説明

水溶性樹脂粒子

【課題】 水溶解性に優れ、水溶解時にままこの発生がなく、従来より溶解時間を大幅に短縮できる水溶性樹脂粒子を提供する。
【解決手段】 水溶性ビニルモノマーを必須構成単位とする水溶性(共)重合体を含有してなり、0.2重量%水溶液粘度測定法における溶解撹拌開始から60分後の粘度(V2)と10分後の粘度(V1)との比(V2/V1)が10〜50である水溶性樹脂粒子;および該水溶性樹脂粒子を含有してなる高分子凝集剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性樹脂粒子に関する。さらに詳しくは、水溶解性、凝集性能に優れる水溶性樹脂粒子、および該水溶性樹脂粒子を含有してなる高分子凝集剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水溶性(共)重合体、特に高分子量の水溶性(共)重合体を含有してなる水溶性樹脂粒子は、高分子凝集剤として、下水汚泥等の汚泥脱水剤、製紙工程での濾水歩留向上剤・紙力増強剤、増粘剤の他、石油の3次回収用薬剤等、種々の用途で使用されている。
このような水溶性(共)重合体としては、カチオン性(共)重合体、両性(共)重合体が使用されることが多い。具体的には、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級塩カチオン性単量体を主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリルアミド等のノニオン性単量体を共重合させて得られる(共)重合体、並びにカチオン性単量体、ノニオン性単量体に加えさらに(メタ)アクリル酸等のアニオン性単量体を共重合させて得られる両性共重合体等が挙げられる。
【0003】
水溶性(共)重合体を含有してなる水溶性樹脂粒子の製造は、一般的に、モノマー水溶液を重合させて含水ゲルを得る第1工程、該含水ゲルをミンチ機等でせん断して細断ゲルを得る第2工程、該細断ゲルを乾燥機等で水分を蒸発させ、さらに粉砕することで粉末状の水溶性(共)重合体を得る第3工程によって行われる。
しかしながら、実際の製造では、第2工程で含水ゲルのせん断時に含水ゲルが機械金属表面に付着する、一旦せん断された細断ゲル同士の再付着で細断ゲルのサイズにバラツキが発生する、第3工程での乾燥時に細断ゲルサイズのバラツキにより乾燥物の含水率にバラツキが発生する、該バラツキにより解砕時の粉末粒度分布が広がり、水に溶解させる際に微粉が密集している状態ではままこになりやすいため、水の量と粉末の量の割合を一定にすることで微粉の分散を促す粉体供給機等の特別な装置が必要になる、等の問題があった。
【0004】
従来、水溶解時におけるままこの発生を防止するために、水溶性固体低分子化合物の微粉末を高分子凝集剤にコートする方法(例えば特許文献1参照)、セメントおよび粉末状セッコウから生成するカルシウムスルホアルミネートの微粉末を高分子凝集剤に添加する方法(例えば特許文献2参照)、重合前のモノマー水溶液にオキシエチレン鎖とオキシプロピレン鎖を含む非イオン性界面活性剤を添加することで粉砕時の微粉発生を少なくする方法(例えば特許文献3参照)等が検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−76108号公報
【特許文献2】特開2001−129309号公報
【特許文献3】特開2003−251106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1および2は、乾燥後の水溶性(共)重合体の粉末粒子に水溶性固体低分子化合物の微粉末を添加してままこを防止しようとするもので、水溶性(共)重合体の粉末粒子の全てを被覆するために大量の該低分子化合物が添加され、高分子凝集剤としての使用量が結局多くなるといった問題がある。
また、特許文献3は、オキシエチレン鎖とオキシプロピレン鎖を含む非イオン性界面活性剤をあらかじめモノマー水溶液に添加して重合させることで、含水ゲルのせん断時における細断ゲルサイズのバラツキを抑制し、ままこの原因となる粉砕時の微粉発生を少なくしようとするものであるが、ゲル同士の再付着防止が十分ではなく、乾燥後の粉砕では微粉発生がやはり避けられないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、水溶性ビニルモノマー(a)を必須構成単位とする水溶性(共)重合体(A)を含有してなり、0.2重量%水溶液粘度測定法における溶解撹拌開始から60分後の粘度(V2)と10分後の粘度(V1)との比(V2/V1)が10〜50である水溶性樹脂粒子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水溶性樹脂粒子は下記の効果を奏する。
(1)水溶解時にままこの発生がなく、従来より溶解時間を大幅に短縮できる。
(2)ままこの生成がないため、粉体供給機等の特別な設備が不要となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水溶性樹脂粒子は、水溶性ビニルモノマー(a)を必須構成単位とする水溶性(共)重合体(A)を含有してなる。
【0010】
[水溶性ビニルモノマー(a)]
本発明における水溶性ビニルモノマー(a)はエチレン性不飽和基を1個有するモノマーであり、(a)としては下記の(a1)〜(a3)が挙げられる。なお、ここおよび以下において水溶性とは水への溶解度(g/水100g)が1g以上であることを意味するものとする。
【0011】
(a1)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩、ベンジルクロライド塩]、およびこれらの混合物
(a11) 窒素原子含有(メタ)アクリレート[「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを表す。以下同様。]
炭素数(以下、Cと略記)5〜30、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(アルキル基はC1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];
(a12) 窒素原子含有(メタ)アクリルアミド誘導体
C5〜30、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等];
(a13) アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物
C5〜30、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミノスチレン;
(a14) アミンイミド基を有する化合物
C5〜30、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド。
【0012】
(a2)ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物
(a21)(メタ)アクリレート
C4以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]5,000以下、例えば水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル−、ジエチレングリコールモノ−、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ−およびポリグリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびアクリル酸アルキル(アルキル基はC1〜2)エステル(C4〜5、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル);
(a22)(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等];
(a23) 前記(a1)以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート。
【0013】
(a3)アニオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物
(a31) 不飽和カルボン酸
C3〜30、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸;
(a32) 不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタン、−プロパンおよび−ブタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a33) (メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(アルキレン基はC1〜6)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
【0014】
前記(a)のうち水溶性(共)重合体(A)の高分子量化の観点から好ましいのは、カチオン性モノマーのうちの(a12)、(a13)、ノニオン性モノマーのうちの(a21)、(a22)、アニオン性モノマーのうちの(a31)、(a32)、さらに好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、特に好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、最も好ましいのは(a12)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a13)のうちのアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(a21)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(前記のもの)、(a31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、(a32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(a)は、任意に混合して共重合させることができる。
【0015】
[水不溶性ビニルモノマー(x)、架橋性モノマー(y)]
水溶性(共)重合体(A)を構成するモノマーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲で水溶性ビニルモノマー(a)の他に必要により疎水性ビニルモノマー(x)および架橋性モノマー(y)を併用することができる。
ここおよび以下において疎水性とは水への溶解度(g/水100g)が1g未満であることを意味するものとする。
水不溶性ビニルモノマー(x)は、エチレン性不飽和基を1個有するモノマーであり、(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの混合物が挙げられる。
(x1) C6〜23の(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0016】
