説明

水硬性結合剤を含む自己充填組成物の製造のための熱分解法金属酸化物の使用

水硬性結合剤を含み、且つ高い初期強度を有する自己充填組成物の製造への熱分解法金属酸化物の使用であり、前記組成物は、少なくとも1つの水硬性結合剤およびさらなる構成要素としての水を含み、且つ熱分解法金属酸化物のm2/gでのBET比表面積と、水硬性結合剤に対する熱分解法金属酸化物の質量割合との積が、水硬性結合剤100gに対して20〜200m2である使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性結合剤を含み、高い初期強度を有する自己充填組成物の製造のための熱分解法金属酸化物の使用に関する。
【0002】
日本では、流動自己充填コンクリートおよびモルタルの開発が1980年代半ばに始まった(Deutscher Ausschuss fuer Stahlbeton:Sachstandsbericht Selbstverdichtender Beton[ドイツ補強コンクリート委員会:自己充填コンクリートの進捗報告書]、第一版、2001)。従来のコンクリートを超える自己充填コンクリートの利点は、実質的により低い導入コスト(振動による時間のかかる締固めが不要になる)およびより大きい建造物および環境へのやさしさ(振動なし、より少ないノイズ)である。さらには、込み入った構造形態、および良好な表面特性(例えば露出したコンクリート)を有する構造形態もまた、後処理なしで製造できる。
【0003】
自己充填コンクリートおよびモルタルは、それ自身の質量で良好な流動性および充填性(脱泡性)を有するコンクリートおよびモルタルの意味として理解される。良好な流動挙動の判断基準はスランプである(例えばDIN1048−1を参照)。コンクリートの場合には、700mmより上のスランプが自己充填コンクリートの指標である。コンクリートのスランプの代わりに、DIN18555 Part2によって、相当するモルタル(4mmより上の粗粒分がないコンクリート)のスランプを測定することも可能である。Okamuraらによれば(Okamura,H.;Ozawa,K. Concrete Library of JSCE 25、pages107−120、1995)、モルタルおよび相当するコンクリートは、スランプが24.5cmより大きければ自己充填する。本文において、水硬性結合剤を含む自己充填組成物はSCCと呼ぶ。
【0004】
流動挙動に加え、分離に対する安定性が自己充填コンクリートの実質的な品質判断基準であり、なぜなら、高いスランプは通常、コンクリート可塑剤の高い投与量によって実現するためである。しかしながら、コンクリート可塑剤の投与量が高いとき、分離傾向が特に高い。分離は所謂ブリーディングに至るために望ましくなく、それはしばらくの時間の後、コンクリート表面上に、添加された残滓と共に、多かれ少なかれ厚い水の層の形成をそれ自身で発現する。ブリーディングは、セメントおよび骨材粒子がそれらのより高い密度のせいで沈降する傾向があるために生じる。それらはより軽い水を上方に置き換え、前記の水がセメントの微細分を連行する。それが蒸発しなければ、ブリーディングの間に出てくる水は、硬化したセメントペーストによって再度あとから完全あるいは部分的に吸収される(Weigler/Karl;"Beton Arten−Herstellung−Eigenshaften[コンクリートタイプ−製造−特性]";Ernst&Sohn Verlag)。しかしながら、魅力のない堆積物が後で表面に残る。骨材の沈降の結果として、輸送特性も悪影響を受ける。従って分離はいかなる場合にも自己充填コンクリートおよびモルタルの場合には望ましくない。
【0005】
高く可塑化した自己充填コンクリートあるいはモルタルに、それにもかかわらず分離に対する安定性を持たせるには、125μm未満の粉末粒分を実質的に増加する必要がある(Okamura,H.;Ozawa,K.、Concrete Library of JSCE25、pages107−120、1995)。標準的なコンクリートと比較して、これは2〜16mmの骨材の減少、0〜2mmの砂の増加、および125μm未満の粒径を有する粒子として定義される粉末粒分の増加に帰する。
【0006】
分離を避けるには、原則として2つの概念がある。最初に、粉末の粒分はより多くのセメントの添加によって増加され得る。しかしながら、これはコンクリートの不必要に高い最終強度に導き、それはより高い強度の建設物の設計に起因する追加コストを生じるのでなおさら望ましくない。代替的に、フレッシュコンクリートの粘度を増加し、それゆえに分離を避ける、所謂安定剤を使用できる。コンクリートをゲルのような手法で安定化させる有機添加剤、例えばグアー豆粉、キサンタンおよびセルロースエーテルがこの目的に使用できる。シリカゾル、シリカフューム、石灰石粉末、およびフライアッシュあるいは上述の化合物の混合物が安定化する無機の微細な添加剤として広く使用されている。
【0007】
コンクリート構造の安定剤としてのシリカフュームの使用は、ポゾラン反応、充填効果、および結果として生じる、硬化セメントペーストと岩石粒子との間の接触領域の改善に基づいている(Schrimpf,M.;Lietzmann,M.;Orgass,M.;Dehn,F.、LACER7、pages85−96、2002)。
