説明

水産系廃棄物又は汚泥による脱カドミウム生成物の製造方法

【課題】カドミウムが取り除かれた均質な乾燥粉体生成物を得る水産系廃棄物又は、汚泥による脱カドミウム生成物の製造方法を提供する。
【解決手段】水産系廃棄物を予めカッターによりペースト状に処理し所定量に計量した水産系残滓原料又は汚泥に、すでに製品化されている乾燥粉体生成物の所定量を加えて撹拌し戻り量付加原料を生成する工程と、この戻り量付加原料を、乾燥塔14下方部に戻り量付加原料の投入口15を設け、乾燥塔底部の両側には熱風供給口16が開設し、乾燥塔底部内には、その側壁で回転支承された回転軸18の中央に、落下する戻り量付加原料を高速回転により接線方向に飛散させる衝突用遠心羽根19が、両側には熱風供給口に対向して熱風を吸引し戻り量付加原料を中央部に集める吸引粗粒加速羽根21が同軸に固定されてなる流動乾燥粉砕機13に投入し、衝突粉砕及び流動熱風乾燥によって戻り量付加原料中のカドミウムを気化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類等の加工処理時に生じる水産系廃棄物や汚泥の処理方法に関し、特に、加工時において廃棄されるホタテのウロやイカゴロ、あるいは漁業操業時に魚類と共に捕獲されるヒトデに多く残留するカドミウム又は汚泥に含まれるカドミウムを除去し、無害化された生成物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水産系廃棄物のカドミウム除去方法として、特許第3990644号(特許文献1)がすでに提案されている。この発明は、処理筒本体の途中部分に設けた原料供給部から水産系廃棄物を投入し、処理筒本体の底部に設けた熱風入口からの熱風を同底部に回転自在に設けた吸引兼遠心羽根に供給し、水産系廃棄物の落下と吸引兼遠心羽根による熱風の強制的吸引及び粉砕廃棄物の接線方向への飛散で生じる衝突粉砕及び熱風による粉砕廃棄物の流動乾燥によって、水産系廃棄物に残存するカドミウムを除去する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3990644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の発明では、水産系廃棄物の処理原料の水分量がどの程度の状態なのかは明示されていないため、処理原料の水分含量によっては、処理筒での流動粉砕乾燥が不十分となり、その結果、製品となる乾燥粉体生成物にばらつきが生じるとともに、十分なカドミウム除去ができないことがあった。また、熱風入口が吸引兼遠心羽根の全体に臨んでいるため、吸引兼遠心羽根に供給する熱風の風速を十分に上げられないこともあり、さらに熱風が中央の羽根部分の摩耗を早めるため、頻繁なメンテナンスを要していた。
【0005】
本発明方法は、カドミウムが殆ど取り除かれた均質な乾燥粉体生成物を得るとともに、中央の羽根部分の熱風摩耗を抑制し、風速の早い熱風を乾燥塔に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、以下に記した特徴を有する。
すなわち、水産系廃棄物を予めカッターによりペースト状に処理し所定量に計量した水産系残滓原料又は汚泥に、すでに製品化されている乾燥粉体生成物の所定量を戻り量として加えて撹拌し戻り量付加原料を生成する工程と、この戻り量付加原料を、乾燥塔下方部に戻り量付加原料の投入口が設けられ、乾燥塔底部の両側には熱風供給口が開設され、前記乾燥塔底部内には、その側壁で回転支承された回転軸の中央に、落下する前記戻り量付加原料を高速回転により接線方向に飛散させる衝突用遠心羽根が、両側には前記熱風供給口に対向して熱風を吸引し前期戻り量付加原料を中央部に集める吸引粗粒加速羽根が同軸に固定されてなる流動乾燥粉砕機に投入し、前記戻り量付加原料の落下と前記衝突用遠心羽根による接線方向への飛散で生じる衝突粉砕及び前記吸引粗粒加速羽根の吸引熱風による戻り量付加原料の流動熱風乾燥によってこの戻り量付加原料中のカドミウムを気化させる工程とを含み、少なくともこれらの工程を経てカドミウム残量の除去された乾燥粉体生成物を得ることを特徴とする水産系廃棄物又は汚泥による脱カドミウム生成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
処理原料の水分量に応じて撹拌調整された戻り量付加原料が流動乾燥粉砕機に投入され、流動乾燥粉砕機では、吸引粗粒加速羽根の熱風吸引と流動熱風での衝突用遠心羽根の高速回転による戻り量付加原料の衝突粉砕の繰り返しによる粗粒化で、粉砕された戻り量付加原料はことごとく乾燥し、戻り量付加原料中のカドミウムの大半は秒速の流動熱風により気化するので、カドミウムが殆ど取り除かれた均質な乾燥粉体生成物を得ることができる。また、熱風供給口が吸引粗粒加速羽根とだけ対向していることで、風速の早い熱風を乾燥塔に供給することができ、中央の衝突用遠心羽根には熱風が直に当たらなくなり、同羽根の熱風摩耗が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】 本発明である水産系廃棄物又は汚泥による脱カドミウム生成物の製造方法を実現するシステムフロー図である。
