説明

水産資源賦活用構造体及び水産資源の賦活方法及び水産資源賦活用構造体の製造方法

【課題】
近年、特に北日本の日本海側沿岸地域では、海藻が減少して海底の岩場等がむき出しになる所謂磯焼けが問題となっている。この原因のひとつとして、河川の護岸、堤防等の整備によって山林から河川を経由して流入する落葉、枝葉、倒木等の植物性の栄養源の不足が挙げられている。
【解決手段】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を混成したものがネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる水産資源賦活用構造体を用いるという簡便な方法によって安価に非常に海藻類の定着が容易く海藻自身の養殖漁業として有効であり、さらに漁礁或いは魚類の産卵場所として漁業資源の賦活に寄与する水産資源賦活用構造体を得ることが出来、以って産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に海中に設置して海藻類の付着育成及び/又は魚類の定着育成を図るための水産資源賦活用構造体及び水産資源の賦活方法及び水産資源賦活用構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海中に設置して海藻類の付着育成及び/又は魚類の定着育成を図るためにコンクリートブロック、木材などを海中に投入、沈下させることが行われていた。また、井桁状の構造物や不要になった船舶なども用いられていた。
【0003】
また、筆者らは上記の構造的な魚礁のみではなく、海藻類や海棲小動物、プランクトン等の生育に必要な栄養分を補給するため、主として間伐材のチップからなる植物性材料を袋詰めした構造体及びこれを魚礁として海中に設置する水産資源の賦活方法を研究、提案してきた。
【特許文献1】特開2005−006625号公報
【特許文献2】特開2006−211985号公報
【特許文献3】特開2007−129913号公報
【特許文献4】特開2008−22808号公報
【特許文献5】特開2008−48687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、特に北日本の日本海側沿岸地域では、海藻が減少して海底の岩場等がむき出しになる所謂磯焼けが問題となっている。この原因のひとつとして、河川の護岸、堤防等の整備によって山林から河川を経由して流入する落葉、枝葉、倒木等の植物性の栄養源の不足が挙げられている。
これに対して、背景技術として記載のような魚礁の利用や、林産物の補給等の施策は有効であるが、磯焼けを完全に解消するには至っていない。
【0005】
特に、主として間伐材のチップからなる植物性材料を袋詰めした構造体及びこれを魚礁として海中に設置する水産資源の賦活方法によれば、不足している植物性の栄養源を補充する効果があるため海藻類の定着育成に効果があるものの、長大で肉厚な昆布類等が繁茂する往時の海に復元するには不足があった。これは、植物性材料由来以外の、すなわち動物性由来の栄養分が不十分であるためと考えられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を混成したものがネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる水産資源賦活用構造体である。
【0007】
また本発明は、前記水産資源賦活用構造体を用いた水産資源の賦活方法である。
【0008】
また本発明は、少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料を破砕機により一次破砕する工程と、該破砕済材料を一次発酵する工程と、該一次発酵済材料を破砕機により二次破砕する工程と、貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を前記発酵・二次破砕済みの植物性材料と共に撹拌機能を有する練混装置に投入する工程と、該練混装置により混合材料を発酵・混成する工程と、混成した材料をネット状或いは繊維製の袋に収納する工程と、を含むことを特徴とする前記水産資源賦活用構造体の製造方法である。
【0009】
前記の方法を用いる事により、簡便な方法によって安価に非常に海藻類の定着が容易く海藻自身の養殖漁業として有効であり、さらに漁礁或いは魚類の産卵場所として漁業資源の賦活に寄与する水産資源賦活用構造体を得ることが出来、以って産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。
【0010】
また、前記水産資源賦活用構造体を用いて、低コストで多大な効果をもたらす水産資源の賦活方法が実現され、以って産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】水産資源賦活用構造体の製造方法の概要を示したチャートである。(実施例1)
【図2】水産資源賦活用構造体の製造方法に於いてスクリューを用いて混合材料を発酵・混成している状況を示す図面代用写真。