【0008】
先行技術によるSCCの欠点は、時としてそれらの初期強度が不充分であることである。上記の安定化に用いられる有機および無機添加剤は、初期強度に大きな効果を発揮しないことは一般に知られている。それゆえに本発明の技術的課題は、SCCの利点(分離のない高スランプ)を損なわずに、先行技術と比べて改善した初期強度を有する自己充填モルタルおよびコンクリートを提供することであった。
【0009】
本発明は水硬性結合剤を含み、且つ高い初期強度を有する自己充填組成物の製造のための熱分解法金属酸化物の使用であって、
該組成物が、少なくとも1つの水硬性結合剤およびさらなる成分としての水を含み、且つ
熱分解法金属酸化物のm2/gでのBET比表面積と、水硬性結合剤に対する熱分解法金属酸化物の質量割合との積が、水硬性結合剤100gに対して20〜200m2である使用に関する。
【0010】
水硬性結合剤を含み、且つ高い初期強度を有する組成物は、SCC硬化の最初の48時間におけるいかなる所望の時間においても、熱分解法金属酸化物を有さない系の参照値よりも少なくとも30%高い強度に達する組成物の意味として理解されるべきである。
【0011】
水硬性結合剤を含む組成物とは、水硬性結合剤が水、随意に種々のサイズの骨材と混合された任意のタイプの組成物を意味する。従って、水硬性結合剤を含む組成物は、水硬性結合剤ペースト(即ち水硬性結合剤および水で骨材なし)および凝塊物(即ち水硬性結合剤、骨材および水の混合物)の両方を含む。
【0012】
骨材は、天然(例えば砂)あるいは合成鉱質物質の非破壊あるいは破壊した粒子(例えば石、砂利)からなる不活性物質である。凝塊物の例は、水硬性モルタル(水硬性結合剤、水および細骨材の混合物)およびコンクリート(水硬性結合剤、水および粗骨材および細骨材の混合物)である。
【0013】
硬化した製品は、水硬性結合剤を含む組成物によって製造できる。組み立て式コンクリート部材(例えば円柱材、十字材、床材、スパン部材、保持桁材、壁スラブ材、ファサードスラブ材)、コンクリート製品(パイプ、舗装スラブ)および石膏製品(例えば床および壁スラブ、パネル)が水硬性結合剤を含む前記製品の例として挙げられる。
【0014】
水硬性結合剤を含む自己充填組成物は、事実上レベリングを完了するまで分離しないで流れ、流動の間にほぼ完全に脱気し、機械的な締固めをしないで空隙を充填する組成物を意味するとして理解されるべきである。
【0015】
水硬性結合剤は水の添加で硬化する結合剤を意味すると理解されるべきである。前記結合剤は例えば、セメントあるいは水硬性石灰である。セメントが好ましく使用される。
【0016】
さらには、可塑剤を使用してもよい。これは好ましくは、リグニンスルホネート、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、ビニルコポリマーおよび/またはポリカルボキシレートからなる群から選択されてよい。ポリカルボキシレートに基づく可塑剤が特に好ましく使用される。
【0017】
熱分解法は、火炎酸化および/または火炎加水分解によって得られる金属酸化物粒子を意味するとして理解されるべきである。酸化可能および/または加水分解可能な出発材料を通常、水素−酸素火炎中で酸化あるいは加水分解する。有機および無機物質を、熱分解工程のための出発材料として使用し得る。例えば、即座に使用可能な塩化物、例えば四塩化ケイ素、塩化アルミニウム、あるいは四塩化チタンが特に適している。適した有機の出発化合物は、例えばアルコラート、例えばSi(OC254、Al(OiC373あるいはTi(OiPr)4であってよい。従って、得られる金属酸化物粒子は非常に顕著に孔がなく、且つ表面に遊離ヒドロキシル基を有している。通常、前記の金属酸化物粒子は、凝集した一次粒子の形態で少なくとも部分的に存在する。本発明において、半金属酸化物、例えばシリカが金属酸化物として挙げられる。
【0018】
熱分解法酸化物の場合、比表面積の大きさは制御された手法で確立される。500m2/gまでの非常に大きい表面積に達することもまた可能である。対比して、マイクロシリカはケイ素金属製品の副産物であり、そのために比表面積を同様の範囲に調整することができない。マイクロシリカは工業規模では15〜25m2/gの小さい比表面積でしか製造されない。
【0019】
熱分解法金属酸化物は好ましくは40〜400m2/gのBET比表面積を有している。
【0020】
それらは好ましくは、シリカ、二酸化チタン、アルミナ、二酸化ジルコニウム、ケイ素−アルミニウム混合酸化物、ケイ素−チタン混合酸化物、チタン−アルミニウム混合酸化物および/またはアルカリ金属−シリカ混合酸化物からなる群から選択される。
【0021】
さらには、下記のタイプが使用できる:CAB−O−SIL(商標) LM−150、LM−150D、M−5、M−5P、M−5DP、M−7D、PTG、HP−60;SpectrAl(商標)51、81、100、全てCabot社製;HDK S13、V15、V15P、N20、N20P、全てWacker社製;REOLOSIL(商標) QS−10、QS−20、QS−30、QS−40、DM−10、全てTokuyama社製。
表1:SCC製造のための金属酸化物粉末
【表1】

