説明

水硬性粉体の製造方法

【課題】水硬性化合物の粉砕効率が良いこと、及び得られる水硬性組成物の硬化時の圧縮強度を向上させるセメント等の水硬性粉体が得られることを両立する水硬性粉体の製造方法を提供する。
【解決手段】尿素等特定の化合物の酸塩と、粉砕助剤の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法であって、前記化合物の酸塩の存在量が、水硬性化合物100重量部に対して、0.0001〜0.05重量部であり、前記化合物の酸塩と前記粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)が、40/60〜1/99である、水硬性粉体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性化合物の粉砕工程において、粉砕効率が向上され、更に水硬性組成物の硬化時の圧縮強度を向上できる水硬性粉体が得られる、水硬性粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性化合物、例えばポルトランドセメントクリンカー、高炉スラグ等を粉砕して種々の水硬性粉体が製造されている。例えば、ポルトランドセメントは、石灰石、粘土、鉄さい等の原料を焼成して得られたクリンカーに適量の石膏を加え、粉砕して製造される。その際、粉砕効率を上げるために、ジエチレングリコールやトリエタノールアミンなどの粉砕助剤が用いられている。粉砕工程においては水硬性化合物をできるだけ能率良く所望の粒径にすることが望ましい。このため、従来、粉砕工程において粉砕助剤を使用することが行われている。
【0003】
特許文献1には、粉砕助剤の安全性が確保でき、粉砕効率が良く所望の粒径に到達するまでの時間を短縮することができ、さらに、劣化による強度低下を抑制できる水硬性粉体が得られる粉砕助剤として、グリセリンに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを平均で0.5〜6モル付加して得られる化合物が開示されている。
【0004】
また、コンクリートの7日強度及び28日強度を向上するために、無機塩を用いる技術がある。例えば、特許文献2には、高級トリアルカノールアミンと水溶性アルカリ金属塩よりなる強度増強性添加剤が記載されており、この添加剤はセメント粉末との混合物であってよく、仕上げミル加工中にセメントクリンカーと相互摩砕してもよいことが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、粉砕助剤と詰込み固化防止剤の両方の機能を果す、水硬性セメント用添加組成物として、水溶性ポリオールと、3個以下の炭素を持っている脂肪族酸の水溶性塩より本質的に成り、更に添加組成物の総重量に基づいて50重量%以下の尿素を含む、セメントに添加するための水硬性セメント用添加組成物が開示されている。
【0006】
一方で、尿素系化合物又はグアニジンをセメントやコンクリートに混合添加することが知られている。例えば、特許文献4には、コンクリート及び築壁にできたひび割れの埋め込み用にとくに適性があり、そして同時に腐食抑制の効果を有する注入用セメントの腐食抑制剤として、グアニジン等のアミノ化合物及び/又はヒドロキシアミノ化合物を添加して用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−62261号公報
【特許文献2】特開平3−183647号公報
【特許文献3】特公昭48−42697号公報
【特許文献4】特開平11−349363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、水硬性粉体の生産性の向上、コンクリート二次製品の生産性向上及びコンクリート硬化体の強度向上等の理由により、水硬性粉体の製造方法では、水硬性化合物
の粉砕性と得られる水硬性粉体を用いた水硬性組成物の硬化時の圧縮強度の双方において、さらなる向上が望まれる。特許文献2、4は、水硬性化合物の粉砕性については何ら言及がない。特許文献3には、クリンカーの粉砕時に尿素を含む添加剤組成物を使用することが記載されているが、特許文献3の実施例でプロピレングリコールを単独で用いた場合よりもプロピレングリコールと尿素と他の成分を併用した際には、詰込み固化指数は向上しているが、クリンカーの粉砕効率や硬化体の圧縮強度は低下している。
【0009】
本発明の課題は、水硬性化合物の粉砕効率が良いこと、即ち、所望の粒径に到達するまでの時間を短縮することができること、及び得られる水硬性組成物の硬化時の圧縮強度(特に水硬性粉体が水に接してから1日後の圧縮強度)を向上させるセメント等の水硬性粉体が得られることを両立する水硬性粉体の製造方法を提供することである。例えば、1日強度は、コンクリート二次製品の生産サイクルに関連する脱型可能な時間の指標となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、一般式(I)で表される化合物の酸塩と、粉砕助剤の存在下で、水硬性化合物を粉砕することで、粉砕助剤の粉砕性を低下させることなく、得られた水硬性粉体を用いた水硬性組成物の硬化時の圧縮強度が大きく向上することを見出した。特許文献4に記載されているアミノ化合物又はアミノアルコールの添加量は、セメント重量に対し、0.2〜2重量%であるのに対して、本発明では、一般式(I)で表される化合物の酸塩は水硬性化合物に対して非常に少ない量で水硬性化合物の粉砕時に使用することで効果を発揮するものである。
【0011】
本発明は、一般式(I)で表される化合物の酸塩〔以下、(A)成分という〕と、粉砕助剤〔以下、(B)成分という〕の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法であって、
前記化合物の酸塩の存在量が、水硬性化合物100重量部に対して、0.0001〜0.05重量部であり、
前記化合物の酸塩と前記粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)が、40/60〜1/99である、
水硬性粉体の製造方法に関する。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、又はNHであり、R、R1は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である。)
【0014】
また、本発明は、上記本発明の製造方法で得られた水硬性粉体に関する。
【0015】
また、本発明は、上記一般式(I)で表される化合物の酸塩(A)と、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン、及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物(B’)とを含有し、重量比(A)/(B’)が40/60〜1/99である水硬性化合物用の粉砕用添加剤に関する。
【0016】
本発明において、化合物(B’)は粉砕助剤(B)成分の好ましい化合物である。化合物(B’)に関する以下の説明は粉砕助剤(B)成分にも適用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一般式(I)で表される化合物の酸塩と、粉砕助剤の存在下で、水硬性化合物を粉砕することで、水硬性化合物の粉砕効率が良いこと、即ち、所望の粒子径に到達するまでの時間を短縮することができること、及び得られる水硬性組成物の硬化時の圧縮強度を向上させるセメント等の水硬性粉体が得られることを両立する水硬性粉体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、水硬性化合物の粉砕時に一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤が特定の比率で存在することで、一般式(I)で表される化合物が粉砕助剤の効果を阻害することなく、粉砕助剤の効果を発揮しつつ、粉砕により生じる水硬性粉体表面近傍に本発明の一般式(I)で表される化合物が存在し、水硬性粉体の凝集を抑制するため、粉砕効率が向上するものと推定される。逆に一般式(I)で表される化合物の酸塩の割合が多くなりすぎると相対的に粉砕助剤の割合が低下するため、粉砕効率は低下する傾向がある。
【0019】
本発明の一般式(I)で表される化合物の酸塩は、水硬性粉体の鉱物の一成分であるC3Sの表面に生成し水和反応を抑制するとされるCSHゲル層(Ca−Si−H2Oからなる無定形非昌質層)を溶解もしくは破壊させることで、C3Sの水和反応を促進することが、接水から1日後の圧縮強度向上に効果的であると推定される。さらに一般式(I)で表される化合物の酸塩の適度なキレート作用により、C3Aの水和反応を促進(エトリンガイトからモノサルフェートに移行)することが、接水から1日及び7日後の圧縮強度に効果的であると推定される。したがって、発明の一般式(I)で表される化合物は、C3S、C3A、両者の水和率向上に対し、相乗的効果が得られ、さらに粉砕時に存在させることで、水硬性粉体の表面近傍に存在することとなり、各鉱物に対して効率的に水和反応を促進し、水硬性化合物に対し非常に少ない添加量でも効果が発現するものと推定される。
【0020】
一般式(I)中、Xは酸素原子、硫黄原子、又はNHであり、接水から1日後の圧縮強度向上の観点から、NHが好ましい。なお、一般式(I)中のXがNHの場合、−(C=NH)−の結合様式となる。また、R、R1のうち、アルキル基、ヒドロキシアルキル基は、炭素数は1〜2が好ましく、1がより好ましい。R、R1は、水硬性組成物の調整時の起泡性の影響による接水から1日後の圧縮強度向上の観点から、それぞれメチロール基であることが好ましく、7日後の圧縮強度向上の観点から、それぞれ水素原子であることが好ましい。
【0021】
本発明の(A)成分である一般式(I)で表される化合物の酸塩を具体的に示すと、尿素の酸塩及び尿素誘導体の酸塩、チオ尿素の酸塩及びチオ尿素誘導体の酸塩、グアニジンの酸塩及びグアニジン誘導体の酸塩が挙げられる。
【0022】
尿素及び尿素誘導体の例としては、尿素、1,3−ジメチル尿素、テトラメチル尿素、メチロール尿素、ジメチロール尿素及び1,4−ジエチル尿素等が挙げられる。
【0023】
チオ尿素及びチオ尿素誘導体の例としては、チオ尿素、ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリブチルチオ尿素、1,3−ジブチルチオ尿素、1,3−ジイソプロピルチオ尿素、1,3−ジオクチルチオ尿素、1,3−ジドデシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、メチロールチオ尿素及びジメチロールチオ尿素等が挙げられる。
