水田作業装置
【課題】藁屑等が覆土板に溜まりにくく、尚且つ組み付けやコスト的にも有利な水田作業装置を提供すること。
【解決手段】田面に溝を形成しながら粉粒体を供給する作溝器23と、作溝器23により形成された溝を埋め戻す覆土板39とを備える水田作業装置であって、作溝器23の直後方に位置するように、覆土板39を作溝器23に取り付けてある。
【解決手段】田面に溝を形成しながら粉粒体を供給する作溝器23と、作溝器23により形成された溝を埋め戻す覆土板39とを備える水田作業装置であって、作溝器23の直後方に位置するように、覆土板39を作溝器23に取り付けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田面に溝を形成しながら粉粒体を供給する作溝器と、前記作溝器により形成された溝を埋め戻す覆土板とを備える水田作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の施肥装置や直播装置等の水田作業装置においては、作溝器と覆土板とはそれぞれ分離した状態で設けられている。即ち、覆土板は、装置後方に延出する支持部材を介して作溝器の後方に配置される(特許文献1の図1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−315407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の水田作業装置では、作溝器と覆土板との間に隙間があるため、田面に漂う藁屑等がその隙間に入り込んだり、覆土板の支持部材に引っ掛かりそのまま蓄積してしまう場合がある。そのため、溜まった藁屑に邪魔されて田面の泥土が適切に溝へ案内され難くなり、溝の埋め戻しに支障をきたす場合がある。
また、覆土板を配置するための支持部材が必要となるため、組み付けの簡略化やコスト削減の面で改善の余地が残されていた。
本発明の目的は、藁屑等が溜まりにくく、尚且つ組み付けやコスト的にも有利な水田作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1特徴構成は、田面に溝を形成しながら粉粒体を供給する作溝器と、前記作溝器により形成された溝を埋め戻す覆土板とを備える水田作業装置であって、前記作溝器の直後方に位置するように、前記覆土板を前記作溝器に取り付けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、作溝器に覆土板を取り付けてあるため、作溝器と覆土板との間の隙間が小さい。そのため、作業中に藁屑等が覆土板に引っ掛かって蓄積する虞が少なく、田面の泥土が覆土板によって適切に溝に案内されて埋め戻される。
さらに、本構成によれば、覆土板を作溝器の後方に配置するための支持部材等を特に必要としない。そのため、部品点数が少なくて済み、組み付け作業が簡略化されると共に、コスト削減も図れる。
【0007】
本発明に係る第2特徴構成は、前記覆土板が、前記作溝器に対して上下方向に位置変更可能に設けられる点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、泥土の硬軟や水の張り具合等の田面の状態に応じて、作溝器に対する覆土板の位置を上下に変更することができ、田面の状態に応じて、常に適切な量の泥土を溝に供給して埋め戻すことができる。
【0009】
本発明に係る第3特徴構成は、前記覆土板が、弾性を備える可撓性部材で構成される点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、覆土板の弾性力によって埋め戻された泥土が押し圧されるため、埋め戻した後の田面がよりきれいに整地される。
【0011】
本発明に係る第4特徴構成は、粉粒体供給用ホースが接続されるもので前記作溝器に取り付けられた接続部を備え、前記接続部が弾性を備えた可撓性部材で構成され、前記接続部に前記覆土板が一体的に形成される点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、接続部と覆土板とが一体的に形成されるため、さらに部品点数が少なくて済み、より一層の組み付け作業の簡略化とコスト削減化が図れる。
その上、本構成によれば、覆土板の弾性力によって埋め戻された泥土が押し圧されるため、埋め戻した後の田面がよりきれいに整地される。
【0013】
本発明に係る第5特徴構成は、前記覆土板の横端部に、下向きに折り曲げられた折り曲げ部を備える点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、覆土板に備えられる折り曲げ部によって、田面の泥土が効率的に溝に案内されるため、より確実に溝が埋め戻される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】施肥装置の背面図
