説明

水溶性鎮痛剤およびその製造方法

水溶性鎮痛剤組成物は複数の細粒を含む。複数の細粒のそれぞれは、基材コアと、基材コア上に配置され、凝集物を形成するコーティングと、を含み、コーティングは鎮痛剤の塩を含み、塩ではない鎮痛剤の粒子を実質的に含まない。組成物は、(i)塩基を含む第1の溶液を用意する工程と、(ii)前記第1の溶液に鎮痛剤を添加して前記鎮痛剤の塩を含む第2の溶液を製造する工程と、(iii)前記第2の溶液を濾過して前記鎮痛剤の残留粒子を除去し、濾過された第2の溶液を製造する工程と、(iv)前記濾過された第2の溶液を基材上で噴霧乾燥して複数の細粒を含む凝集物を形成する工程と、を含む方法によって製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、2005年6月24日に出願された米国仮特許出願第60/693,591号に関して米国法典第35編119条(e)項の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は概して、アスピリンおよびその他の鎮痛剤組成物に関し、より詳細には、公知の水溶性アスピリンおよびその他の鎮痛剤組成物と比較して向上した安定性および生物活性を有する水溶性アスピリンおよびその他の鎮痛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)として知られている治療薬の中でも重要なアセチルサリチル酸(アスピリン)は、鎮痛、解熱、および抗炎症性を有することが知られている。これらの特性により、アスピリンは鎮痛(限定されないが例えば頭痛の治療)、解熱、関節炎の治療やその他の関連する症状に対する理想的な治療薬となっている。アスピリンの作用メカニズムは、アラキドン酸からのプロスタグランジンの合成を阻害することによるものである。アスピリンは、PGHシンターゼ(アラキドン酸からPGHへの転化を触媒する酵素)の活性部位においてセリン残基をアセチル化する。PGHシンターゼをアセチル化することによって酵素の作用を抑制することができ、プロスタグランジンの合成が阻害される。
【0004】
また、過去半世紀において、アスピリンは顕著な抗血栓効果を有することが示されている。アスピリンの抗血栓効果は血小板の働きを抑えることによるものである。アスピリンは、酵素の活性部位をアセチル化することによって血小板酵素やシクロオキシゲナーゼを阻害する。酵素を阻害することにより、トロンボキサンA2として知られる重要な血小板凝集物質の生成を妨げる。トロンボキサンA2は、血栓症の初期段階である血小板の活性化や凝集を引き起こす。今日では複数の抗血小板薬が入手できるが、アスピリンはこのカテゴリの中で最も一般的に使用されている薬であり、非常に費用効果の優れた抗血栓剤である。アスピリン(1日81mgまたは325mgを投与)は、不安定狭心症(急性冠不全症候群)、急性心筋梗塞、心筋梗塞の二次予防、脳卒中(頚動脈または第一次脳血管疾患)の二次予防、抹消動脈血栓症の予防、静脈血栓症(深在静脈血栓症、肺塞栓)の予防に効果を示す。最近では、様々な癌の治療にアスピリン(単独またはその他の薬剤との組み合わせ)を使用して調査が行われている。
【0005】
アスピリンの薬物動態特性(吸収、分布、代謝、排泄)は重要である。腸内投与後、アスピリンは適当な膜を通って血漿内に吸収される。
【0006】
吸収率は、溶解性、剤形、付形剤、および粒径に応じて異なる。通常、脂溶性であって非解離の薬剤は容易に膜を通過する。アスピリンのイオン化は胃の内部(低pH)において抑制されるため、多量のアスピリンが胃の膜を介してイオン化されていない(荷電されていない)状態で血流内に吸収される。アスピリンの主な代謝経路はエステラーゼを触媒とするサリチル酸への加水分解であり、サリチル酸はプロスタグランジンの合成を阻害することはできない。
【0007】
アスピリンは、心臓発作や脳卒中の場合には投与量を少なくしたり、関節リウマチの場合には投与量を多くするなど多様な病態生理学において有用であることが報告されているが、低い水溶性のために用途が制限されている。胃腸の粘膜に付着する未溶解粒子による副作用により、胃または腸の潰瘍が生じたり、出血が生じて失血による貧血に繋がることもある。
【0008】
具体的には、アスピリン(325mgまたは500mg)の一般的な投与量は、心臓発作および/または脳卒中を引き起こす可能性を低減させるためのアスピリン治療に適切なものである。しかし、そのような投与量では関節炎(痛み)の症状が緩和されるのみであり、炎症の根本的な治療はなされない。関節炎の原因である炎症を効果的に抑制するためには、120〜350μg/mlの血漿サリチル酸塩濃度を維持するために1日当たり4000〜5000mg以上のアスピリン投与量が通常は必要となる。
【0009】
このように投与量を増加させると、治療の成功率は70%を超える。しかし、1日あたりの投与量をより低いレベル(例えば2500mg)にすると成功率は大きく減少し、例えば10%未満となる。そのため、関節炎の治療にアスピリン療法を使用した場合の失敗の原因または成功裏の結果が得られなかった原因は、少なくとも一部では不適切な投与量を用いたことが原因であると思われる。
【0010】
アスピリンは多くの望ましくない副作用を有する。最も一般的にみられる副作用は吐き気、異常亢進(胸やけ)、および痛みである。鎮痛のために低用量を服用した場合には、アスピリンの副作用は成人使用者の約2〜10%で生じる場合が普通である。しかし、副作用が生じる使用者の数はアスピリンの服用期間が増加するにつれて大きく増加する。消炎のために大量のアスピリンを服用した場合には、望ましくない副作用の発生率は約25%に上昇する。また、治療期間が延びると副作用の発生率は大きく増加する。
【0011】
アスピリンの胃腸に対する副作用は通常は局所に留まり、アスピリンを従来の形態である懸濁液として使用する場合には、未溶解のアスピリンの粒子が胃粘膜に付着し、刺激、炎症、および損傷を引き起こす傾向がある。有害な副作用の局所性は胃鏡検査や検死によって立証されている。例えば胃内部のアスピリンの未溶解粒子の周囲における糜爛は、十分に検証がなされ、写真撮影されている。アスピリンが胃腸粘膜に直接刺激を与えるため、その作用は累積し、持続する。
【0012】
しかし、アスピリンを溶液の形態で投与する場合には、局在化された副作用は生じない。アスピリンの服用者全員が可溶性の形態のアスピリンでその利点を享受することができるが、関節炎が高齢者にとって恐ろしい疾病であるため、高齢の患者は溶解性のアスピリン製品を特に必要とする。高齢者群はアスピリンの最大の使用者であり、同時にその急性の副作用の害を最も受けやすい。
