説明

水硬性材料用収縮低減剤組成物

【課題】
他の混和材料との組合せを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の耐凍結融解性を向上させ、自己および乾燥収縮を十分に低減することにより優れたひび割れ防止効果を発現する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤組成物を提供する。
【解決手段】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、固形分換算で5重量%水溶液の表面張力が55mN/m以上65mN/m以下であるポリオキシアルキレン化合物を含む収縮低減剤(A)およびpH調整剤(B)を必須成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性材料用収縮低減剤組成物に関する。より詳細には、優れた収縮低減機能、および優れた耐凍結融解性を付与することができ、保存安定性にも優れた水硬性材料用収縮低減剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性材料は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与える。このことから、水硬性材料は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物として広く用いられている。水硬性材料は、土木・建築構造物を構築するために欠かすことができない。
【0003】
水硬性材料は、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、内部に残った未反応水分の散逸を起こす。このため、乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じ、強度や耐久性が低下するという問題がある。土木・建築構造物の強度や耐久性等が低下すると、安全性の低下や修復コストの増大など、重大な問題が生じる。
【0004】
このような問題に対し、法規制が強化されてきている。1999年6月に成立した住宅の品質確保の促進に関する法律では、コンクリートのひび割れも瑕疵保証の対象となっている。2009年2月に改訂された、鉄筋コンクリート造に関する建築工事標準仕様書(JASS 5(日本建築学会))では、耐用年数が長期(100年以上)にわたるコンクリートにおける26週での収縮ひずみが800×10−6以下に規制された。
【0005】
最近、コンクリート硬化物の乾燥収縮を低減させる方法として、水硬性材料用収縮低減剤が重要視されている。上記JASS 5の改訂と同時に、水硬性材料用収縮低減剤に関する建築学会基準も制定された。
【0006】
水硬性材料用収縮低減剤として、炭素原子数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、2〜8価の多価アルコールのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加物(特許文献2参照)、低級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物(特許文献3参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献4参照)、低分子アルコール類(特許文献5参照)、2−エチルヘキサノールのアルキレンオキシド付加物(特許文献6参照)が報告されている。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、コンクリートに使用した場合に強度が低下するという問題がある。このため、強度を保つためにセメントペースト分の割合を高くする必要があり、コンクリートコストが高くなるという問題が生じる。
【0007】
コンクリートに使用した場合の強度低下を抑制し得る水硬性材料用収縮低減剤として、2〜8価の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物が報告されている(特許文献7、8参照)。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、いずれも、粉末樹脂、膨張材などの他の混和材料との組合せが必要となっており、コンクリートコストが高くなるという問題は解決できていない。
【0008】
さらに、これらの収縮低減剤を使用したコンクリート硬化体では、耐凍結融解性が著しく低下する問題がある。このために、寒冷地での使用が困難であり、さらには、これらの収縮低減剤が市場へ普及することの妨げの大きな一因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、他の混和材料との組合せを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、さらに優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化体のひび割れ発生を抑制し、耐凍結融解性をも向上させる保存安定性に優れた水硬性材料用収縮低減剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、収縮低減剤(A)とpH調整剤(B)とを必須成分して含む水硬性材料用収縮低減剤組成物であって、前記収縮低減剤(A)中に、固形分換算で5重量%水溶液の表面張力が55mN/m以上65mN/m以下であるポリオキシアルキレン化合物を含むものである。
【0011】
好ましい実施形態においては、本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物中のpH調整剤(B)としては、酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、塩酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、亜硝酸、炭酸等の無機酸およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸等の有機有機酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩が挙げられ、好ましくは、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、リンゴ酸およびグルコン酸からなる群より選ばれる酸のナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩である。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、さらに、少なくとも1種の減水剤(C)を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記ポリオキシアルキレン化合物(以下、ポリオキシアルキレン化合物(P))は、下記一般式(1);
RO−(AO)−H (1)
(一般式(1)中、Rは水素原子または、炭素数1〜30の活性水素を1個有する化合物の残基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、4〜500である)
で表わされる化合物である。
【0014】
また好ましい実施形態においては、前記ポリオキシアルキレン化合物(P)は、ポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミンである。
【0015】
また本発明の水硬性材料組成物は、前記水硬性材料用収縮低減剤組成物、セメントおよび骨材を必須成分とする水硬性材料組成物であって、前記水硬性材料用収縮低減剤組成物中のポリオキシアルキレン化合物(P)が、前記一般式(1)で表わされる化合物またはポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミンである水硬性材料組成物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物によれば、他の混和材料との組合せを必要とせず、保存安定性にも優れ、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能によりコンクリート硬化体のひび割れ発生を抑制することができる。さらに、比較的安価な減水剤を用いた場合でも十分な収縮低減効果を得ることができるため、さらにコストを抑えることができる。
