説明

水溶液中の少なくとも1つのCN化合物の濃度を連続判定する方法

水溶液(2)中の少なくとも1つのCN化合物の濃度を連続判定する方法であって、水溶液にキャリヤーガス(3)、特に圧縮空気が注入され、注入されたキャリヤーガス(3)の少なくとも一部がガス分析器(10)、例えば、HCNガス分析器に給送され、その分析データ(11)が水溶液(2)中のCN化合物の濃度判定時に考慮される。有利な処理条件を作り出すため、CN化合物の濃度判定時にキャリヤーガス(3)に暴露された水溶液(2)の温度(t、t、t)が考慮されることが提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液中の少なくとも1つのCN化合物の濃度を連続判定する方法に関する。この方法においては、水溶液にキャリヤーガス、特に圧縮空気が注入され、注入されたキャリヤーガスの少なくとも一部がガス分析器、例えば、HCNガス分析器に給送され、その分析データが水溶液中のCN化合物の濃度判定時に考慮される。
【背景技術】
【0002】
水溶液中のシアン化合物(CN化合物)を検出するために、従来技術が公知である(特許文献1)。ここでは最初にCN化合物が液体から気相に放散され、次に捕捉され放散されたCN化合物、特にHCNについて水溶液中のCN化合物の濃度がガスセンサーまたはガス分析器を使用して分析できる。CN化合物を放散するために、特許文献1は水溶液にキャリヤーガスに暴露することを提示している。さらに、正確な測定が達成されるよう、測定するべきガスの量はガス流入決定手段によって把握されることが提示されている。このような手段はしかし、構造上費用がかかり、比較的外乱等の影響を受けやすい方法につながる。さらには、CN化合物を制御して放散するためには、ひいては再現可能な測定結果を提供するためには、このような装置には比較的費用のかかる、温度調節装置付き反応器が必要である。そのような反応器ではしかし、有毒な溶液、つまり高濃度のCN化合物水溶液に迅速に反応することができず、その結果この方法はCN化合物濃度の証明には使用できるが、急激な反応連鎖を制御するためには使用できない。
【0003】
さらに、特許文献2が公知である。この場合、水溶液中に膜モジュールを入れ、これを通して、水溶液とは分離されてキャリヤーガスが流れ込む。膜モジュールによって青酸が発生する場合があり、これがキャリヤーガスによって吸収され、一緒に分析されてしまう可能性がある。さらに測定値補正のために水溶液温度を考慮することが提示されている。しかし膜モジュールは比較的汚れの影響を受けやすく、その結果安定した方法および安定した装置が確実に実現されない可能性がある。さらに全体の水溶液の温度の測定は、正確な方法では不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE102006026044A1
【特許文献2】DD275154A3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、冒頭に記述した種類の方法を、水溶液中のCN化合物の濃度を簡単な方法で十分正確に判定することを可能にするだけでなく、連続的な方法を提供することができるように形成することである。さらにこの方法は反応が迅速でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は提示された課題を、CN化合物の濃度を判定する際にキャリヤーガスに暴露された水溶液の温度を考慮に入れることによって解決する。
【0007】
CN化合物の濃度の判定の際にキャリヤーガスに暴露された水溶液の温度が考慮される場合は、測定補正のために該当する温度測定が行われてよい。なぜなら、この方法によってCN化合物の濃度の判定に一緒に作用する、水溶液の一部の温度が考慮されるからである。さらにそれによって有利には反応が迅速な方法が実現される。なぜなら従来技術とは異なり、水溶液がCN化合物を放散する前に、水溶液の温度を再現可能で正確なCN化合物の濃度計算が可能になる温度にする必要はないからである。水溶液の現在の温度および該当する温度、つまりキャリヤーガスに暴露された水溶液の部分温度を考慮することで、この方法の高い精度が常に保証される。なぜならこの特別な温度検出を使用して、水溶液中のCN化合物の濃度を分析するためのパラメーターが現在のガス分析器の分析データに適合できるからである。費用のかかるガス流入手段、膜モジュール、および測定正確性を高めるための他の処置は考えなくてよい。なぜならキャリヤーガスは簡単に溶液に注入され、それによって安価なだけでなく、その単純さと堅牢性によって安定した方法がもたらされることが可能だからである。本発明は従ってその安定性によってだけでなく水溶液のCN濃度の連続判定によっても、従来技術に比べて抜きんでている。
【0008】
温度に応じて変化する補正値を考慮すると、CN濃度判定の簡単な処理条件がもたらされる。つまりこの方法には、現在の温度について適切な補正値が迅速に送られ、その結果少ない計算コストで正確な方法を保証することができる。
【0009】
キャリヤーガスを水溶液中に注入することで、CN化合物の気相への放散は改善可能である。
【0010】
水溶液に安定剤、例えばCuSuが添加されると、エネルギーの少ない状態への移行が阻止されることにより、方法の正確さが改善される。
【0011】
外乱の影響を防止できるようにするため、水溶液が気密に密閉された反応器内でキャリヤーガスに暴露されることが企図されてよい。それによってCN化合物の濃度の正確な判定が保証されるだけでなく、それによってガスセンサーへのキャリヤーガスの給送の構造的前提条件が単純化され、それにより安価な方法の実現が可能になる。
【0012】
