説明

水着

【課題】高い滑り止め効果を有する滑り止め材を備えた水着を提供する。
【解決手段】本発明の水着は、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を有する滑り止め材を備えている。滑り止め材は、好ましくは、経糸がナノ繊維を含む糸で構成され、緯糸が、繊維径が2μm以上の繊維から形成された糸で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水着に関するものであり、詳細には、滑り止め材が備えられた水着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーンやゴム等の弾性部材が開口部の周りに取り付けられた水着が知られている(特許文献1)。この水着では、開口部の周りに弾性部材が設けられることにより、水着の着用者へのフィット性や着用者の肌へのシール性が高められている。また、特許文献2には、着用者の肌とのずれを防止するために、ナノ繊維で形成された編布または織布のバンドが取り付けられたスポーツウェアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−256269号公報
【特許文献2】特表2011−517475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、水着の技術の発展により、水着に対する要求性能がますます高まっており、例えば競泳用の水着では、水着の着用者に対するより高い密着性が求められている。そのような点から、例えば特許文献1に開示された水着に対し、さらに高い滑り止め効果を有する滑り止め材を備えた水着が求められている。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い滑り止め効果を有する滑り止め材を備えた水着を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の水着とは、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を有する滑り止め材を備えているところに特徴を有する。本発明の水着は、ナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を有する滑り止め材を備えているため、着用者の肌等に対する水着の密着性やフィット性が高められる。また、ナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて織布を構成しているため、当該織布を有する滑り止め材が十分な耐久性を有するようになる。従って、水着のように伸縮性の高い素材に滑り止め材を取り付けても滑り止め材が破断しにくくなるとともに、滑り止め材が肌等と擦れるような状況で使用されてもナノ繊維が切れにくくなる。
【0007】
滑り止め材は、水着の内側面に、水着の開口部の縁に沿って設けられていることが好ましい。このように滑り止め材が設けられていれば、水着の端が着用者の肌等に密着して、水着の端がずれたり捲れたりしにくくなる。
【0008】
織布は、経糸がナノ繊維を含む糸で構成され、緯糸が、繊維径が2μm以上の繊維から形成された糸で構成されていることが好ましい。織布の経糸がナノ繊維を含む糸から構成されていれば、織布の製造時にナノ繊維が切断されにくくなり、滑り止め材が良好な滑り止め効果を有しやすくなる。
【0009】
織布は、経糸が緯糸よりも水着の内側面に多く出ているものであることが好ましい。滑り止め材がこのような織布から構成されていれば、ナノ繊維を含む糸が着用者の肌等とより接するようになって、滑り止め材の滑り止め効果が高められる。
【0010】
ナノ繊維を含む糸は、水着の開口部の縁に沿って配向していることが好ましい。ナノ繊維を含む糸が水着の開口部の縁に沿って配向していれば、水着の端が捲れる方向に対してナノ繊維を含む糸が略垂直に配向することとなり、ナノ繊維を含む糸による滑り止め効果が高まる。
【0011】
滑り止め材は、例えば、着用者の肌と接するように設けられている。この場合、滑り止め材は、着用者の肌に対する水着の密着性やフィット性を高めるように作用する。
【0012】
本発明の水着は、上半身に着用する上衣部材と下半身に着用する下衣部材とから構成され、滑り止め材が、上衣部材の内側面に、水着を着用した際に下衣部材と接するように設けられていてもよい。このような水着では、上衣部材が捲れ上がりにくくなって、腹部の露出を抑えたい女性にとって好ましく使用される。また、水着を着て運動したりするような場合、上衣部材が捲れ上がりにくくなって、運動しやすくなる。
【0013】