【0022】
熱分解法金属酸化物は表面変性形態で存在してもよい。この目的のために、下記のシランを単独あるいは混合物として使用することができる:
オルガノシラン (RO)3Si(Cn2n+1)および(RO)3Si(Cn2n-1
[式中、
R=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルあるいはブチル、およびn=1〜20]。
【0023】
オルガノシラン R’x(RO)ySi(Cn2n+1)およびR’x(RO)ySi(Cn2n-1
[式中、
R=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルあるいはブチル;
R’=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルあるいはブチル;
R’=シクロアルキル;n=1〜20;x+y=3、x=1、2;y=1、2]。
【0024】
ハロオルガノシラン X3Si(Cn2n+1)およびX3Si(Cn2n-1
[式中、
X=Cl、Br;n=1〜20]。
【0025】
ハロオルガノシラン X2(R’)Si(Cn2n+1)およびX2(R’)Si(Cn2n-1
[式中、
X=Cl、Br;R’=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルあるいはブチル;R’=シクロアルキル;n=1〜20]。
【0026】
ハロオルガノシラン X(R’)2Si(Cn2n+1)およびX(R’)2Si(Cn2n-1
[式中、
X=Cl、Br;R’=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルあるいはブチル;R’=シクロアルキル;n=1〜20]。
【0027】
オルガノシラン (RO)3Si(CH2m−R’
[式中、
R=アルキル、例えばメチル、エチルあるいはプロピル;m=0、1〜20;R’=メチル、アリール、例えば−C65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、OCF2CHF2、NH2、N3、SCN、CH=CH2、NH−CH2−CH2−NH2、N−(CH2−CH2−NH22、OOC(CH3)C=CH2、OCH2−CH(O)CH2、NH−CO−N−CO−(CH25、NH−COO−CH3、NH−COO−CH2−CH3、NH−(CH23Si(OR)3、Sx−(CH23Si(OR)3、SH、
NR’R’’R’’’
[式中、
R’=アルキル、アリール;R’’=H、アルキル、アリール;R’’’=H、アルキル、アリール、ベンジル]
24NR’’’’R’’’’’
[式中、
R’’’’=H、アルキルおよびR’’’’’=H、アルキル]]。
【0028】
オルガノシラン (R’’)x(RO)ySi(CH2m−R’
[式中、
R’’=アルキル、x+y=3;シクロアルキル、x=1、2、y=1、2;m=0、1〜20;R’=メチル、アリール、例えばC65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、OCF2CHF2、NH2、N3、SCN、CH=CH2、NH−CH2−CH2−NH2、N−(CH2−CH2−NH22、OOC(CH3)C=CH2、OCH2−CH(O)CH2、NH−CO−N−CO−(CH25、NH−COO−CH3、NH−COO−CH2−CH3、NH−(CH23Si(OR)3、Sx−(CH23Si(OR)3、SH、
NR’R’’R’’’
[式中、
R’=アルキル、アリール;R’’=H、アルキル、アリール;R’’’=H、アルキル、アリール、ベンジル]
24NR’’’’R’’’’’
[式中、
R’’’’=H、アルキルおよびR’’’’’=H、アルキル]]。
【0029】
ハロオルガノシラン X3Si(CH2m−R’
[式中、
X=Cl、Br;m=0、1〜20;R’=メチル、アリール、例えばC65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、O−CF2−CHF2、NH2、N3、SCN、CH=CH2、NH−CH2−CH2−NH2、N−(CH2−CH2−NH22、−OOC(CH3)C=CH2、OCH2−CH(O)CH2、NH−CO−N−CO−(CH25、NH−COO−CH3、−NH−COO−CH2−CH3、−NH−(CH23Si(OR)3、−Sx−(CH23Si(OR)3
[式中、
R=メチル、エチル、プロピルあるいはブチル、およびx=1あるいは2、]
SH]
ハロオルガノシラン RX2Si(CH2m−R’
[式中、
X=Cl、Br;m=0、1〜20;R’=メチル、アリール、例えばC65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、O−CF2−CHF2、NH2、N3、SCN、CH=CH2、NH−CH2−CH2−NH2、N−(CH2−CH2−NH22、−OOC(CH3)C=CH2、OCH2−CH(O)CH2、NH−CO−N−CO−(CH25、NH−COO−CH3、−NH−COO−CH2−CH3、−NH−(CH23Si(OR)3、−Sx−(CH23Si(OR)3
[式中、
R=メチル、エチル、プロピルあるいはブチル、およびx=1あるいは2、]
SH]。
【0030】
ハロオルガノシラン R2XSi(CH2m−R’
[式中、
X=Cl、Br;m=0、1〜20;R’=メチル、アリール、例えばC65、置換されたフェニル基、C49、OCF2−CHF−CF3、C613、O−CF2−CHF2、NH2、N3、SCN、CH=CH2、NH−CH2−CH2−NH2、N−(CH2−CH2−NH22、−OOC(CH3)C=CH2、OCH2−CH(O)CH2、NH−CO−N−CO−(CH25、NH−COO−CH3、−NH−COO−CH2−CH3、−NH−(CH23Si(OR)3、−Sx−(CH23Si(OR)3
[式中、
R=メチル、エチル、プロピルあるいはブチル、およびx=1あるいは2、]
SH]。
【0031】
シラザン R’R2SiNHSiR2R’
[式中、
R、R’=アルキル、ビニル、アリール]。
【0032】
環状ポリシロキサン D3、D4、D5
[式中、
D3、D4およびD5は、3、4あるいは5ユニットの−O−Si(CH32型を有する環状ポリシロキサンの意味として理解され、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン=D4
【化1】

