説明

水溶性感熱記録体

【課題】 本発明は、水への分散性あるいは溶解性、感熱プリンターで印字した際の発色感度、画像部の保存性(耐水性など)に優れるとともに、リターナブル容器用のラベルなどの用途に好適に用いられる有害物質や内分泌攪乱物質を含まない水溶性感熱記録体及び水溶性感熱記録体ラベルを提供することを目的とする。
【解決手段】 水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースを5〜100重量含有する層を少なくとも1層以上有する単層または2層以上の層状構造からなる支持体に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料および安全性の高い特定の電子受容性顕色剤を含有するする感熱記録層が塗設され、かつ基紙がアルカリ化剤を含有することを特徴とする水溶性感熱記録体とすることが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水との接触により容易に層間剥離、分散あるいは溶解する支持体上に感熱記録層を設けた感熱記録体及びこの感熱記録体の非塗工面に粘着層を設けた感熱記録体の粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の環境問題への関心の高まりから、リターナブル容器が注目されている。このリターナブル容器は、印刷あるいは印字された塗工紙の裏面に粘着層を設けた粘着ラベルが貼着されているのが一般的である。しかしながら、使用後にラベルを被着体より剥がすには手間のかかる洗浄作業を必要としている。この手間を軽減させるために、水に溶解する水溶性粘着剤を粘着層に用いることによって、ラベルの剥離性を向上させることが考えられるが、塗工層や基紙が粘着層への水の浸入を阻害するため、顕著な効果が発現されないといった問題があった。
【0003】
この問題に対応するため、水溶紙あるいは水分散紙を支持体とし、この支持体上に特定の構成の目止め層、感熱記録層を設け、非塗工面に粘着層を設けた水崩壊性感熱記録シート及びそれを用いた水崩壊性粘着シートが開示されており、リターナブル容器に貼着しているラベルを被着体から簡単に剥がすことを可能にしている(特許文献1)。また、多くの感熱記録体において、感熱記録層に含有される顕色剤としては、発色感度及びコストなどの点からビスフェノールAが使用されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−314623号公報
【特許文献2】特開平06−228052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の水崩壊性感熱記録シート及びそれを用いた水崩壊性粘着シートは、メチルエチルケトンなどの有毒な溶剤を使用しているため、洗浄後の排水にこの有害物質が含まれる可能性がある。
また、多くの感熱記録体で使用されている引用文献2の顕色剤(ビスフェノールA)は、記録画像部の保存性(耐水性など)が不十分であり、リターナブル容器などの用途に使用した場合、水滴、水蒸気などにより、画像部の判別が困難になる。さらに、ビスフェノールAは内分泌攪乱物質であるため、これが洗浄後の排水に含まれると様々な問題が発生するため、リターナブル容器のラベルとしては不適な材料である。
【0006】
そこで、本発明は、水への分散性あるいは溶解性、感熱プリンターで印字した際の発色感度、画像部の保存性(耐水性など)に優れるとともに、リターナブル容器用のラベルなどの用途に好適に用いられる有害物質や内分泌攪乱物質を含まない水溶性感熱記録体及び水溶性感熱記録体ラベルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースを5〜100重量含有する層を少なくとも1層以上有する単層または2層以上の層状構造からなる支持体に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料および安全性の高い特定の電子受容性顕色剤を含有するする感熱記録層が塗設され、かつ基紙がアルカリ化剤を含有することを特徴とする水溶性感熱記録体とすることが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水への分散性あるいは溶解性、感熱プリンターで印字した際の発色感度、画像部の保存性(耐水性など)に優れるとともに、リターナブル容器用のラベルなどの用途に好適に用いられる有害物質や内分泌攪乱物質を含まない水溶性感熱記録体及び水溶性感熱記録体ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水溶性感熱記録体は、まず、水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースを含有した支持体上に感熱記録層、あるいはアンダー層及び感熱記録層を塗設(塗工・乾燥)させ、感熱記録体を作製する。次に、この感熱記録体の支持体にアルカリ化剤を含有させることにより、支持体の繊維状カルボキシアルキルセルロースの酸性であるカルボキシアルキル基とアルカリ化剤が反応し、水溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースとアルカリとの塩が形成される。以上により、水への分散性あるいは溶解性に優れる支持体上に感熱記録層を有した本発明の水溶性感熱記録体を得ることができる。また、この水溶性感熱記録体の非感熱記録層面に粘着剤層を塗設または貼着することによって、水溶性感熱記録体の粘着ラベルを得ることができる。
【0010】
なお、水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースは水不溶性であり、この水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースを含有した支持体は、水による過度な膨潤を起こさないため、アンダー層あるいは感熱記録層を塗設する際に、支持体の強度低下による断紙が発生することはない。
【0011】
本発明の支持体に含有される水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースとは、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維を公知の方法でカルボキシアルキル化したものであり、具体例として、繊維状カルボキシメチルセルロース、繊維状カルボキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0012】
また、繊維状カルボキシアルキルセルロースのカルボキシアルキル基の置換度は0.2〜1.0、好ましくは0.4〜0.6である。置換度が0.2に満たない場合は、アルカリ化剤によりカルボキシアルキルセルロース塩に変換しても水に対する膨潤性や水溶性が低く、水による層剥離性、分散性、溶解性が不十分となる。また、置換度が1.0を越える場合、水に対して溶解しにくい酸型のカルボキシアルキル基であっても水により膨潤しやすくなり、支持体の強度が低下するため、アンダー層や感熱記録層などの水系の塗料をを塗設する際に断紙などの問題が発生する可能性が高くなる。
【0013】
本発明の支持体において、水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースと他の製紙用水分散性繊維を併用することができる。製紙用水分散性繊維としては、一般に製紙用に用いられている木材パルプ繊維または非木材系パルプ繊維、例えば、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、溶解パルプ、マーセル化パルプ等の木材パルプ繊維、亜麻パルプ、マニラ麻パルプ、ケナフパルプ等の非木材系パルプ繊維、リヨセル等の精製セルロース繊維等を挙げることができる。
【0014】
製紙用水分散性繊維の平均繊維長としては、0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mm、さらに好ましくは0.8〜2mmである。製紙用水分散性繊維は、水中で分散させ、カナダ標準形ろ水度が250〜700mlCSF、より好ましくは550〜650mlCSFに叩解を施してから使用することが好ましい。
【0015】
カナダ標準形ろ水度が250mlCSF未満になるまで叩解した場合、繊維のフィブリル化、切断、内部膨潤が多くなり、支持体の密度、強度、平滑度が高まり緻密で塗工層の塗設に適した性能が得られるが、水分散性は不十分なものとなる。一方、叩解の程度が低すぎると水分散性は良好となるが、強度、平滑度が不十分になり多孔質で塗工層の塗設には不適切になる。このため、水分散性と支持体としての適性の両立が可能な叩解の程度は250〜700mlCSFであり、望ましくは550〜650mlCSFである。
【0016】
支持体中の繊維状カルボキシアルキルセルロース配合率は5〜100重量%、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜60重量%である。繊維状カルボキシアルキルセルロース配合率が5重量%に満たない場合は、アルカリ化剤塗工後の水膨潤性ないし水分散性が不十分となり好ましくない。
【0017】
支持体は繊維状カルボキシアルキルセルロースを必須成分とする単層構造として形成できるが、繊維状カルボキシアルキルセルロース配合率の異なる2層以上の多層積層体としても良い。基紙を多層構造にした場合、塗工層側に木材パルプの配合が多く緻密で平滑性の高い層を配し、非塗工面側には繊維状カルボキシアルキルセルロース配合率が多く低密度で吸液性の高い層を配することで、水と接触した場合の剥離性や分散性を高めることができる。
【0018】
本発明において、水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースを含有する支持体として、10〜200g/mの坪量のものを用いることができ、好ましくは30g/m以上、より好ましくは50g/m以上、更に好ましくは50〜120g/m2である。また、支持体を多層構造とした場合の各層の坪量は5〜100g/m、好ましくは10〜100g/mの範囲のものが用いられ、繊維状カルボキシセルロースを5重量%以上、より好ましくは30重量%以上含有する層は支持体の全坪量に対して50重量%以上あることが望ましい。
【0019】
本発明において、支持体上に顔料およびバインダーを主成分として含有するアンダーコート塗工層、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料および安定性の高い特定の電子受容性顕色剤とを主成分として含有する感熱記録層を順次塗設することが好ましい。
【0020】
アンダーコート層は、感熱記録体において、支持体表面の平滑性を高めて画像のシャープネスと高感度を達成するために塗設されるもので、公知の充填剤、結合剤、各種添加剤を適宜選択して用いることができる。また、アンダー層を塗設しない場合、アルカリ化剤を含有した支持体と感熱記録層が直に接することにより、発色感度が低下する可能性があるためアンダー層を塗設することは望ましい。