【0013】
加齢に伴い胃の運動が後退し空腹時間が増加するため、高齢者の体内では不溶性のアスピリン粒子が胃粘膜に付着して残留し、望ましくない副作用が強まってしまう。また、米国では1500万人以上の人々が錠剤やその他の固形薬に対する嚥下障害があると推定されている。また、高齢者は、食道の筋肉が加齢と共に弱まり、さらに嚥下困難となるため影響を受けやすい。
【0014】
アスピリンの水溶性の低さおよび加水分解されにくさのために、アスピリンを水溶液として投与することが難しいため、アスピリンは胃の不快感を最小限に抑えるために多量の水を必要とする錠剤またはカプセルの形態で通常は投薬される。アスピリンは、アルカリ溶液で容易に溶解するが、サリチル酸および酢酸へと急速に加水分解されてしまう。通常は、アスピリンはpHが低い場合に安定し、最も安定するのはpHが2.4のときである。
【0015】
一般的によく知られているように、米国や欧州において昔から市販されている可溶性のアスピリン製品がある。
【0016】
残念ながら、それらのアスピリンは、全世界的、特に米国での承認を阻む1以上の欠点がある。例えば、米国で広く市販されている唯一の可溶性アスピリン製品は、バイエルヘルスケア社(Bayer Healthcare LLC)製のAlka Seltzer(登録商標)(アスピリン325mg当たりの567mgのナトリウムを含む)(1000mgのアスピリン当たり1750mgのナトリウム)である。Alka Seltzer(登録商標)によって炎症を抑えるためには、1日当たり8000mgを超えるナトリウムの摂取が必要となる。このように多量のナトリウムが必要なために、通常のアスピリン療法に対して承認されることが完全に不可能となっている。一般の人々に対するナトリウム量が非常に高いだけでなく、ナトリウムの摂取が制限されている高齢の関節炎患者の多くはその量に耐えられない。心臓発作および/または脳卒中を引き起こす可能性を低減させるために有用な低用量のアスピリンを服用する場合のナトリウムの摂取量でさえ、許容できない程の高さである。
【0017】
欧州では飲用の鎮痛剤が主流であるが、その大部分は細粒懸濁液であって、溶液ではない。Alka Seltzer(登録商標)のような製品の大部分はナトリウムをベースとしており、溶解には比較的長い時間を要し、口当たりが非常に良いわけでもない。カルシウムをベースとする製品もあるが、アスピリンの完全な溶解を妨げてしまう。また、フランスの可溶性鎮痛剤製品「アスペジック(Aspegic)」も知られている。しかし、この製品は非天然のdl−リジンを含んでおり、米国でFDAの承認を得ることは非常に難しいかもしれない。
【0018】
これまで承認可能な可溶性アスピリン製品を製造するために数多くの試みがなされてきたが、完全に要件を満たすものはない。
【0019】
例えばPhykittに付与された米国特許第5,665,388号および第5,723,453号は、実質的にナトリウムを含まない可溶性のアルカリ性アスピリン化合物を開示している。しかし、米国特許第5,665,388号および第5,723,453号に開示されている組成物には多くの欠点がある。欠点のひとつは、それらに開示されているように、重炭酸塩を使用すると、患者が摂取した場合に体内にガスが生じることである。別の欠点は、それらに開示されている組成物のpHが非常に大きいために(8.0を超える)、急激な加水分解が生じ、不安定であるために品質保持期限も短い。
【0020】
また、Galatに付与された米国特許第5,157,030号および第5,776,431号は、上記で参照した従来技術特許に開示されている欠点と同じ欠点を有するアスピリン化合物を開示している。より詳細には、これらの参照文献で開示されている組成物は、水と混合した場合にpHが6.0を超える。これにより、アスピリン組成物の非解離度が低いために組成物が比較的不安定となり、品質保持期限が短くなり、生体による吸収がさらに容易ではなくなる。また、これによりその組成物の水への溶解が相対的に遅くなり、Galat特許に従って製剤化された組成物が水に実質的に完全に溶解するために最大2〜3分を要することが判明している。また、Galat特許で開示された製剤の多くは、2種類の別々の組成物(混合物「A」および混合物「B」)として形成されるため、製造、包装、および使用の観点から不都合である。さらに、これらの参照文献内の製剤は、混合された後に直接水に添加される。混合された製品が安定しており、包装可能であることが示されていない。
【0021】
従って、現在のところ、ナトリウムを含まず、水に速やかに溶解し、作用が速く血流に迅速に吸収され、抗炎症治療に必要とされる比較的多量の投与において使用することができおよび/または胃腸の不快感および/または胃腸の損傷をもたらすことなく、さらに長期の期間にわたって使用することができる申し分のないアスピリンは存在しない。
【0022】
そのため、以前から知られている水溶性鎮痛剤に比べて安定性および生物活性が高く、上記の欠点を有しない水溶性鎮痛剤が望まれている。
【特許文献1】米国特許第5,665,388号
【特許文献2】米国特許第5,723,453号
【特許文献3】米国特許第5,157,030号
【特許文献4】米国特許第5,776,431号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明の目的は、公知の水溶性鎮痛剤組成物と比較して優れた安定性および生物活性を有する水溶性鎮痛剤組成物を提供することにある。
【0024】
本発明の別の目的は、上記特性を有し、ナトリウムを含まない水溶性鎮痛剤組成物を提供することにある。
【0025】
本発明の別の目的は、上記特性を有し、迅速に水に溶解する水溶性鎮痛剤組成物を提供することにある。
【0026】
本発明の別の目的は、上記特性を有し、即効性であり、血流に迅速に吸収される水溶性鎮痛剤組成物を提供することにある。
【0027】
本発明のさらなる目的は、上記特性を有し、抗炎症治療に必要とされる比較的多量の投与において使用することができ、および/または胃腸の不快感および/または胃腸の損傷を生じさせることなく長期にわたって使用することができる水溶性鎮痛剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の実施形態によれば、本発明の上記目的およびその他の目的は、複数の細粒を含む水溶性鎮痛剤組成物によって達成される。複数の細粒のそれぞれは、基材コアと、基材コア上に配置され、凝集物を形成するコーティングと、を含み、コーティングは鎮痛剤の塩を含み、塩ではない鎮痛剤の粒子を実質的に含まない。