(x2) [モノアルコキシ(C1〜20)−、モノシクロアルコキシ(C3〜12)−もしくはモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(重合度2〜50)の不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のプロピレンオキシド(以下POと略記)付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−エトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−プロポキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−ブトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−シクロヘキシルPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]およびジオール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0017】
(x3) C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、1−メチルスチレン等;
(x4) 不飽和アルコール[C2〜4、例えばビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(酢酸ビニル等);
(x5) ハロゲン含有モノマー(C2〜30、例えば塩化ビニル)。
【0018】
また、架橋性モノマー(y)は、2個またはそれ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーであり、以下の(y1)〜(y5)、これらの塩[例えば、塩基性モノマーについては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等、酸性モノマーについては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン)塩]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(y1) ビスポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリルアミド
C5〜30、例えばN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド;
(y2) ポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C8〜30、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール[ポリ(2〜4)](メタ)アクリレート;
【0019】
(y3) ビニル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C4以上かつMn6,000以下、例えばジビニルアミン、多価(2〜5またはそれ以上)アミン[C2以上かつMn3,000以下、例えばエチレンジアミン、ポリエチレンイミン(C4以上かつMn3,000以下)]のポリ(2〜20)ビニルアミン、ジビニルエーテル、多価アルコール〔C2以上かつMn3,000以下、例えばアルキレン(C2〜6またはそれ以上)グリコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール(以下、それぞれEG、PG、1,6−HDと略記)等]、ポリオキシアルキレン[Mn2,000〜3,000、例えばポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(分子量106以上かつMn3,000以下)、PPG(分子量134以上かつMn3,000以下)、ポリオキシエチレン(分子量106以上かつMn3,000以下)/ポリオキシプロピレン(分子量134以上かつMn3,000以下)ブロックコポリマー]、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、(ポリ)(2〜50)グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下、それぞれTME、TMP、GR、PE、SOと略記)、デンプン〕のポリ(2〜20)ビニルエーテル等;
【0020】
(y4) アリル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C6以上かつMn3,000以下、例えばジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(C1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、多価アミン(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルエーテル、多価アルコール(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルエーテル、ポリ(2〜20)(メタ)アリロキシアルカン(C1〜20)(テトラアリロキシエタン等);
(y5) エポキシ基含有モノマー
C8以上かつMn6,000以下、例えばEGジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテル、GRトリグリシジルエーテル。
【0021】
水溶性(共)重合体(A)を構成するモノマー(a)、(x)および(y)の合計モル数に基づく各モノマーの含有量は、(a)は、凝集性能の観点から好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%;(x)は、通常40モル%以下、凝集性能発現および高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは0.5〜10モル%;また、(y)は、(y)の重合性または反応性にも依存するものの、通常5モル%以下、凝集性能発現および高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましくは0.001〜1モル%、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%である。
【0022】
[水溶性(共)重合体(A)]
水溶性(共)重合体(A)は、水溶性ビニルモノマー(a)を必須構成単位とし、必要により水不溶性ビニルモノマー(x)および架橋性モノマー(y)を構成単位に加えてなる(共)重合体である。
(A)は、公知の水溶液重合(断熱重合、薄膜重合および噴霧重合等、例えば特開昭55−133413号公報に記載のもの)や、公知の逆相懸濁重合(例えば特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報、特開平1−5808号公報に記載のもの)を含む種々の重合法[光重合(例えば特公平6−804公報に記載のもの)、沈澱重合(例えば特開昭61−123610公報に記載のもの)、逆相乳化重合(例えば特開昭58−197398号に記載のもの)等]で、ラジカル重合開始剤(d)を用いて製造することができる。
該重合法のうち、有機溶媒等を使用する必要がないこと等工業上の観点から好ましいのは水溶液重合法である。なお、以下においてラジカル重合開始剤(d)を用いる方法をラジカル重合法ということがある。
【0023】
ラジカル重合開始剤(d)としては、種々のもの、例えばアゾ化合物〔水溶性のもの[アゾビスアミジノプロパン(塩)、アゾビスシアノバレリン酸(塩)等]および油溶性のもの[アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等]〕および過酸化物〔水溶性のもの[過酢酸、t−ブチルパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等]および油溶性のもの[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド等]〕が挙げられる。なお、上記アゾ化合物における塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩およびアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
上記過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等)、還元性金属塩[硫酸鉄(II)等]、遷移金属塩のアミン錯体[塩化コバルト(III)のペンタメチレンヘキサミン錯体、塩化銅(II)のジエチレントリアミン錯体等]、有機性還元剤〔アスコルビン酸、3級アミン[ジメチルアミノ安息香酸(塩)、ジメチルアミノエタノール等]等〕が挙げられる。
また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもいずれでもよい。
【0024】
(d)の使用量は、最適な分子量を得るとの観点から、(A)を構成するモノマーの全重量に基づいて、好ましい下限は0.001%、さらに好ましくは0.005%、とくに好ましくは0.01%、最も好ましくは0.02%、好ましい上限は1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは0.1%、最も好ましくは0.05%である。
【0025】
前記の水溶液重合法またはその他重合法におけるモノマー濃度、重合温度、重合時の圧力、モノマー水溶液のpHおよび重合時間は、モノマー組成、開始剤種類、連鎖移動剤種類等によって適宜調整することができる。
【0026】
連鎖移動剤(f)としては、0.01〜100、好ましくは0.05〜50、とくに好ましくは0.1〜10の連鎖移動定数を有するものが挙げられる。
連鎖移動定数の定義は、ジェー・ブランドルプおよびイー・エッチ・インマーグト編「ポリマー・ハンドブック(第4版)」、ジョン ウィレー アンド サンズ刊(J.Brandrup and E.H.Immergut編のPolymer Handbook
fourth edition,JOHN WILEY & SONS)の97〜98頁に記載されている。
本発明における連鎖移動定数は、「高分子合成の実験法」[化学同人(株)、1993年刊行]等に記載されている一般的な方法を用いて測定される、60℃のアクリルアミドへの連鎖移動定数であるものとする。
【0027】
該(f)としては、分子内に1個または2個以上のアミノ基を有する化合物[C0〜60、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、n−およびi−プロパノールアミン]、分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物(後述)および(次)亜リン酸化合物〔亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらの塩[アルカリ金属(Na、K等)塩等]、並びにこれらの誘導体等〕等が挙げられる。これらのうち、分子量制御の観点から好ましいのは分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物および(次)亜リン酸化合物である。
【0028】