【図3】本発明に係る水産資源賦活用構造体の実施例の一つを示す図面代用写真である。
【図4】磯焼けした海の様子を示す図面代用写真である。
【図5】本発明に係る水産資源賦活用構造体を鉄製の枠に収納して設置した後凡そ3ヶ月の状態を示す図面代用写真である。
【図6】本発明に係る水産資源賦活用構造体を鉄製の枠体に収納し海中に設置された水路中に設置した様子を示す図面代用写真である。
【図7】凡そ6ヶ月後に周辺海域で撮影した成長した昆布の様子を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
簡便な方法によって海藻類の定着を促し、且つその成長が早く、海藻自身の養殖漁業として、さらに漁礁或いは魚類の産卵場所として漁業資源の賦活に寄与する水産資源賦活用構造体を得ることを、少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を混成したものをネット状或いは繊維製の袋に収納することにより実現した。
【0013】
また、簡便な方法によって海藻類の定着を促し、且つその成長が早く、海藻自身の養殖漁業として、さらに漁礁或いは魚類の産卵場所として漁業資源の賦活に寄与する水産資源の賦活方法を、少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を混成したものをネット状或いは繊維製の袋に収納した水産資源賦活用構造体を用いることにより実現した。
【0014】
また、簡便な方法によって海藻類の定着を促し、且つその成長が早く、海藻自身の養殖漁業として、さらに漁礁或いは魚類の産卵場所として漁業資源の賦活に寄与する水産資源賦活用構造体の製造方法として、少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料を破砕機により一次破砕する工程と、該破砕済材料を一次発酵する工程と、該一次発酵済材料を破砕機により二次破砕する工程と貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を前記発酵・二次破砕済みの植物性材料と共に撹拌機能を有する練混装置に投入する工程と、該練混装置により混合材料を発酵・混成する工程と、混成した材料をネット状或いは繊維製の袋に収納する工程と、を含む製造方法により実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を実施例に即して説明する。まず、本実施例では本発明に係る水産資源賦活用構造体の製造方法について説明する。図1は、本実施例に係る水産資源賦活用構造体の製造方法の概要を示したチャートである。
【0016】
本実施例に於いては、まず北海道伊達市大滝区の森林組合により間伐された間伐材に剪定枝葉を加えた植物性材料を破砕機により一次破砕した。一次破砕後の破砕済材料はビニールシートを掛けて1ヶ月間一次発酵させた。ここで、一次発酵の条件や期間は天候、季節等により変動がある。その後、一次発酵済材料を一次破砕より細かく破砕する設定の破砕機により二次破砕して、植物性材料を調製した。
【0017】
ここで、植物性材料の主原料として木質チップを使用する理由を説明する。近年、特に北日本の日本海側沿岸地域では、海藻が減少して海底の岩場等がむき出しになる所謂磯焼けが問題となっている。この原因のひとつとして、河川の護岸、堤防等の整備によって山林から河川を経由して流入する落葉、枝葉、倒木等の植物性の栄養源の不足が挙げられている。特に海藻類の付着育成に必要な木質由来のミネラル成分等の不足は重大な問題であって、本発明に係る水産資源賦活用構造体及びこれを用いた水産資源の賦活方法に於いて木質チップがこれら必要成分の補給に寄与しているのである。
【0018】
また、魚類等の育成に関しても、漁場として好適な沿岸海域には陸上から植物性成分が落ち葉や流木をはじめとする様々な形態で供給され、これにより育成する生物を捕食して魚類が定着成長するものと考えられる。この実例として、北海道立水産孵化場の下田和孝氏らは論文「森林からサクラマス幼魚への物質移動経路の推定」に於いて、ヨコエビ類及び鱗翅目幼虫を介して森林から供給される植物由来の栄養がサクラマスの成長を支えていることを示した。(平成15年3月刊、重点領域特別報告書「森林が河口域の水産資源に及ぼす影響の評価」60ページより77ページ)
【0019】
また、北海道立中央水産試験場の櫻井泉氏らは論文「濃昼川河口域の落ち葉だまりに生息するトンガリキタヨコエビとクロガシラガレイ若齢魚の生物生産」に於いて、クロガシラガレイの成長に寄与する栄養のうち20%以上がトンガリキタヨコエビを介して落ち葉を主とする植物由来の栄養に依存していることを示した。(平成15年3月刊、重点領域特別報告書「森林が河口域の水産資源に及ぼす影響の評価」103ページより116ページ)
【0020】
これらの文献資料からも、本発明に係る水産資源賦活用構造体及びこれを用いた水産資源の賦活方法に於いて木質チップにより必要成分の補給することが水産資源の賦活に与って有効であることが裏付けられる。
【0021】
