説明

水濡れ検出シール、水濡れ検出装置およびこれを用いた電子機器

【課題】 電子機器の水濡れを確実に検出する。
【解決手段】 絶縁性の表面を有する基板101の一方の面を水濡れ検出領域とし、その表面に導電性パターン107を形成する。導電性パターン107の材料は、水分散性の導電材料とする。また、基板101上に、導電性パターン107から離間して設けられた第一の端子103と、導電性パターン107および第一の端子103から離間して設けられた第二の端子105とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水濡れ検出シール、水濡れ検出装置およびこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯型の電子機器における水濡れ検出の方法として、特許文献1に記載の技術が挙げられる。図15(a)および図15(b)は、特許文献1に記載の携帯電話端末用水没判定ラベルの構成を模式的に示す平面図である。図15(a)に示したように、このラベルは、プラスチックシート301上に赤色の水性インクで模様307が印刷された構成である。そして、水濡れ前(図15(a))と水濡れ後(図15(b))とで水濡れ検出シールが変色することを利用して、視覚による水濡れの検出がなされる。
【特許文献1】特開2003−283619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1に記載の技術のように、目視のみにより水濡れを検出する方法では、携帯端末の使用者が水濡れに気づかずに使用を継続した場合には、回路に電源が供給され続ける。このため、回路のショートなどが生じる懸念があった。
【0004】
また近年においては、携帯電話等の電子機器に保存するデータが多種多様化しており、データの保護がより重要となっているため、軽度の水濡れが生じてしまった場合等で、まだ携帯電話が故障するまでに至っていないときは、速やかに水濡れによる故障を防止するための対処が必要である。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子機器の水濡れを確実に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、絶縁性の表面を有する基材と、前記基材の前記表面に設けられた水濡れ検出領域と、前記水濡れ検出領域において前記表面に設けられた水分散性の導電性マークと、前記導電性マークから離間して設けられた第一の端子と、前記導電性マークと前記第一の端子とから離間して設けられた第二の端子と、を有することを特徴とする水濡れ検出シールが提供される。
【0007】
本発明の水濡れ検出シールにおいては、基材の絶縁性表面に水分散性の導電マークが設けられている。また、導電マークから離間して、二つの端子が設けられている。このため、水濡れ検出領域において、基材の表面が水に濡れると、水分散性の導電マークを構成している導電性材料が水中にしみ出して、水分散性の導電マークの平面形状が変化する。そして、水に濡れて互いに離間していた第一の端子と第二の端子との間が水により接続された際に、これらの端子間が、水中にしみ出した導電性材料により電気的に接続される。よって、水濡れを視覚的に検知することができるとともに、電気的な導通状態の変化として検知することができる。したがって、本発明の水濡れ検出シールを用いることにより、水濡れを確実に検知することができる。
【0008】
本発明の水濡れ検出シールにおいて、前記第一の端子と前記第二の端子とから離間して配置された複数の前記導電性マークを有する構成とすることができる。こうすることにより、水濡れ検出領域が水濡れした際に、水分散性の導電性マークの平面形状の変化の視認性を向上させることができる。また、第一の端子と第二の端子との間をさらに確実に電気的に導通させることができる。
【0009】
本発明の水濡れ検出シールにおいて、略同一形状の複数の前記導電性マークが前記表面に格子状に配置されていてもよい。こうすることにより、さらに確実に水濡れを検知することができる。
【0010】
本発明の水濡れ検出シールにおいて、前記水濡れ検出領域の外周部に、前記第一の端子と前記第二の端子とが対向して設けられていてもよい。こうすれば、水濡れ検出領域が水濡れした際に、第一の端子と第二の端子との間をさらに確実に導通させることができる。
【0011】
本発明の水濡れ検出シールにおいて、前記基材がシート状であり、前記第一の端子および前記第二の端子が、前記基材の前記表面から裏面にわたって設けられていてもよい。こうすれば、第一の端子と第二の端子との間の電気的な導通をシート状の基材の裏面から検出することが可能な構成とすることができる。