【0029】
いくつかの実施形態では、基材コアは、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、基材コアはスクロースを含む。いくつかの実施形態では、細粒は約100μm〜約400μmの中央粒径を有する。いくつかの実施形態では、細粒は約200μmの中央粒径を有する。いくつかの実施形態では、鎮痛剤はアスピリン、5−アミノサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、鎮痛剤はアスピリンを含む。いくつかの実施形態では、鎮痛剤の塩は鎮痛剤のカリウム塩を含む。
【0030】
本発明の別の実施形態に係る水溶性鎮痛剤組成物の製造方法は、(i)塩基を含む第1の溶液を用意する工程と、(ii)前記第1の溶液に鎮痛剤を添加して前記鎮痛剤の塩を含む第2の溶液を製造する工程と、(iii)前記第2の溶液を濾過して前記鎮痛剤の残留粒子を除去し、濾過された第2の溶液を製造する工程と、(iv)前記濾過された第2の溶液を基材上で噴霧乾燥して複数の細粒を含む凝集物を形成する工程と、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、鎮痛剤はアスピリン、5−アミノサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、鎮痛剤はアスピリンを含む。いくつかの実施形態では、塩基はクエン酸三カリウム一水和物を含む。いくつかの実施形態では、第1の溶液は界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、基材は、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、基材はスクロースを含む。いくつかの実施形態では、濾過された第2の溶液を基材上で噴霧乾燥する工程は流動床噴霧乾燥法を使用する。いくつかの実施形態では、細粒は約100μm〜約400μmの中央粒径を有する。いくつかの実施形態では、細粒は約200μmの中央粒径を有する。
【0032】
本発明の別の実施形態に係る水溶性鎮痛剤組成物は、アスピリンと、クエン酸三カリウム一水和物と、を含み、アスピリンおよびクエン酸三カリウム一水和物の合計重量の約26重量%のアスピリンを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、水溶性鎮痛剤組成物は、アスピリンおよびクエン酸三カリウム一水和物の合計重量の約26重量%〜約40重量%のアスピリンを含む。いくつかの実施形態では、水に溶解した場合の組成物のpHは約6.0未満である。
【0034】
いくつかの実施形態では、水溶性鎮痛剤組成物は基材をさらに含む。いくつかの実施形態では、基材は、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、基材はスクロースを含む。いくつかの実施形態では、基材は、アスピリンおよびクエン酸三カリウム一水和物によってコーティングされたコアを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、水溶性鎮痛剤組成物は界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、水溶性鎮痛剤組成物は、アスコルビン酸、カフェインおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される補助活性成分をさらに含む。
【0036】
本発明の別の実施形態に係る水溶性鎮痛剤組成物は、アスピリンと、クエン酸三カリウム一水和物と、を含み、水に溶解した場合のpHが約6.0未満である。
【0037】
いくつかの実施形態では、水に溶解した場合の組成物のpHは約5.2〜約6.0である。いくつかの実施形態では、水に溶解した場合の組成物のpHは約5.6〜約6.0である。いくつかの実施形態では、水溶性鎮痛剤組成物はアスピリンとクエン酸三カリウム一水和物の合計重量の少なくとも約26重量%のアスピリンを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、水溶性鎮痛剤組成物は基材をさらに含む。いくつかの実施形態では、基材は、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、基材はスクロースを含む。いくつかの実施形態では、基材は、アスピリンおよびクエン酸三カリウム一水和物によってコーティングされたコアを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、水溶性鎮痛剤組成物は界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、水溶性鎮痛剤組成物は、アスコルビン酸、カフェインおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される補助活性成分をさらに含む。
【0040】
本発明の別の実施形態に係る水溶性鎮痛剤組成物の製造方法は、(i)前記アスピリンの量が前記アスピリンと前記クエン酸三カリウム一水和物の合計重量の少なくとも約26重量%となるように、アスピリンと、クエン酸三カリウム一水和物と、界面活性剤と、基材とを、用意する工程と、(ii)前記クエン酸三カリウム一水和物を含む第1の溶液を用意する工程と、(iii)前記第1の溶液に前記アスピリンを添加して第2の溶液を製造する工程と、(iv)前記第2の溶液に界面活性剤を添加する工程と、(v)前記第2の溶液を濾過して前記アスピリンの残留粒子を除去し、濾過された第2の溶液を製造する工程と、(vi)前記濾過された第2の溶液を前記基材上で噴霧乾燥して複数の細粒を含む凝集物を形成する工程と、を含む。アスピリンは、工程(i)で用意するアスピリンおよびクエン酸三カリウム一水和物の合計重量の少なくとも約26重量%の量で含まれる。水に溶解した場合の組成物のpHは約6.0未満である。
【0041】
