説明

水溶性重合体の連続的製造方法、及び、水溶性重合体

【課題】無機物の分散性等に優れ、十分な経時的な分散性を示すカルボキシル基含有重合体を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明にかかる水溶性重合体組成物は、(i)攪拌可能なタンクを必須として含む反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給して重合を行なう工程と、(ii)反応液の一部を反応装置から取り出す工程と、を有する連続的製造方法により製造される水溶性重合体組成物であって、得られた水溶性重合体組成物の有効成分の質量を固形分の質量で除した数が0.9以上であることを特徴とする水溶性重合体組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性重合体の連続的製造方法に関する。より詳しくは、顔料等の分散剤、洗剤ビルダー、スケール防止剤、無機顔料分散剤等として有用な水溶性重合体を連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性重合体は、増粘剤、粘着剤、凝集剤、吸湿剤、乾燥剤、表面改質剤、粘着性向上剤、分散剤等としての優れた基本性能を有するものであり工業上多用されている。例えば、掘削土処理剤や湿布薬・パップ剤用添加剤、浚渫土処理剤等の他、医薬、塗料、製紙、洗剤や化粧品、水処理、繊維処理、土木建築や農・園芸、接着剤、窯業、製造プロセス、その他の分野において多岐にわたって使用されている。また、粘度や残存する単量体の量等においてより高品質のものは、例えば、増粘剤やほぐれ促進剤等として食品用や飼料用として用いられている。
【0003】
従来の水溶性重合体の製造方法としては、発泡や温度を制御したバッチ重合での高濃度のポリアクリル酸ソーダの製造方法が開示されており(例えば、特許文献1参照。)、冷却装置、槽型反応器、撹拌型ミキサーを有した回分(バッチ)式反応装置が記載されている。しかしながら、この製造方法では、高生産性を確保するには大規模な装置が必要であり、また得られた重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は比較的大きいものとなり、例えば無機物の分散剤として使用した場合に、無機物の分散性や、分散性の経時安定性を改善する為の工夫の余地があった。
【0004】
また複数個の反応装置を直列に設置した低分子量分布のポリアクリル酸塩の連続的な製造方法が開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。実施例では、槽型の第1〜第3反応器を有する撹拌槽直列連続式反応装置を用いたポリアクリル酸塩の連続的な製造方法が開示されているが記載されている。当該方法によれば、マイケル付加物の含有量が少なく、分子量分布が狭いポリアクリル酸塩を反応率高く製造することができることが開示されている。上記反応装置は、撹拌槽が第1〜第3反応器として直列に接続され、第1反応器から第3反応器に順に反応液が送られて第3反応器から取り出されるものである。このような直列の反応装置においては、反応時間の短縮化、除熱効率の点において、工業上効率的にポリアクリル酸を生産することができるようにするための工夫の余地があった。さらに、上記方法で製造されたポリアクリル酸塩は、分子量分布も十分に小さいものとは言えず、例えば無機物の分散剤として使用した場合に、無機物の分散性や、分散性の経時安定性を更に改善された重合体を製造する為の工夫の余地があった。
【0005】
一方、ループ型の循環ラインを有した低分子量分布のポリアクリル酸等の水溶性重合体の連続的な製造方法が開示され(例えば、特許文献4参照。)、管型反応器と、モーションレスミキサーとを有する循環型連続式反応装置が記載されている。当該方法によれば、比較的分子量分布の小さい水溶性重合体を製造することが可能となる。しかしながら、例えば無機物の分散剤として使用した場合に、無機物の分散性や、分散性の経時安定性を更に改善された重合体を製造する為の工夫の余地があった。
【0006】
さらに、特許文献5には、タンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインを有する反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む循環液を循環させて水溶性重合体を連続的に製造する工程と、循環液の一部を排出ラインから取り出す工程とを有する水溶性重合体の連続的製造方法であって、該循環ラインは、少なくとも1箇所に冷却器が備えられたものである水溶性重合体の連続的製造方法が開示されている。上記方法によれば、分子量分布の小さいポリアクリル酸が効率よく製造することができるが、例えば無機物の分散剤として使用した場合に、無機物の分散性や、分散性の経時安定性を更に改善された重合体を製造する為の工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−244617号公報
【特許文献2】特開2003−040912号公報
【特許文献3】特開2003−002909号公報
【特許文献4】特開2001−098002号公報
【特許文献5】特開2007−217654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、無機物の分散性等に優れ、十分な経時的な分散性を示す水溶性重合体、当該重合体を含む水溶性重合体組成物および該重合体を簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、特定の連続的製造工程によって製造される特定の重合体(組成物)が、良好な無機物の分散性と、十分な経時安定性のある分散性を発現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかる水溶性重合体組成物は、(i)攪拌可能なタンクを必須として含む反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給して重合を行なう工程と、(ii)反応液の一部を反応装置から取り出す工程と、を有する連続的製造方法により製造される水溶性重合体組成物であって、得られた水溶性重合体組成物の有効成分の質量を固形分の質量で除した数が0.9以上であることを特徴とする水溶性重合体組成物である。
本発明の別の局面からは、水溶性重合体の製造方法が提供される。すなわち、本発明の水溶性重合体の製造方法は、(i)攪拌可能なタンクを必須として含む反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給して重合を行なう工程と、(ii)反応液の一部を反応装置から取り出す工程と、を有する水溶性重合体の連続的製造方法であって、上記取り出した反応液の有効成分の質量を固形分の質量で除した数が0.9以上であることを特徴とする水溶性重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水溶性重合体および水溶性重合体組成物(以下、これらを水溶性重合体(組成物)とも言う)は、優れた泥汚れや無機顔料等の無機微粒子の分散性を有し、更に経時的な分散力を発揮することができる。従って、洗剤ビルダーや顔料分散剤として使用したときに、優れた経時的な洗浄力や、経時的な顔料の分散性を得ることができる。
本発明の水溶性重合体の製造方法によれば、優れた泥汚れや無機顔料等の無機微粒子の分散性を有し、更に経時的な分散力を発揮することができる重合体(あるいは重合体組成物)を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の水溶性重合体(組成物)の連続的製造方法の実施の一形態を示す概念図である。
【図2】本発明の水溶性重合体(組成物)の連続的製造方法の実施の一形態を示す概念図である。
【図3】本発明の水溶性重合体(組成物)の連続的製造方法の実施の一形態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
[水溶性重合体の製造方法]
本発明の水溶性重合体の連続的製造方法は、撹拌可能なタンクを必須として含む反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給して重合を行なう工程と、反応液の一部を反応装置から取り出す工程と、を有する水溶性重合体の連続的製造方法である。
【0014】
上記反応装置がタンクを必須として含むことにより、水溶性重合体の生産性を高くすることができ、単量体フィード量を高くしても、所望の低分子量の重合体を得ることができる。タンクを有しない管状反応器を用いた連続的重合法では、生産性を高めようとして単量体フィード量を高くすると、所望の低分子量の重合体を得ることができなくなる。これに対して本発明では、反応装置がタンクを備えているため、単量体フィード量を高くしても、所望の低分子量の重合体を得ることができ、生産性よく製造することができる。
【0015】
タンクは重合開始剤や重合促進剤、連鎖移動剤等の添加剤を供給するノズルを有することが好ましい。つまり、重合開始剤や重合促進剤、連鎖移動剤を添加して重合を進行させることが好ましい。主に重合反応が進行することが好ましい。主にとは、使用する単量体の90モル%以上がタンク内で反応することを意味する。
【0016】
上記タンクは、撹拌手段を設けることが好ましい。撹拌手段としては、限定されないが、さらに好ましくはタンク内の反応液を0.5kW/m以上の撹拌所要動力Pvで撹拌し得る任意の適切な撹拌手段が採用され得る。タンク内の反応液を上記撹拌動力で撹拌することにより、得られる水溶性重合体の無機粒子の分散性や経時的な分散性が向上する傾向にある。このような撹拌所要動力Pvを実現し得る手段としては、タンク内の循環液に乱流を生じさせる手段が挙げられる。撹拌手段の具体例としては、パドル型撹拌翼、錨型撹拌翼、格子型撹拌翼または大型平板翼を用いた撹拌装置が挙げられる。大型平板翼の具体例としては、マックスブレンド(登録商標)型撹拌翼、フルゾーン型撹拌翼、スーパーミックス型撹拌翼、サンメラー型撹拌翼が挙げられる。また、通常の撹拌翼に邪魔板を設けてもよい。タンクにこのような撹拌手段を設けることにより、工業規模の製造ラインにおいても分子量分布の狭い水溶性重合体を得ることができる。なお、一般的に、撹拌装置は、駆動部と変速部と撹拌翼とを有する。駆動部および変速部は、任意の適切な形状および/または様式を有するものが採用され得るが、好ましくは所望の撹拌所要動力Pvが得られるものが好ましい。駆動部の具体例としては、電動駆動、油圧駆動、空気駆動(エアモーター)が挙げられる。変速部には、例えば、インバーター、変速ギアを備えることができる。
【0017】
本発明の製造装置の材質としては、伝熱及び耐食性の点から、SUS製のものが好ましく、具体的には、SUS304、SUS316、SUS316L等が挙げられる。これらの場合にはまた、従来公知のスケール防止剤を塗布したり、これ(従来公知のスケール防止剤)を反応液(反応液は懸濁しても良い)中に添加することも可能である。なお、以下において本発明の製造装置に設置されてもよい各種供給口等においても同様である。
【0018】
