説明

水田用殺菌除草組成物及び防除方法

【課題】
水稲移植後に本田施用することにより、水稲に対して薬害を与えず、長期にわたる除草効果とイネいもち病防除効果が得られ、且つイネいもち病に対して相乗効果を有する水田用殺菌除草組成物及び省力的防除方法を提供する。
【解決手段】
イネいもち病に対して防除活性を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物と除草活性を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物とを含有することを特徴とする水田用殺菌除草組成物であり、特にイネいもち病に対して防除活性を有する化合物がプロベナゾール、チアジニル、オリサストロビン及びN−(2−シアノフェニル)−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキサミドであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイネいもち病に対して相乗効果を有し、且つイネいもち病と水田雑草を同時に防除できる水田用殺菌除草組成物及び省力的防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水田雑草の防除には水稲移植数日後に1回処理するだけで効果が得られる、いわゆる一発処理剤による防除が主流となっている。一方、イネいもち病の防除は、育苗箱に施用する箱処理剤、イネの移植後30日〜50日頃に処理する本田処理剤を単独又は併用する処理体系で行われており、除草剤の一発処理剤とイネいもち病防除剤との混合による同時防除は困難であった。このような状況下、イネいもち病に対して防除効果を有する化合物と除草活性を有する化合物とを含有して同時処理することによる省力的防除を目的とした水田用殺菌除草組成物が知られている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【特許文献1】特開平11−222406号公報
【特許文献2】特開平11−310507号公報
【特許文献3】特開2002−145709号公報
【特許文献4】特開2002−114612号公報
【特許文献5】特開2003−95832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術の方法ではイネいもち病に対して防除効果を有する化合物と除草活性を有する化合物の組み合わせが適切でなく、同時処理を行った場合、水稲に対する薬害の増強、イネいもち病防除効果及び除草効果が十分に発揮されない等の課題により、実用化が困難となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のイネいもち病に対して防除効果を有する化合物と特定の除草活性を有する化合物を組み合わせてイネ移植後に本田施用することにより、水稲に対して薬害を与えず、長期にわたる除草効果とイネいもち病防除効果が得られ、且つイネいもち病に対して相乗効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
即ち本発明は、
(1)イネいもち病に対して防除活性を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物と除草活性を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物とを含有することを特徴とする水田用殺菌除草組成物、
(2)イネいもち病に対して防除活性を有する化合物がプロベナゾール、チアジニル、オリサストロビン及びN−(2−シアノフェニル)−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキサミドから選択される1種又は2種以上の化合物である(1)に記載の水田用殺菌除草組成物、
(3)除草活性を有する化合物がベンスルフロンメチル、アジムスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、インダノファン、シハロホップブチル、テニルクロール、エスプロカルブ、エトベンザニド、カフェンストロール、クロメプロップ、ジメタメトリン、ダイムロン、オキサジクロメホン、ビフェノックス、ピリブチカルブ、ピリミノバック、ピリフタリド、プレチラクロール、ブロモブチド、ベンゾフェナップ、ベンチオカーブ、ペントキサゾン、ベンフレセート、メフェナセット、フェントラザミド、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、スルコトリオン及びメソトリオンから選択される1種又は2種以上の化合物である(1)に記載の水田用殺菌除草組成物、
【0006】
(4)除草活性を有する化合物がベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、インダノファン、シハロホップブチル、エスプロカルブ、クロメプロップ、ジメタメトリン、オキサジクロメホン、プレチラクロール、ベンチオカーブ、メフェナセット及びフェントラザミドから選択される1種又は2種以上の化合物である(1)に記載の水田用殺菌除草組成物、