【0012】
本発明によれば、絶縁性の表面を有する基材と、前記基材の前記表面に設けられた水濡れ検出領域と、前記水濡れ検出領域において前記表面に設けられた水分散性の導電性マークと、前記導電性マークから離間して設けられた第一の端子と、前記導電性マークと前記第一の端子とから離間して設けられた第二の端子と、前記第一の端子と前記第二の端子との間の電気的な導通状態を検知する検知手段と、を有することを特徴とする水濡れ検出装置が提供される。
【0013】
この構成によれば、水濡れの際に、水濡れ検出領域における水分散性の導電性マークの形状変化を視覚的に検知することができるとともに、検出手段において電気的な導通状態の変化として検知することができる。したがって、簡素な構成で確実に水濡れを検知することができる。
【0014】
本発明の水濡れ検出装置において、前記検知手段は、前記第一の端子と前記第二の端子との間の抵抗値を検出する検出回路を有する構成とすることができる。こうすることにより、第一の端子と第二の端子との間が水濡れにより導通したことを端子間の抵抗値の変化として確実に検出することができる。このため、水濡れ検出領域における水濡れを電気的にさらに確実に検知することができる。
【0015】
本発明の水濡れ検出装置において、前記検出回路はホイーストンブリッジを含み、前記第一の端子と前記第二の端子との間が導通している状態で前記ホイーストンブリッジが非平衡状態となるように構成されてもよい。こうすることにより、水濡れ検出領域における水濡れを抵抗値の変化として確実に検知することができる。なお、本明細書において、ホイーストンブリッジが非平衡状態にあるとは、ホイーストンブリッジを構成する4つの抵抗R1、R2、R3、およびR4の間にR1/R2=R3/R4の関係が成立せず、検流器に電流が流れる状態をいう。また、ホイーストンブリッジが平衡状態にあるとは、これらの抵抗の間にR1/R2=R3/R4の関係が成り立ち、検流器に電流が流れていない状態をいう。
【0016】
本発明によれば、前記水濡れ検出装置を有することを特徴とする電子機器が提供される。本発明の電子機器は、上述した構成の水濡れ検出装置を有するため、水濡れを確実に検知することが可能であり、安全性に優れた構成となっている。
【0017】
本発明の電子機器において、前記検知手段で検知された前記導通状態に基づいて当該電気機器の電源の供給状態を調節する電源調節手段を有することができる。こうすれば、水濡れ時に水濡れを視覚的に検知するとともに、電気的に検知して回路への電源供給を停止することが可能となる。このため、回路のショート等の発生を抑制することができる。
【0018】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【0019】
たとえば、本発明において、前記水濡れ検出領域が略矩形の領域であり、前記第一の端子と前記第二の端子とが、それぞれ前記略矩形の対向する辺の近傍に設けられている構成とすることができる。
【0020】
また、本発明において、前記導電性マークが正方格子状に配置されている構成とすることができる。また、本発明において、前記導電性マークが千鳥格子等の斜格子状に配置されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、絶縁性の表面を有する基材の表面に、水分散性の導電性マークと、導電性マークから離間して設けられた第一の端子と、導電性マークと第一の端子とから離間して設けられた第二の端子とを設けることにより、電子機器の水濡れを確実に検出する技術が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、共通する構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0023】
(第一の実施形態)
本実施形態は、水濡れ検出シールに関する。図1(a)および図1(b)は、本実施形態に係る水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。図1(a)は、水濡れ検出シール100の水濡れ検出領域の形成面を示す。また、図1(b)は、水濡れ検出シール100の裏面を示す。
【0024】
水濡れ検出シール100は、絶縁性の表面を有する基板101、基板101の一方の面に設けられ、複数の導電性パターン107が千鳥格子状に配置されている水濡れ検出領域、導電性パターン107から離間して設けられた第一の端子103、および導電性パターン107および第一の端子103から離間して設けられた第二の端子105を有する。
【0025】
