説明

水産練り製品用改良剤及び水産練り製品

【課題】タピオカ澱粉を改良して、優れた水産練り製品用改良剤を提供し、更にそれを添加してなる水産練り製品を提供する。
【解決手段】タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化してなるアセチル化タピオカ澱粉に、油脂加工を施してなる、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を、水産練り製品用改良剤として用いる。前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、アセチル基含量が0.2〜1質量%であり、該澱粉の濃度が乾燥物換算で6質量%となる水懸濁液を撹拌しながら50℃から95℃に至る連続的な加温状態を30分間に亘って与えて更に95℃で30分間保持したときに、該澱粉懸濁液のピーク粘度から、95℃で30分間保持した後のボトム粘度を差し引いたブレークダウン値が200BU以下であることが好ましい。
また、加熱膨潤度が20〜40倍であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の澱粉を含有する水産練り製品用改良剤及び該水産練り製品用改良剤を添加した水産練り製品に関する。
【背景技術】
【0002】
かまぼこ、カニカマ、エビカマ、ちくわ、さつま揚げ、はんぺん、魚肉ソーセージ等の水産練り製品は、原料魚、形態、調味、加熱法等の違いによって各種のものが知られているが、基本的には、主原料である魚肉すり身を食塩とともに磨砕擂潰してペースト状にし、副原料となる澱粉、山芋、卵、調味料、魚介類エキス等及び水を加えて生地を調製し、成形後加熱して固めたものである。
【0003】
水産練り製品に配合する澱粉は、つなぎ剤や増量剤として機能するだけでなく、水産練り製品独特の食感を向上させる。即ち、原料中に存在する澱粉が加熱されると、周囲の魚肉すり身等の原料や配合水から水分を吸収し、糊化して弾力に富む粒子となる。この糊化した澱粉粒子による粘弾性が水産練り製品に独特の食感を与えている。
【0004】
水産練り製品に配合する澱粉としては、馬鈴薯澱粉や小麦澱粉等が用いられ、プリプリしたコンニャク様の食感や滑らかなもち様の食感を与えることが知られている。しかしながら一般に天然の未処理澱粉には、生地の水伸ばしが悪かったり、食感付与の効果が不十分であったり、時間の経過とともに製品が脆くなったり、製品に離水が生じやすい等の問題があった。
【0005】
従来、このような課題に対しては、水産練り製品に配合する澱粉にエステル化やエーテル化等の加工を施すことによって解決しようと試みられてきた。例えば、下記特許文献1には、アセチル化澱粉、リン酸化澱粉、コハク酸化澱粉、オクテニルコハク酸化澱粉等を配合することによって、弾力性、保水性及び耐老化性を有する水産練り製品が得られることが記載されている。また、下記特許文献2には、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋エステル化澱粉、架橋エーテル化澱粉等の添加により、経時的な澱粉の老化や水産練り製品の離水を抑制する技術が記載されている。また、下記特許文献3には、特定の冷水膨潤度及び加熱膨潤度を有する加工澱粉を配合することにより、水産練り製品本来の食感を保持しつつ、加工澱粉によるすり身の代替量を大きくする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−31672号公報
【特許文献2】特開昭62−11076号公報
【特許文献3】特開平5−49452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の技術においては、水産練り製品に対して弾力性と硬さを兼ね備えた食感を付与する効果が十分とはいえなかった。
【0008】
本発明の目的は、タピオカ澱粉を改良して、澱粉の経時的な老化による水産練り製品の食感の低下や水産練り製品の離水を防止するのと同時に、十分な弾力性と硬さを兼ね備えた食感を付与することが可能な水産練り製品用改良剤を提供し、更にそれを添加してなる水産練り製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第1は、タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化してなるアセチル化タピオカ澱粉に、油脂加工を施してなる、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を含有する水産練り製品用改良剤であって、前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、アセチル基含量が0.2〜1質量%であり、該澱粉の濃度が乾燥物換算で6質量%となる水懸濁液を撹拌しながら50℃から95℃に至る連続的な加温状態を30分間に亘って与えて更に95℃で30分間保持したときに、該澱粉懸濁液のピーク粘度から、95℃で30分間保持した後のボトム粘度を差し引いたブレークダウン値が200BU以下であることを特徴とする水産練り製品用改良剤を提供するものである。
【0011】
また、本発明の第2は、タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化してなるアセチル化タピオカ澱粉に、油脂加工を施してなる、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を含有する水産練り製品用改良剤であって、前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、加熱膨潤度が20〜40倍であることを特徴とする水産練り製品用改良剤を提供するものである。
【0012】