(5)イネいもち病に対して防除活性を有する化合物1重量部に対して、除草活性を有する化合物を0.0001〜10重量部の割合で含有する(1)乃至(4)いずれかに記載の水田用殺菌除草組成物、
(6)(1)乃至(5)いずれかに記載の水田用殺菌除草組成物を、水稲移植後に10アール当たり100g〜10kgの範囲で処理することを特徴とするイネいもち病及び水田雑草の同時防除方法、
【0007】
(7)イネいもち病に対して防除活性を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物を含有する殺菌剤組成物と、ベンスルフロンメチル、アジムスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、インダノファン、シハロホップブチル、テニルクロール、エスプロカルブ、エトベンザニド、カフェンストロール、クロメプロップ、ジメタメトリン、ダイムロン、オキサジクロメホン、ビフェノックス、ピリブチカルブ、ピリミノバック、ピリフタリド、プレチラクロール、ブロモブチド、ベンゾフェナップ、ベンチオカーブ、ペントキサゾン、ベンフレセート、メフェナセット、フェントラザミド、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、スルコトリオン及びメソトリオンから選択される1種又は2種以上の化合物を含有する除草剤組成物を水稲移植後に同時処理することを特徴とするイネいもち病及び水田雑草の同時防除方法、
(8)イネいもち病に対して防除活性を有する化合物がプロベナゾール、チアジニル、オリサストロビン及びN−(2−シアノフェニル)−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキサミドから選択される1種又は2種以上の化合物である(7)に記載のイネいもち病及び水田雑草の同時防除方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、水稲移植後に本田施用することにより、水稲に対して薬害を与えず、長期にわたる除草効果とイネいもち病防除効果が得られ、且つイネいもち病に対して相乗効果を有する水田用殺菌除草組成物及び省力的防除方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のイネいもち病に対して防除活性を有する化合物である、プロベナゾール(probenazole)、チアジニル(tiadinil)及びオリサストロビン(orysastrobin)は、公知文献(例えば、ザペスティサイドマニュアル(The Pesticide Manual thirteenth Edition 2003)、渋谷成美,他3名,「SHIBUYA INDEX−2005−10th Edition」,SHIBUYA INDEX研究会等。)に記載の公知化合物である。また、N−(2−シアノフェニル)−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキサミドは特表2001−522840(製造実施例No.1)に記載の化合物であり、イネに抵抗力を誘発させてイネいもち病に対して防除活性を有することが記載されている。従って、N−(2−シアノフェニル)−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキサミドは、チアジニル及びプロベナゾールと同様にイネに抵抗性を誘発させていもち病を防除せしめるという点で極めて類似した作用メカニズムを有する化合物とみなすことができ、本発明の構成である除草剤との混用においても同様の効果を有することが期待できる。本発明のイネいもち病に対して防除活性を有する化合物は、多くの除草活性を有する化合物との組み合わせで良好なイネいもち病防除効果及び除草効果を発揮する。
【0010】
本発明の除草活性を有する化合物としては、水田用除草剤として使用できる化合物であれば良く、ベンスルフロンメチル(bensulfuron−methyl)、アジムスルフロン(azimsulfuron)、ピラゾスルフロンエチル(pyrazosulfuron−ethyl)、イマゾスルフロン(imazosulfuron)、シノスルフロン(cinosulfuron)、シクロスルファムロン(cyclosulfamuron)、インダノファン(indanofan)、シハロホップブチル(cyhalofop−butyl)、テニルクロール(thenylchlor)、エスプロカルブ(esprocarb)、エトベンザニド(etobenzanid)、カフェンストロール(cafenstrole)、クロメプロップ(clomeprop)、ジメタメトリン(dimethametryn)、ダイムロン(daimuron)、オキサジクロメホン(oxaziclomefone)、ビフェノックス(bifenox)、ピリブチカルブ(pyributicarb)、ピリミノバック(pyriminobac)、ピリフタリド(pyriftalid)、プレチラクロール(pretilachlor)、ブロモブチド(bromobutide)、ベンゾフェナップ(benzofenap)、ベンチオカーブ(benthiocarb)、ペントキサゾン(pentoxazone)、ベンフレセート(benfuresate)、メフェナセット(mefenacet)、フェントラザミド(fentrazamide)、ピラクロニル(pyraclonil)、ベンゾビシクロン(benzobicyclon)、スルコトリオン(sulcotrione)及びメソトリオン(mesotrione)が好ましく、特に好ましくはベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、インダノファン、シハロホップブチル、エスプロカルブ、クロメプロップ、ジメタメトリン、オキサジクロメホン、プレチラクロール、ベンチオカーブ、メフェナセット及びフェントラザミドである。
これらは公知文献(例えば、ザペスティサイドマニュアル(The Pesticide Manual thirteenth Edition 2003)、渋谷成美,他3名,「SHIBUYA INDEX−2005−10th Edition」,SHIBUYA INDEX研究会等。)に記載の公知化合物である。
【0011】
本発明の水田用殺菌除草組成物中の有効成分の配合割合は、水田用殺菌除草組成物100重量部中イネいもち病に対して防除活性を有する化合物が0.1〜30重量部の範囲であり、好ましくは1〜10重量部の範囲であり、除草活性を有する化合物が0.01〜20重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜10重量部の範囲である。また、イネいもち病に対して防除活性を有する化合物と除草活性を有する化合物の割合は、イネいもち病に対して防除活性を有する化合物1重量部に対して、除草活性を有する化合物が0.0001〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.001〜1重量部の範囲である。
本発明の水田用殺菌除草組成物は、農薬製剤上の常法に従い使用上都合の良い形状に製剤して使用するのが一般的である。即ち、有効成分を適当な不活性担体に、又は必要に応じて補助剤と一緒に適当な割合に配合して溶解、分離、懸濁、混合、含浸、吸着若しくは付着させて適宜の剤型、例えば懸濁剤、乳剤、液剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤、粉剤、錠剤、パック剤、マイクロカプセル等に製剤して使用すれば良い。
【0012】
又、イネいもち病に対して防除活性を有する化合物と除草活性を有する化合物を各々別の製剤とし、それらを予め混合して本発明の水田用殺菌除草組成物を製造することもできる。このような混合製剤においては、同じ形態の製剤を混合(例えば、水和剤と水和剤の混合、乳剤と乳剤の混合、粒剤と粒剤の混合等。)することが好ましいが、使用に際し不都合を生じない組み合わせであれば特に限定されるものではない。
【0013】
本発明で使用できる不活性担体としては固体又は液体の何れであっても良く、固体の担体になりうる材料としては、例えばダイズ粉、穀物粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、タバコ茎粉、クルミ殻粉、ふすま、繊維素粉末、植物エキス抽出後の残渣、粉砕合成樹脂等の合成重合体、粘土類(例えばカオリン、ベントナイト、酸性白土等)、タルク類(例えばタルク、ピロフィライト等)、シリカ類{例えば珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン(含水微粉珪素、含水珪酸ともいわれる合成高分散珪酸で、製品により珪酸カルシウムを主成分として含むものもある。)}、活性炭、イオウ粉末、軽石、焼成珪藻土、レンガ粉砕物、フライアッシュ、砂、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム等の無機鉱物性粉末、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体、硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料、堆肥等を挙げることができ、これらは単独で若しくは二種以上の混合物の形で使用される。
【0014】