本発明の水溶性重合体の製造方法は、反応装置(タンク(該当する場合には後述する循環ライン))における反応液の滞留時間を240分以下に設定することが好ましい。滞留時間を上記のように設定することにより、得られる重合体の無機粒子の分散性や経時的な分散性が向上する傾向にある。
より好ましくは150分以下であり、1分以上である。さらに好ましくは120分以下であり、2分以上である。特に好ましくは90分以下であり、3分以上である。なお、「滞留時間」は、以下の式で計算される。
滞留時間(分)=反応液の総量(質量部)/単位時間当たりの反応装置外への排出量(質量部/分)
本発明の水溶性重合体の製造方法は、重合濃度を1〜30質量%に設定することが好ましい。重合濃度を上記のように設定することにより、得られる重合体の無機粒子の分散性や経時的な分散性が向上する傾向にある。
より好ましくは25質量%以下であり、5質量%以上である。さらに好ましくは20質量%以下であり、8質量%以上である。特に好ましくは18質量%以下であり、10質量%以上である。なお、本発明において「重合濃度」とは、反応液100質量%に対する使用する単量体の質量%をいう。ここで、重合濃度を計算する際に、単量体が酸基含有単量体である場合には、酸型に換算した質量を用いて計算する。例えば、酸基含有単量体が「アクリル酸ナトリウム」である場合には、対応する酸である「アクリル酸」として重合濃度を計算する。なお、酸基含有単量体とは、酸基またはその塩を有する単量体であり、後述する不飽和カルボン酸系単量体やスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体等が例示される。
【0019】
本発明の水溶性重合体の製造方法は、使用する単量体(単量体組成物)が、酸基含有単量体を含むことになるが、当該酸基含有単量体の中和度が50モル%以上100モル%以下であることが好ましい。酸基含有単量体の中和度を上記のように設定することにより、得られる重合体の無機粒子の分散性や経時的な分散性が向上する傾向にある。より好ましくは60モル%以上であり、100モル%以下である。さらに好ましくは65モル%以上であり、100モル%以下である。特に好ましくは70モル%以上であり、100モル%以下である。
酸基含有単量体の中和度の調整は、酸型の酸基含有単量体と酸基含有単量体の塩を所定速度で添加することにより調整しても良く、酸型の酸基含有単量体とアルカリ性物質を所定速度で添加することにより調整しても良い。
【0020】
本発明の水溶性重合体の製造方法は、反応温度(タンク内の反応液の液温)を0〜150℃にすることが好ましい。反応温度を上記のように設定することにより、十分な生産性を達成することができ、かつ得られる重合体の無機粒子の分散性や経時的な分散性が向上する傾向にある。
より好ましくは50℃以上であり、130℃以下である。さらに好ましくは70℃以上であり、125℃以下である。特に好ましくは80℃以上であり、120℃以下である。
【0021】
上記反応装置は、必須ではないが、タンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインを有することが好ましい。上記反応装置が循環ラインを有していることにより、得られる重合体の無機粒子の分散性や経時的な分散性がさらに向上する傾向にある。
従って、本発明の水溶性重合体の連続的製造方法の必須工程である、「撹拌可能なタンクを必須として含む反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給して重合を行なう工程」は、「撹拌可能なタンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインを有する反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給して重合を行なう工程」であることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法において、反応装置が撹拌可能なタンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインを有する反応装置である場合には、必須ではないが、反応液を循環させることが好ましく、タンクに戻る液量を排出ラインから製造装置外部に抜き出される液量で割った循環比(タンクに戻る液量/外部に抜き出される液量)は、3以上であることが好ましい。循環比が3以上であると、濃度勾配が小さく、狭いMw/Mnの水溶性重合体を、高い生産性を保った状態で得ることができる。循環比としてより好ましくは5以上であり、更に好ましくは9以上であり、特に好ましくは10以上である。
【0023】
本発明の製造方法において、タンク(該当する場合には上記循環ライン)内へ供給する単量体の供給速度は、上記滞留時間を満足する速度に設定される。タンク(該当する場合には上記循環ライン)の容量が大きくなれば、供給速度を増加できることとなる。
反応装置がタンクに加え、タンクの外部を循環する配管を有する場合(すなわちタンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインを有する場合)、上記タンクは配管に比べて充分な容積を有することが好ましい。この場合、反応液がタンクに戻ってきて循環することになることから、当該タンクを循環液タンクという意味でリサイクルタンクともいう。反応装置がタンクに加え、タンクの外部を循環する配管を有する場合、タンクの容積としては、循環ライン全体の10体積%以上であることが好ましい。タンクの容積が10体積%未満である場合、配管が非常に長くなる等の問題があり、それに伴う圧力損失等の観点からも、重合反応が進行する反応器として充分には機能せず、水溶性重合体の生産性を充分には高くできないおそれがある。より好ましくは、30体積%以上である。
反応装置がタンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインを有する場合においても、上記タンクは、循環液を保持・循環するだけでなく、上記の通り重合反応が進行する反応器として機能することが好ましい。
【0024】
上記タンクの外部を循環する配管は、タンクの出口(循環液の出口)と、タンクの入口(循環液の入口)とに接続され、タンクとともに循環ライン(ループ構造)を形成する。本発明の好適な実施形態の一例である図1及び2において説明すると、図1及び2のタンク底(タンク出口)をa、タンク上部に戻ってきているところ(タンク入口)をbとすると、a〜bで示される区間を「タンクの外部を循環する配管」という。
【0025】
上記配管においては、循環液を保持・循環するだけでなく、通常、重合反応も進行することになる。
【0026】
上記タンクは好ましくはコンデンサおよび/または冷却機を備える。タンクがコンデンサおよび/または冷却機を備えることにより、過度の熱履歴がかかることを抑制し、得られる重合体の経時的な分散力が向上する傾向にあるから好ましい。
【0027】
反応装置が循環ラインを有する場合、上記タンクの外部を循環する配管は、少なくとも1箇所に冷却器を備えることが好ましい。冷却器を備えることにより、重合熱、希釈熱、中和熱、分解熱、溶解熱等からもたらされる反応熱を効率よく除去することができ、反応装置内の温度分布を均一なものとすることができるとともに、温度を容易に制御することができるため、Mw/Mnがより狭い水溶性重合体を得ることができる傾向にある。上記冷却器としては、冷却器内を通過する循環液の温度を下げて反応熱の少なくとも数%を除くことができるものであれば好ましく、例えば、発生する反応熱の30%以上を除去できるものであることが好ましい。反応熱の除去が充分であれば、得られる水溶性重合体のMw/Mnを充分に狭くできる傾向にある。より好ましくは、50%以上を除去できることであり、更に好ましくは、70%以上を除去できることである。上記冷却器としては、また、循環液の体積V[m]と冷却器の伝熱面積S[m]との間の関係が、S/V≧5を満たすものであれば好ましい。冷却器がこのような要件をみたすことにより、循環液を充分に冷却することができ、本発明の作用効果を発揮することができる。より好ましくは、6.5以上であり、更に好ましくは、8以上である。上記冷却器としては、反応熱の除去効率か、S/Vの少なくとも一方が上記要件を満たすものであることが好ましく、両者をともに満足するものであることが更に好ましい。
【0028】
本発明においては、例えば、(メタ)アクリル酸やその塩、エステル等、アクリルアミドやそのN−置換体等の重合が速く進む反応に好適に適用できるものであり、この場合、冷却により充分にマイルドな重合反応とすることができる。特にアクリル酸及び/又はその塩の重合反応においては、後述するように、用いる開始剤等の反応条件によっては、30秒で90%以上の原料が水溶性重合体に転換するほど反応が速く、それに伴う反応熱も大きいことから、タンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインに該反応熱を除去する冷却器を備えることが好ましい。
【0029】
タンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインに冷却機を設ける場合、冷却器の構造としては、形状、形式、設置個数、設置位置等は特に限定されない。冷却器の形状、形式としては、例えば、多管円筒型、二重管式、プレート式、エアクーラー、イリゲーションクーラー、コイル式、渦巻き式、ジャケット等、一般に広く用いられる冷却器・熱交換器のいずれを採用してもよく、単独又は組み合わせて使用することが可能である。また、ジャケット等の場合、配管やタンクに接している長さ等は、特に制限されない。冷却器の設置個数としては、一つであってもよく、複数であってもよい。複数設置する場合は、一ヶ所に複数設置されていてもよく、分散して配置されていてもよいが、冷却効率がよい分散配置が好ましい。例えば、発生する反応熱量が多い場合は、分散して複数設置することが好ましい。
【0030】
上記の通り、タンクは撹拌手段を設けることが好ましいが、反応装置がタンク及びその外部を循環する配管により構成される循環ラインを有する場合、反応液の原料の濃度分布を均一にするために、反応液を混合する装置が少なくとも1つタンクの外部を循環する配管に設置されていることが好ましい。混合装置としては、モーションレスミキサーであることが好ましいが、撹拌装置を設置する形態(撹拌型反応装置をタンクの外部を循環する配管の途中に設置する形態)やタンクの外部を循環する配管の外部から、超音波等の外力により混合する形態等であっても良い。これらの中でも、撹拌能力に優れたモーションレスミキサーをタンクの外部を循環する配管に設けることで、反応液、原料、及び、後述する開始剤等がより効率的に混合し、濃度勾配が減少し、反応液がより均一にできる利点がある。このように、タンクの外部を循環する配管が、モーションレスミキサーを有する形態は、本発明の好ましい形態の一つである。なお、上記撹拌装置は、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0031】
上記製造方法において、原料の供給口の設置位置は、本発明の作用効果が発揮される限り特に限定されず、製造装置(タンク、該当する場合には循環ライン)のどの位置であってもよいが、反応装置が循環ラインを有する場合には、タンクの外部を循環する配管に原料供給口が備えられたものであることが好ましい。上記原料供給口の設置個数は、特に限定されず、少なくとも1個以上であればよい。このように、上記タンクの外部を循環する配管が、少なくとも1箇所に原料供給口が備えられたものである形態は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0032】