本発明の第1の水産練り製品用改良剤においては、前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、加熱膨潤度が20〜40倍であることが好ましい。
【0013】
本発明の第1及び第2の水産練り製品用改良剤においては、前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、アセチル化タピオカ澱粉の乾燥物換算100質量部に対して油脂又は油脂及び乳化剤を0.02〜0.5質量部添加することによって得られたものであることが好ましい。
【0014】
本発明の第1及び第2の水産練り製品用改良剤においては、前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化する際に、その添加後又は反応後にpH5未満に調整する処理が施されてなるものであることが好ましい。
【0015】
一方、本発明のもう1つは、上記水産練り製品用改良剤を添加してなる水産練り製品を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水産練り製品用改良剤を添加して得られた水産練り製品は、澱粉の経時的な老化による食感の低下や離水が抑制されているだけでなく、十分な弾力性と硬さを兼ね備えた食感を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】澱粉の糊化特性を測定するアミログラフィー分析の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の水産練り製品用改良剤は、タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化してなるアセチル化タピオカ澱粉に、油脂加工を施してなる、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を含有することを特徴としている。
【0019】
そして、本発明の水産練り製品用改良剤の第1においては、前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、アセチル基含量が0.2〜1質量%であり、該澱粉の濃度が乾燥物換算で6質量%となる水懸濁液を撹拌しながら50℃から95℃に至る連続的な加温状態を30分間に亘って与えて更に95℃で30分間保持したときに、該澱粉懸濁液のピーク粘度から、95℃で30分間保持した後のボトム粘度を差し引いたブレークダウン値が200BU以下であることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の水産練り製品用改良剤の第2においては、前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、加熱膨潤度が20〜40倍であることを特徴としている。
【0021】
本発明に用いるアセチル化タピオカ澱粉は、例えば、以下の方法で得ることができる。
【0022】
原料となるタピオカ澱粉に水を添加して30〜45質量%、好ましくは38〜42質量%の濃度となるスラリー状に調製した後、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤を澱粉スラリーに添加して、pH8〜11、好ましくはpH9.5〜10.5に調整する。次いで、乾燥物換算で澱粉100質量部に対して酢酸ビニルを0.5〜3質量部添加した後、澱粉スラリーの温度を10〜45℃、好ましくは20〜40℃、更に好ましくは25〜35℃に保ち、10〜120分間、好ましくは20〜60分間の反応を行う。その後、例えば塩酸等の酸を添加して、澱粉スラリーをpH5未満、好ましくはpH2〜4.5、より好ましくはpH2.5〜4に調整する。以上の処理を行った澱粉スラリーを水で洗浄し、脱水した後、乾燥、包装する。更に、前記pH調整から包装にかけての工程において、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、塩酸、硫酸、クエン酸等のpH調整剤を添加することで澱粉を所望のpHに再調整してもよい。
【0023】
本発明の水産練り製品用改良剤は、上記アセチル化タピオカ澱粉に油脂加工を施してなる油脂加工澱粉を含有するものである。例えば、アセチル化タピオカ澱粉の乾燥物換算100質量部に対して油脂又は油脂及び乳化剤を0.02〜0.5質量部添加することによって、本発明に用いる上記油脂加工澱粉を得ることができる。澱粉に油脂又は油脂及び乳化剤を添加する際、油脂と乳化剤を予め混合してから添加してもよく、油脂と乳化剤をそれぞれ個別に添加してもよい。澱粉に油脂又は油脂及び乳化剤を添加する際、澱粉が上記アセチル化タピオカ澱粉の製造工程において、水で洗浄した後の乾燥前であってもよく、乾燥後であってもよい。また、澱粉に油脂又は油脂及び乳化剤を添加する際、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤を添加して所望のpHに調整してもよい。
【0024】
こうして本発明に用いる、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得ることができるが、必要に応じて酸処理、アルカリ処理、α化、酵素処理、加熱処理、湿熱処理、微粉砕処理等の物理加工を組み合わせて施すことができる。これらの加工処理は、上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉の製造工程のいずれの箇所に組み込んでもよい。また、これらの加工が施された澱粉を原料に用いて本発明の油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を製造してもよい。
【0025】