【0024】
グアニジン及びグアニジン誘導体の例としては、グアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ジメチロールグアニジン、n−ドデシルグアニジン、1,6−ジグアニジノヘキサン、メチロールグアニジン及びジメチロールグアニル尿素等が挙げられる。
【0025】
接水から1日後の圧縮強度向上の観点から、一般式(I)で表される化合物が、尿素、チオ尿素、ジメチロール尿素及びグアニジンから選ばれる1種以上の化合物が好ましく、グアニジンから選ばれる1種以上の化合物がより好ましい。
【0026】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩は、尿素、チオ尿素又はグアニジン等と、硫酸、酢酸、リン酸、乳酸、炭酸、硝酸、チオシアン酸又はスルファミン酸等の酸との水溶液の反応で得られる。一般式(I)で表される化合物の酸塩に用いる酸としては、無機酸やスルホン酸、ホスホン酸、オキシ酸、一塩基酸及び二塩基酸等の有機酸が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素及びチオシアン酸、スルファミン酸等が挙げられる。スルホン酸の例としては、アミノベンゼンスルホン酸、o−クレゾールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、4−ヒドロキシ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、3−ピリジンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、ポリ(スチレンスルホン酸)、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸及びエタンスルホン酸等が挙げられる。ホスホン酸の例としては、フェニルホスホン酸、ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸及びニトリロトリスメチレンホスホン酸等が挙げられる。オキシ酸の例としては、クエン酸、グリコール酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸及び乳酸等が挙げられる。一塩基酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、カプリン酸、カプリル酸、カプロン酸及びグリオキシル酸等が挙げられ、無水酢酸のような酸無水物を使用することもできる。二塩基酸の例としては、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、クロトン酸、コハク酸及びセバシン酸等が挙げられる。有機酸は酢酸、乳酸が好ましい。水硬性化合物の粉砕性向上と、接水から1日後までの初期圧縮強度向上の観点から、無機酸が好ましく、さらに塩酸、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、スルファミン酸が好ましく、塩酸、炭酸、チオシアン酸がより好ましい。従って、本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩は、一般式(I)で表される化合物の無機酸による塩が好ましい。また、本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩は、一般式(I)で表される化合物の、塩酸、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、スルファミン酸、酢酸、及び乳酸から選ばれる酸、更に塩酸、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及びスルファミン酸から選ばれる酸、更に塩酸、炭酸、及びチオシアン酸から選ばれる酸による塩も好ましい。
【0027】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物及び/又はその酸塩は、市販品を用いることができる。
【0028】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩と併用される、(B)成分の粉砕助剤は、水硬性粉体用の粉砕助剤として公知のものの中から選定して使用することができる。粉砕助剤とは、水硬性化合物の粉砕する際に粉砕効率を上げるために用いられる添加剤であり、化合物として水酸基を2個又は3個有するアルコール及びアミンが挙げられる。例えば公知の粉砕助剤であるジエチレングリコール、プロピレングリコール、アルカノールアミン(トリエタノールアミンやトリイソプロパノールアミン等)、グリセリン及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物(例えばグリセリンのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物)などが挙げられる。アルキレンオキサイドの平均付加モル数は0.5〜2.0モルが好ましく、0.5〜1.2モルがより好ましい。また、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は0.5以上が好ましく、そして2.0モル以下、更に1.2モル以下がより好ましい。グリセリンのアルキレンオキサイド付加物は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点からグリセリンのエチレンオキサイド付加物が好ましく、エチレンオキサイドの平均付加モル数は0.5〜1.2モルが好ましい。水硬性化合物の粉砕性向上及び1日後、7日後の圧縮強度向上の観点から、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン、及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物を含有することが好ましく、水硬性化合物の粉砕性向上の観点からジエチレングリコール及びグリセリンのエチレンオキサイドの平均0.5〜2.0モル付加物がより好ましく、グリセリンのエチレンオキサイドの平均0.5〜2.0モル付加物が更に好ましく、グリセリンのエチレンオキサイドの平均0.5〜1.2モル付加物がより更に好ましい。ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン、及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物の粉砕助剤中の合計の含有量は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、70〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、90〜100重量%が更に好ましく、実質的に100重量%がより更に好ましい。
【0029】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩の存在量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して固形分で0.0001〜0.050重量部であり、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から更に0.0001〜0.040重量部が好ましく、更に0.001〜0.030重量部が好ましく、より更に0.005〜0.030重量部が好ましく、より更に0.007〜0.030重量部が好ましく、より更に0.010〜0.030重量部であることが好ましい。また、本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩の存在量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して固形分で0.0001重量部以上、0.050重量部以下であり、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、0.001重量部以上が好ましく、0.005重量部以上がより好ましく、0.007重量部以上が更に好ましく、0.010重量部以上がより更に好ましく、そして、0.040重量部以下が好ましく、0.030重量部以下がより好ましく、0.030重量部以下が更に好ましい。本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩の存在量は、水硬性化合物の粉砕性の向上の観点から、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して固形分で0.0001〜0.010重量部が好ましく、0.0001〜0.005重量部がより好ましい。また、本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩の存在量は、水硬性化合物の粉砕性の向上の観点から、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して固形分で0.0001重量部以上が好ましく、そして、0.010重量部以下が好ましく、0.005重量部以下がより好ましい。
【0030】
本発明に係る粉砕助剤の存在量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して固形分で水硬性化合物の粉砕性と1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から0.001〜0.200重量部が好ましく、0.010〜0.100重量部がより好ましく、0.020〜0.100重量部が更に好ましい。また、本発明に係る粉砕助剤の存在量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して固形分で水硬性化合物の粉砕性と1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、0.001重量部以上が好ましく、0.010重量部以上がより好ましく、0.020〜0.100重量部が更に好ましく、そして、0.200重量部以下が好ましく、0.100重量部以下がより好ましい。
