説明

水稲用病害虫防除組成物

【課題】
水稲の病害虫の同時防除や使用回数の低減を目的とした低薬量で長期間に渡って優れた防除効果を示す水稲用病害虫防除組成物を得る。
【解決手段】
シイタケ抽出物および農薬殺菌剤を有効成分として含有することを特徴とする水稲用病害虫防除組成物を提供する。更に、農薬殺虫剤を含有することを特徴とする水稲用病害虫防除組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水稲病害に対して優れた防除効果を示す水稲用病害虫防除組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らにより、下記一般式(1)[式中、Rは炭素数12〜24の脂肪酸]で表される化合物は水稲病害に対して優れた防除効果を有することが開示されている(特許文献1参照)とともに、一般式(1)で表される本化合物を含有する糸状菌由来の抽出物は、イネを含めて農園芸作物の各種病害に対しても優れた防除効果を有すること(特許文献2参照)が開示されている。
【0003】
【化1】


一般式(1)で表される本化合物は、イネを含めた農園芸作物に対して病害抵抗性を誘導することで、各種重要病害に対して防除効果を有するという特徴的な作用を持っている(非特許文献1および非特許文献2)。また、本化合物は天然物であることから、既存の合成農薬とは異なり環境への影響が少ないと考えられる。しかし、抵抗性誘導作用による防除効果は、イネに茎葉散布処理した場合、本化合物を直接処理された組織のみに発現することから、地域によってはいもち病が発生する期間内に複数回の散布処理が必要である。
【0004】
一方、アゾキシストロビン、イミノクタジン酢酸塩、TPN、カスガマイシン、オキソリニック酸、フルトラニルなどの化合物は各種の水稲病害に対して優れた防除効果を示すことから、水稲用殺菌剤として広く使用されている(非特許文献3参照)。しかしながら、これらの合成農薬の使用回数には制限があり、その使用回数はできるだけ削減することが望まれている。また、水稲病害虫の防除では、殺菌剤と殺虫剤の混合剤が多く使用されており、その場合においても、それぞれの活性の特徴を失うことなく防除効果を発揮しなければならない。
【特許文献1】特許第2846610号公報
【特許文献2】国際公開第2003/020032号パンフレット
【非特許文献1】Umemura K.et al.(2000)Plant Cell Physiol.41(6),676−683頁
【非特許文献2】Umemura K.et al.(2004)Phytopathology 4(8), 813−818頁
【非特許文献3】農薬ハンドブック2003年版 社団法人日本植物防疫協会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農産物に対する消費者の安全性志向の高まりとともに、合成農薬の使用量や使用回数をできるだけ少なくする、若しくは合成農薬ではなく天然系農薬を利用する病害虫防除技術の確立が望まれている。また、農業従事者にとって、農薬の使用回数はできるだけ少ないことが農作業での労力削減の観点から期待されている。そのためには2種以上の農薬を同時に使用できることが望まれているが、その場合でも2種類以上の農薬の組成物がそれぞれ有している特性を失うことなく、病害虫防除効果を発揮することが必要である。本発明の課題はこれらの現状を克服すべく、消費者および生産者にとってより安全で、農作業の省力化が可能となる水稲病害虫防除組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、シイタケ抽出物と水稲用殺菌剤を含有する組成物が水稲病害として代表的なイネいもち病に対して低薬量で長期間に渡って優れた防除効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水稲用病害虫防除組成物は、イネいもち病をはじめとする水稲病害虫に対して、相乗的な防除効果が認められる組成物であり、単位面積当りの施用薬量を減少させることができる。また、少量の薬剤でも長期間にわたり優れた防除効果を示すことで農作業の省力化、環境負荷の軽減に貢献することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
すなわち本発明は以下の発明を提供するものである。
(1)本発明は、シイタケ抽出物と農園芸用殺菌剤を含んでなる水稲用病害虫防除組成物。
(2)さらに、農園芸用殺虫剤を含んでなる上記(1)記載の水稲用病害虫防除組成物。
(3)水稲用病害虫がイネいもち病である上記(1)または(2)の水稲病害虫防除組成物。
(4)上記(1)〜(3)記載の水稲用病害虫防除組成物を水田またはイネ体に処理することを特徴とする水稲病害虫の防除方法。