本発明の製造方法において、反応装置が循環ラインを有する場合には、原料供給口での単量体添加量に対するタンク入口での単量体転化量を示す転化率が、90%以上であることが好ましい。90%未満であると、残存単量体が多く、また生産性が低下するおそれがある。より好ましくは、92%以上であり、更に好ましくは、93%以上である。上記転化率は、例えば、単量体としてアクリル酸ナトリウムを用い、ポリアクリル酸ナトリウム(PSA)を得る場合において開始剤量、移動剤量、促進剤量、温度、滞留時間を種々に変化させ得られた反応速度解析によるシミュレーションの結果から、アレニウスの式に基づいて算出することができる。なお、上記転化率としては、攪拌槽式連続反応装置(continuous stirred tank reactor;CSTR)において、(メタ)アクリル酸(塩)/(メタ)アクリル酸エステル等のコポリマーの場合は、PSA等のホモポリマーの場合と異なる可能性があるが、転化率の好ましい範囲としては、上述のとおりである。上記単量体の詳細については後述する。
【0033】
本発明の製造方法においては、重合反応を加圧条件下でも行うことができる。重合反応を加圧下で行うことにより、高温で反応を行うことができ、反応を促進させることで残存単量体が少なく、また生産性の向上も期待できる。重合反応は、例えば、反応液の流量や温度等を制御することにより加圧下で行うことができる。上記圧力としては、特に限定されないが、0.1MPa〜3.0MPaが好ましい。より好ましくは、0.12MPa〜1.0MPaである。
【0034】
本発明の製造方法における重合温度(反応温度)としては、反応釜(タンク)の温度としては上記の通りであるが、反応装置が循環ラインを有する場合には、タンクの外部を循環する配管の入り口(タンクを出た直後)と、タンクの外部を循環する配管の出口(タンクに戻る直前)との温度差は、25℃以内であることが好ましい。
【0035】
上記重合温度は、重合中、経時的に温度変動(昇温又は降温)してもよく、また、重合開始時等において、上記好適な重合温度範囲を一時的に外れることがあってもよい。しかし、上記温度変動はなるべく少なく抑えることが好ましく、例えば25℃以下に抑えることが好ましい。上記温度変動が、25℃以内である場合は、狭いMw/Mnの重合体を得ることができるうえに、重合開始剤の分解速度を一定にでき、均一な重合進行を行うことができる。より好ましくは、20℃以内であり、更に好ましくは、18℃以内である。
上記重合反応は、空気下、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、連鎖移動剤等に由来する反応性ガス雰囲気下等、いずれでも実施が可能である。
反応物の温度を温度センサーで検出し、この検出値に応じて熱交換器の温度を調節して、反応容器(製造装置又は反応装置)内の温度が、目標とする重合温度(例えばT℃とする)にほぼ一致するように、フィードバック制御しながら重合を行うことが好ましい。制御範囲の好ましい目安はT℃±10℃である。より好ましくはT℃±7℃、更に好ましくはT℃±5℃である。
上記フィードバック制御による温度管理は、重合体溶液の製造装置が1m以上の場合、反応器表面からの放熱が減少するため、反応装置が循環ラインを有する場合には、特に循環ラインによる除熱の効果が現れ易く、好適に用いることができる。より好ましくは3m以上、更に好ましくは5m以上である。この場合、循環液を保温する必要がある場合は、モーションレスミキサーのジャケット内を流れる熱媒(又は、冷媒)の温度コントロールや単量体供給量のコントロール、配管及びタンクの保温(保温材を巻き付ける等)や必要に応じて配管及びタンクへの熱供給等を挙げることができる。
【0036】
本発明の製造方法においては、反応装置は、必要に応じてその他の成分を供給する供給口を有するものであってもよい。その他の成分の供給口としては、その他の成分を添加することにより発揮される効果が得られる限り特に限定されず、上記反応装置に1個以上設置されるものであればよく、例えば、所望する重合体の反応効率を向上させるために、上記反応装置は、タンクに(該当する場合には循環ラインのいずれかに)、反応促進剤、アルカリ剤等を投入できる投入口を有してもよい。
上記その他の成分としては、アルカリ剤、重合促進剤、連鎖移動剤、重合体が水溶性を保つ範囲で、架橋剤を添加することも可能である。
上記アルカリ剤を供給することにより、循環液のpHを適宜変更することができ、単量体の中和率を変更することができる。また、重合促進剤、連鎖移動剤を用いることにより、重合反応を制御し、得られる水溶性重合体のMw/Mnを狭くすることができる。
【0037】
上記その他の成分として、アルカリ剤、重合促進剤、連鎖移動剤を用いる場合、その他の成分の供給口としては、反応装置が循環ラインを有する場合には、循環ラインに位置することが好ましい。すなわち、タンク(該当する場合には循環ライン)は、(1)アルカリ剤供給口が備えられたものである形態、および/または(2)重合促進剤供給口が備えられたものである形態、および/または(3)連鎖移動剤供給口が備えられたものである形態、であることが好ましい。これらの供給口は、反応装置が循環ラインを有する場合には、反応液の流路方向において、排出ラインからタンクまでの間に位置することが好ましい。循環ライン内の反応液の流路方向において、タンク、排出ライン、冷却器がこの順に配置される場合には、冷却器からタンクまでの間に位置するか、排出ラインから冷却器までの間に位置することが好ましい。
本発明の製造方法は、反応液の一部を反応装置から取り出す工程を含むものである。従って、本発明の製造方法に用いられる製造装置は、排出装置(排出ラインともいう)を含むことが好ましい。すなわち、本発明の水溶性重合体の連続的製造方法の必須工程である、「反応液の一部を反応装置から取り出す工程」は、「反応液の一部を排出ラインから取り出す工程」であることが好ましい。
【0038】
本発明の製造方法において、反応液の一部を排出ラインから取り出す場合には、反応装置は少なくとも1個の排出ラインを有することとなる。排出ラインの設置位置としては、本発明の作用効果を発揮する限り特に限定されず、反応装置(タンク、該当する場合には循環ライン)のいずれの位置であってもよいが、反応装置が循環ラインを有する場合には、ラインの簡略化によるメンテナンスの容易さ、コストから勘案して、タンクの外部を循環する配管に設置されていることが好ましい。さらに好ましくは、循環ラインが冷却器を有する場合に、配管経路の単純化、設備の簡略化の観点から、排出ラインは、循環液の流路方向において、タンクから冷却器までの間に位置することであり、タンクから原料供給口までの間に位置することである。循環液の流路方向において、タンク、冷却器、原料供給口がこの順に配置される場合には、タンクから冷却器までの間に位置することが、更に好ましい。また、タンク、原料供給口、冷却器がこの順に配置される場合には、タンクから原料供給口までの間に位置することが、更に好ましい。このような位置に設置することにより、循環液の単量体濃度が循環ライン内で最も低く、重合が最も進んだ溶液を取り出すことができる。
上記排出ラインは、モーションレスミキサーおよび/または撹拌型反応器(以下モーションレンスミキサー等ともいう)を有することが好ましい。このように排出ラインに少なくとも1以上のモーションレスミキサー等を設けることで、残存単量体を除くための開始剤の添加や、該当する場合には重合体の中和等の工程が容易に行える。
【0039】
上記排出ラインは、少なくとも1箇所に冷却器が備えられたものであることが好ましい。冷却器を排出ラインに設けることで、得られる生成物を充分に除熱することができ、重合体中の単量体除去や中和等の後工程がある場合、装置を簡略化できる利点がある。また、後述するように、排出ラインに、原料供給口が備えらた形態であっても、反応熱を充分に除去できるので、排出ラインから取り出される循環液と原料との混合液を適当な温度とすることができる。このような排出ラインに設けることができる冷却器としては、上述のものが好適である。
【0040】
上記排出ラインは、原料供給口が備えられ、循環液が原料と混合されて取り出される機構を有することが好ましい。このように排出ラインに少なくとも1以上の原料供給口を設けることで、例えば重合開始剤等を該供給口から追加で供給すること等により、得られる水溶性重合体に含まれる残留単量体を極めて低レベルとすることができるという利点がある。排出ラインに冷却器又はモーションレスミキサー等を設置する場合は、冷却器又はモーションレスミキサー等の上流側の少なくとも1箇所に、原料供給口を設置する形態が好ましい。冷却器とモーションレスミキサー等を共に設置する場合は、モーションレスミキサー等の上流に冷却器を設け、冷却器とモーションレスミキサー等の間に原料供給口を設ける形態が好ましく、図2は、このような形態を示している。
【0041】
上記排出ラインは更に、その他の成分を供給する供給口を有するものであってもよい。上記その他の成分として、アルカリ剤、重合促進剤、連鎖移動剤を用いる場合、上記排出ラインは、(1)アルカリ剤供給口が備えられたものである形態、および/または(2)重合促進剤供給口が備えられたものである形態、および/または(3)連鎖移動剤供給口が備えられたものである形態が好適である。
【0042】
上記排出ラインが冷却器及び/又はモーションレスミキサー等を有する場合は、その他の成分の供給口は、循環液の流路方向において冷却器からモーションレスミキサー等までの間であることが好ましい。その他の成分の供給口が複数ある場合は、その設置位置は適宜設定することができる。
【0043】
このように、排出ラインには、アルカリ剤、原料(開始剤等)、連鎖移動剤、重合開始剤及び酸化剤からなる群より選ばれる一種以上の剤が供給されてもよい。その他の成分が排出ラインに供給されてもよい。このような供給口は、排出ラインに1箇所又は2箇所以上設けてもよい。
【0044】
図1及び2は、このような各種剤等を供給する剤供給口が、循環液の流路方向において冷却器からモーションレスミキサーまでの間に1つ設けられた形態を示している。
【0045】
本発明の製造方法は、本発明の製造方法により得られた水溶性重合体組成物の有効成分を固形分で除した数が、0.9以上であることを特徴としている。このような重合体は良好な無機粒子の分散性や経時的な分散性を発現する。好ましくは0.905以上1以下であり、0.91以上1以下がさらに好ましく、0,915以上1以下が特に好ましい。本発明の製造方法によれば、上記水溶性重合体(組成物)を製造することができる。
【0046】
[本発明の水溶性重合体、水溶性重合体組成物]
本発明の水溶性重合体(組成物)は、好ましくは上記製造方法によって製造される。本発明の水溶性重合体は、水溶性重合体(組成物)の有効成分を固形分で除した数が、0.9以上であることを特徴としている。
本発明において、有効成分、固形分とは、以下に示す方法で算出される。
【0047】
<有効成分の測定方法>
測定機器:平沼産業株式会社製自動滴定装置「COM‐1500」