水溶液のpH値が低下すると、有利にはキャリヤーガスによるCN化合物の放散が改善される。このような低下は、例えば塩酸を加えることでまたはキャリヤーガスの生成に炭酸を使用することで、例えばキャリヤーガスを水溶液に入れる前または同時に行われてよい。
【0013】
水溶液のpH値が4以下に調整された場合に、正確で再現可能な処理条件の観点から特に有利である。
【0014】
この方法を実施するための装置が提示され、この装置では反応器が水溶液の温度を測定する温度センサーを備え、この温度センサーは、CN化合物の濃度の判定の際に水溶液温度を追加的に考慮するために演算処理ユニットと接続されている。
【0015】
反応器は水溶液の温度を測定する温度センサーを備えており、この温度センサーが演算処理ユニットと接続されていると、この水溶液温度をCN化合物の濃度判定時に考慮することが簡単な方法で可能になり、これは方法の正確さに決定的であり得る。すなわち、全体の水溶液温度ではなくキャリヤーガスに暴露された水溶液の一部の温度が測定値補正のために特別な意味を与えられることが明らかである。したがって特に正確で安定した装置を作ることができる。さらに、費用のかかるガス流入手段、膜モジュールおよび他の処置を省略することができ、それによって簡単に操作可能で安価な装置を作ることができる。
【0016】
温度センサーが少なくともキャリヤーガスに暴露された水溶液の近傍に備えられると、正確な測定のための簡単な構造条件がもたらされる。このようにして、水溶液の別の場所にセンサーを備えて当該温度を費用をかけて分析することは回避できる。
【0017】
図では例として発明の対象が実施例に基づいて示されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による方法を実施するための装置の第一の実施例の模式図である。
【図2】水溶液温度に応じた補正値の変化を示した例である。
【図3】図1に示された装置に従って単純化した第二の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に例として示された、本発明による方法を実施するための装置は、反応器1を備え、この反応器内には水溶液2が入れられており、この水溶液には詳細には図示していないシアン化合物(CN化合物)が含まれている。この水溶液2中にキャリヤーガス3がノズル4を介して注入され、このノズルはキャリヤーガスライン5に備えられており、その結果円錐形の泡立ち6が生じ得る。キャリヤーガス3はキャリヤーガス容器7内に保存され、キャリヤーガス容器はキャリヤーガスライン5と詳細には図示していないバルブを介して接続されている。反応器1内に生じた排気8は、少なくとも一部が注入されたキャリヤーガス3を含み、ガス採取ライン9を介してガス分析器10に給送され、CN化合物水溶液2中の1つおよび/または複数のCN化合物の濃度を計算するためにガス分析器の分析データ11が演算処理ユニット12に提供される。有利な、特に反応が迅速な判定を行うため、この判定において反応器1内の水溶液2の温度を考慮することが、本発明に従って企図される。この目的を達するために、容器2内には温度センサー13が備えられ、この温度センサーの温度データ14が演算処理ユニット12に提供される。特に、この温度センサー13は、反応器1内でキャリヤーガスに暴露された溶液2の温度も測定できるように企図される。図1に従い、この温度センサー13は反応器1内でほとんど任意に配置されていてよいが、有利には、暴露された水溶液2の範囲内なら、一層正確な温度データ14をこの水溶液2の一部で測定することができる。温度データ14を使用して、一方においてはガス測定の連続的な結果が簡単な方法で適合ないし改善され、他方で現在の水溶液2中のCN化合物濃度が適合ないし改善され、その結果給送された水溶液2中で温度が比較的大きく変化した場合でも、高い精度の判定が可能になる。一般に、いずれのノズル4にも1つの専用の温度センサー14が配設されることも考えられ得る。これによって各ノズルによって暴露された水溶液2の温度が把握され、それによって精度がさらに改善されることができる(このことは図示されていない)。
【0020】
特にHCNガス分析器10は、HCNガスおよび/またはその濃度を、給送されたキャリヤーガス3中で測定するために特に有利であることが明らかであり、それによってHCNガスを水溶液から放散させる。ガス測定を改善するため、ガス採取ライン9内にガス冷却器15および場合によってはさらに選択フィルター16も備えていてよく、選択フィルターは例えばH2S、SO2、およびNOに作用し、ガス分析器10に与えられる障害を軽減する。場合によってはさらに、詳細には図示していない測定ガスポンプもガス分析器10の上流に備えられてよい。しかし、図3に従い、別法の実施例に示されたように、その全体を放棄してもよい。
【0021】
水溶液2の各温度t、tまたはtに応じて変化する補正値k、kまたはkが考慮される場合、簡単な計算手段がもたらされる。これは図2からよりよく読み取ることができる。こうして温度tの場合は補正値kが、補正値曲線17を使用して簡単に求められるかまたは読み取られ、これらの値は補正値曲線17を例えばE曲線として表示することができる。
【0022】
図1に示されたように、方法の精度を改善するために水溶液に反応器2内で安定剤18が入れられてよい(例えばCuSu)。有利には反応器1が気密に仕上げられて、障害を回避することができる。
【0023】
キャリヤーガス3を入れる前に、水溶液2のpH値が下げられる。そのために塩酸20が水溶液2に添加される。このことは図3に従いポンプ21の下流の導管内で、または図1に従い前処理容器19内で実施してよい。
【0024】