分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物としては、以下のもの、これらの塩[アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エタノールアミン)塩、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(1)1価チオール
脂肪族チオール(C1〜20、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、n−オクタンチオール、n−ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、メルカプトコハク酸、システイン、システアミン)、脂環含有チオール(C5〜20、例えばシクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール)、芳香環含有チオール(C6〜12、例えばベンゼンチオール、チオサリチル酸、チオクレゾール、チオキシレノール、チオナフトール)および芳香脂肪族チオール(C7〜20、例えばα−トルエンチオール)等;
【0029】
(2)多価チオール
ジチオール[脂肪族ジチオール(C2〜40、例えばエタンジチオール、ジエチレンジチオール、トリエチレンジチオール、n−、i−およびsec−プロパンジチオール、1,3−および1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ネオペンタンジチオール、トリエチレングリコールジチオール)、脂環式ジチオール(C5〜20、例えばシクロペンタンジチオール、シクロヘキサンジチオール)、芳香族ジチオール(C6〜16、例えばベンゼンジチオール、ビフェニルジチオール)および芳香脂肪族ジチオール(C8〜20、例えばキシレンジチオール)等。
【0030】
また、上記(f)のうち、水溶性(共)重合体(A)の水不溶解分低減の観点から水溶性の高いものが好ましく、水/n−デカン分配係数が、好ましくは10/90〜100/0、さらに好ましくは20/80〜100/0、とくに好ましくは50/50〜100/0である。ここにおける水/n−デカン分配係数は、日本工業規格(JIS)に規定されている水/1−オクタノール分配係数(JIS Z7260−107)と同様の測定方法で、1−オクタノールを、n−デカンに代えることで測定することができる。
【0031】
(f)の使用量は、水溶性(共)重合体(A)の最適な分子量を得るとの観点から、(a)、または、(a)と必要により併用される(x)、(y)の合計重量に基づいて、好ましい下限は0.0001%、さらに好ましくは0.001%、とくに好ましくは0.01%、最も好ましくは0.05%、好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%、最も好ましくは1%である。
【0032】
ラジカル重合法におけるモノマー水溶液中のモノマー濃度は、水溶液重合ではモノマー水溶液の全重量に基づいて、下限は通常1%、工業上の観点から好ましくは5%、さらに好ましくは10%、とくに好ましくは15%、最も好ましくは20%、上限は通常80%、重合時の温度コントロールの観点から好ましくは75%、さらに好ましくは70%、特に好ましくは65%、最も好ましくは60%;逆相懸濁重合では、下限は通常30%、前記と同様の観点から好ましくは40%、さらに好ましくは45%、とくに好ましくは50%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは85%、さらに好ましくは80%、とくに好ましくは78%、最も好ましくは75%;逆相乳化重合では、下限は通常10%、前記と同様の観点から好ましくは20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは80%、より好ましくは75%、とくに好ましくは70%、最も好ましくは65%である。
【0033】
分散媒の使用量は、逆相懸濁重合では、分散系の粘度の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は25%、さらに好ましくは40%、とくに好ましくは65%、分散系の安定性の観点から好ましい上限は1,000%、さらに好ましくは400%、とくに好ましくは200%;逆相乳化重合では、エマルションの粘度の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、エマルションの安定性の観点から好ましい上限は80%、さらに好ましくは70%、とくに好ましくは60%である。
【0034】
重合温度は、水溶液重合では、下限は通常−10℃、水溶性(共)重合体(A)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは0℃、さらに好ましくは5℃、とくに好ましくは10℃、最も好ましくは15℃、上限は通常130℃(加圧下)、上記と同様の観点から好ましくは100℃、さらに好ましくは95℃、とくに好ましくは90℃、最も好ましくは85℃である。また、重合中は所定温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、ガラス製の断熱容器等内で断熱重合させてもよい。
【0035】
光重合における重合温度は、下限は通常0℃、(A)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは5℃、さらに好ましくは10℃、とくに好ましくは15℃、最も好ましくは20℃、上限は通常100℃、上記と同様の観点から好ましくは95℃、さらに好ましくは90℃、とくに好ましくは80℃、最も好ましくは70℃である。
また、重合中は所定重合温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、比較的低温(例えば15〜35℃)で重合を開始させ、一定時間(例えば1〜3時間)重合後に昇温(例えば55〜80℃)してもよい。
【0036】
逆相懸濁重合における重合温度は、下限は通常10℃、(A)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは20℃、さらに好ましくは30℃、とくに好ましくは40℃、最も好ましくは50℃、上限は通常95℃、上記と同様の観点から好ましくは90℃、さらに好ましくは80℃、とくに好ましくは70℃、最も好ましくは60℃である。
また、重合中は所定重合温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つよう、適宜加熱、冷却して調節することが好ましい。重合温度を一定に保つために、予め所定重合温度に温度調整した分散媒の撹拌下でモノマーを連続または間欠的に滴下してもよい。その際の滴下時間は、モノマー濃度、および重合反応発熱量により異なるが、通常0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0037】
逆相乳化重合における重合温度は、下限は通常0℃、(A)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは5℃、さらに好ましくは10℃、とくに好ましくは15℃、最も好ましくは20℃、上限は通常95℃、上記と同様の観点から好ましくは90℃、さらに好ましくは80℃、とくに好ましくは70℃、最も好ましくは55℃である。
また、重合中は所定重合温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、比較的低温(例えば15〜35℃)で重合を開始させ、一定時間(例えば1〜3時間)重合後に昇温(例えば55〜80℃)してもよい。
【0038】
重合は重合による発熱がなくなった時点で反応終点が確認できるが、重合時間は通常発熱により重合開始を確認した時点から1〜24時間、残存モノマー低減および工業上の観点から、好ましくは2〜12時間である。
逆相懸濁重合の場合において、モノマーを滴下する場合は滴下終了後から上記時間重合させることが好ましい。
上記のモノマー濃度、重合温度および重合時間は、モノマー組成、重合法および開始剤種類等によって適宜調整することができる。
【0039】
本発明におけるモノマー水溶液のpHは、特に限定されないが、高分子量化の観点から、好ましい下限は1.5、さらに好ましくは2、とくに好ましくは2.5、加水分解防止の観点から好ましい上限は9、さらに好ましくは8、とくに好ましくは7.5である。
pH調整のために用いられるpH調整剤としては特に限定はなく、モノマー水溶液がアルカリ性の場合は無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、無機固体酸性物質(酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安、スルファミン酸等)および有機酸(C2〜20、例えばシュウ酸、こはく酸、リンゴ酸)が挙げられ、モノマー水溶液が酸性の場合は無機アルカリ性物質(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)および有機アルカリ性物質(グアニジン等)が挙げられる。
なお、ここにおけるpHは、モノマー水溶液の原液をpHメーター[例えば、商品名「LAB pHメータ−M−12」、(株)堀場製作所製]を用いて室温(20℃)で測定される値である。
【0040】
重合時の圧力[kPa(絶対圧力)、以下数値のみを示す。]は、特に限定されないが、通常大気圧または減圧下で行うことができる。
圧力の好ましい下限は5、さらに好ましくは10、とくに好ましくは15、好ましい上限は500、さらに好ましくは300、とくに好ましくは150である。
【0041】
また、本発明における水溶性(共)重合体(A)は、さらに変性反応させてもよい。該変性方法としては、例えば、水溶性ビニルモノマー(a)として加水分解性官能基を分子内に有する(メタ)アクリルアミドを使用した場合、重合時または重合後に苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を添加して、(a)のアミド基を部分的に加水分解してカルボキシル基を導入する方法(特開昭56−16505号公報等参照);ホルムアルデヒド、ジアルキルアミン(C1〜12)およびハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素等)化アルキル(C1〜12)(メチルクロライド、エチルクロライド等)を加え、マンニッヒ反応によって部分的にカチオン性基を導入する方法;アクリロニトリル等のニトリル基と、ビニルホルムアミドなどの加水分解により得られるアミノ基との閉環反応により分子内にアミジン環を形成させる方法(特開平5−192513号公報等参照);および重合後に前記の架橋性モノマー(y)を添加して架橋反応させる方法(特許3305688号公報等参照)等が挙げられる。
【0042】
重合によって得られる含水ゲル[水溶性(共)重合体(A)と水とからなる。]は、必要に応じて細断される。細断後のゲルの大きさ(最長径)は乾燥工程での乾燥性の観点から好ましくは50μm以上かつ10cm以下、さらに好ましくは100μm以上かつ2cm以下、特に好ましくは1mm以上かつ1cm以下である。
【0043】