(5)農園芸用殺菌剤がバリダマイシン、カスガマイシン、オキソリニック酸またはフルトラニルである上記(1)〜(3)記載の水稲用病害虫防除組成物。
(6)シイタケ抽出物が有機溶媒によって抽出し、濃縮によって得られる抽出物である上記(1)〜(3)記載の水稲用病害虫防除組成物。
(7)シイタケ抽出物が有機溶媒によって抽出され、その抽出物中のセレブロシドBの含量が0.4〜3.0mg/mlになるように濃縮して得られる抽出物である上記(1)〜(3)記載の水稲用病害虫防除組成物。
【0009】
本発明の水稲用病害虫防除組成物のシイタケ抽出物は次のように製造することができる。原料としては、生シイタケや乾燥シイタケを用いることができる。乾燥シイタケを用いる場合には、パワーミル等の粉砕機で溶媒が湿潤しやすい程度に粉砕することにより効率よく抽出することができる。
【0010】
抽出工程において、粉砕した乾燥シイタケに有機溶媒を加えて撹拌し、抽出した液を固液分離して、有機溶媒の抽出液と残渣に分け、シイタケ抽出液が得られる。抽出工程で用いる有機溶媒としては、エタノール、メタノール、ヘキサン、石油エーテル、エチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン等が挙げられる。その中でも、抽出効率のよい溶媒として、好ましくは酢酸エチル、クロロホルムが挙げられる。また、有機農産物の栽培に使用する場合には、エタノールを使用することが好ましい。抽出条件は、使用する有機溶媒や乾燥シイタケの状態に応じて適切な条件で行うことが望ましいが、抽出時の液温は15〜80℃が好ましい。また、歩留まりを良くするため、残渣に残存している有効成分を再抽出する操作、すなわち、固液分離して得られた残渣に、再び有機溶媒を加えて浸漬した後、固液分離して、抽出液を分離し、先に得られた抽出液に加える操作を行ってもよい。固液分離の方法としては、フィルターろ過、遠心ろ過、圧搾ろ過機などを用いることができる。
【0011】
濃縮分離工程において、得られた抽出液を濃縮することにより、有効成分の含有率を高めると共に生理阻害物質を除去することができる。濃縮は、フリーズドライ、減圧濃縮、加熱蒸留など、通常実施される濃縮方法を適用できる。しかし、高温での濃縮は好ましくないため、減圧濃縮により行うことが好ましい。また、加熱蒸留する場合には、品温を80℃以下にして濃縮することが望ましい。
【0012】
上記のシイタケ抽出物には、有効成分として主にセレブロシドB((4E,8E)−N−D−2’−ヒドロキシパルミトイル−1−O−β−D−グルコピラノシル−9−メチル−4,8−スフィンガジエニン)が含まれている。
【0013】
そのため、好ましい濃縮としては、セレブロシドBの含量が0.4〜3.0mg/mlとなる場合であり、より好ましくは0.9〜3.0mg/mlとなる場合である。濃縮する際の目安としては、体積比で示せば、好ましくは1/5〜1/30、より好ましくは1/10〜1/20である。
【0014】
本発明の水稲用病害虫防除組成物は、シイタケ抽出物と少なくとも一種以上の殺虫剤または殺菌剤を含有するものである。このシイタケ抽出物と混合する殺菌剤や殺虫剤は、農園芸用で使用されるものが適している。
【0015】
具体的な農園芸用殺菌剤としては、銅殺菌剤(無機銅剤、硫酸銅、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、無水硫酸銅、水酸化第二銅、有機銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、DBEDCなど)、無機硫黄殺菌剤、有機硫黄殺菌剤(ジネブ、マンネブ、アンバム、ポリカーバメート、プロピネブ、ジラム、チウラム、チアジアジンなど)、有機塩素系殺菌剤(TPNなど)、有機リン系殺菌剤(IBP、EDDP、トルクロホスメチル、ホセチルなど)、ベンゾイミダゾール系殺菌剤(チオファネートメチル、ベノミル、チアベンダゾールなど)、ジカルボキシイミド系殺菌剤(イプロジオン、プロシミドンなど)、酸アミド系殺菌剤(メプロニル、フルトラニル、フラメトピル、チフルザミド、メタラキシル、オキサジキシル、フェンヘキサミド、フェノキサニルなど)、エルゴステロール生合成阻害剤(トリアジメホン、ビテルタノール、ミクロブタニル、ヘキサコナゾール、テブコナゾール、プロピコナゾール、ジフェノコナゾール、イプコナゾール、イミベンコナゾール、シプロコナゾール、トリフルミゾール、プロクロラズ、ペフラゾエート、フェナリモル、ピリフェノックス、トリホリン、テトラコナゾール、オキスポコナゾールフマル酸、フェンブコナゾール、シメコナゾールなど)、メラニン生合成阻害剤(フサライド、トリシクラゾール、ピロキロン、カルプロパミドなど)、抗生物質殺菌剤(ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン、ブラストサイジン、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシン、ミルディオマイシンなど)、その他(フルスルファミド剤、トリアジン剤、フェリムゾン剤、ジエトフェンカルブ剤、プロベナゾール剤、オキソリニック酸剤、イミノクタジン酢酸塩剤、アシベンゾラル-S-メチル剤、チアジニル剤、ストロビルリン剤など)から選択される殺菌剤が挙げられ、好ましくは、バリダマイシン、カスガマイシン、オキソリニック酸、フルトラニルが挙げられる。より好ましくはカスガマイシンが挙げられる。