【図3】苗植付装置の全体側面図
【図4】作溝器付近の縦断面図
【図5】作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の斜視図
【図6】作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の横断面図
【図7】作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け前の分解斜視図
【図8】田面に形成された苗植付け条と覆土板により埋め戻された溝跡とを示す平面図
【図9】別実施形態に係る作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の縦断面図
【図10】別実施形態に係る作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の斜視図
【図11】別実施形態に係る作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
〔乗用型田植機の全体構成〕
図1〜図3に基づいて本発明に係る施肥装置8(水田作業装置の一例)を備える乗用型田植機について説明する。
図1には乗用型田植機の全体側面が示されている。図2には施肥装置8の背面が示されている。図3には苗植付装置14の全体側面が示されている。
【0017】
図1に示すように、操向操作自在な左右一対の前輪2及び左右一対の後輪3を備えた走行機体1の前部に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体1の中央部にステアリングハンドル等を装備した操縦部6と運転座席7とを設け、走行機体1の後部には施肥装置8が配置されている。
【0018】
エンジン4の左右両側、及び操縦部6と運転座席7との間、ならびに運転座席7の左右両側には、ほぼ平坦なステップ部分を有した運転部ステップ9が設けられ、この運転部ステップ9のさらに外側でエンジン4の配設箇所と対向する箇所に予備苗のせ台11が配設されている。運転部ステップ9の最後部に立ち上がり部を設けて、運転部ステップ9よりも高くした搭載面を備える搭載台10が配設され、この搭載台10に施肥装置8の肥料ホッパー12及び肥料繰出し機構22が搭載されている。
【0019】
走行機体1の後方には、リンク機構13を昇降操作自在に連結して、リンク機構13に苗植付装置14を装着して、乗用型田植機を構成してある。苗植付装置14は、植付伝動ケース15、植付伝動ケース15の左右両側に回転駆動自在に支持される回転ケース16、回転ケース16の両端に配備される一対の植付爪17、接地フロート18、及び苗のせ台19等によって構成してある。
【0020】
〔施肥装置の構成〕
次に、図1〜図4に基づいて施肥装置8の構成について説明する。
図1〜図3に示すように、走行機体1の後部においてリンク機構13が連結される機体フレーム20の上部に、走行機体1の左右方向に沿って支持フレーム21が固定されて、肥料繰出し機構22が支持フレーム21に連結されている。透明樹脂製の肥料ホッパー12が、肥料繰り出し機構22の上部に亘って取付けられており、透明樹脂製の蓋部12aが、後側の横軸芯周りに開閉自在に備えられている。これにより、肥料繰り出し機構22及び肥料ホッパー12が、運転座席7の後側に左右に並べて配置されている。
【0021】
肥料繰出し機構22は、外周に粉粒体入込み用の凹部が周方向に沿って多数形成されている図示しない繰出しロールを、漏斗部28の上方に回転可能に配置して構成するとともに、図示しない繰り出しロールを、その繰り出しロールの軸部と一体形成された従動ギア32と、動力が入力される駆動軸33の駆動ギア33aとの咬合によって駆動回転するように構成してある。
【0022】
図1及び図2に示すように、苗植付装置14に動力を伝達するPTO軸34がミッションケース5から延出され、PTO軸34から横向きに動力を取り出すクランク軸35が、機体フレーム20に固定された伝動ケース26に枢支されている。クランク軸35の出力が、駆動軸33に外嵌されたワンウェイクラッチ37に、連係ロッド36を介して連結されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、運転座席7の下側にブロア25及びブロア25を駆動するモータ25Aが支持されるとともに、ブロア25で生起された風を各漏斗部28に供給するためのパイプ状の送風ダクト24を、ブロア25から支持フレーム21に沿う状態に横臥配置して延出配備してある。