である]。
【0033】
以下の型のポリシロキサンあるいはシリコーンオイル
【化2】

[式中、
R=アルキル、アリール、(CH2n−NH2、H
R’=アルキル、アリール、(CH2n−NH2、H
R’’=アルキル、アリール、(CH2n−NH2、H
R’’’=アルキル、アリール、(CH2n−NH2、H
Y=CH3、H、Cz2z+1
[式中、
z=1〜20]
Si(CH33、Si(CH32H、Si(CH32OH、Si(CH32(OCH3)、Si(CH32(Cz2z+1
[式中、
R’あるいはR’’あるいはR’’’は(CH2z−NH2を意味し、且つ
z=1〜20、
m=0、1、2、3、・・・・∞
n=0、1、2、3、・・・・∞
u=0、1、2、3、・・・・∞]]
以下の物質が、表面変性剤として好ましく使用される:オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、
ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、
ジメチルポリシロキサン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、
グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、
ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、
トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、
トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、
アミノプロピルトリエトキシシラン。
オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランおよびジメチルポリシロキサンを特に好ましく使用し得る。
【0034】
適した表面変性金属酸化物は、例えば表2で述べるAEROSIL(登録商標)およびAEROXIDE(登録商標)タイプから選択し得る。
【0035】
表2:SCC用表面変性金属酸化物
【表2】

