説明

水溶液からの可溶性塩の回収

【課題】処理しようとする水溶液を含有する塩から不溶性化合物を形成するための反応器を備える装置を提供すること。
【解決手段】反応器は、装置の外にある電源及び磁気誘導源に接続され、該反応器の側面付近に一方が他方の反対側に挿入されている一対の電極と、反応器の外に位置する周波数発生器に接続され、反応器内に一方が他方の反対側に、前記第1の電極対に隣接して挿入されている第2の電極対と、反応器の外に位置し、電源及び磁気誘導源に接続されているらせん状導電要素と、可能な限り毛細管が前記反応器の底部近くにあるように、前記電源の陰極に接続されている前記電極に隣接して位置する前記毛細管を通って反応器に入る、吹込みポンプ及び光子放出体によって生じる光子化空気噴射と、反応器の外に位置する電磁場発生器及び調整可能な周波数発生器と、反応器中央に位置する可変速パドル撹拌手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の応用分野は、化学的、電気的及び磁気的プロセスにより可溶性塩を不溶性とすることによるそれら可溶性塩の回収である。
【背景技術】
【0002】
化学反応により不溶性生成物が生じる多くの最先端技術プロセスがある。一方、他の反応は可溶性塩を形成し、これが、それら可溶性塩を水溶液から分離することができない理由である。
【0003】
本発明は、水溶液からすべての可溶性塩を取り出し、強制的にそれら可溶性塩に不溶性化合物を形成させることによって、この技術的問題を解決する。
【0004】
不溶性塩を形成するプロセスの例は、以下のように最先端技術において見られる。
【0005】
特開2004−255627号公報は、逆浸透によって膜が機能しなくなることを防止するための、前処理としての塩不溶化のプロセスを開示している。このプロセスは磁場も周波数も使用せず、塩化物又は硫酸塩を不溶化することができない。
【0006】
米国特許第5858249号明細書は、(水溶液中に本来含まれている塩を用い犠牲電極のイオンを添加して不溶性物質を形成するための電気凝固として働く、電解槽の一種におけるイオン種の不溶化のプロセスを開示している。このプロセスは、塩化物又は硫酸塩を沈殿させることができない。
【0007】
中国特許文献CN1131127は、リン酸塩やバリウム塩などの化学試薬を添加することによる、水溶液中に含まれている塩の不溶化のプロセスを開示している。水溶液を、この場合には水をろ過することによって沈殿溶液は分離され、結果として塩の含有量が少なくなる。このプロセスでは、電場、磁場又は周波数場を印加することはなく、化合物を形成することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、物理的刺激によって液状媒体中で不溶性化合物を形成するための手順を含む。このようにして形成される化合物は、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、単純化合物であっても錯化合物であってもよい。本発明によって解決される技術的問題は、不溶性化合物を水溶液から分離して分離した塩からも精製残留液からも利益を得ることができるように、溶解性の高い塩を不溶性化合物に変える際の問題である。
【0009】
単一相又は単一反応器において、その後の核形成のための核として働く化合物の最初の沈殿及び形成される他の種の吸収機構のような反応機構及び物理変化が起こる。これら第1の沈殿の形成は、犠牲電極として作用する電極の一方によるイオンの寄与に加えて、電極を通じて送られた限外ろ過(ultra−filtered)電流によって印加された電磁場の作用によるものである。
【0010】
その後、第2のイオンの寄与、通常アルミニウム、カルシウム、鉄、鉛又はスズを加えて、水溶液に含まれる塩との新たな化合物を形成する。これで、最初に形成された核の寸法がこれら新たな化合物によって増大し、この段階で、形成された他の非錯体塩の吸収が起こる。
【0011】
周波数1KHz〜2MHzの電波スペクトルにおける電磁波周波数を印加することによって、幾何学的形状及び周波数が異なる電磁波発生器によって実現されるプロセスの選択によって、異なる化合物が形成される。
【0012】
この技法についての可能な応用分野は、数ある中でも以下の分野が代表的である。
○海水脱塩、塩化物及び硫酸塩の沈殿
○採鉱作業による酸性水からの塩の除去
○採鉱PLS溶液からの塩の沈殿
○飲料水処理、塩化物及び硫酸塩の沈殿
○ボイラー水処理及び冷却、塩化物及び硫酸塩の除去
○かんがい用水処理、塩化物及び硫酸塩の沈殿
○かんがい用水処理、リン酸塩及び硝酸塩の沈殿
○下水処理、塩化物、硫酸塩及びリン酸塩の沈殿
○下水処理、硝酸塩及び亜硝酸塩の沈殿
○一般に薬物及び化学試薬を製造するためのプロセスにおける塩の不溶化
○限外ろ過及び逆浸透プロセスのための前処理としての塩の沈殿