【0024】
図2に示すように、肥料繰り出し機構22の下部に接続された漏斗部28において、漏斗部28の供給口28aを、シールゴム(図示せず)を介して送風ダクト24に挿入し、固定してある。
【0025】
以上の構造により、PTO軸34の動力によって苗植付装置14の回転ケース16が回転駆動され、一対の植付爪17により苗のせ台19から交互に苗が取り出され田面に植え付けられて、苗の植付作業が行われる。これと同時に、クランク軸35の回転運動による連係ロッド36の往復運動が、ワンウェイクラッチ37により、駆動ギア33aの回転運動に変換されて、従動ギア32を介して図示しない繰り出しロールが間欠的に回転駆動される。
【0026】
これにより、図示しない繰り出しロールの凹部に肥料ホッパー12から肥料が入り込み、その繰り出しロールの間欠的な回転により肥料が漏斗部28に繰出される。そして、ブロア25からの高圧の風が、送風ダクト24を介して漏斗部28に供給され、高圧の風により肥料が搬送ホース29を通って作溝器23に迅速に供給され、作溝器23により田面に形成された溝に肥料が送り込まれて施肥作業が行われるのである。
【0027】
〔作溝器の構成〕
次に、図4〜図8に基づいて作溝器23について説明する。
図4には、作溝器23付近の縦断面が示されている。図5には、作溝器23、覆土板39、及びジャバラ部材30の組み付け後の斜視図が示されている。図6には、作溝器23、覆土板39、及びジャバラ部材30の組み付け後の横断面図が示されている。図7には、作溝器23、覆土板39、及びジャバラ部材30の組み付け前の分解斜視図が示されている。図8は、田面に形成された苗植付け条41と覆土板39により埋め戻された溝跡42とを模式的に示す平面図である。
【0028】
図4に示すように、側面視三角形状の硬質プラスチック製の溝切板27が、接地フロート18の底面に連結され、作溝器23が溝切板27の後部にボルト45で連結されている。尚図1に示すように、肥料繰り出し機構22と作溝器23とは、漏斗部28、搬送ホース29(粉粒体供給用ホースの一例)、及び弾性変形可能なゴム材からなるジャバラ部材30(接続部の一例)によって接続されている。
【0029】
図7に示すように、作溝器23は、溝切板27に固定される正面部23aと、正面部23aの左右両端のそれぞれから立設する右側壁部23b及び左側壁部23cによって、横断面形状略コ字状に形成されている。作溝器23の上端付近には、右側壁部23bと左側壁部23cとに亘るように横断面形状略コ字状の被係止部材38が固定されており、被係止部材38には、覆土板39の上下方向の位置を規定するための突起片38aが設けられている。
【0030】
図5〜図7に示すように、作溝器23には、金属製の覆土板39と、ゴム製のジャバラ部材30とが取り付けられている。
【0031】
図7に示すように、覆土板39は、上下方向に複数の貫通孔39aを有する係止部39bと、2つのL字状の固定部39c,39cと、作溝器23により形成された溝を埋め戻すために田面の泥土を溝に案内する折り曲げ部39fを有する案内部39eとを備えており、これらが一体成形されている。
【0032】
ジャバラ部材30は、搬送ホース29が外嵌される第1取り付け部30aと、伸縮自在なジャバラ部30bと、作溝器23の上部に外嵌する第2取り付け部30cとを備えており、これらが一体成型されている。
【0033】
作溝器23に覆土板39とジャバラ部材30とを取り付ける際には、まず覆土板39を作溝器23の後方(被係止部材38が設けられている側)に配置して、その係止部39bに設けられている複数の貫通孔39aの一つを選択して被係止部材38の突起片38aを挿通させると共に、2つの固定部39c,39cを左右に押し広げながら、作溝器23を取り囲むようにして固定部39c,39cを作溝器23に外嵌させる。そして、固定部39c,39cの先端に設けた雌ねじ部39d,39dを作溝器23の正面部23aに配置して、さらにその上に固定プレート40を配置し、2本のボルト43を、固定プレート40を貫通させて雌ねじ部39d,39dに螺入し締結固定する。これにより、覆土板39は作溝器23の直後方に配置される。
【0034】
次いで、ジャバラ部材30に設けられている貫通孔30dに、第2取り付け部30cの内側から被係止部材38の突起片38aを挿通させてから、第2取り付け部30cを作溝器23の上方にかぶせるようにして外嵌する。
【0035】