いくつかの実施形態では、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、基材は、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、基材はスクロースを含む。いくつかの実施形態では、濾過された第2の溶液を基材上で噴霧乾燥する工程は流動床噴霧乾燥法を使用する。いくつかの実施形態では、細粒は約100μm〜約400μmの中央粒径を有する。いくつかの実施形態では、細粒は約200μmの中央粒径を有する。
【0042】
本発明の別の実施形態に係る高速溶解性組成物は、アスピリン塩を含み、650mgのアスピリンを含む組成物の部分が100mlの水に60秒未満で完全に溶解する。
【0043】
いくつかの実施形態では、650mgのアスピリンを含む組成物の部分が100mlの水に30秒未満で完全に溶解する。いくつかの実施形態では、650mgのアスピリンを含む組成物の部分が100mlの水に15秒未満で完全に溶解する。いくつかの実施形態では、水に溶解した場合の組成物のpHは約6.0未満である。いくつかの実施形態では、水に溶解した場合の組成物のpHは約5.2〜約6.0である。いくつかの実施形態では、水に溶解した場合の組成物のpHは約5.6〜約6.0である。
【0044】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明は、従来技術で達成できない需要を満たし、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤として機能する)、クエン酸塩、二糖類(スクロース等)、単糖類またはその他の非栄養香料添加剤(防腐剤、酸化防止剤、鎮痛剤としても機能する)を含むアスピリンの混合物によって、以前より知られている製剤に比べて安定性および低pH(特に5.2〜6.0のpH)を有する水溶液が得られることを見出したことに部分的に基づいている。これは、好ましくは、水に溶解した場合に、通常口当たりが悪く、6.0を超えるpHを有する溶液となる従来技術によって調製された製剤と比較している。クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、スクロースおよびアスピリンを含有する本発明の新規な製剤は、低pH時により解離状態にあるために、より容易に吸収されるように構成されている。
【0046】
サリチル酸から酢酸およびアセチルサリチル酸への分解は主に加水分解によって行われる。水の非存在下では、アセチルサリチル酸の分解は生じない。アスピリンの加水分解はクエン酸の存在下で低下することが報告されている。また、ラウリル硫酸ナトリウムは潤滑剤および安定化剤として機能することが報告されている。また、おそらく、アセチルサリチル酸の加水分解を防止することができる水分量の低い保護層を設けることによって、スクロースがアセチルサリチル酸の分解を妨げることが以前より報告されている。スクロース内の水酸基は水と水素結合することができるため、アセチルサリチル酸を加水分解することをある程度保護すると思われる。
【0047】
本発明に係る水溶性アスピリン組成物の水溶液の投与によって、アスピリンを錠剤またはカプセルで投与する場合に比べて血漿サリチル酸塩濃度のレベルを高くすることができる。図1は、患者の体内の血漿サリチル酸塩レベルの測定により収集したデータを、本発明の組成物の水溶性および広く知られている市販の製品(具体的にはバイエル(Bayer)(登録商標))のアスピリン錠剤に対してプロットしたグラフである。どちらの製品も同量の100mgのアスピリン量で投与した。錠剤またはカプセル状のアスピリンが血漿サリチル酸塩の治療学的レベルに達成するのに30〜40分であるのに対して、本発明によれば5〜10分以内に血漿サリチル酸塩の治療学的レベルに達成する。また、本発明の組成物の血漿サリチル酸塩レベルは市販の製品の約2倍である。そのため、本発明の組成物を低量で投与しても同程度のサリチル酸塩レベルを達成することができるため、アスピリンの潜在的な副作用を最小限に抑えることができる。本発明の向上した水溶性および口当たりによって、錠剤またはカプセル状の市販のアスピリンで観察される潜在的な胃に対する副作用を最小限に抑えると共に、関節炎の炎症を治療するために必要とされる多量のアスピリンの投与が可能となる。
【0048】
本発明の一態様によれば、成分を製剤化する方法が提供される。水に急速に溶解し、アスピリン粒子を全く含まない均質化された溶液を確実に得るために、最初にアスピリンをクエン酸カリウムおよびラウリル硫酸ナトリウム溶液に添加する。次いで、カリウム塩に転化されていない少量のアスピリン粒子を濾過によって除去し、その後、透明溶液を結晶スクロース等のコアに噴霧乾燥して、凝集物を形成する。流動床噴霧乾燥法(エアサスペンション技術による噴霧乾燥および凝集化を用いた方法)を使用することによって、スクロースコア上にアスピリンを被覆する。
【0049】
得られた自由流動固形製剤は、水に自由に溶解し、透明の口当たりの良いアスピリン溶液を提供する(実施例1を参照)。この造粒プロセスによって、図2に示すように、約200μmの中央粒径を有する約100〜400μmの様々な直径の細粒を含有する製品が得られる。これらの結論は、このプロセスから得られた凝集物を異なる倍率で示す図3〜6に示すように、走査電子顕微鏡検査法によって確認されている(図3の倍率は290μm、図4の倍率は140μm、図5の倍率は20μm、図6の倍率は7.4μm)。
【0050】
従って、得られた自由流動固形製剤は多量の細粒を含有し、各細粒は基材(スクロース等)、基材コア上に凝集されたコーティングを含有する。コーティングはアスピリンの塩を含有するが、アスピリンの非塩形態の粒子を実質的に全く含有しない。つまり、上記プロセス時に実質的に全ての粒子が濾過されているため、コーティングが非塩形態のアスピリンを含有しないというよりも、コーティングの中に含まれるアスピリンの非塩形態の粒子が実質的に全く存在しないと言える。もちろん、溶解したアスピリン粒子は濾過されていないため、コーティングは噴霧乾燥前に溶液に溶解した非塩形態のアスピリンを含むこともある。
【0051】
流動床噴霧乾燥工程を行うことなく直接調製されたスクロースまたはその他の非栄養甘味料を使用する製剤は、実質的に水溶性だが、完全に溶解するにはわずかに長い時間を必要とする場合がある自由流動生成物(後述する実施例2、3、4を参照)となる。
【0052】