なお、前記植物性材料の調製の際に、二次破砕後に二次発酵の工程を加えてもよい。
【0022】
次に前記植物性材料とは別に、貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を調製した。ここで、水産物材料としては魚類等の水産物の内蔵等を含む、水産加工の残渣等を利用することが出来、またこれらの利用はコスト的にも廃棄物のリサイクルという観点からも有益な手段である。
【0023】
ここで、貝類又は頭足類に由来する材料に関しては、特に帆立貝等の貝類の中腸腺(通称ウロ)やイカの肝臓(通称ゴロ)などにはカドミウム等の重金属が濃縮蓄積されている可能性が指摘されており、これらの貝類又は頭足類に由来する材料により海洋を再汚染することを回避するため、本発明に係る水産資源賦活用構造体にはこれらを除いた水産物材料を用いている。
【0024】
また、特に北海道の日本海側における本発明の応用において、該水産物材料は少なくともサケ類及び/又はホッケ類及び/又はニシン類を含む、貝類又は頭足類を除く魚類等の水産物の内蔵等を含む、水産加工の残渣等の水産物材料を用いることが、コスト的にも調達の利便性からも好ましい。
【0025】
さらに、前記水産物材料には海藻類を添加することも有効である。海藻類を添加することにより、海藻類の定着育成に必要な沃素等の成分の補給に資することが出来るからである。ここで、添加する海藻類由来の材料としては昆布、カジメ類等の食用海藻の水産加工残渣等がコスト的にも廃棄物のリサイクルという観点からも有益な手段として利用出来、またホンダワラ類等の非食用海藻の添加も同様に有効である。
【0026】
次に、前記発酵・二次破砕済みの植物性材料と前記水産物材料を、撹拌機能を有する練混装置に投入して、練混装置により混合材料を発酵・混成した。練混装置としては、正和電工株式会社製の業務用生ゴミ処理機SN−300型を改造して用いた。
【0027】
該練混装置はスクリュー状の撹拌装置を有し、モーターで該スクリューを回転することにより、混合材料を発酵・混成する機構を有する。図2はスクリューを用いて混合材料を発酵・混成している状況を示す図面代用写真である。また、該練混装置はヒーター及びサーモスタット装置を有し、混合物の温度を検知してヒーターを制御することにより発酵速度を調整し、混合材料を発酵・混成する機構を有する。これらの機能により、前記発酵・二次破砕済みの植物性材料と前記水産物材料は適正な状態まで発酵・混成される。
【0028】
前記発酵・混成工程は概ね摂氏40度から摂氏70度程度に間にあるように温度調節をしながら行うことが好ましい。また、温度が摂氏30度を下回ると菌類の増殖速度が遅く、発酵工程に時間がかかりすぎて効率が悪化し、温度が摂氏80度以上になると有益な菌類が死滅して発酵がなされなくなってしまう。よって、混合材料を発酵・混成する工程は、混合材料の温度が摂氏30度以上摂氏80度以下となるように温度制御することが望ましい。
【0029】
また、前記発酵・混成工程は概ね24時間で完了するが、天候、季節等の要因で最適な時間には変動がある。前記の温度条件下では、発酵・混成時間が12時間以下では発酵が適正に完了せず、48時間以上になると過発酵となり腐敗の原因となる。よって、混合材料を発酵・混成する工程は、12時間以上48時間以内とすることが望ましい。
【0030】
さらに、前記発酵・混成済み材料を、適宜撹拌を行いながら発酵終了まで貯蔵熟成する工程を加えることも有効である。
【0031】
発酵が完了した材料は、ネット状或いは繊維製の袋に収納される。ネット状或いは繊維製の袋は、本発明に係る水産資源賦活用構造体から有効な栄養成分が海洋に拡散するために有効であり、また、一部の材料は直接ヨコエビ類等の海棲生物の餌となって水産資源賦活効果を発現する。本実施例に於いては、発酵が完了した材料を収納する袋として麻袋を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、合成樹脂製等のネット状の袋や、麻以外の繊維を用いた袋、不織布の袋等を適宜用いることが出来る。
【実施例2】
【0032】
以上述べて来た本発明に係る水産資源賦活用構造体の製造方法により、本発明に係る水産資源賦活用構造体が製造された。図3は本発明に係る水産資源賦活用構造体の実施例の一つを示す図面代用写真である。本図では既に水産資源賦活用構造体が鉄製の枠に収納されているが、個々の袋詰めされた本発明に係る水産資源賦活用構造体が確認出来る。
【0033】
本発明に係る水産資源賦活用構造体は低コスト且つエコロジカルな構成でもって、海藻類の定着を促し、且つその成長が早く、海藻自身の養殖漁業として、さらに漁礁或いは魚類の産卵場所として漁業資源の賦活に寄与する水産資源賦活用構造体である。即ち、本発明に係る水産資源賦活用構造体の主原料の一は間伐材であって、間伐材の活用は廃棄物の有効利用であるとともに間伐によって森林を再生し活性化させる一助ともなっている。また、主原料の一である水産物材料は貝類又は頭足類を除く魚類等の水産物の内蔵等を含む水産加工の残渣等や昆布、カジメ類等の食用海藻の水産加工残渣等或いはホンダワラ類等の非食用海藻を含み、コスト的にも廃棄物のリサイクルという観点からも有益である。