【0017】
また、本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は耐凍結融解性をも向上させることができるので、より幅広い環境での耐久性に優れるコンクリート硬化体が得られる水硬性材料用収縮低減剤組成物を提供することができる。
【0018】
さらに、本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物が、AE剤を含む実施形態である場合には、連行空気の質を容易に改良できることから、収縮低減剤と消泡剤と減水剤およびAE剤の併用により、相乗的に耐凍結融解性を向上させることができ、コンクリート硬化体の耐久性をより向上させることができる。
【0019】
さらに、乾燥収縮だけでなくコンクリート打設から脱型までの間に生じる初期ひび割れ発生の主な要因とされている、外部への水分蒸発によらない収縮、いわゆる自己収縮についても優れた低減機能を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】モルタルによる自己ひずみの測定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、固形分換算で5重量%水溶液の表面張力が55mN/m以上65mN/m以下のポリオキシアルキレン化合物(P)を含む収縮低減剤(A)(以下、収縮低減剤(A)と記載)とpH調整剤(B)とを必須成分とするものである。
【0023】
収縮低減剤(A)
本発明の収縮低減剤(A)中に含まれる少なくとも1つのポリオキシアルキレン化合物(P)の5重量%水溶液(固形分換算)の表面張力は55m〜65mN/mであり、より好ましくは55〜63mN/mであり、さらに好ましくは55〜62mN/mである。前記ポリオキシアルキレン化合物(P)の5重量%水溶液の表面張力が55〜65mN/mであれば、得られたコンクリート硬化体が優れた耐凍結融解性を有しており、より幅広い環境での耐久性が向上したコンクリート硬化体を得ることができる。
【0024】
収縮低減剤(A)においては、水溶液の表面張力が先行特許に記載されている既存の収縮低減剤に比べて高いため、乾燥による水の蒸発によりコンクリート硬化体内部の細孔にメニスカスが形成されることにより生じる毛細管張力低減による収縮抑制効果は低いと考えられる。本発明の収縮低減剤組成物の一つの特長として、乾燥によるコンクリート硬化体からの水の蒸発を抑制することにより優れた収縮低減機能を発現することが挙げられる。
【0025】
したがって、乾燥材齢28日での、収縮低減剤(A)をセメントに対して固形分換算で2質量%添加したモルタル供試体の質量減少率(a)の、混和剤を添加しない基準モルタル供試体の質量減少率(b)に対する比率が(a)/(b)が好ましくは0.97以下であり、より好ましくは0.95以下であり、さらに好ましくは0.93以下である。乾燥材齢28日の質量減少率の比率(a)/(b)が0.97であることにより、モルタル供試体からの水分蒸発が抑制され、乾燥収縮低減機能を十分に得ることができる。
ポリオキシアルキレン化合物(P)
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物において、収縮低減剤(A)は、少なくとも1つの前記ポリオキシアルキレン化合物(P)を含む。
【0026】
前記収縮低減剤(A)中のポリオキシアルキレン化合物(P)の含有割合は、固形分換算で50重量%以上、好ましくは、80重量%以上、さらに好ましくは、
どある。
【0027】
ポリオキシアルキレン化合物(P)としては、固形分換算で5重量%水溶液の表面張力が55〜65mN/mのポリオキシアルキレン化合物であれば任意の適切な化合物を用いることができるが、好ましくは下記一般式(1):
RO−(AO)−H (1)
(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1〜30の活性水素を1個有する化合物の残基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、4〜500である)
で表わされるポリオキシアルキレン化合物(P1)または、ポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミン(P2)である。
【0028】
上記一般式(1)において、Rは水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは、Rは水素原子または炭素数1〜18の1価炭化水素基であり、より好ましくは、Rは水素原子または炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、最も好ましくは、Rは水素原子または炭素数1〜4の1価炭化水素基である。Rが水素原子または炭素数1〜30の1価炭化水素基であることで、消泡剤(B)およびAE剤(D)を併用する際に、コンクリート中への連行空気の量および質の調整が容易となり、優れた耐凍結融解性を付与することができる。さらに、優れた収縮低減機能を有することから、収縮低減性および耐凍結融解性に優れた水硬性材料用収縮低減剤組成物が得られる。
【0029】
上記一般式(1)において、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。上記の範囲の炭素原子数を有するオキシアルキレン基を用いることにより、本発明の水硬性材料用収縮低減剤を水に良好に溶解することができる。
【0030】
上記一般式(1)において、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わす。上記一般式(1)において、nは4〜500であり、好ましくは80〜400であり、より好ましくは90〜180である。オキシアルキレン基の付加モル数が4〜500であることにより、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、硬化物の強度低下を抑制し得るとともに、優れた収縮低減機能および耐凍結融解性を付与し得る。
【0031】
上記一般式(1)で表わされるポリオキシアルキレン化合物(P1)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類;メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、ブトキシポリエチレングリコール、ペンチルオキシポリエチレングリコール、ヘキシルオキシペンチルオキシポリエチレングリコール、オクチルオキシペンチルオキシポリエチレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレングリコールなどの低級アルコールおよび炭素原子数8以上の高級アルコールのオキシエチレン付加物;メトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、エトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、プロポキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ブトキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ペンチルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ブトキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ヘキシルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ヘキシルオキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、オクチルオキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、オクチルオキシポリエチレン/ポリブチレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレン/ポリプロピレングリコール、ノニルアルコキシポリエチレン/ポリブチレングリコールなどの低級アルコールおよび炭素原子数8以上の高級アルコールのオキシエチレンを必須とする2種以上のオキシアルキレン付加物などが挙げられる。なかでも、水硬性材料用収縮低減剤としての効果が十分に発揮され、十分な耐凍結融解性を付与し、かつ、コストも抑えることができるという点から、ポリエチレングリコール、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類およびメトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールなどの低級アルコールのオキシエチレン付加物が好ましい。上記一般式(1)で表わされるポリオキシアルキレン化合物は、1種の化合物でもよいし、2種以上の化合物であってもよい。