上記構成の作溝器23は、図8に示すように、中央、右側、左側の接地フロート18a,18b,18cのそれぞれに2つずつ設けられており、苗の植え付け作業が行われると、作溝器23は、苗植付装置14の植付爪17によって植え付けられた苗41の横側(接地フロート18a,18b,18c側)に溝を形成しながら肥料等の粉粒体を田面に供給した後、覆土板39の係止部39bから斜め下に傾斜する案内部39eによって田面の泥土が溝に案内されて埋め戻される(図8中の42は、埋め戻された溝跡を示す)。
【0036】
本構成によれば、作溝器23に覆土板39を取り付けてあるため、作溝器23と覆土板39との間の隙間が小さい。そのため、作業中に藁屑等が覆土板39に引っ掛かって蓄積する虞が少なく、田面の泥土が覆土板39によって適切に溝に案内されて埋め戻される。
さらに、本構成によれば、覆土板39を作溝器23の後方に配置するための支持部材等を特に必要としない。そのため、部品点数が少なくて済み、組み付け作業が簡略化されると共に、コスト削減も図れる。
【0037】
また本構成においては、覆土板39の係止部39bが上下方向に複数の貫通孔39aを有しており、これらの貫通孔39aのいずれかを選択することによって、覆土板39の作溝器23に対する上下方向の位置を変更することができる。このため、泥土の硬軟や水の張り具合等の田面の状態に応じて、作溝器23に対する覆土板39の位置を上下に変更することができ、田面の状態に応じて、常に適切な量の泥土を溝に供給して埋め戻すことができる。
【0038】
また本構成においては、覆土板39の案内部39eは、その横端部(苗植付け条側)に、下向きに折り曲げられた折り曲げ部39fを備えると共に、その他横端部側に接地フロート18a,18b,18cが配置される。このため、案内部39eの折り曲げ部39fと、接地フロート18a,18b,18cの両方の作用によって、田面の泥土が効率的に溝に案内されてより確実に溝が埋め戻される。
【0039】
〔別実施形態〕
〔1〕前述の実施形態における覆土板39が、作溝器23と一体成形される構成としても良い。
〔2〕前述の実施形態における折り曲げ部39fを、案内部39eの両側の横端部に設ける構成としても良い。
〔3〕前述の実施形態における覆土板39が、弾性を備える可撓性部材で構成されるようにしても良い。本構成によれば、覆土板39の弾性力によって埋め戻された泥土が押し圧されるため、埋め戻した後の田面がよりきれいに整地される。
〔4〕図9及び図10に示されるように、前述の実施形態におけるジャバラ部材30と覆土板39とを弾性を備えた可撓性部材で構成して、ジャバラ部材30に覆土板39が一体的に形成されている構成としても良い。本構成によれば、ジャバラ部材30と覆土板39とが一体的に形成されるため、さらに部品点数が少なくて済み、より一層の組み付け作業の簡略化とコスト削減化が図れる。その上、本構成によれば、覆土板39の弾性力によって埋め戻された泥土が押し圧されるため、埋め戻した後の田面がよりきれいに整地される。
〔5〕図11に示されるように、前述の実施形態における覆土板39が、L字状の固定部39c,39cを備えず、係止部39bにおける貫通孔39aの一つに被係止部材38の突起片38aを挿通させて、ジャバラ部材30の第2取り付け部30cで押さえ付けることにより、覆土板39を作溝器23に固定するように構成したものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、粉粒体として肥料等を供給する施肥装置だけでなく、粉粒体として種籾等を供給する直播装置(水田作業装置に相当)に適用することも可能であり、乗用型田植機だけでなく歩行型田植機にも有用である。
【符号の説明】
【0041】
8 施肥装置(水田作業装置)
23 作溝器
29 搬送ホース(粉粒体供給用ホース)
30 ジャバラ部材(接続部)
39 覆土板
39f 折り曲げ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、田面に溝を形成しながら粉粒体を供給する作溝器と、前記作溝器により形成された溝を埋め戻す覆土板とを備える水田作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の施肥装置や直播装置等の水田作業装置においては、作溝器と覆土板とはそれぞれ分離した状態で設けられている。即ち、覆土板は、装置後方に延出する支持部材を介して作溝器の後方に配置される(特許文献1の図1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−315407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の水田作業装置では、作溝器と覆土板との間に隙間があるため、田面に漂う藁屑等がその隙間に入り込んだり、覆土板の支持部材に引っ掛かりそのまま蓄積してしまう場合がある。そのため、溜まった藁屑に邪魔されて田面の泥土が適切に溝へ案内され難くなり、溝の埋め戻しに支障をきたす場合がある。