【0021】
本発明において、支持体の平滑性は特に限定されないが、一般的には高平滑な表面が好まれ、ヤンキードライヤー、カレンダーで処理されることが好ましい。
【0022】
本発明において、アンダーコート層の顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、などの無機填料またはメラミン樹脂填料、尿素−ホルマリン樹脂填料、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダーなどの有機充填剤が挙げられる。
【0023】
本発明において、アンダーコート層のバインダーとしては水溶性樹脂または水分散性樹脂が好ましく、具体的にはデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体及びそのアルカリ塩、ポリアクリル酸ソーダ等が挙げられる。これらの中でも水剥離性の観点から、水溶性樹脂であるデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンをバインダーの主成分として使用することが望ましい。
【0024】
アンダーコート層の結合剤は、通常、充填剤100重量部に対して固形分で5〜100重量部である。アンダーコート層には、充填剤及び結合剤のほか、慣用的に使用される各種添加剤を併用できる。各種添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、潤滑剤、紫外線吸収剤、サイズ剤、増感剤、蛍光染料、防腐剤等が挙げられる。
【0025】
本発明において、アンダーコート層は、前記顔料及びバインダーとその他の添加剤を分散混合して得られる塗料を、一層あるいは多層に分けて塗工・乾燥することによって得られ、その塗工量は、乾燥後の重量として通常0.5〜50g/m2、好ましくは3〜20g/m2である。塗工方法は特に限定されないが、エアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター、ダイコーター等が例示することができる。
【0026】
本発明において、感熱記録層に含有される無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料(以下、単に「染料」ということがある。)としては、公知のロイコ染料を単独又は2種以上混合して使用することができ、特にトリフェニルメタン系、フルオラン系、フエノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等の染料のロイコ化合物が好ましく用いられる。
【0027】
具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3'−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N,n−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6'−クロロ−8'−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6'−ブロモ−3'−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−クロルフェニル)フタリド、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−ニトロフェニル)フタリド、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジエチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−メチルフェニル)フタリド、3−(2'−メトキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−ヒドロキシ−4'−クロル−5'−メチルフェニル)フタリド、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、
【0028】
3−ピロリジノ−7−m−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3')−6'−ジメチルアミノフタリド、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4'−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4',5'−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソプロピル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2',4'−ジメチルアニリノ)フルオラン等である。
【0029】