【0034】
ここで、本発明に係る水産資源賦活用構造体は構造体中には前記材料以外に金属及び/又は金属酸化物、金属塩等の金属化合物を混入することも有効である。海藻の定着育成に有効な金属イオンの供給源となり得るからである。
【0035】
また、本発明に係る水産資源賦活用構造体は構造体中には前記材料以外に構造体中には前記材料以外に鉱物及び/又は砂礫を混入することや金属塊及び/又は石塊及び/又はコンクリート塊を混入することも可能であり、これらは構造体の流失防止用の重石となるだけだなく、海藻の定着育成に有効なミネラル成分等の供給源となり得るからである。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明に係る水産資源賦活用構造体を活用した水産資源の賦活方法の実施例について述べる。図4は磯焼けした海の様子を示す図面代用写真である。このような海洋に、本発明に係る水産資源賦活用構造体を図3に示すように鉄枠に収納して設置して水産資源の賦活実験を行った。図4は本発明に係る水産資源賦活用構造体を鉄製の枠に収納した実施形態の図面代用写真である。本実施例に於いては、これをそのまま海中に沈下設置して実験を行った。
【0037】
図5は、本発明に係る水産資源賦活用構造体を鉄製の枠に収納して設置した後凡そ3ヶ月の状態を示す図面代用写真である。本発明に係る水産資源賦活用構造体を活用した水産資源の賦活方法によって、凡そ3ヶ月後には設置した周辺には海藻が密生しており、磯焼け解消、海藻の定着育成に本発明に係る水産資源の賦活方法が非常に効果的であることが立証された。
【0038】
ここで、本発明に係る水産資源賦活用構造体を収納する枠体は鉄製に限定されるものではなく、他の金属類を含む金属或いはコンクリート等で構成された流失防止用の枠体であればいずれの材料を用いても良い。
【実施例4】
【0039】
次に、本発明に係る水産資源賦活用構造体を活用した水産資源の賦活方法の実施例につき、海中に設置された水路中に設置した例を示す。図6は、本発明に係る水産資源賦活用構造体を鉄製の枠体に収納し海中に設置された水路中に設置した様子を示す図面代用写真である。
【0040】
水路中に設置したしたことにより、波により水産資源賦活用構造体を鉄製の枠体に収納したものが流失するリスクは少なくなり、水路中で放出された有効・栄養成分が水路を通して周辺の海域に拡散して水産資源の賦活効果を発現する。図7は、凡そ6ヶ月後に周辺海域で撮影した成長した昆布の様子を示す図面代用写真である。凡そ6ヶ月後には周辺海域では昆布が密生し又肉厚・長大に成長して、本発明に係る方法が磯焼け解消、海藻の定着育成に非常に効果的であることが立証された。
【0041】
ここで、本発明に係る水産資源賦活用構造体を活用した水産資源の賦活方法は枠体に収納して水路中等に設置するに限定されるものではなく、複数の該構造体をロープで連結して海浜に係留配設し、潮汐により養分が周辺海域に拡散するようにすること、複数の該構造体をロープで連結したうえでロープの端に重りを設置して海浜に係留配設し、潮汐により養分が周辺海域に拡散するようにすること或いは個々又は複数の該構造体を、海上の桟橋、防波堤、橋梁、橋脚等の構造物或いは岩礁、海岸等或いは養殖用の筏、浮き桟橋等の浮遊構造物に係留又は垂下配設し、潮汐により養分が周辺海域に拡散するようにすること等の方法によっても同様の効果を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
前記の方法を用いる事により、簡便な方法によって安価に非常に海藻類の定着が容易く海藻自身の養殖漁業として有効であり、さらに漁礁或いは魚類の産卵場所として漁業資源の賦活に寄与する水産資源賦活用構造体を得ることが出来、以って産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。
【0043】
また、前記水産資源賦活用構造体を用いて、低コストで多大な効果をもたらす水産資源の賦活方法が実現され、以って産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体。
【請求項2】
該水産物材料は、
貝類又は頭足類を除く魚類等の水産物の内蔵等を含む、水産加工の残渣等であることを特徴とする、
請求項1記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項3】
該水産物材料は、
少なくともサケ類及び/又はホッケ類及び/又はニシン類を含む、貝類又は頭足類を除く魚類等の水産物の内蔵等を含む、水産加工の残渣等の水産物材料であることを特徴とする、
請求項1乃至2記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項4】
該水産物材料は、
海藻類を含むことを特徴とする、
請求項1乃至3記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項5】
該水産物材料は、