【0016】
また、具体的な農園芸用殺虫剤としては、有機リン系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、ネライストキシン系殺虫剤、その他(イミダクロプリド、ピレトリン剤、ロテノン剤、殺ダニ剤、殺線虫剤)から選択される殺虫剤が挙げられる。好ましくは、エチプロール(5-アミノ-1-(2,6-ジクロロ-トリフルオロ-トリル)-4-エチルスルフィニルピラゾール-3-カルボニル)、スピノサド(スピノシンA: 2-(6-デオキシ-2,3,4-トリメチル-マンノピラノシルオキシ)-13-(4-ジメチルアミノ-2,3,4,6-テトラデオキシ-エリスロピラノシルオキシ)-9-エチル-2,3,3a,5a,5b,6,7,9,10,11,12,13,14,15, 16a,16b-ヘキサデカヒドロ-14-メチル-8-オキサシクロドデカ-インダセン-7,15-ジオン)、ブプロフェジン(2-ターシャリーブチルイミノ-3-イソプロピル-5-フェニル-3,4,5,6-テトラヒドロ-1,3,5-チアジアジン-4-オン)、フェニトロチオン(ジメチル-(3-メチル-4-ニトロフェニル)チオホスフェート)、フェノブカルブ(2-セコンダリーブチルフェニル-メチルカーバメート)、ジノテフラン(1-メチル-2-ニトロ-3-(テトラヒドロ-3-フリルメチル)グアニジン)、クロチアニジン(1-(2-クロロ-1,3-チアゾール-5-イルメチル)-3-メチル-2-ニトログアニジン)が挙げられる。
【0017】
また、施用のための薬剤の形態、その使用形態、施用方法も特に限定されるものではないが、組成物の好ましい施用濃度はシイタケ抽出物に含まれるセレブロシドBの含量を指標として、0.5〜400μg/ml、より好ましくは1〜50μg/ml、さらに好ましくは5〜20μg/mlとすることができる。ただし、施用濃度は植物の種類、生育ステージ、施用方法により適宜濃度を調整することができる。
【0018】
本発明の水稲用病害虫防除組成物としては、シイタケ抽出物と混合する殺虫剤または殺菌剤を、予め製剤化して用いるか、施用場所に応じて、それぞれ単独の製剤を混合して組成物として用いることができる。
【0019】
本発明の水稲用病害虫防除組成物の剤型としては、液剤、粉剤、粒剤、乳剤、水和剤、油剤、エアゾール、フロアブル剤等何れの使用形態でも良い。これらの剤型に適した各種方法で使用することができる。
【0020】
これらの製剤化では、製剤物性の改良、有効成分の安定化、効力増強などを主な目的として、必要に応じて有効成分を固体担体、溶剤、界面活性剤、補助剤などを加えることができる。
【0021】
固体担体としては、代表的なものとして、クレー、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、酸性白土、活性白土、アタパルガスクレー、バーミキュライト、パーライト、軽石、ホワイトカーボン、二酸化チタン、水溶性塩類、木粉、トウモロコシ穂軸、クルミ殻、粉末セルロース、でんぷん、デキストリン、糖類などが挙げられる。
【0022】
溶剤としてはキシレン、C9アルキルベンゼン、C10アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、高沸点の芳香族炭化水素などの芳香族溶剤、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテンなどの脂肪族溶剤、ケロシンや灯油より製造される溶剤などの混合溶剤、高沸点の脂肪族炭化水素などのマシン油、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、プロピレン系グリコールエーテルなどの多価アルコール誘導体、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどのケトン類、脂肪酸メチルエステル(ヤシ油脂肪酸メチルエステル)、二塩基酸メチルエステル(コハク酸ジメチルエステル、グルタミン酸ジメチルエステル、アジビン酸ジメチルエステル)などのエステル類、N−アルキルピロリドンなどの窒素含有溶剤、ヤシ油、大豆油、菜種油などの油脂、水などが代表的なものとして挙げられる。