細断は、公知の方法を含む種々の方法で行うことができ、通常の細断装置(ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機等)等を使用して細断できる。
【0044】
水溶性(共)重合体(A)は、取り扱い易さの観点から粉末状(水溶液重合、光重合および逆相懸濁重合の場合)またはエマルション状(逆相乳化重合の場合)または水溶液状が好ましい。
水溶液重合および光重合の場合の粉末化法としては、重合後の含水ゲルを細断して公知の乾燥機(バンド式乾燥機、遠赤外線式乾燥機等)を用い加熱(80〜120℃)して乾燥させ、公知の粉砕機〔奈良式粉砕機[奈良機械(株)製]、ロール式粉砕機等〕を用いて粉砕する。
逆相懸濁重合の場合の粉末化法としては、重合後の含水ゲル(通常体積平均粒子径100〜2,000μm)をロ過または遠心分離により固液分離させた後、公知の乾燥機(真空乾燥機、スクリューコンベア、ドラムドライヤー等)を用いて加熱(30〜120℃)し乾燥させる方法等が挙げられる。
上記で得られる(A)の粉末粒子は、必要によりふるい分け等により粒度調整される。
【0045】
ふるい分けされた水溶性(共)重合体(A)の体積平均粒子径(μm)は、後述する水への溶解性の観点から好ましくは106〜800、より好ましくは200〜700、さらに好ましくは250〜600、特に好ましくは300〜500、最も好ましくは350〜450である。体積平均粒子径は、後述の方法で測定される。
【0046】
上記(A)の重量に基づく微粒子(粒子径150μm以下)の含有量は、水に溶解時のままこ発生抑制の観点から好ましくは3%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。微粒子の含有量は、上記の体積平均粒子径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
【0047】
(A)の粒子の見掛け密度(g/ml)は、粉体流動性およびブロッキング防止の観点から好ましくは0.54〜0.80、さらに好ましくは0.56〜0.75、特に好ましくは0.58〜0.70である。見掛け密度は、JIS K7365:1999に準拠して、25℃で測定される。
【0048】
(A)の粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状および米粒状等が挙げられる。これらのうち、高分子凝集剤として下水処理場で使用する場合には粉体供給性の観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0049】
[水溶性樹脂粒子]
本発明の水溶性樹脂粒子は、前記水溶性(共)重合体(A)を含有してなり、該水溶性樹脂粒子は、0.2重量%水溶液粘度測定法(測定法は後述)における溶解撹拌開始から60分後の粘度(V2)と10分後の粘度(V1)との比(V2/V1)が10〜50、好ましく12〜45、さらに好ましく15〜40であるという溶解特性を有する。
該(V2/V1)が、10未満では水溶性樹脂粒子の表面が水に溶解し易いためにままこを生じやすく、50を超えると水溶性樹脂粒子の表面が水に溶解し難いために、通常の下水処理場の溶解設備等で求められる溶解時間内に不溶解物が残存するといった問題が発生する。
該(V2/V1)を上記範囲とする方法には、(1)含水ゲルを解砕しながら乾燥させる方法〔例えば、撹拌機付回転乾燥機[(株)大和三光製作所製]を用いる方法〕、(2)水溶性樹脂粒子に疎水性物質(C)を含有させる方法が含まれる。なお、ここにおいて疎水性とは水への溶解度(g/水100g)が1g未満であることを意味するものとする。
【0050】
前記(V1)(mPa・s)は、水溶性樹脂粒子の水への溶解性およびままこ発生防止の観点から好ましくは1〜400、さらに好ましくは5〜200、とくに好ましくは10〜150である。
【0051】
また、本発明の水溶性樹脂粒子は次のような溶解特性を有することが好ましい。すなわち、0.2重量%水溶液粘度測定法における溶解撹拌開始60分後の粘度(V2)と240分後の粘度(Vs)の比(V2/Vs)は、水溶性樹脂粒子の溶解速度および分子鎖の切断による凝集性能の低下抑制の観点から好ましくは0.8〜2.0、さらに好ましくは0.85〜1.5、とくに好ましくは0.90〜1.2である。
該比(V2/Vs)を上記範囲とする方法には、前記(1)、(2)の方法が含まれる。
【0052】
[疎水性物質(C)]
上記(2)の方法における、疎水性物質(C)には、炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)、フッ素原子を有する炭化水素基を含有する疎水性物質(C2)、および(C1)、(C2)のうちの活性水素原子を有するもののアルキレンオキサイド(以下AOと略記)付加物等が含まれる。
【0053】
炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)には、ポリオレフィン、ポリオレフィン誘導体、ポリスチレン、ポリスチレン誘導体、ワックス、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸(塩)、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族アミドおよびこれらの2種以上の混合物等が含まれる。ここにおいて長鎖とは少なくともC8〜30、またはそれ以上の脂肪族(分岐)炭化水素基を有することを示す。
【0054】
ポリオレフィンとしては、C2〜4のオレフィン(エチレン、プロピレン、イソブチレン等)を必須構成単量体(該オレフィンの含有量はポリオレフィンの重量に基づいて、少なくとも50%)とし、必要によりC4〜5のジエン(ブタジエン、イソプレン等)を構成単量体に加えてなる、重量平均分子量[以下Mwと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]1,000〜1,000,000の重合体[ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン−イソブチレン共重合体、エチレン−イソプレン共重合体等]が挙げられる。
【0055】
ポリオレフィン誘導体としては、ポリオレフィンの熱減成体(Mn50,000〜150,000の高分子量ポリオレフィンを不活性ガス通気下もしくは非通気下で、通常300〜450℃で0.5〜10時間熱減成したもの)、ポリオレフィンにカルボキシル基(−COOH)や1,3−オキソ−2−オキサプロピレン基(−COOCO−)等を導入したもの、その他変性物等、Mw1,000〜1,000,000の重合体[ポリエチレン熱減成体、ポリプロピレン熱減成体、マレイン酸変性ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体のマレイン化物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体のマレイン化物等]が挙げられる。
【0056】
ポリスチレンとしては、Mw1,000〜1,000,000の重合体等が挙げられる。
ポリスチレン誘導体としては、スチレンを必須構成単量体(スチレンの含有量は、ポリスチレン誘導体の重量に基づいて、少なくとも50%)としてなるMw1,000〜1,000,000の重合体[スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソブチレン共重合体等]が挙げられる。
【0057】
ワックスとしては、融点50〜200℃のワックス(パラフィンワックス、ミツロウ、カルナバワックス、牛脂等)等が挙げられる。
【0058】
長鎖脂肪酸エステルとしては、C8〜30の脂肪酸とC1〜12のアルコールとのエステル(ラウリン酸メチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸メチル、ペンタエリスリットラウリン酸モノエステル、ソルビットステアリン酸モノエステル、ソルビットオレイン酸モノエステル、ショ糖パルミチン酸ジエステル、ショ糖ステアリン酸モノエステル、ショ糖ステアリン酸ジエステル、ショ糖ステアリン酸トリエステル、牛脂等)が挙げられる。
【0059】
長鎖脂肪酸(塩)としては、C8〜30の脂肪酸(オクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ダイマー酸、ベヘニン酸等)が挙げられ、それらの塩としては亜鉛、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム(以下それぞれZn、Ca、Mg、Alと略す)塩(パルミチン酸Ca、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Al等)が挙げられる。
【0060】
長鎖脂肪族アルコールとしては、C8〜30の脂肪族アルコール(ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等)が挙げられる。これらのうち水溶性(共)重合体の溶解性の観点等から好ましいのはパルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、さらに好ましいのはステアリルアルコールである。
【0061】
長鎖脂肪族アミドとしては、下記の(1)〜(4)が挙げられる。
(1)C8〜30の長鎖脂肪族1級アミンとC1〜30の炭化水素基を有するカルボン酸とのアミド化物
1級アミンとカルボン酸とが1:1で反応したものと、1:2で反応したものに分けられる。1:1で反応したものとしては、酢酸N−オクチルアミド、酢酸N−ヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N−オクチルアミドおよびヘプタコサン酸N−ヘキサコシルアミド等;1:2で反応したものとしては、二酢酸N−オクチルアミド、二酢酸N−ヘキサコシルアミド、ジヘプタコサン酸N−オクチルアミドおよびジヘプタコサン酸N−ヘキサコシルアミド等が挙げられる。なお、1級アミンとカルボン酸とが1:2で反応したものの場合、使用するカルボン酸は、同一でも異なっていてもよい。
【0062】
(2)アンモニアまたはC1〜7の1級アミンとC8〜30の長鎖脂肪酸とのアミド化物
アンモニアまたは1級アミンとカルボン酸とが1:1で反応したものと1:2で反応したものに分けられる。1:1で反応したものとしては、ノナン酸アミド、ノナン酸メチルアミド、ノナン酸N−ヘプチルアミド、ヘプタコサン酸アミド、ヘプタコサン酸N−メチルアミド、ヘプタコサン酸N−ヘプチルアミドおよびヘプタコサン酸N−ヘキサコシルアミド等;1:2で反応したものとしては、ジノナン酸アミド、ジノナン酸N−メチルアミド、ジノナン酸N−ヘプチルアミド、ジオクタデカン酸アミド、ジオクタデカン酸N−エチルアミド、ジオクタデカン酸N−ヘプチルアミド、ジヘプタコサン酸アミド、ジヘプタコサン酸N−メチルアミド、ジヘプタコサン酸N−ヘプチルアミドおよびジヘプタコサン酸N−ヘキサコシルアミド等が挙げられる。なお、アンモニアまたは1級アミンとカルボン酸とが1:2で反応したものとしては、使用するカルボン酸は、同一でも異なっていてもよい。
【0063】
(3)C8〜30の脂肪族鎖を少なくとも1つ有する長鎖脂肪族2級アミンとC1〜30のカルボン酸とのアミド化物