【0036】
さらには、例えばEP−A−1199336号、DE−A−10239423号、DE−A−10239424号あるいはWO2005095525号内に開示されるように、構造変性金属酸化物を使用し得る。
【0037】
熱分解法金属酸化物は粉末あるいは分散液の形態で使用できる。微粉による汚染を避けるべきであれば、分散液の形態での使用は粉末としての使用と比較して有利であり得る。分散液中の熱分解法金属酸化物の比率は、5〜50質量%であり、通常、含有率は15〜40質量%であり得る。前記分散液は好ましくは、液相の主成分として水を有する。さらには、それらは安定化添加剤を含有して沈降および再凝集を阻止してもよい。
【0038】
分散液のさらなる利点は、分散液中の金属酸化物粒子が、好ましくは50〜500nmの平均粒径、特に好ましくは70〜300nmの平均粒径を有している場合に得られる。この範囲は、市販の分散骨材(高エネルギーミリング)によって技術的に実現可能である。極度の微細さは、SCCの改善された品質に導く。この目的のために、最適条件を決定するための実験が必要である。
【0039】
適した市販の熱分解法金属酸化物粉末の分散液を表3に示す。
【0040】
実施例
出発材料
1)自己充填モルタルの製造のための組成物は下記の組成物を有する:
700gの砂
450gのセメント(CEM I 52.5R)
8gの可塑剤(Superflow 40E W.R.Grace社製、ポリカルボキシレートの30%溶液)
90gのフライアッシュ(Safament)
150gの水
2)シリカフューム(Microsilica(登録商標)G983、Elkem)、比表面積20m2/g、SiO2 98%
3)シリカゾル(Koestrosol(登録商標)3550、Chemische Werke Bad Kooestritz)、比表面積80m2/g
4)A)AEROSIL(登録商標)90、B)AEROSIL(登録商標)200、C)AEROSIL(登録商標)300、表1参照
5)AERODISP(登録商標)7215 S、表3参照
6)AEROXIDE(登録商標)TiO2 P25、表1参照
7)AEROXIDE(登録商標)MOX 170、表1参照。
【0041】
表3:SCC製造に適した熱分解法金属酸化物の分散液
【表3】

【0042】
実施例1〜11
金属酸化物2〜7を、表4で述べる量に従って、1)で述べた組成物に添加する。
【0043】
比較例2および3においては、それらは熱分解法ではない金属酸化物である。
【0044】
本発明による実施例は、熱分解法シリカ粉末(実施例4〜6)、熱分解法シリカ粉末の分散水溶液(実施例7)、熱分解法二酸化チタン粉末(実施例8)およびシリコン−アルミニウム混合酸化物粉末(実施例9)を含む。さらには、前記の表は、熱分解法金属酸化物を使用するが、その製品のBET比表面積および濃度が特許請求の範囲外である、比較例10および11を含む。
【0045】
金属酸化物のない参照(実施例1)と比較して、比較例10を除く全ての実施例は、24時間後に高い初期強度を有している。比較例10において、金属酸化物濃度はセメント100gに対してわずか9m2であり、従って低すぎる。
【0046】
比較例2および3は、熱分解法金属酸化物を用いた実施例よりも、初期強度において実質的に少ない増加を示す。
【0047】
セメント100gに対して400m2の量の金属酸化物を含む、比較例11においては、わずか11.8cmのスランプが得られる。従ってモルタルは自己充填性ではない。
【0048】
【表4】

【0049】
実施例12
水硬性結合剤100gに対して0〜270m2の金属酸化物に相当する(表5参照)、0〜13.5gまでの様々な量の金属酸化物4A)を、1)で述べた組成物に添加する。
表5:
【表5】

【0050】
24時間後、圧縮強度をDIN EN196−1に基づいて測定する。得られるN/mm2での圧縮強度を、水硬性結合剤100g当たりの金属酸化物のm2での金属酸化物の量(m2/100g)の関数として図1に示す。
【0051】
図1は金属酸化物の量がセメント100gに対して10m2未満の場合、参照(図1の実線)と比べて+30%の所望の初期強度増加が実現しないことを明らかに示している。
【0052】
セメント100gに対して200m2より多い金属酸化物の量は、初期強度のさらなる増加には至らない。さらに多い量は、減少にさえ至る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】金属酸化物の添加量と、得られる初期強度の関係を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性結合剤を含み且つ高い初期強度を有する自己充填組成物の製造のための熱分解法金属酸化物の使用において、
該組成物が少なくとも1つの水硬性結合剤およびさらなる成分としての水を含み、且つ
熱分解法金属酸化物のm2/gでのBET比表面積と、水硬性結合剤に対する熱分解法金属酸化物の質量割合との積が、水硬性結合剤100gに対して20〜200m2である使用。
【請求項2】
熱分解法金属酸化物のBET比表面積が40〜400m2/gであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
熱分解法金属酸化物が、シリカ、二酸化チタン、アルミナ、二酸化ジルコニウム、ケイ素−アルミニウム混合酸化物、ケイ素−チタン混合酸化物、チタン−アルミニウム混合酸化物および/またはアルカリ金属−シリカ混合酸化物であることを特徴とする、請求項1あるいは2のいずれか1項に記載の使用。
【請求項4】
熱分解法金属酸化物が表面変性形態で存在することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
熱分解法金属酸化物が分散液の形態で存在することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
分散液中の熱分解法金属酸化物粒子の平均凝集粒径が500nm未満であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−536140(P2009−536140A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508272(P2009−508272)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052309
【国際公開番号】WO2007/128608
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】