また、上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉の原資澱粉として使用するタピオカ澱粉の品種や産地は特に限定されるものではない。例えば、一般的に流通し入手可能なものとして、ウルチ種のタピオカ澱粉が挙げられる。
【0026】
後述する実施例でも示すように、上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、エステル化剤として無水酢酸、アジピン酸、オキシ塩化リン、トリメタリン酸ナトリウムのいずれも用いることなく、実質的に酢酸ビニルのみを用いてアセチル化し、これに油脂加工が施されてなるものであることが好ましい。更に、タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化する際に、その添加後もしくは反応後に、例えば塩酸等の酸を添加して、pH5未満、好ましくはpH2〜4.5、より好ましくはpH2.5〜4に調整することが好ましい。この処理により、メカニズムの詳細は不明であるが、澱粉粒の膨潤を抑制することができる。尚、この処理の効果は、酢酸ビニルの添加量が多いほど効果的である。
【0027】
上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、アセチル基含量が0.2〜1.0質量%、より好ましくは0.3〜0.8質量%であり、且つ、ブレークダウン値が200BU以下であることが好ましく、100BU以下であることがより好ましい。
【0028】
尚、ブレークダウン値とは、澱粉の濃度が乾燥物換算で6質量%となる水懸濁液を撹拌しながら50℃から95℃に至る連続的な加温状態を30分間に亘って与えて更に95℃で30分間保持したときに得られる温度−澱粉粘度曲線(アミログラム)において、その澱粉懸濁液のピーク粘度から、95℃で30分間保持した後のボトム粘度を差し引いた値を意味する。図1には具体的にブレークダウン値を求めるためのアミログラフィー分析の一例を示す。図中実線のアミログラムが得られた場合、そのブレークダウン値は図中Aで示される粘度差の値となる。また、図中点線のアミログラムが得られた場合、そのブレークダウン値は図中Bで示される粘度差の値となる。
【0029】
また、アセチル基含量は以下の手法で求めることができる。
【0030】
澱粉試料5.0gを精密に量り、水50ml(ただし、α化澱粉及び水可溶性澱粉については水100ml)に懸濁し、フェノールフタレイン試薬数滴を加え、液が微紅色を呈するまで0.1mol/l水酸化ナトリウム溶液を滴下後、0.45mol/l水酸化ナトリウム溶液25mlを正確に加え、温度が30℃以上にならないように注意しながら栓をして30分間激しく振り混ぜる。0.2mol/l塩酸で過量の水酸化ナトリウムを滴定する。終点は液の微紅色が消えるときとする。別に空試験を行い補正する。下記式(1)により遊離アセチル基含量を含め、更に乾燥物換算を行う。
【0031】
アセチル基含量(%)=(a−b)×n×0.043×100/w…(1)
上記式(1)中、a:空試験滴定量(ml)、b:試料滴定量(ml)、n:0.2mol/l塩酸の力価、w:試料乾燥物重量(g)を意味する。
【0032】
上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、加熱膨潤度が20〜40倍であることが好ましい。その加熱膨潤度は25〜35倍であることがより好ましく、30〜35倍であることが更により好ましい。
【0033】
澱粉の加熱膨潤度とは、以下の方法によって定量される値を意味する。
【0034】
乾燥物重量1.0gの澱粉試料を水100mlに分散し、沸騰水中で時々撹拌しながら30分間加熱後、30℃に冷却する。次いで、この糊液を遠心分離(3000rpm、10分間)して糊層と上澄液層に分け、糊層の重量を測定してこれをcとする。次いで、重量測定した糊層を105℃で乾固した後、重量を測定してこれをdとし、c/dの値を加熱膨潤度(倍)とする。
【0035】
上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、上記油脂加工のための油脂又は油脂及び乳化剤を、アセチル化タピオカ澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.02〜0.5質量部添加・混合することにより得られたものであることが好ましい。また、その油脂又は油脂及び乳化剤を、アセチル化タピオカ澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.2〜0.4質量部添加・混合することにより得られたものであることがより好ましい。
【0036】
本発明に用いられる油脂又は油脂及び乳化剤に使用される油脂とは、食用として認められている油脂、調製油、及びこれらの混合物を意味する。例えば、アマニ油、エゴマ油、くるみ油、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、魚油、またこれらの分別油、脱臭油、加熱油、エステル交換油等の加工油脂等が挙げられる。また、油脂と乳化剤の混合物に使用される乳化剤とは、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。
【0037】
本発明においては、上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉をそのまま、水産練り製品用改良剤としてもよく、あるいは適宜、リン酸塩、有機酸塩、炭酸塩、蛋白質(大豆蛋白、乳蛋白、小麦蛋白)、糖化品等の副原料を更に配合して、水産練り製品用改良剤としてもよい。そして、この水産練り製品用改良剤を、水産練り製品の原料配合中に添加して、上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を水産練り製品中に含有せしめることによって、食感等の改良された水産練り製品を得ることができる。