【0023】
界面活性剤としてはソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル・ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンビスフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンエーテル型シリコン、エステル型シリコン、フッ素系界面活性剤などのノニオン性界面活性剤、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート、パラフィンスルホネート類、AOS類、ジアルキルスルホサクシネート類、アルキルベンゼンスルホネート類、ナフタレンスルホネート類、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物類、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート類、リグニンスルホネート類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホネート類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸ハーフエステル類、脂肪酸塩類、N−メチル−脂肪酸サルコシネート類、樹脂酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホスフェート類、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルエーテルホスフェート類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェート類、レシチン類、アルキルホスフェート類、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド類、メチル・ポリオキシエチレンアルキルアンモニウムクロライド類、アルキルN−メチル−ピリジニウムブロマイド類、アルキルメチル化アンモニウムクロライド類、アルキルペンタメチルプロピレンジアミンジクロライド類、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド類、ベンゼトニウムクロライド類、ジアルキルジアミノエチルベタイン類、アルキルジメチルベンジルベタイン類などが代表的なものとして挙げられる。ただし本化合物を含有する糸状菌由来の抽出物中には展着成分をも含んでいることから、展着作用を目的とした界面活性剤の添加は不要、または少量の添加のみでよい。
【0024】
補助剤としてはイソプロピルホスフェイト、カルボキシメチルセルロース、PVA、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、キサンタンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラヒドロキシ安息香酸エステル、1,2−ベンツチアゾリン−3−オン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリビニールプロピドン、尿素、ヘキサメチレンテトラミン、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ゼオライト、生石灰、酸化マグネシウム、疎水性高沸点溶剤、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸、クラフトリグニン、メタクリル酸とビニールプロピドンとの共重合物、グリセリン、ソルビトール、水膨潤性高分子化合物などが代表的なものとして挙げられる。
【0025】
上記の固体担体、溶剤、界面活性剤、および補助剤は、製剤の種類に応じて、適宜組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本発明の水稲用病害虫防除組成物のシイタケ抽出物と少なくとも1種の殺虫剤または殺菌剤の配合割合としては、加害病害虫の種類や発病様式などによっても最適な条件は異なるため、特に限定されるものではないが、通常であれば、重量比で1:1000〜100:1であり、より好ましくは1:100〜100:1の割合である。
【0027】
本発明の水稲用病害虫防除組成物の防除方法とは、イネに処理する場合に、当該防除組成物をそのまま、あるいは水などで希釈して、茎葉散布、水面施用、育苗箱処理、潅注処理などによる方法をいうが、これらの処理方法に限定されるものではない。また、イネの生育ステージや栽培方法に合わせて、上記の処理方法を組み合わせることにより、薬効や効果の持続期間をより効果的なものとする方法も含まれる。
【0028】
