説明

水溶性洗浄液

【課題】特に、金属加工後のアルミニウム及びアルミニウム合金に対して、良好な耐食性を有すると共に、新生面の変色を防止し、かつ防錆性及び消泡性に優れる水溶性洗浄液を提供する。
【解決手段】(A)炭素数8〜18のアルキル基を有するジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、炭素数8〜18のアルキル基を有するナフタレンスルホン酸ナトリウム、炭素数15〜18のアルキル硫酸ナトリウム、及び炭素数8〜18のオレフィンスルホン化物のナトリウム塩の中から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする水溶性洗浄液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にアルミニウム及びアルミニウム合金用として好適な水溶性洗浄液に関し、さらに詳しくは、金属加工後のアルミニウム及びアルミニウム合金に対して、良好な耐食性を有すると共に、新生面の変色を防止し、かつ防錆性及び消泡性にも優れる水溶性洗浄液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属加工に用いられる金属加工液には油系と水系があるが、冷却性、浸潤性に優れ、火災の危険がない水系が多用されている。
水系金属加工液による加工後のワークは、水溶性洗浄液による洗浄が行われ、ワークに付着した水溶性切削・研削液や切粉が除去される。
水系金属加工液による加工後に使用される水溶性洗浄液の要求性能は、洗浄性、耐食性(アルミニウム、アルミニウム合金、鉄などの金属)、耐変色性、消泡性、耐腐敗性、安全性などが挙げられる。特に、アルミニウムやアルミニウム合金材料の場合、耐食性、耐変色性が重要となる。
【0003】
アルミニウムやアルミニウム合金用の腐食・変色防止剤や水溶性洗浄液の先行技術としては、例えば以下に示す特許文献1〜7を挙げることができる。
特許文献1には、台所製品、厨房製品などのA1系材質からなる表面の腐食、変色の影響を軽減乃至防止することができるA1系材質用腐食・変色防止剤として、特定のポリアミンカルボン酸塩及び/又は特定のホスホノカルボン酸塩が開示されている。しかしながら、この技術においては、消泡性については全く考慮されていないため、工業用水溶性洗浄液には、そのまま適用しにくい。
特許文献2には、アルミニウムやアルミニウム合金の変色しやすいpH(9以上)領域でも変色防止することができ、かつ調合安定性が良好な変色防止剤として、ヒドロキシ脂肪酸またはヒドロキシ脂肪酸の脱水縮合物のリン酸エステルのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩の中から選ばれる少なくとも1種を含有するものが開示されているが、製造法が煩雑である上、消泡性が全く考慮されていないため、工業用水溶性洗浄液にはそのまま適用しにくい。
【0004】
特許文献3には、アルミニウム又はその合金材料の切削・研削加工時やその加工後の放置期間中における該金属の変色を効果的に防止できる水溶性切削・研削油剤として炭素数13〜25の主鎖を有する二塩基酸塩を含有するものが開示されているが、二塩基酸が比較的油溶性のため、希釈液の外観が不透明になったり、原液保管時に層分離する恐れがあり、また、消泡性が悪化する場合がある。
特許文献4には、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸と無水マレイン酸またはアクリル酸との熱による付加反応生成物のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、または、アミン塩を含有するアルミニウム及びその合金用変色防止剤が開示されている。しかしながら、製造法が煩雑である上、消泡性が全く考慮されていないため、工業用水溶性洗浄液にはそのまま適用しにくい。
特許文献5には、分子量500〜2000のポリブチレングリコールと酸無水物とのジアシル化反応物のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、または、アミン塩を含有するアルミニウム及びその合金用変色防止剤が開示されている。しかしながら、前記特許文献4と同様に、製造法が煩雑である上、消泡性が全く考慮されていないため、工業用水溶性洗浄液にはそのまま適用しにくい。
【0005】
特許文献6には、特定のアンモニウムカチオンと、ハロゲン原子を有しないアニオンとからなる化合物を含有するアルミニウム材用表面防汚剤が開示されている。しかしながら、この表面防汚剤は、消泡性については全く考慮されていないため、工業用水溶性洗浄液にはそのまま適用しにくい。