特定の補助活性成分を添加するとアセチルサリチル酸の有益な効果が増強されることが報告されている。例えば、アセチルサリチル酸とアスコルビン酸(ビタミンC)との組み合わせは小腸から血流に迅速に送られる。アスピリンとビタミンCとの組み合わせは、風邪に関連する頭痛、痛み、および熱の治療にとても適していることが報告されている。また、アセチルサリチル酸とアスコルビン酸との組み合わせは、胃の病巣部をかなり減少させることが報告されている。ビタミンCを新規な製剤と組み合わせることにより、水に完全に溶解する生成物が得られる(後述する実施例5を参照)。
【0053】
また、製剤はカフェインの添加に関して非常に適合性が高く、カフェインが添加された製剤はアセチルサリチル酸の痛み軽減(鎮痛剤)作用を増強することが報告され、偏頭痛の治療のために他の物質との使用が提案されているカフェインを問題なく添加することができる。カフェインを新規な製剤と組み合わせることにより、水に完全に溶解する生成物が得られる(後述する実施例6を参照)。
【0054】
新規な製剤において、スクロースなどの二糖類に加えて、単糖類、多糖類、ジペブチドなどのその他の基材をアセチルサリチル酸と組み合わせて使用することができる。単糖類であるD−グルコース(デキストロース)は、アセチルサリチル酸と組み合わせて使用する場合に鎮痛剤によって引き起こされる胃腸損傷を軽減する有益な効果を併せ持つことが報告されている。クエン酸三カリウム一水和物、D−グルコース、およびラウリル硫酸を用いるアスピリン製剤は、完全な適合性を有し、均一な水溶液とすることができる(後述する実施例7を参照)。
【0055】
また、単糖類であるキシリトールは、アスピリンを含む多層錠剤に有用であり、新規な製剤において使用することができる(後述する実施例8を参照)。非水溶性多糖類であるセルロースは、アスピリンの徐放性錠剤に使用されており、新規な製剤においても使用することができ、ペレットとすることができる(後述する実施例9を参照)。
【0056】
以下、本発明に係る水溶性アスピリン組成物の製剤の例について述べる。なお、以下に説明する溶解度試験は、脱イオン水および急速磁気撹拌を使用して行った。試験は20℃±2℃の大気温度で行い、本発明の組成物は一度に水に添加した。本明細書で使用する「完全な可溶性」という用語は、本発明の組成物を水と混合して得られる溶液内において特定時間後に肉眼で粒子が観察されないことを意味する。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
1750.0gのクエン酸三カリウム一水和物をラウリル硫酸ナトリウム(1.5g)を含む10.0Lの水に溶解した溶液に、アスピリン(625.0g)を添加した。少量の未溶解アスピリンを濾過によって除去した。得られた透明溶液を、流動床スプレー処理器(入口温度:45〜47℃;出口温度:38〜39℃)を使用して2623.5gのスクロース上に添加した。得られた凝集体は約200μmの中央粒径(median particle size)を有する粒状生成物を含んでいた。塩化第二鉄の使用によっては、サリチル酸は検出できなかった(0.25%の加水分解のみを検出)。得られた自由流動生成物5.2g(650mgのアスピリンを含有)を100mlの水に撹拌・混合したものは口当たりが良く、15秒間で完全に溶解し、pHは5.87であった。
【0058】
[実施例2]
30.0gのアスピリン、70.0gのクエン酸三カリウム一水和物、100.0gのスクロース、および60mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうした。得られた自由流動生成物を、50℃で少なくとも3週間、75℃で少なくとも2週間保持し、紫外線(254nm)に少なくとも1週間暴露した。塩化第二鉄の使用によっては、サリチル酸は検出できなかった(0.25%の加水分解のみを検出)。撹拌・混合下、3.33gの混合物(500mgのアスピリンを含有)を150mlの精製水に添加したものは口当たりが良く、15秒間以内に実質的に溶解し、180秒間で完全に溶解した。pHは5.67であった。
【0059】
[実施例3]
30.0gのアスピリン、70.0gのクエン酸三カリウム一水和物、20.0gのアスパルテーム、および36mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうした。得られた自由流動生成物を、50℃で少なくとも3週間、75℃で少なくとも2週間加熱した。塩化第二鉄の使用によっては、サリチル酸は検出できなかった(0.25%の加水分解のみを検出)。撹拌・混合下、2.00gの混合物(500mgのアスピリンを含有)を150mlの精製水に添加したものは口当たりが良く、15秒間以内に実質的に溶解し、240秒間で完全に溶解した。pHは5.93であった。
【0060】
[実施例4]
30.0gのアスピリン、70.0gのクエン酸三カリウム一水和物、20.0gのスクラロース、および36mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリ(rocker assembly)を使用して均一になるまで振とうした。得られた自由流動生成物は、50℃で少なくとも3週間安定だった塩化第二鉄の使用によっては、サリチル酸は検出できなかった(0.25%の加水分解のみを検出)。撹拌・混合下、2.00gの混合物(500mgのアスピリンを含有)を150mlの精製水に添加したものは口当たりが良く、30秒間以内に実質的に溶解し、210秒間で完全に溶解した。pHは5.74であった。
【0061】
[実施例5]
実施例1で得た生成物4.75g(561mgのアスピリンを含有)を200mlのビタミンCと混合した。得られた自由流動生成物を撹拌・混合下で100mlの水に溶解した。該生成物は30秒間以内で完全に溶解し、pHは5.63であり、口当たりが良かった。
【0062】
[実施例6]
実施例1で得た生成物4.75g(561mgのアスピリンを含有)を50mgのカフェインと混合した。得られた自由流動生成物を撹拌・混合下で100mlの水に溶解した。該生成物は30秒間以内で完全に溶解し、pHは5.86であり、口当たりが良かった。
【0063】
[実施例7]
11.8gのアスピリン、33.1gのクエン酸三カリウム一水和物、70.0gのD−グルコース(デキストロース)、および30mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうし、白色の自由流動生成物を得た。塩化第二鉄を使用した場合にはサリチル酸は検出できなかった(0.25%の加水分解のみを検出)。3.16gの混合物を撹拌下で38mlの精製水に添加すると、30秒間以内で完全に溶解した。この溶液は1.93g(5.0%)のD−グルコースと325mgのアスピリンとを含有しており、pHは5.84であった。