【0032】
本発明で用いるポリオキシアルキレン化合物(P1)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算での重量平均分子量(Mw)が、好ましくは3000を超え、より好ましくは3500〜500000、さらに好ましくは4000〜300000、特に好ましくは4000〜100000である。前記重量平均分子量(Mw)が3000以下であると、本発明の水硬性材料用添加剤を添加することによる強度低下抑制、収縮低減性能および耐凍結融解性を付与する効果が十分に発揮されないおそれがある。
【0033】
なお、本明細書中、重量平均分子量は、下記GPC測定条件により測定される値である。
〔GPC分子量測定条件〕
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470。
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
前記ポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミン(P2)としては、例えば、ポリアルキレンイミンに含まれる活性水素含有アミノ基に対してアルキレンオキシドを付加重合した化合物が挙げられる。
【0034】
前記ポリアルキレンイミンとしては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の単独重合体、共重合体が挙げられる。特にエチレンイミンが好ましい。
【0035】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に用いられるポリオキシアルキレン化合物(P)のオキシアルキレン基のうち、50mol%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、70mol%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90mol%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、95mol%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。収縮低減剤(A)のオキシアルキレン基のうち、オキシエチレン基が50mol%以上であれば、本発明の水硬性材料用添加剤を添加することによる収縮低減機能および耐凍結融解性を付与する効果を十分に得ることができ、さらに、強度低下を抑制することができる。
【0036】
前記ポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミン(P2)としては、例えば、ポリアルキレンイミンに含まれる活性水素含有アミノ基に対してアルキレンオキシドを付加重合した化合物が挙げられる。
【0037】
上記ポリアルキレンイミンとしては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の単独重合体、共重合体が挙げられる。特にエチレンイミンの単独重合体、エチレンイミンとプロピレンイミンの共重合体が好ましい。
【0038】
前記ポリアルキレンイミンに含まれる活性水素含有アミノ基に対して付加重合させるアルキレンオキシドとしては、炭素原子数2〜18のアルキレンオキシド、特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが好ましい。また、アルキレンオキシドの付加モル数としては、ポリアルキレンイミンに含まれる活性水素1モルに対して1〜200mol、好ましくは1〜100mol、さらに好ましくは1〜50molである。
【0039】
前記ポリアルキレンイミンに含まれる活性水素含有アミノ基に対して付加重合させるアルキレンオキシドのうち、50mol%以上がエチレンオキシドであることが好ましく、70mol%以上がエチレンオキシドであることがより好ましく、90mol%以上がエチレンオキシドであることがさらに好ましく、95mol%以上がエチレンオキシドであることが特に好ましい。ポリアルキレンイミンに含まれる活性水素含有アミノ基に対して付加重合させるアルキレンオキシドのうち、50mol%以上がエチレンオキシドであれば、本発明の水硬性材料用添加剤を添加することによる収縮低減機能および耐凍結融解性を付与する効果を十分に得ることができ、さらに、強度低下を抑制することができる。
【0040】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物に用いられる収縮低減剤(A)の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算の重量比で、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好ましくは1〜15重量%であり、さらに好ましくは1〜10重量%であり、特に好ましくは2〜10重量%である。収縮低減剤(A)の含有割合を0.5〜20重量%にすることにより、本発明の水硬性材料用添加剤を添加することによる収縮低減性能および耐凍結融解性を付与する効果を良好に得ることができる。
pH調整剤(B)
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物に含まれるpH調整剤(B)は、水硬性材料用収縮低減剤組成物のpHを中性付近(pH5〜9)に調整する機能を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などが挙げられる。具体的には、塩酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、亜硝酸、炭酸等の無機酸およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、アクリル酸、メタクリル酸およびマレイン酸等の有機有機酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩が挙げられ、好ましくは、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、リンゴ酸およびグルコン酸からなる群より選ばれる酸のナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩である。前記化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記pH調整剤(B)を添加することにより、前記収縮低減剤(A)中に含まれる、固形分換算で5%水溶液の表面張力が55〜65mN/mのポリオキシアルキレン化合物の変色および変性を抑制する効果が得られ、水硬性材料用収縮低減剤組成物の保存安定性が良好となる。
【0042】
前記pH調整剤(B)と収縮低減剤(A)の配合割合は、固形分換算の重量比で、pH調整剤(B)/収縮低減剤(A)=1/50〜1/1000000であり、好ましくは、pH調整剤(B)/収縮低減剤(A)=1/50〜1/100000であり、より好ましくは、pH調整剤(B)/収縮低減剤(A)=1/100〜1/100000、さらに好ましくは、pH調整剤(B)/収縮低減剤(A)=1/100〜1/10000である。
減水剤