本発明の水溶性感熱記録体および水溶性感熱記録体の粘着シートは使用後に排水溝ヘ洗い流される用途として使用される可能性もあることから、環境面を考慮し、これらの中でもより安全性の高い染料として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−エチル−N−4−メチルフェニルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−メチルアニリノ)フルオラン、3,3’−ビス(ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチル−インドール−3−イル)フタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ブロモ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン等が好ましく使用される。
【0030】
本発明において、感熱記録層に含有される顕色剤は、一般公知の材料を使用することができるが、水溶性感熱記録体および水溶性感熱記録体に排水溝ヘ洗い流される用途として使用される可能性もあることから、環境面を考慮し、以下に示す化合物のいずれかであることが好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
Rはハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4の直鎖または分岐の飽和または不飽和炭化水素を表すが、飽和炭化水素基の炭素数は好ましく1〜5、より好ましくは1〜4であり、飽和炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、t−アミル等が挙げられる。また、不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは2〜5であり、不飽和炭化水素基として、例えば、エチレン、1−n−プロベニル、2−n−プロベニル、イソプロベニル、1−n−ブテン、2−n−ブテン、3−n−ブテン等が挙げられる。
R'は炭素数1〜4のアルケニル基を表すが、炭素数3が好ましい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられ、アリル基が好ましい。nは0〜2の整数を表すが、n=0または1が好ましい。
【0033】
この他に、4−ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド、パラヒドロキシ安息香酸ベンジル、3−{[(フェニルアミノ)カルボニル]アミノ}ベンゼンスルホンアミド、N−(4’−ヒドロキシフェニルチオ)アセチル−2−ヒドロキシアニリン、N−(4’−ヒドロキシフェニルチオ)アセチル−4−ヒドロキシアニリンとN−(4’−ヒドロキシフェニルチオ)アセチル−2−ヒドロキシアニリンとの1:1混合物、2,2’−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニルスルホン)フェノキシ〕ジフェニルエーテルを含有する顕色剤組成物、2,2’−メチレンビス(4−t−ブチルフェノール)を含有する縮合組成物、2,4’―ジヒドロキシジフェニルスルホン等が好ましく使用される。これらの顕色剤の中でも、発色感度と耐水性のバランスの面から、4−ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド、一般式(化1)に示す化合物のいずれかであることが特に好ましい。
【0034】
本発明の感熱記録層には公知の結合剤を使用することができる。具体例しては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、エチルセルロース、アセチルセルロースのようなセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラールポリスチロールおよびそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂等の非水溶性樹脂を例示することができる。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン、エステル、炭化水素等の溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することも出来る。これらの中でも水溶性の観点から、水溶性樹脂であるデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンをバインダーの主成分として使用することが望ましい。
【0035】
感熱記録層には、前記ロイコ染料、顕色剤および結合剤と共に、必要に応じ、補助添加成分、例えば、増感剤、充填剤、p−ニトロ安息香酸金属塩(Ca、Zn)又はフタル酸モノベンジルエステル金属塩(Ca、Zn)等の安定剤、脂肪酸金属塩などの離型剤、ワックス類などの滑剤、圧力発色防止剤、ベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、グリオキザールなどの耐水化剤、分散剤、消泡剤等を併用することができる。
【0036】