【0038】
一方、本発明の水産練り製品は、原料配合中に少なくとも上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を配合して水産練り製品の生地を調製し、適宜形状に成形して、加熱処理することにより得ることができる。上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉の配合量は、水産練り製品の種類によって適宜設定し得るが、典型的には、澱粉の乾燥物換算で加熱処理前の水産練り製品の生地中1〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉のほか、馬鈴薯澱粉、その他の澱粉、穀粉、小麦粉、米粉等、又はそれらのエステル化、エーテル化(ヒドロキシプロピル化)、酸化、湿熱処理、油脂加工、ボールミル処理、微粉砕処理、α化、加熱処理、温水処理、漂白処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等の加工物等の他の澱粉質原料を配合してもよい。
【0039】
水産練り製品の種類に特に制限はなく、かまぼこ、カニカマ、エビカマ、ちくわ、さつま揚げ、はんぺん、魚肉ソーセージ、だて巻き、なると巻き、つみれ等を例示することができる。その原料の配合組成、添加方法、生地の成形方法、加熱方法等は、水産練り製品の種類に応じて、従来から知られている方法に準じて行えばよく、特に制限されるものではない。
【0040】
原料魚としてスケソウダラ、グチ、サメ、ヒラメ、ホッケ、イカ等の肉身や、それを加工した冷凍すり身を、ミートチョッパーでチョッピングした後、フードカッターで粗ずりを行う。これに食塩を2〜3%程度を氷又は氷水とともに添加して、フードカッターでカッティングした後、上記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉と残りの氷水とを添加して、更にカッティングして、水産練り製品の生地を調製する。水産練り製品の種類によっては、必要に応じて、油脂、グルタミン酸ソーダ、砂糖、みりん、卵白、山芋、増粘剤、魚介類エキス等の副原料と、野菜の細切り等の種物とを添加し、撹拌機によって練成する。尚、はんぺんを製造する場合には、生地中に気泡を抱え込むように撹拌を行う。
【0041】
このように調製した生地を、例えば押出成形機、ドラム成形機、球天器等を用いて適宜形状に成形し、必要に応じて坐り、二段加熱を行い、製品の種類に応じた加熱処理を行う。加熱処理は、例えば、かまぼこの場合は、蒸煮あるいは焼成が好ましく採用され、はんぺんの場合は湯中浸漬が好ましく採用され、さつま揚げの場合は油ちょうが採用される。また、魚肉ソーセージの場合は、ケーシングに充填した後、湯中浸漬等の手段で加熱処理する。
【0042】
本発明の水産練り製品は、上記のようにして得られた製品を、更に冷凍したものであってもよい。冷凍することによって、保存、流通性をより高めることができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(加工澱粉)
以下のようにして加工タピオカ澱粉を調製し又は入手した。
【0045】
<試料1:アセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
未加工のタピオカ澱粉(ウルチ種、以下同様)300g(乾燥物重量)に水を加えて40%濃度の澱粉スラリーを調製し、30℃となるように調整した。この澱粉スラリーに炭酸ナトリウムを添加してpH10に調整した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して1.6質量部の酢酸ビニルを添加してから30分間撹拌を維持した。更に、9%塩酸を用いてpH3に調整することでアセチル化反応を終え、250メッシュの篩にかけて脱水し、更に2Lの水を加えて同様に脱水して棚式乾燥機で乾燥することによりアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0046】
<試料2:アセチル化タピオカ澱粉(無水酢酸)>
日食MT−01HL(日本食品化工株式会社製、無水酢酸でアセチル化されたアセチル化タピオカ澱粉)を試料2とした。
【0047】
<試料3:アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉(無水酢酸、アジピン酸)>
TAS−202(Asia Modified Starch Co.,Ltd.製、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉)を試料3とした。
【0048】
<試料4:アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(酢酸ビニル、トリメタリン酸ナトリウム)>
未加工のタピオカ澱粉300g(乾燥物重量)に水を加えて40%濃度の澱粉スラリーを調製し、30℃となるように調整した。この澱粉スラリーに、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.5質量部の塩化カルシウムを添加し、次いで3%水酸化ナトリウムを添加してpH11に調整した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.06質量部のトリメタリン酸ナトリウムを添加してから60分間撹拌を維持した。更に、9%塩酸を用いてpH7に調整することでリン酸架橋の反応を終え、次いで炭酸ナトリウムを添加してpH10に調整した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して1.6質量部の酢酸ビニルを添加してから30分間撹拌を維持した。更に、9%塩酸を用いてpH5に調整することでアセチル化反応を終え、その後は試料1と同様の処理を行い、アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