基板101の材料は、たとえばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等の絶縁性の樹脂材料とする。基板101の平面形状は、たとえば一辺の長さが3〜10mm程度の矩形とする。さらに具体的には、基板101を一辺5mmの正方形とする。なお、基材は透明な材料であっても不透明な材料であってもよい。
【0026】
導電性パターン107は、水分散性の導電性材料からなる。このような材料として、水溶性または水分散性の電着塗装用の導電性塗料等を用いることができる。また、導電性パターン107は、基板101の表面と異なる色の塗料とする。これにより、水濡れを確実に検知することができる。複数の導電性パターン107は同一形状である。導電性パターン107の形状は、たとえば直径が0.5〜2mm程度の円形とする。導電性パターン107は、たとえば基板101の一方の面に水分散性の導電性塗料を印刷することにより形成される。
【0027】
第一の端子103および第二の端子105は、基板101の対向する辺に沿って設けられている。これらの端子はいずれも、平板状の導電材料で構成されている。第一の端子103および第二の端子105はいずれも基板101の一方の面から他方の面にわたって設けられている。第一の端子103および第二の端子105の材料は、導電材料であり、たとえば銅や金等の金属または合金とする。
【0028】
また、基板101の裏面には、シール127が設けられている。シール127はたとえばシート状の両面接着剤とする。水濡れ検出シール100は、シール127により水濡れ検出対象となる電子機器の所定の位置に貼付される。
【0029】
図1(a)および図1(b)に示した水濡れ検出シール100は、以下のようにして製造される。基板101の両面を一枚の金属板で挟持し、第一の端子103とする。第一の端子103は、矩形の基板101の一つの辺に沿って設ける。同様にして、第一の端子103と対向する第二の端子105を設ける。そして、基板101上に水分散性の導電性塗料を塗布し、第一の端子103および第二の端子105から離間して複数の導電性パターン107を図示した平面配置となるように形成し、水濡れ検出領域とする。そして、基板101の導電性パターン107形成面と反対側の面にシール127を貼付する。
【0030】
次に、水濡れ検出シール100を用いた水濡れ検出方法を説明する。
前述した図1(a)は、水濡れ検出シール100の導電性パターン107の形成面が水に濡れていない状態を示す。また、図3は、水濡れ検出シール100の導電性パターン107の形成面が水に濡れた状態を示す。また、図2(a)および図2(b)は、それぞれ、図1(a)および図3における第一の端子103と第二の端子105との間の電気的導通状態を示す図である。
【0031】
図1(a)および図2(a)に示したように、水濡れ検出シール100の導電性パターン107の形成面が水に濡れていないときは、第一の端子103と第二の端子105との間が導通していない。
【0032】
一方、図3および図2(b)に示したように、水濡れ検出シール100の導電性パターン107の形成面が水に濡れると、導電性パターン107の形成面に水濡れ領域109が広がる。導電性パターン107は水分散性を有する部材であるため、その表面が水に濡れると導電性パターン107の材料がしみ出す。これにより、水濡れ領域109全体に導電性パターン107が分散する。そして、第一の端子103と水濡れ領域109との間が水濡れ領域109により接続されると、水濡れ領域109中に分散している導電性パターン107の材料により、第一の端子103と第二の端子105との間が導通する。こうした端子間の導通状態は、たとえば基板101の裏面から第一の端子103および第二の端子105を後述する検出回路に接続することにより検出される。
【0033】
特許文献1を参照して前述したように、従来は水濡れの検出を視覚のみに頼っていた。これに対し、図1(a)および図1(b)に示した水濡れ検出シール100では、水濡れにより水濡れ検出領域の導電性パターン107の形状が変化するとともに、第一の端子103と第二の端子105との間の導通状態、具体的には抵抗値が変化する。このため、水濡れ検出シール100は、簡素な構成で視覚的かつ電気的に水濡れを検知することができる。よって、水濡れ検出シール100を所定の電子機器に貼付すれば、電子機器の水濡れを確実に検知することができる。
【0034】
