説明

水溶性高分子結晶化用ゲル

【課題】ゲルを用いた結晶化技術において、高分子結晶化剤(沈殿剤)を保持したままで確実にゲル化が可能な水溶性高分子ゲルを提供する。またそれを用いたマクロアレイの作成ならびに結晶化方法をも提供する。
【解決手段】次式I:
1−O−(CH2CH2O)n−R2 (I)(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して架橋性基を表し、nは9以上の整数を表す。)で示されるポリエチレングリコール骨格を有する架橋性モノマーの重合物に結晶化剤が保持された水溶性高分子結晶化用ゲル、該ゲルが固定されたマイクロアレイ、及び、前記ゲルに水溶性高分子を接触させ、水溶性高分子の結晶を析出させることを特徴とする水溶性高分子の結晶化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、核酸、その他の水溶性高分子を含有する試料から各水溶性高分子の結晶を析出させることができる水溶性高分子結晶化用ゲルに関する。また、本発明は、該ゲルが固定されたマイクロアレイおよびその使用方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蛋白質の構造を網羅的に解析し、それに基づいて生命現象の仕組みを探索しようとするいわゆる構造ゲノム科学と呼ばれる動きが活発化している。ここで、蛋白質の構造を解析するためには、その良好な結晶が必要であるため、結晶化条件の最適化は重要な技術である。また、アミノ酸またはペプチドの合成の精製工程おいても、純度のよい製品を得るためには、高純度の結晶を得ることが必要であり、そのための結晶化条件の最適化は重要となっている。蛋白質の場合、蒸気拡散法を始めとして様々な結晶化方法が考案されているが、実験操作が煩雑であるうえ、微量の試料では検討ができないなどの問題が残されている。
【0003】
これら従来法の複雑な工程の負担軽減と必要試料の微量化のために、新しい結晶化方法や装置の開発が行われており、結晶化装置の全自動化も盛んに研究が進められている。しかしながら、装置の高性能化に伴い、装置価格も上昇し、これらの装置を用いた結晶化検討は、資金に余裕のある極一部の研究所に限られた技術となっているのが現状である。
【0004】
こうした中で、ゲルを用いた結晶化技術として、結晶化剤および蛋白質をそれぞれゲル中に含有させ、これらを積層させることにより、溶液中でみられる対流を抑えてゲル中で結晶を成長させる方法が提案されている(特許文献1:特開平6−321700号公報)。しかしながら、この方法はゲル中に蛋白質を保持させるのが難しいため実用的な手法ではなかった。
【0005】
近年、ゲル中に結晶化剤を保持させ、ゲルを試料と接触させることで、ゲル中の結晶化剤成分を試料中へ徐々に放出し、蛋白質の溶解度をゆっくり低下させて結晶化を促す技術(特許文献2:国際公開第03/053998号パンフレット)、およびそのアレイ化デバイス(特許文献3:特開2005−58889号公報)が開発され、これにより、微量の試料で簡便に結晶化条件を探索することが可能になった。さらに、ゲル中に複数種類の結晶化剤を保持させる技術(特許文献4:特開2005−60284号公報)が開発されるに至り、一般の研究者が低価格で、しかも微量の試料で、多くの結晶化条件を簡便な方法で探索することが可能になった。
【0006】
上記特許文献4(特開2005−60284号公報)では、結晶化剤を保持した状態でモノマーのゲル化反応を行うことができる条件として、(1)塩化ナトリウム等では、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリルジメチルアミノエチルメチルクロライド塩の群から選択される少なくとも1種のモノマーを含むゲル状物;(2)2−メチル−2,4−ペンタンジオール等では、ジメチルアクリルアミドを含むゲル状物;(3)リン酸Na/K等では、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含むゲル状物;(4)AmSO4等では、メタクリルジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を含むゲル状物;(5)マロン酸ナトリウム等では、アクリルアミドを含むゲル状物;(6)PEG6000では、ポリオキシエチレンモノアクリレートを含むゲル状物が適していることを見出し、これにより、ゲル中に結晶化剤を保持することが可能となった。しかしながら、結晶化剤の種類によって選択しうるゲルの種類が異なるため、アレイ化においては試薬の混合に際し複雑な製造工程が必要となっていた。
また、多くの結晶化剤には、高分子ポリエチレングリコールなど高分子の沈殿剤が含有されており、この高分子結晶化剤(沈殿剤)がゲル化反応を不安定にしてゲル化さを妨げる。このため、同じゲル化条件で反応させても、再現性よく確実にゲル化しないときがあり、アレイ上でこれらの結晶化剤を、多数一度に確実にゲル化させることが困難であった。
【特許文献1】特開平6−321700号公報
【特許文献2】国際公開第03/053998号パンフレット
【特許文献3】特開2005−58889号公報