【0049】
<試料5:アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(酢酸ビニル、オキシ塩化リン)>
未加工のタピオカ澱粉300g(乾燥物重量)に水を加えて40%濃度の澱粉スラリーを調製し、30℃となるように調整した。この澱粉スラリーに、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して1.0質量部の硫酸ナトリウムを添加し、次いで3%水酸化ナトリウムを添加してpH11に調整した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.02質量部のオキシ塩化リンを添加してから60分間撹拌を維持した。更に、9%塩酸を用いてpH7に調整することでリン酸架橋の反応を終え、その後は試料4と同様の処理を行い、アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
【0050】
<試料6:アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(酢酸ビニル、オキシ塩化リン)>
オキシ塩化リンの添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.025質量部とした以外は試料5と同様の処理を行い、アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
【0051】
<試料7:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
未加工のタピオカ澱粉300g(乾燥物重量)に水を加えて40%濃度の澱粉スラリーを調製し、30℃となるように調整した。この澱粉スラリーに炭酸ナトリウムを添加してpH10に調整した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して1.6質量部の酢酸ビニルを添加してから30分間撹拌を維持した。更に、9%塩酸を用いてpH3に調整することでアセチル化反応を終え、250メッシュの篩にかけて脱水し、更に2Lの水を加えて同様に脱水した。この脱水物に、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.3質量部の油脂(エゴマ油とグリセリン脂肪酸エステルの混合物)と、pH調整剤として炭酸ナトリウム(pH5〜8付近に調整するためのpH調整剤)を添加・混合した後、この混合物を棚式乾燥機で乾燥することにより、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0052】
<試料8:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(無水酢酸)>
日食MT−01HL(日本食品化工株式会社製、無水酢酸でアセチル化調製されたアセチル化タピオカ澱粉)300g(乾燥物重量)に水を添加・混合して水分30%のウェットケーキを調製した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.3質量部の油脂(エゴマ油とグリセリン脂肪酸エステルの混合物)を添加・混合した後、この混合物を棚式乾燥機で乾燥することにより、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0053】
<試料9:油脂加工されたアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉(無水酢酸、アジピン酸)>
TAS−202(Asia Modified Starch Co.,Ltd.製、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉)を用いて、試料8と同様の処理を行うことにより、油脂加工されたアセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
【0054】
<試料10:油脂加工されたアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(酢酸ビニル、トリメタリン酸ナトリウム)>
未加工のタピオカ澱粉300g(乾燥物重量)に水を加えて40%濃度の澱粉スラリーを調製し、30℃となるように調整した。この澱粉スラリーに、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.5質量部の塩化カルシウムを添加し、次いで3%水酸化ナトリウムを添加してpH11に調整した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.06質量部のトリメタリン酸ナトリウムを添加してから60分間攪拌を維持した。更に、9%塩酸を用いてpH7に調整することでリン酸架橋の反応を終え、次いで炭酸ナトリウムを添加してpH10に調整した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して1.6質量部の酢酸ビニルを添加してから30分間攪拌を維持した。更に、9%塩酸を用いてpH5に調整することでアセチル化の反応を終え、250メッシュの篩にかけて脱水し、更に2Lの水を加えて同様に脱水した。この脱水物に、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.3質量部の油脂(エゴマ油とグリセリン脂肪酸エステルの混合物)を添加・混合した後、この混合物を棚式乾燥機で乾燥することにより、油脂加工されたアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