上衣部材は、外装部と、外装部の内側面に取り付けられ、外装部の裾より下方に延在する内装部とを有するものであってもよい。このとき、滑り止め材は、外装部の内側面に、水着を着用した際に下衣部材と接するように設けられていることが好ましい。このように上衣部材が外装部と内装部の二重構造を有している場合は、滑り止め材が外装部の内側面に設けられていてもよい。この場合もまた、滑り止め材が設けられることにより、上衣部材の外装部が捲れ上がりにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水着は、ナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を有する滑り止め材を備えているため、着用者の肌等に対する水着の密着性やフィット性が高められる。また、滑り止め材が十分な耐久性を有しているため、水着のように伸縮性の高い素材に滑り止め材を取り付けても滑り止め材が破断しにくくなるとともに、滑り止め材が肌等と擦れるような状況で使用されてもナノ繊維が切れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の水着の一実施態様として、ワンピース型の水着の概略図を表す。
【図2】本発明の水着の一実施態様として、スパッツ型の水着の概略図を表す。
【図3】本発明の水着の一実施態様として、ツーピース型の水着の概略図を表す。
【図4】図3に示した水着の上衣部材の変形例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水着は滑り止め材を備えたものである。滑り止め材は水着の内側面、すなわち水着を着用した際に着用者の肌に面する側の表面に設けられる。本発明の水着は滑り止め材が備えられているため、着用者に対する水着のフィット性が高められ、水泳中等に水着がずれにくくなる。
【0017】
本発明の水着の形状は特に限定されない。男性用の水着としては、ブリーフ型、トランクス型、スパッツ型等が挙げられ、女性用の水着としては、ワンピース型、ツーピース型(例えば、ビキニ型、タンクトップビキニ型、セパレーツ型)等が挙げられる。
【0018】
滑り止め材は、水着の内側面に設けられる限りその取付位置は特に限定されない。滑り止め材は、例えば、着用者の肌と接するように設けられる。この場合、滑り止め材は、着用者の肌に対する水着の密着性やフィット性を高めるように作用する。また、水着が2以上の分離した部材から構成され、一方の部材が他方の部材に重なるように着用されるような水着の場合は、滑り止め材は、一方の部材の内側面に他方の部材と接する位置に設けられてもよい。この場合、滑り止め材は、一方の部材の他方の部材に対する密着性を高めるように作用し、その結果、一方の部材が捲れ上がったりずれたりしにくくなる。
【0019】
滑り止め材は、水着の内側面に水着の開口部の縁に沿って設けられていることが好ましい。水着の開口部としては、着用者の脚を通す脚開口部、着用者の胴を通す胴周り開口部、着用者の腕を通す腕開口部、着用者の首(頭部)を通す首周り開口部等が挙げられる。さらに、水着の開口部は着用者の体の一部を通す部分に限らず、例えば、水着の背中に形成された開口も含まれる。また、例えばビキニ型の水着のように紐でくくることにより着用する水着の場合は、紐でくくることにより形成された開口が水着の開口部に相当する。滑り止め材が、水着の内側面に、水着の開口部の縁に沿って設けられていれば、水着の端が着用者の肌等に密着して、水着の端がずれたり捲れたりしにくくなる。滑り止め材を水着の開口部の縁に沿って設ける場合、滑り止め材は3mm〜50mm程度の幅で設ければよい。
【0020】
本発明の水着に備えられる滑り止め材は、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を有している。なお以下、「ナノ繊維を含む糸」のことを「ナノ繊維糸」と称する場合がある。
【0021】
本発明において、ナノ繊維とは繊維径が1μm以下の繊維を意味する。なお、ナノ繊維の「繊維径」とは、単繊維の直径を意味する。単繊維の断面形状が円形でない異形断面の場合には、単繊維の異形断面の外接円と内接円の直径の平均値を繊維径とする。ナノ繊維の繊維径は、好ましくは900nm以下であり、より好ましくは800nm以下である。ナノ繊維の繊維径の下限は特に限定されないが、ナノ繊維の製造容易性の点から、ナノ繊維の繊維径は100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましい。
【0022】
ナノ繊維の種類は特に限定されず、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、あるいは合成繊維等を用いることができる。ナノ繊維が合成繊維である場合、ナノ繊維の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド類等が挙げられる。ナノ繊維の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形、星形等が挙げられる。
【0023】
本発明では、ナノ繊維が複数束ねられて、織布を構成するための糸が形成されている。すなわち、ナノ繊維はマルチフィラメント糸として織布中に配されている。ナノ繊維を含むマルチフィラメント糸は、糸条断面のナノ繊維数が500本〜20000本であることが好ましく、1000本〜15000本であることがより好ましい。ナノ繊維を含むマルチフィラメント糸は、ナノ繊維より繊維径の大きい繊維を含んでいてもよい。ナノ繊維を含むマルチフィラメントは、例えば、特開2005−325494号公報や特開2007−9339号公報に記載される方法に従い製造することができる。