また、覆土板を配置するための支持部材が必要となるため、組み付けの簡略化やコスト削減の面で改善の余地が残されていた。
本発明の目的は、藁屑等が溜まりにくく、尚且つ組み付けやコスト的にも有利な水田作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1特徴構成は、田面に溝を形成しながら粉粒体を供給する作溝器と、前記作溝器により形成された溝を埋め戻す覆土板とを備える水田作業装置であって、前記作溝器の直後方に位置するように、前記覆土板を前記作溝器に取り付けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、作溝器に覆土板を取り付けてあるため、作溝器と覆土板との間の隙間が小さい。そのため、作業中に藁屑等が覆土板に引っ掛かって蓄積する虞が少なく、田面の泥土が覆土板によって適切に溝に案内されて埋め戻される。
さらに、本構成によれば、覆土板を作溝器の後方に配置するための支持部材等を特に必要としない。そのため、部品点数が少なくて済み、組み付け作業が簡略化されると共に、コスト削減も図れる。
【0007】
本発明に係る第2特徴構成は、前記覆土板が、前記作溝器に対して上下方向に位置変更可能に設けられる点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、泥土の硬軟や水の張り具合等の田面の状態に応じて、作溝器に対する覆土板の位置を上下に変更することができ、田面の状態に応じて、常に適切な量の泥土を溝に供給して埋め戻すことができる。
【0009】
本発明に係る第3特徴構成は、前記覆土板が、弾性を備える可撓性部材で構成される点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、覆土板の弾性力によって埋め戻された泥土が押し圧されるため、埋め戻した後の田面がよりきれいに整地される。
【0011】
本発明に係る第4特徴構成は、粉粒体供給用ホースが接続されるもので前記作溝器に取り付けられた接続部を備え、前記接続部が弾性を備えた可撓性部材で構成され、前記接続部に前記覆土板が一体的に形成される点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、接続部と覆土板とが一体的に形成されるため、さらに部品点数が少なくて済み、より一層の組み付け作業の簡略化とコスト削減化が図れる。
その上、本構成によれば、覆土板の弾性力によって埋め戻された泥土が押し圧されるため、埋め戻した後の田面がよりきれいに整地される。
【0013】
本発明に係る第5特徴構成は、前記覆土板の横端部に、下向きに折り曲げられた折り曲げ部を備える点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、覆土板に備えられる折り曲げ部によって、田面の泥土が効率的に溝に案内されるため、より確実に溝が埋め戻される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】施肥装置の背面図
【図3】苗植付装置の全体側面図
【図4】作溝器付近の縦断面図
【図5】作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の斜視図
【図6】作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の横断面図
【図7】作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け前の分解斜視図
【図8】田面に形成された苗植付け条と覆土板により埋め戻された溝跡とを示す平面図
【図9】別実施形態に係る作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の縦断面図
【図10】別実施形態に係る作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の斜視図
【図11】別実施形態に係る作溝器、覆土板、及び接続部の組み付け後の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
〔乗用型田植機の全体構成〕
図1〜図3に基づいて本発明に係る施肥装置8(水田作業装置の一例)を備える乗用型田植機について説明する。
図1には乗用型田植機の全体側面が示されている。図2には施肥装置8の背面が示されている。図3には苗植付装置14の全体側面が示されている。