また、水濡れ検出シール100においては、複数の導電性パターン107の配置が千鳥格子状であるため、基板101の表面が水濡れした際に、水濡れ領域109中に確実に導電性パターン107の材料が分散する構成となっている。また、水濡れ検出シール100では、基板101の対向する二辺について、辺全体にわたって第一の端子103および第二の端子105が設けられている。このため、基板101が水濡れした際に、これを確実に検知できる構成となっている。
【0035】
なお、図1(a)に示した水濡れ検出シール100においては、矩形の基板101の一方の面に導電性パターン107が千鳥格子状に配置されている構成を例示したが、基板101の形状や、導電性パターン107、第一の端子103および第二の端子105の形状および平面配置は他の態様とすることもできる。
【0036】
図4〜図8は、水濡れ検出シールの他の構成の例を示す図である。
図4は、図1(a)において、複数の導電性パターン107が正方格子状に配置された構成となっている。また、導電性パターン107の配置は、千鳥以外の斜格子状としてもよい。
【0037】
図5は、図1(a)において、第二の端子105および第一の端子103が基板101を貫通する構成とした例である。この構成においても、第一の端子103および第二の端子105が基板101の両面にわたっているため、基板101の裏面から端子間の導通状態を検知することができる。
【0038】
また、図6は、円形の導電性パターン107に代えてストライプ状の導電性パターン107を設けた構成である。同一形状の複数の導電性パターン107が第一の端子103および第二の端子105に平行に配置されている。水玉模様の導電性パターン107に代えて図6に示した構成を採用する場合にも、導電性パターン107の形成面における水濡れを視覚的および電気的に検出することができる。
【0039】
また、図7では、円形の基板101の中心と同心の複数の円環状の導電性パターン107を配置し、基板101の外周縁に沿って円弧状の第一の端子103および第二の端子105を設けた構成となっている。図7に示した構成においても、図1(a)に示した構成と同様の効果が得られる。また、基板101を円盤状とすることにより、水濡れ検出シール100の小型化が可能となる。
【0040】
また、図4〜図7では、基板101上に複数の導電性パターン107が設けられている構成を例示したが、導電性パターン107を一つ設ける構成とすることもできる。図8は、一つの導電性パターン107が設けられている水濡れ検出シールを示す平面図である。図8に示した水濡れ検出シールにおいて、基板101、第一の端子103および第二の端子105の構成は、図7に示した水濡れ検出シールと同様である。
【0041】
(第二の実施形態)
本実施形態は、第一の実施形態に記載の水濡れ検出シールを用いた水濡れ検出装置に関する。以下、図1に示した水濡れ検出シール100を用いる場合を例に説明する。
【0042】
図9は、本実施形態に係る水濡れ検出装置の構成を示す図である。図9に示した水濡れ検出装置110は、ホイーストンブリッジを利用した水濡れ検出装置である。
【0043】
水濡れ検出装置110は、抵抗部115a、抵抗部115b、抵抗部115c、および抵抗部115dを有し、これらがこの順に電気的に環状に接続されている。抵抗部115a〜抵抗部115dは、それぞれ第一抵抗117a〜第一抵抗117dを有し、水濡れしていない状態で抵抗部115a〜抵抗部115dが平衡状態となるように第一抵抗117a〜第一抵抗117dが設計されている。
【0044】
また、抵抗部115aには、第二抵抗119aと水濡れ検出シール100aとの直列接続が第一抵抗117aと並列接続されている。抵抗部115b〜抵抗部115dについても同様に、それぞれ、第二抵抗119b〜119dと水濡れ検出シール100b〜100dとの直列接続がそれぞれ第一抵抗117b〜第一抵抗117dと並列接続されている。
【0045】
水濡れ検出シール100a〜水濡れ検出シール100dの構成は、いずれも図1(a)および図1(b)に示した水濡れ検出シール100の構成とする。水濡れ検出シール100a〜水濡れ検出シール100dが水濡れしていない状態では、これらの水濡れ検出シールの端子間が導通していない。抵抗部115a〜抵抗部115dは、それぞれ水濡れ検出シール100a〜水濡れ検出シール100dの水濡れ状態に応じて、それぞれ第一抵抗117aおよび第二抵抗119a〜第一抵抗117dおよび第二抵抗119dの組み合わせが切り替わることにより、水濡れの際にはホイーストンブリッジ回路の平衡が崩れ、抵抗値が変化する構成となっている。
【0046】
また、抵抗部115aおよび抵抗部115bを接続する領域と、抵抗部115cおよび抵抗部115dを接続する領域とが電気的に接続され、その経路中に検流器116が設けられている。検流器116は、スイッチ113を介してメイン回路112に接続されている。メイン回路112は、たとえば水濡れ検出装置110が搭載される機器のCPU中に設けることができる。