指示電極:平沼産業株式会社製「GE‐101B」
比較電極:平沼産業株式会社製「RE‐201」
解析ソフト:同社製「滴定みえみえ ver.1.13」
測定手順:
(i)約5gのポリマー水溶液を秤量する(下記式のAg)。
(ii)上記に蒸留水を約100g加えて攪拌する。
(iii)攪拌しながら、1mol/l水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製(容量分析用))を約5ml加える。
(iv)攪拌しながら、上記自動滴定装置にて1mol/l塩酸(和光純薬工業株式会社製(容量分析用))を加える(力価をfとする)。系のpHが1.5となるまで滴定を継続する。
(v)得られた変曲点(中和点)データを上記解析ソフトにて導出する(変曲点検出モードにて)。
(vi)変曲点を示すときの滴定量(第一中和点までの滴下量pml、第二中和点までの敵定量qml)を記録し、下記算出式(1)を用い、有効成分を算出する。
(vii)上記(i)〜(vi)を同一サンプルにつき2回実施し、平均値を有効成分とする。なお、上記測定は25℃で実施する。
【0048】
【数1】

【0049】

但し、上記数式において、
X(%):有効成分
M(g/mol):中和後の平均分子量(但し1価の酸に換算したもの)
f:1mol/l塩酸の力価
q(ml):第2中和点までの1mol/l塩酸滴下量
p(ml):第1中和点までの1mol/l
A(g):採取ポリマーの質量。
【0050】
<重合体(組成物)の固形分測定方法>
110℃の熱風乾燥機で2時間後の不揮発分を固形分とした。同一の重合体に付き、三つ測定し、得られた不揮発分の平均値を固形分とした。
【0051】
本発明の製造方法によれば、狭いMw/Mnの水溶性重合体が得られるが、洗剤用ビルダーや分散剤、スケール防止剤等として供される場合、重量平均分子量(Mw)は、1500〜30000であることが好適であり、2000〜20000が好ましく、2000〜12000がより好ましく、2000〜10000が更に好ましい。この分子量範囲においてMw/Mnが狭くなることにより、同程度の重合度の重合体をより多く得られることとなり、例えば分散剤では分散性の向上等、剤の性能に好ましい影響を与えることとなる。Mw/Mnは、7以下が好ましく、5以下がより好ましく、3.5以下が更に好ましく、3.2以下が特に好ましく、2.7以下が最も好ましい。
【0052】
上記重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びMw/Mnは、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)測定により得ることができる。測定条件は下記のとおりである。
<GPC測定条件>
GPCのカラムとしては東ソー株式会社製G−3000PWXL(商品名)を用いた。
移動相としては、リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(いずれも試薬特級)に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45μmのメンブランフィルターで濾過した水溶液(固形分0.1質量%)を用いる。
検出器としては、株式会社日立製作所製のL−7110(商品名)を用い、検出波長は、214nmを用いた。測定はUV測定モードで行う。
ポンプは、日立製作所社製L−6000を用い、移動相の流量は0.5ml/分とし、温度は35℃とした。検量線は、創和科学社製のポリアクリル酸ナトリウム標準サンプルを用いて作成し、システムインスツルメント株式会社製解析ソフト SIC480IIデータステーションにより分子量を算出する。
【0053】
本発明において、水溶性重合体とは、カルボン酸基および/またはその塩を有する単量体(不飽和カルボン酸系単量体)に由来する構造を含む重合体を意味する。塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらの塩は単独で用いても良いし、2種以上の混合物として用いても良い。塩とする場合における好ましい形態は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩とアンモニウム塩であり、特に好ましくはナトリウム塩とアンモニウム塩である。ここで、上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構造とは、不飽和カルボン酸系単量体がラジカル重合することにより形成される構造単位である。例えば、アクリル酸由来の構造単位とは、−CHCH(COOH)−で表される構造単位である。
【0054】
本発明の水溶性重合体の製造に好適に用いることができる原料としては、上記水溶性重合体を製造可能であるものであれば特に制限されない。例えば、不飽和カルボン酸系単量体が好ましいが、不飽和カルボン酸エステル系単量体等、加水分解等により不飽和カルボン酸系単量体由来の構造を形成できる単量体であっても良い。また、本発明の製造方法は、不飽和カルボン酸系単量体を必須として含む原料を使用する方法であることが好ましい。本発明の水溶性重合体が不飽和カルボン酸系単量体由来の構造を有することにより、得られる重合体の無機粒子の分散性や経時的な分散性が向上する傾向にある。
【0055】
上記不飽和カルボン酸系単量体(以下、単量体(I)ともいう。)としては、重合性不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを有する単量体であればよく、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0056】
【化1】

【0057】

式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、メチル基、又は−(CH)z1COOMを表し、z1は0〜3の数を表す。−(CH)z1COOMは、−COOM又は他の−(CH)z1COOMと無水物を形成していてもよい。M及びMは、同一若しくは異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基(有機アンモニウム基)を表す。
【0058】
上記一般式(1)のM及びMにおける金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適である。また、有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基が好適である。更に、有機アミン基はアンモニウム基であってもよい。
【0059】
上記単量体(I)としては、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が好適であり、不飽和モノカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを1つずつ有する単量体であればよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましい。
上記不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、又は、それらの無水物が好ましい。
記単量体(I)としてはまた、これらの他にも、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミン酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸(塩)、α−(ヒドロシキポリアルキレンオキシメチル)アクリル酸(塩)等を用いることもできる。
上記単量体(I)としては、上記例示の1種又は2種以上が好適に用いることができるが、中でも、重合性の高さや汎用性の面から、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)、無水マレイン酸、イタコン酸(塩)、α−ヒドロキシアクリル酸(塩)が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸(塩)である。更に好ましくは、(メタ)アクリル酸(塩)である。なお、(メタ)アクリル酸(塩)とは、(メタ)アクリル酸、及び、これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等の部分又は完全中和した塩をいう。
上記水溶性重合体を製造できる単量体成分において、上記単量体(I)以外のその他の単量体(上記不飽和カルボン酸系単量体(単量体(I))と共重合可能な単量体。以下、単量体(II)ともいう。)を好適に用いることができる。
上記単量体(II)としては、上記単量体(I)と共重合可能な単量体であればよく、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート等のスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体、及び、これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等の部分又は完全中和した塩;3−メチル−2−ブテン−1−オール(単に、プレノールともいう)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(単に、イソプレノールともいう)、(メタ)アリルアルコール等の水酸基を含有する不飽和炭化水素及びイソプレノールやアリルアルコールにアルキレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコール系単量体等を挙げることができる。
【0060】
上記単量体(II)としては、ラジカル重合性単量体も好適に使用することができる。ラジカル重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体であれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸アリル等のモノ(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類;等の(メタ)アクリレート類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート。
【0061】
スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン等の窒素含有官能基を有する単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミド系単量体等;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体等が好ましい単量体として挙げられる。
上記単量体(II)としては、これらのうち1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0062】
上記単量体(I)の配合量は、単量体全量に対して、50〜100mol%、好ましくは70〜100mol%、より好ましくは90〜100mol%の範囲である。単量体(I)の配合量が50mol%以上において、多くの場合、水溶性を広く発現させることができ、好ましい。一方、上限については、100mol%であってもよい。