【0024】
ナノ繊維を含むマルチフィラメント糸の繊度は特に限定されないが、繊度は10dtex以上が好ましく、20dtex以上がより好ましく、500dtex以下が好ましく、300dtex以下がより好ましい。ナノ繊維を含むマルチフィラメント糸がこのような繊度を有していれば、マルチフィラメント糸が適度な強度を有するようになるとともに、マルチフィラメント糸から織布を容易に形成できるようになる。
【0025】
ナノ繊維糸から構成された滑り止め材は、繊維の比表面積が大きくなるとともに、多数の繊維間隙が存在するようになる。そのため、ナノ繊維糸から構成された滑り止め材は肌等に対し高い吸着性を有し、高い滑り止め効果を発現する。しかし、ナノ繊維は繊維径が非常に細いために繊維自体の強度が弱く、滑り止め材の構成を工夫しないと、滑り止め材からナノ繊維の断片が多く剥がれたり、滑り止め材が十分な耐久性を有しなくなるおそれがある。さらに、ナノ繊維が切断されることにより、滑り止め材の肌触りも悪化するおそれがある。例えば、ナノ繊維から不織布を形成するような場合には、1本1本のナノ繊維が切れて不織布表面が毛羽立ちやすくなる。つまり、ナノ繊維から形成された不織布を滑り止め材として用いるような場合は、滑り止め材の肌触りが悪くなったり、ナノ繊維間の繊維間隙が良好に形成されにくくなって、滑り止め材の滑り止め効果が低下しやすくなる。
【0026】
そこで本発明では、ナノ繊維糸を用いて織布を形成し、この織布を滑り止め材として用いている。このようにナノ繊維を用いることにより、1本1本のナノ繊維が切れにくくなってナノ繊維が長繊維として存在しやすくなるとともに、ナノ繊維の繊維間隙が良好に形成され、滑り止め材の滑り止め効果が高められる。さらに、ナノ繊維糸を織布の経糸および緯糸のいずれか一方に用いることにより、滑り止め材が十分な耐久性を有するようなる。つまり、水着のように伸縮性の高い素材に滑り止め材を取り付けても、滑り止め材が破断しにくくなる。また、滑り止め材が肌等と擦れるような状況で使用されても、ナノ繊維が切れにくくなる。
【0027】
滑り止め材の織布の織組織は特に限定されず、公知の織組織を採用すればよい。織布の織組織としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。織布はナノ繊維糸のみから構成されていてもよく、ナノ繊維糸とナノ繊維を含まない糸とから構成されていてもよい。
【0028】
滑り止め材を構成する織布は、具体的には、経糸および緯糸の一方がナノ繊維糸で構成され、他方がナノ繊維を含まない糸で構成される。好ましくは、経糸および緯糸の他方は、繊維径が2μm以上(より好ましくは5μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上)の繊維から形成された糸で構成されていることが好ましい。なお、繊維径が2μm以上の繊維から形成された糸とは、実質的に繊維径が2μm以上の繊維のみから形成された糸を意味する。繊維径が2μm以上の繊維から形成された糸はモノフィラメント糸であってもマルチフィラメント糸であってもよいが、繊維径が2μm以上の繊維から形成された糸はマルチフィラメント糸であることが、滑り止め効果を高める上で好ましい。
【0029】
ナノ繊維糸は、織布の経糸として用いることが好ましい。より好ましくは、経糸がナノ繊維糸で構成され、緯糸が、繊維径が2μm以上の繊維から形成された糸で構成されている。経糸がナノ繊維糸から構成されていれば、織布の製造時にナノ繊維が切断されにくくなり、滑り止め材が良好な滑り止め効果を有しやすくなる。
【0030】
経糸がナノ繊維糸から構成されている場合、経糸は緯糸よりも水着の内側面に多く出ていることが好ましい。具体的には、滑り止め材を水着の内側面から見たとき、経糸が緯糸の上をまたぐ数(緯糸の数)が、緯糸の下をくぐる数(緯糸の数)よりも少ない織組織であることが好ましい。すなわち、経糸が緯糸の上をまたぐ数をm、経糸が緯糸の下をくぐる数をnとしたときに、m/n>1となる織組織であることが好ましく、m/n≧2となる織組織であることがより好ましい。そのような織組織としては、三つ織(2/1の綾)、四つ織(3/1の綾)等の綾織;五枚たて朱子織、八枚たて朱子織、十枚たて朱子織等のたて朱子織が挙げられる。滑り止め材がこのような織布から構成されていれば、ナノ繊維糸が着用者の肌等とより接するようになって、滑り止め材の滑り止め効果が高められる。
【0031】
経糸がナノ繊維糸から構成されている場合、経糸には、ナノ繊維糸に加え、ナノ繊維を含まない糸が含まれていてもよい。例えば、経糸に用いられるナノ繊維を含まない糸として、弾性糸を用いてもよい。弾性糸としては、ポリウレタン糸等が挙げられる。経糸がナノ繊維糸と弾性糸とから構成されていれば、弾性糸が収縮することによってナノ繊維糸が弛緩して浮き上がった状態となり、ナノ繊維糸による滑り止め効果が高められる。また、織布の経糸の配向方向に対する強度を確保するために、経糸には、ナノ繊維糸に加えて一般的な糸(例えば、繊維径が2μm以上の繊維から形成された糸)が含まれていてもよい。
【0032】