【0031】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩と併用される粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)は、40/60〜1/99であり、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から更に40/60〜5/95が好ましく、35/65〜10/90がより好ましく、30/70〜20/80が更に好ましい。本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩と併用される粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、30/70〜1/99が好ましく、15/85〜10/90がより好ましい。また、本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩と併用される粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)は、1/99以上、40/60以下であり、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、5/95以上が好ましく、10/90以上がより好ましく、20/80以上が更に好ましく、そして、35/65以下が好ましく、30/70以下がより好ましい。また、本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩と併用される粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、1/99以上であり、10/90以上が好ましく、そして、30/70以下が好ましく、15/85以下がより好ましい。
【0032】
また、本発明では、一般式(I)で表される化合物の酸塩を未中和の一般式(I)で表される化合物で換算して、一般式(I)で表される化合物と粉砕助剤との重量比(化合物(1)/粉砕助剤)は、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、23/77〜0.5/99.5が好ましく、23/77〜4/96がより好ましく、23/77〜10/90が更に好ましい。本発明では、一般式(I)で表される化合物と粉砕助剤との重量比(化合物(1)/粉砕助剤)は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、23/77〜0.5/99.5が好ましく、10/90〜4/96がより好ましい。また、本発明では、一般式(I)で表される化合物と粉砕助剤との重量比(化合物(1)/粉砕助剤)は、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、0.5/99.5以上が好ましく、4/96以上がより好ましく、10/90以上が更に好ましく、そして、23/77以下が好ましい。また、本発明では、一般式(I)で表される化合物と粉砕助剤との重量比(化合物(1)/粉砕助剤)は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、0.5/99.5以上が好ましく、4/96以上がより好ましく、そして、23/77以下が好ましく、10/90以下がより好ましい。
【0033】
本発明では、前記化合物の酸塩と、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物(B’)との重量比〔化合物の酸塩/化合物(B’)〕が、40/60〜1/99であってよく、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、5/95〜40/60が好ましく、10/90〜35/65がより好ましく、20/80〜30/70が更に好ましい。また、本発明では、前記化合物の酸塩と、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物(B’)との重量比〔化合物の酸塩/化合物(B’)〕が、1/99以上、40/60以下であってよく、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、5/95以上が好ましく、10/90以上がより好ましく、20/80以上が更に好ましく、そして、35/65以下が好ましく、30/70以下がより好ましい。また、前記化合物の酸塩と前記化合物(B’)の重量比〔化合物の酸塩/化合物(B’)〕は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、1/99〜30/70が好ましく、10/90〜15/85がより好ましい。また、前記化合物の酸塩と前記化合物(B’)の重量比〔化合物の酸塩/化合物(B’)〕は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、1/99以上であってよく、更に10/90以上が好ましく、そして、30/70以下が好ましく、15/85以下がより好ましい。
【0034】
また、本発明では、一般式(I)で表される化合物の酸塩を未中和の一般式(I)で表される化合物で換算して、一般式(I)で表される化合物とジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物(B’)との重量比〔化合物(1)/化合物(B’)〕は、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、23/77〜0.5/99.5が好ましく、23/77〜4/96がより好ましく、23/77〜10/90が更に好ましい。本発明では、一般式(I)で表される化合物と化合物(B’)との重量比〔化合物(1)/化合物(B’)〕は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、23/77〜0.5/99.5が好ましく、10/90〜4/96がより好ましい。また、本発明では、一般式(I)で表される化合物と化合物(B’)との重量比〔化合物(1)/化合物(B’)〕は、1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、0.5/99.5以上が好ましく、4/96以上がより好ましく、10/90以上が更に好ましく、そして、23/77以下が好ましい。また、本発明では、一般式(I)で表される化合物と化合物(B’)との重量比〔化合物(1)/化合物(B’)〕は、水硬性化合物の粉砕性向上の観点から、0.5/99.5以上が好ましく、4/96以上がより好ましく、そして、23/77以下が好ましく、10/90以下がより好ましい。
【0035】
一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の合計量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤合計の固形分で、水硬性化合物の粉砕性向上と1日後の圧縮強度向上の観点から、0.001〜0.2重量部の存在量となるように用いることが好ましく、0.001〜0.10重量部の存在量となるように用いることがより好ましく、0.04〜0.10重量部の存在量となるように用いることが更に好ましい。また、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の合計量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤合計の固形分で、水硬性化合物の粉砕性向上と1日後の圧縮強度向上の観点から、0.001重量部以上の存在量となるように用いることが好ましく、0.04重量部以上の存在量となるように用いることがより好ましく、そして、0.2重量部以下の存在量となるように用いることが好ましく、0.10重量部以下の存在量となるように用いることがより好ましい。
【0036】
本発明では、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤とを重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)が40/60〜1/99で予め混合し水硬性化合物用の粉砕用添加剤を調製することができる。この場合、粉砕助剤として、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物(B’)を用いることが好ましく、水硬性化合物の粉砕性向上の観点からジエチレングリコール及びグリセリンのエチレンオキサイドの平均0.5〜2.0モル付加物がより好ましく、グリセリンのエチレンオキサイドの平均0.5〜2.0モル付加物が更に好ましく、グリセリンのエチレンオキサイドの平均0.5〜1.2モル付加物がより更に好ましい。
【0037】
水硬性化合物用の粉砕用添加剤を調製する場合、添加剤中の一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の合計量は、水硬性化合物の粉砕性向上と接水から1日後の圧縮強度向上の観点から、80〜100重量%が好ましく、90〜100重量%がより好ましく、実質的に100重量%が更に好ましい。また、水硬性化合物用の粉砕用添加剤を調製する場合、添加剤中の一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の合計量は、水硬性化合物の粉砕性向上と接水から1日後の圧縮強度向上の観点から、80重量%以上、更に90重量%以上が好ましく、そして、100重量%以下が好ましく、実質的に100重量%が更に好ましい。
【0038】
水硬性化合物用の粉砕用添加剤は、水溶液等の水を含有する組成物として用いても良い。その場合の一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の合計の濃度は、水硬性化合物の粉砕性向上と接水から1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、20〜99重量%が好ましく、30〜99重量%がより好ましく、35〜99重量%が更に好ましい。また、水硬性化合物用の粉砕用添加剤は、水溶液等の水を含有する組成物として用いても良い。その場合の一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の合計の濃度は、水硬性化合物の粉砕性向上と接水から1日後及び7日後の圧縮強度向上の観点から、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、35重量%以上が更に好ましく、そして、99重量%以下が好ましい。