昆布、カジメ類等の食用海藻の水産加工残渣等を含むことを特徴とする、
請求項4記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項6】
該水産物材料は、
ホンダワラ類等の非食用海藻を含むことを特徴とする、
請求項4乃至5記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項7】
該植物性材料は、
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料を一次破砕する工程と、
該破砕済材料を一次発酵する工程と、
該一次発酵済材料を二次破砕する工程と、
を経たことを特徴とする、
請求項1乃至6記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項8】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体であって、
該植物性材料の混合物と水産物材料は、混成時に練混による発酵工程を経たことを特徴とする
請求項1乃至7記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項9】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体であって、
該構造体中には前記材料以外に金属及び/又は金属酸化物、金属塩等の金属化合物を混入したことを特徴とする
請求項1乃至8記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項10】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体であって、
該構造体中には前記材料以外に鉱物及び/又は砂礫を混入したことを特徴とする
請求項1乃至9記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項11】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体であって、
該構造体中に流失防止用の重石として金属塊及び/又は石塊及び/又はコンクリート塊を混入したことを特徴とする
請求項1乃至10記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項12】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体であって、
該植物性材料の混合物と水産物材料は、混成時に練混による発酵工程を経た後に、
適宜撹拌を行いながら発酵終了まで貯蔵熟成し、
これをネット状或いは繊維製の袋に収納して作成されたことを特徴とする
請求項1乃至11記載の水産資源賦活用構造体。
【請求項13】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体を用いた水産資源賦活方法であって、
該構造体を金属或いはコンクリート等で構成された流失防止用の枠体に収納し、海中に設置することによって水産資源を賦活することを特徴とする
水産資源の賦活方法。
【請求項14】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体を用いた水産資源賦活方法であって、
該構造体を海浜に設置された水路中に配設し、潮汐により養分が周辺海域に拡散するようにすることによって水産資源を賦活することを特徴とする
水産資源の賦活方法。
【請求項15】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体を用いた水産資源賦活方法であって、
複数の該構造体をロープで連結して海浜に係留配設し、潮汐により養分が周辺海域に拡散するようにすることによって水産資源を賦活することを特徴とする
水産資源の賦活方法。
【請求項16】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体を用いた水産資源賦活方法であって、
複数の該構造体をロープで連結したうえでロープの端に重りを設置して海浜に係留配設し、潮汐により養分が周辺海域に拡散するようにすることによって水産資源を賦活することを特徴とする
水産資源の賦活方法。
【請求項17】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料の混合物と、
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を
混成したものが
ネット状或いは繊維製の袋に収納されてなる
水産資源賦活用構造体を用いた水産資源賦活方法であって、
個々又は複数の該構造体を、海上の桟橋、防波堤、橋梁、橋脚等の構造物或いは岩礁、海岸等或いは養殖用の筏、浮き桟橋等の浮遊構造物に係留又は垂下配設し、潮汐により養分が周辺海域に拡散するようにすることによって水産資源を賦活することを特徴とする
水産資源の賦活方法。
【請求項18】
請求項13乃至請求項17に記載された水産資源の賦活方法であって、