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に含まれる減水剤(C)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の水硬性材料用収縮低減剤に用いられる減水剤(C)としては、任意の適切な減水剤を採用し得る。例えば、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系(特開平1−113419号公報参照)等のスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ポリオキシアルキレン基とアニオン性基とを有する重合体、例えば、3−メチル3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体および不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体またはその塩(特開昭62−68808公報、特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステルあるいはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、からなる共重合体(特開昭62−216950号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、からなる共重合体(特開平1−226757号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体(特開平4−149056号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、からなる共重合体(特開平6−191918号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体の加水分解物またはその塩(特開平5−43288号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体および(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体(特公昭59−18338号公報参照);スルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび必要に応じてこれと共重合可能な単量体からなる共重合体またはその塩(特公昭62−119147号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物(特開平6−298555号公報参照);ポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体および(メタ)アリルスルホン酸系単量体の中から選ばれる1種以上の単量体との、共重合体(特開平7−223852号公報参照);スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノリン酸エステルから選ばれる1種以上の単量体、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、および不飽和カルボン酸系単量体からなる共重合体またはその塩(特開平11−79811号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、および(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(特開2004−307590号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体からなる共重合体またはその塩(特開2006−52381号公報参照);不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和モノカルボン酸系単量体との共重合体(特開2002−121055号公報、特開2002−121056号公報参照);などが挙げられる。これらの中でも、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;3−メチル3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体および不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体またはその塩(特開昭62−68808公報、特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体(特開平4−149056号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体の加水分解物またはその塩(特開平5−43288号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体および(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体(特公昭59−18338号公報参照);ポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体および(メタ)アリルスルホン酸系単量体の中から選ばれる1種以上の単量体との、共重合体(特開平7−223852号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノビニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、および(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(特開2004−307590号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体からなる共重合体またはその塩(特開2006−52381号公報参照);不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体と不飽和モノカルボン酸系単量体との共重合体(特開2002−121055号公報、特開2002−121056号公報参照);が好ましく、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;3−メチル3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体および不飽和カルボン酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体またはその塩(特開昭62−68808公報、特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報参照);(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体および(メタ)アクリル酸系単量体を含む単量体から得られる共重合体(特公昭59−18338号公報参照)が特に好ましい。
【0043】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に含まれる減水剤(C)の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.05〜10重量%であり、さらに好ましくは0.1〜5.0重量%である。
【0044】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤での収縮低減剤(A)と減水剤(C)との配合割合は、固形分換算の重量比で、好ましくは99.9/0.1〜80/20であり、より好ましくは99.5/0.5〜80/20であり、さらに好ましくは99/1〜85/15である。収縮低減剤(A)と減水剤(C)との割合が99.9/0.1〜80/20であることにより、他の混和材料との組合せを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を有する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。さらには、コンクリート硬化体の乾燥収縮を低減してひび割れ発生を抑制し、耐凍結融解性を付与することによりコンクリート硬化体の幅広い環境における耐久性を向上させることができる。
消泡剤
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物に含まれる消泡剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物に用いられる消泡剤としては、任意の適切な消泡剤を採用し得る。消泡剤としては、例えば、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤などが挙げられる。なかでも、オキシアルキレン系消泡剤が好ましい。
【0045】
鉱油系消泡剤としては、例えば、燈油、流動パラフィン等が挙げられる。
【0046】
油脂系消泡剤としては、例えば、動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0047】