【0039】
一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤とを含有する、水溶液等の水を含有する組成物として用いる場合は、水硬性化合物の粉砕性と水硬性化合物を粉砕する際の粉砕用添加剤の秤量や添加操作等の作業性の観点から、水硬性化合物100重量部に対して該水溶液の水の量が0.001〜0.1重量部であること好ましく、0.001〜0.08重量部であることがより好ましく、0.001〜0.05重量部であることが更に好ましい。また、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤とを含有する、水溶液等の水を含有する組成物として用いる場合は、水硬性化合物の粉砕性と水硬性化合物を粉砕する際の粉砕用添加剤の秤量や添加操作等の作業性の観点から、水硬性化合物100重量部に対して該水溶液の水の量が0.001重量部以上であること好ましく、そして、0.1重量部以下が好ましく、0.08重量部以下がより好ましく、0.05重量部以下であることが更に好ましい。この水の量は、水硬性化合物を粉砕する工程で用いられる水溶液等の水を含有する組成物の全量に基づくものであり、具体的には、水硬性化合物の粉砕が終了するまで、更には、目標とするブレーン値に到達するまでに用いられる水溶液等の水を含有する組成物の全量に基づくものである。
【0040】
一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤を存在させて粉砕を行うには、水硬性化合物、例えばクリンカーを含む原料に一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤を添加して行うことが好ましい。添加する方法としては、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の液状物、好ましくは水溶液を、滴下、噴霧等により供給する方法が挙げられる。一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤は、それぞれを液状物、好ましくは水溶液として別々に水硬性化合物に添加しても良いし、両者を混合した後に水硬性化合物に添加してもよい。他の成分としては、消泡剤、水等が挙げられる。水硬性化合物を含む原料への一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の添加もしくは一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤及びその他の成分の添加は、最終的に使用される全量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよい。また、連続的又は間欠的に添加してもよい。
【0041】
本発明の水硬性粉体の製造方法では水硬性化合物を粉砕し水硬性粉体を得る。水硬性化合物とは、水と反応して硬化する性質をもつ物質、及び単一物質では硬化性を有しないが2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する化合物をいう。一般に、水硬性化合物はアルカリ土類金属の酸化物とSiO2、Al23、Fe23、TiO2、P25、ZnOなどの酸化物が常温又は水熱条件下で水和物を形成する。水硬性化合物の成分は、例えば、セメントでは、成分として3CaO・SiO2(C3S:エーライト)、2CaO・SiO2(C2S:ビーライト)、3CaO・Al23(C3A:カルシウムアルミネート)、4CaO・Al23・Fe23(C4AF:カルシウムアルミノフェライト)を含んでいる。水硬性化合物としては、例えば、セメントに含有される鉱物(C3S、C2S、C3A、C4AF)、スラグ、フライアッシュ、石灰石、鉄さい、石膏、アルミナ、焼却灰、生石灰、消石灰等が挙げられ、水硬性粉体の原料として用いることができる。
【0042】
水硬性粉体としてポルトランドセメントを得る場合、例えば、ポルトランドセメントは、石灰石、粘土、鉄さい等の原料を焼成して得られた水硬性化合物であるクリンカー(セメントクリンカーとも言い、石膏が入っている場合もある。)を予備粉砕し、適量の石膏を加え、仕上粉砕して、ブレーン値2500cm2/g以上の比表面積を有する粉体として製造される。本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤は、前記水硬性化合物、好ましくはクリンカー粉砕の際の粉砕助剤として、好適には仕上粉砕での粉砕助剤として用いられる。一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤合計の固形分で、水硬性化合物の粉砕性向上と接水から1日後の圧縮強度向上の観点から、0.001〜0.2重量部の存在量となるように用いることが好ましく、0.01〜0.10重量部の存在量となるように用いることがより好ましく、0.02〜0.05重量部の存在量となるように用いることが更に好ましい。また、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤合計の固形分で、水硬性化合物の粉砕性向上と接水から1日後の圧縮強度向上の観点から、0.001重量部以上の存在量となるように用いることが好ましく、0.01重量部以上の存在量となるように用いることがより好ましく、0.02重量部以上の存在量となるように用いることが更に好ましく、そして、0.2重量部以下の存在量となるように用いることが好ましく、0.10重量部以下の存在量となるように用いることがより好ましく、0.05重量部以下の存在量となるように用いることが更に好ましい。この量は、水硬性化合物を粉砕する工程で存在させる一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤合計の全量に基づくものであり、具体的には、水硬性化合物の粉砕が終了するまで、更には、目標とするブレーン値に到達するまでに存在させる一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤合計の全量に基づくものである。
【0043】
本発明の水硬性粉体の製造方法では、原料、用途等により、適当な粒径の粉体が得られるよう、粉砕の条件を調整すればよい。一般に、比表面積、ブレーン値が、好ましくは2500〜5000cm2/g、より好ましくは3000〜4000cm2/g、また、好ましくは2500cm2/g以上、より好ましくは3000cm2/g以上、そして、好ましくは5000cm2/g以下、より好ましくは4000cm2/g以下の粉体となるまで、水硬性化合物、例えばクリンカーの粉砕を行うことが好ましい。目的のブレーン値は、例えば粉砕時間を調整することにより得ることができる。粉砕時間を長くするとブレーン値が大きくなり、短くするとブレーン値が小さくなる傾向がある。
【0044】
本発明において、水硬性化合物の粉砕に使用される粉砕装置は、特に限定されないが、例えばセメントなどの粉砕で汎用されているボールミルを挙げることができる。該装置の粉砕媒体(粉砕ボール)の材質は、被粉砕物(例えばセメントクリンカーの場合、カルシウムアルミネート)と同等又はそれ以上の硬度を有するものが望ましく、一般に入用可能な市販品では、例えば鋼、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、チタニア、タングステンカーバイド等を挙げることができる。
【0045】
水硬性組成物中の空気量増大現象による強度低下を抑制する観点から、更に消泡剤を併用することができる。また、消泡剤を、水硬性化合物の粉砕時に存在させることで、得られる水硬性粉体の表面に消泡剤を均一に分布させ、前記抑制効果をより効果的に発現させることもできる。すなわち、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤及び消泡剤との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法により、所望の粒径に到達するまでの時間を短縮することができる。すなわち粉砕効率が良く、また、空気量増大現象による水硬性組成物の圧縮強度低下を抑制できる。
【0046】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤及びエーテル系消泡剤が好ましく、シリコーン系消泡剤ではジメチルポリシロキサンがより好ましく、脂肪酸エステル系消泡剤ではポリアルキレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、エーテル系消泡剤ではポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
【0047】
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体を用いた水硬性組成物は硬化時の圧縮強度が向上されたものとなる。水硬性粉体としては、ポルトランドセメント、高炉スラグ、アルミナセメント、フライアッシュ、石灰石、石膏等が挙げられ、ポルトランドセメントが好ましい。
【0048】
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体は、コンクリート構造物やコンクリート製品の材料として用いることができる。本発明の製造方法により得られた水硬性粉体を用いたコンクリートは、接水から1日後の圧縮強度が向上するので、例えば、本発明の製造方法により得られた水硬性粉体に、接水後の初期材齢強度が低い水硬性粉体(高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石等)を配合・置換しても、本発明未実施の水硬性粉体を用いた場合と比較して、同等以上の、接水から1日後の圧縮強度を得ることが出来る、等の利点を有する。
【0049】
本発明の水硬性粉体の製造方法は、
<1>一般式(I)で表される化合物の酸塩と、粉砕助剤の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法であり、
前記化合物の酸塩の存在量が、水硬性化合物100重量部に対して、0.0001〜0.050重量部であるか、又は、0.0001重量部以上、0.050重量部以下であり、
前記化合物の酸塩と前記粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)が、40/60〜1/99であるか、又は、1/99以上、40/60以下である、
水硬性粉体の製造方法であり、以下の態様を含む。
【0050】
【化2】