酢酸N−メチルオクチルアミド、酢酸N−メチルヘキサコシルアミド、酢酸N−オクチルヘキサコシルアミド、酢酸N−ジヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N−メチルオクチルアミド、ヘプタコサン酸N−メチルヘキサコシルアミド、ヘプタコサン酸N−オクチルヘキサコシルアミドおよびヘプタコサン酸N−ジヘキサコシルアミド等。
【0064】
(4)C1〜7の脂肪族炭化水素基を2個有する二級アミンとC8〜30の長鎖脂肪酸とのアミド化物
ノナン酸N−ジメチルアミド、ノナン酸N−メチルヘプチルアミド、ノナン酸N−ジヘプチルアミド、ヘプタコサン酸N−ジメチルアミド、ヘプタコサン酸N−メチルヘプチルアミドおよびヘプタコサン酸N−ジヘプチルアミド等。
【0065】
フッ素原子を有する炭化水素基を含有する疎水性物質(C2)としては、パーフルオロアルカン(トリフルオロメタン、ペンタフルオロエタン等)、パーフルオロアルケン(トリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロペン等)、パーフルオロアリール(トリフルオロベンゼン、ペンタフルオロトルエン等)、パーフルオロアルキルエーテル(ジトリフルオロメチルエーテル、ジペンタフルオロエチルエーテル等)、パーフルオロアルキルカルボン酸(ペンタフルオロエタン酸、ペンタフルオロプロパン酸等)、パーフルオロアルキルアルコール(ペンタフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール等)およびこれらの2種以上の混合物等が含まれる。
【0066】
前記(C1)、(C2)のうちの活性水素原子を有するもののAO付加物としては、公知(特開2007−191682号公報等)のもの、例えば前記活性水素含有化合物にPOを付加したもの、POと他のAOを併用付加したものが挙げられ、これらのうち本発明における溶解特性の観点から好ましいのは活性水素含有化合物にPOおよび他のAOを下記の様式で付加したもの、およびこれらの付加化合物とポリカルボン酸もしくはリン酸とのエステル化物等が挙げられる。
(1)PO−AOの順序でブロック付加したもの
(2)PO−AO−PO−AOの順序でブロック付加したもの
(3)AO−PO−AOの順序でブロック付加したもの
(4)PO−AO−POの順序でブロック付加したもの
(5)POおよびAOを混合付加したランダム付加物
(6)米国特許第4226756号明細書記載の順序でランダムまたはブロック付加したもの
【0067】
疎水性物質(C)のHLB値は、水溶性樹脂粒子の水への易溶解性および本発明における前記溶解特性の観点から好ましくは1〜30、さらに好ましくは2〜20、特に好ましくは3〜15である。ここにおいてHLBとは、親水性と親油性とのつり合いを表し、下記の式から求められる[「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「新・界面活性剤入門」、197−198頁、1992年三洋化成工業(株)刊、等参照]。

HLB=10×(無機性/有機性)

上記式中、( )内は有機化合物の無機性と有機性の比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
【0068】
前記疎水性物質(C)のうち、水溶性樹脂粒子の溶解特性の観点から好ましいのは、炭化水素基を含有する疎水性物質(C1)、さらに好ましいのは長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸(塩)、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪族アミド、とくに好ましいのはソルビットステアリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸塩(Mg、Ca、ZnおよびAl塩)、長鎖脂肪族(とくにC10〜20)アルコールおよびそのPO付加物、最も好ましいのはショ糖ステアリン酸モノエステル、長鎖脂肪族(とくにC10〜15)アルコールおよびそのPO付加物(とくにPO付加モル数2〜5)である。
【0069】
前記(V2/V1)比を(2)の方法で10〜50の範囲とするために、水溶性樹脂粒子に疎水性物質(C)を含有させる方法としては、前記製造後の含水ゲル状の(A)と、(C)とを混合・混練する方法、および(C)の存在下で構成単位のモノマーを重合させて水溶性(共)重合体(A)の含水ゲルを得る方法が挙げられ、これらのうちいずれの方法で含有させてもよい。
(A)[または(C)を含有する(A)]は、製造後は含水ゲル状であり、これを後述の細断、乾燥、粉砕等の工程を経て水溶性樹脂粒子が製造される。
【0070】
水溶性樹脂粒子における(C)の含有量は、ままこ防止および水溶性樹脂粒子の溶解特性の観点から(A)の重量に基づいて好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.05〜5%、とくに好ましくは0.1〜3%である。
(C)は水溶性樹脂粒子の何れの箇所に存在していてもよいが、水溶性樹脂粒子の溶解特性の観点から好ましいのは、(C)の少なくとも一部が水溶性樹脂粒子の表層に存在する場合、すなわち、水溶性樹脂粒子内部に(C)が存在し、一部が表層に存在する場合である。
水溶性樹脂粒子内部の(C)の含有量は、ままこ防止および水溶性樹脂粒子の溶解特性の観点から、(A)の重量に基づいて、好ましくは0.009〜9%、さらに好ましくは0.045〜4.5%、とくに好ましくは0.09〜2.7%である。
水溶性樹脂粒子の表層に存在する(C)の含有量は、上記と同様の観点から、(A)の重量に基づいて、好ましくは0.001〜1%、さらに好ましくは0.005〜0.5%、とくに好ましくは0.01〜0.3%である。
【0071】
なお、表層に存在する(C)の含有量は下記の方法で測定され、内部に存在する(C)の含有量は、水溶性樹脂粒子における(C)の全含有量から表層の(C)の含有量を差し引いたものとする。
<表層の疎水性物質(C)の含有量の測定法>
冷却管を備えたガラス製のナスフラスコに水溶性樹脂粒子100重量部と有機溶媒[有機溶媒100重量部に、少なくとも0.01重量部の疎水性物質(C)を25〜110℃で溶かすことができる有機溶媒。なおこの溶かすことができる温度を溶解温度とする。]300重量部を加え、溶解温度で24時間静置し、疎水性物質の抽出液を得る。この抽出液を濾紙を用いて濾過し、あらかじめ秤量したガラス製のナスフラスコに採取した後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発させた後、秤量する。濾過液蒸発後の重量からあらかじめ秤量したナスフラスコの重量を差し引いて抽出された蒸発乾固物の量を求める。
濾紙上に残った抽出後のサンプルを用いて、同様の操作を2回くり返し、3回の抽出で得られた蒸発乾固物の合計量を表層の疎水性物質(C)の含有量(重量%)とする。
【0072】
<水溶性樹脂粒子中の全疎水性物質(C)の含有量の測定法>
ガラス製ビーカーに水95重量部をとり、水溶性樹脂粒子5重量部を撹拌しながら加えて25℃、120分かけて溶解させる。別のビーカーに100部のアセトニトリルを準備しておき、前記のポリマー水溶液に全量を一度に加えてポリマーを析出させる。さらに60分間撹拌した後に、上澄み液を測定液とする。疎水性物質(C)の合計の含有量(重量%)は、液体クロマトグラフ法により、疎水性物質の検量線に対する面積比から算出する。
【0073】
<液体クロマトグラフィー法測定条件>
カラム :Shimpack CLC−ODS
カラム温度:25℃
移動相 :アクリロニトトリル/水=80/20(重量比)
移動相流量:1.0ml/分
検出器 :RI
注入量 :30μl
【0074】
水溶性樹脂粒子内部に疎水性物質(C)が存在し、一部が表層に存在する構成は、水溶性樹脂粒子を、(1)疎水性物質(C)と、水溶性(共)重合体(A)の含水ゲルとを混合・混練する方法、または(2)疎水性物質(C)の存在下、構成モノマーを重合させて(A)の含水ゲルを得る方法により製造される。
【0075】
(1)の方法において、疎水性物質(C)の形状としては、粉砕不定形状、ビーズ状、棒状または繊維状に加工したものを用いることができる。水溶性樹脂粒子の溶解特性の観点から、好ましいのは、粉砕不定形状またはビーズ状、さらに好ましいのはビーズ状である。(C)の体積平均粒子径(μm)は、同様の観点から好ましくは0.5〜100、さらに好ましくは1〜30、とくに好ましくは2〜20である。
【0076】
前記(1)の方法において、(A)と(C)の混合方法としては、疎水性物質(C)が水溶性(共)重合体(A)の内部に存在し、一部が表層に存在するように混合されれば制限がない。しかしながら、(C)を(A)の内部に存在させ、一部を表層に存在させる観点から、(C)は、水溶性(共)重合体(A)の乾燥粒子と混合するより、含水ゲル状の(A)または前記(2)の方法における(A)を製造するモノマー液と混合する方が好ましく、さらに好ましいのは含水ゲル状の(A)と混合する方法である。なお、含水ゲル状の(A)との混合は練り込むように均一混合することが好ましい。
【0077】
水溶液重合法で水溶性(共)重合体(A)を製造するとき、(C)と(A)を混合・混練するタイミングとしては特に制限はないが、重合工程中[(C)の存在下で(A)を製造する]、重合工程直後、含水ゲル状の(A)の破砕(ミンチ)工程中および含水ゲル状の(A)の乾燥工程中等が挙げられる。
これらのうち、水溶性樹脂粒子の溶解特性等の観点から好ましいのは、重合工程直後および含水ゲル状の(A)の破砕(ミンチ)工程中、さらに好ましいのは含水ゲル状の(A)の破砕(ミンチ)工程中である。また、(C)が長鎖脂肪酸塩の場合、通常、長鎖脂肪酸塩そのものを用いるが、この添加工程で長鎖脂肪酸と金属の水酸化物を混合して添加しても、別々に添加してもいずれでもよい。
【0078】
逆相懸濁重合法または逆相乳化重合法で水溶性(共)重合体(A)を製造するとき、(C)と(A)を混合・混練するタイミングとしては特に制限はないが、重合工程中[(C)の存在下で(A)を製造する]、重合工程直後、脱水工程(水分10重量%前後まで脱水する工程)中、脱水工程直後、重合に用いた有機溶媒を分離留去する工程中、含水ゲル状の(A)の乾燥工程中等が挙げられる。
これらのうち、水溶性樹脂粒子の溶解特性等の観点から好ましいのは、重合工程中、重合工程直後、脱水工程中、脱水工程直後、重合に用いた有機溶媒を分離留去する工程中、さらに好ましいのは重合工程中、重合工程直後である。
【0079】
含水ゲル状の(A)の破砕中または乾燥中に(C)を混合する場合、混合装置としては、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機およびロール式粉砕機等の通常の装置が使用できる。
(A)を製造するモノマー液中で混合する場合、ホモミキサー、バイオミキサー等の比較的撹拌力の高い装置を使用できる。また、含水ゲル状の(A)の乾燥工程中で(C)を混合する場合は、SVミキサー[(株)神鋼環境ソリューション(株)製遊星運動型混合乾燥機]等の混練装置も使用できる。
【0080】
(A)と(C)の混合温度は添加する工程により適宜調整することができる。例えば、重合工程直後および含水ゲル状の(A)の破砕(ミンチ)工程中に添加・混合する場合は、均一混合および溶解特性の観点から好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃、とくに好ましくは50〜80℃である。
【0081】