脂肪酸系消泡剤としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0048】
脂肪酸エステル系消泡剤としては、例えば、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等が挙げられる。
【0049】
オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数8以上の高級アルコールや炭素数12〜14の2級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;等が挙げられる。
【0050】
アルコール系消泡剤としては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等が挙げられる。
【0051】
アミド系消泡剤としては、例えば、アクリレートポリアミン等が挙げられる。
【0052】
リン酸エステル系消泡剤としては、例えば、リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等が挙げられる。
【0053】
金属石鹸系消泡剤としては、例えば、アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等が挙げられる。
【0054】
シリコーン系消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等が挙げられる。
【0055】
これらのなかでもコンクリートの混練性の点から、消泡剤の形態としては液状が好ましい。
【0056】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の消泡剤の含有割合は、目的に応じて、任意の適切な割合を採用し得る。本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の消泡剤の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.000001重量%以上、より好ましくは0.00001重量%以上である。本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の消泡剤の含有割合の上限値は、好ましくは10重量%、より好ましくは5重量%である。
【0057】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤の収縮低減剤(A)と消泡剤の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは99.999/0.001〜70/30であり、より好ましくは99.95/0.05〜80/20であり、さらに好ましくは99.99/0.01〜95/5であり、さらに好ましくは99.99/0.01〜98/2であり、最も好ましくは99.99/0.01〜99.3/0.7である。収縮低減剤(A)と消泡剤の比率を99.999/0.001〜70/30に制御することにより、コンクリートへの連衡空気の調整を容易にし優れた収縮低減機能を有する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。さらには、コンクリート硬化体の乾燥収縮を低減してひび割れ発生を抑制し、耐凍結融解性を付与することによりコンクリート硬化体の幅広い環境での耐久性を向上させることができる。
AE剤
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、好ましくはさらにAE剤を含む。
【0058】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤に用いられるAE剤(Air Entraining剤)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 前記AE剤としては、任意の適切なAE剤を採用し得る。例えば、樹脂石鹸、飽和または不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネートが挙げられる。
【0059】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のAE剤の含有割合は、目的に応じて、任意の適切な割合を採用し得る。本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のAE剤の含有割合は、セメント100重量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.000001重量%以上、より好ましくは0.00001重量%以上である。本発明の水硬性材料用収縮低減剤中のAE剤の含有割合の上限値は、好ましくは10重量%、より好ましくは5重量%である。
【0060】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤の消泡剤とAE剤の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは5/95〜99/1であり、より好ましくは10/90〜95/5であり、さらに好ましくは15/85〜90/10である。消泡剤とAE剤の比率を5/95〜99/1に制御することにより、他の混和材料との組合せを必要とせず、安価で、コンクリート硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を有する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。さらには、コンクリート硬化体の乾燥収縮を低減してひび割れ発生を抑制し、耐凍結融解性を付与することによりコンクリート硬化体の幅広い環境での耐久性を向上させることができる。
【0061】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤が収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤およびAE剤を含む形態である場合、収縮低減剤(A)、消泡剤(B)、減水剤(C)およびAE剤の合計に占める収縮低減剤(A)の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは85重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤を含む形態の水硬性材料用収縮低減剤における収縮低減剤(A)の比率の上限値は、好ましくは99.5重量%であり、より好ましくは99重量%である。収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤の合計に占める収縮低減剤(A)の比率が上記の範囲であることにより、本発明の水硬性材料用添加剤を添加することによる収縮低減性能を付与する効果を良好に得ることができる。
【0062】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤が収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤を含む形態である場合、収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤の合計に占める消泡剤の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは0.0005重量%以上であり、より好ましくは0.001重量%以上である。収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤を含む形態の水硬性材料用収縮低減剤における消泡剤の比率の上限値は、好ましくは1重量%であり、より好ましくは0.5重量%である。
【0063】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤が収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤を含む形態である場合、収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤の合計に占める減水剤(C)の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上である。収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤を含む形態の水硬性材料用収縮低減剤における減水剤(C)の比率の上限値は、好ましくは10重量%であり、より好ましくは8重量%である。