【0055】
<試料11:油脂加工されたアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(酢酸ビニル、オキシ塩化リン)>
未加工のタピオカ澱粉300g(乾燥物重量)に水を加えて40%濃度の澱粉スラリーを調製し、30℃となるように調整した。この澱粉スラリーに、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して1.0質量部の硫酸ナトリウムを添加し、次いで3%水酸化ナトリウムを添加してpH11に調整した後、澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.02質量部のオキシ塩化リンを添加してから60分間攪拌を維持した。更に、9%塩酸を用いてpH7に調整することでリン酸架橋の反応を終え、その後は試料10と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
【0056】
<試料12:油脂加工されたアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉(酢酸ビニル、オキシ塩化リン)>
オキシ塩化リンの添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.025質量部とした以外は試料11と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉を得た。
【0057】
<試料13:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
9%塩酸を用いてpH4に調整することでアセチル化の反応を終えた以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0058】
<試料14:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
9%塩酸を用いてpH5に調整することでアセチル化の反応を終えた以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0059】
<試料15:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
酢酸ビニルの添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.3質量部とした以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0060】
<試料16:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
酢酸ビニルの添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.5質量部とした以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0061】
<試料17:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
酢酸ビニルの添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して2.5質量部とした以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0062】
<試料18:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
酢酸ビニルの添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して3質量部とした以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0063】
<試料19:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
9%塩酸を用いてpH2.5に調整することでアセチル化の反応を終えた以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0064】
<試料20:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
9%塩酸を用いてpH3.5に調整することでアセチル化の反応を終えた以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0065】
<試料21:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
油脂(エゴマ油とグリセリン脂肪酸エステルの混合物)の添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.01質量部とした以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0066】
<試料22:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
油脂(エゴマ油とグリセリン脂肪酸エステルの混合物)の添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.02質量部とした以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0067】
<試料23:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