【0063】
なお、単量体(I)を、後述する溶媒、好ましくは水に溶解して単量体(I)の溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加してもよい。単量体(I)溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度は、30〜75質量%、好ましくは35〜70質量%、より好ましくは40〜65質量%である。単量体(I)溶液の濃度がこの範囲の場合において、良好な濃度の製品を得ることができ、輸送及び保管の点で好ましい。
【0064】
上記単量体(II)の配合量は、単量体全量に対して、0〜50mol%であることが好ましい。より好ましくは、0〜30mol%であり、更に好ましくは、0〜10mol%である。該(II)の配合量は50mol%以下において、水溶性を保ちつつ、単量体(II)単体の、又は、単量体(I)と協調した物性を、重合体として発現することができる。一方、上記単量体(II)の下限値は、0mol%である。すなわち、上記単量体(I)成分による単独重合体(ホモポリマー)ないし共重合体(コポリマー)のいずれでもよい。
【0065】
単量体(II)を後述する溶媒、好ましくは水に溶解して単量体(II)の溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加してもよい。単量体(II)溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度としては、10〜100質量%、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは30〜90質量%である。単量体(II)溶液の濃度が10質量%以上の場合において、良好な濃度の製品を得ることができ、輸送及び保管の点で好ましい。一方、上限については特に制限されるべきものではなく、100質量%(すなわち、全量)単量体(II)(すなわち、無溶媒)であってもよい。
【0066】
本発明の水溶性重合体(組成物)は、溶媒を用いて製造される。上記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グリセリン等の多価アルコール及びその誘導体;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤等の1種類又は2種類以上を適宜選択して用いることができる。
【0067】
上記溶媒として好ましくは、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール類等の水性の溶媒である。より好ましくは、水である。水以外の溶媒を用いると、沸点の調整又は溶解性の調整等をおこなうことができる。水と水以外の溶媒との混合割合は、重合体の溶解性、原料との反応性等を考慮して適宜設定すればよく、通常10質量%以下であることが好ましい。
【0068】
上記溶媒の使用量は、上記の通り重合濃度を1〜30質量%に設定することが好ましい関係上、反応液全量100質量%に対して60〜99質量%、好ましくは70〜95質量%、より好ましくは75〜90質量%の範囲である。該溶媒の使用量が60質量%未満の場合には、分子量が高くなってしまい、一方、該溶媒の使用量が99質量%を超える場合には、製造された水溶性重合体の濃度が低くなり、場合によっては溶媒除去が必要となるため、好ましくない。溶媒の一部は、単独で重合中に反応系内に、例えば、その他の成分の供給口から適宜添加してもよい。また、単量体成分や開始剤やその他の添加剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合中に反応系内に適当に添加してもよい。
【0069】
本発明の製造方法に用いることのできる重合開始剤としては、レドックス開始剤、アゾ系開始剤、有機過酸化物、光開始剤等が好適である。具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、1種類のみであっても2種類以上含んでいてもよい。中でも、レドックス開始剤、アゾ系開始剤、有機過酸化物が好ましい。具体的には、過硫酸塩、過酸化水素、有機過酸化物、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩が好ましく、過硫酸塩、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩がより好ましく、過硫酸塩、過酸化水素が更に好ましい。
【0070】
上記重合開始剤と併用して、複数の酸化数を有する金属を構成成分とする金属単体、塩及び/又は錯体を用いても良い(重金属含有化合物とも言う)。このように、上記製造方法は、供給口の少なくとも1箇所から複数の酸化数を有する金属を構成成分とする金属単体、塩及び/又は錯体を添加してなる水溶性重合体の連続的製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。複数の酸化数を有する金属とは、例えば、鉄の2価と3価、銅の1価と2価、コバルトの2価と3価、クロムの2価、3価及び6価等、イオンとなった際に複数の酸化数を有するものを指す。複数の酸化数について、複数存在することにより反応を促進する用をなせば金属の種類は制限されないが、反応系を複雑にしないことを考慮すると、2種類の酸化数を有する金属構成成分とする金属単体、塩及び/又は錯体がより好ましい。金属錯体の配位子としては、例えば、水(アコ錯体)、アンモニア(アンモン錯体)、エチレンジアミン、シアン(シアノ錯体)、ヒドロキシル基(ヒドロキシ錯体)、ハロゲン(ハロゲノ錯体)、環状エーテル、ピリジン等の環状アミン、フラーレン、ポルフィリン、シクロペンタジエン(メタロセン)等が好適である。
【0071】
上記複数の酸化数を有する金属を構成成分とする金属単体、塩及び/又は錯体としては、多価金属化合物又は単体が好ましい。具体的には、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、硫酸バナジル、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH4)2SO4・VSO4・6H2O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4)V(SO4)2・12H2O]、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅アンモニウム、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム(モール塩)、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性多価金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の多価金属酸化物;硫化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化銅等の多価金属硫化物;銅粉末、鉄粉末等の1種又は2種以上であることが好ましい。なお、これらは水和物の形態であってもよい。より好ましくは、入手の容易さと経済性を考慮すると、硫酸塩、ハロゲン化物、水溶性の錯体であり、更に好ましくは、硫酸塩、水溶性の錯体である。
上記複数の酸化数を有する金属を構成成分とする金属単体、塩及び/又は錯体は、上述した重合開始剤供給口から添加されることが好適であり、該重合開始剤供給口の配置、設置個数等については、上述のとおりである。
【0072】
上記他の開始剤としては、連鎖移動剤を用いてもよく、連鎖移動剤を用いることにより、重合体の分子量を調整することができる。連鎖移動剤としては、特に限定されず、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素(塩)、ピロ亜硫酸(塩)、亜リン酸(塩)、次亜リン酸(塩)、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオプロピオン酸、チオプロピオン酸オクチル、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、エチレングリコールジチオグリコレート、エチレングリコールジチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオプロピオネート等のメルカプト基含有化合物、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のメルカプタン系化合物、イソプロパノール、グリセリン等の2級アルコール等を用いることができる。
【0073】
上記単量体を水溶液中で重合する際に重合反応系に用いられる重合開始剤としては、過硫酸塩及び亜硫酸塩系、過硫酸塩及び過酸化水素系、過硫酸塩及び次亜リン酸(塩)系、亜硫酸塩及び酸素系、多価金属イオンとこれらの開始剤の1又は2以上(例えば、鉄及び過酸化水素系、過硫酸塩系、鉄及び過硫酸塩及び亜硫酸塩系)、過酸化水素及びエリアスコルビン酸、チオ尿酸、L−アスコルビン酸とその塩等の還元性有機化合物からなる系等のように組み合わせて用いることもできる。中でも、過硫酸塩及び亜硫酸塩系、過硫酸塩及び過酸化水素系、過硫酸塩及び次亜リン酸(塩)系、多価金属イオンと過硫酸塩及び亜硫酸塩系が好ましい。より好ましくは、過硫酸塩及び次亜リン酸(塩)系、多価金属イオンと過硫酸塩及び亜硫酸塩系である。上記多価金属イオンとしては、具体的には、上記重金属含有化合物で挙げられる化合物等が挙げられる。中でも硫酸鉄アンモニウム(モール塩)が好ましい。
【0074】
上記の通り、本発明の製造方法において、重合開始剤としては、過硫酸塩及び亜硫酸塩系、過硫酸塩及び過酸化水素系、過硫酸塩及び次亜リン酸(塩)系、およびこれらと多価金属イオン併用系がこのましいが、過硫酸塩としては、具体的には、過硫酸ナトリウム(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等を挙げることができる。
【0075】
上記過硫酸塩の添加量は、単量体1molに対して0.5〜5.0gであることが好ましく、1.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量が0.5g以上において、分子量が充分に低い水溶性重合体を得ることができ、また、添加量が5.0g以下において、得られる水溶性重合体の純度低下を招くことなく充分に有効な過硫酸塩の効果を得ることができる。
【0076】
上記重合開始剤の1種である上記過硫酸塩は、上記水系溶媒に溶解して過硫酸塩の溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加されてもよい。該過硫酸塩溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度としては、1〜35質量%、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%である。ここで、過硫酸塩溶液の濃度が1質量%未満の場合には、製品の濃度が低下してしまい、輸送及び保管が繁雑となる。一方、過硫酸塩溶液の濃度が35質量%を超える場合には、過硫酸塩が析出するおそれがある。
【0077】