【特許文献4】特開2005−60284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゲルを用いた結晶化技術により、膨大なピペット操作の削減、必要な試料の微量化、および装置のコンパクト化による低価格と省スペースに成功した。しかしながら、結晶化剤の種類によって選択するゲルの種類が異なり、アレイの製造工程においては、試薬の混合工程が複雑となっていた。そのうえ、高分子ポリエチレングリコール等の高分子沈殿剤を含有する結晶化剤の場合、確実なゲル化が難しく、アレイの作製が困難となっていた。これらの課題の解決のためには、高分子結晶化剤(沈殿剤)を保持したまま確実にゲル化できるゲル化条件を探索する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、高分子ポリポリエチレングリコール等の高分子沈殿剤を含有する結晶化剤をゲル化する場合、ポリエチレングリコールを骨格に有する架橋性モノマーを1種、又は必要に応じて2種以上用いることにより、白濁等を生じない透明なゲル状物を再現性よく確実に形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下に示すとおりの水溶性高分子結晶化用ゲルおよびそれを用いたマイクロアレイ、ならびに結晶化方法等に関する。
(1)次式I:
1−O−(CH2CH2O)n−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して架橋性基を表し、nは9以上の整数を表す。)
で示されるポリエチレングリコール骨格を有する架橋性モノマーの重合物に結晶化剤が保持された水溶性高分子結晶化用ゲル。
(2) 架橋性モノマーが次式II:
【化4】

(式中、nは9以上の整数を表す。)
で示されるものである(1)に記載のゲル。
(3)架橋性モノマーは、ポリエチレングリコールの分子量が異なる少なくとも2種類のモノマーである(1)に記載のゲル。
(4)結晶化剤が分子量1000以上の高分子を含むものである(1)に記載のゲル。
(5)次式I:
1−O−(CH2CH2O)n−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して架橋性基を表し、nは9以上の整数を表す。)
で示されるポリエチレングリコール骨格を有する架橋性モノマーと単官能モノマーとの重合物に結晶化剤が保持された水溶性高分子結晶化用ゲル。
(6) 架橋性モノマーが次式II:
【化5】

(式中、nは9以上の整数を表す。)
で示されるものである(5)に記載のゲル。
(7)架橋性モノマーは、ポリエチレングリコールの分子量が異なる少なくとも2種類のモノマーである(5)に記載のゲル。
(8)結晶化剤が分子量1000以上の高分子を含むものである(5)に記載のゲル。
(9)次式I:
1−O−(CH2CH2O)n−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して架橋性基を表し、nは9以上の整数を表す。)
で示されるポリエチレングリコール骨格を有する架橋性モノマーと、該架橋性モノマーとは異なる他の架橋性モノマーと、単官能モノマーとの重合物に結晶化剤が保持された水溶性高分子結晶化用ゲル。
(10) 架橋性モノマーが次式II:
【化6】

(式中、nは9以上の整数を表す。)
で示されるものである(9)に記載のゲル。
(11) 架橋性モノマーは、ポリエチレングリコールの分子量が異なる少なくとも2種類のモノマーである(9)に記載のゲル。
(12)結晶化剤が分子量1000以上の高分子を含むものである(9)に記載のゲル。
(13)(1)〜(12)のいずれか1項に記載のゲルが固定されたマイクロアレイ。
(14)(1)〜(12)のいずれか1項に記載のゲルに水溶性高分子を接触させ、水溶性高分子の結晶を析出させることを特徴とする水溶性高分子の結晶化方法。
(15)(13)に記載のマイクロアレイに固定されたゲルに水溶性高分子を接触させ、水溶性高分子の結晶を析出させることを特徴とする水溶性高分子の結晶化方法。
(16)水溶性高分子が、タンパク質、ペプチド、アミノ酸及び核酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である(14)又は(15)に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高分子ポリエチレングリコール等の高分子の沈殿剤を含む結晶化剤を保持することができる水溶性高分子結晶化用ゲルを再現性よく提供することができる。本発明のゲルを用いることにより、結晶化剤の種類によってゲル組成を選択する必要がないので、アレイ化において複雑な工程が必要とされない。また、本発明のゲルをマイクロアレイに固定する場合、確実にゲルが形成できるので、多数の結晶化剤をチップに搭載する場合でも、全ての結晶化剤を確実に保持したゲルを搭載したチップの製造が可能となる。そして、本発明のゲルを固定したマイクロアレイは簡便な方法で、しかも微量の試料で、多くの結晶化実験又は結晶化条件の探索実験を迅速に実施することができる。また、本発明のマイクロアレイは低コストで製造することが可能であり、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより具体的に説明する。本発明は、水溶性高分子結晶化用ゲル、該ゲルが固定されたマイクロアレイ、およびそれらの使用方法等に関するものである。