【0064】
[実施例8]
4.8gのアスピリン、13.4gのクエン酸三カリウム一水和物、20.0gの結晶キシリトール、および12mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうし、白色の自由流動生成物を得た。撹拌・混合下、2.60gの混合物(325mgのアスピリンを含有)を100mlの精製水に添加すると、15秒間以内に実質的に溶解し、60秒間で完全に溶解した。pHは5.99であった。
【0065】
[実施例9]
4.8gのアスピリン、13.4gのクエン酸三カリウム一水和物、20.0gの微結晶セルロース、12mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうし、白色の自由流動生成物を得た。この生成物は非水溶性であり、ペレットかウェハに圧縮することができた。
【0066】
上述した実施例から明らかなように、本発明の組成物のpHは6.0未満であり、上述したように多くの優れた利点が得られる。組成物中のクエン酸三カリウム一水和物に対するアスピリンの量を変化させることによって、所望の範囲にあるpH(6.0)を維持することができる。具体的には、アスピリン含有量が、アスピリンおよびクエン酸三カリウム一水和物の合計重量の約26重量%(アスピリン:26重量%〜40重量%)よりも多い場合には、得られる溶液のpHは6.0未満である。例えば、上述した実施例1ではアスピリン含有量が約26.3%であり、pHは5.87である。また、実施例2ではアスピリン含有量が約30.0%であり、pHは5.67である。一方、アスピリン含有量が約26重量%未満(アスピリン:0重量%〜26重量%)である場合には、得られる溶液のpHは6.0を超える。例えば、Galatに付与された米国特許第5,776,431号の実施例5では、アスピリン含有量が約20.0%であり、pHは6.12である。アスピリン含有率と溶液のpHとの関係を図7に示す。
【0067】
製剤における活性治療剤としてアセチルサリチル酸(アスピリン)について具体的に述べた教示、発見、手順、および方法はその他の鎮痛薬にも当てはまり、本発明は水溶性アスピリン組成物に限定されるものではなく、水溶性鎮痛剤組成物を網羅するものである。
【0068】
例えば、本発明はサリチル酸の非水溶性誘導体を活性治療剤として使用する製剤を網羅する。例えば、5−アミノサリチル酸(メサラミン)は、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を治療するために使用される。メサラミンは非水溶性であるため、通常は徐放性カプセルまたは坐剤として使用される。通常、炎症性腸疾患の治療には一日の投与量が大量のメサラミン投与(4g/日)が必要である。メサラミンの溶解性−pHプロファイルは、pH<2.0およびpH>5.5で増加することが報告されている。本発明の教示に係るメサラミン製剤はpH6.86であり、速効性を有し、迅速に血流に入る均一な水溶液が得られる(後述する実施例10を参照)。製剤は口当たりが良く、スクロースなどの様々な基質を含むことができる。
【0069】
アセトアミノフェン(後述する実施例11を参照)、およびイブプロフェン(後述する実施例12を参照)、ナプロキセン(後述する実施例13を参照)を含むその他の非水溶性鎮痛薬を新規な製剤手順を使用して調製した。
【0070】
以下、アセチルサリチル酸(アスピリン)以外の鎮痛剤を活性治療剤として使用した、本発明に係る水溶性鎮痛剤組成物の製剤の例について述べる。
【0071】
[実施例10]
800mgのメサラミン、10.0gのクエン酸三カリウム一水和物、14.92gのスクロース、および8mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうし、わずかに灰色がかった白色の自由流動生成物を得た。撹拌下、6.39gの混合物(325mgのメサラミンを含有)を100mlの精製水に添加すると、15秒間以内に大部分が溶解し、25秒間以内に完全に溶解した。溶液のpHは6.86であり、口当たりが良かった。
【0072】
[実施例11]
1.20gのアセトアミノフェン、3.35gのクエン酸三カリウム一水和物、5.0gのスクロース、および3mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうし、白色の自由流動生成物を得た。撹拌下、2.7gの混合物(325mgのアセトアミノフェンを含有)を100mlの精製水に添加すると、15秒間以内に大部分が溶解し、45秒で完全に溶解した。溶液のpHは7.80であり、口当たりがよかった。
【0073】
[実施例12]
125gのイブプロフェン、2.50gのクエン酸三カリウム一水和物、3.73gのスクロース、および2mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうし、白色の自由流動生成物を得た。撹拌下、混合物(125mgのイブプロフェンを含有)を75mlの精製水に添加すると、15秒間以内に実質的に溶解し、240秒で完全に溶解した。溶液のpHは7.23あり、口当たりがよかった。
【0074】
[実施例13]
125gのナプロキセン、2.50gのクエン酸三カリウム一水和物、3.73gのスクロース、および2mgのラウリル硫酸ナトリウムの混合物を、ロッカーアセンブリを使用して均一になるまで振とうし、白色の自由流動生成物を得た。撹拌下、混合物(125mgのイブプロフェンを含有)を75mlの精製水に添加すると、15秒間以内に実質的に溶解し、60秒で完全に溶解した。溶液のpHは7.40となり、口当たりがよかった。
【0075】
本発明に係る水溶性鎮痛組成物は公知の鎮痛剤を用いるため、本発明に係る水溶性鎮痛組成物は、公知の鎮痛剤の公知の処方によって現在治療されている公知の病状、疾病、患者などの実質的に全てを予防・治療するために使用することが期待されている。しかし、上記の本発明に係る水溶性鎮痛組成物には多くの利点があることを鑑みると、本発明に係る水溶性鎮痛組成物がさらに広範囲な用途を有することが期待される。
【0076】
従って、本発明は、以前から知られている水溶性鎮痛組成物に比べて、より高い安定性および生物活性を有し、ナトリウムを含まず、水に速やかに溶解し、作用が速く血流に迅速に吸収され、抗炎症治療に必要とされる比較的大量の投与において使用することができ、および/または胃腸の不快感および/または胃腸の損傷をもたらすことなく、さらに長期の期間にわたって使用することができる水溶性鎮痛組成物を提供する。