本発明の水稲用病害虫防除組成物が防除効果を発揮する病害虫としては、特に制限されるものではないが、例えば、イネいもち病などの水稲糸状菌病害、ウンカ類、カメムシ類、イネドロオイムシ、ツマグロヨコバイ、イネアザミウマ、イネミズゾウムシなどのイネ害虫が代表として挙げられ、このなかでも特にイネいもち病に対して有効である。
【実施例】
【0029】
本発明を更に具体的に説明するため、実施例を以下に示す。しかし、これらの実施例は例示であって、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
試験例1:シイタケ抽出物の製造
乾燥シイタケをパワーミル(昭和技研株式会社製、卓上パワーミルP−02)にて粉砕し、スクリーン目開き1.0mmを用いて粉砕品を得た。その乾燥シイタケの粉砕品1kgに対して、99.5%エタノール5リットルを加え、25℃に保温し、24時間撹拌しながら1回目の抽出を行った。その後、エタノール抽出液と残渣に分離した。さらに、その残渣を99.5%エタノール5リットルで30分間浸漬させ、2回目の抽出を行い、エタノール抽出液と残渣に分離した。1回目と2回目のエタノール抽出液を合わせ、常圧、液温80℃にて、もとの体積の約1/20まで濃縮した。濃縮後、室温まで冷却し、液中に生じた沈殿を遠心分離により取り除いて、シイタケ抽出物80mlを得た。
【0031】
試験液2:シイタケ抽出物の分析
得られたシイタケ抽出物を、TSKgel ODS120A(東ソー株式会社製、4.6mm×300mm)カラムを用いたHPLC法(溶媒:80%エタノール、流速:1ml/min.、カラム温度:50℃、保持時間:20.8分、UV215nmで検出)により分析した。その結果、セレブロシドBを100mg/ml含有していることを確認した。
【0032】
試験例3:イネいもち病防除効果の薬効持続性の検討
イネいもち病に対する防除効果の評価試験は、イネ(品種:あきたこまち)の催芽種子を1ポットあたり20粒程播種して温室にて栽培し、本葉3〜4葉齢の段階でポットあたり2mlの薬液量を茎葉散布処理して行った。散布処理1日後に、イネいもち病菌(Magnaporthe grisea レース007株)の分生胞子懸濁液を噴霧接種して感染処理を行った。噴霧接種後、暗所、加湿条件下に36時間放置することにより、いもち病菌を感染させた。その後、人工気象室に移して栽培し、接種7日後および14日後に各区の第4本葉に発生した罹病性病斑数を測定することにより防除価を算出した。防除価の算出は、防除価=(1−各区の一葉あたりの平均病斑数/対照区の一葉あたりの平均病斑数)×100として求めた。対照区は、ポットあたり2mlの水を噴霧した。その結果を表1に示した。表1の括弧内は接種7日後の防除価を100としたときの接種14日後の防除価の値を示した。
【0033】
シイタケ抽出物を単独で施用した場合には、接種14日後の防除価は低くなった。一方、殺菌剤を単独で使用した場合には、施用当初からあまり防除価が高くなかった。しかし、本願発明のシイタケ抽出物と殺菌剤からなる防除剤では、接種14日後でも防除価が高い状態で維持され、相乗効果を示すことが確認され、特に、シイタケ抽出物とカスガマイシンからなる防除剤において、その効果は顕著であった。
【0034】
試験例4:シイタケ抽出物に殺虫剤を含有させたイネ用農薬混合組成物のイネいもち病防除効果への影響
上記の試験例3と同様の栽培方法にて、イネ(品種:ひとめぼれ)をポット栽培したイネが本葉3葉齢の段階でポットあたり3.3mlの薬液量を茎葉散布処理した。散布4日後にイネいもち病菌を上記と同様に接種し、接種7日後に測定して防除価を算出した。その結果を表2に示した。
本願発明の防除剤に含まれるシイタケ抽出物は殺虫剤と混合して用いても、イネいもち病防除効果を減衰させるような影響を与えないことが確認された。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シイタケ抽出物と農園芸用殺菌剤を含んでなる水稲用病害虫防除組成物。
【請求項2】
さらに、農園芸用殺虫剤を含んでなる請求項1記載の水稲用病害虫防除組成物。
【請求項3】
水稲用病害虫がイネいもち病である請求項1または2記載の水稲病害虫防除組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載の水稲用病害虫防除組成物を水田またはイネ体に処理することを特徴とする水稲病害虫の防除方法。



【公開番号】特開2010−24166(P2010−24166A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185787(P2008−185787)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】