【0012】
1.水溶性高分子結晶化用ゲル
本発明の水溶性高分子結晶化用ゲル(以下、本発明のゲルという)の1つの態様は以下の通りである。
【0013】
(1)ポリエチレングリコール骨格を有する構造の架橋性モノマーから誘導される繰り返し単位を含む重合物(ゲル状物)に結晶化剤が保持されている水溶性高分子結晶化用ゲル
本発明において、ポリエチレングリコール骨格を有する構造の架橋性モノマー(以下PEG構造架橋性モノマーともいう)は、次式Iで示される。
1−O−(CH2CH2O)n−R2 (I)
上記式Iにおいて、R1及びR2は、それぞれ独立して架橋性基を表し、nは9以上の整数を表す。
【0014】
本発明において使用される架橋性基 は、一般に架橋剤存在下でゲルを形成させることができる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えばエチレン性不飽和官能基を有するものが好ましい。例えば、R1及びR2は、同一又は異なって、メタクリロイル基、アクリロイル基などが挙げられる。
そのような架橋性基 を有するモノマーとしては、次式IIで示されるポリエチレングリコール骨格を有する構造のものが好ましい。
【化7】

本発明のゲルは、PEG構造架橋性モノマーから誘導される繰り返し単位を含むことにより、種々の結晶化剤を保持することができる。「保持」とは、ゲルの網目構造中に結晶化剤を取り込んでゲルに固定すること(ゲルが結晶化剤を捕捉すること)を意味し、物理的に保持されるほか、化学的に結合する場合も含まれる。結晶化剤の保持は、例えば結晶化剤と上記PEG構造架橋性モノマーを混合し、重合過程を経てゲルを形成させることにより行うことができる。
また、本発明のゲルを用いることにより、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、核酸、その他の水溶性高分子を含有する試料から各水溶性高分子の結晶を析出させることができる。
【0015】
本発明において、PEG構造架橋性モノマーから誘導される繰り返し単位を含む重合物は、PEG構造架橋性モノマーと結晶化剤とを含有する水性媒体中で重合反応を行うことにより製造することができる。本発明に用いられるPEG構造架橋性モノマーは、ポリエチレングリコール構造を有する化合物が、水性媒体中で重合することによりゲル形成が可能なものであれば特に制限されるものではない。
【0016】
好ましくは、式Iで示される架橋性モノマー、さらに好ましくは式IIで示される架橋性モノマーと高分子結晶化剤とを、水性媒体中で重合してなる水溶性高分子結晶化用ゲルである。高分子結晶化剤の分子量は1000以上であることが好ましい。また本発明においては、必要に応じて、ポリエチレングリコールの分子量が異なる2種類以上の架橋性モノマーと単官能モノマーとの重合物に結晶化剤が保持された水溶性高分子結晶化用ゲルが使用可能である。
したがって、本発明のゲルは、上記(1)の態様のほかに、以下の態様とすることができる。
【0017】
(2)式Iで示される架橋性モノマーのポリエチレングリコールの分子量が異なる2種類以上の架橋性モノマーの重合物に高分子結晶化剤を保持してなるゲル
(3)式Iで示される架橋性モノマーと、1種類以上の単官能モノマーとの重合物に高分子結晶化剤を保持してなるゲル
(4)式Iで示される架橋性モノマーのポリエチレングリコールの分子量が異なる2種類以上の架橋性モノマーと単官能モノマーとの重合物に高分子結晶化剤を保持してなるゲル
(5)式Iで示される架橋性モノマーと、該架橋性モノマーとは異なる他の架橋性モノマーと、単官能モノマーとの重合物に高分子結晶化剤を保持してなるゲル
(6) 式Iで示される架橋性モノマーのポリエチレングリコールの分子量が異なる2種類以上の架橋性モノマーと、該架橋性モノマーとは異なる他の架橋性モノマーと、単官能モノマーとの重合物に高分子結晶化剤を保持してなるゲル
【0018】
本発明のゲルは、上記それぞれのモノマーを、高分子結晶化剤の存在下で、水性媒体中で重合することにより得ることができるが、使用するモノマーは、式I(好ましくは式II)で示される架橋性モノマーと、1種類以上の単官能モノマーとの組合せ(上記(3)の態様)、又は式I(好ましくは式II)で示される架橋性モノマーの分子量が異なる2種類以上の架橋性モノマーと単官能モノマーとの組合せ(上記(4)の態様)であることが好ましい。また、高分子結晶化剤の分子量は特に限定されるものではないが、1000以上であることが好ましい。
【0019】
特に、分子量が1000以上の高分子結晶化剤を含有する場合、本発明により確実にゲル化することが可能である。また、分子量が異なる2種類以上の架橋性モノマーは高分子の結晶化剤および、単官能モノマーを用いると、さらにゲル化が促進され、さらに分子量の大きい分子量4000以上の高分子の結晶化剤の確実なゲル化も可能とすることを特徴とする。また、これらのゲルをマイクロアレイの各スポットに充填し、安定したゲルが固定されたマイクロアレイを確実に作製することが可能となる。マイクロアレイの作製については後述する。
【0020】