熱応答性を向上させる増感剤としては熱可融性物質が用いられ、50〜200℃程度の融点を持つ熱可融性有機化合物等を使用することができる。具体例としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−ヒドロキシメチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−ステアリル尿素、ベンジル−2−ナフチルエーテル、m−ターフェニル、4−ベンジルビフェニル、2,2'−ビス(4−メトキシフェノキシ)ジエチルエーテル、α,α’−ジフェノキシキシレン、ビス(4−メトキシフェニル)エーテル、アジピン酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(4−クロルベンジル)エステル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジベンジル、ベンゼンスルホン酸フェニルエステル、ビス(4−アリルオキシフェニル)スルホン、4−アセチルアセトフェノン、アセト酢酸アニリド類、脂肪酸アニリド類、モンタン系ワックス、ポリエチレンワックス、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル=−ナフチルカーボネート、1,4−ジエトキシナフタリン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ(p−メチルベンジル)、=−ベンジルオキシナフタレン、4−ビフェニルp−トリルエーテル、o−キシレリン−ビス−(フェニルエーテル)、4−(m−メチルフェノキシメチル)ビフェニル等が列挙される。
【0037】
本発明の水剥離性塗工紙は使用後に排水溝ヘ洗い流される用途として使用される可能性もあることから、環境面を考慮し、これらの中でもより安全性の高い増感剤として、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、パラベンジルオキシ安息香酸ベンジル、4−ビフェニルパラトリルエーテル、シュウ酸ビス(パラメチルベンジル)、シュウ酸ビス(パラクロロベンジル)、パラベンジルビフェニル、1,2−ビス(フェノキシメチル)ベンゼン、パラトルエンスルホンアミド、オルトトルエンスルホンアミド、ジフェニルスルホン、ベンジルオキシナフタレン、パラフェニルアセトフェノン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン等が好ましく使用される。
【0038】
感熱記録層に使用される顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ、アルミノケイ酸マグネシウム、などの無機填料またはメラミン樹脂填料、尿素−ホルマリン樹脂填料、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダーなどの有機充填剤が挙げられる。
【0039】
本発明において、顕色剤及び染料の量、その他の各種成分の種類及び量は要求される性能および記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常ロイコ染料1重量部に対して、有機顕色剤0.5〜10重量部、増感剤0.5〜10重量部を使用し、結合剤は全固形分中5〜50重量%が適当である。前述の顕色剤、染料並びに必要に応じて添加する材料はボールミル、アトライター、サンドグラインダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダー及び目的に応じて各種の添加材料を加えて塗料とする。
【0040】
感熱記録層の形成方法については特に限定されず、例えば平版等の各種印刷方式をはじめ、エアナイフ塗工、ロッドブレード塗工、バー塗工、ブレード塗工、グラビア塗工、カーテン塗工等の方法によって塗液を基紙上に塗工乾燥する方法で形成される。また、塗液の塗工量については、通常2〜12g、好ましくは3〜10g程度の範囲である。
【0041】
本発明において、感熱記録層上に、保護層を塗設することが可能であり、この保護層の効果としてサーマルヘッド等のマッチング性や記録画像保存性を向上させることができる。なお、保護層に用いる顔料、バインダー、各種助剤、形成方法は感熱記録層の材料及び方法を使用することができる。なお、保護層の塗工量は、乾燥後の重量として通常0.2〜10g/m、好ましくは0.5〜5g/mである。
【0042】
本発明において、画像のシャープネスおよび感度の向上を目的に、アルカリ化剤を含有させた水溶性感熱記録体にカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトニップカレンダー等の平滑化装置を用いて感熱記録層側の表面平滑性を高めることは好ましい。感熱記録層側表面のベック平滑度は50〜2000sにすることが好ましく、より好ましくは100〜2000sである。ベック平滑度が50sに満たない場合は、印字画質の向上効果が乏しく平滑処理の効果がない。また、ベック平滑度が2000sを越えると、基紙の密度向上による水分散性の低下が目立つようになり好ましくない。
【0043】
本発明においては、感熱記録層あるいはアンダー層と感熱記録層を塗設した支持体にアルカリ化剤を含有させることが必要である。支持体にアルカリ化剤を含有させることにより、基紙中の水不溶性繊維状カルボキシアルキルセルロースは中和反応により水溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロース塩に変換され、基紙は水中で繊維が膨順、離解し易くなり、水分散性となる。
【0044】
アルカリ化剤とはアルカリ性化合物の水溶液であり、具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩並びに炭酸水素塩、リン酸水素ナトリウム等のアルカリ金属のリン酸塩、リン酸水素塩、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属の有機酸塩、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアおよびアンモニウム塩、エタノールアミン等のアミン類、分子量1000以下のポリエチレンイミン等の水溶液を例として挙げることができる。