【0047】
また、抵抗部115aおよび抵抗部115dを接続する領域と、抵抗部115bおよび抵抗部115cを接続する領域とが電気的に接続され、その経路に電池111が設けられている。電池111は、たとえば水濡れ検出装置110が用いられる電気機器に搭載されている電池とすることができる。また、抵抗部115aおよび抵抗部115dを接続する領域と、抵抗部115bおよび抵抗部115cを接続する領域との接続経路は、スイッチ113を介してメイン回路112に接続されている。また、抵抗部115aおよび抵抗部115dを接続する領域と、抵抗部115bおよび抵抗部115cを接続する領域との接続経路は接地されている。
【0048】
次に、図9に示した水濡れ検出装置110の動作を説明する。
水濡れ検出装置110は、抵抗の平衡が崩れると電流が流れるホイーストンブリッジの仕組みを利用して、抵抗部115a〜抵抗部115dの抵抗値の変化を検流器116で検知する。
【0049】
図10は、検流器116の動作を説明する図である。図10に示したように、検流器116は、電流を検出しているときにはスイッチ113に所定の低出力値「L」を出力する。また、検流器116は、電流を検出していないときにはスイッチ113に所定の高出力値「H」を出力する。
【0050】
また、図11は、スイッチ113の動作を説明する図である。図9および図11に示したように、スイッチ113は制御端子を有し、制御端子に検流器116から「H」が入力されるとオン状態となり、端子間を接続する。また、制御端子に検流器116から「L」が入力されるとオフ状態となり、端子間の接続を遮断する。
【0051】
図9に示した水濡れ検出装置110は、ホイーストンブリッジを利用しているため、水濡れ検出シール100a〜水濡れ検出シール100dが水濡れしていない状態では、前述したように抵抗部115a〜抵抗部115dが平衡状態となっている。このとき、検流器116では電流が検出されないため、スイッチ113はオン状態である。
【0052】
一方、水濡れ検出シール100a〜水濡れ検出シール100dのいずれかが水濡れし、端子間が導通した場合、水濡れした水濡れ検出シールが設けられた抵抗部において、第二抵抗から水濡れ検出シールの側も電気的に導通することになる。このため、水濡れした抵抗部の抵抗値が変化する。これにより、ホイーストンブリッジの平衡が崩れ、検流器116に電流が流れる。このとき、検流器116はスイッチ113の制御端子に「L」を出力し、スイッチ113がオフ状態となる。スイッチ113がオフ状態になると、メイン回路112への電池111からの電源供給が遮断される。
【0053】
水濡れ検出装置110は、以上の構成および動作により、水濡れ検出シール100a〜水濡れ検出シール100dの少なくとも一つがある抵抗値を持って導通することにより、ホイーストンブリッジの平衡状態が崩れ、この抵抗値の変化を検流器116にて検知することにより、水濡れ検出シール100a〜水濡れ検出シール100dにおける水濡れの有無を検知することができる。このため、水濡れの有無に応じて抵抗部115a〜抵抗部115dの抵抗値を変化する構成となっている。また、水濡れ検出シール100を観察することにより、どの検出シールが水濡れしたかを特定することができる。
【0054】
また、水濡れ検出装置110では、検流器116で電流が検知されるとメイン回路112への電池111の供給が遮断される。水濡れ検出シール100a〜水濡れ検出シール100dの水濡れに連動して直ちにメイン回路112への電源供給が遮断される構成であるため、メイン回路112がショートなどにより電気的に破壊されることを抑制することができる。
【0055】
また、水濡れ検出装置110では、4つの水濡れ検出シール100を用いるため、水濡れ検出対象の電子機器の複数の箇所に水濡れ検出シール100を設けることができる。このため、電子機器の水濡れを確実に検知し、その位置を特定することができる。また、4つの水濡れ検出シール100に対して必要な検出回路は1つであるため、装置構成を簡素化し、実装面積を削減することができる。
【0056】
(第三の実施形態)
本実施形態は、第一の実施形態に記載の水濡れ検出シールを用いた別の水濡れ検出装置に関する。以下、図1(a)および図1(b)に示した水濡れ検出シール100を用いる場合を例に説明する。
【0057】
図12は、本実施形態に係る水濡れ検出装置120の構成を示す図である。図12に示した水濡れ検出装置120は、電池111、メイン回路112、スイッチ113、水濡れ検出シール100、電源121、抵抗123および抵抗125を有する。水濡れ検出装置120において、電池111、スイッチ113およびメイン回路112がこの順に直列接続されている。また、スイッチ113には、抵抗123および電源121がこの順に直列接続されている。また、抵抗123とスイッチ113との接続領域には、水濡れ検出シール100および抵抗125がこの順に接続されている。抵抗125は接地されている。
【0058】
本実施形態においても、スイッチ113の動作は第一の実施形態の場合(図11)と同様である。スイッチ113の制御端子に「H」が入力されるとオン状態となり、「L」が入力されるとオフ状態となる。
【0059】
水濡れ検出装置120において、水濡れ検出シール100が水に濡れていない状態では、水濡れ検出シール100の第一の端子103(図12では不図示)と第二の端子105(図12では不図示)との間が導通していない。このとき、スイッチ113の制御端子は電源121でプルアップされているのでオン状態となり電池111からメイン回路112に電源が供給される。一方、水濡れ検出シール100が水に濡れて第一の端子103と第二の端子105との間が導通した場合には、水濡れ検出シール100において抵抗が生じるため、GND(グラウンド)へプルダウンされる。これにより、スイッチ113の制御端子に「L」が入力されて、電池111からメイン回路112への電源供給が停止される。
【0060】
このように、図12に示した水濡れ検出装置120においても、第二の実施形態に記載の水濡れ検出装置110の場合と同様に、水濡れ検出シール100の電気的導通状態を抵抗値の変化として検出することができる。そして、水濡れの検出とともにメイン回路112への電源供給を停止することができる。
【0061】
また、水濡れ検出装置120は、第二の実施形態に記載の水濡れ検出装置110(図9)を実装するための充分な面積の確保が困難である場合にも実装可能であり、さらに簡素な構成で水濡れを検出することができる。
【0062】
以上の実施形態に記載の水濡れ検出装置は、たとえば携帯電話、携帯型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、各種カメラ等のデータ保存機能を有する電子機器に好適に用いることができる。
【0063】
(第四の実施形態)
本実施形態は、以上の実施形態に記載の水濡れ検出装置を実装した電子機器に関する。以下、図1に示した構成の水濡れ検出シール100が第三の実施形態に記載の水濡れ検出装置120に適用されている場合を例に説明する。また、本実施形態においては、電子機器が携帯電話である場合を例に説明する。
【0064】
図13および図14は、本実施形態に係る携帯電話の構成を模式的に示す斜視図である。図13および図14は折り畳み式の携帯電話200の開状態を示す図である。また、図14は、図13の分解斜視図である。
【0065】
図13および図14に示した携帯電話200において、操作部201は、浅底の箱状に形成されたアッパーケース204とロアーケース205からなる。操作部201はプリント配線基板214を内包する。アッパーケース204には所定の数の機能ボタン219およびダイヤルボタン218が設けられている。
【0066】
操作部201にヒンジ部203を介して開閉自在な表示部202は、操作部201と同様にアッパーケース206とロアーケース207からなる。表示部202は、プリント配線基板215を内包し、アッパーケース206には画面220が設けられている。
【0067】
プリント配線基板214とプリント配線基板215とは、フレキシブル基板216により接続されている。ヒンジ部203は操作部201のアッパーケース204に設けられたヒンジ筒208と半ヒンジ筒209と、ロアーケース205に設けられた半ヒンジ筒210と、表示部202のアッパーケース206に設けられたヒンジ筒211と半ヒンジ筒212と、ロアーケース207に設けられた半ヒンジ筒213によって構成されるヒンジ筒に、ヒンジユニット217が組み込まれることにより構成される。
【0068】
ヒンジ部203においては、ヒンジ筒208、ヒンジ筒211、半ヒンジ筒209、半ヒンジ筒210、半ヒンジ筒212および半ヒンジ筒213の間から内部へ水等の液体が侵入することがある。そこで、プリント配線基板214には、液体の浸入経路付近に水濡れ検出シール100が設けられている。また、プリント配線基板215には、液体の浸入経路付近に水濡れ検出シール100が設けられている。これらの水濡れ検出シール100は、それぞれ図12を用いて前述した構成の検出回路に接続している。ここで、メイン回路112は、携帯電話200のCPU(不図示)であり、電池111はロアーケース内に収容されている電池(不図示)である。