本発明に用いられる単官能モノマーとしては、水性媒体中で重合することによりゲル形成可能なものであれば特に制限されず、必要に応じて2種以上使用することが可能である。例えば、(メタ)アクリルアミド系モノマーや(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、(i) (メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のN,N−ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド、(ii) (メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸、(iii) ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、(iv) ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルクロライド塩、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドメチルエチルクロライド塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドメチルクロライド塩等のジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド4級アンモニウム塩が好適に用いられる。
【0022】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、(i) 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、(ii) ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、(iii) ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチルクロライド塩、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのエチルクロライド塩等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの4級アンモニウム塩および、グリコシルオキシエチル(メタ)クリレートが好適に用いられる。
【0023】
また、必要に応じて、上記単官能モノマーと共重合可能な、式Iで示される架橋性モノマーとは異なる他の架橋性モノマーを併用することもできる。このような他の架橋性モノマーとしては、2官能以上のラジカル重合性基を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。また、結晶化剤が分子量1000以上の高分子の場合、分子量の異なるこれらの架橋性モノマーを併用することで、ゲル化が促進される。さらに、結晶化剤が4000以上の分子量の場合、分子量500以上のPEG構造架橋性モノマー(例えば、ブレンマーPDE−400 (n=9):日本油脂社製)とそれ以外の上記の架橋性モノマー、あるいは、PEG構造架橋性モノマー同士の併用としてブレンマーPDE−400(n=9)と分子量1100以上のブレンマーPDE−1000(n=23)との組合せがゲル化の確実性を上げる点で好ましい。この架橋性モノマーを併用するときの添加量は、PEG構造架橋性モノマーの使用量に対し、0.001〜0.5質量部であり、好ましくは0.05〜0.1質量部である。
【0024】
本発明において、単官能モノマーの濃度は、結晶化剤溶液100質量%に対し、1〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。例えば、蛋白質結晶化用ゲルの場合、蛋白質結晶化剤溶液100質量%に対し、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。ここで蛋白質結晶化剤溶液とは、沈殿剤を含み、場合により塩及び/又は緩衝剤が溶解した水溶液である。
【0025】
本発明に用いられる結晶化剤は、ポリエチレングリコールなど、高分子沈殿剤だけでなく、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、核酸、その他の水溶性高分子の溶解度を低下させるものであれば特に制限されるものではない。例えば、蛋白質の場合であれば、蛋白質溶液中の蛋白質の溶解度を下げることができるものであれば特に限定はない。
【0026】
沈殿剤としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、アルコール類、燐酸塩、ポリエチレングリコール類およびその誘導体、ならびにその他の水溶性有機化合物が挙げられる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を併用することもできる。
【0027】
金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム6水和物、酢酸亜鉛2水和物、硫化リチウム1水和物、または塩化ニッケル5水和物などが挙げられる。
【0028】
アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、または硫化アンモニウムなどが挙げられる。
【0029】
アルコール類としては、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、イソプロパノール、1,6−ヘキサンジオール、テトラブタノール、エタノール、イミダゾール、グリセロール、またはエチレングリコール、メタノール、n−プロパノールなどが挙げられる。
【0030】
燐酸塩としては、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウムなどが挙げられる。
【0031】
ポリエチレングリコール類およびその誘導体は、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレンイミン等が含まれる。例えば、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール20000、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル550、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル5000、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル20000、およびオルト−(2−アミノプロピル)−オルト−(2−メトキシエチル)ポリプロピレングリコール500などが挙げられる。尚、本明細書において、ポリエチレングリコール(誘導体)類とは、HO(CH2CH2O)nH(nは任意の整数)及びその誘導体をいう。以後ポリエチレングリコールをPEGと表記する。
【0032】
その他の水溶性の有機化合物としては、水溶性高分子を含む試料と接触した際に、該水溶性高分子の結晶化剤として作用し得るものであれば特に制限されるものではない。例えば、ジオキサン、酒石酸エステル3水和物、カコジル酸ナトリウム、リチウムクロライド、マロン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸リチウム、硝酸ナトリウム、硫酸カドミウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
これらの沈殿剤は、1種単独で、または2種類以上の組合せで使用することができる。これらの中で、特に、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウム、リン酸カリウムナトリウム、リチウムクロライド、マロン酸ナトリウム、MPD(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)、PEGが好適である。また、市販品として、Emerald BioStructures社製「WIZARD I・II」、Hampton Research社製「Crystal screen」、「Crystal screen II」「Grid Screen Ammonium Sulfate」「Grid Screen PEG600」「Grid Screen MPD」「Grid Screen PEG/LiCl」「Grid Screen NaCl」「Quik Screen」「Salt RX」「MembFac」「Natrix」等と同じ結晶化剤成分を保持させることもできる。
【0034】
沈殿剤の使用濃度は、金属塩、アンモニウム塩または燐酸塩などの塩類では水性媒体中0.1〜5.0mol/Lが好ましく、アルコール類、pH緩衝剤などの有機溶媒では1〜80体積%が好ましく、ポリエチレングリコール類およびその誘導体、またはその他の水溶性高分子化合物では1〜50重量%が好ましい。
【0035】
上記沈殿剤による結晶化は、特定のpH領域で行うことが好ましく、結晶化剤には緩衝剤を含むことが好ましい。緩衝剤としては、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール Tris(ハイドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール Tris塩酸塩、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸、2−モルフォリオエタンスルホン酸1水和物、またはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、クエン酸などが挙げられる。
これらは1種単独で使用することもでき、2種類以上を併用することもできる。緩衝液は、必要に応じて酸あるいはアルカリなどで中和し所定のpHに調整して使用する。pHは、3.0〜10.0の範囲が好ましく、4.0〜9.0の範囲がより好ましい。
【0036】
本発明の水溶性高分子結晶化用ゲルは、透明ゲルとして得ることができる。ゲルが透明であるときは、生成した蛋白質結晶の観測が極めて容易となり、光学的検出系による自動化もより容易となるため好ましい。ここで、「透明」とは、結晶化の様子が観察できる程度に透き通っていることを意味し、光の透過率が100%であることを必要としない。
【0037】
本発明のゲルは、少なくともPEG構造架橋性モノマーを含むモノマー成分を、(1)結晶化剤及び水性媒体の存在下で、必要に応じて緩衝液を含有してなる水溶液存在下で熱重合させるか、あるいは、(2) 結晶化剤及び水性媒体の存在下で、熱および/または光ラジカル重合開始剤を用いて重合させ、ゲル化させることにより製造することができる。これらの方法によれば、結晶化剤をゲル中に均一に保持させることができる。この際、ラジカル重合開始剤の存在下に重合を行うことが好ましい。
【0038】
本発明において、ゲル形成の際に用いられる水性媒体としては、水、または水と水性有機溶剤との混合液が挙げられる。ここで水性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、が挙げられる。水と水性有機溶剤の混合液を使用する場合は、混合液中に質量換算で60%以上の水を含有していることが好ましい。本発明に用いられる好ましい水性媒体は水である。
【0039】
水溶液中において好適に使用されるラジカル重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノブタン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、1種単独で、もしくは2種類以上の混合物として使用することができる。
【0040】
また、前記過酸化物に第三級アミン、亜硫酸塩、第1鉄塩等の還元剤を組み合わせたレドックス系重合開始剤、さらには、レドックス系重合開始剤とアゾ系重合開始剤を組み合わせた併用重合開始剤を使用してもよい。
【0041】
また、本発明においては、特定波長の光を与える光源下で、光ラジカル重合開始剤を用いて重合を行うこともできる。その際、使用される光ラジカル重合開始剤は、特定波長の範囲内の光照射により分解し、ラジカルを発生するものであれば特に限定はない。好適に利用できるものとして、例えば、アシルホスフィンオキサイド、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、アントラキノン等の通常光重合に使用される開始剤、その他に、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)ナトリウム塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系重合開始剤が挙げられる。これらの中から、利用する光波長に応じて、任意のもの1種類以上を選択して使用することができる。
【0042】
前記の特定波長とは、反応液中に含有される単量体自身による光吸収、ラジカル生成に利用される光量子エネルギーの二つの点を考慮すると、波長が200〜650nmの領域の光を用いることが望ましい。波長が200〜650nmの領域の光照射に利用可能な光源の代表例としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ等が挙げられる。
【0043】
また、本発明には、PEG構造架橋性モノマーと結晶化剤とを水性媒体中で重合してなる水溶性高分子結晶化用ゲルが含まれる。PEG構造架橋性モノマー、結晶化剤、水性媒体の種類および使用量については、前述のとおりである。
【0044】
2.水溶性高分子の結晶化
本発明の結晶化方法は、本発明のゲルに水溶性高分子を接触させ、水溶性高分子の結晶を析出させること、あるいは、後述する本発明のマイクロアレイに固定されたゲルに水溶性高分子を接触させ、水溶性高分子の結晶を析出させることを含む。
すなわち、本発明の方法は、結晶化剤を保持するゲルに水溶性高分子を適用することによって、水溶性高分子がゲル中を拡散して結晶化剤に接触し、水溶性高分子の結晶を析出させるというものである。
【0045】
水溶性高分子としては、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、核酸、およびその他の水溶性高分子が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種を含有する試料を、結晶化剤に接触させるために使用することができる。また、後述する本発明のマイクロアレイを用いて、マイクロアレイに固定されたゲルと、上記水溶性高分子を含有する試料とを接触させ、水溶性高分子の結晶を析出させることが可能である。
本発明では、単に試料をゲルに接触させる操作のみでX線解析や精製などに適した良好な品質の結晶を得ることができる。
【0046】
本発明のゲルは、上述したとおり、種々の結晶化剤を保持することができるので、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、核酸、その他の水溶性高分子からなる群から選択される少なくとも1種を含有する試料と接触させることにより、良好な品質の水溶性高分子の結晶を、簡便かつ高効率に析出させることができる。
上記のように調製されたゲルと、水溶性高分子含有試料を接触させる方法は、任意の手法により行うことができる。例えば、結晶化剤を保持するゲルに高分子含有試料を滴下したり、シリンジなどで手動又は機械的に試料を充満させたり、又はゲルを高分子含有試料中に浸漬することなどにより試料と結晶化剤との接触が可能である。試料の量は、結晶化条件などを考慮して目的に合わせて設定することができる。
【0047】
本発明の結晶化方法においては、結晶化剤がゲル中から水溶性高分子含有試料の部分に、又は該試料が結晶化剤を保持するゲル中に、徐々に移行し、結晶化反応も少しずつ起こる。これにより、結晶化のメカニズムである水溶性高分子と周囲環境(結晶化剤の存在、濃度、pH等)との相互作用が徐々に進行するため、良質な結晶が析出することになる。
水溶性高分子含有試料を結晶化剤と接触させた後は、水溶性高分子が析出するのに十分な時間にわたって、適切な温度条件下にて、ゲルを密閉状態にして静置するか、又は大気中に静置する。
【0048】
水溶性高分子が析出するのに十分な時間とは、物質、濃度、結晶化条件などにより異なるが、約1時間〜10日である。また適切な温度条件も水溶性高分子の種類、濃度、結晶化条件などにより異なるが、約4℃〜30℃である。
水溶性高分子が析出するのに十分な時間が経過した後は、結晶析出状況を、例えば光学顕微鏡、X線回折装置などにより観察する。本発明の結晶化方法においては、ゲルにおける結晶化をモニタリングするための公知のシステムを組み合わせて用いることができる。例えば、結晶析出の様子を、顕微鏡に搭載したCCDカメラにより撮影記録し、画像処理することによって、結晶化の成否を高速に判断することが可能である。
【0049】
3.マイクロアレイ
本発明においては、本発明のゲルを基盤に固定することにより、ゲルが固定されたマイクロアレイを作製することが可能である。
本発明のゲルは、例えばマイクロアレイに固定して用いることができる。本発明のゲルを用いることにより、従来のように結晶化剤の種類によってゲル組成を選択する必要がなく、アレイ化において複雑な製造工程が必要とされないといった利点がある。そのうえ、高分子ポリエチレングリコール等の高分子沈殿剤を含有する結晶化剤の場合、確実にゲル化すること(ゲルに保持すること)が難しく、確実なチップの作製が困難となっていたが、本発明では、高分子沈殿剤のゲル化が確実なため、多数のゲルを搭載するマイクロアレイの製造も可能となった。
【0050】
こうして得られる本発明のマイクロアレイは、種々の結晶化剤を保持することができるゲルが固定されたものであるので、微量の試料でも、水溶性高分子の結晶化実験あるいは結晶化条件の探索を迅速かつ経済的に実施することができる。
【0051】
本発明のマイクロアレイは、本発明のゲルが固定されたものであれば特に制限されないが、該水溶性高分子結晶化用ゲルを保持するためのゲル保持部を有していることが好ましい。また、本発明のマイクロアレイは、水溶性高分子含有試料を充填させるための結晶化区画を有していることが好ましい。
【0052】
この結晶化区画に充填された水溶性高分子を含有する試料が、ゲル保持部に保持された本発明のゲルと接触した際に、ゲル中に保持されている結晶化剤が結晶化区画へ移動し、水溶性高分子の結晶化を促すことができる。本発明においては、結晶化剤がゲル中に保持されているので、水溶性高分子含有試料への結晶化剤の移動が適度に緩やかな速度に制御され、結晶化を安定して行うことができる。
【0053】
本発明において、マイクロアレイの材料、形状等は、水溶性高分子結晶析出の観察を妨げないものであれば、特に制限されない。マイクロアレイの材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属等が挙げられ、また、これらの材料を組み合わせて作製した複合体を用いてもよい。但し、蛋白質結晶の析出の有無を容易に確認するために、光透過性の高い材料を用いることが好ましい。
【0054】
また、マイクロアレイの形状としては、例えば、円形、正方形、長方形などの形状が挙げられる。また、その厚みについては、結晶化の効率の向上や、結晶析出の観察の容易化および迅速化を考慮して任意に選択できるが、例えば0.1〜5mm、好ましくは0.2〜2mmとすることができる。
本発明に使用されるマイクロアレイは、例えば、モノマー、架橋剤および結晶化剤を含む溶液を、平面基板上の予め定めた区画にスポッティングすることにより製造することができる。このようなマイクロアレイの製造法については、特表平6-507486号公報、米国特許5,770,721号公報などを参照することができる。区画が溝又は貫通穴により形成されている場合、それら溝又は貫通穴に、モノマー、架橋剤および結晶化剤を含む溶液を添加し、区画内で重合反応を実施することによりマイクロアレイを作製することができる(特開2000-60554号公報参照)。
【0055】
さらに、本発明において、ゲルを保持した中空管状体を複数本集束し(つまり、複数本を束ねて樹脂等により固定化し)、この集束物を管状体の長手方向に対して交差する方向で切断を繰り返すことにより、マイクロアレイを作製することができる。このようなマイクロアレイの製造については、例えばWO03/53998号公報、WO00/53736号公報などの記載を参照することができる。
複数の管状体を集束した後、集束物の各中空部にゲルを保持しても良い。その場合、マイクロアレイは例えば以下の(a)〜(c)の工程を行うことにより製造することができる。
【0056】
(a)複数本の管状体をそれらの長手方向が一致するように集束する工程。
(b)集束物の各管状体の中空部に、モノマー、架橋剤および結晶化材を含む溶液を充填し、中空部内で所定の重合温度で重合反応する工程。
(c) 集束物を、その長手方向と交差する方向で切断する工程。
作製したマイクロアレイは、外気との接触を防ぐ密閉性のよい容器に保存しておくことが好ましい。保存用容器の材質の例としては、気体や水の透過率の小さな高分子材料、あるいはガラスや金属が挙げられる。低温で保存することが好ましく、特に長期にわたる保存の場合には凍結保存することも可能である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。なお、実施例および比較例に用いたモノマーおよび架橋剤は以下のとおり表記する。
N,N'-メチレンビスアクリルアミド:MBAAm
テトラエチレンジアクリレート:NKester
ジメチルアクリルアミド:DMAAm
グリコシルオキシエチルメタクリレート:GEMA
2−メチル−2,4−ペンタンジオール:MPD
ポリエチレングリコールジメタクレリレートn≒9:PDE400
ポリエチレングリコールジメタクレリレートn≒23:PDE1000
【0058】
以下の手順に従ってゲルが保持された中空糸を調製し、作成した結晶化剤を含むゲルの評価を行った。結晶化剤、ゲルの組成に関しては表1に示す(実施例1〜7、比較例1〜6)。
<ゲル保持中空糸調製工程>
1.混合液A(結晶化剤)をサンプルチューブに分取。
2.混合液B(16μL)と水溶性重合開始剤(1μL)を混合。
3.混合液A(83μL)を上記2.で調整した溶液に加え、十分に撹拌し、混合液Cを作成。
4.混合液Cを窒素雰囲気下55℃温浴中にて3時間加熱し、これをポリカーボネート製中空糸(内径300μm)に充填。
5.中空糸を窒素雰囲気下55℃温浴中にて3時間加熱。
【0059】
<ゲル評価方法>
上記作成した中空糸を繊維の長手方向に横切断し、中空糸内に保持されているゲルの透明性を透過型光学顕微鏡にて観察する。結果は表1に示した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式I:
1−O−(CH2CH2O)n−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して架橋性基を表し、nは9以上の整数を表す。)
で示されるポリエチレングリコール骨格を有する架橋性モノマーの重合物に結晶化剤が保持された水溶性高分子結晶化用ゲル。
【請求項2】
架橋性モノマーが次式II:
【化1】

(式中、nは9以上の整数を表す。)
で示されるものである請求項1に記載のゲル。
【請求項3】
架橋性モノマーは、ポリエチレングリコールの分子量が異なる少なくとも2種類のモノマーである請求項1に記載のゲル。
【請求項4】
結晶化剤が分子量1000以上の高分子を含むものである請求項1に記載のゲル。
【請求項5】
次式I:
1−O−(CH2CH2O)n−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して架橋性基を表し、nは9以上の整数を表す。)
で示されるポリエチレングリコール骨格を有する架橋性モノマーと単官能モノマーとの重合物に結晶化剤が保持された水溶性高分子結晶化用ゲル。
【請求項6】
架橋性モノマーが次式II:
【化2】

(式中、nは9以上の整数を表す。)
で示されるものである請求項5に記載のゲル。
【請求項7】
架橋性モノマーは、ポリエチレングリコールの分子量が異なる少なくとも2種類のモノマーである請求項5に記載のゲル。
【請求項8】
結晶化剤が分子量1000以上の高分子を含むものである請求項5に記載のゲル。
【請求項9】
次式I:
1−O−(CH2CH2O)n−R2 (I)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して架橋性基を表し、nは9以上の整数を表す。)
で示されるポリエチレングリコール骨格を有する架橋性モノマーと、該架橋性モノマーとは異なる他の架橋性モノマーと、単官能モノマーとの重合物に結晶化剤が保持された水溶性高分子結晶化用ゲル。
【請求項10】
架橋性モノマーが次式II:
【化3】

(式中、nは9以上の整数を表す。)
で示されるものである請求項9に記載のゲル。
【請求項11】
架橋性モノマーは、ポリエチレングリコールの分子量が異なる少なくとも2種類のモノマーである請求項9に記載のゲル。
【請求項12】
結晶化剤が分子量1000以上の高分子を含むものである請求項9に記載のゲル。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のゲルが固定されたマイクロアレイ。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のゲルに水溶性高分子を接触させ、水溶性高分子の結晶を析出させることを特徴とする水溶性高分子の結晶化方法。
【請求項15】
請求項13に記載のマイクロアレイに固定されたゲルに水溶性高分子を接触させ、水溶性高分子の結晶を析出させることを特徴とする水溶性高分子の結晶化方法。
【請求項16】
水溶性高分子が、タンパク質、ペプチド、アミノ酸及び核酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項14又は15に記載の方法。

【公開番号】特開2008−308472(P2008−308472A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160150(P2007−160150)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】