液体の担体になりうる材料としては、それ自体溶媒能を有するものの他、溶媒能を有さずとも補助剤の助けにより有効成分化合物を分散させうることとなるものから選択され、代表例として次に挙げる担体を例示できるが、これらは単独で若しくは2種以上の混合物の形で使用され、例えば水、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えばケロシン、鉱油等)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えばジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、ジイソプピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレ−ト等)、アミド類(例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ニトリル類(例えばアセトニトリル等)、ジメチルスルホキシド類等を挙げることができる。
【0015】
他の補助剤としては次に例示する代表的な補助剤を挙げることができ、これらの補助剤は目的に応じて使用され、単独で、ある場合は二種以上の補助剤を併用し、又ある場合には全く補助剤を使用しないことも可能である。
有効成分化合物の乳化、分散、可溶化及び/又は湿潤の目的のために界面活性剤が使用され、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルアリールスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸縮合物、リグニンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等の界面活性剤を挙げることができる。
又、有効成分化合物の分散安定化、粘着及び/又は結合の目的のために、例えばカゼイン、ゼラチン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、松根油、糠油、ベントナイト、リグニンスルホン酸塩等の補助剤を使用することもできる。
【0016】
固体製品の流動性改良のために、例えばワックス、ステアリン酸塩、燐酸アルキルエステル等の補助剤を使用することもできる。
懸濁性製品の解こう剤として、例えばナフタレンスルホン酸縮合物、縮合燐酸塩等の補助剤を使用することもできる。
消泡剤として、例えばシリコーン油等の補助剤を使用することもできる。
防腐剤として、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、パラクロロメタキシレノール、パラオキシ安息香酸ブチル等を添加することもできる。
更に必要に応じて機能性展着剤、ピペロニルブトキサイド等の代謝分解阻害剤等の活性増強剤、プロピレングリコール等の凍結防止剤、BHT等の酸化防止剤、紫外線吸収剤等その他の添加剤も加えることが可能である。
【0017】
本発明の水田用殺菌除草組成物を使用する際にはそのまま、又は水等で適宜希釈若しくは懸濁させた形でイネいもち病及び雑草を防除するための有効量をイネ移植後の水田に使用すれば良く、例えば本田の水面施用、茎葉への散布、土壌等に処理して根から吸収させて使用することができ、その施用量は有効成分の混合割合、気象条件、製剤形態、施用方法、防除対象雑草種等により異なるが、通常、10アール当たり夫々の有効成分量として1〜1000gの範囲であり、好ましくは10〜500gの範囲である。乳剤、水和剤、液剤、フロアブル剤等を水で希釈して施用する場合、夫々の有効成分濃度は0.00001〜0.1%の範囲であり、粒剤、粉剤等は希釈することなくそのまま使用すれば良く、フロアブル剤は希釈せずに使用することもできる。イネいもち病に対して防除活性を有する化合物を有効成分とする殺菌剤と除草活性を有する化合物を有効成分とする除草剤とを、水稲移植後に同時に処理する場合、例えば粒剤であれば10アール当たり500g〜5kgの範囲で、フロアブル剤であれば250ml〜1Lの範囲で処理することによりイネいもち病及び雑草の同時防除も可能である。
【0018】
又、イネいもち病に対して防除活性を有する化合物と除草活性を有する化合物を夫々別の製剤として、これらの有効量を同時にイネ移植後の水田に使用することによっても本発明の効果を発揮することができる。夫々の製剤をそのまま、又は水等で適宜希釈若しくは懸濁させた形でイネいもち病及び雑草を防除するための有効量をイネ移植後の水田に使用すれば良く、例えば本田の水面施用、茎葉への散布、土壌等に処理して根から吸収させて使用することができる。その施用量は有効成分の混合割合、気象条件、製剤形態、施用方法、防除対象雑草種等により異なるが、イネいもち病に対して防除活性を有する化合物の場合、10アール当たり有効成分量として1〜1000gの範囲であり、好ましくは10〜500gの範囲であり、又、除草活性を有する化合物の場合、10アール当たり有効成分量として1〜500gの範囲であり、好ましくは5〜100gの範囲である。
本発明の水田用殺菌除草組成物並びにイネいもち病及び雑草の同時防除方法における処理時期としては、有効成分の種類、気象条件、製剤形態、施用方法、防除対象雑草種等により異なるが、イネ移植直後〜30日以内であれば良く、好ましくはイネ移植直後〜20日以内、更に好ましくはイネ移植直後〜15日以内である。
【0019】