過硫酸塩及び重亜硫酸塩をそれぞれ1種類以上組み合わせて用いることにより、分散能やキレート能に優れた低分子量の水溶性重合体を得ることができ、好ましい。過硫酸塩に加えて、重亜硫酸塩を開始剤系に加えることで、得られる水溶性重合体が必要以上に高分子量化することが抑制され、重合体の分子量を調整することができる。
【0078】
また複数の酸化数を有する金属を構成成分とする金属単体、塩及び/又は錯体を組み合わせた場合、反応速度を大幅に向上できるという利点がある。例えば、モール塩を併用した場合、得られる水溶性重合体の分子量を容易に規定することができ、重亜硫酸塩において脱酸素させることができ、同時に所望の分子量の水溶性重合体を得ることができる。また、水溶性重合体の重合速度を速くすることができ、例えば、水溶性重合体としてポリアクリル酸及び/又はその塩を製造する場合、30秒で90%以上のアクリル酸及び/又はその塩をポリアクリル酸及び/又はその塩に転換させることができる。
【0079】
重亜硫酸塩としては、具体的には、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム及び重亜硫酸アンモニウム等を挙げることができる。更に重亜硫酸塩の代わりに、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩等を用いてもよい。
【0080】
過硫酸塩及び重亜硫酸塩の添加比率は、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩は0.5〜5質量部、好ましくは1〜4質量部、より好ましくは1.25〜3質量部の範囲内である。過硫酸塩1質量部に対して重亜硫酸塩を0.5質量部以上用いることにより、重亜硫酸塩による充分な効果が得られるとともに、水溶性重合体の重量平均分子量も充分に低く抑えることができる。一方、過硫酸塩1質量部に対して重亜硫酸塩が5質量部以下において、充分な重亜硫酸塩添加効果を得ることができ、重亜硫酸塩の過剰供給を抑えることができる。このため、過剰な重亜硫酸塩が重合反応系で分解されることによる亜硫酸ガスの発生を抑制することができる。また、得られる水溶性重合体の性能低下や低温保持時の不純物析出を有効に防止することができ、低温保持時に不純物析出を招くこともなく、好ましい。
複数の酸化数を有する金属を構成成分とする金属単体、塩及び/又は錯体を併用する場合の添加比率としては、過硫酸塩100質量%に対し、20質量%以下であることが好ましい。20質量%を超える場合、反応促進等の効果は保たれるが、経済性に劣るおそれがある。また、添加する金属塩や錯体によっては、pH等の条件によって着色し、水溶性重合体の用途によっては好ましくない結果をもたらすおそれがある。より好ましくは、0.2質量%以下であり、更に好ましくは、0.02質量%以下である。
【0081】
重合開始剤である過硫酸塩及び重亜硫酸塩の添加量は、単量体1モルに対して、重合開始剤の過硫酸塩及び重亜硫酸塩の合計量が好ましくは0.5〜20g、より好ましくは1〜15g、更に好ましくは1〜12g、特に好ましくは1〜8gである。本発明では、このように低い添加量の範囲で過硫酸塩及び重亜硫酸塩を加えてもよく、不純物の発生を低減できる。更に、得られる水溶性重合体の性能低下や低温保持時の不純物析出を防止することができる。上記重合開始剤の過硫酸塩及び重亜硫酸塩の添加量が2〜20gの範囲内において、得られる水溶性重合体の純度低下等の悪影響を及ぼすことなく、良好な分子量の重合体を効率よく得ることができる。
複数の酸化数を有する金属を構成成分とする金属単体、塩及び/又は錯体を併用する場合の添加量としては、また、単量体100質量%に対し、1.5質量%以下であることが好ましい。1.5質量%を超える場合、反応促進等の効果は保たれるが、経済性に劣るおそれがある。また、添加する金属塩や錯体によっては、pH等の条件によって着色し、水溶性重合体の用途によっては好ましくない結果をもたらすおそれがある。より好ましくは、0.015質量%以下であり、更に好ましくは、0.0015質量%以下である。
【0082】
重亜硫酸塩は、上記水系溶媒に溶解して重亜硫酸塩の溶液(好ましくは水溶液)の形態で添加されてもよい。該重亜硫酸塩溶液(好ましくは水溶液)として用いる場合の濃度としては、10〜40質量%、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは30〜40質量%である。重亜硫酸塩溶液の濃度を上記範囲内とすることにより、重亜硫酸塩の析出のおそれなく、充分な濃度の製品を得ることができ、輸送及び保管上好ましい。
【0083】
また、本発明においては、上記の通り、重合開始剤として過硫酸塩および次亜リン酸(塩)を併用して用いることも好ましい。また場合により、連鎖移動剤や多価金属イオンを用いてもよく(ここで、多価金属イオンは重合開始剤の分解促進剤として働く)、これらは両方同時に用いても良い。
【0084】
上記次亜リン酸(塩)としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸アンモニウムが挙げられ、これらは水和物であっても良い。
【0085】
上記次亜リン酸(塩)の添加量は、単量体1molに対して0.25〜10gであることが好ましく、0.5〜6.0gであることがより好ましい。次亜リン酸(塩)の添加量が0.25g以上において、重合平均分子量が充分に低い水溶性重合体を得ることができる。また、添加量が10g以下において、残存する次亜リン酸(塩)やその残渣による悪影響も少なく、充分に有効な次亜リン酸(塩)の効果を得ることができる。
【0086】
上記次亜リン酸(塩)及び過硫酸塩の添加比率は、質量比で次亜リン酸(塩)の質量が1としたときに、過硫酸塩の質量が0.05〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。過硫酸塩の質量比が0.05以上において、得られる水溶性重合体の重量平均分子量を充分に低く抑えることができ、また20以下で過硫酸塩添加効果を充分に得ることができる。
【0087】
また、本発明においては、上記の通り、重合開始剤として、1種類又は2種類以上の過硫酸塩及び過酸化水素を併用して用いることも好ましい。また場合により、連鎖移動剤や多価金属イオンを用いてもよく(ここで、多価金属イオンは重合開始剤の分解促進剤として働く)、これらは両方同時に用いても良い。
【0088】
上記過酸化水素の添加量は、単量体1molに対して2.0〜10.0gであることが好ましく、3.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g以上において、重合平均分子量が充分に低い水溶性重合体を得ることができる。また、添加量が10.0g以下において、残存する過酸化水素による悪影響もなく、充分に有効な過酸化水素の効果を得ることができる。
【0089】
上記過酸化水素及び過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.5〜3.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1以上において、得られる水溶性重合体の重量平均分子量を充分に低く抑えることができ、また5.0以下で過硫酸塩添加効果を充分に得ることができる。
【0090】
本発明においては、上記の組み合わせが特に好適に用いられるが、上記の通り、作用効果に悪影響を及ぼさない限り、更に他の開始剤(連鎖移動剤を含む)を、必要に応じて適宜使用してもよい。
【0091】
上記他の開始剤についても、上記水系溶媒に溶解して水溶液の形態で添加してもよい。該水溶液として用いる場合の濃度としては、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、通常は、上記した過硫酸塩又は重亜硫酸塩の溶液の濃度と同程度に基づき適宜決定される。
【0092】
本発明において得られる水溶性重合体の重金属イオン濃度は、0.05〜10ppmであることが望ましいことから、上記重金属含有化合物を必要に応じて適量添加するのが望ましい。更に、本発明においては、SUS(ステンレス)製の容器や撹拌器等を用いた場合に、本発明の製造条件下において、上記に規定する適量の重金属イオン、特に鉄イオンが、容器等の材質であるSUSから反応溶液中に極微量溶出(供給)するため、費用対効果の面から有利である。本発明の製造方法においては、こうしたSUS製の反応容器や撹拌翼等の反応装置を利用する場合には、上記重金属含有化合物を添加する場合と同様の作用効果を奏しうる。なお、既存の鋼鉄(スチール)製や銅合金製の反応容器であっても問題はないが、重金属イオンが多く溶出されるおそれがある。そうした場合には、重金属により着色するため、こうした重金属イオンを除去する操作が必要となり、不経済である。また、グラスライニング加工等された反応容器であっても問題はなく、必要に応じて、重金属含有化合物を使用すればよい。
【0093】
本発明の製造方法では、上記単量体の重合反応は、用いる開始剤によって、酸性、中性、アルカリ性のいずれの条件下でも行うことができる。
【0094】
上記重合中の反応溶液のpHを調整したり、単量体を中和したりするためのアルカリ剤(pH調整剤又は中和剤とも言う。)としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物とアンモニアが好ましく、水酸化ナトリウムとアンモニアがより好ましい。
【0095】
重合に際しては、上記単量体、開始剤、その他の添加剤は、通常、これらを予め適当な溶媒(好ましくは反応溶媒と同種の溶媒)に溶解し、所定の供給口から反応装置に添加することが好ましい。
【0096】
本発明に係る水溶性重合体の製造方法では、排出ラインにアルカリ剤供給口を設置することにより、得られる水溶性重合体の中和度(最終中和度)を必要に応じて、適当なアルカリ成分を適宜添加することによって所定の範囲に設定することができる。
【0097】
上記最終中和度は、その使用用途によって異なるため特に制限されるべきものではいが、上記の通り、酸基含有単量体の重合中の中和度を50モル%以上にすることが製造上好ましいことから、50モル%以上に設定することが好ましく、例えば、好ましくは50〜100mol%、より好ましくは70〜99mol%である。また、最終中和度が99mol%を超える場合には重合体水溶液が着色するおそれがある為、着色が好ましくない用途においては、最終中和度を99モル%以下に設定することが好ましい。
【0098】
[水溶性重合体組成物]
本発明の水溶性重合体組成物は、上記の通り、(i)攪拌可能なタンクを必須として含む反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給し水溶性重合体を連続的に製造する工程と、(ii)反応液の一部を反応装置から取り出す工程と、を有する連続的製造方法により製造されることを特徴としている。通常は、得られた水溶性重合体組成物の有効成分の質量を固形分の質量で除した数が0.9以上である。得られた水溶性重合体組成物の有効成分の質量を固形分の質量で除した数の上限は、1であることが好ましい。
本発明の水溶性重合体組成物は、上記の方法により製造され、特に制限されるものではないが、生産効率性の観点から、不純物除去などの精製工程を経ずに得られるものがさらに好ましい。さらに、重合工程の後に、得られた重合組成物を、取り扱いの便等のため、少量の水にて希釈(得られた混合物に対して1〜400質量%程度)したり、濃縮・乾燥したりしたものも本願でいう水溶性重合体組成物に含まれる。