ナノ繊維糸に加え、ナノ繊維を含まない糸を経糸として用いる場合は、経糸を表に出るものと裏に出るものとの二重に配して用いてもよい。例えば、ナノ繊維糸を水着の内側面に多く出る経糸(表経糸)として用い、ナノ繊維を含まない糸を水着の本体に面する側の表面に多く出る経糸(裏経糸)として用いることが好ましい。このように経糸を構成することにより、経糸にナノ繊維を含まない糸を用いつつ、ナノ繊維糸を水着の内側面に多く出るように織布を構成することが可能となる。
【0033】
ナノ繊維糸は、水着の開口部の縁に沿って配向していることが好ましい。ナノ繊維糸が水着の開口部の縁に沿って配向していれば、水着の端が捲れる方向に対してナノ繊維糸が略垂直に配向することとなり、ナノ繊維糸による滑り止め効果が高められる。より好ましくは、ナノ繊維糸が織布の経糸として使用され、経糸(すなわちナノ繊維糸)が水着の開口部の縁に沿って配向している。
【0034】
滑り止め材はナノ繊維糸から構成された織布を有するが、それ以外の部材を有していてもよい。例えば、ナノ繊維糸から構成された織布を他のシート部材に積層して滑り止め材を形成してもよい。この場合、ナノ繊維糸から構成された織布が肌等と接するように、積層体からなる滑り止め材が水着に取り付けられる。
【0035】
滑り止め材は、例えば次のように構成される。滑り止め材は、ナノ繊維糸を経糸に用いた織布から構成される。ナノ繊維糸は、繊維径約700nmのナノ繊維約8400本から形成され、約110dtexの繊度を有する。織布の経糸には、さらに、繊度約110dtexのポリエステル糸と繊度約940dtexのポリウレタン糸が用いられ、ナノ繊維糸が表経糸として用いられ、ポリエステル糸とポリウレタン糸が裏経糸として用いられる。織布の緯糸には、繊度約80dtexのポリエステル糸が用いられる。ナノ繊維糸以外のポリエステル糸とポリウレタン糸は、いずれも繊維径2μm以上の繊維から形成されている。織布は、経糸のナノ繊維糸が緯糸の上を5本分またいで緯糸の下を1本分くぐることにより形成され、その結果、より多くのナノ繊維糸が水着の内側面に露出するように配されることとなる。
【0036】
次に、本発明の水着の構成例について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0037】
図1には、ワンピース型の水着の概略図を示した。水着1は、着用者の脚を通す脚開口部と、着用者の頭部を通す首周り開口部と、着用者の腕を通す腕開口部を有する。図1に示した水着1には、脚開口部の縁2に沿って滑り止め材3が、首周り開口部の縁4に沿って滑り止め材5が、腕開口部の縁6に沿って滑り止め材7が設けられている。これらの滑り止め材3,5,7は、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を有していることが好ましい。
【0038】
図2には、スパッツ型の水着の概略図を示した。水着11は、着用者の脚を通す脚開口部と、着用者の胴を通す胴周り開口部を有する。図2に示した水着11には、脚開口部の縁12に沿って滑り止め材13が、胴周り開口部の縁14に沿って滑り止め材15が設けられている。これらの滑り止め材13,15は、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を有していることが好ましい。
【0039】
図1および図2に示した水着は、滑り止め材が着用者の肌と接するように設けられている。このように滑り止め材が設けられることにより水着の着用者に対する密着性やフィット性が高まり、泳ぐ際の抵抗が低くなって、速く泳げるようになることが期待される。
【0040】
一方、ツーピース型水着の一方の部材に滑り止め材が設けられ、この滑り止め材がツーピース型水着の他方の部材に接するように設けられる実施態様について、図3および図4を参照して説明する。
【0041】
図3には、ツーピース型水着のうち、いわゆるセパレーツ型水着の概略図を示した。水着21は、上半身に着用する上衣部材22と下半身に着用する下衣部材23とから構成されている。水着21は、着用していない状態では、上衣部材22と下衣部材23は互いに分離しているが、着用時には、水着21は、上衣部材22が下衣部材23に着用者の腰周りで重なるように着用される。すなわち、水着21は、上衣部材22が下衣部材23の一部(下衣部材23の上端部)と重なるように着用される。そのため、上衣部材22の裾を捲り上げると、着用者の腹部が露出する。
【0042】
上衣部材22の内側面には、胴周り開口部の縁すなわち裾24に沿って滑り止め材25が設けられている。そして、滑り止め材25が、水着を着用した際に下衣部材23と接するように設けられている。このように滑り止め材25が設けられた水着21は、上衣部材22が捲れ上がりにくくなって、腹部の露出を抑えたい女性にとって好ましく使用される。また、水着21を着て運動したりするような場合(陸上での運動や水中での歩行運動を含む)、上衣部材22の裾24が捲れ上がりにくくなって、運動しやすくなる。
【0043】