疎水性物質(C)の存在下で、水溶性(共)重合体(A)を製造する(2)の方法においては、水溶性(共)重合体(A)のモノマー液に(C)を均一に溶解または乳化(分散)させておくことが好ましい。(C)が均一になり難い場合は、さらに含水ゲルの破砕工程中に均一にすることもできる。(C)の存在下で重合を行うこと以外は、重合方法は前記水溶性(共)重合体(A)の場合と同様である。
【0082】
疎水性物質(C)は、水および/または揮発性溶媒を用いて、乳化および/または溶解した形態でも使用できる。
揮発性溶媒としては、後工程での除去のしやすさおよび液体であることとの観点等から好ましいのは、20℃での蒸気圧(Pa)が0.13〜5.3、さらに好ましくは0.15〜4.5、特に好ましくは0.23〜3.8のものである。
揮発性溶媒の具体例としては、C1〜3のアルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、C5〜8の炭化水素(ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等)、C2〜4のエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、C3〜4のケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、およびC3〜5のエステル(蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、炭酸ジエチル等)等が挙げられる。
水および/または揮発性溶媒を使用する場合、これらの合計の使用量は、(C)の重量に基づいて水溶性樹脂粒子への内部浸透性および乾燥工程での乾燥性の観点から好ましくは1〜900%、さらに好ましくは5〜700%、特に好ましくは10〜400%である。
水および揮発性溶媒を使用する場合、そのうち水の使用量は、水および揮発性溶媒の重量に基づいて水溶性樹脂粒子への内部浸透性および乾燥工程での乾燥性の観点から好ましくは50〜98%、さらに好ましくは60〜95%、特に好ましくは70〜90%である。
【0083】
(C)を含有させる含水ゲルは、必要に応じて細断することができる。細断後の含水ゲルの大きさ(最長径)は、細断ゲル同士の再付着防止および(C)の含水ゲルへの内部浸透性、乾燥工程での乾燥性の観点から好ましくは50μm以上かつ10cm以下、さらに好ましくは100μm以上かつ2cm以下、特に好ましくは1,000μm以上かつ1cm以下である。細断方法は、水溶性(共)重合体(A)の場合と同様の方法が採用できる。
【0084】
溶媒に有機溶媒が含まれる場合、留去後の有機溶媒の含有量は、水溶性樹脂粒子の重量に基づいて、水溶性樹脂粒子の溶解性能の観点から好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3以下%、最も好ましくは1以下%である。
【0085】
また、溶媒に水を含む場合、留去後の水分(重量%)は、水溶性樹脂粒子の重量に基づいて、0〜20が好ましく、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは2〜9、最も好ましくは3〜8である。この範囲であると、溶解性能および乾燥後の水溶性樹脂粒子の壊れ性がさらに良好となる。
なお、有機溶媒の含有量および水分の測定法、並びに溶媒の留去方法は、架橋重合体(A1)の場合と同様である。
【0086】
疎水性物質(C)の存在下で、水溶性(共)重合体(A)を製造する前記(2)の方法で得られた含水ゲルを乾燥させた乾燥物は、粉砕することができる。
粉砕する場合、粉砕後に得られる水溶性樹脂粒子の体積平均粒子径(μm)は、粉砕後のハンドリング性(水溶性樹脂粒子の粉体流動性等)および水溶性樹脂粒子の溶解特性の観点から好ましくは100〜800、さらに好ましくは200〜700、より好ましくは250〜600、特に好ましくは300〜500、最も好ましくは350〜450である。なお、体積平均粒子径は水溶性(共)重合体(A)の場合と同様にして測定できる。
【0087】
上記水溶性樹脂粒子中の微粒子の含有量は、ままこ防止の観点から少ない方が好ましく、全粒子の重量に基づく150μm以下の微粒子の含有量は好ましくは10%以下、3%以下がさらに好ましい。微粒子の含有量は、上記の体積平均粒子径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
上記粉砕および水溶性樹脂粒子の粒度調整は、水溶性(共)重合体(A)の場合と同様の方法が採用できる。
【0088】
本発明における水溶性樹脂粒子の見掛け密度(g/ml)は、粉体流動性およびブロッキング防止の観点から好ましくは0.54〜0.80、さらに好ましくは0.56〜0.75、特に好ましくは0.58〜0.70である。なお、見掛け密度は水溶性(共)重合体(A)の場合と同様にして測定できる。
【0089】
水溶性樹脂粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状および米粒状等が挙げられる。これらのうち、水溶性樹脂粒子の溶解特性の観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0090】
[高分子凝集剤]
本発明の高分子凝集剤は水溶性樹脂粒子からなる。該高分子凝集剤は、汚泥脱水剤または原油回収用薬剤等として使用することができる。
[汚泥脱水剤]
高分子凝集剤を下水汚泥、廃水等(以下、下水汚泥等と略記)に添加して汚泥脱水剤として使用する方法としては、特に限定はなく、例えば特許第1311340号公報または特許第2038341号公報等に記載の方法が挙げられる。
本発明の高分子凝集剤の汚泥脱水剤としての使用量は、下水汚泥等の種類、懸濁粒子の含有量、高分子凝集剤の分子量等により異なるが、特に限定はなく、下水汚泥等中の蒸発残留物重量(以下、TSと略記)に基づいて、通常0.01〜10%、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは1%、工業上の観点から好ましい上限は5%、さらに好ましくは3%、とくに好ましくは2%である。
【0091】
該汚泥脱水剤の使用方法としては、十分な凝集性能の観点から水溶液にした後に下水汚泥等に添加するのが好ましいが、泥脱水剤を固体の状態で直接下水汚泥等に添加することもできる。
汚泥脱水剤を水溶液として用いる場合の濃度は、凝集特性および水溶液の粘度の観点から好ましくは0.05〜0.2重量%、さらに好ましくは0.07〜1.8重量%である。
汚泥脱水剤の溶解方法としては、特に限定されることはなく、例えば予め秤り取った水をジャーテスターなどの撹拌装置を用いて撹拌しながら所定量の汚泥脱水剤を徐々に加え、数時間(約2〜4時間程度)かけて溶解させる方法等が採用できる。粉末状の汚泥脱水剤を水に溶解させる際に、所定量の汚泥脱水剤を一気に加える方法はままこを生じ、完全に水に溶解させることが困難となることから好ましくない。
【0092】
本発明の高分子凝集剤を汚泥脱水剤として下水汚泥等に適用する際、下水汚泥等が有機性の汚泥や嫌気性菌処理汚泥である場合は、汚泥粒子の荷電中和の観点から無機および/または有機凝結剤を併用するのが好ましい。
無機凝結剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄、消石灰等;有機凝結剤としては、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩酸塩、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライド、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−マレイン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−シトラコン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−イタコン酸、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−フマル酸共重合体等が挙げられる。
無機および/または有機凝結剤を併用する場合は、汚泥脱水剤に予めこれらを添加した混合物で下水汚泥等を処理するか、下水汚泥等に予め無機凝結剤および/または有機凝結剤を添加して一次凝集させた後、汚泥脱水剤を添加して処理するかのいずれでもよいが、フロックの強度の観点から好ましいのは後者の方法である。
【0093】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を併用する場合の使用量は、下水汚泥等の種類、懸濁粒子の大きさ、用いる凝結剤の種類などによって異なるが、特に限定はなく、下水汚泥等中のTS(重量)に基づいて、無機凝結剤では通常20%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは1.5%、凝結性能の観点から好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%であり、有機凝結剤では通常1%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.025%、とくに好ましくは0.05%、凝結性能の観点から好ましい上限は0.5%、さらに好ましくは0.2%、とくに好ましくは0.15%である。
【0094】
下水汚泥等に汚泥脱水剤を添加する際には、下水汚泥等のpHを予め調整しておいてもよい。pHの調整範囲は通常3〜8、加水分解防止の観点から好ましい下限は3.5、さらに好ましくは4、とくに好ましくは4.5、溶解性の観点から好ましい上限は7、さらに好ましくは6、とくに好ましくは5.5である。
pHの調整方法としては、特に限定されることはなく、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)等の酸性物質や苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等のアルカリ性物質を用いる方法が挙げられる。また、前記の無機または有機凝結剤を下水汚泥等に予め加えることで、上記pHに調整することもできる。
【0095】
汚泥脱水剤は必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤(B1)、キレート化剤(B2)、pH調整剤(B3)、界面活性剤(B4)、ブロッキング防止剤(B5)、酸化防止剤(B6)、紫外線吸収剤(B7)および防腐剤(B8)からなる群から選ばれる添加剤(B)を併用することができる。
【0096】
消泡剤(B1)としては、シリコーン化合物[Mn100〜100,000、例えばジメチルポリシロキサン]、鉱物油(スピンドル油、ケロシン等)、金属石ケン(C12〜22、例えばステアリン酸カルシウム)等;
キレート化剤(B2)としては、アミノカルボン酸(C6〜24、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸およびトリエチレンテトラミンヘキサ酢酸)、多価カルボン酸[C4以上かつMn10,000以下、例えばマレイン酸、ポリアクリル酸(Mn1,000〜10,000)およびイソアミレン/マレイン酸共重合体(Mn1,000〜10,000)]、ヒドロキシカルボン酸(C3〜10、例えばクエン酸、グルコン酸、乳酸およびリンゴ酸)、縮合リン酸(トリポリリン酸、トリメタリン酸等)およびこれらの塩[アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、オクチルアミン等)塩およびアルカノールアミン(C2〜12、例えばモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン等)塩]等;
【0097】
pH調整剤(B3)としては、苛性アルカリ(苛性ソーダ、苛性カリ等)、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン)、無機酸(塩)〔無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、炭酸等)、およびこれらの金属[アルカリ金属、アルカリ土類金属等]塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、リン酸1ナトリウム等)およびアンモニウム塩(炭酸アンモン、硫酸アンモン等)等〕、有機酸(塩)〔有機酸[カルボン酸(C2〜15、例えば酢酸、クエン酸)、スルホン酸(C1〜15、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)およびフェノール]、およびこれらの金属(上記に同じ)塩(酢酸ソーダおよび乳酸ソーダ)およびアンモニウム塩(酢酸アンモニウム、乳酸アンモニウム等)等〕等;
【0098】
界面活性剤(B4)としては、米国特許第4331447号明細書記載の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよびジオクチルスルホコハク酸ソーダ;ブロッキング防止剤(B5)としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル(Mn100〜3,000)、例えばポリオキシエチレン変性シリコーンおよびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン変性シリコーン];
【0099】
酸化防止剤(B6)としては、フェノール化合物[ハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)および2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等]、含硫化合物〔チオ尿素、テトラメチルチウラムジサルファイド、ジメチルジチオカルバミン酸およびその塩[例えば金属(上記に同じ)塩およびアンモニウム塩等]、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩(上記に同じ)、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)およびジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)等〕、含リン化合物[トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、トリフェニルホスファイト(TPP)およびトリイソデシルホスファイト(TDP)等]および含窒素化合物[アミン(オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノールおよびN,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン等)、尿素、グアニジンおよびグアニジンの無機酸(上記に同じ)塩]等;
【0100】
紫外線吸収剤(B7)としては、ベンゾフェノン化合物(2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等)、サリチレート化合物(フェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等)、ベンゾトリアゾール化合物[(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]およびアクレート[エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシベンジル)アクリレート等]等;
防腐剤(B8)としては、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルおよびソルビン酸等が挙げられる。
【0101】
上記(B)は、(A)の製造における重合前のモノマー水溶液中に予め添加しても、製造後の(A)に添加しても、また、汚泥脱水剤に添加してもいずれでもよい。(B)全体の使用量は、モノマーまたは(A)の重量に基づいて、通常30%以下、凝集性能の観点から好ましくは0〜10%である。
(B1)〜(B8)の各添加剤の使用量は、上記と同様の重量に基づいて、(B1)は通常5%以下、好ましくは1〜3%、(B2)は通常20%以下、好ましくは2〜10%、(B3)は通常10%以下、好ましくは1〜5%、(B4)および(B5)はそれぞれ通常5%以下、好ましくは1〜3%、(B6)、(B7)および(B8)はそれぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0102】
また、汚泥脱水剤を下水汚泥等に添加して形成されたフロックの脱水方法(固液分離法)としては、遠心脱水、フィルタープレス脱水、ベルトプレス脱水、スクリュープレス脱水およびキャピラリー脱水等の種々の脱水法が適用できる。これらのうち、本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、スクリュープレス脱水およびベルトプレス脱水である。
【0103】
[原油回収用薬剤]
本発明の高分子凝集剤を石油の3次回収用として使用する際には、通常水溶液として使用される。該水溶液の濃度は、増粘効果および送液可能な粘度の観点から好ましくは0.001〜3重量%、さらに好ましくは0.005〜1重量%、とくに好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0104】
本発明の高分子凝集剤を下水汚泥等に適用する際、下水汚泥等が有機性の汚泥や嫌気性菌処理汚泥である場合は、汚泥粒子の荷電中和の観点から無機および/または有機凝結剤を併用するのが好ましい。
無機凝結剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄、消石灰等;有機凝結剤としては、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩酸塩、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライド、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−マレイン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−シトラコン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−イタコン酸、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−フマル酸共重合体等が挙げられる。
無機および/または有機凝結剤を併用する場合は、本発明の高分子凝集剤に予めこれらを添加した混合物で下水汚泥等を処理するか、下水汚泥等に予め無機凝結剤および/または有機凝結剤を添加して一次凝集させた後、本発明の高分子凝集剤を添加して処理するかいずれでもよいが、フロックの強度の観点から好ましいのは後者の方法である。
【0105】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を併用する場合の使用量は、下水汚泥等の種類、懸濁粒子の大きさ、用いる凝結剤の種類などによって異なるが、特に限定はなく、下水汚泥等中のTSに基づいて、無機凝結剤では通常20%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは1.5%、凝結性能の観点から好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%であり、有機凝結剤では通常1%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.025%、とくに好ましくは0.05%、凝結性能の観点から好ましい上限は0.5%、さらに好ましくは0.2%、とくに好ましくは0.15%である。
【0106】
本発明の高分子凝集剤の添加の際には、下水汚泥等のpHを予め調整しておいてもよい。pHの調整範囲は通常3〜8、加水分解防止の観点から好ましい下限は3.5、さらに好ましくは4、とくに好ましくは4.5、溶解性の観点から好ましい上限は7、さらに好ましくは6、とくに好ましくは5.5である。
pHの調整方法としては、特に限定されることはなく、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)等の酸性物質や苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等のアルカリ性物質を用いる方法が挙げられる。また、前記の無機または有機凝結剤を下水汚泥等に予め加えることで、上記pHに調整することもできる。
【実施例】
【0107】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0108】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次のとおりである。
(1)水溶性ビニルモノマー(a)
(a−1):N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロラ
イド塩の63.5%水溶液
(a−2):N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライ
ド塩の70%水溶液
(a−3):アクリルアミドの50%水溶液
(a−4):アクリル酸の80%水溶液
(2)連鎖移動剤(f)
(f−1):1−チオグリセロールの1%水溶液
(f−2):エチレングリコール−ジ−2−メルカプトエチルエーテルの1
%水溶液
(f−3):メルカプト酢酸の1%水溶液
【0109】
(3)ラジカル重合開始剤(d)
(d−1):アゾビスアミジノプロパン二塩酸塩[和光純薬工業(株)製、「V
−50」、10時間半減期温度:56℃]の10%水溶液
(d−2):アゾビス(4―シアノ吉草酸)[和光純薬工業(株)製、「V−
501」、10時間半減期温度:69℃]の10%水溶液(pH
7.0に水酸化ナトリウム水溶液で調整したもの。)
(d−3):過酸化水素水の1%水溶液
(d−4):アルコルビン酸の1%水溶液
(d−5):硫酸鉄(I)の1%水溶液
(4)疎水性物質(C)
(C−1):ステアリン酸Mg
(C−2):ステアリン酸
(C−3):ステアリルアルコール
(C−4):ショ糖ステアリン酸モノエステル
(C−5):ジオクタデカン酸N−エチルアミド
【0110】
水溶性樹脂粒子の各分析項目は以下の方法で評価した。