【図2】 本発明方法に使用される流動乾燥粉砕機の乾燥塔底部付近の横断面図である。
【図3】 図2の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明方法により処理される原料としては、加工時において廃棄されるホタテのウロ、イカゴロ、魚類の骨や内臓、あるいは漁業操業時に魚類と共に捕獲されるヒトデ等の水産系廃棄物又は汚泥である。これらの処理原料は、予めカッターによりペースト状に処理されている。定量供給機10は、ペースト状に処理された処理原料を供給状況に応じて所定量に計量し供給するものである。そして、計量された処理原料は、図示しないコンベア等により、混合機11に送られる。
【0010】
混合機11は、例えば、反対方向に回転する2本の回転軸に複数の撹拌羽根が角度調節可能に取り付けられ、投入された処理原料等を撹拌するとともにフィードスクリュー12に徐々に送るようになっている。このような混合機11には、計量された処理原料に、すでに製品化されている乾燥粉体生成物DPの所定量が戻り量として加えられる。
【0011】
乾燥粉体生成物DPの混合機11への戻り量は、以下の式により算出する。

例えば、処理原料1000kgで含水率70%、固形分率30%としたとき、これに乾燥粉体生成物DP(水分量7%)を加えて戻り量付加原料の見掛水分率を25%に調整する分量としては、

となり、これを混合機11内の処理原料1000kg/hに加え撹拌した3500kg/hが戻り量付加原料となる。
そして、混合機11で撹拌されたこの戻り量付加原料が、フィードスクリュー12を経て流動乾燥粉砕機13に送られる。
【0012】
流動乾燥粉砕機13には、乾燥塔14の下方部に、戻り量付加原料の投入口15が設けられ、この原料投入口15には、フィードスクリュー12がその先端を乾燥塔14内に突出させた状態で配設されている。このフィードスクリュー12は、他方が混合機11に接続されていて、混合機11からの戻り量付加原料を乾燥塔14に移送するものである。フィードスクリュー12をこのように突出させたことで、戻り量付加原料を乾燥塔14の中央部に落下させることができる。
【0013】
乾燥塔14の底部両側には、熱風供給口16がそれぞれ個別に開設され、これらの熱風供給口16には、二股の熱風ダクト17が接続されている。そして、乾燥塔14の底部側壁には、軸受(図示せず。)を介して回転軸18が回転自在に支承され、この回転軸18の中央には、2つの衝突用遠心羽根19がエンドプレート20を介して背中合わせに固定されている。また、回転軸18の両側には、吸引粗粒加速羽根21が衝突用遠心羽根19と同軸に固定され、反時計方向に同時回転するようになっている。衝突用遠心羽根19は、落下する戻り量付加原料を高速回転により粗粒化し接線方向に飛散させる働きをし、吸引粗粒加速羽根21は、衝突用遠心羽根19を挟んで対向する各羽根に軸線に対して所定逆角度のひねりが加えられており、このひねり羽根の回転により熱風を内方に吸引するとともに戻り量付加原料又はその粗粒を回転軸18の中央部に集める働きをする。また、エンドプレート20は、それぞれの吸引粗粒加速羽根21によって集められた戻り量付加原料又はその粗粒を堰き止め、熱風とともに上昇気流を作る働きをする。そして、熱風供給口16は、吸引粗粒加速羽根21との対向位置に開設されている。これにより、熱風は、両側の吸引粗粒加速羽根21だけ吹き込まれることになる。したがって、熱風が衝突用遠心羽根19に直接吹き込まれることがなくなるので、その摩耗、損傷を防ぐことができ、さらに、従前装置と同様の風圧をかけても、熱風の風速を加速させることができる。
【0014】
それぞれの熱風供給口16から吹き出される熱風の入口温度は、300℃〜430℃の間に設定するのが好ましい。また、熱風の風速は、熱風供給口16で25m/s前後、乾燥塔14の出口付近では、6〜9m/sとなるようにするのが好ましい。
【0015】
本発明方法は、次のような工程により実現される。予めカッターによりペースト状に処理された水産系廃棄物原料又は汚泥は、処理原料として定量供給機10でその処理量が計量され、所定量が混合機11に送られる。混合機11では、この処理原料にすでに製品化されている乾燥粉体生成物DPの所定量を戻り量として加え、撹拌する。なお、混合機11に加える戻り量は、前述の計算式により算出する。
【0016】
