説明

水溶性及び/又は水不溶性物質のための持続放出率の投与形態

【課題】 新規な投与形態の提供。
【手段】 水産養殖における植物、動物及び微生物のための、肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤のような水溶性及び/又は水不溶性の物質のための持続放出率の投与形態であって、前記物質が、それらが極めて低減された速度で経時的に決められた量で放出される、水に不溶性な支持体に、微細に分離された形態で個別に又は互いの混合物の形態により組み込まれ、前記支持体は高エネルギー放射線により架橋されたエラストマーであることを特徴とする、投与形態。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産養殖における植物、動物及び微生物のための肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤のような水溶性及び/又は水不溶性物質のための持続放出率の投与形態、そのような投与形態の調製方法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水産養殖における植物、動物及び微生物のための水溶性の肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤は、成長及び健康維持の最適条件を確実にするために、可能であればほぼ一定の濃度で長期間利用可能であるべきである。
【0003】
これは、とりわけ、肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤を、対応する投与量で又は少量ずつ連続して計量供給することによって達成することができる。しかし、これは相当な支出を少なくとも高い費用を必要とする。原則的に、肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤が放出される投与形態を開発し、確定量を経時的に、すなわち長時間ほぼ一定の濃度で、水性、特に水性流動媒質、すなわち水産養殖においてさえも放出するような持続率で利用可能にするという課題が存在する。しかし、全ての水溶性及び水不溶性の肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤に一般的に適用可能である方法は、現在まで知られていない。
【0004】
特許文献1によって、ポリウレタン発泡体中の尿素を含有する肥料及び他の肥料の持続放出肥料調合物が知られている。この肥料調合物は、包含する尿素が土壌に存在する水分によりゆっくりと放出され得るので、土壌培養における使用に適している。
【0005】
この肥料調合物では、ポリマーの開放気孔発泡体構造のために、水性又は流動水性媒質の影響下では、肥料が、急速に浸出する可能性があり、肥料の規定の持続放出が生じないので、水産養殖には完全に不適当である。
【0006】
更に、特許文献2によって、特に鉢植えに適している植物成長媒質が知られており、これも支持ポリマーとしてポリウレタン発泡体に基づいており、植物育種の土壌代替物として適している。この系では、肥料はイオン交換樹脂に化学的に結合しており、肥料イオンは、土壌系における水分の影響下でのイオン交換によりゆっくりと放出される。
【0007】
しかし、水性又は流動水性媒質では、含有されている肥料の放出は、支持ポリマーの発泡構造及びそれにより引き起こされる水の容易な接近のために、数時間又は数日内で、あまりにも急速に起こる。
【0008】
したがって、前記両方の肥料系は、肥料の放出があまりにも急速に起こり、液体又は粉末の純粋な肥料による施肥と同等になるので、水産養殖のような水性又は流動水性媒質における使用には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ国特許公開公報第1,592,755号
【特許文献2】ドイツ国特許公開公報第1,299,662号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の主な目的は、容易且つ安価に調製され、水産養殖のような水性媒質、特にまた流動性のあるものにおいても用いることができるようにそれぞれ改質することができる、水産養殖における植物、動物及び微生物のための水溶性及び/又は水不溶性の肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤のための、より強い持続放出率を持つ新規投与形態を開発することである。放出は、確定量を、経時的に、数日間及び数週間の間のみ、生じるべきである。更に、用いられる全ての材料は、環境に優しく無害であり、副作用を有さず、場合により容易に廃棄、さらには再生利用できることに、留意するべきである。更に、可能であれば、水不溶性及びほとんど水不溶性の物質も提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤のような前記水溶性及び/又は水不溶性物質を、それらが極めて低減された速度、すなわち数日間又は数週間以内でしか溶出又は浸出しない、水に不溶性な支持体に、微細に分離された形態で個別に又は混合物の形態により組み込むことによって達成される。この支持体は、エラストマー製である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
物質は、水産養殖に、すなわち静止水又は移動水に、数日以内から数か月まで、好ましくは4日間から4か月以内に放出される。
【0013】