【0064】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤が収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤(D)を含む形態である場合、収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤の合計に占めるAE剤の比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは0.005重量%以上であり、より好ましくは0.01重量%以上である。収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤を含む形態の水硬性材料用収縮低減剤におけるAE剤(D)の比率の上限値は、好ましくは1重量%であり、より好ましくは0.1重量%である。
【0065】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤が収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)およびAE剤を含む形態である場合、収縮低減剤(A)および減水剤(C)の合計と消泡剤およびAE剤の合計の配合比率は、固形分換算の重量比で、好ましくは99.99/0.01〜90/10であり、より好ましくは99.99/0.01〜95/5であり、さらに好ましくは99.99/0.01〜98/2である。収縮低減剤(A)および減水剤(C)の合計と消泡剤およびAE剤の合計の配合比率を上記の範囲内にすることにより本発明の水硬性材料用添加剤を添加することによる収縮低減性能および耐凍結融解性を付与する効果を良好に得ることができる。さらに、収縮低減剤(A)と減水剤(C)および消泡剤およびAE剤を併用することによる相乗的な耐凍結融解性の向上効果を得ることができる。なお、収縮低減剤(A)と減水剤(C)との比率、および、消泡剤とAE剤との比率は、上記の範囲であればよい。
【0066】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、収縮低減剤(A)および消泡剤のみからなっていても、また、収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)からなっていても、さらに、収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)、およびAE剤のみからなっていても良いし、本発明の効果を損なわない範囲で、他の任意の適切な成分を含んでいても良い。他の任意の適切な成分としては、例えば、水が挙げられる。
【0067】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、その他の成分を含んでいても良い。その他の成分としては、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、ポリアルキレングリコールなどの他の乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏が挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0068】
しかしながら、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、他の混和材料との組合せを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能および耐凍結融解性を有するという効果を発現できるので、上記に挙げたような他の混和材料は、必要でなければ、特に用いなくても良い。
【0069】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、任意の適切な方法で調製すれば良い。例えば、収縮低減剤(A)、消泡剤、減水剤(C)、AE剤、および任意の他の成分を、任意の適切な方法で混合すれば良い。
【0070】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、優れた収縮低減機能と優れた耐凍結融解性を併せ持つ。本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、収縮低減剤(A)を高濃度に含有し、収縮低減剤(A)の経時安定性が優れており、分離沈殿することなく相溶性に優れ、水/セメント比の適用範囲が広く、水/セメント比(重量比)で、好ましくは60%〜15%のコンクリートまで製造が可能である。従って、汎用性が高く、種々の用途のセメント組成物に添加して用いることが可能である。
水硬性材料組成物
本発明の水硬性材料組成物は、本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物、セメントおよび骨材を必須成分とする水硬性材料組成物であって、前記水硬性材料用収縮低減剤組成物中のポリオキシアルキレン化合物(P)が、前記一般式(1)で表わされる化合物またはポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミンである水硬性材料組成物である。具体的には、前記水硬性材料用収縮低減剤組成物を、セメント、細骨材および水から成るモルタル、さらに粗骨材から成るコンクリート等のセメント組成物に、所定の割合で添加したものである。
【0071】
前記水硬性材料用収縮低減剤組成物の添加量は、目的に応じて任意の適切な量を採用し得る。例えば、セメント100重量部に対し、固形分換算で0.5〜10.0重量%とすることが好ましい。また、セメント組成物100容量部当たりのセメント容量が14容量%を超える場合は、好ましくはセメント100重量部に対して0.5〜10.0重量%、より好ましくは0.5〜6.0重量%とすることが好ましい。
【0072】
セメント組成物の製造に用いるセメントとしては、例えば、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントが挙げられる。また、セメント組成物中の粉体として、例えば、シリカヒューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、膨張材、その他の鉱物質微粉末等が挙げられる。細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。水としては、例えば、JIS A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水が挙げられる。
【0073】
セメント組成物中には、任意の適切な添加剤を加えても良い。例えば、硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤が挙げられる。
【0074】
セメント組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては、任意の適切な方法を採用し得る。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0076】
1.コンクリートに添加する各成分の固形分測定方法
コンクリート評価に使用した水硬性材料用収縮低減剤に用いる各成分の固形分を以下の方法で測定した。
(1)アルミ皿を精秤した。
(2)精秤したアルミ皿に固形分を測定する成分をのせ、精秤した。
(3)窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に、2.で精秤した成分をアルミ皿ごと1時間入れた。
(4)1時間後、アルミ皿および固形分を測定する成分を乾燥機から取り出し、デシケーター内で15分間放冷した。
(5)15分後、デシケーターから取り出したアルミ皿および固形分を測定する成分(乾燥後)を精秤した。
(6)上記で測定した重量を用いて、以下の式により、固形分を算出した。
【0077】
固形分(%)={[(上記5の精秤で得られた重量)−(上記1の精秤で得られたアルミ皿の重量)]/[(上記2の精秤で得られた重量)−(上記1の精秤で得られたアルミ皿の重量)]}×100