【0017】
図1に示すように、操向操作自在な左右一対の前輪2及び左右一対の後輪3を備えた走行機体1の前部に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体1の中央部にステアリングハンドル等を装備した操縦部6と運転座席7とを設け、走行機体1の後部には施肥装置8が配置されている。
【0018】
エンジン4の左右両側、及び操縦部6と運転座席7との間、ならびに運転座席7の左右両側には、ほぼ平坦なステップ部分を有した運転部ステップ9が設けられ、この運転部ステップ9のさらに外側でエンジン4の配設箇所と対向する箇所に予備苗のせ台11が配設されている。運転部ステップ9の最後部に立ち上がり部を設けて、運転部ステップ9よりも高くした搭載面を備える搭載台10が配設され、この搭載台10に施肥装置8の肥料ホッパー12及び肥料繰出し機構22が搭載されている。
【0019】
走行機体1の後方には、リンク機構13を昇降操作自在に連結して、リンク機構13に苗植付装置14を装着して、乗用型田植機を構成してある。苗植付装置14は、植付伝動ケース15、植付伝動ケース15の左右両側に回転駆動自在に支持される回転ケース16、回転ケース16の両端に配備される一対の植付爪17、接地フロート18、及び苗のせ台19等によって構成してある。
【0020】
〔施肥装置の構成〕
次に、図1〜図4に基づいて施肥装置8の構成について説明する。
図1〜図3に示すように、走行機体1の後部においてリンク機構13が連結される機体フレーム20の上部に、走行機体1の左右方向に沿って支持フレーム21が固定されて、肥料繰出し機構22が支持フレーム21に連結されている。透明樹脂製の肥料ホッパー12が、肥料繰り出し機構22の上部に亘って取付けられており、透明樹脂製の蓋部12aが、後側の横軸芯周りに開閉自在に備えられている。これにより、肥料繰り出し機構22及び肥料ホッパー12が、運転座席7の後側に左右に並べて配置されている。
【0021】
肥料繰出し機構22は、外周に粉粒体入込み用の凹部が周方向に沿って多数形成されている図示しない繰出しロールを、漏斗部28の上方に回転可能に配置して構成するとともに、図示しない繰り出しロールを、その繰り出しロールの軸部と一体形成された従動ギア32と、動力が入力される駆動軸33の駆動ギア33aとの咬合によって駆動回転するように構成してある。
【0022】
図1及び図2に示すように、苗植付装置14に動力を伝達するPTO軸34がミッションケース5から延出され、PTO軸34から横向きに動力を取り出すクランク軸35が、機体フレーム20に固定された伝動ケース26に枢支されている。クランク軸35の出力が、駆動軸33に外嵌されたワンウェイクラッチ37に、連係ロッド36を介して連結されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、運転座席7の下側にブロア25及びブロア25を駆動するモータ25Aが支持されるとともに、ブロア25で生起された風を各漏斗部28に供給するためのパイプ状の送風ダクト24を、ブロア25から支持フレーム21に沿う状態に横臥配置して延出配備してある。
【0024】
図2に示すように、肥料繰り出し機構22の下部に接続された漏斗部28において、漏斗部28の供給口28aを、シールゴム(図示せず)を介して送風ダクト24に挿入し、固定してある。
【0025】
以上の構造により、PTO軸34の動力によって苗植付装置14の回転ケース16が回転駆動され、一対の植付爪17により苗のせ台19から交互に苗が取り出され田面に植え付けられて、苗の植付作業が行われる。これと同時に、クランク軸35の回転運動による連係ロッド36の往復運動が、ワンウェイクラッチ37により、駆動ギア33aの回転運動に変換されて、従動ギア32を介して図示しない繰り出しロールが間欠的に回転駆動される。
【0026】
これにより、図示しない繰り出しロールの凹部に肥料ホッパー12から肥料が入り込み、その繰り出しロールの間欠的な回転により肥料が漏斗部28に繰出される。そして、ブロア25からの高圧の風が、送風ダクト24を介して漏斗部28に供給され、高圧の風により肥料が搬送ホース29を通って作溝器23に迅速に供給され、作溝器23により田面に形成された溝に肥料が送り込まれて施肥作業が行われるのである。
【0027】
〔作溝器の構成〕
次に、図4〜図8に基づいて作溝器23について説明する。
図4には、作溝器23付近の縦断面が示されている。図5には、作溝器23、覆土板39、及びジャバラ部材30の組み付け後の斜視図が示されている。図6には、作溝器23、覆土板39、及びジャバラ部材30の組み付け後の横断面図が示されている。図7には、作溝器23、覆土板39、及びジャバラ部材30の組み付け前の分解斜視図が示されている。図8は、田面に形成された苗植付け条41と覆土板39により埋め戻された溝跡42とを模式的に示す平面図である。