さらに、特許文献7には、厨房の食器や調理器具に利用されているアルミニウム製品の洗浄剤として、少なくとも分岐鎖を有し、主鎖から分岐する炭素原子に不飽和結合を有する不飽和二塩基酸と、アルカノールアミンと、ケイ酸塩を含むアルカリ洗浄剤用添加剤が開示されている。しかしながら、該二塩基酸が比較的油溶性のため、希釈液の外観が不透明になったり、原液保管時に層分離する恐れがあり、また、消泡性が悪化する場合がある。さらに、ケイ酸塩は、水リンスがない場合が多い工業洗浄ではワーク表面の白残りが問題になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−269673号公報
【特許文献2】特開2000−313975号公報
【特許文献3】特開2003−41285号公報
【特許文献4】特開2006−9105号公報
【特許文献5】特開2006−213982号公報
【特許文献6】特開2008−50409号公報
【特許文献7】特開2008−297469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下になされたもので、特に、金属加工後のアルミニウム及びアルミニウム合金に対して、良好な耐食性を有すると共に、新生面の変色を防止し、かつ防錆性及び消泡性に優れる水溶性洗浄液を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、(A)成分グループとして、特定の有機スルホン酸ナトリウム及び特定のアルキル硫酸ナトリウムの中から選ばれる少なくとも一種を含むと共に、好ましくは、さらに(B)成分グループとして、特定の有機モノカルボン酸又はジカルボン酸、及び特定のアルキル基やシクロアルキル基を有するモノ又はジエタノールアミンの中から選ばれる少なくとも一種を含む水溶性洗浄液が、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1](A)炭素数8〜18のアルキル基を有するジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、炭素数8〜18のアルキル基を有するナフタレンスルホン酸ナトリウム、炭素数15〜18のアルキル硫酸ナトリウム、及び炭素数8〜18のオレフィンスルホン化物のナトリウム塩の中から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする水溶性洗浄液、
[2]さらに、(B)炭素数6〜18のアルカン若しくはアルケンモノ又はジカルボン酸、シクロアルキル基の炭素数が4〜10のN−シクロアルキルモノ又はジエタノールアミン、シクロアルキル基の炭素数が4〜10のN,N−ジシクロアルキルモノエタノールアミン及びアルキル基の炭素数が1〜6のN−アルキルモノ又はジエタノールアミンの中から選ばれる少なくとも一種を含む上記[1]に記載の水溶性洗浄液、及び
[3]アルミニウム及びアルミニウム合金の変色防止用である上記[1]又は[2]に記載の水溶性洗浄液、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特に金属加工後のアルミニウム及びアルミニウム合金に対して、良好な耐食性を有すると共に、新生面の変色を防止し、かつ防錆性及び消泡性にも優れる水溶性洗浄液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水溶性洗浄液は、(A)炭素数8〜18のアルキル基を有するジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、炭素数8〜18のアルキル基を有するナフタレンスルホン酸ナトリウム、炭素数15〜18のアルキル硫酸ナトリウム、及び炭素数8〜18のオレフィンスルホン化物のナトリウム塩の中から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【0012】
[(A)成分]
本発明の水溶性洗浄液においては、(A)成分として、下記の一般式で示される、炭素数8〜18のアルキル基を有するジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム[式(A−1)]、炭素数8〜18のアルキル基を有するナフタレンスルホン酸ナトリウム[式(A−2)]、炭素数15〜18のアルキル硫酸ナトリウム[式(A−3)]、及び炭素数8〜18のオレフィン[式(A−4)]スルホン化物のナトリウム塩の中から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、nは8〜18の整数、mは15〜18の整数を示す。R1は水素原子又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、R2は直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、R1とR2との合計炭素数は6〜16である。)
【0015】
前記の式(A−1)及び式(A−2)におけるCn(2n+1)−で示される炭素数8〜18のアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、例えば各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基などの炭素数8〜18の各種アルキル基を挙げることができる。なお、各種アルキル基とは、同一炭素数のアルキル基において、全ての異性体を含むことを意味する。
前記式(A−3)におけるCm(2m+1)−で示される炭素数15〜18のアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、例えば各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基を挙げることができる。
また、式(A−1)において、SO3Na基は、2個のベンゼン環のそれぞれに結合しているが、これに限定されるものではなく、2個のSO3Na基は、ベンゼン環のどこの位置に結合していてもかまわない。式(A−2)においても、上記と同様に、SO3Na基はナフタレン環のどこの位置に結合していてもかまわない。
また、式(A−3)で示されるアルキル硫酸ナトリウムのCm(2m+1)−O−SO3Naは炭素数15〜18の直鎖状又は分岐状アルキルアルコールの硫酸エステルナトリウム塩であり、具体的には、直鎖状のセチルアルコールの硫酸エステルナトリウム塩であるCH3(CH214CH2OSO3Naなどを例示することができる。
【0016】
一方、炭素数8〜18のオレフィンスルホン化物のナトリウム塩において、式(A−4)で示されるオレフィンは、α位に二重結合を有するα−オレフィン(R1が水素原子の場合)、及びα位以外に二重結合を有する内部オレフィン(R1が直鎖状又は分岐状のアルキル基の場合)を含み、いずれも直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。
当該オレフィンのスルホン化物のナトリウム塩は、通常下記の一般式(A−4−a)で示されるスルホン酸ナトリウム塩と、一般式(A−4−b)で示されるスルホン酸ナトリウム塩の混合物となる。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R'は水素原子又は直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を示し、R'の炭素数と(CH2pの合計炭素数は6〜16である。)
前記式(A−4−a)で示されるスルホン酸ナトリウム塩としては、具体的には、R'がC1123であり、(CH2pのpが1であるテトラデセンスルホン酸ナトリウムなどを例示することができる。
【0019】
これらの(A)成分は、金属に対する洗浄作用を有すると共に、特に金属加工後のアルミニウム及びアルミニウム合金に対して、新生面の変色を防止する作用を有する。本発明の水溶性洗浄液においては、当該(A)成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
[(B)成分]
本発明の水溶性洗浄液においては、前述した(A)成分と共に、(B)成分として、炭素数6〜18のアルカン若しくはアルケンモノ又はジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸成分、シクロアルキル基の炭素数が4〜10のN−シクロアルキルモノ又はジエタノールアミン、シクロアルキル基の炭素数が4〜10のN,N−ジシクロアルキルモノエタノールアミン及びアルキル基の炭素数が1〜6のN−アルキルモノ又はジエタノールアミンなどの脂肪族アミン成分の中から選ばれる少なくとも一種を含有させることができる。
この(B)成分は、前述した(A)成分の変色防止作用を助長すると共に、アルミニウム及びアルミニウム合金に対する腐食防止作用を有する。また、当該水溶性洗浄液の防腐性及び関連する機器や装置の防錆性を向上させる上、当該水溶性洗浄液における前記(A)成分の安定化に寄与する。
【0021】
前記アルカン若しくはアルケンモノ又はジカルボン酸におけるアルカン及びアルケンの炭素数は、前述した効果及び当該水溶性洗浄液における溶解性などの観点から、好ましくは6〜18の範囲で選定される。該アルカン及びアルケンは、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。
アルカンモノカルボン酸としては、例えばヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、イソデカン酸、ラウリン酸、イソドデカン酸、ミリスチン酸、イソテトラデカン酸、パルミチン酸、イソヘキサデカン酸、ステアリン酸、イソオクタデカン酸などが挙げられる。
アルケンモノカルボン酸としては、例えばウンデシレン酸、cis−4−テトラデセン酸(ツズ酸)、cis−5−テトラデセン酸(フィゼテリン酸)、cis−9−テトラデセン酸(ミリストレイン酸)、cis−6−ヘキサデセン酸、cis−9−ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、cis−6−オクタデセン酸(ペトロセリン酸)、cis−9−オクタデセン酸(オレイン酸)、trans−9−オクタデセン酸(エライジン酸)、cis−11−オクタデセン酸(アスクレピン酸)、trans−11−オクタデセン酸などが挙げられる。
【0022】
アルカンジカルボン酸としては、例えばノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸などが挙げられ、アルケンジカルボン酸としては、例えばデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸、テトラデセン二酸、ヘキサデセン二酸、オクタデセン二酸などが挙げられる。
また、本発明の水溶性洗浄液においては、(B)成分のうちの脂肪族カルボン酸成分として、前記のアルカン若しくはアルケンモノ又はジカルボン酸以外に、炭素数7〜19のモノ又はジヒドロキシ脂肪酸を用いることができる。このモノ又はジヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、オキシラウリン酸(サビニン酸)、2−ヒドロキシテトラデカン酸、ヤラピノール酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシ−9−オクタデセン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3,11−ジヒドロキシテトラデカン酸、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。
【0023】
一方、シクロアルキル基の炭素数が4〜10のN−シクロアルキルモノ又はジエタノールアミンとしては、例えばN−シクロペンチルモノエタノールアミン、N−シクロペンチルジエタノールアミン、N−シクロヘキシルモノエタノール、N−シクロヘキシルジエタノールアミン、N−シクロオクチルモノエタノールアミン、N−シクロオクチルジエタノールアミンなどが挙げられる。シクロアルキル基の炭素数が4〜10のN,N−ジシクロアルキルモノエタノールアミンとしては、例えばN,N−ジシクロペンチルモノエタノールアミン、N,N−ジシクロヘキシルモノエタノールアミン、N,N−ジシクロオクチルモノエタノールアミンなどが挙げられる。
アルキル基の炭素数が1〜6のN−アルキルモノ又はジエタノールアミンとしては、例えばN−メチルモノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルモノエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルモノエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−イソプロピルモノエタノールアミン、N−イソプロピルジエタノールアミン、N−ブチルモノエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−イソブチルモノエタノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−ペンチルモノエタノールアミン、N−ペンチルジエタノールアミン、N−ヘキシルモノエタノールアミン、N−ヘキシルジエタノールアミンなどが挙げられる。
また、本発明の水溶性洗浄液においては、(B)成分のうちの脂肪族アミン成分として、前記のN−シクロアルキルモノ又はジエタノールアミン、N,N−ジシクロアルキルモノエタノールアミン及びN−アルキルモノ又はジエタノールアミン以外に、炭素数1〜6のアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、炭素数4〜10のシクロアルキルアミン(例えば、シクロヘキシルアミン等)、モルホリン、3,3−ジメチルプロパンジアミン等を用いることができる。
【0024】
本発明の水溶性洗浄液においては、これらの(B)成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、前述した当該(B)成分の効果の観点から、脂肪族カルボン酸成分と脂肪族アミン成分の両方を含むことが好ましく、それらの含有割合は、質量比で通常30:70〜55:45程度、好ましくは35:65〜50:50である。
また、本発明の水溶性洗浄液においては、当該(B)成分の含有量は、前述した(B)成分の効果が十分に発揮される観点から、前記(A)成分100質量部に対して、通常1000〜5000質量部程度、好ましくは1500〜3500質量部である。
【0025】
[他の配合成分]
本発明の水溶性洗浄液においては、前述した(A)成分及び(B)成分と共に、必要に応じて他の配合成分として、防錆剤、防食剤、防腐・抗菌剤、消泡剤などを含有させることができる。
<防錆剤>