2.表面張力の測定
ポリオキシアルキレン化合物の固形分5重量%水溶液を調整し20℃に調温後、動的表面張力計(SITAScience line t60(MESSTECHNIK社))を使用して表面張力の測定を実施した。Frequency0.5Hzでの測定値を該当する収縮低減剤の表面張力とした。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
3.モルタルによる自己収縮ひずみの測定
1)モルタルの混練
モルタルフロー値が200±20mm、空気量が±3%となるように減水剤、消泡剤の添加量を調整した。所定量の添加剤を秤量して水で希釈したもの213.7gと太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント485.7gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997附属書2の5.1.3に規定)1350gをホバート型モルタルミキサー:型番N−50(商品名、ホバート社製)を用いモルタルの混錬を行った。
【0080】
モルタル混錬は以下の方法に従い、全て低速(1速)にて実施した。
【0081】
セメントを5秒空練り後、15秒かけて水と剤を投入し、さらに10秒混錬後停止させる。
30秒間に砂を投入し、再度60秒混錬する。
混錬を停止し、20秒間掻き落しを行う。
【0082】
掻き落し後、再び120秒間混錬した後停止して、モルタルを取り出し評価。
所定のフロー値および空気量を達成したことを確認後、自己収縮ひずみの測定を実施した。
2)自己収縮ひずみ測定方法
自己収縮ひずみは、ひずみゲージ(型式:KMC−70−120−H4(共和電業))を使用して測定した。
【0083】
ひずみ測定と同時に、貫入抵抗測定による凝結時間の測定を実施し、凝結開始時間をひずみ測定の起点とした。
3)ひずみ測定
装置概略は図1に示した。
【0084】
容器は口径×下径×高さ=91×84×127mmのポリプロピレン製の容器を使用した。また、容器内部にシリコングリースを塗り、容器とモルタルの接着がないようにした。
【0085】
モルタル充填後、ポリ塩化ビニリデンシートでふたをし、20±2℃で保管、収縮ひずみの測定を実施した。
【0086】
得られた収縮ひずみの値から下記式(1)を用いて長さ変化比を算出した。
長さ変化比
={(ポリマー添加モルタルの収縮量)/(基準モルタルの収縮量)}×100 (1)
4)凝結時間(凝結始発および終結時間)の測定方法
凝結時間の測定は温度20±2℃に設定した部屋で、ASTM C 403 / C 403M-99に準じて貫入抵抗値を測定することにより実施した。
【0087】
混錬して得られたモルタルをポリプロピレン製の容器(口径×下径×高さ=91×84×127mm)に2回に分けて詰め、注水から3または4時間目から貫入測定値の測定を開始した。注水から貫入抵抗値が3.5N/mmになるまでの経過時間を凝結始発時間、同様に注水から貫入抵抗値が28.0N/mmになるまでの経過時間を凝結終結時間とした。
【0088】
4.モルタルによる乾燥収縮ひずみの測定
1)モルタルの混練
モルタルの混練は以下のとおり実施した。所定量のポリマーを秤量して水で希釈したもの225gと普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)450gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R5201-1997附属書2の5.1.3に規定;セメント協会)1350gを、ホバート型モルタルミキサー:型番N−50(ホバート社製)を用い、JIS R5201-1997の方法に従いモルタルの混練を行った。
【0089】
また、モルタル空気量がポリマーを添加しないモルタル(基準モルタル)の空気量±3vol%となるように、必要に応じて消泡剤(ポリアルキレングリコール誘導体)を使用してモルタル空気量の調整を行なった。
2)モルタル空気量の測定
モルタル空気量の測定は500mlメスシリンダーを用い、JIS A1174(まだ固まらないポリマーセメントモルタルの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法))に準拠して実施した。
3)乾燥収縮低減性の評価
モルタルの混錬は上記項目1と同じ方法により実施した。
次に、乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(4×4×16cm)の作成をJIS A1129に従い実施した。
【0090】
型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混錬して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し20℃で保管し、初期養生を行なった。1日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースをたわしを用いて水で洗浄し、続いて20℃の静水中で6日間養生(水中養生)した。
【0091】
JIS A1129に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用した。静水中で6日間養生した供試体の表面の水を紙タオルでふき取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。この際、長さ変化比は、下記式(2)で示されるように、基準モルタルの収縮量に対する、ポリマー添加モルタルの収縮量の比とし、値が小さいほど収縮を低減できることを示す。
長さ変化比
={(ポリマー添加モルタルの収縮量)/(基準モルタルの収縮量)}×100
長さ変化と同時に、各材齢において供試体の質量を測定し下記式(3)により質量減少率を算出した。この質量減少率が大きいほど供試体からの水分の蒸発が大きいことを示す。
質量減少率(%)={(W−W)/W}×100 (3)
:材齢0日の供試体質量(g)
:材齢x日の供試体質量(g)
5.コンクリート評価
1)配合
表2に示す配合割合で、練り混ぜ量が30Lとなるようそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して材料を混練した。なお、セメントは、太平洋セメント社、住友大阪セメント社、および宇部三菱セメント社製の普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して用いた。細骨材としては、掛川産陸砂および君津産陸砂を重量比で掛川産陸砂/君津産陸砂=80/20で混合したもの、粗骨材としては、青梅産硬質砂岩をそれぞれ使用した。
【0092】
【表2】

【0093】
2)材料の練り混ぜ
粗骨材および使用する半量の細骨材をミキサーに投入し、5秒間空練り後、回転を止め、セメントおよび残りの細骨材を投入した。さらに、5秒間空練りを行った後、再び回転を止めて、収縮低減剤(A)、消泡剤、化合物(C)としてポゾリス70およびAE剤を含む水を加え、90秒間混練した後、ミキサーからフレッシュコンクリートを取り出した。なお、材料の練り混ぜの際には、フレッシュコンクリートのスランプ=15±1.5cm、空気量5±1%となるように、消泡剤、ポゾリス70およびAE剤の添加量を調整した。
3)フレッシュコンクリートの評価
得られたフレッシュコンクリートについて、スランプ値、空気量を以下の方法により測定した。
【0094】
スランプ値:JIS A 1101−1998
空気量:JIS A 1128−1998
4)乾燥収縮低減性の評価
得られたフレッシュコンクリートをゲージピン付の10×10×40cmの供試体型枠に入れ、2日間20℃にて封緘養生後脱型した。脱型後、さらに5日間静水中で水中養生した後、乾燥収縮低減性の評価を行った。
【0095】
乾燥収縮低減性の評価は、JIS A1129−3(モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法 第3部:ダイヤルゲージ方法)に準拠して実施した。
【0096】
静水中で5日間水中養生後の供試体の表面の水を紙タオルでふき取った後、直ちに供試体の長さを測定し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。測定した長さから、供試体の収縮量を算出し、下記の式から、長さ変化比を算出した。下記の式に示すように、長さ変化比は、基準コンクリートの収縮量に対する、実施例または比較例の収縮低減剤を含む供試体の収縮量の比を表し、値が小さいほど収縮を低減することができることを示す。