【0051】
(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、又はNHであり、R、R1は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である。)
【0052】
<2>前記一般式(I)で表される化合物が、尿素、チオ尿素、ジメチロール尿素及びグアニジンから選ばれる1種以上の化合物である、前記<1>の水硬性粉体の製造方法。
【0053】
<3>前記粉砕助剤が、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物を含有する、前記<1>又は<2>の水硬性粉体の製造方法。
【0054】
<4>前記化合物の酸塩の存在量が、水硬性化合物100重量部に対して、好ましくは0.0001〜0.040重量部、より好ましくは0.001〜0.030重量部、更に好ましくは0.005〜0.030重量部、より更に好ましくは0.007〜0.030重量部、より更に好ましくは0.010〜0.030重量部である、又は、好ましくは0.0001重量部以上、更に0.001重量部以上、更に0.005重量部以上、更に0.007重量部以上、更に0.010重量部以上であり、そして、好ましくは0.040重量部以下、更に0.030重量部以下である、前記<1>〜<3>いずれかの水硬性粉体の製造方法。
【0055】
<5>前記化合物の酸塩と前記粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)が、好ましくは40/60〜5/95、更に好ましくは35/65〜10/90、より更に好ましくは30/70〜20/80である、又は、好ましくは5/95以上、更に10/90以上、更に20/80であり、そして、40/60以下、更に35/65以下、更に30/70以下である、前記<1>〜<4>いずれかの水硬性粉体の製造方法。
【0056】
<6>前記粉砕助剤の存在量が、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して固形分で、0.001〜0.200重量部、更に0.010〜0.100重量部、更に0.020〜0.100重量部である、又は、0.001重量部以上、更に0.010重量部以上、更に0.020重量部以上であり、そして、0.200重量部以下、更に0.100重量部以下である、前記<1>〜<5>の水硬性粉体の製造方法。
【0057】
<7>前記一般式(I)で表される化合物が、好ましくは尿素及びグアニジンから選ばれる1種以上の化合物である、前記<1>〜<6>の水硬性粉体の製造方法。
【0058】
<8>前記粉砕助剤が、好ましくは、ジエチレングリコール及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物、更に好ましくはグリセリンのアルキレンオキサイド付加物、より更に好ましくはグリセリンのエチレンオキサイド付加物、を含有する、前記<1>〜<7>のいずれかの水硬性粉体の製造方法。
【0059】
<9>ジエチレングリコール及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物、更に好ましくはグリセリンのアルキレンオキサイド付加物、より更に好ましくはグリセリンのエチレンオキサイド付加物の粉砕助剤中の合計の含有量が、90〜100重量%、好ましくは100重量%である、前記<8>の水硬性粉体の製造方法。
【0060】
<10>グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドの平均付加モル数が0.5〜2.0モル、好ましくは0.5〜1.2モルである、前記<8>又は<9>の水硬性粉体の製造方法。
【0061】
<11>グリセリンのアルキレンオキサイド付加物が、エチレンオキサイド付加物でありエチレンオキサイドの平均付加モル数が0.5〜1.2モルである、前記<8>又は<9>の水硬性粉体の製造方法。
【0062】
<12>一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の合計量が、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤合計の固形分で、0.001〜0.2重量部、好ましくは0.001〜0.10重量部、より好ましくは0.04〜0.10重量部である、又は、0.001重量部以上、更に0.04重量部以上であり、そして、0.2重量部以下、更に0.10重量部以下である、前記<1>〜<11>のいずれかの水硬性粉体の製造方法。
【0063】
また、本発明の水硬性粉体は、
<13>前記<1>〜<12>のいずれかの製造方法で得られた水硬性粉体である。
【0064】
本発明の水硬性化合物用の粉砕用添加剤は、
<14>一般式(I)で表される化合物の酸塩(A)と、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン、及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物(B’)を含有し、重量比(A)/(B’)が40/60〜1/99であるか、又は、1/99以上、40/60以下である、水硬性化合物用の粉砕用添加剤であり、以下の態様を含む。
【0065】
【化3】