【0013】
これらの例は最も知られている例であるが、他の多くのプロセスが、通常可溶性の塩を不溶化し、したがって得られる生成物の性能及び/又は純度を最適化することができるという利点を利用することができる。このように、プロセスが本発明の一部の技術又は技術全体を使用する場合には、それは本発明の範囲内にある。
【0014】
この技術では、一組の電極を通じて印加される、可変の正弦波型の幾何学的波形を有する限外ろ過連続電流、減衰のこぎり波パルス、矩形波パルス及び電波スペクトルの電磁波信号を使用する。これらすべてを組み合わせると、沈殿反応を促進することが可能である。
【0015】
加えて、前記沈殿に対する優先的なpH範囲があるはずであり、このpH範囲はpH4〜pH12でなければならない。しかしながら、pH目盛りの範囲のいずれでこのプロセスを行っても、優れた結果が得られる。続いて、沈殿粒子の等速凝固段階があり、この凝固が電気的に支援される。電磁場に対応する印加電圧もある範囲内にあり、この範囲は1〜100ボルトでなければならず、一方使用する電流強度は10mA〜3Aでなければならない。上述のとおり、電圧及び電磁信号は、処理しようとする溶液に浸した電極を通じて印加される。前記電極を構成するために使用する材料は、水の質によって異なる。これらの材料は、鉛、白金、アルミニウム、銅、石炭、金、スズ、亜鉛、鉄、チタン、ホウ素、ニッケル又はダイアモンドであってもよい。
【0016】
不溶性物質を形成するための手順全体を単一装置内で行う。この装置は様々な異なる要素で構成されている。すなわち、
・装置の外にある電源及び磁気誘導源に接続され、反応器の側面付近に一方が他方の反対側に挿入されている、異なる構成を有し異なる材料製である一対の電極が入っている反応器。
・反応器の外に位置する周波数発生器に接続され、反応器内に一方が他方の反対側に、第1の電極対に隣接して挿入されている、異なる構成を有し異なる構成材料製である第2の電極対。
・反応器の外に位置し、電源及び磁気誘導源に接続されているらせん状導電要素であって、この要素を通って特定の磁場を生成する電流が流れるらせん状導電要素。
・可能な限り毛細管が反応器の底部近くにあるように、電源の陰極に接続されている電極に隣接して位置する毛細管を通って反応器に入る、吹込みポンプ(blowing pump)及び光子放出体によって生じる光子化(photonized)空気噴射。
・反応器の外に位置する電磁場発生器及び調整可能な周波数発生器。
・反応器の中央に位置する可変速パドル撹拌手段。
【0017】
加えて、これらのプロセスすべての実行を、2つ以上の装置を備える他の設備において行うこともできる。
【0018】
沈殿物を形成するためのプロセスには、それぞれ1〜10バール及び0〜90℃の範囲内にある特定の圧力値及び温度値が含まれる。これは、沈殿プロセスが、過飽和を可能にする平衡定数(balance constant)のずれを示唆する濃度に基づいているという事実によるものである。温度の作用は反応の速度論に影響を及ぼし、それにより沈殿プロセスが増進する。というのは、分子衝突が加速し、その結果、速度定数が上昇するからである。外圧の印加によっても同じ結果が生じる。その明白な例はジャロサイトの沈殿であるが、この形成は通常の条件下では不可能であるため、これがこれらの変数の適用が必要となる理由である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の構成要素及びその接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
このプロセスは、電源及び磁気誘導源(4)に接続されている一対の電極(2及び3)と、周波数発生器(7)に接続されている第2の電極対(5及び6)を有する反応器(1)を備える装置において単一ステップで行う。オゾン及び酸化剤を含まないラジカル(oxidant−free radicals)を含有する加圧光子化空気の流れが、空気を循環させる空気ポンプ(9)から光子発生器(10)を通って反応器に入る。また、らせん状導電要素(11)が反応器の外側を取り囲み、このらせん状導電要素(11)を通じて特定の磁場を発生させる電流が循環する。前記要素は、電流を発生させる電源及び磁気誘導源(4)に接続されている。機械的又は磁気的撹拌装置(8)によりすべてが撹拌され、水溶液中に存在せず所望の不溶性化合物を完成させるために必要であるイオンを添加する化学試薬が添加される。ほとんどの場合、カルシウムイオン及びヒドロキシルイオンは不十分であり、これが好ましくは石灰を単一試薬として使用する理由である。
【0021】
実施例1:
たとえば、海水脱塩プロセスの用途を取り上げる場合、使用する機構は以下のとおりである。
【0022】
まず第一に、光子を通過する空気混合を適用し、次いで海水に直接適用する。結果として生じる反応は以下のとおりである。