本発明の水溶性重合体組成物は、本発明の水溶性重合体を必須として含有する。このほか、未反応の単量体、未反応の重合開始剤、重合開始剤分解物等や原料に由来する不純物等が含まれ得る。
【0099】
本発明の水溶性重合体組成物中には、本発明の水溶性重合体の他、水などの溶剤を含んでいても良い(本発明の本発明の水溶性重合体重合体(水)溶液という)。その場合、溶剤の含有量は、水溶性重合体組成物100質量%に対して、例えば0〜99質量%に設定することができる。溶剤の含有量は、水溶性重合体組成物100質量%に対して、60〜99質量%が好ましく、75〜95質量%がより好ましく、80〜92質量%が好ましく、82〜90質量%が最も好ましい。
【0100】
本発明の水溶性重合体組成物の有効成分や固形分の好ましい範囲は、例えば重合中の範囲であるが、有効成分は1〜40%であることが好ましく、固形分は1〜40質量%であることが好ましい。
【0101】
[本発明の水溶性重合体、水溶性重合体組成物の用途]
本発明は更に、本発明の水溶性重合体および/または本発明の製造方法により製造された水溶性重合体を含有してなる洗剤、水処理剤又は分散剤でもある。
また、上記洗浄用組成物は、洗浄剤用添加剤、洗浄剤、洗剤用ビルダー(洗剤ビルダー)、洗剤を意味する。
【0102】
上記洗剤用ビルダーは、汚れの分散能力に優れ、洗浄中の衣類等に汚れが再付着するのを防止するための作用を発揮するものである。
上記洗剤ビルダーにおける水溶性重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、通常の洗剤ビルダーに用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0103】
上記洗剤は、粉末洗剤であってもよいし、液体洗剤であってもよい。上記洗剤には、水溶性重合体以外に、通常、洗剤に用いられる添加剤を用いることができる。上記添加剤としては、例えば、界面活性剤、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等のよごれ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記粉末洗剤に用いる場合、水溶性重合体は、洗剤100質量%に対して0.1〜20質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.2〜10質量%であり、更に好ましくは0.3〜5質量%であり、特に好ましくは0.4〜4質量%である。0.1質量%未満であると、洗剤の洗浄力が不充分になるおそれがあり、20質量%を超えると、不経済になるおそれがある。
【0104】
上記洗剤における水溶性重合体の配合形態は、液状、固形状等のいずれであってもよく、洗剤の販売時の形態(例えば、液状物又は固形物)に応じて決定することができる。重合後の水溶液の形態で配合してもよいし、水溶液の水分をある程度減少させて濃縮した状態で配合してもよいし、乾燥固化した状態で配合してもよい。
なお、上記洗剤は、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤、繊維助剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含む。
【0105】
上記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、これらの界面活性剤は1種又は2種以上を使用することができる。2種以上使用する場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを合わせた使用量は、全界面活性剤100質量%に対して50質量%以上が好ましい。より好ましくは、60質量%以上であり、更に好ましくは、70質量%以上であり、特に好ましくは、80質量%以上である。
【0106】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。
上記アニオン系界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0107】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。上記ノニオン系界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記カチオン系界面活性剤としては、第4アンモニウム塩等が好適である。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。
上記カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0108】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、液体洗剤100質量%に対して10〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上、50質量%以下であり、更に好ましくは、20質量%以上、45質量%以下であり、特に好ましくは、25質量%以上、40質量%以下である。界面活性剤の配合割合が10質量%未満であると、充分な洗浄力を発揮できなくなるおそれがあり、60質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0109】
上記液体洗剤用ビルダーへの配合割合は、通常、液体洗剤100質量%に対して0.1〜20質量%が好ましい。より好ましくは、0.2質量%以上、15質量%以下であり、より好ましくは、0.3質量%以上、10質量%以下であり、更に好ましくは、0.4質量%以上、8質量%以下であり、特に好ましくは、0.5質量%以上、5質量%以下である。液体洗剤用ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがあり、20質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0110】
上記液体洗剤に含まれる水分量は、通常、液体洗剤100質量%に対して0.1〜75質量%が好ましい。より好ましくは、0.2質量%以上、70質量%以下であり、更に好ましくは、0.5質量%以上、65質量%以下であり、特に好ましくは、0.7質量%以上、60質量%以下であり、より特に好ましくは、1質量%以上、55質量%以下であり、最も好ましくは、1.5質量%以上、50質量%以下である。
【0111】
本発明の洗剤に配合することができる酵素としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いアルカリアミラーゼ、プロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗剤100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
【0112】
上記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸等が好適である。水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
上記洗剤は、分散能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【0113】
上記水処理剤は、例えば、冷却水系、ボイラー水系等の水系に添加されることになる。この場合、水溶性重合体をそのまま添加してもよく、水溶性重合体以外のその他の成分を含むものを添加してもよい。
上記水処理剤における水溶性重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、通常の水処理剤に用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0114】
<顔料分散剤>
本発明の水溶性重合体や水溶性重合体組成物は、顔料分散剤に用いることができる。
本発明の水溶性重合体は単独で顔料分散剤として使用することができるが、本発明の顔料分散剤には、必要に応じて、水などの溶媒や、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0115】
上記顔料分散剤中における、本発明の水溶性重合体の含有量は、顔料分散剤全体に対して、好ましくは0.3〜10重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
本発明によれば、低粘度で粘性の経時安定性を有し、かつ高濃度の製紙用顔料スラリーを提供することが可能となる。ひいては、該スラリーを用いて塗工した際に塗工欠陥を抑制し、良好な原紙被覆性、印刷光沢、耐ブリスター性、ムラのない印刷面感を与え、かつ顔料が本来持つ白色度、不透明度、インキ受理性の有意点を備えた印刷用塗工紙を提供することが可能となる。
【0116】
本発明に用いられる顔料としては、特に制限はないが、例えばカオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、水酸化アルミニウム、プラスティックピグメント等が挙げられる。
【0117】
本発明において、顔料を調整する方法としては、従来公知の方法が適宜参照され、あるいは組み合わされることにより行なうことができるが、例えば、一次分散を行い、それを湿式粉砕処理する方法が挙げられる。この方法は、低粘度であり、かつ分散安定性に優れた高濃度の顔料スラリーを得ることができる点、好適である。無論、本発明に置ける顔料の調整方法は、この湿式粉砕処理法に限定されるものではなく、湿式粉砕処理を施さない調整方法をとることもなんら制限されるものではない。上記顔料の調整方法において、一次分散の方法は特に制限されるものではないが、ミキサーで混合することが好ましく、例えば、高速ディスパー、ホモミキサー、ボールミル、コーレスミキサー、撹拌式ディスパー等の剪断力の高いものを用いることが好適である。
【0118】
湿式粉砕処理の際、本発明の水溶性重合体を粉砕機に仕込んで粉砕しても良い。このような場合、該重合体は粉砕助剤としての役割も発揮する。
【0119】
上記スラリーに含まれる顔料の平均粒径としては、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下である。なお、ここで言う平均粒径は、後述の実施例で用いられたような、レーザー粒度分布計もしくはX線検出器を有する粒度分布計にて計測された粒径である。また、所望の粒径が好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上であることが好ましい。
【0120】
上記顔料分散剤を顔料の分散剤として用いる場合、該顔料分散剤の使用量は本発明の水溶性重合体を顔料100質量部に対して、0.1〜5.0質量部とすることが好ましい。該顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0121】