【0028】
図4に示すように、側面視三角形状の硬質プラスチック製の溝切板27が、接地フロート18の底面に連結され、作溝器23が溝切板27の後部にボルト45で連結されている。尚図1に示すように、肥料繰り出し機構22と作溝器23とは、漏斗部28、搬送ホース29(粉粒体供給用ホースの一例)、及び弾性変形可能なゴム材からなるジャバラ部材30(接続部の一例)によって接続されている。
【0029】
図7に示すように、作溝器23は、溝切板27に固定される正面部23aと、正面部23aの左右両端のそれぞれから立設する右側壁部23b及び左側壁部23cによって、横断面形状略コ字状に形成されている。作溝器23の上端付近には、右側壁部23bと左側壁部23cとに亘るように横断面形状略コ字状の被係止部材38が固定されており、被係止部材38には、覆土板39の上下方向の位置を規定するための突起片38aが設けられている。
【0030】
図5〜図7に示すように、作溝器23には、金属製の覆土板39と、ゴム製のジャバラ部材30とが取り付けられている。
【0031】
図7に示すように、覆土板39は、上下方向に複数の貫通孔39aを有する係止部39bと、2つのL字状の固定部39c,39cと、作溝器23により形成された溝を埋め戻すために田面の泥土を溝に案内する折り曲げ部39fを有する案内部39eとを備えており、これらが一体成形されている。
【0032】
ジャバラ部材30は、搬送ホース29が外嵌される第1取り付け部30aと、伸縮自在なジャバラ部30bと、作溝器23の上部に外嵌する第2取り付け部30cとを備えており、これらが一体成型されている。
【0033】
作溝器23に覆土板39とジャバラ部材30とを取り付ける際には、まず覆土板39を作溝器23の後方(被係止部材38が設けられている側)に配置して、その係止部39bに設けられている複数の貫通孔39aの一つを選択して被係止部材38の突起片38aを挿通させると共に、2つの固定部39c,39cを左右に押し広げながら、作溝器23を取り囲むようにして固定部39c,39cを作溝器23に外嵌させる。そして、固定部39c,39cの先端に設けた雌ねじ部39d,39dを作溝器23の正面部23aに配置して、さらにその上に固定プレート40を配置し、2本のボルト43を、固定プレート40を貫通させて雌ねじ部39d,39dに螺入し締結固定する。これにより、覆土板39は作溝器23の直後方に配置される。
【0034】
次いで、ジャバラ部材30に設けられている貫通孔30dに、第2取り付け部30cの内側から被係止部材38の突起片38aを挿通させてから、第2取り付け部30cを作溝器23の上方にかぶせるようにして外嵌する。
【0035】
上記構成の作溝器23は、図8に示すように、中央、右側、左側の接地フロート18a,18b,18cのそれぞれに2つずつ設けられており、苗の植え付け作業が行われると、作溝器23は、苗植付装置14の植付爪17によって植え付けられた苗41の横側(接地フロート18a,18b,18c側)に溝を形成しながら肥料等の粉粒体を田面に供給した後、覆土板39の係止部39bから斜め下に傾斜する案内部39eによって田面の泥土が溝に案内されて埋め戻される(図8中の42は、埋め戻された溝跡を示す)。
【0036】
本構成によれば、作溝器23に覆土板39を取り付けてあるため、作溝器23と覆土板39との間の隙間が小さい。そのため、作業中に藁屑等が覆土板39に引っ掛かって蓄積する虞が少なく、田面の泥土が覆土板39によって適切に溝に案内されて埋め戻される。
さらに、本構成によれば、覆土板39を作溝器23の後方に配置するための支持部材等を特に必要としない。そのため、部品点数が少なくて済み、組み付け作業が簡略化されると共に、コスト削減も図れる。
【0037】
また本構成においては、覆土板39の係止部39bが上下方向に複数の貫通孔39aを有しており、これらの貫通孔39aのいずれかを選択することによって、覆土板39の作溝器23に対する上下方向の位置を変更することができる。このため、泥土の硬軟や水の張り具合等の田面の状態に応じて、作溝器23に対する覆土板39の位置を上下に変更することができ、田面の状態に応じて、常に適切な量の泥土を溝に供給して埋め戻すことができる。
【0038】
また本構成においては、覆土板39の案内部39eは、その横端部(苗植付け条側)に、下向きに折り曲げられた折り曲げ部39fを備えると共に、その他横端部側に接地フロート18a,18b,18cが配置される。このため、案内部39eの折り曲げ部39fと、接地フロート18a,18b,18cの両方の作用によって、田面の泥土が効率的に溝に案内されてより確実に溝が埋め戻される。