本発明の水田用殺菌除草組成物はイネいもち病(Magnaporthe grisea (Pyricularia oryzae))に対して防除効果を示す他、各種雑草に対しても除草効果を示すものであり、例えばイヌビエ(Echinochloa crus-galli)、エゾノサヤヌカグサ(Leersia oryzoides)、タイヌビエ(Echinochloa oryzicola)、クログワイ(Eleocharis kuroguwai)、コウキヤガラ(Scirpus planiculmis)、シズイ(Scirpus nipponicus)、タマガヤツリ(Cyperus difformis)、イヌホタルイScirpus juncoides)、ミズガヤツリ(Cyperus serotinus) 、アゼナ(Lindernia procumbens)、アブノメ(Dopatrium junceum)、アメリカアゼナ(Lindernia dubia)、ウリカワ(Sagittaria pygmaea)、オモダカ(Sagittaria trifolia)、キカシグサ(Rotala indica)、コナギ(Monochoria vaginalis)、ヒメミソハギ(Ammannia multiflora)、ヒルムシロ(Potamogeton distinctus)、ヘラオモダカ(Alisma canaliculatum)、ミズアオイ(Monochoria korsakowii)、ミゾハコベ(Elatine triandra)、ウキクサ(Spirodela polyrhiza)等の雑草を例示することができる。以下に本発明の代表的な実施例及び試験例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中、部は重量部を示す。
【実施例】
【0020】
製剤例1
チアジニル6.0部、インダノファン0.47部、クロメプロップ1.2部、ベンスルフロンメチル0.25部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.4部、ポリビニルアルコール2.0部、合成含水珪酸1.0部及びカオリンクレー88.68部を均一に混合粉砕して、適量の水を加えて混練し、造粒乾燥して粒剤とした。
【0021】
製剤例2
プロベナゾール8.0部、オキサジクロメホン0.27部、クロメプロップ1.2部、ベンスルフロンメチル0.25部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.4部、ポリビニルアルコール2.0部、合成含水珪酸1.0部及びカオリンクレー86.88部を均一に混合粉砕して、適量の水を加えて混練し、造粒乾燥して粒剤とした。
【0022】
製剤例3
オリサストロビン3.3部、フェントラザミド0.67部、ベンスルフロンメチル0.25部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.4部、ポリビニルアルコール2.0部、合成含水珪酸1.0部及びカオリンクレー92.38部を均一に混合粉砕して、適量の水を加えて混練し、造粒乾燥して粒剤とした。
【0023】
製剤例4
チアジニル6.0部、シハロホップブチル0.6部、ジメタメトリン0.2部、ピラゾスルフロンエチル0.1部、プレチラクロール1.5部、ジオクチルスルホサクシネート0.5部、ポリカルボン酸ソーダ2.0部、ベントナイト30.0部、炭酸ナトリウム1.0部及び炭酸カルシウム58.1部を均一に混合粉砕して、適量の水を加えて混練し、造粒乾燥して粒剤とした。
【0024】
製剤例5
プロベナゾール8.0部、エスプロカルブ5.0部、ジメタメトリン0.2部、ピラゾスルフロンエチル0.1部、プレチラクロール1.5部、ジオクチルスルホサクシネート0.5部、ポリカルボン酸ソーダ2.0部、ベントナイト30.0部、炭酸ナトリウム1.0部及び炭酸カルシウム51.7部を均一に混合粉砕して、適量の水を加えて混練し、造粒乾燥して粒剤とした。
【0025】
製剤例6
オリサストロビン3.3部、ベンチオカーブ5.0部、ベンスルフロンメチル0.25部、メフェナセット1.5部、ジオクチルスルホサクシネート0.5部、ポリカルボン酸ソーダ2.0部、ベントナイト30.0部、炭酸ナトリウム1.0部及び炭酸カルシウム56.45部を均一に混合粉砕して、適量の水を加えて混練し、造粒乾燥して粒剤とした。
【0026】
試験例1 イネいもち病に対する防除効果試験
温室内で3〜3.5葉期水稲を1/5000アールポットに移植し、移植5日後に製剤例で示した方法に準じて調製した薬剤の所定薬量を水面施用した。処理7日後に罹病水稲を温室に設置し、いもち病菌を連続感染させた。感染8日後に病班数を調査し、下記の式より防除価を算出した。同時に水稲薬害を調査した。薬害は肉眼判定で行い、「−」は薬害なしを表す。結果を第1表に示す。
防除価=(1−薬剤処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
【0027】
試験例2 イヌビエ及びイヌホタルイに対する除草効果