【0045】
これらのアルカリ性化合物を塗工する量は、支持体中の繊維状カルボキシメチルセルロースの中和当量以上、好ましくは中和当量の1〜3倍量とすることが必要である。アルカリ性化合物の量が中和当量に満たない場合、水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースが残るため、十分な水分散性を得ることが困難となる上、経時でカルボキシアルキルセルロース同士が結合し溶解性が大きく低下する。また、アルカリ性化合物の量が中和当量の3倍を越えると、基紙中に残留するアルカリ性化合物の影響で、基紙の変色、強度低下等の外観、材質変化が起こるため好ましくない。
【0046】
支持体に対するアルカリ性化合物の含有率は、支持体の坪量、繊維状カルボキシアルキルセルロースの置換度および配合率、使用するアルカリ性化合物の種類等により異なるため適宜調整することが望ましい。なお、一例を挙げると炭酸ナトリウムの場合、支持体重量に対して0.3〜67重量%、水酸化ナトリウムの場合は基紙重量に対して0.2〜51重量% である。
【0047】
アルカリ化剤は、上記アルカリ性化合物の水溶液または該水溶液と相溶性のある水性有機溶媒との混合液として、公知のエアナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、チャンプレックスコーター、グラビアコーター等の塗工方法を用いて塗工される。
【0048】
また、使用する塗工方法に適した粘度に調整することや、乾燥後にアルカリ性化合物が脱落するのを防ぐために、上記アルカリ性化合物の水溶液の中に、該水溶液と相溶性のある水溶性高分子を配合しても良い。使用できる水溶性高分子としては、澱粉および澱粉誘導体類、カルボキシアルキルセルロース塩等のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩等が列挙される。さらに、アルカリ化合物水溶液の保水性が高い(アルカリ化合物水溶液が基紙に浸透しにくい)場合にはアルカリ化合物水溶液が基紙全体に均一に浸透しにくくなるため、水分散性が低下する可能性があり、逆に保水性が低い(アルカリ化合物水溶液が基紙に浸透しやすい)場合にはアルカリ化合物水溶液が感熱記録層の発色に影響を与える可能性がある。このため、アルカリ化合物水溶液は、塗工する基紙に対する保水性を保水剤により調整することが望ましい。この保水剤の例として、澱粉および澱粉誘導体類、カルボキシアルキルセルロース塩やヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸塩やキサンタンガム等の天然高分子系保水剤、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カゼイン等が挙げられることができるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、本発明における保水性とは一定の圧力・温度・時間における基紙に塗工液が浸透した量(g/m2)を測定した値であり、この保水性の測定に用いられる装置の一例としては、AA−GWRウォーターリテンションメーターModel250(Kaltec社製、測定条件:圧0.5Bar、時間 40秒、塗工液量20ml、使用フィルター GWR420)が挙げられる。
【0049】
本発明の水溶性感熱記録体はラベルとして好適に用いられる。例えば、リターナブル容器の宛先表示ラベルとして貼付し、送り先到着後に水で洗い流すのみで、該表示ラベルを容器から取り除くことが可能となるので、ラベルを手で剥がす手間が省け、リターナブル容器の運用効率が向上する。
【0050】
本発明の塗工紙を用いた粘着シートは、塗工層(印刷あるいは印字面)とは反対側面に、粘着剤層を設けたものである。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、水溶性又は水再分散性を有する粘着剤、特にアクリル系粘着剤が好適に用いられる。
【0051】
水溶性アクリル系粘着剤の例としては、アクリル酸アルコキシアルキルとスチレンスルホン酸塩と他の共重合性単量体とからなる共重合体や、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体と水酸基含有単量体と場合により用いられる共重合可能な他の単量体との共重合体をベースポリマーとして含有するものなどを挙げることができる。
また、水再分散性アクリル系粘着剤の例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有ビニル系単量体とアルコキシ基を有するビニル系単量体と場合により用いられる共重合可能な他の単量体との共重合体や、カルボキシル化ロジンエステル含有ビニル系単量体とカルボキシル基含有ビニル系単量体と水溶性ビニル系単量体が共重合されてなる共重合体をベースポリマーとして含有するものなどを挙げることができる。なお、これらの共重合体のカルボキシル基は、必要に応じ一部又は全部がアルカリにより中和された塩型であってもよく、アルカリ金属塩、アミン塩、アルカノールアミン塩が好適に用いられる。
【0052】