防錆剤としては、例えば炭素数14〜36の脂肪族カルボン酸アミド(ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド及びオレイルアミド等);炭素数6〜36のアルケニルコハク酸アミド(オクテニルコハク酸アミド、ドデセニルコハク酸アミド、ペンタデセニルコハク酸アミド及びオクテニルコハク酸アミド等);シクロヘキシルアミンナイトライト;ベンゾトリアゾール;メルカプトベンゾチアゾール;N,N'−ジサリチリデン−1,2−ジアミノプロパン;アリザリン;脂肪族アミンおよびそのアルキレンオキサイド(AO)付加物等が挙げられる。
これらのうち、好ましいのは脂肪族アミンのAO付加物であり、特に好ましいのはトリエタノールアミン、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド(PO)2〜8モル、特に4モル付加物及びジエチレントリアミンのPO3〜8モル、特に5モル付加物である。
これらは、前記(A)成分100質量部に対して、通常10〜200質量部程度である。
【0026】
<防食剤>
防食剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系の各化合物を挙げることができる。これらは、前記(A)成分100質量部に対して、通常10〜200質量部程度である。
【0027】
<防腐・抗菌剤>
防腐・抗菌剤としては、従来公知の化合物、例えばo−フェニルフェノール、o−フェニルフェノールNa塩、2,3,4,6−テトラクロロフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、p−クロロ−m−キシレノールなどのフェノール系化合物;2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−s−トリアジン、1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンなどのホルムアルデヒド供与体化合物;サリチルアニリド系化合物;メチレンビスチオシアナート、6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキサン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−(2−ニトロブチル)モルホリン、4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンなどのその他化合物を挙げることができる。含有量は特に制限はなく、適宜量用いられる。
【0028】
<消泡剤>
消泡剤としては、高分子シリコーン系消泡剤が好ましく、この高分子シリコーン系消泡剤を含有させることにより、消泡性が効果的に発揮される。
前記高分子シリコーン系消泡剤としては、例えばオルガノポリシロキサンを挙げることができ、特にトリフルオロプロピルメチルシリコーン油などの含フッ素オルガノポリシロキサンが好適である。この高分子シリコーン系消泡剤は消泡効果及び経済性のバランスの点から、前記(A)成分100質量部に対して、通常10〜100質量部程度である。
【0029】
[水溶性洗浄液の使用形態]
本発明の水溶性洗浄液の使用形態については特に制限はないが、通常、前記(B)成分、防錆剤、防食剤、防腐・抗菌剤、消泡剤、水などを含む洗浄剤原液(以下、「洗浄剤原液A」と称することがある。)に、前記(A)成分を配合して、水溶性洗浄液原液(以下、「洗浄液原液B」と称することがある。)を調製し、この原液を水に希釈して使用する。もちろん、この場合、洗浄剤原液Aを前もって水に希釈した後に、(A)成分を配合して使用してもよく、また、(A)成分のみを前もって水に希釈した後に、(B)成分を配合して使用しもよい。
前記洗浄液原液Bにおける各成分の含有量については、通常、(A)成分を0.5〜2質量%程度を含有し、(B)成分は、前記(A)成分含有量に対して、10〜50倍質量%程度、好ましくは15〜35倍質量%含有する。
前記(B)成分は、脂肪族カルボン酸成分と脂肪族アミン成分の両方を、質量比で30:70〜55:45程度、好ましくは35:65〜50:50の割合で含有するのがよい。
また、防錆剤及び防食剤は、前記(A)成分含有量に対して、それぞれ0.1〜2倍質量%程度含有し、防腐・抗菌剤の含有量は適量である。
消泡剤は、前記(A)成分含有量に対して、0.1〜1.0倍質量%程度含有し、水は残量である。
【0030】
本発明の水溶性洗浄液を金属加工後のアルミニウム及びアルミニウム合金の洗浄に使用する場合、前述した洗浄液原液Bをそのまま用いてもよいが、一般に該原液を水に2〜100倍程度に希釈して使用され、その希釈倍率は、被洗浄材の材質などに応じて適宜選定すればよい。
この水に希釈した当該水溶性洗浄液を、アルミニウム及びアルミニウム合金に適用する場合、そのpHは、良好な耐食性を有すると共に、新生面の変色を防止し、かつ防錆性及び消泡性に優れる洗浄液とするためには、9以下が好ましく、7.5〜9の範囲にあることがより好ましい。なお、上記pHは、(B)成分である脂肪族カルボン酸成分と脂肪族アミン成分との比率を変えることにより、調整することができる。