なお、下水汚泥等中のTS、浮遊物質(SS)、有機分(強熱減量)は、「下水試験方法」(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて行った。
【0111】
(1)0.2重量%水溶液粘度(mPa・s、25℃)
ジャーテスター[型式「JMD−6HS−A」、宮本理研工業(株)製、以下同じ。]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付けた撹拌装置を用い、500mLビーカーにイオン交換水499gを入れ、水温25℃にて300rpmで撹拌下、固形分1.0gの水溶性樹脂粒子試料を徐々に加えて後、240分かけて溶解させる。その後、得られた水溶液の一部を、あらかじめ25℃に温度調整した200mLトールビーカーに移し、25℃の恒温槽でB型粘度計[型式「TV−10M」、東機産業(株)製、以下同じ。]を用いてM2ローター(あらかじめ25℃に温度調整)、30rpmにて測定開始300秒後の値を0.2重量%水溶液粘度(Vs)(これを本発明における溶解撹拌開始240分後の粘度と称する。)とする。また、上記と同様にして、溶解撹拌開始10分後の粘度を(V1)、60分後の粘度を(V2)とする。
【0112】
(2)0.5重量%塩水溶液粘度(mPa・s、25℃)
上記と同じ撹拌装置を用い、500mLビーカーにイオン交換水477.5gを入れ、水温25℃にて200rpmで撹拌下、固形分2.5gの水溶性樹脂粒子試料を徐々に加えて、4時間かけて溶解させる。その後、塩化ナトリウム20gを入れ、さらに30分間撹拌して溶解させる。その後、得られた塩水溶液(塩化ナトリウムの濃度は4重量%)の一部を、あらかじめ25℃に温度調整した200mLトールビーカーに移し、25℃の恒温槽で、B型粘度計を用いてM1ローター(あらかじめ25℃に温度調整)、60rpmにて測定開始300秒後の値を0.5重量%塩水溶液粘度(M)とする。
【0113】
(3)体積平均粒子径(μm)、150μm以下含量(重量%)
ロータップ試験篩振とう機および標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1,000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μmおよび45μm、並びに受け皿の順等に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるいおよび受け皿上の粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるいおよび受け皿上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを体積平均粒子径とする。合計を100重量%とした時の150μm以下の含量を150μm以下含量(重量%)とする。
【0114】
(4)フロック粒径(mm)
300mlのビーカーに、下記実施例に記載の消化汚泥200部を入れ、上記(1)と同じ撹拌装置にセットする。ジャーテスターの回転数を300rpmとし、徐々に汚泥を撹拌しながら、0.2%の水溶性樹脂粒子の水溶液をシリンジで0.5%/TS添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を目視にて観察する。続いて回転数を650rpmに変え、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を再度目視にて観察する。
【0115】
(5)フロック強度
上記(4)における回転数300rpmおよび650rpmでのフロック粒径を比較し、フロック粒径の変化からフロック強度を下記の基準に従って評価する。
<評価基準>
◎ 非常に強固 (粒径に変化なし)
○ 強固 (ごく一部小粒径化)
△ やや弱い (小粒径化部分やや多い)
× 弱い (全体的に小粒径化)
【0116】
(6)10秒後ろ液量、60秒後ろ液量(ml)
ナイロン製ろ布[型番「T−1189」、敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、および300mlが計測できるメスシリンダーを用いてろ過装置をセットする。上記(4)のフロック粒径試験後の汚泥を該ろ布を敷いたヌッチェろ過面上に一気に全量投入してろ過し、ストップウォッチを用いて投入直後から10秒後および60秒後までに通過したろ液量を測定する。
【0117】
(7)ろ布剥離性
ろ過した汚泥をろ布ごとスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(1kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布に付着した脱水ケーキをスパーテルで剥離させる場合の脱水ケーキの剥離性を下記の基準に従って評価する。
<評価基準>
◎:非常に剥がれやすい(ろ布に付着物なし)
○:剥がれやすい (ろ布に付着物わずかにあり)
△:多少剥がれにくい (ろ布に付着物あり、わずかにろ布内部にまで付
着物あり)
×:剥がれにくい (ろ布内部にまで付着物多い)
【0118】
(8)脱水ケーキ含水率(重量%)
上記(7)のろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3gをシャーレに秤量(W3)して、循風乾燥機中、105±5℃、8時間で乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出する。

脱水ケーキ含水率(重量%)=[(W3)−(W4)]×100/(W3)
【0119】
実施例1 [水溶性樹脂粒子(Q−1)の製造]
撹拌機を備えた3Lの反応容器に(a−2)、(a−3)およびイオン交換水を表1に基づいて加え、系内が均一溶液になるまで混合、撹拌した。撹拌下、モノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら硫酸を用いて3.3に調整した。
次に、0℃の恒温水槽中で溶液温度を5℃に調整し、系内を窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度約5ppm)。その後、ラジカル重合開始剤(d−1)、(d−3)、(d−4)、(d−5)および連鎖移動剤(f−1)を表1に基づいて加えた原料混合液について、溶液温度5℃で重合を開始させ、重合により発生する熱により溶液温度が上昇し、約3時間後に85℃に達した。70℃に達した時点で90℃の恒温槽内に反応容器を入れて80〜90℃で10時間保温し重合を完結させた。なお重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。
その後、得られた含水ゲルを取り出し、疎水性物質(C−1)の10%水溶液を表1に基づいて加え、ミートチョッパー機[型番「12VR−400K」、ROYAL(株)製、目皿の目開き6mm]により混合、混練、さらにミンチ状に細断し、80℃の熱風で2時間乾燥後ジューサーミキサーで粉砕して、粉末状の水溶性樹脂粒子(Q−1)99部を得た(収率92%、固形分含量96%)。評価結果を表1に示す。
【0120】
実施例2〜6、比較例1〜3[水溶性樹脂粒子(Q−2)〜(Q−6)、(R−1)〜(R−3)の製造]
実施例1において、原料混合液を表1に基づいて混合した原料混合液に代えたこと以外は実施例1と同様にして、粉末状の水溶性樹脂粒子(Q−2)〜(Q−6)、(R−1)〜(R−3)を得た。評価結果を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
実施例7〜12、比較例4〜6[水溶性樹脂粒子の高分子凝集剤としての水溶解性、性能評価]
0.2重量%水溶液粘度の測定法の溶解条件において、撹拌回転数を200rpmとし、水溶性樹脂粒子1.0g(固形分)をシャーレに秤り取り、全量を一気にイオン交換水に投入した。60分間撹拌後の水溶解性を下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
<評価基準>
◎ ままこの発生、溶け残りともになし
○ ままこの発生がなく、溶け残りごくわずか
△ ままこの発生があり、溶け残りやや多い
× ままこの発生、溶け残りともに多い
【0123】
消化処理したA市処理場から採取した消化汚泥[pH7.4、TS2.9%、SS2.7%、有機分65%、アルカリ度4,543mg−CaCO3/L]200部を500mLのビーカーに採り、上記水溶性樹脂粒子の各水溶液20部を添加(この時の固形分添加量1.6%/TS)し、凝集性等を性能評価した。結果を表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
表2から、実施例7〜12の高分子凝集剤としての水溶性樹脂粒子は、比較例4〜6に比べて、ままこの発生がなく、かつ溶け残りがごくわずかで水溶性に優れ、凝集性においては大粒径のフロックが形成され、低撹拌下(300rpm)で一旦形成されたフロックが高撹拌下(650rpm)でも壊れにくい(フロック強度が強い)こと、10秒後ろ液量が多いことから初期ろ過速度が速いこと、および脱水性(脱水ケーキ含水率)において優れた効果を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の水溶性樹脂粒子は、従来にない溶解特性、凝集性能を示すことから、下水汚泥等の汚泥脱水剤、製紙工程での濾水歩留向上剤または紙力増強剤の他、産業廃水の凝集沈殿処理用、石油の3次回収用薬剤等に用いる高分子凝集剤として幅広く好適に用いられ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a)を必須構成単位とする水溶性(共)重合体(A)を含有してなり、0.2重量%水溶液粘度測定法における溶解撹拌開始から60分後の粘度(V2)と10分後の粘度(V1)との比(V2/V1)が10〜50である水溶性樹脂粒子。
【請求項2】
水溶性樹脂粒子の0.2重量%水溶液粘度測定法における溶解撹拌開始から60分後の粘度(V2)と240分後の粘度(Vs)の比(V2/Vs)が0.8〜2.0である請求項1記載の水溶性樹脂粒子。
【請求項3】
さらに、疎水性物質(C)を水溶性(共)重合体(A)の重量に基づき0.01〜10%含有させてなる請求項1または2記載の水溶性樹脂粒子。
【請求項4】
(C)の少なくとも一部が、水溶性樹脂粒子の表層に含有されてなる請求項3記載の水溶性樹脂粒子。
【請求項5】
(C)が、長鎖脂肪酸(塩)、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪族アルコールもしくは長鎖脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物、長鎖脂肪族アミン(塩)、並びに長鎖脂肪族アミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか記載の水溶性樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の水溶性樹脂粒子を含有してなる高分子凝集剤。

【公開番号】特開2011−241253(P2011−241253A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112106(P2010−112106)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】