「極めて低減された速度」とは、含有された成分の放出が、支持体内に結合していない同じ材料と比較して、23℃の静止水域において少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍、さらにより好ましくは少なくとも10倍遅延されることを意味する。
【0014】
エラストマーとしては、特に、架橋によって水に完全に不溶性になる高分子合成又は天然ゴム、好ましくはシリコーンゴムを使用することができる。組み込まれた物質が浸出した後、これらの支持体を環境に優しい方法で廃棄又は再生利用することができる。
【0015】
従来技術の開放気孔ポリウレタン発泡体と対照的に、肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤の放出は、微細に分散された物質を取り囲む、ポリマーの比較的薄い壁を通じての、全ての面からの浸透によって生じる。驚くべきことに、場合により含有されうるケイ酸塩改質成分も、水に実質的に不溶性である物質の徐放を可能にするが、水不溶性支持体の徐放は可能にしない。
【0016】
物質が微細に分離された形態は、例えば、結晶化又は機械的粉砕による調製の際に既に得られる。
【0017】
放出率を変更するために、非晶質若しくは結晶質シリカ、金属ケイ酸塩、モレキュラーシーブ及び/又は層状ケイ酸塩のような、付加的なケイ酸塩改質成分を、重合又は架橋する前に、上記の成分に加えることができる。ケイ酸塩改質成分は、肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤、及び含有微量元素の放出を制御する役割を果たす。炭酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素及び非結晶質シリカ、並びにこれらの混合物の添加は、主に増量剤として作用する。
【0018】
活性増強剤又は活性メディエータを、更に、製剤に加えてもよい。湿潤剤及びキレート剤は、この目的に特に適している。その例には、EDTA、HEEDTA、DTPA、NTA及びこれらの塩、並びに多座配位物質が挙げられる。
【0019】
本発明により使用される水溶性肥料及び栄養素には、最初に、周期表の第1及び第2主族、並びに多様な亜族の元素の塩、すなわち、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、モリブデン、スズ、ホウ素、バナジウムが含まれる。これらには、更に、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩、フッ化物、ヨウ化物、バナジウム酸塩、スズ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩、アジピン酸塩、一部の酸化物及び水酸化物、並びに尿素のような、無機及び有機アニオンとのアンモニウム塩が含まれる。
【0020】
有機肥料又は有機栄養素も適している。
【0021】
実施された実験の範囲内において、消毒作用物質(例えば、マラカイトグリーンシュウ酸塩、クリスタルバイオレット及びメチレンブルー)又は寄生虫に対して作用する作用物質(例えば、メトロニダゾール、フルベンダゾール及びメベンダゾール)のような、植物及び動物保護のための活性成分を、高分子支持体(それらは、水性又は流動水性系に接触したときに、決められた方法で、当該高分子支持体から長期間放出される)に、個別の物質として又は互いに組み合わせて及び/若しくは植物肥料と組み合わせて組み込むことができることも確立された。
【0022】
製剤及び放出率は、更に、シリコーン油、パラフィン油、グリコール又はグリセロールのフタル酸エステル及び/又はアジピン酸エステル、並びに脂肪酸エステルのような、化学的に不活性で非毒性の可塑剤により改質することができる。
【0023】
製剤は、肥料及び/又は栄養素を、0.1〜60重量%の量、好ましくは1〜50重量%の量で含有する。活性増強剤又は活性メディエータは、好ましくは、僅か0.1〜10重量%の量、好ましくは0.5〜5重量%の量で存在する。ケイ酸塩改質成分の典型的な量は、30重量%までである。
【0024】
可塑剤が含有される場合、それらの量は、1〜30重量%、特に3〜25重量%である。好ましくは、1重量%未満の可塑剤が含有される。
【0025】
したがって典型的な成分は、下記である(部):
ポリマー 100
改質成分 0−150
デポ型肥料 5−220
デポ型動物及び植物保護剤 0−50
活性増強剤 0−20
増量剤及び加工助剤 0−50
【0026】
最終製剤は、好ましくは、成形され、錠剤、顆粒剤、フレーク剤又はペレット剤の剤形で適用される。製剤は、立方形、円柱形、八面体、球体のような幾何学的形状に画定されていることもできる。
【0027】
投与形態の調製方法には、水溶性及び/又は水不溶性物質を重合性又は架橋性ポリマーと混合すること、続いて後者を高エネルギー放射線により架橋することが含まれ、生成される支持体はエラストマーである。
【0028】
新規投与形態の調製は、好ましくは、物質をケイ酸塩改質成分と予め組み合わせて、それに凝集させるか又は組み込ませ、次に、それらを有機支持体と混合するか、又はそれらを混合物として有機支持体と直接混合することによって、実施される。そのような重合は、好ましくは、触媒及び/又は架橋剤により実施される。しかし、高エネルギー放射線、特にアルファ又はベータ線により実施することもできる。10〜200kGyの放射線量を適用することができる。
【0029】
とりわけ天然ゴム及びシリコーンゴムは、非架橋であるが、架橋されうる物質として有用であることが実証されている。
【0030】