屋外に置いた1/5000アールポットにイヌビエ及びイヌホタルイを播種し、湛水深5cmに保った。播種翌日に製剤例で示した方法に準じて調製した薬剤の所定薬量を水面施用した。薬剤処理56日後に肉眼判定(0:反応なし〜100:完全枯死)を行った。結果を第1表に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
試験例1及び試験例2の結果から、本発明の水田用殺菌除草組成物は、イネいもち病に対して防除活性を有する化合物を単独で使用した場合に比べ、イネいもち病に対する防除効果が増大し、除草剤剤の効果を損なうことなく良好な除草効果を示し、且つ水稲に薬害は全く見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネいもち病に対して防除活性を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物と除草活性を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物とを含有することを特徴とする水田用殺菌除草組成物。
【請求項2】
イネいもち病に対して防除活性を有する化合物がプロベナゾール、チアジニル、オリサストロビン及びN−(2−シアノフェニル)−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキサミドから選択される1種又は2種以上の化合物である請求項1に記載の水田用殺菌除草組成物。
【請求項3】
除草活性を有する化合物がベンスルフロンメチル、アジムスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、インダノファン、シハロホップブチル、テニルクロール、エスプロカルブ、エトベンザニド、カフェンストロール、クロメプロップ、ジメタメトリン、ダイムロン、オキサジクロメホン、ビフェノックス、ピリブチカルブ、ピリミノバック、ピリフタリド、プレチラクロール、ブロモブチド、ベンゾフェナップ、ベンチオカーブ、ペントキサゾン、ベンフレセート、メフェナセット、フェントラザミド、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、スルコトリオン及びメソトリオンから選択される1種又は2種以上の化合物である請求項1に記載の水田用殺菌除草組成物。
【請求項4】
除草活性を有する化合物がベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、インダノファン、シハロホップブチル、エスプロカルブ、クロメプロップ、ジメタメトリン、オキサジクロメホン、プレチラクロール、ベンチオカーブ、メフェナセット及びフェントラザミドから選択される1種又は2種以上の化合物である請求項1に記載の水田用殺菌除草組成物。
【請求項5】
イネいもち病に対して防除活性を有する化合物1重量部に対して、除草活性を有する化合物を0.0001〜10重量部の割合で含有する請求項1乃至4いずれか1項に記載の水田用殺菌除草組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項に記載の水田用殺菌除草組成物を、水稲移植後に10アール当たり100g〜10kgの範囲で処理することを特徴とするイネいもち病及び水田雑草の同時防除方法。
【請求項7】
イネいもち病に対して防除活性を有する化合物から選択される1種又は2種以上の化合物を含有する殺菌剤組成物と、ベンスルフロンメチル、アジムスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、インダノファン、シハロホップブチル、テニルクロール、エスプロカルブ、エトベンザニド、カフェンストロール、クロメプロップ、ジメタメトリン、ダイムロン、オキサジクロメホン、ビフェノックス、ピリブチカルブ、ピリミノバック、ピリフタリド、プレチラクロール、ブロモブチド、ベンゾフェナップ、ベンチオカーブ、ペントキサゾン、ベンフレセート、メフェナセット、フェントラザミド、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、スルコトリオン及びメソトリオンから選択される1種又は2種以上の化合物を含有する除草剤組成物を水稲移植後に同時処理することを特徴とするイネいもち病及び水田雑草の同時防除方法。
【請求項8】
イネいもち病に対して防除活性を有する化合物がプロベナゾール、チアジニル、オリサストロビン及びN−(2−シアノフェニル)−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキサミドから選択される1種又は2種以上の化合物である請求項に7記載のイネいもち病及び水田雑草の同時防除方法。

【公開番号】特開2007−16023(P2007−16023A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159482(P2006−159482)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】