本発明の水溶性洗浄液は、特にアルミニウム及びアルミニウム合金に適用されるが、アルミニウム合金としては、Al−Si合金系、Al−Mn−(Mg)合金系、Al−Mg合金系、Al−Cu合金系、Al−Cu−Mg合金系、Al−Mg−Si合金系、Al−Zn−Mg−(Cu)合金系、Al−Li合金系などがある。
本発明の水溶性洗浄液は、特に金属加工後のアルミニウム及びアルミニウム合金に対して、良好な耐食性を有すると共に、新生面の変色を防止し、かつ防錆性及び消泡性に優れるなどの効果を奏する。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)洗浄剤原液の調製
攪拌機付き容器に、所定量のイソノナン酸、粗ドデカン二酸、1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−メチルジエタノールアミン及びN−シクロヘキシルジエタノールアミンと、使用すべき量の50%に相当する量の水道水を順に投入し、50〜60℃にて30分間攪拌して、固体の溶解を確認した。
次いで、加熱を止め、残りの50%に相当する量の水道水を投入し、15分間攪拌した。その後、30〜40℃にて所定量の消泡剤[出光興産社製、商品名「クールコンセントFS」、シリコーンエマルジョン系]を投入し、約20分間攪拌することで洗浄剤原液を調製した。
この洗浄剤原液中の各成分の含有量は、イソノナン酸0.70質量%、粗ドデカン二酸10.30質量%、N−メチルジエタノールアミン10.30質量%、N−シクロヘキシルジエタノールアミン7.00質量%、1,2,3−ベンゾトリアゾール1.00質量%、防腐・抗菌剤(イソチアゾリン系とピリジン系の混合物)0.40質量%、消泡剤0.30質量%、及び水70.00質量%(合計100.00質量%))であった。
(2)水溶性洗浄液の調製
上記(1)で得た洗浄剤原液をイオン交換水で希釈して得られた原液5質量%を含む希釈液100gに、アルミ変色防止剤として、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(変色防止剤a)を加え、変色防止剤a0.05質量%を含む水溶性洗浄液を調製した。この水溶性洗浄液のpHは8.25であった。なお、上記pHは、pH測定機器[DKK社製、機種名「PHL−20」]を用い、温度25℃にて測定した。
【0032】
(3)水溶性洗浄液の評価
<アルミ半浸漬試験による変色防止性の評価>
アルミテストピースとして、長さ75mm、幅25mm、厚さ1mmのA−6061と、長さ56mm、幅10mm、厚さ2.5mmのADC12を用いた。
まず、各テストピースの両面を紙やすり(C320番)で均一に磨いたのち、磨いたテストピースの粉を拭き取る。次いで、ビーカーに磨いたテストピースを入れ、アセトンを該テストピースが浸るぐらいまで入れて、超音波洗浄機[アズワン社製、機種名「USD−2R」]で10分間洗浄したのち、各テストピースを重ならないようにカゴに入れて乾燥させる。
次に、100mL蓋付きサンプルびんに、被検洗浄液約25mLを入れ、磨いたテストピース全体に該洗浄液が浸るようにしたのち、テストピースを半浸漬させ、蓋をして60℃の恒温槽に2時間静置する。その後テストピースを取り出し、水道水、アセトンの順で洗ったのち、水分を拭き取る。
このようにして得られた各テストピースについて、A−6061気相部、A−6061液相部、ADC12気相部、ADC12液相部の外観の変色具合を目視観察して、下記の判定基準で変色防止性を評価した。
S:変色なし
A:僅かに変色
B:50%以上変色
C:黒色に変色
<シリンダー法試験による消泡性の評価>
被検洗浄液100mLを共栓付き100mLメスシリンダーに入れ、5秒間激しく振ったのち、目視観察により、表面の泡が表面積の50%以下になるまでの時間を測定し、下記の判定基準で消泡性を評価した。
S:10秒以内に消泡する。
A:30秒以内に消泡する。
C:30秒後に泡が残る。
これらの評価結果を、アルミ変色防止剤の種類と共に、第1表に示す。
【0033】
実施例2〜5及び比較例1〜15
実施例1(2)において、アルミ変色防止剤として、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの代わりに、第1表に示す種類のものを用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、水溶性洗浄液を調製し、その評価を行った。結果を第1表に示す。
【0034】
参考例1
実施例1(2)において、アルミ変色防止剤を加えなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、水溶性洗浄液を調製し、その評価を行った。結果を第1表に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
[注]
【0038】