水溶液2が反応器1に給送される前に、水溶液2のpH値が4以下に調整されるかまたは制御されると、有利な処理条件がもたらされる。単純にするためにこの調整は詳細には図示していない。供給管19を反応器1と圧力接続するため、例えば供給ポンプ21が備えられていてよく、この供給ポンプを介して水溶液2の配量が制御されてよい。
【0025】
分析するべき水溶液2は、ポンプ21を使用して排水管22からバルブ23を通って取り出されてよく、その際水溶液2は分析後に反応器1からドレン管路25を通って排水管22へ特に無圧状態で送られてよい。
【0026】
懸濁物質が生じた場合に反応器1を洗浄することができるよう、演算処理ユニット12は、ドレンバルブ24を通って反応器1から少なくとも一部が排出され、こうしてドレン管路25を通って、さらに排水管22を通って排液することが可能である。
【0027】
発明に従い、反応が迅速な方法により、有毒の排水またはCN化合物を含む水溶液2を、汚染の前に接続された、詳細には図示していないシステムに留まらせることが可能になる。この目的を達するために、例えば排水管22内にバルブ27として形成された装置が備えられ、この装置は、水溶液2中の少なくとも1つのCN化合物の濃度の連続判定に応じて、排水を留めておくことができる。この目的を達するために制御管28が備えられ、これを使って演算処理ユニット12がバルブ27を操作することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 反応器
2 水溶液
3 キャリヤーガス
4 ノズル
5 キャリヤーガスライン
6 円錐形の泡立ち
7 キャリヤーガス容器
8 排気
9 ガス採取ライン
10 ガス分析器
11 分析データ
12 演算処理ユニット
13 温度センサー
14 温度データ
15 ガス冷却器
16 測定ガスポンプ
17 補正値曲線
18 安定剤
19 前処理容器
20 塩酸
21 供給ポンプ
22 排水管
23 バルブ
24 ドレンバルブ
25 ドレン管路
27 バルブ
28 制御管
補正値
補正値
補正値
温度
温度
温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液(2)中の少なくとも1つのCN化合物の濃度を連続判定する方法であって、前記水溶液にキャリヤーガス(3)、特に圧縮空気が注入され、前記注入されたキャリヤーガス(3)の少なくとも一部がガス分析器(10)、例えば、HCNガス分析器に給送され、該ガス分析器の分析データ(11)が前記水溶液(2)中のCN化合物の濃度を判定する際に考慮される方法において、CN化合物の濃度判定時に前記キャリヤーガス(3)に暴露された前記水溶液(2)の温度(t、tまたはt)が考慮されることを特徴とする方法。
【請求項2】
CN化合物の濃度の判定の際に前記温度(t、tまたはt)に応じて変化した補正値(k、kまたはk)が考慮されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリヤーガス(3)が注入されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液(2)に安定剤(18)が添加されることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液(2)が気密に密閉された前記反応器(1)内で前記キャリヤーガス(3)に暴露されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
特に酸を加えることで、前記水溶液(2)のpH値が下げられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液(2)のpH値が4以下に調整されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ガス分析器(10)、例えば、HCNガス分析器を備えた装置であって、水溶液(2)が入っている反応器(1)を備え、該反応器が、前記反応器(1)の前記水溶液(2)に通じている、キャリヤーガス(3)を入れるためのキャリヤーガスライン(5)と、前記反応器(1)の前記水溶液(2)の上に通じている、注入されたキャリヤーガス(3)を少なくとも部分的にガス分析器(10)へガス分析のために給送するためのガス採取ライン(9)とを備えており、水溶液(2)中の少なくとも1つのCN化合物の濃度を、ガス分析器(10)の分析データを考慮しながら連続判定するための、ガス分析器(10)と接続された演算処理ユニット(12)を備えている装置であって、前記反応器(1)が温度(t、tまたはt)を前記水溶液(2)で測定する温度センサー(13)を備え、前記水溶液(2)の温度(t、tまたはt)をCN化合物の濃度判定時に追加的に考慮するために該温度センサーと演算処理ユニット(12)が接続されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
前記温度センサー(13)が少なくともキャリヤーガス(3)に暴露された水溶液(2)の近傍に備えられていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−501225(P2013−501225A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523164(P2012−523164)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/AT2010/000282
【国際公開番号】WO2011/014898
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(512023247)フェスタルピネ シュタール ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】