投与形態は、大部分が錠剤、顆粒剤、フレーク剤又はペレット剤に成形されるので、そのような成形は、不十分に架橋された中間生成物により実施することもできる。次に必要になる更なる重合又は架橋を、生成物が既に成形された後でも実施することができる。
【0031】
本発明により達成される個別の肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤の放出の遅延は、通常の方法によって測定することができる。必要であれば、組成物及び調合物を、追求される特性が適用の各分野においてかなり正確に達成されるように改質することができる。
【0032】
水により浸出する使用される生成物は、水に不溶性のポリマーから構成される。これらは、水系から容易に分離し、廃棄又は再生利用することができる。
【0033】
本発明は、更に、肥料、栄養素及び保護剤を水産養殖に組み込むための、
高エネルギー放射線により架橋されたエラストマーの形態である水に不溶性の支持体、及び
肥料、栄養素、保護剤及びこれらの混合物から選択される物質
を備えた、持続放出率の投与形態の使用、に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産養殖における植物、動物及び微生物のための、肥料及び/又は栄養素及び/又は保護剤のような水溶性及び/又は水不溶性の物質のための持続放出率の投与形態であって、前記物質が、微細に分離された形態で個別に又は互いの混合物の形態で水に不要な支持体中に組み込まれ、該物質は極めて低減された速度で経時的に決められた量で該支持体から放出され、前記支持体が高エネルギー放射線により架橋されたエラストマーであることを特徴とする、投与形態。
【請求項2】
前記支持体が、天然ゴム、合成ゴム又はシリコーンゴムから作製されることを特徴とする請求項1に記載の投与形態。
【請求項3】
支持体内の前記物質が、結晶質及び非晶質シリカ、金属ケイ酸塩、モレキュラーシーブ及び層状ケイ酸塩からなる群より選択されるケイ酸塩改質成分と混合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の投与形態。
【請求項4】
前記物質が、有機若しくは無機肥料塩及び/又は微量元素及び/又は有機栄養素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の投与形態。
【請求項5】
活性増強剤又は活性メディエータをさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の投与形態。
【請求項6】
前記活性増強剤又は活性メディエータが、架橋剤又はキレート剤であることを特徴とする請求項5に記載の投与形態。
【請求項7】
成形品、錠剤、顆粒剤、フレーク剤又はペレット剤の剤形であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の投与形態。
【請求項8】
水溶性及び/又は水不溶性物質を重合性又は架橋製ポリマーと混合し、続いて後者を高エネルギー放射線により架橋し、生成される支持体がエラストマーである請求項1〜7のいずれか1項に記載の投与形態の調製方法。
【請求項9】
前記水溶性及び/若しくは水不溶性物質を、ケイ酸塩改質成分と予め組み合わせて、それに凝集させるか若しくはその中に組み込ませ、次に有機重合性若しくは架橋性ポリマーと混合するか、又は前記物質及び改質成分を、重合性若しくは架橋性ポリマーと直接混合し、続いて架橋により固化することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記架橋が、アルファ又はベータ線により引き起こされることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記高エネルギー放射線を10〜200kGyの放射線量で用いることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
可塑剤が、前記重合又は架橋の前に投与形態に添加されることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
反応混合物が、架橋が完了する前又は完了した直後に、成形品、錠剤、顆粒剤、フレーク剤又はペレット剤に成形される請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
肥料、栄養素及び保護剤を水産養殖に組み込むための、
高エネルギー放射線により架橋されたエラストマーの形態である水に不溶性の支持体、及び
肥料、栄養素、保護剤及びこれらの混合物から選択される物質
を備えた、持続放出率の投与形態の使用。
【請求項15】
前記投与形態が、さらに、非晶質若しくは結晶質シリカ、金属ケイ酸塩、モレキュラーシーブ及び層状ケイ酸塩、及び/又は付加的な活性増強剤若しくは活性メディエータからなる群より選択されるケイ酸塩改質成分を含有することを特徴とする、請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2010−517898(P2010−517898A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546740(P2009−546740)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050702
【国際公開番号】WO2008/090150
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509207003)
【Fターム(参考)】