挙げられる。
【0023】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0024】
(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル)
リシノール酸に水酸化ナトリウムを添加し、180℃〜220℃で縮合反応を行った。エステル化は、重量比がポリグリセリン:縮合リシノール酸=1:3〜8となるように調製し、180℃〜220℃で反応を行い、実施例および比較例のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを調製した。尚、エステル化を窒素気流下において撹拌しながら、酸価が1以下となるまで反応を行った。
【0025】
(試験方法)
試料の透明性は、紫外可視分光光度計(V−550、日本分光株式会社製)を用い、25℃で保存した試料の1日後、60日後の吸光度を測定した。測定波長は600nmとした。
【0026】
(実施例1)
テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度3)2.0重量%、テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度6)2.0重量%、畜肉エキス3重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、透明な油溶化物を得た。この試料を用いて、前記の方法により評価した。油溶化物の組成および結果を表1に示す。表中の数字の単位は重量%であり、また記号◎は、油溶化物の吸光度が0.07未満で透明な状態、記号○は、油溶化物の吸光度が0.07以上0.1未満の場合でくすんだ状態、記号△は、油溶化物の吸光度が0.1以上で白濁した状態、記号×は油溶化物が均一でなく、沈殿が生じた状態をそれぞれ表している。
【0027】
(実施例2)
ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度2)1.0重量%、ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度4)3.0重量%、畜肉エキス3重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、透明な油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表1に示す。
【0028】
(比較例1)
テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度3)0.5重量%、テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度6)3.5重量%、畜肉エキス3重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表1に示す。
【0029】
(比較例2)
ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度2)4.0重量%、畜肉エキス3重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表1に示す。
【0030】
(比較例3)
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(SYグリスターCR−ED、阪本薬品工業株式会社製)4.0重量%、畜肉エキス3重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表1に示す。
【0031】
(比較例4)
テトラグリセリンモノラウレート(SYグリスターML−310、阪本薬品工業株式会社製、HLB10.3)1.0重量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(SYグリスターCR−ED、阪本薬品工業株式会社製)3.5重量%、酵素分解レシチン(エルマイザーA、協和発酵工業株式会社製)1.0重量%、畜肉エキス3重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表1に示す。
【0032】
(比較例5)
70%ソルビトール水溶液15.0重量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(SYグリスターCR−ED、阪本薬品工業株式会社製)4.0重量%、畜肉エキス3重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表1に示す。
【0033】
(比較例6)
デカグリセリンドデカエルカ酸エステル4.0重量%、畜肉エキス3重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1において、本発明の実施例1及び2は、25℃で1日保存後と60日保存後の透明性が良好であり、透明な状態が安定に保持されている。しかし、油溶化剤として、縮合度3以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルのみで油溶化した比較例2、縮合度3以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含有量が15重量%以下である比較例1は、透明性、安定性において劣っている。また、HLBが6〜14の乳化剤、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、酵素分解レシチンで油溶化した比較例4、ポリオールを使用した比較例5、構成脂肪酸の不飽和度が15%以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた比較例6よりも本発明の実施例1及び2の方が、透明性、安定性に優れていることを確認した。
【0036】
(実施例3)
アスコルビン酸(和光純薬株式会社製)の25重量%水溶液を調製し、アスコルビン酸水溶液3重量%、テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度3)2.0重量%、テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度5)2.0重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、透明な油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表2に示す。
【0037】
(実施例4)
アスコルビン酸(和光純薬株式会社製)の25重量%水溶液を調製し、アスコルビン酸水溶液3重量%、ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度2)1.0重量%、ヘキサグリセリン縮合リシノール酸エステル(リシノール酸平均縮合度5)3.0重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、透明な油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表2に示す。
【0038】
(比較例7)
アスコルビン酸(和光純薬株式会社製)の25重量%水溶液を調製し、アスコルビン酸水溶液3重量%、テトラグリセリンモノラウレート(SYグリスターML−310、阪本薬品工業株式会社製、HLB10.3)1.0重量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(SYグリスターCR−ED、阪本薬品工業株式会社製)3.5重量%、酵素分解レシチン(エルマイザーA、協和発酵工業株式会社製)1.0重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表2に示す。
【0039】
(比較例8)
アスコルビン酸(和光純薬株式会社製)の25重量%水溶液を調製し、アスコルビン酸水溶液3重量%、70%ソルビトール水溶液15.0重量%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(SYグリスターCR−ED、阪本薬品工業株式会社製)4.0重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表2に示す。
【0040】
(比較例9)
アスコルビン酸(和光純薬株式会社製)の25重量%水溶液を調製し、アスコルビン酸水溶液3重量%、デカグリセリンドデカエルカ酸エステル4.0重量%を室温で均一に混合した。その後、大豆サラダ油を注入し、クレアミックス(エムテクニック株式会社製)にて18,000rpmで撹拌を行い、油溶化物を得た。この試料を用いて、実施例1と同様に評価した。この組成及び結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2において、本発明の実施例3及び4は、25℃で1日保存後と60日保存後の透明性が良好であり、透明な状態が安定に保持されている。しかし、本発明で示した範囲を逸脱した比較例のものは、白濁、あるいは沈殿が発生しており、水溶性化合物の油溶化剤として適していないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性化合物を油脂中に油溶化するポリグリセリン縮合リシノール酸エステルからなる水溶性化合物の油溶化剤であって、前記ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルが、縮合リシノール酸の平均縮合度が3以下であるエステルと、平均縮合度が4以上であるエステルとからなる混合物であり、前記縮合リシノール酸の平均縮合度が3以下であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルの含有率が15〜70重量%であることを特徴とする水溶性化合物用油溶化剤。
【請求項2】
請求項1に記載の油溶化剤を含有させた油脂。
【請求項3】
請求項2に記載の油脂を使用して製造された食品、化粧品、医薬品。

【公開番号】特開2007−70576(P2007−70576A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262314(P2005−262314)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】