これらのアクリル系粘着剤には、粘着力や水溶性または水分散性の調整のために架橋剤を配合することができる。このような架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば1,2−エチレンジイソシアネートのようなイソシアネート系架橋剤、ジグリシジルエーテル類のようなエポキシ系架橋剤をはじめ、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられる。また、前記アクリル系粘着剤には、必要に応じ性状を調整し、性能を高めるために、従来公知の可塑剤、粘着性付与剤、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、防黴剤、酸化防止剤等を適宜配合することができる。
【0053】
ここで、可塑剤、粘着性付与剤は水溶性又は水分散性のものが好ましく、可塑剤としては、例えば糖アルコールなどの多価アルコール、ポリエーテルポリオール、酸化ロジンのアルカノールアミン塩などが挙げられ、粘着付与剤としては、例えばロジン、不均化ロジン、水添ロジンなどのアルカリ金属塩や、アンモニウム塩、ポリエーテルエステルなどが挙げられる。
【0054】
これらの粘着剤は、支持体のアルカリ化剤塗工面に直接塗布して粘着剤層を設けてもよいし、剥離シートの剥離剤表面上に粘着剤を塗布して粘着剤層を設けたのち、これを支持体のアルカリ化剤塗工面に貼着し、該粘着剤層を転写してもよい。何れの場合も、粘着剤層は使用時以外での不要な粘着を防ぐために剥離シートを貼合し、所望により剥がして使用してもよい。
【0055】
支持体に設けられる粘着剤層の塗工量は固形分として3〜60g/m2、好ましくは10〜50g/m2程度である。粘着剤塗工量が5g/m2未満では、得られる粘着シートの接着性能が不足し、一方、60g/m2を越えると粘着シートの製造時や後加工工程で粘着剤がはみ出し易くなり好ましくない。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、例中の部数および%は特に断わらない限り、それぞれ重量部および重量%を示す。
【0057】
以下の実施例において印字性、水剥離性、水分散性などの評価方法は、次のようにして行った。
<印字性:感熱プリンター>
Zebra社製「バーコードプリンター140XiIII」を用いて印字した。サーマルヘッドの発熱エネルギー0.35mJで印字した試料の印字部分及び未印字部分の地肌を「マクベスRD−918型」反射濃度計にて測定した。印字部分の測定値は大きいほど発色感度に優れ、未印字部分の地肌は小さいほど、地肌かぶりが少なく優れている。
【0058】
<水分散性>
23℃、50%RHの雰囲気で24時間以上調和させた試料から3cm角の試験片5枚を作製した。次に300mlビーカーに脱イオン水300mlを入れてスターラーで650rpmに攪拌しながら上記試験片1枚を投入した。試験片が2つ以上に千切れる時間をストップウォッチで求め、5回の測定の平均値を水分散時間とした。水分散時間が短いほど水分散性は優れており、水分散時間30秒以内を水分散性優秀(第1表に記号◎で表記)、60秒以内を水分散性良好(第1表に記号○で表記)、60秒を越えるものを不溶(第1表に記号×で表記)と評価した。
【0059】
<耐水性>
作製した感熱記録体について、印字試験機(大倉電機社製:TH−PMD)を用いて印加エネルギー0.35mJ/dotでベタ印字し、水道水に浸漬させた状態で23℃、50%Rhの環境下で24時間静置した後、印字部の記録濃度をマクベス反射濃度計RD-918で測定し、処理前後の値から残存率を算出し、耐水性を評価した。
残存率(%)=(処理後の記録濃度/処理前の記録濃度)×100
○: 残存率50%以上
×: 残存率50%未満
【0060】
[実施例1]
(基紙の作製)
針葉樹晒クラフトパルプをカナダろ水度550mlCSFまで叩解したもの50重量部と、繊維状カルボキシメチルセルロース(エーテル化度0.43)50重量部を配合した抄紙原料を調成し、円網ヤンキードライヤー式抄紙機(抄速:40m/min)を用いて坪量55g/m2の支持体をを製造した。支持体はヤンキードライヤー接触側の表面の平滑度が12s、反対面の平滑度は3sで、基紙は縦方向の湿潤引張強さが0.12kN/mで水分散性を有さないものであった。
【0061】
(アンダー層の塗設)
支持体に、焼成カオリン(XC1300F ECC製 吸油量70ml/100g)100部、分散剤 0.2部、10%PVA溶液80部、水50部からなるアンダー層塗液を乾燥重量10g/m2となるようにブレードコーター(塗工速度:300m/min)を用いて塗工・乾燥させアンダー層を形成した。
【0062】
(感熱記録層の塗設)
上記アンダー層の上に、顕色剤分散液36.0部、染料分散液9.2部、増感剤分散液12.0部、炭酸カルシウム(Brilliant−15白石工業製 平均粒子径0.20=50%分散液)12.0部からなる感熱記録層塗液を乾燥重量が6g/mになるようにバーコーター(塗工速度:300m/min)を用いて、塗工・乾燥(50℃)させ感熱記録層を形成した。この際に使用した顕色剤分散液、染料分散液、増感剤分散液はそれぞれ次のようにして調製した。
(顕色剤分散液)
10%PVA水溶液18.8部、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン6.0部、水11.2部を分散させサンドグラインダーを用いて平均粒子径lμmに粉砕した。
【0063】
(染料分散液)
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成株式会社製、ODB−2)2.0部、10%PVA水溶液4.6部、水2.6部を分散させサンドグラインダーを用いて平均粒子径lμmに粉砕した。