従来、図3に示したようないわゆるセパレーツ型水着では、上衣部材の内側面に、水着を着用した際に下衣部材と接する位置に滑り止め材を設けることはなされてこなかった。従って、上衣部材の内側面に設ける滑り止め材として、天然ゴム、シリコーン、ポリウレタン等の従来公知の弾性体を用いてもよい。しかし、より高い滑り止め効果を持たせるためには、滑り止め材として、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸から構成された織布、編布、または不織布を用いることが好ましく、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸から構成された織布を用いることがより好ましく、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を用いることがさらに好ましい。
【0044】
図4には、図3に示したセパレーツ型水着の上衣部材の変形例を示した。図4に示した上衣部材22は、外装部26と内装部27の二重構造を有している。具体的には、上衣部材22は、外装部26と、外装部26の内側面に取り付けられ、外装部26の裾28より下方に延在する内装部27とを有している。内装部27は、上端から所定範囲の部分が外装部26に接合されている。なお図4では、内装部27の上端が着用者の胸部付近に位置しているが、内装部27の上端の位置はこれに限定されない。一方、外装部26は、裾(下端)28から所定範囲の部分は内装部27に接合されておらず、外装部26は裾28が自由端として存在し、捲ることが可能である。そして、内装部27の裾29は、外装部26の裾より下方に位置している。図4に示した上衣部材22を着用するには、上衣部材22の内装部27を下衣部材の内側、すなわち着用者の肌と下衣部材との間に入れ、上衣部材22の外装部26を下衣部材の外側に重ねるようにする。
【0045】
図4に示した上衣部材22は、滑り止め材30が、外装部26の内側面に、水着を着用した際に下衣部材と接するように設けられている。このように滑り止め材30が設けられることにより、上衣部材22の外装部26の裾28が捲れ上がりにくくなる。このように上衣部材が外装部と内装部の二重構造を有している場合は、水着(上衣部材)の内側面に設ける滑り止め材として、外装部の内側面に滑り止め材が設けられていてもよい。
【0046】
図4に示した上衣部材においても、外装部の内側面に設ける滑り止め材として、天然ゴム、シリコーン、ポリウレタン等の従来公知の弾性体を用いてもよい。しかし、より高い滑り止め効果を持たせるためには、滑り止め材として、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸から構成された織布、編布、または不織布を用いることが好ましく、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸から構成された織布を用いることがより好ましく、繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を用いることがさらに好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1,11,21: 水着
3,5,7,13,15,25,30: 滑り止め材
22: 上衣部材
23: 下衣部材
26: 外装部
27: 内装部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が1μm以下のナノ繊維を含む糸を経糸および緯糸のいずれか一方に用いて構成された織布を有する滑り止め材を備えていることを特徴とする水着。
【請求項2】
前記滑り止め材は、水着の内側面に、水着の開口部の縁に沿って設けられている請求項1に記載の水着。
【請求項3】
前記織布は、経糸がナノ繊維を含む糸で構成され、緯糸が、繊維径が2μm以上の繊維から形成された糸で構成されている請求項1または2に記載の水着。
【請求項4】
前記織布は、経糸が緯糸よりも水着の内側面に多く出ているものである請求項3に記載の水着。
【請求項5】
前記ナノ繊維を含む糸は、水着の開口部の縁に沿って配向している請求項1〜4のいずれか一項に記載の水着。
【請求項6】
前記滑り止め材は、着用者の肌と接するように設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の水着。
【請求項7】
前記水着は、上半身に着用する上衣部材と下半身に着用する下衣部材とから構成され、
前記滑り止め材が、前記上衣部材の内側面に、水着を着用した際に前記下衣部材と接するように設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の水着。
【請求項8】
前記上衣部材は、外装部と、外装部の内側面に取り付けられ、外装部の裾より下方に延在する内装部とを有し、
前記滑り止め材が、前記外装部の内側面に、水着を着用した際に前記下衣部材と接するように設けられている請求項7に記載の水着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−14848(P2013−14848A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146541(P2011−146541)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591038820)株式会社デサント (42)