第1表−1及び第1表−2において、アルミ変色防止剤の種類における各記号の意味は次のとおりである。
a:ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、花王社製「ペレックスSS−L」
b:セチル硫酸ナトリウム、日光ケミカルズ社製「NIKKOL SCS」
c:C12〜C14α−オレフィンスルホン化物のナトリウム塩、ライオン社製「リポランPB−800」
d:テトラデセン(C1225CH=CH2)スルホン化物のナトリウム塩、日光ケミカルズ社製「NIKKOL OS−14」
e:アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王社製「ペレックス NBL」、アルキル基の炭素数6〜12
f:有機リン酸エステル,トリエタノールアミン塩、キレスト社製「キレスライト AL−3」
g:ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、花王社製「ペレックス OTP」
h:酸化プロピレン・酸化エチレンブロック共重合物、三洋化成社製「ニューポール PE−62」
i:酸化プロピレン・酸化エチレンブロック共重合物、三洋化成社製「ニューポール PE−64」
j:ポリイソプレンスルホン酸ナトリウム、JSR社製「ダイナフロー CS2109」、ポリイソプレンの分子量;12,000〜18,000
k:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ソフト)、花王社製「ネオプレックス F−25」
m:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ソフト)、花王社製「ネオプレックス F−65」
n:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ハード)、花王社製「ネオプレックス No.6」
o:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、花王社製「レベノール WX」
p:ラウリルリン酸ナトリウム、日光ケミカルズ社製「NIKKOL SLP−N」
q:ラウリル硫酸ナトリウム、日光ケミカルズ社製「NIKKOL SLS」
r:有機酸アミン塩、キレスト社製「キレスライト AL−2」
s:ミリスチル硫酸ナトリウム、日光ケミカルズ社製「NIKKOL SMS−F」
t:硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム、日光ケミカルズ社製「NIKKOL SGC−80N」
u:有機酸アミン塩、キレスト社製「キレスライトAL−6」
【0039】
第1表から分かるように、実施例1〜5の水溶性洗浄液は、いずれも変色防止性の評価及び消泡性の評価において、「B」、「C」はない。一方、比較例1〜15の水溶性洗浄液は、変色防止性の評価及び消泡性の評価において、1つ以上の「B」及び/又は「C」がある。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の水溶性洗浄液は、特にアルミニウム及びアルミニウム合金用として好適であって、金属加工後のアルミニウム及びアルミニウム合金に対して、良好な耐食性を有すると共に、新生面の変色を防止し、かつ防錆性及び消泡性にも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数8〜18のアルキル基を有するジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、炭素数8〜18のアルキル基を有するナフタレンスルホン酸ナトリウム、炭素数15〜18のアルキル硫酸ナトリウム、及び炭素数8〜18のオレフィンスルホン化物のナトリウム塩の中から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする水溶性洗浄液。
【請求項2】
さらに、(B)炭素数6〜18のアルカン若しくはアルケンモノ又はジカルボン酸、シクロアルキル基の炭素数が4〜10のN−シクロアルキルモノ又はジエタノールアミン、シクロアルキル基の炭素数が4〜10のN,N−ジシクロアルキルモノエタノールアミン及びアルキル基の炭素数が1〜6のN−アルキルモノ又はジエタノールアミンの中から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1に記載の水溶性洗浄液。
【請求項3】
アルミニウム及びアルミニウム合金の変色防止用である請求項1又は2に記載の水溶性洗浄液。

【公開番号】特開2011−84790(P2011−84790A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239851(P2009−239851)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】