【0064】
(増感剤分散液)
1,2-ジ-(3−メチルフェノキシ)エタン(三光株式会社製、KS232)4.0部、10%PVA水溶液5.0部、水3.0部を分散させサンドグラインダーを用いて平均粒子径lμmに粉砕した。
【0065】
(アルカリ化剤の含有)
次に、基紙の感熱記録層の反対面に、10重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液を塗工量が中和当量の1.5倍に相当する5g/m2(乾燥重量)になるようにダイコーターを用いて塗工速度80m/minで塗工・乾燥(50℃)させ、アルカリ化剤層を基紙に含有させた。
【0066】
(平滑化処理)
上記アルカリ化剤層塗設後に、カレンダーを用いて感熱記録層面のべック平滑度が200〜300秒になるように仕上げ、本発明の水崩壊性塗工紙(感熱記録紙)を得た。このようにして作成した水剥離性塗工紙の性能(印字性、水剥離性、水分散性)を評価した。
【0067】
(粘着剤層の塗設)
水溶性のエマルジョン型アクリル系粘着剤[日本カーバイド工業(株)製、商品名「ニカゾールHS−002」、固形分濃度40重量%]100重量部、エポキシ樹脂系硬化剤[日本カーバイド工業(株)製、商品名「FX−931」、固形分濃度10重量%]2重量部を混合し粘着剤塗液を調製した。この粘着剤塗液をシリコーン剥離剤塗布した剥離シート[三島製紙(株)製、「35SIP」、坪量36g/m2]の剥離処理面に固形分として30g/m2塗布乾燥して、粘着剤層を設けた。この粘着剤層と上記保護層を設けた感熱記録紙のアルカリ化剤層側の基材面とを貼り合せ、粘着剤層付きの感熱記録紙を製造した。なお、水分散性試験時には剥離シートを剥がした上で、評価を実施した。
【0068】
[実施例2]
実施例1の感熱記録層塗液中の顕色剤を、4,4‘―ジヒドロキシジフェニルスルホン(日華化学社製)に変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を製造した。
【0069】
[実施例3]
実施例1の感熱記録層塗液中の顕色剤を、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン(日華化学株式会社製、BPS−MAE)に変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を製造した。
【0070】
[実施例4]
実施例1の感熱記録層塗液中の顕色剤を、4−ヒドロキシベンゼンスルホンアニリド(三光株式会社製、FS001)に変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を製造した。
【0071】
[実施例5]
実施例1の感熱記録層塗液中の顕色剤を、2,2'−メチレンビス(4−t−ブチルフェノール)を含有する縮合組成物(エーピーアイコーポレーション社製、商品名:トミラック224)に変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を製造した。
【0072】
[比較例1]
実施例1の感熱記録層塗液中の顕色剤を、4,4'―イソプロピリデンージフェノール(三菱化学社製、ビスフェノールA)に変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録体を製造した。
【0073】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性の繊維状カルボキシアルキルセルロースを5〜100重量含有する層を少なくとも1層以上有する単層または2層以上の層状構造からなる支持体に、無色ないし淡色の電子供与性ロイコ染料および電子受容性顕色剤を含有するする感熱記録層が塗設され、かつ基紙がアルカリ化剤を含有することを特徴とする水溶性感熱記録体。
【請求項2】
前記電子受容性顕色剤が、下記一般式(化1)であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性感熱記録体。
【化1】

(Rはハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4の直鎖または分岐の飽和または不飽和炭化水素、R'は炭素数1〜4のアルケニル基を表す。)
【請求項3】
前記電子受容性顕色剤が、4−ヒドロキシベンゼンスルホンアニリドであることを特徴とする請求項1に記載の水溶性感熱記録体。
【請求項4】
前記支持体の坪量が、30g/m以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の水溶性感熱記録体。
【請求項5】
前記支持体と感熱記録層の間に、アンダー層を設けることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載の水溶性感熱記録体。
【請求項6】
前記支持体の非感熱記録層面に粘着剤層を塗設または貼着することを特徴とする請求項1〜請求項5に記載の水溶性感熱記録体の粘着シート。

【公開番号】特開2012−61612(P2012−61612A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205192(P2010−205192)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(000176637)日本製紙パピリア株式会社 (26)
【Fターム(参考)】