【0023】
上記反応は、pH>9.8単位まで適用する。アルミニウム電極を通じて電場を印加し、それにより以下の第2の電解反応が生じる。

【0024】
アルミニウムはOHイオンと反応し、それにより以下の反応に基づく第1の核形成が生じる。

【0025】
水酸化アルミニウム核が形成されたら、水酸化カルシウムを添加し、1.8MHz波長の無線周波数を印加し、次いで以下の硫酸塩、塩化物及びリン酸塩沈殿反応をもたらす。



【0026】
或いは、アルミニウムイオンの形成と共に、一対の銅電極において適用してまず第一に以下の反応をもたらすことによって、銅イオンを形成することもできる。

【0027】
以下の反応に基づき、媒体から硝酸塩が捕獲される。


【0028】
上記により、また先の無線周波数及び場の手段において、以下の反応がもたらされる。

【0029】
塩化物、硫酸塩、リン酸塩及び硝酸塩が沈殿した。アニオンの除去により、それと共にアルミニウム、銅及びカルシウムの除去がもたらされる。形成した各沈殿物は、重金属を吸収する優れた能力を有する。
【0030】
形成したようなこれらの不溶性物質は一般的に、成長するはずの微細沈殿物である。成長を促進させるために、ポリマーを添加することによって、その後沈降により分離することによって、またその後ろ過することによってフロキュレーション(flocculation)を生じさせる。
【0031】
以下の表は、サンアントニオ、第5領域からの海水を用いて体験を行った際の作動条件及び適用量を示す。

【0032】
以下の表は、海水から塩を除去する場合に達する効率を示す。この表は、海水の質を示す未処理の欄を含む。処理後の欄は、砂及び石炭フロキュレーション並びにろ過後に達する値を示す。除去%の欄は得られた有効性を示す。

【0033】
実施例2:
塩析沈殿の用途の別の実施例は、採鉱用水中の硫酸塩の不溶化である。
【0034】
このために、Collahuasi鉱山において硫酸塩の初期含量が5,200mg/Lである水サンプルを取得した。
【0035】
使用した化合物は、ナトリウムジャロサイトの沈殿のような沈殿であった。

【0036】
元素Mはナトリウム又はカリウムでよい。このために、以下の機構を使用した。
【0037】
まず第一に、光子を通過する空気混合を適用し、次いで海水に直接適用する。結果として生じる反応は以下のとおりである。