このように撹拌生成された戻り量付加原料は、フィードスクリュー12を経て流動乾燥粉砕機13の乾燥塔14内に徐々に投入される。投入された戻り量付加原料は乾燥塔14内を落下するが、乾燥塔14の底部では、同軸の衝突用遠心羽根19と吸引粗粒加速羽根21が高速回転しており、熱風供給口16からは400℃前後の熱風が吸引粗粒加速羽根21だけに向けて25m/s前後の風速で吹き込まれている。乾燥塔14内を落下してくる戻り量付加原料は、衝突用遠心羽根19の高速回転により粗粒化されて接線方向に飛散し、次々に落下する戻り量付加原料との衝突を繰り返すことで粉砕、粗粒化を繰り返す。同時に、粉砕落下した戻り量付加原料は、熱風を効率的に吸引している吸引粗粒加速羽根21によって中央部に集められ、エンドプレート20で作られる上昇気流に乗って、次々落下してくる粗粒化した戻り量付加原料との衝突を繰り返す。これで乾燥塔14内は高温・高速での流動乾燥粉砕状態となり、微塵に粉砕された戻り量付加原料は水分率7%以下にまで乾燥し、戻り量付加原料中のカドミウムの大半はこの秒速の流動熱風により気化し、乾燥塔14内で分離飛散する。なお、フィードスクリュー12の先端部が乾燥塔14内に突出配設されていることで、戻り量付加原料は乾燥塔14の中央部に落下し、流動乾燥を確実に行うことができる。
【0017】
乾燥塔14上部から塔外のサイクロン22にて製品を回収した後、カドミウムを含む気体は、バグフィルター又は電気集塵装置24を通過することによってカドミウムが分離除去される。また、粉砕・乾燥を終えた粉粒状生成物は、乾燥塔14の出口付近の風速(4m/s〜7m/s)に乗って塔外に送られ、サイクロン22によって粉体と気体に分離され、ロックバルブ及び分岐ダンパ23を経て乾燥粉体生成物DPとなる。したがって、得られた乾燥粉体生成物DPは、カドミウムの殆どが除去され、水分量や粒形は出口温度による入口温度と定量供給量制御によって安定した均質となっている。なお、乾燥粉体生成物DPは、製品と戻り粉体とに分けられる。
【実施例】
【0018】
ヒトデをカッターでペースト状に処理し、定量供給機で500kgに計量したものを処理原料とした。この処理原料のカドミウム含有値を原子吸光光度法により測定したところ、43.8ppmであった。混合機にこの処理原料を投入し、混合機戻り量を加えて撹拌し、戻り量付加原料とした。混合機戻り量は前記計算式により算出した。算出条件は、処理原料500kgの含水率70%、これに製品化された乾燥粉体生成物(水分量7%)を加えて戻り量付加原料の見掛水分率を25%に調整する分量とした。これにより、混合機戻り量は1250kg/hとなり、戻り量付加原料は1750kg/hになる。この戻り量付加原料を前記の流動乾燥粉砕機で処理し、得られた乾燥粉体生成物のカドミウム残存値を原子吸光光度法により測定したところ0.1ppmとなり、殆どカドミウムの残留しない乾燥粉体生成物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明方法で得られた乾燥粉体生成物は、カドミウムの取り除かれた安全な生成物であるので、これを農業用肥料として活用することで、農産物の生育を飛躍的に助長し、収穫量の増大に寄与することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 定量供給機
11 混合機
12 フィードスクリュー
13 流動乾燥粉砕機
14 乾燥塔
15 原料投入口
16 熱風供給口
17 二股の熱風ダクト
18 回転軸
19 衝突用遠心羽根
20 エンドプレート
21 吸引粗粒加速羽根
22 サイクロン
23 ロックバルブ及び分岐ダンパ
24 バグフィルター又は電気集塵装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産系廃棄物を予めカッターによりペースト状に処理し所定量に計量した水産系残滓原料又は汚泥に、すでに製品化されている乾燥粉体生成物の所定量を戻り量として加えて撹拌し戻り量付加原料を生成する工程と、この戻り量付加原料を、乾燥塔下方部に戻り量付加原料の投入口が設けられ、乾燥塔底部の両側には熱風供給口が開設され、前記乾燥塔底部内には、その側壁で回転支承された回転軸の中央に、落下する前記戻り量付加原料を高速回転により接線方向に飛散させる衝突用遠心羽根が、両側には前記熱風供給口に対向して熱風を吸引し前期戻り量付加原料を中央部に集める吸引粗粒加速羽根が同軸に固定されてなる流動乾燥粉砕機に投入し、前記戻り量付加原料の落下と前記衝突用遠心羽根による接線方向への飛散で生じる衝突粉砕及び前記吸引粗粒加速羽根の吸引熱風による戻り量付加原料の流動熱風乾燥によってこの戻り量付加原料中のカドミウムを気化させる工程とを含み、少なくともこれらの工程を経てカドミウム残量の除去された乾燥粉体生成物を得ることを特徴とする水産系廃棄物又は汚泥による脱カドミウム生成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−143395(P2011−143395A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22550(P2010−22550)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(500236143)株式会社21企画 (1)
【Fターム(参考)】