【0077】
本発明は部分、特徴等の特定の形態を参照して説明してきたが、全ての可能な形態または特徴を述べたわけではなく、その他の多くの修正や変形が当業者には理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、患者から収集したデータに基づき、本発明に係る水溶性アスピリン組成物および広く知られている市販のアスピリン製剤の時間に対するサリチル酸塩量をグラフで示す。
【図2】図2は、本発明に係る水溶性アスピリン組成物の細粒の中央粒径の関数として製品の重量%をグラフで示す。
【図3】図3は、本発明に係る水溶性アスピリン組成物の倍率290μmにおける走査電子顕微鏡写真を示す。
【図4】図4は、本発明に係る水溶性アスピリン組成物の倍率140μmにおける走査電子顕微鏡写真を示す。
【図5】図5は、本発明に係る水溶性アスピリン組成物の倍率20μmにおける走査電子顕微鏡写真を示す。
【図6】図6は、本発明に係る水溶性アスピリン組成物の倍率7.4μmにおける走査電子顕微鏡写真を示す。
【図7】図7は、本発明に係る水溶性アスピリン組成物におけるpHとアスピリンとクエン酸三カリウム一水和物の合計重量に対するアスピリンの重量(%)の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細粒を含み、
前記複数の細粒のそれぞれが、基材コアと、前記基材コア上に配置され、凝集物を形成するコーティングと、を含み、
前記コーティングは鎮痛剤の塩を含み、塩ではない前記鎮痛剤の粒子を実質的に含まない、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記基材コアは、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項3】
請求項2において、
前記基材コアはスクロースを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項4】
請求項1において、
前記細粒が約100μm〜約400μmの中央粒径を有する、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項5】
請求項4において、
前記細粒が約200μmの中央粒径を有する、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項6】
請求項1において、
前記鎮痛剤が、アスピリン、5−アミノサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項7】
請求項6において、
前記鎮痛剤がアスピリンを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項8】
請求項1において、
前記鎮痛剤の塩が前記鎮痛剤のカリウム塩を含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項9】
水溶性鎮痛剤組成物の製造方法であって、
塩基を含む第1の溶液を用意する工程と、
前記第1の溶液に鎮痛剤を添加して前記鎮痛剤の塩を含む第2の溶液を製造する工程と、
前記第2の溶液を濾過して前記鎮痛剤の残留粒子を除去し、濾過された第2の溶液を製造する工程と、
前記濾過された第2の溶液を基材上で噴霧乾燥して複数の細粒を含む凝集物を形成する工程と、を含む方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記鎮痛剤が、アスピリン、5−アミノサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記鎮痛剤がアスピリンを含む方法。
【請求項12】
請求項9において、
前記塩基がクエン酸三カリウム一水和物を含む方法。
【請求項13】
請求項9において、
前記第1の溶液が界面活性剤をさらに含む方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムを含む方法。
【請求項15】
請求項9において、
前記基材が、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記基材がスクロースを含む方法。
【請求項17】
請求項9において、
前記濾過された第2の溶液を基材上で噴霧乾燥する工程が流動床噴霧乾燥法を使用する方法。
【請求項18】
請求項9において、
前記細粒が約100μm〜約400μmの中央粒径を有する方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記細粒が約200μmの中央粒径を有する方法。
【請求項20】
アスピリンと、
クエン酸三カリウム一水和物と、
を含み、
前記アスピリンおよび前記クエン酸三カリウム一水和物の合計重量の少なくとも約26重量%の前記アスピリンを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項21】
請求項20において、
前記アスピリンおよび前記クエン酸三カリウム一水和物の合計重量の約26重量%〜約40重量%の前記アスピリンを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項22】
請求項20において、
水に溶解した場合のpHが約6.0未満である、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項23】
請求項20において、
基材をさらに含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項24】
請求項23において、
前記基材が、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項25】
請求項24において、
前記基材がスクロースを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項26】
請求項23において、
前記基材が、前記アスピリンおよび前記クエン酸三カリウム一水和物によってコーティングされたコアを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項27】
請求項20において、
界面活性剤をさらに含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項28】