油脂(エゴマ油とグリセリン脂肪酸エステルの混合物)の添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.5質量部とした以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0068】
<試料24:油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉(酢酸ビニル)>
油脂(エゴマ油とグリセリン脂肪酸エステルの混合物)の添加量を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.6質量部とした以外は試料7と同様の処理を行い、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を得た。
【0069】
各種澱粉特性を下記表1にまとめて示す。
【0070】
【表1】

【0071】
(水産練り製品)
表1に示した各種澱粉を配合したかまぼこを調製した。具体的には、冷凍スケソウダラのすり身を解凍した後に、直径4.8cmのプレートを取り付けたミートチョッパーでチョッピングし、更にフードカッターで粗ずりを行った。これに、下記表2の配合により、食塩と半量の氷を添加しカッティングした後、各種澱粉と残り半量の氷水を添加し、カッティングした。得られた生地を直径45mmの筒状の塩化ビニリデン製フィルムに充填し、92℃の蒸し器で中心温度が85℃となるまで加熱し、ケーシングかまぼこを得た。
【0072】
【表2】

【0073】
(評価基準)
得られたかまぼこの食感の官能評価を下記表3の基準で行った。官能評価は8名のパネラーの平均的評価で表した。
【0074】
【表3】

【0075】
また、2週間冷蔵保存した後に離水試験を行った。離水試験は厚さ5mmにスライスしたかまぼこに、重さ1kgの荷重を30分間かけ、染み出した水分量を測定して、かまぼこの質量当たりの圧出水分(%)を算出して、評価は下記表4の基準で行った。
【0076】
【表4】

【0077】
[評価1]
水産練り製品に含有させる加工澱粉として、上記試料1〜12を選択し、上記かまぼこを調製したときの硬さ、弾力、離水を上記評価基準に基づいて評価した。
【0078】
【表5】

【0079】
表5に示すように、タピオカ澱粉に酢酸ビニルを用いてアセチル化した試料1、無水酢酸を用いてアセチル化した試料2、タピオカ澱粉に無水酢酸とアジピン酸を用いてアセチル化アジピン酸架橋を施した試料3、タピオカ澱粉に酢酸ビニルとトリメタリン酸ナトリウムを用いてアセチル化リン酸架橋を施した試料4、タピオカ澱粉に酢酸ビニルとオキシ塩化リンを用いてアセチル化リン酸架橋を施した試料5及び試料6は、全て油脂加工を施していない加工澱粉であり、これらを水産練り製品に利用した場合、しなやかな弾力がなく、脆さのある食感となった。
【0080】
これに対して、試料7〜12は、試料1〜6に対して油脂を澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.3質量部添加処理することで得た油脂加工タピオカ澱粉であり、このうち試料8は食感が軟らかく、歯ごたえのない食感を呈し、試料9〜11は硬さ、弾力に改善が見られたものの、離水が多く、保存安定性が悪い物性を示した。また、試料12は軟らかく歯ごたえがなかった。一方、試料7は硬く噛みごたえの強い食感を示し、離水も少なく、保存安定性が良い物性を示した。
【0081】
したがって、水産練り製品に加工タピオカ澱粉を添加することで食感や離水を改良する場合には、そのタピオカ澱粉のエステル化剤として酢酸ビニルを用いてアセチル化を施し、更に油脂加工を施し、なお且つアジピン酸、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リンから選ばれる架橋剤による架橋が施されていない加工タピオカ澱粉を利用することが好ましいことが明らかとなった。
【0082】
[評価2]
水産練り製品に含有させる加工澱粉として、上記試料7、13〜18を選択し、上記かまぼこを調製したときの硬さ、弾力、離水を上記評価1と同様にして評価した。
【0083】
【表6】

【0084】
表6に示すように、アセチル基含量が0.1質量%である試料15は、離水が多く、保存安定性が悪い物性となった。アセチル基含量が1.1質量%である試料18は、歯ごたえと弾力がない食感となった。試料14はアセチル基含量が試料7と同じく0.6質量%であるが、ブレークダウン値が410BUであり、歯ごたえと弾力がない食感となった。これに対してアセチル基含量が0.2、0.6、又は0.9質量%であり、且つブレークダウン値が0、20、60、又は190BUである試料7、13、16、17は、おおむね評価が良好であった。
【0085】
したがって、水産練り製品に加工タピオカ澱粉を添加することで食感や離水を改良する場合には、酢酸ビニルを用いてアセチル化された油脂加工タピオカ澱粉のアセチル基含量が0.2〜1質量%であり、且つブレークダウン値が200BU以下であることが好ましいことが明らかとなった。
【0086】
[評価3]
水産練り製品に含有させる加工澱粉として、上記試料7、13、14、19、20を選択し、上記かまぼこを調製したときの硬さ、弾力、離水を上記評価1と同様にして評価した。
【0087】
【表7】

【0088】
表7に示すように、加熱膨潤度が17.3倍である試料19は、離水が多く、保存安定性が悪い物性となった。加熱膨潤度が42.3倍である試料14は歯ごたえと弾力のない食感となった。これに対して、加熱膨潤度が21.1、30.8、又は38.9倍である試料7、13、20は、おおむね評価が良好であった。
【0089】
したがって、水産練り製品に加工タピオカ澱粉を添加することで食感や離水を改良する場合には、酢酸ビニルを用いてアセチル化された油脂加工タピオカ澱粉の加熱膨潤度が20〜40倍であることが好ましいことが明らかとなった。
【0090】