該水産物材料は、
貝類又は頭足類を除く魚類等の水産物の内蔵等を含む水産加工の残渣等であることを特徴とする、
請求項13乃至17記載の水産資源の賦活方法。
【請求項19】
請求項13乃至請求項18に記載された水産資源の賦活方法であって、
該構造体に用いられる水産物材料は、
少なくともサケ類及び/又はホッケ類及び/又はニシン類を含む、貝類又は頭足類を除く魚類等の水産物の内蔵等を含む、水産加工の残渣等の水産物材料であることを特徴とする、
請求項13乃至18記載の水産資源の賦活方法。
【請求項20】
請求項13乃至請求項19に記載された水産資源の賦活方法であって、
該構造体に用いられる水産物材料は、
海藻類を含むことを特徴とする、
請求項13乃至19記載の水産資源の賦活方法。
【請求項21】
請求項13乃至請求項20に記載された水産資源の賦活方法であって、
該構造体に用いられる水産物材料は、
昆布、カジメ類等の食用海藻の水産加工残渣等を含むことを特徴とする、
請求項13乃至20記載の水産資源の賦活方法。
【請求項22】
請求項13乃至請求項21に記載された水産資源の賦活方法であって、
該構造体に用いられる水産物材料は、
ホンダワラ類等の非食用海藻を含むことを特徴とする、
請求項13乃至21記載の水産資源の賦活方法。
【請求項23】
請求項13乃至請求項22に記載された水産資源の賦活方法であって、
該構造体に用いられる植物性材料は、
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料を一次破砕する工程と、
該破砕済材料を一次発酵する工程と、
該一次発酵済材料を二次破砕する工程と、
を経たことを特徴とする、
請求項13乃至22記載の水産資源の賦活方法。
【請求項24】
請求項13乃至請求項23に記載された水産資源の賦活方法であって、
該構造体に用いられる植物性材料の混合物と水産物材料は、混成時に練混による発酵工程を経たことを特徴とする
請求項13乃至23記載の水産資源の賦活方法。
【請求項25】
請求項13乃至請求項24に記載された水産資源の賦活方法であって、
構造体中には前記材料以外に金属及び/又は金属酸化物、金属塩等の金属化合物を混入したことを特徴とする
請求項13乃至24記載の水産資源の賦活方法。
【請求項26】
請求項13乃至請求項25に記載された水産資源の賦活方法であって、
該構造体中には前記材料以外に鉱物及び/又は砂礫を混入したことを特徴とする
請求項13乃至25記載の水産資源の賦活方法。
【請求項27】
請求項13乃至請求項26に記載された水産資源の賦活方法であって、
該構造体中に流失防止用の重石として金属塊及び/又は石塊及び/又はコンクリート塊を混入したことを特徴とする
請求項13乃至26記載の水産資源の賦活方法。
【請求項28】
請求項13乃至請求項27に記載された水産資源の賦活方法であって、
該植物性材料の混合物と水産物材料は、混成時に練混による発酵工程を経た後に、
適宜撹拌を行いながら発酵終了まで貯蔵し、
これをネット状或いは繊維製の袋に収納して作成された水産資源賦活用構造体を用いることを特徴とする
請求項13乃至27記載の水産資源賦活方法。
【請求項29】
少なくとも間伐材を含む木質を原料とする木材チップを主材料として含む林産物や穀類副産物などの植物性材料を破砕機により一次破砕する工程と、
該破砕済材料を一次発酵する工程と、
該一次発酵済材料を破砕機により二次破砕する工程と
貝類又は頭足類に由来する材料を除く水産物材料を前記発酵・二次破砕済みの植物性材料と共に撹拌機能を有する練混装置に投入する工程と、
該練混装置により混合材料を発酵・混成する工程と、
混成した材料をネット状或いは繊維製の袋に収納する工程と、
を含むことを特徴とする
水産資源賦活用構造体の製造方法。
【請求項30】
該植物性材料の混合物と水産物材料は、混成時に練混による発酵工程を経た後に、
混成した材料をネット状或いは繊維製の袋に収納する工程の前に、
適宜撹拌を行いながら発酵終了まで貯蔵熟成する工程を経た
ことを特徴とする
水産資源賦活用構造体の製造方法。
【請求項31】
該練混装置はスクリュー状の撹拌装置を有し、モーターで該スクリューを回転することにより、混合材料を発酵・混成することを特徴とする
請求項29記載の水産資源賦活用構造体の製造方法。
【請求項32】
該練混装置はヒーター及びサーモスタット装置を有し、混合物の温度を検知してヒーターを制御することにより発酵速度を調整し、混合材料を発酵・混成することを特徴とする
請求項29乃至30記載の水産資源賦活用構造体の製造方法。
【請求項33】
該練混装置により混合材料を発酵・混成する工程は、混合材料の温度が摂氏30度以上摂氏80度以下となるように温度制御されたことを特徴とする
請求項29乃至31記載の水産資源賦活用構造体の製造方法。
【請求項34】
該練混装置により混合材料を発酵・混成する工程は、12時間以上48時間以内で設定されたことを特徴とする
請求項29乃至32記載の水産資源賦活用構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate