説明

水産物干物製造キット

【課題】 水産物干物の製造には原材料の調達から干すまで多段階の工程を要し、特に原材料の選択や調味料の添加、ならびに干し具への調味料添加済みの水産物の装填等は容易に解決できる工程ではないため干物製造初心者への普及は低位であった。
【解決手段】 原材料の選定から干し具への調味料添加済み水産物の装填まで初心者にとって課題であった工程を施為した原材料と原材料に相応しい調味料ならびに干し具をセットにしてキット商品化することにより、初心者は最終の干す工程のみで容易に干物製造を楽しむことができる。この干す工程も概に干し糸が調味料添加済みの水産物に装填されているので干し具に干し糸を装着するのみと簡便である。また、セットに付属の調味料を用い喫食者の嗜好に応じて食味を添加できるので、消費者の創作欲求への呼応も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産物干物を容易にまた簡便に製造するため調味料添加済み水産物、調味料、干し具をセットにしたキット商品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水産物干物の製造には、原材料・調味料・干し具の調達とともに原材料下処理、調味料の調合・添加、干し具への装填等、経験知や技能または多段階の工程や時間を要する。こうしたことから、水産物干物製造の初心者にとって干物製造は容易ではなく普及していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-176645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水産物干物製造の初心者は、干物加工に相応しい原材料の選定・購入、原材料の特徴に応じた調味料の選択・調合・添加、ならびに干し具への適切な原材料の装填等に関する技術や知識の情報を有していない。こうした初心者が容易にまた簡便に水産物干物の製造ができるよう、製造に関する経験知や技能を有する経験者の助言に基づいて加工した調味料添加済みの水産物を提供することで、製造の難易度の軽減を図り解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
原材料の選定・購入は、産地や旬及び漁法を鑑みつつ原材料の大きさや脂の乗り具合等が干物に適しているかの峻別を要することから、肝要である。また、調味料の選択と調合ならびに添加は、原材料固有の特性を考慮し風味を引き出すための適正量の使用や施為を要求されるが、これらは専業者の経験知に依るところは無論、原材料の持ち味の生殺を左右する側面より重要な工程である。
【0006】
さらに原材料の下処理や整形及び干し具への装填は、原材料の種別や大きさまたは形状に相応しい姿容が食指の湧沈を左右することから細心の技能を要する。
【0007】
最終の干す工程は、食感や保存性を考慮し干す場所や干す時間を調整しなければならないが喫食者の嗜好に応じる柔軟性の確保も肝要であることから、その工程には喫食者の手に委ねる等の多様性が求められる。
【0008】
水産物干物製造は前記のとおり、専業者の経験や技能等の暗黙知に依るところが多分であり、初心者とっては一朝一夕で習得できる作業とは言い難い。また、水産物干物を製造しようとする消費者としては個々の嗜好に合った干物を食したいとする欲求があるものの、嗜好に符合した水産物が簡便に入手できるとは限らない。さらに下処理となると、出刃包丁やまな板等の調理道具の有無や作業時間の確保等の制約が、制作意欲の減退要因ともなりかねない。
【0009】
一方、消費者の生活様式が多様化する現代社会においては、消費者自らの創作による料理や新たな料理に挑戦しようとする欲求も旺盛で、水産物干物製造もその対象である。しかしながら前項のとおり夫々の制約や知覚として習得することが容易でない経験知に依拠した製造は、消費者の欲求を平易に充足せしめがたく障壁となっている。
【0010】
こうした障壁を緩和することと消費者の創作欲求への呼応を目的とした本発明は、専業者の経験知に基づいて加工された調味料添加済みの原材料と喫食者の嗜好を原材料に添加するための調味料ならびに調味料添加済みの原材料を干し具に装填した形態で構成される。
【0011】
原材料は、専業者が対象水産物の特性や固有の特徴を考慮、経験知に基づいて濃度5%〜30%の塩水に20分ないし60分投下した後水洗いし図1の形態で干し糸に装填する。干し具に装填された調味料添加済みの原材料はその大きさや形状と干した時の姿容を考慮し、適切な数量を図2の通り真空包装する。
【0012】
商品購入者は、真空包装された調味料添加済みの原材料を包装袋より取出し、7干し具に8干し糸の両端を装着後、天日干しする。また、同梱の塩や胡麻は、購入者の嗜好に応じ添加することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、水産物干物製造の初心者にとって障壁であり困難であった原材料の選定や選別、また調味料の選択や添加、さらに干し糸・干し具への装填等の作業を専業者が経験知に基づき原材料に予め施しているので、初心者は水産物干物製造に係る太宗の工程から解放されることが可能であり、以て容易に干物製造を楽しむことができる。
【0014】
また、商品には原材料の特性に応じた塩や胡麻等の調味料が同梱されており、喫食者の嗜好に応じた味付けも可能となることから初心者でも創作意欲の充足感を得られる。こうしたことより、水産物干物製造への関心を誘発し水産物市場の拡大に寄与できるとともに魚離れの解消や魚食普及の一役を担うことに期待が寄せられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】干し糸に原材料を装填した状態である。
【図2】真空包装された調味料添加済みの原材料である。
【図3】ハンガータイプの干し具と干し糸である。
【図4】干し糸に装填された原材料が干し具に装着された状態である。
【符号の説明】
【0016】
1 原材料(アカシタビラメ)
2 口
3 鰓
4 干し糸
5 包装袋
6 フック部
7 干し具
8 干し糸
9 係止部
10 環状部
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で対象とする水産物は、魚類、貝類、藻類等の水生生物のうち食材・食品になるものである。本願では魚類であるアカシタビラメを例に本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0018】
原材料は、内臓・鱗の除去等の下処理を施為し、塩・みりん・酒・胡麻等の調味料で調合したつけ汁に投下、風味を浸透・添加させた後水洗いし、干し糸に装填する。本例の場合、20%濃度の塩水に30分間の投下が適当である。
【0019】
干し糸は、干した時に華麗な姿容が保持されるよう、原材料の種類や大きさまた丸か切り身か等を勘案し最適な手法で装填する。本例の場合は、3鰓より挿入し1口より抜出する手法を用いる。また、干し糸に装填する原材料の数量は、原材料の大きさ、重量より判断する。
【0020】
干し糸に装填された調味料添加済みの原材料は、5包装袋に図2の形態で真空包装する。
【0021】
本商品は、前項の原材料と塩や胡麻の調味料と干し具が同梱された形態で構成されている。購入者は、調味料添加済みの水産物を包装袋より取り出し、購入者の食味嗜好で調味料を適宜添加する。添加の方法は、塗しが適当である。
【0022】
7干し具は、物干し竿に吊下げ天日干しが簡便にできるようハンガータイプとし、上部の6フック部は、物干し竿の直径に見合った形状になっている。また、8干し糸は干し具の9係止部に係止めできるよう両端が10環状構造となっている。なお、干し糸の全長は、干し具の係止部間の距離より短くしている。これは、原材料を装填した干し糸が干し具の復元力を応用して突っ張るよう考慮しているからである。
【0023】
購入者は、原材料が装填されている干し糸の両端の環状部を干し具の係止部にそれぞれ係止めし、物干し竿等に吊下げて天日干しする。天日干しの時間は、食感等の購入者嗜好や保存性確保の必要度に依拠するが、アカシタビラメの場合、概ね半日〜3日である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調味料を添加し真空包装されたことを特徴とする干物製造用水産物。
【請求項2】
前記干物製造用水産物に干し具へ装着するための干し糸が装填されている ことを特徴とする請求項1に記載の干物製造用水産物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の干物製造用水産物と食味を加増するための調味料と干し具を有することを特徴とする水産物干物製造キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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