【0066】
(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、又はNHであり、R、R1は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である。)
【0067】
<15>前記重量比(A)/(B’)が、好ましくは40/60〜5/95、より好ましくは35/65〜10/90、更に好ましくは30/70〜20/80であるか、又は、好ましくは5/95以上、更に10/90以上、更に20/80以上であり、そして、好ましくは40/60以下、更に35/65以下、更に30/70以下である、前記<14>の水硬性化合物用の粉砕用添加剤。
【0068】
<16>前記一般式(I)で表される化合物が、尿素、チオ尿素、ジメチロール尿素及びグアニジンから選ばれる1種以上の化合物であり、好ましくは尿素及びグアニジンから選ばれる1種以上の化合物である、前記<14>又は<15>の水硬性化合物用の粉砕用添加剤。
【0069】
<17>前記化合物(B’)が、好ましくはジエチレングリコール及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物、更に好ましくはグリセリンのアルキレンオキサイド付加物、より更に好ましくはグリセリンのエチレンオキサイド付加物である、前記<14>〜<16>のいずれかの水硬性化合物用の粉砕用添加剤。
【0070】
<18>前記化合物(B’)を含有する粉砕助剤を含有し、粉砕助剤中の化合物(B’)の合計の含有量が、90〜100重量%、好ましくは100重量%である、前記<14>〜<17>のいずれかの水硬性化合物用の粉砕用添加剤。
【0071】
<19>グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドの平均付加モル数が0.5〜2.0モル、好ましくは0.5〜1.2モルである、前記<14>〜<18>のいずれかの水硬性化合物用の粉砕用添加剤。
【0072】
<20>グリセリンのアルキレンオキサイド付加物が、エチレンオキサイド付加物でありエチレンオキサイドの平均付加モル数が0.5〜1.2モルである、前記<14>〜<19>のいずれかの水硬性化合物用の粉砕用添加剤。
【0073】
<21>前記<14>〜<19>のいずれかの水硬性化合物用の粉砕用添加剤の、水硬性組成物用の粉砕助剤としての使用。
【実施例】
【0074】
<実施例1及び比較例1>
(1−1)使用材料
・クリンカー:成分が、CaO:約65%、SiO2:約22%、Al23:約5%、Fe23:約3%、MgO他:約3%(重量基準)となるように、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料等を組み合わせて焼成したものを、クラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕して得た、普通ポルトランドセメント用クリンカー(3.5mmふるい通過物)
なお、上記成分は、C3Sが62.7重量%、C2Sが16.1重量%、C3A8.5重量%、C4AFが8.4重量%である。
・二水石膏:試薬特級
【0075】
(1−2)配合量
・クリンカー:1000g
・二水石膏:52.7g(水硬性粉体中5.0重量%相当)
・(A)成分〔一般式(I)で表される化合物の酸塩〕及び(B)成分〔粉砕助剤〕:クリンカー100重量部に対する固形分添加量がそれぞれ表1〜7の通りとなるように使用した。(A)成分と(B)成分の合計で35.7重量%水溶液を調製し、この水溶液を粉砕用添加剤として使用した。なお、比較例1−2〜1−6では、水硬性化合物の粉砕後に、(A)成分に相当する化合物の酸塩をモルタル混練水に添加剤として添加して使用した。実施例1−7は、消泡剤としてポリアルキングリコール脂肪酸エステル(フォームレックス797〔日華化学製〕)を併用した。
【0076】
(1−3)ボールミル
株式会社セイワ技研製AXB−15を用い、ステンレスポット容量は18リットル(外径300mm)とし、ステンレスボールは30mmφ(呼び1・1/4)を30個、20mmφ(呼び3/4)を70個の合計100個のボールを使用し、ボールミルの回転数は、40rpmとした。また粉砕途中で粉砕物を一部排出しサンプリングした。
【0077】
(1−4)粉砕到達時間
目標ブレーン値を3300±100cm2/gとし、粉砕開始から60分、70分、80分後のサンプルについてブレーン値を測定し、目標ブレーン値3300cm2/gに達する時間をマイクロソフト社製マイクロソフトエクセル2003の二次回帰式により求めた。その時間を最終到達時間(粉砕到達時間)として粉砕を終了した。なおブレーン値の測定は、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)に定められるブレーン空気透過装置を使用した。この試験での粉砕到達時間の相違は、実機レベルではより大きな差となってあらわれる。粉砕時間が短いほど粉砕性に優れることを示す。
【0078】
(1−5)圧縮強度試験
セメントの物理試験方法(JIS R 5201)附属書2(セメントの試験方法−強さの測定)に従った。用いたセメントは、前記で得られたブレーン値3300±100cm2/gのものである。圧縮強度が大きい方がコンクリート製品や構造物の製造の観点から望ましい。
【0079】
【表1】