本発明における顔料スラリーとしてはまた、固形分濃度が60質量%以上であるものであることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。
【0122】
上記顔料スラリーの粘度は、特に制限はされないが、スラリー濃度により大きく異なるため、75質量%に調整した時に、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは600mPa・s以下である。1000mPa・sより高い場合、上記スラリーを主体として調整された塗工液が、高速で高剪断力を受けながら塗工されたときに、ストリーク、ブリーディングや石筍等の塗工欠陥を発生し易く、優れた塗工紙面感を得られない虞がある。
なお、上記顔料スラリー粘度は、B型粘度計を使用し、測定条件としては、ローターNo.4、60rpm、5分間で測定した値をいう。
本発明の水溶性重合体は、このように、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤又は分散剤の用途において好適なものであるが、その他の用途においても、水溶性重合体が用いられる用途において、該重合体が発揮する各種の特性を向上して好適に用いることができるものである。
【実施例】
【0123】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、本発明の重合体の重量平均分子量、数平均分子量、未反応の単量体の定量、重合体組成物、重合体水溶液の固形分量は、下記の方法に従って測定した。
【0124】
<重量平均分子量および数平均分子量の測定条件(GPC)>
上記に記載の方法で測定した。
【0125】
<重合体組成物、重合体水溶液の固形分測定方法>
上記に記載の方法で測定した。
【0126】
<重合体組成物中の単量体等の測定>
該単量体の測定は、下記表1の条件にて液体クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX RSpak DE−413
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min。
【0127】
<有効成分測定>
上記に記載の方法で測定した。
【0128】
<重質炭酸カルシウム粉砕・分散試験>
丸尾カルシウム株式会社製「重質炭酸カルシウム」200gを粉砕機(ビーズミル:IKA社製の攪拌機RW28ベーシックに、SUS316製、軸長さ450mm×Φ8mmのものの先端に、翼長48mm、翼直径5mmのピンを5段、それぞれ隣接するピンとなす角度が90°となるよう交互に配置した攪拌棒(ピン間隔12mm)を備えたもの)に取り、低速(約300rpm)で攪拌しながら、評価する重合体の水溶液(固形分換算で10質量%)8.00gと、スラリー固形分の計算値が77%となるよう水を投入した。さらに撹拌を続けながら、粒径2mmのアルミナビーズ500gをゆっくり加えた後、計時を開始し、約1400rpmの回転速度を維持しながら分散させた。
粉砕開始から40分で前述の10質量%重合体水溶液を4.00g、同じく70分、90分でそれぞれ2.00gを添加し、その後粉砕機中のスラリー粒径をレーザー回折式粒度分布計(株式会社堀場製作所製LA‐910)にて測定しながら、2μm以下分量が90%以上となるまで粉砕を継続した。
得られたスラリーを1mmの篩に取り、スラリーとビーズを篩い分けした後、スラリーを容器(後にブルックフィールド型粘度計にて測定ができる高さ・内径のもの、容量にして約50mL程度)に採取した。スラリーとビーズの分離直後を経時の基準(0時間後とする)とした。
【0129】
<経時粘度測定>
上記<重質炭酸カルシウム粉砕・分散試験>にて採取したサンプルを、ブルックフィールド型粘度計(株式会社トキメック製、品番BM)にて、スピンドルNo.3、60rpmの条件で5分間回転させ、1分後、3分後、5分後の値を読み取った。このうち、最も低い指示値を粘度として採用した(0時間後のスラリー粘度とする)。なお、上記サンプルを採取後の容器は測定直前まで25℃の水浴に付けて置いた。
【0130】
この測定は、スラリー採取直後、7日後の測定を必須とし、1時間後と1〜6日後のデータは粘度変化の確認のため任意に測定した。なお、サンプルは、上記測定の間を除き、25℃の恒温室に保管した。
【0131】
<実施例1>
2Lのガラス製セパラブルフラスコに反応液抜き出し用のポンプとリービッヒ冷却器を準備した。セパラブルフラスコに水720gを予め仕込んでおき、処方に従い加熱した。その条件下で反応液抜き出し用ポンプを起動させると同時に、フラスコ内の温度が設定の反応温度を維持するように、必要に応じて風冷することで、所定の反応温度を一定に保ちながら、原料供給ラインからそれぞれ37質量%アクリル酸ナトリウム(SA)水溶液、15質量%過硫酸ナトリウム(ペルオキソ二硫酸ナトリウム;NaPS)水溶液、また必要に応じ45質量%ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム;SHP)水溶液、41質量%メタクリル酸ナトリウム(S‐MAA)水溶液を規定量加えた。反応液量が一定に保たれるように反応液抜き出し用ポンプからの反応液抜き出し量を調節した。重合処方は表1に示すとおりであり、分子量の調整は上記のモノマー、開始剤、移動剤、反応温度、滞留時間を調整することにより行なった。
なお加えたモノマー、開始剤、連鎖移動剤および触媒水溶液の合計質量は滞留時間と反応時間により決まるが、反応時間を6時間とした。反応後原料供給を止め、フラスコ内に残った反応液(水溶性重合体組成物1)を冷却後取り出し、物性測定および粉砕評価用にサンプル調製を行った。
水溶性重合体組成物1中の重合体(実施重合体1)の分子量、水溶性重合体組成物1の有効成分、固形分を上記方法により測定した結果を表2に示す。
上記方法により、重質炭酸カルシウム粉砕・分散試験、経時粘度測定を行なった結果を表3に示す。
【0132】
<実施例2〜3>
実施例1において、表1に示すように重合処方を変更した他は、実施例1と同様にして、重合を行ない、水溶性重合体組成物2〜3を得た。得られた水溶性重合体組成物中の重合体(実施重合体)の分子量、水溶性重合体組成物の有効成分、固形分を上記方法により測定した結果を表2に示す。
上記方法により、重質炭酸カルシウム粉砕・分散試験、経時粘度測定を行なった結果を表3に示す。
【0133】
<比較例1>
2Lのガラス製セパラブルフラスコにリービッヒ冷却器を準備し、セパラブルフラスコに水720gを予め仕込んでおき、処方に従い加熱した。その条件下でフラスコ内の温度が設定の反応温度を維持するように冷却水温および冷却水量を調整しながら、原料供給ラインからそれぞれ80質量%アクリル酸(AA)水溶液、15質量%過硫酸ナトリウム(ペルオキソ二硫酸ナトリウム;NaPS)水溶液、45質量%ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム;SHP)水溶液を規定量加えた。それぞれ滴下時間は、AA水溶液は10−190分、NaPS水溶液は10−195分、SHP水溶液は0−185分であり、処方は表1に示すとおりである。
滴下終了後、さらに30分間温度を維持し、冷却の後48質量%水酸化ナトリウム水溶液にてpH7まで中和し(比較水溶性重合体組成物1)、物性測定および粉砕評価用にサンプル調製を行った。
比較水溶性重合体組成物1中の重合体(比較重合体1)の分子量、比較水溶性重合体組成物2の有効成分、固形分を上記方法により測定した結果を表2に示す。
上記方法により、重質炭酸カルシウム粉砕・分散試験、経時粘度測定を行なった結果を表3に示す。
【0134】
<比較例2>
モノマーとして37質量%SA水溶液の代わりに80質量%AA水溶液を、41質量%S−MAA水溶液の代わりに100質量%メタクリル酸(MAA)を使用したほかは手法は実施例1と同様に重合を実施した。反応後原料供給を止め、フラスコ内に残った反応液を冷却後48質量%水酸化ナトリウム水溶液にてpH7まで中和し(比較水溶性重合体組成物2)、物性測定および粉砕評価用にサンプル調製を行った。
比較水溶性重合体組成物2中の重合体(比較重合体2)の分子量、比較水溶性重合体組成物2の有効成分、固形分を上記方法により測定した結果を表2に示す。
上記方法により、重質炭酸カルシウム粉砕・分散試験、経時粘度測定を行なった結果を表3に示す。
【0135】
<実施例3〜4>
比較例2において、表1に示すように重合処方を変更した他は、比較例2と同様にして、重合を行ない、比較水溶性重合体組成物3〜4を得た。得られた比較水溶性重合体組成物中の重合体(比較重合体)の分子量、比較水溶性重合体組成物の有効成分、固形分を上記方法により測定した結果を表2に示す。
上記方法により、重質炭酸カルシウム粉砕・分散試験、経時粘度測定を行なった結果を表3に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
【0138】
【表2】

【0139】
【0140】
【表3】

【0141】

表3に示す結果から、本発明の重合体は従来の重合体と比較して、良好な初期の分散力と、経時的な分散力を有することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0142】
1 タンク
2 タンクの外部を循環する配管
3 排出ライン
4 冷却機
5 モーションレスミキサー
6 循環ポンプ
7 アルカリ剤供給口
8 原料供給口
9 連鎖移動剤供給口
10 重合開始剤供給口
11 剤供給口
12 排出ポンプ
a 循環ライン入口
b 循環ライン出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)攪拌可能なタンクを必須として含む反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給して重合を行なう工程と、
(ii)反応液の一部を反応装置から取り出す工程と、
を有する連続的製造方法により製造される水溶性重合体組成物であって、得られた水溶性重合体組成物の有効成分の質量を固形分の質量で除した数が0.9以上であることを特徴とする水溶性重合体組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の重合体組成物を含む、顔料分散剤。
【請求項3】
(i)攪拌可能なタンクを必須として含む反応装置に重合性不飽和結合を有する単量体を含む原料を連続的に供給しして重合を行なう工程と、
(ii)反応液の一部を反応装置から取り出す工程と、
を有する水溶性重合体の連続的製造方法であって、
上記取り出した反応液の有効成分の質量を固形分の質量で除した数が0.9以上であることを特徴とする水溶性重合体の製造方法。
【請求項4】
上記タンクにおける反応液の滞留時間が240分以下であることを特徴とする請求項3に記載の水溶性重合体の製造方法。
【請求項5】
酸型換算の重合濃度が1〜30質量%であることを特徴とする請求項3または4に記載の水溶性重合体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−208027(P2011−208027A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77476(P2010−77476)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】