請求項27において、
前記界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項29】
請求項20において、
アスコルビン酸、カフェインおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される補助活性成分をさらに含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項30】
アスピリンと、
クエン酸三カリウム一水和物と、
を含み、
水に溶解した場合のpHが約6.0未満である、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項31】
請求項30において、
水に溶解した場合のpHが約5.2〜約6.0である、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項32】
請求項31において、
水に溶解した場合のpHが約5.6〜約6.0である、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項33】
請求項30において、
前記アスピリンおよび前記クエン酸三カリウム一水和物の合計重量の少なくとも約26重量%の前記アスピリンを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項34】
請求項30において、
基材をさらに含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項35】
請求項34において、
前記基材が、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項36】
請求項35において、
前記基材がスクロースを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項37】
請求項34において、
前記基材が、前記アスピリンおよび前記クエン酸三カリウム一水和物によってコーティングされたコアを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項38】
請求項30において、
界面活性剤をさらに含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項39】
請求項38において、
前記界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムを含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項40】
請求項30において、
アスコルビン酸、カフェインおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される補助活性成分をさらに含む、水溶性鎮痛剤組成物。
【請求項41】
前記アスピリンの量が前記アスピリンおよび前記クエン酸三カリウム一水和物の合計重量の少なくとも約26重量%となるように、アスピリンと、クエン酸三カリウム一水和物と、界面活性剤と、基材とを用意する工程と、
前記クエン酸三カリウム一水和物を含む第1の溶液を調製する工程と、
前記第1の溶液に前記アスピリンを添加して第2の溶液を製造する工程と、
前記第2の溶液に界面活性剤を添加する工程と、
前記第2の溶液を濾過して前記アスピリンの残留粒子を除去し、濾過された第2の溶液を製造する工程と、
前記濾過された第2の溶液を前記基材上で噴霧乾燥して複数の細粒を含む凝集物を形成する工程と、
を含む、
水に溶解した場合のpHが約6.0未満である水溶性鎮痛剤組成物の製造方法。
【請求項42】
請求項41において、
前記界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムを含む方法。
【請求項43】
請求項41において、
前記基材が、単糖類、二糖類、多糖類、ジペブチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法。
【請求項44】
請求項43において、
前記基材がスクロースを含む方法。
【請求項45】
請求項41において、
前記濾過された第2の溶液を基材上で噴霧乾燥する工程が流動床噴霧乾燥法を使用する方法。
【請求項46】
請求項41において、
前記細粒が約100μm〜約400μmの中央粒径を有する方法。
【請求項47】
請求項46において、
前記細粒が約200μmの中央粒径を有する方法。
【請求項48】
アスピリン塩を含み、
650mgのアスピリンを含む部分が100mlの水に60秒未満で完全に溶解する、高速溶解性組成物。
【請求項49】
請求項48において、
650mgのアスピリンを含む部分が100mlの水に30秒未満で完全に溶解する、高速溶解性組成物。
【請求項50】
請求項49において、
650mgのアスピリンを含む部分が100mlの水に15秒未満で完全に溶解する、高速溶解性組成物。
【請求項51】
請求項48において、
水に溶解した場合のpHが約6.0未満である、高速溶解性組成物。
【請求項52】
請求項51において、
水に溶解した場合のpHが約5.2〜約6.0である、高速溶解性組成物。
【請求項53】
請求項52において、
水に溶解した場合のpHが約5.6〜約6.0である、高速溶解性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−546782(P2008−546782A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518270(P2008−518270)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/023737
【国際公開番号】WO2007/001957
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507417846)ソリュープリン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SOLUPRIN PHARMACEUTICALS,INC.
【住所又は居所原語表記】100 Park Avenue, Suite 1600 New York, New York 10017 U.S.A.
【Fターム(参考)】