【0080】
・グリセリンEO1モル付加物:グリセリンエチレンオキサイド(平均1モル)付加物、以下の製造例1により得られたものである。
【0081】
製造例1(グリセリンエチレンオキサイド平均1モル付加物の製造)
2リットルのオートクレーブにグリセリンと水酸化カリウムをぞれぞれ230.3g、1.4g仕込み、約600rpmの撹拌速度で130℃になるまで昇温した。次いで130℃、1.3kPa条件で30分間脱水を行った。その後、155℃になるまで昇温した。上記反応混合物にエチレンオキサイドを110.1g(グリセリン1モルに対し、エチレンオキサイド1モル相当)反応させた。この時の反応条件は温度155℃、圧力0.1〜0.3MPa(ゲージ圧)であった。反応終了後、温度を80℃まで冷却し、グリセリンエチレンオキサイド平均1モル付加物を得た。
【0082】
・(A)成分は一般式(I)で表される化合物と酸とをモル当量反応させて得られたものである(以下同様)。
尿素・硫酸塩の製造例を下記に示す。
100mlのビーカーに尿素(分子量60.1)10.00gとイオン交換水81.86gを仕込み、マグネティックスターラーで撹拌しながら、硫酸(分子量98.1)8.14gを滴下し、滴下終了後、5分間撹拌した(温度は25〜30℃)。尿素の他の酸塩、チオ尿素の酸塩も同様の方法で得た。
グアニジン酸塩の場合、塩酸塩、硝酸塩、チオシアン酸塩、スルファミン酸塩は和光純薬工業製試薬を、炭酸塩は、関東化学製試薬をそのまま用いた。
【0083】
表1から、本発明に係る一般式(I)で表される化合物の酸塩は、強度発現性の面から、粉砕時に添加することが、粉砕性と1日後及び7日後の圧縮強度の向上に効果的であることが解る。一般式(I)で表される化合物の酸塩を、粉砕後に添加して、1日後の圧縮強度を粉砕時に添加した場合と同等にするには、添加量を10倍以上増やす必要があることが解る。
【0084】
【表2】