【0039】
〔別実施形態〕
〔1〕前述の実施形態における覆土板39が、作溝器23と一体成形される構成としても良い。
〔2〕前述の実施形態における折り曲げ部39fを、案内部39eの両側の横端部に設ける構成としても良い。
〔3〕前述の実施形態における覆土板39が、弾性を備える可撓性部材で構成されるようにしても良い。本構成によれば、覆土板39の弾性力によって埋め戻された泥土が押し圧されるため、埋め戻した後の田面がよりきれいに整地される。
〔4〕図9及び図10に示されるように、前述の実施形態におけるジャバラ部材30と覆土板39とを弾性を備えた可撓性部材で構成して、ジャバラ部材30に覆土板39が一体的に形成されている構成としても良い。本構成によれば、ジャバラ部材30と覆土板39とが一体的に形成されるため、さらに部品点数が少なくて済み、より一層の組み付け作業の簡略化とコスト削減化が図れる。その上、本構成によれば、覆土板39の弾性力によって埋め戻された泥土が押し圧されるため、埋め戻した後の田面がよりきれいに整地される。
〔5〕図11に示されるように、前述の実施形態における覆土板39が、L字状の固定部39c,39cを備えず、係止部39bにおける貫通孔39aの一つに被係止部材38の突起片38aを挿通させて、ジャバラ部材30の第2取り付け部30cで押さえ付けることにより、覆土板39を作溝器23に固定するように構成したものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、粉粒体として肥料等を供給する施肥装置だけでなく、粉粒体として種籾等を供給する直播装置(水田作業装置に相当)に適用することも可能であり、乗用型田植機だけでなく歩行型田植機にも有用である。
【符号の説明】
【0041】
8 施肥装置(水田作業装置)
23 作溝器
29 搬送ホース(粉粒体供給用ホース)
30 ジャバラ部材(接続部)
39 覆土板
39f 折り曲げ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
田面に溝を形成しながら粉粒体を供給する作溝器と、前記作溝器により形成された溝を埋め戻す覆土板とを備える水田作業装置であって、
前記作溝器の直後方に位置するように、前記覆土板を前記作溝器に取り付けてある水田作業装置。
【請求項2】
前記覆土板が、前記作溝器に対して上下方向に位置変更可能に設けられる請求項1に記載の水田作業装置。
【請求項3】
前記覆土板が、弾性を備える可撓性部材で構成される請求項1又は2に記載の水田作業装置。
【請求項4】
粉粒体供給用ホースが接続されるもので前記作溝器に取り付けられた接続部を備え、前記接続部が弾性を備えた可撓性部材で構成され、前記接続部に前記覆土板が一体的に形成される請求項1に記載の水田作業装置。
【請求項5】
前記覆土板の横端部に、下向きに折り曲げられた折り曲げ部を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の水田作業装置。
【請求項1】
田面に溝を形成しながら粉粒体を供給する作溝器と、前記作溝器により形成された溝を埋め戻す覆土板とを備える水田作業装置であって、
前記作溝器の直後方に位置するように、前記覆土板を前記作溝器に取り付けてある水田作業装置。
【請求項2】
前記覆土板が、前記作溝器に対して上下方向に位置変更可能に設けられる請求項1に記載の水田作業装置。
【請求項3】
前記覆土板が、弾性を備える可撓性部材で構成される請求項1又は2に記載の水田作業装置。
【請求項4】
粉粒体供給用ホースが接続されるもので前記作溝器に取り付けられた接続部を備え、前記接続部が弾性を備えた可撓性部材で構成され、前記接続部に前記覆土板が一体的に形成される請求項1に記載の水田作業装置。
【請求項5】
前記覆土板の横端部に、下向きに折り曲げられた折り曲げ部を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の水田作業装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−72243(P2011−72243A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226353(P2009−226353)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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