【0038】
上記反応は、pH>9.8単位まで適用する。アルミニウム電極を通じて電場を印加し、それにより以下の第2の電解反応が生じる。

【0039】
アルミニウムはOHイオンと反応し、それにより以下の反応に基づく第1の核形成が生じる。

【0040】
平衡状態では水酸化アルミニウム核が形成され、その後無線周波数及び電場により媒体中にジャロサイトとして沈殿する。

【0041】
作動条件は以下のとおりである。

【0042】
得られた結果は以下のとおりである。

【0043】
このように、それにより塩を低減することができる様々な異なる不溶性成分を構成することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 反応器
2 電極
3 電極
4 電源及び磁気誘導源
5 電極
6 電極
7 周波数発生器
8 機械的又は磁気的撹拌装置
9 空気ポンプ
10 光子発生器
11 らせん状導電要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理しようとする水溶液を含有する塩から不溶性化合物を形成するための、反応器を備える装置であって、前記反応器が、
a)当該装置の外にある電源及び磁気誘導源に接続され、前記反応器の側面付近に一方が他方の反対側に挿入されている、異なる構成を有し異なる材料製である一対の電極と、
b)前記反応器の外に位置する周波数発生器に接続され、前記反応器内に一方が他方の反対側に、前記第1の電極対に隣接して挿入されている、異なる構成を有し異なる構成材料製である第2の電極対と、
c)前記反応器の外に位置し、電源及び磁気誘導源に接続されているらせん状導電要素であって、この要素を通って特定の磁場を生成する電流が流れるらせん状導電要素と、
d)可能な限り毛細管が前記反応器の底部近くにあるように、前記電源の陰極に接続されている前記電極に隣接して位置する前記毛細管を通って前記反応器に入る、吹込みポンプ及び光子放出体によって生じる光子化空気噴射と、
e)前記反応器の外に位置する電磁場発生器及び調整可能な周波数発生器と、
f)前記反応器の中央に位置する可変速パドル撹拌手段と
を備える、不溶性化合物を形成するための装置。
【請求項2】
不溶性化合物を形成するための装置であって、電源及び磁気誘導源により、組み合わさって又は個々に沈殿反応を促進することが可能である電極対を通じて印加される、可変の正弦波型の幾何学的波形を有する限外ろ過連続電流電圧、減衰のこぎり波パルス、矩形波パルス及び電波スペクトルの電磁波信号が印加され、これらの電極が、それら電極を電場及び磁場発生器に、並びに周波数発生器に接続する装置に含まれている、装置。
【請求項3】
前記反応器内で起こる反応が、平衡定数に応じてpH目盛りのあらゆる範囲、好ましくはpH4〜pH12の範囲内にあり、その後沈殿粒子の電気的に支援される凝固運動段階がある、請求項1に記載の不溶性化合物を形成するための装置。
【請求項4】
印加電圧は、電圧が1〜100ボルトで電流密度が10mA〜3Aである電磁場に対応する、請求項1に記載の不溶性化合物を形成するための装置。
【請求項5】
電磁場及び/又は周波数が、以下の要素、鉛、白金、アルミニウム、銅、石炭、金、スズ、亜鉛、鉄、チタン、ホウ素、ニッケル、ダイアモンドのうちの1種で作製された、異なる種類の電極対を通じて送られ、この第1の電極が同じ要素の別の電極と、上述の他の電極又はその合金と協力して作用する、請求項1に記載の不溶性化合物を形成するための装置。
【請求項6】
前記反応器内におけるプロセスすべての実行が、0〜90℃の温度範囲内、及び1〜10バールの圧力範囲内である、請求項1に記載の不溶性化合物を形成するための装置。
【請求項7】
不溶性化合物を形成するための装置を使用するための方法であって、
a)反応器の側面付近に一方が他方の反対側に挿入されている、異なる構成を有し異なる材料製である一対の電極を有する浸出反応器を設けるステップと、
b)前記反応器内に一方が他方の反対側に、前記第1の電極対に隣接して挿入されている、異なる構成を有し異なる構成材料製である第2の電極対を設けるステップと、
c)前記反応器の外に位置する電源を設けるステップと、
d)前記反応器の外に位置する周波数発生器を設けるステップと、
e)光子化空気噴射システムを設けるステップと、
f)前記電源の陰極に接続されている電極に隣接して位置する空気ポンプ及び毛細管を設けるステップと、
g)前記反応器の外に位置する電磁場発生器及び調整可能な周波数発生器を設けるステップと、
h)前記反応器の中央に位置する可変速パドル撹拌手段を設けるステップと、
i)前記反応器の外側を取り囲むらせん状導電要素を設けるステップと、
j)不溶性化合物を有する溶液を前記反応器に導入するステップと、
k)オゾン及びフリーラジカルを含有する空気を、空気ポンプ、前記光子化空気噴射器及び前記毛細管を使用することによって前記反応器へと噴射するステップと、
l)同時に、周波数又は電波スペクトルの電磁信号を、前記周波数発生器及び一対の電極を使用することによって前記反応器内の不溶性化合物を含有する溶液に印加するステップと、
m)同時に、脈動連続電流で構成される電圧を、前記電源及び別の電極対を使用することによって前記反応器内の不溶性化合物を含有する前記溶液に印加するステップと、
n)同時に、特定磁場を、前記らせん状導電要素を使用することによって印加するステップと、
o)同時に、前記反応器内の不溶性化合物を含有する前記溶液を、前記パドル撹拌手段を使用することによって撹拌するステップと、
p)同時に、前記水溶液中に存在せず前記所望の不溶性化合物を完成させるために必要であるイオンを添加する化学試薬、好ましくは石灰を添加するステップと、
q)アルミニウム、カルシウム、鉄、鉛、スズなどの第2のイオンの寄与を加えて、前記水溶液に含まれる塩との新たな化合物を形成するステップとを含む方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−115640(P2010−115640A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−222839(P2009−222839)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(510005812)ウォータミン エス.エー. (1)
【Fターム(参考)】