【0085】
表2中、比較例では、便宜的に一般式(I)で表される化合物又は酸を(A)成分の欄に示した。
【0086】
表2から、一般式(I)で表される化合物は、酸塩にすることで、水硬性化合物の粉砕性向上と、接水から1日後及び7日後の初期圧縮強度向上とを両立することが解る。
【0087】
【表3】

【0088】
表3から、一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の重量比〔(A)/(B)〕が40/60〜1/99の範囲で、水硬性化合物の粉砕性が向上することが解る。
【0089】
水硬性化合物100重量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量が異なる実施例1−18、1−23及び1−24で得られた水硬性粉体を用いて、下記の噴流性指数試験を行った。結果を表4に示す。
【0090】
(1−6)噴流性指数試験
粉砕後に得られた水硬性粉体をホソカワミクロン製パウダテスタPT−Xで噴流性指数を測定した。噴流性指数は、粉体の流動性の指標であり、水硬性粉体が多量の空気を巻き込むことにより生じるフラッシング現象の発生を抑制する観点から、5〜59の範囲が望ましい。
【0091】
【表4】

【0092】
表4から、(A)成分と(B)成分の合計量が多くなると粉砕効率の指標である粉砕到達時間が短くなり、一方、(A)成分と(B)成分の合計量が少なくなると得られた粉体の噴流性指数が低くなることが解る。(A)成分と(B)成分の合計量が多くなると水硬性粉体の表面に付着する(A)成分と(B)成分が多くなり、水硬性粉体の噴流性指数が大きくなったと考えられる。
【0093】
【表5】

【0094】
表5から、(A)成分にグアニジンの塩酸塩を用いても、表3と同様に一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の特定の重量比で、水硬性化合物の粉砕性が向上することが解る。
【0095】
【表6】

【0096】
・DEG:ジエチレングリコール
・TEA:トリエタノールアミン
【0097】
表6から、粉砕助剤として、ジエチレングリコールやトリエタノールアミンを用いても、水硬性化合物の粉砕性向上と、接水から1日後及び7日後の初期圧縮強度向上とを両立することが解る。また、尿素の酢酸塩の代わりに尿素と酢酸ナトリウムを併用しても7日後の初期圧縮強度は向上しないことが解る。
【0098】
【表7】

【0099】
・DEG:ジエチレングリコール
【0100】
表7から、(B)成分にジエチレングリコールを用いても、表3と同様に一般式(I)で表される化合物の酸塩と粉砕助剤の特定の重量比で、水硬性化合物の粉砕性が向上することが解る。なお、実施例1−33は、実施例1−29と同一条件で(A)成分、(B)成分を用いたものであり、同等の圧縮強度が発現するものである。
【0101】
<実施例2及び比較例2>
粉砕に用いるクリンカーの種類を変えて、実施例1と同様にして粉砕を行い、実施例1と同様に粉砕到達時間及び圧縮強度を評価した。用いたクリンカーの組成を表8に、粉砕到達時間及び圧縮強度試験の結果を表9に示した。
クリンカーの組成は、以下の方法で定量した。
【0102】
セメント中の鉱物組成は、粉末X線装置、RINT-2500((株)リガク製)を使用して行った。測定条件は、ターゲットCuKα、管電流40mA、管電圧200kV、走査範囲5〜70deg.2θとし、走査条件はステップ走査、ステップ幅0.02°、計数時間2秒とした。そして、標準物質として『α−コランダム(Al2O3)』0.3gを試料のセメント2.7gに添加し、標準物質のピーク面積を基準として、Rietveld解析ソフトにて試料の各成分の組成を求めた。Rietveld解析ソフトは(株)リガク製のPDXL Ver.1.8を使用した。
【0103】
【表8】

【0104】
【表9】

【0105】
クリンカーの種類を変えても、(A)成分と(B)成分を所定条件で用いることにより、表9から、水硬性化合物の粉砕性向上でき、また、接水から1日後及び7日後の初期圧縮強度向上できることが解る。また、(A)成分のうち、チオ尿素の酸塩、ジメチロールの尿素の酸塩及びグアニジンの酸塩は、尿素の酸塩と比べて、クリンカーB及びCで、粉砕性及び圧縮強度がより良好となることが解る。
【0106】
さらに、クリンカーBを用いて、粉砕性と圧縮強度の評価を行った。結果を表10に示した。
【0107】
【表10】

【0108】
・GlyEO1:・前記製造例1により得られたグリセリンEO1モル付加物
・DEG:ジエチレングリコール
・TEA:トリエタノールアミン
・TiPA:トリイソプロパノールアミン
【0109】
表10から、(B)成分の粉砕助剤の種類を変えても(A)成分を所定条件で併用することで、粉砕性と圧縮強度が向上することが解る。
【0110】
さらに、クリンカーAを用いて、(A)成分として尿素の塩を用いた場合と、尿素を用いた場合の結果を表11に示した。
【表11】

【0111】
・DEG:ジエチレングリコール
【0112】
表11から、表2と同様に、一般式(I)で表される化合物は、酸塩にすることで、水硬性化合物の粉砕性向上と、接水から1日後及び7日後の初期圧縮強度向上とを両立することが解る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化合物の酸塩と、粉砕助剤の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法であって、
前記化合物の酸塩の存在量が、水硬性化合物100重量部に対して、0.0001〜0.050重量部であり、
前記化合物の酸塩と前記粉砕助剤の重量比(化合物の酸塩/粉砕助剤)が、40/60〜1/99である、
水硬性粉体の製造方法。
【化1】


(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、又はNHであり、R、R1は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が、尿素、チオ尿素、ジメチロール尿素及びグアニジンから選ばれる1種以上の化合物である、請求項1記載の水硬性粉体の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕助剤が、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物を含有する、請求項1又は2記載の水硬性粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の製造方法で得られた水硬性粉体。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物の酸塩(A)と、ジエチレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン、及びグリセリンのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物(B’)とを含有し、重量比(A)/(B’)が40/60〜1/99である水硬性化合物用の粉砕用添加剤。
【化2】


(式中、Xは酸素原子、硫黄原子、又はNHであり、R、R1は、同一又は異なって、それぞれ、水素原子、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である。)