[評価4]
水産練り製品に含有させる加工澱粉として、上記試料7、21〜24を選択し、上記かまぼこを調製したときの硬さ、弾力、離水を上記評価1と同様にして評価した。
【0091】
【表8】

【0092】
表8に示すように、油脂の添加量が澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.01質量部である試料21は、離水が多く、保存安定性が悪い物性となった。また、弾力のない脆い食感となった。一方、油脂の添加量が澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.6質量部である試料24では、歯ごたえのない軟らかな食感となってしまった。これに対して、油脂の添加量が澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.02、0.3、又は0.5質量部である試料7、22、23は、おおむね評価が良好であった。
【0093】
したがって、水産練り製品に加工タピオカ澱粉を添加することで食感や離水を改良する場合には、油脂の添加量が、酢酸ビニルを用いてアセチル化された加工タピオカ澱粉に対して澱粉の乾燥物換算100質量部に対して0.02〜0.5質量部であることが好ましいことが明らかとなった。
【0094】
[評価5]
タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化する際に、反応液をpH3に調整することでそのアセチル化反応を終えた試料7、pH4に調整することでそのアセチル化反応を終えた以外は試料7と同様にして調製した試料13、pH5に調整することでそのアセチル化反応を終えた以外は試料7と同様にして調製した試料14、pH2.5に調整することでそのアセチル化反応を終えた以外は試料7と同様にして調製した試料19、pH3.5に調整することでそのアセチル化反応を終えた以外は試料7と同様にして調製した試料20について、それらのブレークダウン値及び加熱膨潤度を比較した。
【0095】
【表9】

【0096】
表9に示すように、酢酸ビニルの添加後、反応を終えるためのpH条件をより低くすると、得られる加工タピオカ澱粉のブレークダウン値及び加熱膨潤度が低下する傾向を示し、酢酸ビニルの添加後、反応を終えるためのpH条件をより高くすると、ブレークダウン値及び加熱膨潤度が上昇する傾向を示した。したがって、酢酸ビニルを用いたアセチル化反応を終えるpHを調節することで、ブレークダウン値及び加熱膨潤度を制御できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化してなるアセチル化タピオカ澱粉に、油脂加工を施してなる、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を含有する水産練り製品用改良剤であって、
前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、アセチル基含量が0.2〜1質量%であり、該澱粉の濃度が乾燥物換算で6質量%となる水懸濁液を撹拌しながら50℃から95℃に至る連続的な加温状態を30分間に亘って与えて更に95℃で30分間保持したときに、該澱粉懸濁液のピーク粘度から、95℃で30分間保持した後のボトム粘度を差し引いたブレークダウン値が200BU以下であることを特徴とする水産練り製品用改良剤。
【請求項2】
タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化してなるアセチル化タピオカ澱粉に、油脂加工を施してなる、油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉を含有する水産練り製品用改良剤であって、
前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、加熱膨潤度が20〜40倍であることを特徴とする水産練り製品用改良剤。
【請求項3】
前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、加熱膨潤度が20〜40倍である請求項1記載の水産練り製品用改良剤。
【請求項4】
前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、アセチル化タピオカ澱粉の乾燥物換算100質量部に対して油脂又は油脂及び乳化剤を0.02〜0.5質量部添加することによって得られたものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の水産練り製品用改良剤。
【請求項5】
前記油脂加工されたアセチル化タピオカ澱粉は、タピオカ澱粉を酢酸ビニルでアセチル化する際に、その添加後又は反応後にpH5未満に調整する処理が施されてなるものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の水産練り製品用改良剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の水産練り製品改良剤を添加してなる水産練り製品。

【図1】
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【公開番号】特開2013−102742(P2013−102742A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249974(P2011−249974)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【特許番号】特許第4942855号(P4942855)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)
【Fターム(参考)】