【0069】
携帯電話200のヒンジ部203に液体が浸入すると、水滴中に導電性パターン107の材料が分散し、水濡れ検出シール100の第一の端子103(図14では不図示)と第二の端子105(図14では不図示)との間が導通する。このため、電池111から携帯電話200のCPU(不図示)への電源の供給が遮断される。
【0070】
携帯電話200では、水濡れ検出シール100の第一の端子103と第二の端子105との導通状態を検出し、検出された導通状態に基づいてCPU(不図示)への電源の供給を遮断することが可能となっている。このため、CPUをショート等から保護することができる。よって、水濡れによる故障等の発生を抑制することができる。また、水濡れ検出シール100を複数、ここでは2つ設けているため、後日携帯電話200の水濡れ箇所を目視により特定することができる。
【0071】
なお、以上においては、携帯電話200のヒンジ部203の近傍に水濡れ検出シール100を設ける構成を例示したが、水濡れ検出シール100を設ける位置に特に制限はなく、たとえば、ロアーケース205の表面等に設けることもできる。また、水濡れ検出シール100を用いた検出回路の構成を図9に示した水濡れ検出装置110としてもよい。このとき、携帯電話200の所定の4カ所に水濡れ検出シール100を設ければ、ホイーストンブリッジを用いて水濡れの有無の検出および水濡れ箇所の特定が可能となる。たとえば、プリント配線基板214およびプリント配線基板215のそれぞれに二つずつ水濡れ検出シール100を設け、四つの水濡れ検出シール100を図9に示した構成となるように接続してもよい。
【0072】
また、携帯電話200において、CPU(不図示)は、水濡れが生じた際にその瞬間や日時等の情報を記憶部に記憶させてもよい。また、水濡れが生じた際に、警報として画面220に水濡れが生じたことを表示したり、光や音によりアラームを出力したりする構成としてもよい。
【0073】
携帯電話200が記憶部を有する構成とすることにより、記憶部に記憶された内容を読み出して、水濡れが生じたか否か、水濡れがいつ生じたかを確認できる。従って、故障した携帯電話200が修理のために販売店の窓口等に持ち込まれたときに、故障が水濡れによるものか否か、使用者の責任によるものか販売前の水濡れによるメーカ側の責任によるものか等の判定が可能となる。
【0074】
なお、携帯電話200に記憶部を設けて水濡れに関する情報を記憶したり、アラームを発生させたりする場合には、水濡れ情報を記憶部へ記憶でき、携帯電話200の使用者がアラームを認識できる程度の時間を経過してからメイン回路112への電源供給を停止する構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施の形態に係る水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。
【図2】実施の形態に係る水濡れ検出シールの構成を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。
【図4】実施の形態に係る水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。
【図5】実施の形態に係る水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。
【図6】実施の形態に係る水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。
【図7】実施の形態に係る水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。
【図8】実施の形態に係る水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。
【図9】実施の形態に係る水濡れ検出装置の構成を模式的に示す図である。
【図10】実施の形態に係る水濡れ検出装置の検流器の動作を説明する図である。
【図11】実施の形態に係る水濡れ検出装置のスイッチの動作を説明する図である。
【図12】実施の形態に係る水濡れ検出装置の構成を模式的に示す図である。
【図13】実施の形態に係る携帯電話の構成を模式的に示す斜視図である。
【図14】実施の形態に係る携帯電話の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【図15】従来の水濡れ検出シールの構成を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0076】