【0097】
長さ変化比={(実施例または比較例の低減剤を用いたコンクリートの収縮量)/(基準コンクリートの収縮量)}×100
5)耐凍結融解性の評価
得られたフレッシュコンクリートを10×10×40cmの供試体型枠に入れ、2日間20℃にて封緘養生後脱型した。脱型後、さらに5日間20℃の静水中で養生した後、耐凍結融解性の評価を行った。
【0098】
耐凍結融解性の評価は、JIS A1148−2001中のA法に従い、30サイクルごとにJIS A1127−2001に従って、一次共鳴振動数および供試体重量を測定することにより実施した。
【0099】
この際30サイクルごとの耐凍結融解性は、下記の式(III)で示されるように、凍結融解サイクル開始前(0サイクル)の一次共鳴振動数に対する、各サイクル終了時点での一次共鳴振動数から相対動弾性係数を算出し、評価した。凍結融解のサイクルは、最大300サイクルとし、300サイクル以前に相対動弾性係数が60%以下となった場合には、その時点で評価を終了した。最終的な耐凍結融解性は、下記の式(IV)で示す耐久性指数を算出することにより、評価した。相対動弾性係数および耐久性指数は、いずれも100に近いほど、良好な耐凍結融解性を有することを示す。
【0100】
相対動弾性係数(%)=(f/f)×100 (III)
:凍結融解nサイクル後の一次共鳴振動(Hz)
:凍結融解0サイクルの一次共鳴振動(Hz)
耐久性指数=(P×N)/300 (IV)
P:凍結融解Nサイクル時の相対動弾性係数(%)
N:相対動弾性係数(%)が60%以下になった凍結融解サイクル数、または300サイクルのいずれか小さい方
製造例1:減水剤(PC−1)の合成
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水を14.66重量部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体(IPN50)を49.37重量部仕込み、攪拌下反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、2%過酸化水素水溶液2.39重量部を添加し、アクリル酸3.15重量部およびイオン交換水0.79重量部からなる水溶液を3.0時間、並びに3−メルカプトプロピオン酸0.13重量部、L−アスコルビン酸0.06重量部およびイオン交換水15.91重量部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して重合反応を終了させ、48%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整し、重量平均分子量が37700の共重合体(PC−1)の水溶液を得た。
【0101】
実施例・比較例で用いる各成分の収縮低減剤(A)、消泡剤、AE剤および減水剤(C)については表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
実施例1〜4、比較例1
収縮低減剤組成物AB−2〜5および収縮低減剤A−7をセメントに対して2%添加したモルタルでの自己収縮ひずみの測定結果を表4に示す。表面張力が33mN/mのA−7では消泡剤による空気量調整が困難であり、10%以上の空気量であったため、自己収縮ひずみの測定が出来なかった。AB−2〜5では材齢7日時点での長さ変化比は77〜82であり、良好な自己収縮低減性を示した。これらのことから、AB−2〜5は空気量の調整が容易で自己収縮低減性に優れていることが判る。
【0104】
【表4】

AB−4〜6をセメントに対して固形分換算で2重量%添加したモルタルの混和剤配合および材齢28日の収縮低減性、質量減少率を表5に示す。それぞれ72〜80の長さ変化比を示しており、これらの収縮低減剤が良好な乾燥収縮低減機能を有していることが判る。また、比較例2に対して質量減少率も低くなっていることから、これらの収縮低減剤を添加することによりモルタル供試体からの水分の蒸発が抑制されていることが判る。これらの結果から、これらの収縮低減剤は供試体からの水分蒸発および収縮を低減する効果に優れている。
【0105】
【表5】

【0106】
実施例8〜12、比較例3〜5
これらの収縮低減剤をコンクリートに使用したときのコンクリートの物性、収縮低減性(長さ変化)および耐凍結融解性(耐久性指数)の混和剤配合および評価結果を表6および表7にそれぞれ示す。いずれの収縮低減剤においてもセメントに対して固形分換算で2〜4質量%添加することにより乾燥材齢8週において46〜77の長さ変化を示すことから、モルタルと同様コンクリートにおいても収縮低減性に優れていることが判る。耐凍結融解性はおよび5%水溶液の表面張力が66.8であったA−2を使用したAB−2を含む比較例4およびAE剤添加量が少ない比較例5では耐久性指数がそれぞれ13および23であることからこれらのコンクリートでは耐凍結融解性が著しく低下していることがわかる。それ以外の実施例8〜12においてはいずれも70以上の耐久性指数を示しており、消泡剤・AE剤により連行空気を調整することにより高い耐凍結融解性を達成できる。
【0107】
【表6】

【0108】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、他の混和材料との組合せを必要とせず、保存安定性に優れ、安価で、優れた自己および乾燥収縮低減機能を有する、汎用性の高い収縮低減剤組成物を提供することができる。さらには、コンクリート硬化体の型枠内での水和反応による自己収縮、脱型後の乾燥収縮を低減することにより、ひび割れ発生を抑制し、耐凍結融解性を付与することによりコンクリート硬化体の耐久性を向上させることができるので、これらは、セメント添加剤やコンクリート混和剤として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【特許文献1】特公昭56−51148号公報
【特許文献2】特公平1−53214号公報
【特許文献3】特公平1−53215号公報
【特許文献4】特開昭59−152253号公報
【特許文献5】特公平6−6500号公報
【特許文献6】特許第2825855号公報
【特許文献7】特開平9−301758号公報
【特許文献8】特開2002−68813号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮低減剤(A)とpH調整剤(B)とを必須成分して含む水硬性材料用収縮低減剤組成物であって、前記収縮低減剤(A)中に、固形分換算で5重量%水溶液の表面張力が55mN/m以上65mN/m以下であるポリオキシアルキレン化合物を含む水硬性材料用収縮低減剤組成物。
【請求項2】
pH調整剤(B)は、酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項1に記載の水硬性材料用収縮低減剤組成物。
【請求項3】
さらに、少なくとも1種の減水剤(C)を含む、請求項1または2に記載の水硬性材料用収縮低減剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレン化合物は、
下記一般式(1):
RO−(AO)−H (1)
(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1〜30の活性水素を1個有する化合物の残基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、4〜500である)
で表わされる化合物である請求項1から3のいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレン化合物は、ポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミンである請求項1から3のいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の水硬性材料用収縮低減剤組成物、セメントおよび骨材を必須成分とする水硬性材料組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−230961(P2011−230961A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103163(P2010−103163)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】