100 水濡れ検出シール
100a 水濡れ検出シール
100d 水濡れ検出シール
100c 水濡れ検出シール
100d 水濡れ検出シール
101 基板
103 第一の端子
105 第二の端子
107 導電性パターン
109 水濡れ領域
110 水濡れ検出装置
111 電池
112 メイン回路
113 スイッチ
115a 抵抗部
115b 抵抗部
115c 抵抗部
115d 抵抗部
116 検流器
117a 第一抵抗
117b 第一抵抗
117c 第一抵抗
117d 第一抵抗
119a 第二抵抗
119b 第二抵抗
119c 第二抵抗
119d 第二抵抗
120 水濡れ検出装置
121 電源
123 抵抗
125 抵抗
127 シール
200 携帯電話
201 操作部
202 表示部
203 ヒンジ部
204 アッパーケース
205 ロアーケース
206 アッパーケース
207 ロアーケース
208 ヒンジ筒
209 半ヒンジ筒
210 半ヒンジ筒
211 ヒンジ筒
212 半ヒンジ筒
213 半ヒンジ筒
214 プリント配線基板
215 プリント配線基板
216 フレキシブル基板
217 ヒンジユニット
218 ダイヤルボタン
219 機能ボタン
220 画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の表面を有する基材と、
前記基材の前記表面に設けられた水濡れ検出領域と、
前記水濡れ検出領域において前記表面に設けられた水分散性の導電性マークと、
前記導電性マークから離間して設けられた第一の端子と、
前記導電性マークと前記第一の端子とから離間して設けられた第二の端子と、
を有することを特徴とする水濡れ検出シール。
【請求項2】
請求項1に記載の水濡れ検出シールにおいて、
前記第一の端子と前記第二の端子とから離間して配置された複数の前記導電性マークを有することを特徴とする水濡れ検出シール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水濡れ検出シールにおいて、略同一形状の複数の前記導電性マークが前記表面に格子状に配置されていることを特徴とする水濡れ検出シール。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の水濡れ検出シールにおいて、前記水濡れ検出領域の外周部に、前記第一の端子と前記第二の端子とが対向して設けられていることを特徴とする水濡れ検出シール。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の水濡れ検出シールにおいて、前記基材がシート状であり、前記第一の端子および前記第二の端子が、前記基材の前記表面から裏面にわたって設けられていることを特徴とする水濡れ検出シール。
【請求項6】
絶縁性の表面を有する基材と、
前記基材の前記表面に設けられた水濡れ検出領域と、
前記水濡れ検出領域において前記表面に設けられた水分散性の導電性マークと、
前記導電性マークから離間して設けられた第一の端子と、
前記導電性マークと前記第一の端子とから離間して設けられた第二の端子と、
前記第一の端子と前記第二の端子との間の電気的な導通状態を検知する検知手段と、
を有することを特徴とする水濡れ検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水濡れ検出装置において、前記検知手段は、前記第一の端子と前記第二の端子との間の抵抗値を検出する検出回路を有することを特徴とする水濡れ検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の水濡れ検出装置において、前記検出回路はホイーストンブリッジを含み、前記第一の端子と前記第二の端子との間が導通している状態で前記ホイーストンブリッジが非平衡状態となるように構成されたことを特徴とする水濡れ検出装置。
【請求項9】
請求項6乃至8いずれかに記載の水濡れ検出装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電子機器において、前記検知手段で検知された前記導通状態に基づいて当該電気機器の電源の供給状態を調節する電源調節手段を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−53110(P2006−53110A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236541(P2004−236541)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】